(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087423
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】電界発生パネル
(51)【国際特許分類】
A23L 3/32 20060101AFI20240624BHJP
F25D 23/00 20060101ALI20240624BHJP
B01J 19/08 20060101ALN20240624BHJP
【FI】
A23L3/32
F25D23/00 302Z
B01J19/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202245
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】392018078
【氏名又は名称】日栄インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100118094
【弁理士】
【氏名又は名称】殿元 基城
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 薫央
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】金子 敏也
(72)【発明者】
【氏名】笹本 悠希
【テーマコード(参考)】
3L345
4B021
4G075
【Fターム(参考)】
3L345AA02
3L345AA05
3L345BB01
3L345GG40
3L345KK01
3L345KK04
4B021LP10
4B021LT03
4G075AA22
4G075CA14
4G075DA02
4G075EB50
4G075EC21
4G075FA12
4G075FB12
4G075FC15
(57)【要約】
【課題】 十分な電界強度を得ることが可能な電線の配置構造を備えた電界発生パネルを提供する。
【解決手段】 電界発生パネル1は、平板状の電極部5cと、電極部5cにおける上下左右の四辺を囲む枠体6とを有し、電極部5cに電圧を印加することにより電界を発生させることができる。電極部5cは、絶縁体で被覆されて同一平面上に敷設される一本の電線10を備え、電線10は、枠体6の左右方向へ伸びる波形状部分が上下方向に複数配置されるようにして一筆書きの状態で敷設されている。上下に配置された波形状部分において、上側に配置された波形状部分の一部15aは、下側に配置された波形状部分の一部15bに接している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の電極部と、該電極部における上下左右の四辺を囲む枠体とを有し、前記電極部に電圧を印加することにより電界を発生させる電界発生パネルであって、
前記電極部は、絶縁体で被覆されて同一平面上に敷設される一本の電線を備え、
前記電線は、前記枠体の左右方向へ伸びる波形状部分が上下方向に複数配置されるようにして一筆書きの状態で敷設され、
上下に配置された前記波形状部分において、上側に配置された前記波形状部分の一部と、下側に配置された前記波形状部分の一部とが接すること
を特徴とする電界発生パネル。
【請求項2】
前記電線は、上側に配置された前記波形状部分における隣接した谷波部の間の空間に、下側に配置された前記波形状部分の山波部が入り込むようにして敷設され、または、下側に配置された前記波形状部分における隣接した山波部の間の空間に、上側に配置された前記波形状部分の谷波部が入り込むようにして敷設されており、
上側に配置された前記波形状部分における前記谷波部の外周面と、下側に配置された前記波形状部分における前記山波部の外周面とが接すること
を特徴とする請求項1に記載の電界発生パネル。
【請求項3】
上側に配置された前記波形状部分の谷波部における谷底部分の外周面と、下側に配置される前記波形状部分の山波部における山頂部分の外周面とが接すること
を特徴とする請求項1に記載の電界発生パネル。
【請求項4】
平板状の電極部と、該電極部における上下左右の四辺を囲む枠体とを有し、前記電極部に電圧を印加することにより電界を発生させる電界発生パネルであって、
前記電極部は、絶縁体で被覆されて同一平面上に敷設される一本の電線を備え、
前記電線は、前記枠体の左右方向へ伸びる波形状部分と左右方向に伸びる直線状部分とが上下方向に交互に配置されるようにして一筆書きの状態で敷設され、
前記直線状部分の上側に前記波形状部分が位置する場合には、前記直線状部分の外周面と、上側に位置する前記波形状部分の谷波部における谷底部分の外周面とが接し、
前記直線状部分の下側に前記波形状部分が位置する場合には、前記直線状部分の外周面と、下側に位置する前記波形状部分の山波部における山頂部分の外周面とが接すること
を特徴とする電界発生パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧が印加されて電界が発生し、生鮮物の鮮度維持等に供する電界発生パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
電界が発生している空間で生鮮物を保存することにより、電界が発生していない空間で生鮮物を保存するよりも、生鮮物の鮮度をより長期間維持することが可能である。この方法を利用するため、冷蔵庫等の生鮮物を保存する空間に対して電界を積極的に発生させることを目的とした電界発生パネルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような電界発生パネルでは、導電性の金属板等からなる平板状の電極部が、難燃性テント生地からなる保護シートに包まれるとともに、電極部と保護シートとの間であって、電極部に対して電界を発生させる方向の逆側の位置に、絶縁材が配置されている。電界発生パネルの電極部に電圧を印加することにより、電界発生パネルが設置される空間に対して、電界を発生させることが可能になる。
【0004】
電界発生パネルは電極部に電圧を印加する構造であるため、電極部を構成する金属板等を絶縁材で覆うことにより、漏電を防止する構造が採用されている。しかしながら、絶縁材に損傷を与え得るような外力が作用しても漏電しないように金属板等を絶縁材で十分に覆うことは、容易ではないという問題あった。
【0005】
一方で、通電のための金属媒体として、いわゆる電線が広く利用されている。一般的な電線は、絶縁を目的とした絶縁材料により金属線の外側が被覆された状態で流通している。また、電線を通電させることにより、電線において電界を発生させることが可能である。このため、金属板等の代わりに電線を大きな矩形波状態或いは渦巻き状態に配置した電極部を有する電界発生パネルを用いて、電界を発生させる方法が提案されている(例えば、特許文献2の
図2~
図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5682037号公報
【特許文献2】特開2013-169194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
金属板の代わりに電線を利用する場合、単純に電線を大きな矩形波状態や渦巻き状態に配置して電圧を印加しても、金属板を用いる場合に比べて発生する電界の強度が低くなるという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、十分な電界強度を得ることが可能な電線の配置構造を備えた電界発生パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る電界発生パネルは、平板状の電極部と、該電極部における上下左右の四辺を囲む枠体とを有し、前記電極部に電圧を印加することにより電界を発生させる電界発生パネルであって、前記電極部は、絶縁体で被覆されて同一平面上に敷設される一本の電線を備え、前記電線は、前記枠体の左右方向へ伸びる波形状部分が上下方向に複数配置されるようにして一筆書きの状態で敷設され、上下に配置された前記波形状部分において、上側に配置された前記波形状部分の一部と、下側に配置された前記波形状部分の一部とが接することを特徴とする。
【0010】
上述した電界発生パネルにおいて、前記電線が、上側に配置された前記波形状部分における隣接した谷波部の間の空間に、下側に配置された前記波形状部分の山波部が入り込むようにして敷設され、または、下側に配置された前記波形状部分における隣接した山波部の間の空間に、上側に配置された前記波形状部分の谷波部が入り込むようにして敷設されており、上側に配置された前記波形状部分における前記谷波部の外周面と、下側に配置された前記波形状部分における前記山波部の外周面とが接するものであってもよい。
【0011】
また、上述した電界発生パネルにおいて、上側に配置された前記波形状部分の谷波部における谷底部分の外周面と、下側に配置される前記波形状部分の山波部における山頂部分の外周面とが接するものであってもよい。
【0012】
また、本発明に係る電界発生パネルは、平板状の電極部と、該電極部における上下左右の四辺を囲む枠体とを有し、前記電極部に電圧を印加することにより電界を発生させる電界発生パネルであって、前記電極部は、絶縁体で被覆されて同一平面上に敷設される一本の電線を備え、前記電線は、前記枠体の左右方向へ伸びる波形状部分と左右方向に伸びる直線状部分とが上下方向に交互に配置されるようにして一筆書きの状態で敷設され、前記直線状部分の上側に前記波形状部分が位置する場合には、前記直線状部分の外周面と、上側に位置する前記波形状部分の谷波部における谷底部分の外周面とが接し、前記直線状部分の下側に前記波形状部分が位置する場合には、前記直線状部分の外周面と、下側に位置する前記波形状部分の山波部における山頂部分の外周面とが接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る電界発生パネルによれば、電線を用いた電極部に電圧を印加することにより、十分な電界強度を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態に係る電界発生パネルを示した正面図である。
【
図2】
図1に示した電界発生パネルにおけるII-II断面を示した断面図である。
【
図3】従来例の枠体および電極部を示した概略正面図である。
【
図4】比較例1の枠体および電極部を示した概略正面図である。
【
図5】実施例1の枠体および電極部を示した概略正面図である。
【
図6】実施例2の枠体および電極部を示した概略正面図である。
【
図7】実施例3の枠体および電極部を示した概略正面図である。
【
図8】比較例2の枠体および電極部を示した概略正面図である。
【
図9】比較例3の枠体および電極部を示した概略正面図である。
【
図10】実施例1の変型例を示した概略正面図である。
【
図11】従来例、実施例1~実施例3および比較例1~比較例3における電界の強さ、電線の使用長さ、静電容量を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、電界発生パネルにおける電極部を複数例示し、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、電界発生パネルの正面図を示しており、
図2は電界発生パネルの断面図を示している。
【0016】
電界発生パネルは、電界を発生することにより冷蔵庫等(冷蔵コンテナ等の移動可能なものでもよい)に保管された生鮮物等の鮮度維持を実現する装置である。電界発生パネル1は、冷蔵庫等の壁面に固定されたレール4に設置される。電界発生パネル1は、正面視矩形状を呈しており(
図1では、一例として正方形状で示す)、パネル組立体2とフレーム3とを有している。
【0017】
パネル組立体2は、電線10により構成される電極部5と、電極部5の周囲を囲む枠体6と、電極部5および枠体6を表裏両側から挟み込む一対の保護プレート7,8とにより一体に形成されている。保護プレート7,8は、外部からの衝撃に対して電極部5を保護すると共に、パネル組立体2の強度を確保するための補強部材としての役割を有している。保護プレート7,8は、比較的硬質の樹脂材料等であって、電極部5で発生する電界を阻害しない素材によって構成されている。
【0018】
電極部5は、絶縁体18が被覆された一本の電線(高圧線)10により構成されている。電線10は、
図4~
図10に示すように、所定の模様を一筆書きで描くようにして(一筆書きの状態:一本の電線10が一端11から他端12まで途切れず正面視で交わることもない状態で)敷設されている。実施の形態に係る電極部5では、一例として、絶縁体18が被覆された状態で直径が6mmである電線10が用いられる。また、電線10を曲げる場合、電線10を断線させず、さらに通電状態を悪化させないようにして、電線10の曲状半径(湾曲状半径)を決定する。実施の形態に係る電極部5の場合には、曲状半径を最大25mm(R=25.00)として、電線10の曲げ加工を行う。絶縁体18には、絶縁性・耐摩耗性に優れたポリ塩化ビニルやポリエチレン等が用いられる。
【0019】
枠体6は、電極部5の外周を囲う正面視矩形状(実施の形態では正方形状)の枠材である。枠体6は、4本の棒状材6a,6b,6c,6dの一端を他の棒状材の他端に繋ぎ合わせることにより矩形状に組み立てられている。各棒状材6a,6b,6c,6dの厚みは、電線10の直径に対応する寸法に規定されており、実施の形態に係る枠体6の場合には、上述したように6mmの厚さに設定される。枠体6の厚みを6mmに設定することにより、電極部5と枠体6とを保護プレート7,8が挟み込んだ状態で、保護プレート7,8に圧力等が掛かっても、枠体6で電線10を保護することができ、電線10の損傷を防ぐことができる。なお、実施の形態に係る枠体6では、棒状材6a,6b,6c,6dの長辺の長さが890mmに設定され、幅(短辺の長さ)が12mmに設定されている。
【0020】
フレーム3は、パネル組立体2の上縁部、下縁部、右縁部および左縁部に取り付けられる上フレーム3a、下フレーム3b、右フレーム3cおよび左フレーム3dにより構成されている。各フレーム3a,3b,3c,3dは、断面コ字形状の凹所が設けられており、凹所に対してパネル組立体2の各縁部を嵌め込むことにより、パネル組立体2にフレーム3を取り付ける構造になっている。フレーム3a,3bには、突起部9a,9bが設けられている。突起部9a,9bをレール4に係止させることにより、パネル組立体2にフレーム3が取り付けられた電界発生パネル1を、冷蔵庫等に取り付けることができる。
【0021】
棒状材6aおよび上フレーム3aの中央部分には、電線10の端部を枠体6およびフレーム3の外部に誘導するための開口6e,3eが形成されており、この開口6e,3eを介して電線10の一端11がパネル組立体2の外部へ延伸されている。延伸された電線10は、図示を省略した電源に接続されており、この電源により電極部5に対して電圧が印加される。電線10の他端12は、
図4~
図10に示すように、絶縁性の樹脂キャップ12aで覆われている。
【0022】
次に、従来例、実施例および比較例からなる7種類の電極部が用いられたパネル組立体2について説明する。
【0023】
[従来例:板型(従来型)]
図3は、枠体6と、従来より用いられている板状の電極部5aとを示した概略正面図である。電極部5aは、アルミニウム等の導電性材料からなる平板状の板材により構成されている。電極部5aは、枠体6の各棒状材6a, 6b, 6c, 6dに対して一定の隙間が確保される大きさに規定されている。電極部5aの上部中央には、電源に接続される電線10aの一端10bが電気的に接続されている。電線10aの他端10cは、棒状材6aおよび上フレーム3aの中央部分に形成される開口6e,3eを通って枠体6およびフレーム3の外部へ延伸されている。平板状の導伝性材料が用いられた電極部5aの形状を「板型」形状と称する。
【0024】
[比較例1:大波]
図4は、枠体6と、枠体6の枠内に電線10が大波状に配線された電極部5bとを示した概略正面図である。電線10の一端11は、上述したように、棒状材6aおよび上フレーム3aの中央部分に形成された開口6e,3eを通って、枠体6およびフレーム3の外部へと延伸されている。電線10の他端12は、枠体6の右下隅部(棒状材6bの端部と棒状材6cの端部との接合部分近傍)に配置されており、絶縁性の樹脂キャップ12aで覆われている。
【0025】
なお、比較例1と同様に、後述する実施例1~実施例3、比較例2および比較例3における電線10の他端12は、絶縁性の樹脂キャップ12aで覆われている。
【0026】
電極部5bは、枠体6の上下寸法(棒状材6aから棒状材6bまでの寸法)を一波の高さ寸法(波高)とした電線10の大波部分を、枠体6の左右方向(棒状材6cから棒状材6dへ向かう方向、または、棒状材6dから棒状材6cへ向かう方向)に延伸させて、複数の山波部および谷波部が生じるように配置することにより構成されている。
【0027】
より詳細には、電線10の他端12が、枠体6の右下隅部から棒状材6cに沿って平行に枠体6の右上隅部(棒状材6aの端部と棒状材6cの端部との接合部分近傍)方向へ延伸され、棒状材6a近傍で電線10がUターンして、棒状材6c側の電線10から60mmの間隔を開けて棒状材6cに並行に棒状材6b側まで真っ直ぐに延伸される。さらに、電線10は、棒状材6b近傍および棒状材6a近傍でUターンを繰り返すことにより、左右方向に大きな波形状(大波)を描きながら、棒状材6bの中央付近まで延伸される。
【0028】
棒状材6bの中央付近まで延伸された電線10は、棒状材6bおよび棒状材6dに沿って、枠体6の左下隅部(棒状材6bの端部と棒状材6dの端部との接合部分近傍)から左上隅部(棒状材6aの端部と棒状材6dの端部との接合部分近傍)まで延伸され、棒状材6a近傍でUターンして、棒状材6d側の電線10から60mmの間隔を開けて棒状材6b側まで真っ直ぐに延伸される。さらに、電線10は、棒状材6b近傍および棒状材6a近傍でUターンを繰り返すことにより、棒状材6aの中央付近まで延伸されて、棒状材6aおよび上フレーム3aの中央部分の開口6a,3eを通って枠体6の外部へと延伸される。
【0029】
このように、比較例1における電極部5bは、電線10が上下に大きな波を描くように敷設(配設)されることを特徴としている。このように配置された電極部5bにおける電線10の配線状態を「大波」状態と称する。比較例1における電極部5bの配線長は、
図11の表に示すように、30メートルである。
【0030】
[実施例1:重波格子]
図5は、枠体6と、枠体6の枠内を左右方向に伸びる波形状部分が上下方向に複数配置された電線10からなる電極部5cとを示した概略正面図である。電線10の他端12は、枠体6の右下隅部に配置されている。
【0031】
電極部5cは、左右方向へ伸びる電線10の波形状部分が上下方向に複数配置されており、全ての波形状部分が電線10によって一筆書きで描かれた状態(一筆書きの状態)で構成されている。実施例1では、波形状部分における一波の波長と波高とが、ほぼ等しい長さに規定されている。また、電極部5cにおいて、各波形状部分の山波部13aにおける山頂部分13bは、上下方向に一列に整列された状態に配置され、各波形状部分の谷波部14aにおける谷底部分14bは、上下方向に一列に整列された状態に配置される。
【0032】
具体的には、電極部5cにおいて、上側に配置された波形状部分における隣接した谷波部14a間の空間に、下側に配置された波形状部分の山波部13a(山頂部分13b)が入り込むようにして敷設(配設、配線)され、または、下側に配置された波形状部分における隣接した山波部13a間の空間に、上側に配置された波形状部分の谷波部14a(谷底部分14b)が入り込むようにして敷設されている。さらに、電極部5cにおいて、上側に配置された波形状部分における谷波部14aの外周面15aと、下側に配置された波形状部分における山波部13aの外周面15bとが接するように敷設されている。
【0033】
実施例1のように配置された電極部5cにおける電線10の配線状態を「重波格子」状態と称する。実施例1における電極部5cの配線長は、
図11の表に示すように、45メートルである。
【0034】
上下に波形状部分が配置された電線10の左側端部(棒状材6dの近傍)において、上下に配置される電線10の端部を、一筆書きの状態でどのようにして延伸させるかは、特に限定されない。例えば、
図5に示すように、下側に位置する波形状部分の山頂部分から円を4分の3(中心角が270度の円弧)だけ描くようにして電線10をカーブさせて、上側に位置する波形状部分へ延伸させてもよく、また
図10に示すように、下側に位置する波形状部分の谷底部分から棒状材6dに沿って電線10を上方向に伸ばして、上側に位置する波形状部分に延伸させる構成であってもよい。
【0035】
[実施例2:片波格子]
図6は、枠体6と、枠体6の枠内を左右方向に伸びる波形状部分と左右方向に伸びる直線状部分とが上下方向に交互に配置された電線10からなる電極部5dとを示した概略正面図である。電線10の他端12は、枠体6の右下隅部に配置されている。
【0036】
電極部5dは、左右方向に伸びる電線10の波形状部分16と、左右方向に伸びる電線10の直線状部分17とが上下方向に交互に配置されており、全ての波形状部分16と直線状部分17とが、電線10によって一筆書きで描かれた状態になって構成されている。実施例2では、波形状部分16における一波の波長の長さが、波高に比べて2倍の長さに規定されている。
【0037】
具体的には、直線状部分17の上側に波形状部分16が位置する場合、電極部5dは、直線状部分17における電線10の外周面17aと、上側に配置された波形状部分16の谷波部14aにおける電線10の谷底部分14b(谷底部分14bの外周面)とが接するように敷設されている。他方、直線状部分17の下側に波形状部分16が位置する場合、電極部5dは、直線状部分17における電線10の外周面17bと、下側に配置された波形状部分16の山波部13aにおける電線10の山頂部分13b(山頂部分13bの外周面)とが接するように敷設されている。
【0038】
実施例2のように配置された電極部5dにおける電線10の配線状態を「片波格子」状態と称する。実施例2における電極部5dの配線長は、
図11の表に示すように、39メートルである。
【0039】
図6に示す電極部5dでは、各波形状部分16の山波部13aにおける山頂部分13bは、上下方向に一列に整列された状態に配置され、各波形状部分16の谷波部14aにおける谷底部分14bは、上下方向に一列に整列された状態に配置されているが、各波形状部分16の山頂部分13bおよび谷底部分14bは、必ずしも上下方向に一列に整列される必要はない。電極部5dにおける各山頂部分13bと各谷底部分14bとが上下方向に整列しないように、波形状部分16が配置される構成であってもよい。
【0040】
[実施例3:対称格子]
図7は、枠体6と、枠体6の枠内を左右方向に伸びる波形状部分が上下方向に複数配置された電線10からなる電極部5eとを示した概略正面図である。電線10の他端12は、枠体6の右下隅部に配置されている。
【0041】
電極部5eは、左右方向に伸びる電線10の波形状部分が上下方向に複数配置されており、全ての波形状部分が電線10によって一筆書きで描かれた状態となって構成されている。実施例3では、波形状部分における一波の波長の長さが、波高に比べて2倍の長さに規定されている。さらに、電極部5eは、上側に位置する波形状部分における谷波部14aの谷底部分14bと、下側に位置する波形状部分における山波部13aの山頂部分13bとが接するようにして、電線10が敷設されている。
【0042】
具体的には、電極部5eにおいて、各波形状部分の谷波部14aにおける谷底部分14bが、その下側に位置する波形状部分の山波部13aにおける山頂部分13bに接するとともに、各波形状部分の山波部13aにおける山頂部分13bが、その上側に位置する波形状部分の谷波部14aにおける谷底部分14bと接するように敷設されている。このように配置された電極部5eにおける電線10の配線状態を「対称格子」状態と称する。実施例3における電極部5eの配線長は、
図11の表に示すように、33メートルである。
【0043】
図7に示す電極部5eでは、波形状部分における波長の長さが波高の高さの2倍になっているが、波長の長さと波高の高さとの比率を変更することも可能である。実施例3の電極部5eでは、上下に配置された波形状部分の山波部13aにおける山頂部分13bと、谷波部14aにおける谷底部分14bとが接する構造であれば、波形状部分の波の波長や波高は特に限定されない。
【0044】
[比較例2:丸渦巻]
図8は、枠体6と、枠体6の枠内の中心から外側に向かって、丸形(円形)の渦巻き状に配線された電線10からなる電極部5fとを示した概略正面図である。電線10の他端12は、枠体6の中心部分に配置されている。
【0045】
電極部5fは、
図8に示すように、中心からの距離が少しずつ拡径するとともに、隣り合う電線10の間隔が一定に保たれた渦巻き形状になるように、電線10を一筆書きで描いた状態に延伸して構成されている。このように配置された電極部5fにおける電線10の配線状態を「丸渦巻」状態と称する。比較例2における電極部5fの配線長は、
図11の表に示すように、12メートルである。
【0046】
図8に示す丸渦巻状態は、中心部分から反時計廻りに回転しながら拡径する状態になっているが、渦の回転方向は、反時計廻りには限定されず、時計廻りであってもよい。なお、渦巻き状態において隣り合う電線10の間隔は、必ずしも一定に保たれる必要はなく、間隔が変化するように配置されていてもよい。
【0047】
[比較例3:四角渦巻]
図9は、枠体6と、枠体6の枠内の中心から外側に向かって、矩形の渦巻き状に配線された電線10からなる電極部5gとを示した概略正面図である。電線10の他端12は、枠体6の中心部分に配置されている。
【0048】
電極部5gは、
図9に示すように、中心からの距離が段階的に拡径される矩形の渦巻き状態であって、隣接する渦の直線状部分の間隔が一定に保たれるとともに、渦の各直線状部分が、枠体6の各棒状材6a,6b,6c,6dと平行になるように、電線10を一筆書きで描いた状態に延伸して構成されている。このように配置された電極部5gの電線10の配線状態を「四角渦巻」状態と称する。比較例3における電極部5gの配線長は、
図11の表に示すように、11メートルである。
【0049】
図9に示す四角渦巻状態は、中心部分から反時計廻りに回転しながら拡径する状態となっているが、渦の回転方向は、反時計廻りには限定されず、時計廻りであってもよい。なお、渦巻き状態において隣り合う電線10の間隔は、必ずしも一定に保たれる必要はなく、間隔が変化するように配置されていてもよい。
【0050】
[実施例1~3と、従来例および比較例1~3との比較]
図11に示すように、上述した従来例、実施例1~3および比較例1~比較例3のそれぞれの電極部5a~5gに対して電圧を印加し、周囲の電界の強さを測定した。
図11では、電界の強さとして、電界発生パネル1の周囲で測定された電界の強さが300V/mとなる場合における電界発生パネル1からの距離(mm)を示している。また、
図11の表には、各電極部5a~5gに電圧を印加した場合における静電容量(F)と、既に説明した電線の使用長さ(m)とが一覧表示されている。
【0051】
図11に示すように、従来例の電極部(従来から使用されている板型形状の電極部)5aでは、300V/mの電界の強さが、電界発生パネルから1800mm離れた位置で測定されており、電線10を用いた電極部5b~5gが、板型形状の電極部5aと同程度の強さの電界を発生させることができれば、電極部5aに代えて使用することができる。
図11に示した各実施例の電界の強さを比較すると、実施例1における「重波格子」状態の電極部5cと、実施例2における「片波格子」状態の電極部5dと、実施例3における「対称格子」状態の電極部5eとで測定された電界の強さが、板型形状の電極部5aで測定された電界の強さと同程度の強さ、或いは、許容される程度の差異に収まる強さであった。
【0052】
一方で、比較例1における「大波」状態の電極部5bで測定された電界の強さと、比較例2における「丸渦巻」状態の電極部5fで測定された電界の強さと、比較例3における「四角渦巻」状態の電極部5gで測定された電界の強さとは、従来例、実施例1~実施例3の電界の強さよりも劣る結果となった。
【0053】
これらの結果から、一本の電線10を平面上に配線(敷設)させた場合であっても、配線状態によって発生される電界の強さに違いが生じることが判明した。具体的には、「大波」状態、「丸渦巻」状態、「四角渦巻」状態のように、電線10の一部が、電線10の他部に全く接することのない配線構造よりも、「重波格子」状態、「片波格子」状態、「対称格子」状態のように、電線10の一部が電線10の他部に接する配線構造の方が、強い電界を発生させることが可能になる。
【0054】
また、実施例1~実施例3に示した電極部5c~5eでは、一本の電線10を同一平面に配設させているため、パネル組立体2の厚みを薄くすることができ、結果的に電界発生パネル1の薄型化を図ることが可能になる。
【0055】
さらに、電極部5c~5eでは、一本の電線10を適宜カーブ等させることにより一筆書きになるように配設しているので、電線の切断作業や連結作業が不要となり、電線の敷設作業の負担を軽減させることが容易となる。加えて、電線10の一端11に電圧を印加することによって、電極部5c~5eの全体に対して電界を効果的に発生させることが可能になる。
【0056】
また、電線10として、絶縁体18で被覆された一般な電線を用いることができるので、電極部5c~5eに対する絶縁体の被覆作業を省略することができるとともに、コストの低廉化を図ることが容易になる。
【0057】
なお、
図11に示した各実施例における静電容量の値と、300V/mの電界を示す距離の値(電界の強さを示す値)とを比較したが、静電容量と電界の強さとは、必ずしも比例する関係にはなっていなかった(例えば、実施例2の電界の強さおよび静電容量と、実施例3の電界強さおよび静電容量との関係)。但し、静電容量が多い電極部は、相対的に電界の強さが強い傾向が示されている。
【0058】
以上、本発明に係る電界発生パネルについて、複数の実施例1~3を示して説明を行ったが、本発明に係る電界発生パネルは、実施例1~3に示した電界発生パネルの構成には限定されない。例えば、実施例1~実施例3に示した電極部5c~5eでは、使用される電線10の直径が6mmである場合を一例として説明したが、電線10の直径は6mmには限定されず、6mm未満の電線を用いることも、6mmより大きい電線を用いることも可能である。電線10の直径は、電線の入手容易性やコスト等を考慮して、好適なものを用いることが可能である。
【0059】
また、電界発生パネル1の大きさや、設置環境等に応じて、電線10の直径や長さを適宜変更することも可能であり、電線10により形成される波の大きさや、波の数、波の配置等を適宜変更することも可能である。
【0060】
さらに、電線10により構成される波形状部分の波の形は、正弦波のような連続的に振幅が変化する波の形には限定されず、矩形波や三角波やのこぎり波のような波形状を呈するものであってもよい。
【0061】
さらに、実施例1および実施例3に示した電極部5c、5eでは、波形状部分が枠体6の左右方向に伸びる場合を一例として示したが、波形状部分は左右方向に伸びるものには限定されない。例えば、上下方向に伸びる波形状部分を左右方向に複数配置させるものであってもよい。同様に、実施例2に示した電極部5dでは、枠体6の左右方向に伸びる波形状部分16と、左右方向に伸びる直線状部分17とが上下方向に交互に配置される場合を一例として示したが、枠体6の上下方向に伸びる波形状部分と、上下方向に伸びる直線状部分とが、左右方向に交互に配置されるものであってもよい。
【0062】
従って、例えば、
図5~7および
図10に示した実施例1~実施例3の電極部5c~5eの配線構造を、電極部5c~5eの中央部分を中心に所定角度(例えば90度、180度或いは270度等)だけ全体を回転させたような配線構造にすることも可能であり、或いは表裏反転させた配線構造にすることも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 …電界発生パネル
2 …パネル組立体
3 …フレーム
3a …(フレームの)上フレーム
3b …(フレームの)下フレーム
3c …(フレームの)右フレーム
3d …(フレームの)左フレーム
3e …(フレームの)開口
4 …レール
5、5a、5b、5c、5d、5f …電極部
6 …枠体
6a、6b、6c、6d …(枠体の)棒状材
6e …(棒状材の)開口
7、8 …保護プレート
9a、9b …(フレームの)突起部
10、10a …電線
10b、11 …(電線の)一端
10c、12 …(電線の)他端
12a …樹脂キャップ
13a …(波形状部分の)山波部
13b …(山波部の)山頂部分
14a …(波形状部分の)谷波部
14b …(谷波部の)谷底部分
15a …(谷波部の)外周面
15b …(山波部の)外周面
16 …波形状部分
17 …直線状部分
17a、17b …(直線状部分の)外周面
18 …絶縁体