(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087427
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】タイヤの製造方法および製造システム
(51)【国際特許分類】
B29D 30/06 20060101AFI20240624BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20240624BHJP
B29C 33/02 20060101ALI20240624BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B29D30/06
B60C19/00 G
B29C33/02
G06K7/10 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202251
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】細見 和正
【テーマコード(参考)】
3D131
4F202
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
3D131LA20
3D131LA28
4F202AA45
4F202AH20
4F202AR07
4F202AR13
4F202CA21
4F202CB01
4F202CK12
4F202CK25
4F202CU01
4F202CU14
4F202CU20
4F202CZ02
4F202CZ20
4F215AH20
4F215AP06
4F215AR07
4F215VA18
4F215VD01
4F215VK41
4F215VL14
4F215VQ04
4F215VR01
4F501TA15
4F501TC01
4F501TC23
4F501TC24
4F501TD41
4F501TQ04
4F501TR06
4F501TT01
4F501TU07
4F501TV12
(57)【要約】
【課題】タイヤ内のRFIDタグの位置を容易に把握できるタイヤの製造方法および製造システムを提供する。
【解決手段】タイヤの製造方法は、RFIDタグ60が埋設された生タイヤ1Nを成型する生タイヤ成型工程と、RFIDタグ60のタイヤ周方向位置をRFIDリーダー72により検出するタグ位置検出工程と、所定のマークMを成型するマーク型82aを有する加硫金型80の内部に、生タイヤ1Nを、タグ位置検出工程で検出されたRFIDタグ60のタイヤ周方向位置とマーク型82aとがタイヤ周方向で対応する状態に配置する配置工程と、生タイヤ1Nを加硫金型80により加硫する加硫工程と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグが埋設された生タイヤを成型する生タイヤ成型工程と、
前記RFIDタグのタイヤ周方向位置をRFIDリーダーにより検出するタグ位置検出工程と、
所定のマークを成型するマーク型を有する加硫金型の内部に、前記生タイヤを、前記タグ位置検出工程で検出された前記RFIDタグのタイヤ周方向位置と前記マーク型とがタイヤ周方向で対応する状態に配置する配置工程と、
前記生タイヤを前記加硫金型により加硫する加硫工程と、を備える、タイヤの製造方法。
【請求項2】
前記タグ位置検出工程は、前記生タイヤを前記RFIDリーダーに対して軸回りに相対回転可能に設置した状態で、
前記生タイヤを、前記RFIDリーダーに対して軸回りに少なくとも1回、相対回転させ、その回転途中において前記RFIDリーダーにより前記RFIDタグの第1のタイヤ周方向位置を検出する第1の回転工程と、
前記生タイヤを、前記RFIDリーダーに対して軸回りに少なくとも1回、前記第1の回転工程のときと逆方向に相対回転させ、その回転途中において前記RFIDリーダーにより前記RFIDタグの第2のタイヤ周方向位置を検出する第2の回転工程と、を含む、請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記第1のタイヤ周方向位置と、前記第2のタイヤ周方向位置との差が規定値以下である場合に、前記配置工程に移行する、請求項2に記載のタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記第1のタイヤ周方向位置と前記第2のタイヤ周方向位置との差が規定値を超えた場合、前記RFIDタグを検出する前記RFIDリーダーの信号の出力を低減することにより、前記第1のタイヤ周方向位置と前記第2のタイヤ周方向位置との差を前記規定値以下に収める、請求項3に記載のタイヤの製造方法。
【請求項5】
RFIDタグが埋設された生タイヤが設置される設置台と、
RFIDリーダーと、
前記設置台と前記RFIDリーダーとを、前記生タイヤの軸回りに相対回転可能に支持する回転機構と、
前記生タイヤを加硫する加硫金型と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記回転機構を作動させるとともに、前記RFIDリーダーにより前記RFIDタグのタイヤ周方向位置を検出し、
前記加硫金型は、検出されたRFIDタグのタイヤ周方向位置と対応する位置に所定のマークを成型可能なマーク型を有する、タイヤの製造システム。
【請求項6】
前記RFIDリーダーは、前記RFIDタグを検出する信号の出力が可変である、請求項5に記載のタイヤの製造システム。
【請求項7】
前記RFIDリーダーは、前記生タイヤが有するビードコアよりもタイヤ径方向外側に配置される、請求項5または6に記載のタイヤの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグが埋設されるタイヤの製造方法および製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RFIDタグを埋設したタイヤが知られている。このようなタイヤは、タイヤに埋設されたRFIDタグと、外部機器とが通信を行うことにより、例えばタイヤに関する製造管理等を行うことができる(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タイヤ内のRFIDタグを回収する要望が起こる場合がある。例えば、RFIDタグが通信不能となり故障したと判断された場合、RFIDタグをタイヤ内から回収してRFIDタグ内からICチップを取り出し、そのICチップ内の情報を入手しようとする場合がある。その場合、タイヤ内のRFIDタグの位置が把握できていれば速やかにRFIDタグをタイヤ内から取り出すことができる。例えば、X線画像からタイヤ内でのRFIDタグの位置を特定することもできるが、その場合は手間がかかる。
【0005】
そこで本発明は、タイヤ内のRFIDタグの位置を容易に把握できるタイヤの製造方法および製造システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタイヤの製造方法は、RFIDタグが埋設された生タイヤを成型する生タイヤ成型工程と、前記RFIDタグのタイヤ周方向位置をRFIDリーダーにより検出するタグ位置検出工程と、所定のマークを成型するマーク型を有する加硫金型の内部に、前記生タイヤを、前記タグ位置検出工程で検出された前記RFIDタグのタイヤ周方向位置と前記マーク型とがタイヤ周方向で対応する状態に配置する配置工程と、前記生タイヤを前記加硫金型により加硫する加硫工程と、を備える。
【0007】
本発明のタイヤの製造システムは、RFIDタグが埋設された生タイヤが設置される設置台と、RFIDリーダーと、前記設置台と前記RFIDリーダーとを、前記生タイヤの軸回りに相対回転可能に支持する回転機構と、所定のマークを成型するマーク型を有し、前記生タイヤを加硫する加硫金型と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記回転機構を作動させるとともに、前記RFIDリーダーにより前記RFIDタグのタイヤ周方向位置を検出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タイヤ内のRFIDタグの位置を容易に把握できるタイヤの製造方法および製造システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る製造方法によって製造されるタイヤの表示面側の側面図である。
【
図2】上記タイヤのタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
【
図3】実施形態に係るRFIDタグを示す平面図である。
【
図4】実施形態に係る製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態に係る製造方法のタグ位置検出工程を示すフローチャートである。
【
図6】上記タグ位置検出工程を実施するための実施形態に係る製造システムを示すブロック図である。
【
図7】上記製造システムが備える設置台およびRFIDリーダーを模式的に示す斜視図である。
【
図8A】製造システムによりRFIDタグの周方向位置を検出するにあたり回転角度位置の位相差を説明する図であって、生タイヤが右回転して第1の回転角度位置(A)を検出する状態を示す図である。
【
図8B】製造システムによりRFIDタグの周方向位置を検出するにあたり回転角度位置の位相差を説明する図であって、生タイヤが左回転して第2の回転角度位置(B)を検出する状態を示す図である。
【
図9】加硫工程において生タイヤが加硫金型内に配置される状態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係るRFIDタグ60が埋設されたタイヤ1の側面図である。
図2は、タイヤ1のタイヤ幅方向の半断面図である。タイヤ1は、図示しないリムに装着されてその内腔に空気等による内圧が充填される空気入りタイヤである。実施形態のタイヤ1は、乗用車用のタイヤである。なお、実施形態のタイヤの構成は、ライトトラック、トラック、バス等の各種車両用のタイヤにも適用可能である。実施形態は、タイヤ1の製造方法および製造システムに関する。
【0011】
図1に示すように、実施形態のRFIDタグ60は、タイヤ1のサイドウォール13内の所定位置に埋設されている。
図1のGは、
図1の紙面表裏方向に延びるタイヤ1の回転中心である回転軸線を示している。
図1には、タイヤ1の周方向を矢印Rで示している。
図1は、タイヤ1が車両に装着された状態で外側に配置される表示面2側の側面である。表示面2には、タイヤ1に関する各種情報が刻印や印刷等によって表示される。タイヤ1の表示面2の所定位置には、マークMが刻印により表示されている。このマークMは、RFIDタグ60の位置を示す目印である。なお、実施形態のマークMは星型形状であるが、マークMとしては、タイヤ1のブランドを示すロゴマーク等であってもよく、後述するタイヤ情報等であってもよい。その場合、RFIDタグ60の周方向での位置を示す目印としても認識される。
【0012】
図2により、タイヤ1の内部構造と合わせてRFIDタグ60の埋設位置を説明する。
図2は、
図1に示した回転軸線Gの延びる方向で左右対称の構造を有するタイヤ1の右半分側であって、表示面2側の半断面を示している。
図2の断面図は、タイヤ1を図示せぬ規定リムに装着し、かつ、規定内圧を充填した無負荷状態でのタイヤ1の状態を示している。
【0013】
図2中、符号S1は、回転軸線Gに直交するタイヤ赤道面である。
図2には、本明細書でいうタイヤ幅方向、タイヤ径方向を、それぞれ矢印X、Yで示している。タイヤ幅方向(矢印X方向)とは、回転軸線Gに平行な方向であり、
図2の断面図における紙面左右方向である。タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、
図2においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、
図2においては、紙面右側である。タイヤ径方向(矢印Y方向)とは、回転軸線Gに垂直な方向であり、
図2における紙面上下方向である。
図1には、タイヤ径方向Yを示している。タイヤ径方向外側とは、回転軸線Gから離れる方向であり、
図2においては紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、回転軸線Gに近づく方向であり、
図2においては紙面下側である。
【0014】
タイヤ1は、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード11と、路面との接地面を形成するトレッド12と、一対のビード11とトレッド12との間に延びる一対のサイドウォール13と、を備える。
【0015】
ビード11は、ビードコア21と、ビードフィラー22と、を備える。ビードコア21は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状の部材であり、タイヤ1をリムに固定する役目を果たす。ビードフィラー22は、ビードコア21からタイヤ径方向外側に延出する先端先細り形状の部材である。ビードフィラー22は、ビード11の周辺部の剛性を高めるために周囲のゴム部材よりもモジュラスの高いゴムにより構成される。
【0016】
トレッド12は、無端状のベルト26およびキャッププライ27と、トレッドゴム28と、を備える。ベルト26は、トレッド12を補強する部材である。実施形態のベルト26は、内側ベルト261と、内側ベルト261のタイヤ径方向外側に配置された外側ベルト262と、を備えた二層構造である。内側ベルト261および外側ベルト262は、いずれも複数のスチールコード等のベルトコードがゴムで覆われた構造を有する。キャッププライ27は、ベルト26とともにトレッド12を補強する部材であり、ベルト26をタイヤ外表面側から覆っている。キャッププライ27は、例えば、ポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有する。トレッドゴム28は、キャッププライ27のタイヤ径方向外側に設けられている。トレッドゴム28の外表面には図示しないトレッドパターンが設けられており、この外表面の大部分が、路面と接触する接地面となる。
【0017】
サイドウォール13は、タイヤ1の外壁面を構成するサイドウォールゴム30を含む。サイドウォールゴム30は、タイヤ1がクッション作用をする際に最も撓む部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムで構成される。上述した表示面2は、
図2に示すサイドウォール13を含むタイヤ1の側面で構成される。
【0018】
タイヤ1の内部には、タイヤ1の骨格となるプライを構成するカーカスプライ23が埋設されている。カーカスプライ23は、一対のビードコア21の間を、一対のサイドウォール13およびトレッド12を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。カーカスプライ23は、ビード11間に延在するプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返されたプライ折り返し部25と、を備える。プライ折り返し部25は、プライ本体24に重ね合わされている。カーカスプライ23は、タイヤ幅方向に延びる複数のプライコードがゴムにより被覆された構成を有する。そのプライコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。上述したベルト26は、カーカスプライ23のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0019】
ビード11のビードコア21周りにおけるカーカスプライ23のタイヤ径方向内側には、チェーハー31が配置されている。チェーハー31は、カーカスプライ23のタイヤ径方向内側の端部を囲む態様で設けられている。チェーハー31のタイヤ幅方向外側には、サイドウォールゴム30のタイヤ径方向内側に連なるリムストリップゴム32が配置されている。
【0020】
ビード11、トレッド12およびサイドウォール13において、カーカスプライ23のタイヤ内腔側には、タイヤ1の内壁面を構成するゴム層としてのインナーライナー29が設けられている。インナーライナー29は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。上述したカーカスプライ23は、インナーライナー29のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0021】
タイヤ1には、RFIDタグ60が埋設されている。
図2に示すように、RFIDタグ60は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aから僅かにタイヤ径方向外側寄りの位置に配置されている。RFIDタグ60は、カーカスプライ23のプライ本体24とプライ折り返し部25との間に挟まれて保持されている。RFIDタグ60は、表示面2側のサイドウォール13に配置されている。なお、RFIDタグ60の埋設位置はサイドウォール13に限らず、トレッド12等、他の位置に埋設されてもよい。
【0022】
上述したマークMは、
図1に示すようにビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりもタイヤ径方向外側に配置されている。RFIDタグ60は、マークMよりも僅かにタイヤ径方向内側に配置されている。RFIDタグ60は、タイヤ径方向で、マークMと、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aとの間に配置されている。すなわち、表示面2を見て、マークMのタイヤ径方向内側の近傍にRFIDタグ60が配置されており、マークMがRFIDタグ60の位置を示す目印となっている。
【0023】
図3は、RFIDタグ60の平面図である。
図3に示すように、RFIDタグ60は、短い帯状の形状を有するシート状に形成されている。実施形態のRFIDタグ60は、ゴムシートからなる基材61内に、記憶部を備えるICチップからなるRFIDチップ62と、外部機器と通信を行うための複数のアンテナ63とが収容されたパッシブ型のトランスポンダである。なお、
図3はRFIDタグ60の構造の一例を示すものであり、RFIDタグ60としてはこの構造に限定されない。また、RFIDタグ60の形状や寸法も限定はされないが、例えば帯状の場合、長さが20mm以上60mm以下程度、幅が5mm以上20mm以下程度、厚みが1mm程度のものが用いられる。
【0024】
以上の構成を有するタイヤ1は、以下に説明する実施形態に係る製造方法および製造システムによって好適に製造される。
【0025】
図4は、実施形態に係る製造方法を示すフローチャートである。
図4に示すように、タイヤ1の製造方法としては、まず、RFIDタグ60が埋設された生タイヤを製造する生タイヤ成型工程が行われる(ステップS1)。なお、生タイヤとは、
図1および
図2で示したタイヤ1を構成するゴム部品を含む各部品を所定の成型機で貼り合わせたタイヤ1の原形品であり、ゴムが加硫される前の状態のものをいう。
【0026】
次に、タグ位置検出工程で、生タイヤ内のRFIDタグ60のタイヤ周方向位置であるタグ位置を検出する(ステップS2)。このタグ位置検出工程は、RFIDタグ60と通信してRFIDタグ60内の情報を読み込むことができるRFIDリーダーが用いられる。次に、配置工程が行われる(ステップS3)。配置工程では、マークMを成型するマーク型を有する加硫金型の内部に、生タイヤが配置される。このとき、タグ位置検出工程で検出されたRFIDタグ60のタイヤ周方向位置と加硫金型のマーク型とが、タイヤ周方向で対応する状態に配置される。次に、RFIDタグ60が埋設された生タイヤを加硫金型内に収容し、その生タイヤを加硫金型により加硫する(ステップS4)。加硫金型の内面には、マーク型の他に、上述したトレッド12のトレッドパターンを成型する型や表示面2のタイヤ情報を成型する型等が形成されている。タイヤ情報としては、タイヤ1の製造工場コード、タイヤ1のサイズコード、タイヤ1の商品コード、タイヤ1の製造時期を示すセリアル番号、メーカー名等が挙げられる。
【0027】
図5は、タグ位置検出工程を示すフローチャートである。
図6は、このタグ位置検出工程を実施するための製造システム70のハードウェアを示すブロック図である。
図6に示すように、製造システム70は、設置台71と、RFIDリーダー72と、制御部73と、を備える。
【0028】
図7は、設置台71およびRFIDリーダー72の一例を模式的に示している。
図7に示すように、設置台71は、垂直方向に延びる回転軸を中心に水平回転可能に設置される円盤状の回転台である。設置台71の上面に、表示面2を上に向けられて横置きとされた生タイヤ1Nが同軸に載置される。設置台71は、モータ等の回転機構71aによって右回転・左回転の双方向に回転駆動される。設置台71の回転角度すなわち生タイヤ1Nの回転角度は、例えばロータリーエンコーダ等の回転角度検出機によって検出され、制御部73に入力される。
【0029】
RFIDリーダー72は、設置台71の周囲に配置される支持台75に支持される。支持台75に支持されるRFIDリーダー72の通信方向は、設置台71上の生タイヤ1Nの表示面2に向いている。RFIDリーダー72は、タイヤ1内のRFIDタグ60と通信し、RFIDタグ60に入力されている各種情報およびID等を読み込む。RFIDリーダー72は、RFIDタグ60を検出する信号の出力が可変であることが好ましい。また、RFIDリーダー72は、設置台71上に載置された生タイヤ1Nが有するビードコア21よりもタイヤ径方向外側に配置されることが好ましく、これを可能とするために、支持台75はタイヤ径方向すなわち設置台71の径方向に沿って移動可能であると好ましい。RFIDリーダー72としては、RFIDタグ60に情報を書き込むライター機能を有するものであってもよい。
【0030】
制御部73は、設置台71の回転開始・回転停止の制御および右回転・左回転の回転方向の制御を行う。制御部73には、設置台71の回転角度が、タイヤ1の回転角度として逐一入力される。また、制御部73には、RFIDリーダー72とRFIDタグ60との通信状況が入力される。設置台71が1回転する間のある回転角度で、RFIDリーダー72はRFIDタグ60と通信してRFIDタグ60内の情報を読み込む。制御部73は、RFIDリーダー72がRFIDタグ60と通信したときの設置台71の回転角度を、RFIDタグ60を検出したときの回転角度位置として記録する。さらに制御部73は、後述するように、設置台71を右回転させたときにRFIDタグ60を検出した回転角度位置と、設置台71を左回転させたときにRFIDタグ60を検出した回転角度位置との差である位相差を判定し、その判定結果に応じて設置台71の回転制御を行う。
【0031】
製造システム70を用いたタグ位置検出工程を、
図5により説明する。はじめに、生タイヤ1Nが設置台71の上面に同軸にセットされる(ステップS11)。次いで、制御部73により、ステップS12からステップS19まで設置台71およびRFIDリーダー72が制御される。ステップS12では、設置台71が1回、右回転させられ、その間にRFIDリーダー72がRFIDタグ60と通信してRFIDタグ60内のタイヤ情報が読み込まれる。ステップS13で、設置台71が右回転する間に、RFIDタグ60からの信号を受信して検出したときの設置台71の第1の回転角度位置(A)が記録される。次に、ステップS14では、設置台71が最初とは逆方向の左方向に1回、回転させられ、その間にRFIDリーダー72がRFIDタグ60と通信してRFIDタグ60内のタイヤ情報が読み込まれる。ステップS15で、設置台71が左回転する間に、RFIDタグ60からの信号を受信して検出したときの設置台71の第2の回転角度位置(B)が記録される。なお、制御部73は、RFIDタグ60から受信する信号の強度が最も高いときの回転角度を、RFIDタグ60の検出位置と判定することが好ましい。
【0032】
ステップS12の設置台71を右回転させる工程は、本開示におけるRFIDタグの第1のタイヤ周方向位置を検出する第1の回転工程であり、第1の回転角度位置(A)が、その第1のタイヤ周方向位置である。また、ステップS15の設置台71を左回転させる工程は、本開示におけるRFIDタグの第2のタイヤ周方向位置を検出する第2の回転工程であり、第2の回転角度位置(B)が、その第2のタイヤ周方向位置である。
【0033】
次に、RFIDタグ60の、右回転時の第1の回転角度位置(A)と左回転時の第2の回転角度位置(B)との角度の差である位相差が確認され(ステップS16)、その位相差が規定された角度以下であるか否かが判断される(ステップS17)。位相差の規定角度は、例えば15°とされる。ステップS17で第1の回転角度位置(A)と第2の回転角度位置(B)との位相差が規定角度を超えていると判断された場合には、ステップS18に移ってRFIDリーダー72の出力が低減され、この後、ステップS12に戻る。出力が低減されたRFIDリーダー72によれば、ステップS12およびステップS14においてRFIDタグ60を検出できる角度範囲が狭くなり、RFIDタグ60をピンポイントに検出しやすくなる。これにより第1の回転角度位置(A)と第2の回転角度位置(B)との位相差を規定角度以内に収めることができる。
【0034】
ステップS17で第1の回転角度位置(A)と第2の回転角度位置(B)との位相差が規定角度以下であると判断された場合には、ステップS19に進み、第1の回転角度位置(A)と第2の回転角度位置(B)との間の中心、すなわち真ん中の角度が、RFIDタグ60の設定角度位置と決定される。この設定角度位置は、加硫金型内に生タイヤ1Nを収容する際に、加硫金型に設けられたマークMを成型するマーク型の周方向位置に対応する位置となる。
【0035】
最後に、上記のようにして決定された規定角度位置と、加硫金型のマーク型との周方向位置を合わせて、生タイヤ1Nを加硫金型に収容して配置する(ステップS20)。ここでのステップS20は、
図4のステップS3に相当する。
【0036】
図8A、
図8Bは、上述の位相差を具体的に説明する図であり、設置台71、設置台71上の生タイヤ1N、RFIDリーダー72を模式的に示す平面図である。例えば、設置台71の回転角度(0°~360°、ただし0°と360°は同じ角度位置であって0°とされる)は、制御部73に逐一認識される。ここで、
図8Aに示すように、設置台71が右回転する途中、回転角度180°でRFIDリーダー72によりRFIDタグ60が検出されたとする(第1の回転角度位置(A)は180°)。次に、
図8Bに示すように、設置台71が左回転する途中、回転角度190°でRFIDリーダー72によりRFIDタグ60が検出されたとする(第2の回転角度位置(B)は190°)。したがってこの場合の位相差は10°で規定角度以内であり、規定角度位置は、180°と190°との間の真ん中の角度である185°となる。
【0037】
図9は、生タイヤ1Nが加硫金型80に収容される状態を模式的に示している。加硫金型80は、トレッド12を成型する複数のセクター81と、サイドウォール13等の側面を成型する第1側面プレート82および第2側面プレート83と、を備える。表示面2は,第1側面プレート82により成型される。第1側面プレート82は、マークMを成型するマーク型82aを内面に有する。
図9に示すように、生タイヤ1Nは、RFIDタグ60の周方向位置として決定された規定角度位置Pと、第1側面プレート82のマーク型82aとの周方向位置を対応させて、加硫金型80内に配置される。そして加硫金型80は型締めされ、所定の加硫条件で加熱・加圧されて加硫されることにより、生タイヤ1Nは加硫され、
図1および
図2に示したタイヤ1に製造される。
【0038】
このようにして製造されたタイヤ1の表示面2には、マーク型82aにより、
図1に示したようにマークMが刻印により成型される。生タイヤ1Nを加硫金型80内に配置する際、RFIDタグ60の周方向位置とされた規定角度位置Pをマーク型82aに対応させることにより、マークMが目印となって、マークMの近傍にRFIDタグ60が埋設されていると判断することができる。すなわち、表示面2を見ることにより、RFIDタグ60が埋設されている位置を容易に把握することができる。
【0039】
RFIDタグ60が埋設されたタイヤ1は、車両に装着されて使用される。車両の走行に伴い、例えばパンク、リトレッド等の変更事項がタイヤ1に生じた場合、その都度、その変更事項がRFIDタグ60に記録されることが好ましい。
【0040】
なお、上記実施形態では、外観からタイヤ周方向におけるRFIDタグ60の位置を把握できるようにしているが、タイヤ径方向におけるRFIDタグ60の埋設位置を予め把握しておくことにより、より高精度でRFIDタグ60の位置を特定することができる。例えば、タイヤ1の設計段階でRFIDタグ60のタイヤ径方向位置を設定し、それに対応して加硫金型80の第1側面プレート82にマーク型82aを配置する。これにより、加硫後のタイヤ1の表示面2に成型されたマークMは、タイヤ周方向およびタイヤ径方向でのRFIDタグ60の位置を高精度で示すことになり、ピンポイントに近い状態でRFIDタグ60の位置を外観から把握することができる。
【0041】
以上のように実施形態の製造方法により製造されるタイヤ1によれば、RFIDタグ60が通信不能になった場合でも、表示面2のマークMの位置からその位置を把握することができる。これにより、必要に応じてタイヤ1内からRFIDタグ60を回収し、RFIDチップ62内に保存されている情報を入手することができる。タイヤ1内のRFIDタグ60が通信不能で埋設位置が不明な事態になった場合、例えば、X線を用いた画像検査によって埋設位置は検出可能である。しかしその場合には設備が大がかりでコストもかかる上、そのような設備を備える場所にタイヤ1を輸送して行う場合もあるため、手間とコストが大幅に増大することが考えられる。また、埋設位置が不明のまま、RFIDタグ60が発見されるまでタイヤ1を解体すれば回収は可能であるが、時間がかかりきわめて効率が悪い。しかしながら実施形態の製造方法によってタイヤを製造すれば、容易かつ迅速にRFIDタグ60の位置を把握することができる。
【0042】
上記実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0043】
(1)実施形態に係るタイヤの製造方法は、RFIDタグ60が埋設された生タイヤ1Nを成型する生タイヤ成型工程と、RFIDタグ60のタイヤ周方向位置をRFIDリーダー72により検出するタグ位置検出工程と、所定のマークMを成型するマーク型82aを有する加硫金型80の内部に、生タイヤ1Nを、タグ位置検出工程で検出されたRFIDタグ60のタイヤ周方向位置とマーク型82aとがタイヤ周方向で対応する状態に配置する配置工程と、生タイヤ1Nを加硫金型80により加硫する加硫工程と、を備える。
【0044】
これにより、タイヤ1内のRFIDタグ60の位置を容易に把握可能なタイヤを製造することができる。例えばRFIDタグ60が通信不能となった場合には、通常のようにハンディタイプのRFIDリーダーをタイヤ1に近付け、その通信状態からRFIDタグ60の位置を特定するといったことができなくなる。その場合、X線を用いた画像検査等の方法でRFIDタグ60の位置を検出可能ではあるが、その場合には手間とコストがかかる。これに対し実施形態の製造方法により製造されたタイヤ1によれば、表示面2に成型されたマークMを目印とすることにより、RFIDタグ60の埋設位置を容易かつ迅速に把握することができる。また、X線を用いた画像検査よりもコストはかからず、簡素な製造方法でRFIDタグ60の埋設位置を把握することができる。埋設位置が把握されたRFIDタグ60は、タイヤ1から速やかに取り出して回収することができる。そのRFIDタグ60からRFIDチップ62を回収して通電することによりID情報を読み取ることも可能であり、その場合にはタイヤ1のトレーサビリティを担保することができる。
【0045】
(2)実施形態に係るタイヤの製造方法においては、タグ位置検出工程は、生タイヤ1NをRFIDリーダー72に対して軸回りに相対回転可能に設置した状態で、生タイヤ1Nを、RFIDリーダー72に対して軸回りに少なくとも1回、相対回転させ、その回転途中においてRFIDリーダー72によりRFIDタグ60の第1のタイヤ周方向位置である第1の回転角度位置(A)を検出する第1の回転工程(右回転工程)と、生タイヤ1Nを、RFIDリーダー72に対して軸回りに少なくとも1回、右回転工程のときと逆方向の左方向に回転させ、その回転途中においてRFIDリーダー72によりRFIDタグ60の第2のタイヤ周方向位置である第2の回転角度位置(B)を検出する第2の回転工程(左回転工程)と、を含むことが好ましい。
【0046】
これにより、タグ位置検出工程において、生タイヤ1Nに埋設されているRFIDタグ60のタイヤ周方向位置を容易かつ正確に検出することができる。
【0047】
(3)実施形態に係るタイヤの製造方法においては、第1のタイヤ周方向位置と、第2のタイヤ周方向位置との差が規定値以下である場合に、配置工程に移行することが好ましい。
【0048】
これにより、タグ位置検出工程において、生タイヤ1Nに埋設されているRFIDタグ60のタイヤ周方向位置を容易かつ正確に検出することができる。
【0049】
(4)実施形態に係るタイヤの製造方法においては、生タイヤ1N内におけるRFIDタグ60の、第1のタイヤ周方向位置と第2のタイヤ周方向位置との差が規定値(規定角度)を超えた場合、RFIDタグ60を検出するRFIDリーダー72の信号の出力を低減することにより、第1のタイヤ周方向位置と第2のタイヤ周方向位置との差を規定値以下に収めることが好ましい。
【0050】
これにより、タグ位置検出工程において、生タイヤ1Nに埋設されているRFIDタグ60のタイヤ周方向位置を容易かつ正確に検出することができる。
【0051】
(5)実施形態に係るタイヤの製造システムは、RFIDタグ60が埋設された生タイヤ1Nが設置される設置台71と、RFIDリーダー72と、設置台71とRFIDリーダー72とを、生タイヤ1Nの軸回りに相対回転可能に支持する回転機構71aと、生タイヤ1Nを加硫する加硫金型80と、制御部73と、を備え、制御部73は、回転機構71aを作動させるとともに、RFIDリーダー72によりRFIDタグ60のタイヤ周方向位置である第1の回転角度位置(A)および第2の回転角度位置(B)を検出し、加硫金型80は、検出されたRFIDタグ60のタイヤ周方向位置と対応する位置に所定のマークを成型可能なマーク型を有する。
【0052】
これにより、埋設されているRFIDタグ60のタイヤ周方向位置を容易かつ正確に検出できるタイヤを製造可能な製造システムを提供することができる。
【0053】
(6)実施形態に係るタイヤの製造システムにおいては、RFIDリーダー72は、RFIDタグ60を検出する信号の出力が可変であることが好ましい。
【0054】
これにより、生タイヤ1Nに埋設されているRFIDタグ60のタイヤ周方向位置を容易かつ正確に検出することができる。
【0055】
(7)実施形態に係るタイヤの製造システムにおいては、RFIDリーダー72は、生タイヤ1Nのタイヤ径方向において、ビードコア21よりもタイヤ径方向の外側に配置されることが好ましい。
【0056】
ビードコア21は、上述したように金属製のビードワイヤを芯としているため、その金属の影響を受けてRFIDタグ60とRFIDリーダー72との通信状況に不具合が生じる可能性がある。しかし、RFIDリーダー72がビードコア21よりもタイヤ径方向外側に配置されればそのような悪影響が起こりにくくなり、RFIDタグ60の正確な埋設位置を把握しやすくなる。
【0057】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【0058】
例えば、実施形態の製造システム70およびタグ位置検出工程では、生タイヤ1Nを回転させ、固定したRFIDリーダー72により生タイヤ1N内のRFIDタグ60の周方向位置を検出しているが、生タイヤ1NとRFIDリーダー72とを生タイヤ1Nの軸回りに相対回転可能に設置してよい。すなわち、生タイヤ1Nが載置される設置台71は回転しない固定台としてRFIDリーダー72を回転させてもよく、生タイヤ1NおよびRFIDリーダー72の双方を回転可能に設けてもよい。生タイヤ1NおよびRFIDリーダー72の双方を回転可能に設けると、検出時間を短縮でき、製造効率が向上する。
【0059】
タイヤ1に関する直径等のサイズ情報を入手しておき、その情報に応じて、RFIDリーダー72の位置をRFIDタグ60の位置を検出する最適な位置に調整できるようにしてよい。
【符号の説明】
【0060】
1 タイヤ
1N 生タイヤ
21 ビードコア
60 RFIDタグ
70 製造システム
71 設置台
71a 回転機構
72 RFIDリーダー
73 制御部
80 加硫金型
82a マーク型
M マーク