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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087428
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】タイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/20 20060101AFI20240624BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20240624BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B29D30/20
B60C19/00 G
G06K19/077 232
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202252
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】細見 和正
【テーマコード(参考)】
3D131
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
3D131LA20
3D131LA28
4F215AH20
4F215AP06
4F215VA02
4F215VD22
4F215VK02
4F215VL11
4F215VQ02
4F501TA02
4F501TC21
4F501TC24
4F501TD03
4F501TE10
4F501TQ02
4F501TR06
4F501TV00
(57)【要約】
【課題】タイヤ内のRFIDタグの位置を容易に把握できるタイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】成型ドラム70上に、インナーライナージョイント部29aを有する円環状のインナーライナー29を成型し、成型されたインナーライナー29の外周面に、複数のタイヤ構成部材を巻き付けて成型するタイヤの製造方法において、成型ドラム70上でのインナーライナージョイント部29aの周方向位置を識別する周方向位置識別工程と、インナーライナージョイント部29aの周方向位置に対応する位置にRFIDタグ60を配置するRFIDタグ配置工程と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型ドラム上に、インナーライナージョイント部を有する円環状のインナーライナーを成型し、
成型された前記インナーライナーの外周面に、複数のタイヤ構成部材を巻き付けて成型するタイヤの製造方法において、
前記成型ドラム上での前記インナーライナージョイント部の周方向位置を識別する周方向位置識別工程と、
前記インナーライナージョイント部の周方向位置に対応する位置にRFIDタグを配置するRFIDタグ配置工程と、を備える、タイヤの製造方法。
【請求項2】
前記インナーライナージョイント部に対応する位置は、タイヤの回転軸を回転基準とした場合における前記インナーライナージョイント部の回転位置を0°としたとき、-20°以上+20°以下の範囲である、請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記インナーライナージョイント部の周方向位置は、シーケンス情報により予め設定され、前記周方向位置識別工程においては、当該設定位置に基づいて前記周方向位置が識別される、請求項1または2に記載のタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記インナーライナージョイント部の周方向位置は、センサにより検出され、前記周方向位置識別工程においては、当該検出位置に基づいて前記周方向位置が識別される、請求項1または2に記載のタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記タイヤ構成部材としてビードを有し、予め当該ビードに前記RFIDタグが配置され、
前記成型ドラムの周方向における基準位置に前記RFIDタグが配置されるように、前記ビードが前記成型ドラムに対して仮配置され、
前記周方向位置識別工程では、前記インナーライナージョイント部が識別され、識別された当該インナーライナージョイント部が前記基準位置に配置され、
前記RFIDタグ配置工程では、前記ビードが、前記仮配置の状態から、前記RFIDタグが前記基準位置に保持されたまま前記インナーライナーの外周上に配置される、請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグが埋設されるタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RFIDタグを埋設したタイヤが知られている。このようなタイヤは、タイヤに埋設されたRFIDタグと、外部機器とが通信を行うことにより、例えばタイヤに関する製造管理等を行うことができる(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-71913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タイヤ内のRFIDタグを回収する要望が起こる場合がある。例えば、RFIDタグが通信不能となり故障したと判断された場合、RFIDタグをタイヤ内から回収してRFIDタグ内からICチップを取り出し、そのICチップ内の情報を入手しようとする場合がある。その場合、タイヤ内のRFIDタグの位置が把握できていれば速やかにRFIDタグをタイヤ内から取り出すことができる。例えば、X線画像からタイヤ内でのRFIDタグの位置を特定することもできるが、その場合は手間がかかる。
【0005】
そこで本発明は、タイヤ内のRFIDタグの位置を容易に把握できるタイヤの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタイヤの製造方法は、成型ドラム上に、インナーライナージョイント部を有する円環状のインナーライナーを成型し、成型された前記インナーライナーの外周面に、複数のタイヤ構成部材を巻き付けて成型するタイヤの製造方法において、前記成型ドラム上での前記インナーライナージョイント部の周方向位置を識別する周方向位置識別工程と、前記インナーライナージョイント部の周方向位置に対応する位置にRFIDタグを配置するRFIDタグ配置工程と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、タイヤ内のRFIDタグの位置を容易に把握できるタイヤの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る製造方法によって製造されるタイヤの表示面側の側面図である。
図2】上記タイヤのタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
図3】実施形態に係るRFIDタグを示す平面図である。
図4】実施形態に係る製造方法を示すフローチャートである。
図5A】成型ドラムにインナーライナーを巻き付けて成型する状態を模式的に示す斜視図であって、インナーライナージョイント部が成型ドラムの軸方向と平行に延びているインナーライナーを示している。
図5B】成型ドラムにインナーライナーを巻き付けて成型する状態を模式的に示す斜視図であって、インナーライナージョイント部が成型ドラムの軸方向に対して斜めに延びているインナーライナーを示している。
図6A】RFIDタグが配置されるインナーライナージョイント部に対応する位置を説明する図であって、RFIDタグがインナーライナージョイント部上に配置されている状態を模式的に示す側面図である。
図6B】RFIDタグが配置されるインナーライナージョイント部に対応する位置を説明する図であって、RFIDタグがインナーライナージョイント部から+15°ずれている状態を模式的に示す側面図である。
図7】他の実施形態に係る製造方法を示すフローチャートである。
図8A】他の実施形態に係る製造方法において、成型ドラムにインナーライナーを巻き付けて成型する状態、および成型ドラムの両側にビードを仮配置する状態を模式的に示す斜視図である。
図8B】他の実施形態に係る製造方法において、成型ドラム上のインナーライナーに一対のビードを配置する状態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。図1は、実施形態に係るRFIDタグ60が埋設されたタイヤ1の側面図である。図2は、タイヤ1のタイヤ幅方向の半断面図である。タイヤ1は、図示しないリムに装着されてその内腔に空気等による内圧が充填される空気入りタイヤである。実施形態のタイヤ1は、乗用車用のタイヤである。なお、実施形態のタイヤの構成は、ライトトラック、トラック、バス等の各種車両用のタイヤにも適用可能である。実施形態は、タイヤ1の製造方法に関する。
【0010】
図1に示すように、実施形態のRFIDタグ60は、タイヤ1のサイドウォール13内の所定位置に埋設されている。図1のGは、図1の紙面表裏方向に延びるタイヤ1の回転中心である回転軸線を示している。図1には、タイヤ1の周方向を矢印Rで示している。図1は、タイヤ1が車両に装着された状態で外側に配置される表示面2側の側面である。表示面2には、タイヤ1に関する各種情報が刻印や印刷等によって表示される。
【0011】
図2により、タイヤ1の内部構造と合わせてRFIDタグ60の埋設位置を説明する。図2は、図1に示した回転軸線Gの延びる方向で左右対称の構造を有するタイヤ1の右半分側であって、表示面2側の半断面を示している。図2の断面図は、タイヤ1を図示せぬ規定リムに装着し、かつ、規定内圧を充填した無負荷状態でのタイヤ1の状態を示している。
【0012】
図2中、符号S1は、回転軸線Gに直交するタイヤ赤道面である。図2には、本明細書でいうタイヤ幅方向、タイヤ径方向を、それぞれ矢印X、Yで示している。タイヤ幅方向(矢印X方向)とは、回転軸線Gに平行な方向であり、図2の断面図における紙面左右方向である。タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、図2においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、図2においては、紙面右側である。タイヤ径方向(矢印Y方向)とは、回転軸線Gに垂直な方向であり、図2における紙面上下方向である。図1には、タイヤ径方向Yを示している。タイヤ径方向外側とは、回転軸線Gから離れる方向であり、図2においては紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、回転軸線Gに近づく方向であり、図2においては紙面下側である。
【0013】
タイヤ1は、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード11と、路面との接地面を形成するトレッド12と、一対のビード11とトレッド12との間に延びる一対のサイドウォール13と、カーカスプライ23と、インナーライナー29と、を備える。ビード11、トレッド12、サイドウォール13およびカーカスプライ23は、本開示におけるタイヤ構成部材である。
【0014】
ビード11は、ビードコア21と、ビードフィラー22と、を備える。ビードコア21は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状の部材であり、タイヤ1をリムに固定する役目を果たす。ビードフィラー22は、ビードコア21からタイヤ径方向外側に延出する先端先細り形状の部材である。ビードフィラー22は、ビード11の周辺部の剛性を高めるために周囲のゴム部材よりもモジュラスの高いゴムにより構成される。
【0015】
トレッド12は、無端状のベルト26およびキャッププライ27と、トレッドゴム28と、を備える。ベルト26は、トレッド12を補強する部材である。実施形態のベルト26は、内側ベルト261と、内側ベルト261のタイヤ径方向外側に配置された外側ベルト262と、を備えた2層構造である。内側ベルト261および外側ベルト262は、いずれも複数のスチールコード等のベルトコードがゴムで覆われた構造を有する。キャッププライ27は、ベルト26とともにトレッド12を補強する部材であり、ベルト26をタイヤ外表面側から覆っている。キャッププライ27は、例えば、ポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有する。トレッドゴム28は、キャッププライ27のタイヤ径方向外側に設けられている。トレッドゴム28の外表面には図示しないトレッドパターンが設けられており、この外表面の大部分が、路面と接触する接地面となる。
【0016】
サイドウォール13は、タイヤ1の外壁面を構成するサイドウォールゴム30を含む。サイドウォールゴム30は、タイヤ1がクッション作用をする際に最も撓む部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムで構成される。上述した表示面2は、図2に示すサイドウォール13を含むタイヤ1の側面で構成される。
【0017】
タイヤ1の内部には、タイヤ1の骨格となるプライを構成するカーカスプライ23が埋設されている。カーカスプライ23は、一対のビードコア21の間を、一対のサイドウォール13およびトレッド12を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。カーカスプライ23は、ビード11間に延在するプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返されたプライ折り返し部25と、を備える。カーカスプライ23は、タイヤ幅方向に延びる複数のプライコードがゴムにより被覆された構成を有する。そのプライコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。上述したベルト26は、カーカスプライ23のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0018】
ビード11のビードコア21周りにおけるカーカスプライ23のタイヤ径方向内側には、チェーハー31が配置されている。チェーハー31は、カーカスプライ23のタイヤ径方向内側の端部を囲む態様で設けられている。チェーハー31のタイヤ幅方向外側には、サイドウォールゴム30のタイヤ径方向内側に連なるリムストリップゴム32が配置されている。
【0019】
ビード11、トレッド12およびサイドウォール13において、カーカスプライ23のタイヤ内腔側には、タイヤ1の内壁面を構成するゴム層としてのインナーライナー29が設けられている。インナーライナー29は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。上述したカーカスプライ23は、インナーライナー29のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0020】
図1に示すように、インナーライナー29は、インナーライナージョイント部29aを有する。インナーライナー29は、後述するように成型ドラムの外周面にインナーライナー素材を巻き付けて成型される。インナーライナージョイント部29aは、そのインナーライナー素材の端部どうしがタイヤ径方向に重ねてジョイントされるか、もしくは端部どうしが突き合わされてジョイントされる部分である。なお、本実施形態では、インナーライナージョイント部29aを、端部どうしが突き合わされた形態として図示している。インナーライナージョイント部29aは、タイヤ幅方向に沿ったラジアル方向に延びている。
【0021】
タイヤ1には、RFIDタグ60が埋設されている。図2に示すように、RFIDタグ60は、ビードフィラー22のタイヤ幅方向外側の面であって、ビードフィラー22のタイヤ径方向真ん中あたりに配置されている。RFIDタグ60は、ビードフィラー22のタイヤ幅方向外側の面とリムストリップゴム32との間に挟まれている。RFIDタグ60は、表示面2側のサイドウォール13に配置されている。なお、RFIDタグ60の埋設位置はサイドウォール13に限らず、トレッド12等、他の位置に埋設されてもよい。
【0022】
図3は、RFIDタグ60の平面図である。図3に示すように、RFIDタグ60は、短い帯状の形状を有するシート状に形成されている。実施形態のRFIDタグ60は、ゴムシートからなる基材61内に、記憶部を備えるICチップからなるRFIDチップ62と、外部機器と通信を行うための複数のアンテナ63とが収容されたパッシブ型のトランスポンダである。なお、図3はRFIDタグ60の構造の一例を示すものであり、RFIDタグ60としてはこの構造に限定されない。また、RFIDタグ60の形状や寸法も限定はされないが、例えば帯状の場合、長さが20mm以上60mm以下程度、幅が5mm以上20mm以下程度、厚みが1mm程度のものが用いられる。
【0023】
以上の構成を有するタイヤ1は、以下に説明する実施形態に係る製造方法によって好適に製造される。
【0024】
図4は、実施形態に係る製造方法を工程順に示すフローチャートである。図4のフローチャートは、タイヤ1を加硫する前の生タイヤを製造して加硫するまでの工程を示している。なお、生タイヤとは、図1および図2で示したタイヤ1を構成するゴム部品を含む各部品を所定の成型機で貼り合わせたタイヤ1の原形品であり、ゴムが加硫される前の状態のものをいう。
【0025】
図4に示すように、実施形態のタイヤ1の製造方法としては、まず、インナーライナー29を成型ドラムに円環状に巻き付けて成型する(ステップS1)。図5Aは、成型ドラム70にインナーライナー29を巻き付けて成型した状態を模式的に示している。インナーライナー29は、インナーライナー素材を成型ドラム70の外周面に1周巻き付けて成型される。インナーライナー29は、インナーライナー素材の端部どうしがジョイントされたインナーライナージョイント部29aを有する。インナーライナージョイント部29aは、を有する。図5Aに示すインナーライナージョイント部29aは、成型ドラム70の軸方向と平行に延びており、したがってこのインナーライナージョイント部29aは、タイヤ幅方向と平行に延びることになる。なお、図5Bに示すように、インナーライナージョイント部29aは、成型ドラム70の軸方向に対して斜めに延びる形態であってもよい。この場合のインナーライナージョイント部29aは、タイヤ幅方向に対して斜めに延びる。
【0026】
図4に戻ると、次いで、成型ドラム70上でのインナーライナージョイント部29aの周方向位置の情報を取得して識別する(ステップS2:周方向位置識別工程)。周方向位置の情報は、例えば、成型ドラム70の周方向の角度位置を示す位相情報である。インナーライナージョイント部29aの周方向位置の情報は、成型ドラム70上にインナーライナー29が成型された後、センサ等で検出することができる。インナーライナージョイント部29aの周方向位置の情報は、シーケンス情報により予め設定されたものであってもよく、その場合の識別タイミングは、ステップS2に限定されず、ステップS1の前であってもよい。
【0027】
次いで、カーカスプライ23をインナーライナー29上に巻き付ける(ステップS3)。次いで、一対のビード11をカーカスプライ23上の所定位置に配置する(ステップS4)。次いで、RFIDタグ60を、図2に示したようにビードフィラー22の表示面2側の面に相当する位置に貼り付けて配置する(ステップS5:RFIDタグ配置工程)。RFIDタグ60を貼り付けるタイヤ周方向位置は、ステップS2で取得し識別したインナーライナージョイント部29aの周方向位置に対応する位置とする。これにより、RFIDタグ60のタイヤ周方向位置は、インナーライナージョイント部29aの周方向位置と一致する。
【0028】
次いで、カーカスプライ23のプライ折り返し部25をビード11周りに巻き上げる(ステップS6)。次いで、カーカスプライ23上に、サイドウォールゴム30を貼り付け(ステップS7)、次いでトレッド12を貼り付ける(ステップS8)。これにより生タイヤが完成し、次いで、この生タイヤを加硫し(ステップS9)、タイヤ1を得る。
【0029】
このようにして製造されたタイヤ1は、表示面2側のサイドウォール13におけるインナーライナージョイント部29aに対応する位置にRFIDタグ60が配置されている。したがって、タイヤ1の内腔側を見てインナーライナージョイント部29aを確認することにより、RFIDタグ60の位置を容易に把握することができる。
【0030】
なお、図5Bに示したように、インナーライナージョイント部29aがタイヤ幅方向に対して斜めに延びる場合、RFIDタグ60は、インナーライナージョイント部29aにおける表示面2側の端部に対応する位置に埋設されることが望ましい。
【0031】
RFIDタグ60が埋設されたタイヤ1は、車両に装着されて使用される。車両の走行に伴い、例えばパンク、リトレッド等の変更事項がタイヤ1に生じた場合、その都度、その変更事項がRFIDタグ60に記録されることが好ましい。
【0032】
なお、実施形態でのタイヤ周方向におけるインナーライナージョイント部29aに対応する位置とは、成型ドラム70の回転軸、すなわち製造されるタイヤ1の回転軸を回転基準とした場合におけるインナーライナージョイント部29aの回転位置を0°としたとき、-20°以上+20°以下の範囲である。図6Aおよび図6Bのそれぞれは、インナーライナージョイント部29aに対するRFIDタグ60のタイヤ周方向位置を模式的に示す側面図である。図6Aは、RFIDタグ60の中心位置がインナーライナージョイント部29aに対して0°の位置に配置されている。図6Bは、RFIDタグ60がインナーライナージョイント部29aに対して、図6Aの0°の位置から右側に角度θ(+15°)の位置に配置されており、この場合でも、インナーライナージョイント部29aに対応する位置に配置されているとする。実施形態では、図6Bの位置からさらに右側に+5°の位置が最大の許容ずれ位置であり、例えば図6Bの+15°の位置から左側に5°移動した、0°の位置から+10°の位置でも、インナーライナージョイント部29aに対応する位置とする。また、図示は省略するが、図6Aの0°の位置から左側に-20°の位置までも、インナーライナージョイント部29aに対応する位置に配置されているとする。図6Aに示すように、RFIDタグ60がインナーライナージョイント部29a上に配置される場合には、RFIDタグ60の周方向位置の特定が最も容易になる。一方、図6Bに示すように、RFIDタグ60がインナーライナージョイント部29aからタイヤ周方向にややすれている場合には、インナーライナージョイント部29aへの応力集中によるRFIDタグ60の破損の可能性を低減することができる。
【0033】
なお、上記実施形態では、RFIDタグ60のタイヤ周方向位置を、インナーライナージョイント部29aを基準として把握できるようにしているが、タイヤ径方向におけるRFIDタグ60の埋設位置を予め把握しておくことにより、より高精度でRFIDタグ60の位置を特定することができる。例えば、タイヤ1の設計段階でRFIDタグ60のタイヤ径方向位置を設定し、それを予め把握しておくと、タイヤ周方向およびタイヤ径方向でのRFIDタグ60の位置を高精度で把握することができる。
【0034】
以上のように実施形態の製造方法により製造されるタイヤ1によれば、RFIDタグ60が通信不能になった場合でも、インナーライナージョイント部29aの位置からRFIDタグ60の位置を把握することができる。これにより、必要に応じてタイヤ1内からRFIDタグ60を回収し、RFIDチップ62内に保存されている情報を入手することができる。タイヤ1内のRFIDタグ60が通信不能で埋設位置が不明な事態になった場合、例えば、X線を用いた画像検査によって埋設位置は検出可能である。しかしその場合には設備が大がかりでコストもかかる上、そのような設備を備える場所にタイヤ1を輸送して行う場合もあるため、手間とコストが大幅に増大することが考えられる。また、埋設位置が不明のまま、RFIDタグ60が発見されるまでタイヤ1を解体すれば回収は可能であるが、時間がかかりきわめて効率が悪い。しかしながら実施形態の製造方法によってタイヤを製造すれば、容易かつ迅速にRFIDタグ60の位置を把握することができる。
【0035】
上記実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0036】
(1)実施形態に係るタイヤの製造方法は、成型ドラム70上に、インナーライナージョイント部29aを有する円環状のインナーライナー29を成型し、成型されたインナーライナー29の外周面に、複数のタイヤ構成部材を巻き付けて成型するタイヤの製造方法において、成型ドラム70上でのインナーライナージョイント部29aの周方向位置を識別する周方向位置識別工程と、インナーライナージョイント部29aの周方向位置に対応する位置にRFIDタグ60を配置するRFIDタグ配置工程と、を備える。
【0037】
これにより、RFIDタグ60の位置を容易に把握可能なタイヤの製造方法を提供することができる。例えばRFIDタグ60が通信不能となった場合には、通常のようにハンディタイプのRFIDリーダーをタイヤ1に近付け、その通信状態からRFIDタグ60の位置を特定するといったことができなくなる。その場合、X線を用いた画像検査等の方法でRFIDタグ60の位置を検出可能ではあるが、その場合には手間とコストがかかる。これに対し実施形態の製造方法により製造されたタイヤ1によれば、インナーライナージョイント部29aに対応するタイヤ周方向位置にRFIDタグ60が埋設されていることを知見していれば、タイヤ1の内腔を見てインナーライナージョイント部29aを目視で確認することにより、RFIDタグ60の埋設位置を容易かつ迅速に把握することができる。また、X線を用いた画像検査よりもコストはかからず、簡素な製造方法でRFIDタグ60の埋設位置を把握することができる。埋設位置が把握されたRFIDタグ60は、タイヤ1から速やかに取り出して回収することができる。そのRFIDタグ60からRFIDチップ62を回収して通電することによりID情報を読み取ることも可能であり、その場合にはタイヤ1のトレーサビリティを担保することができる。
【0038】
(2)実施形態に係るタイヤの製造方法においては、インナーライナージョイント部29aに対応する位置は、タイヤ1の回転軸を回転基準とした場合におけるインナーライナージョイント部29aの回転位置を0°としたとき、-20°以上+20°以下の範囲である。
【0039】
これにより、インナーライナージョイント部29aを確認することにより、RFIDタグ60のタイヤ周方向位置を把握することができる。
【0040】
(3)実施形態に係るタイヤの製造方法においては、インナーライナージョイント部29aの周方向位置は、シーケンス情報により予め設定され、周方向位置識別工程においては、当該設定位置に基づいてインナーライナージョイント部29aの周方向位置が識別されてよい。
【0041】
これにより、インナーライナージョイント部29aの周方向位置が予め正確に検出される。
【0042】
(4)実施形態に係るタイヤの製造方法においては、インナーライナージョイント部29aの周方向位置は、センサにより検出され、周方向位置識別工程においては、当該検出位置に基づいてインナーライナージョイント部29aの周方向位置が識別されてもよい。
【0043】
これにより、成型ドラム70上のインナーライナー29のインナーライナージョイント部29aの周方向位置を正確に検出することができる。
【0044】
図7は、他の実施形態に係るタイヤ1の製造方法を工程順に示すフローチャートを示している。図7に示す製造方法では、予め、一対のビード11のうちの、RFIDタグ60を配置する表示面2側のビード11のビードフィラー22に、RFIDタグ60を貼り付けて配置しておく。すなわち、一方のビード11をRFIDタグ付きビードとして用意しておく。
【0045】
図7に示すように、他の実施形態のタイヤ1の製造方法としては、まず、インナーライナー29を成型ドラムに巻き付けて成型する(ステップS11)。図8Aは、成型ドラム70にインナーライナー29を巻き付けて成型した状態を模式的に示している。次いで、カーカスプライ23をインナーライナー29上に巻き付ける(ステップS12)。次いで、図8Bに示すように、一対のビード11のそれぞれを成型ドラム70の軸方向両側に仮配置する。このとき、RFIDタグ60が予め配置されているビード11は、RFIDタグ60が、成型ドラム70の周方向における基準位置としての真上に配置されるように成型ドラム70に対して仮配置される(ステップS13)。次いで、RFIDタグ60の周方向位置を検知し(ステップS14)、真上にあるか否かが判定される(ステップS15)。そして、真上に配置されていないと判定された場合には、エラーと判断され(ステップS16)、ステップS13に戻る。ステップS15でビード11に配置されたRFIDタグ60が真上に配置されていると判定された場合には、インナーライナージョイント部29aが真上に配置されるように成型ドラム70を回転させる(ステップS17)。ここで、インナーライナージョイント部29aを真上に配置する工程が、インナーライナージョイント部29aの周方向位置を識別する周方向位置識別工程に相当する。これにより、インナーライナージョイント部29aとRFIDタグ60の双方が真上に配置され、RFIDタグ60のタイヤ周方向位置はインナーライナージョイント部29aの周方向位置と一致する。
【0046】
次いで、一対のビード11をカーカスプライ23上の所定位置に配置する(ステップS18)。次いで、プライ折り返し部25をビード11周りに巻き上げる(ステップS19)。次いで、カーカスプライ23上にサイドウォールゴム30を貼り付け(ステップS20)、次いでトレッド12を貼り付ける(ステップS21)。これにより生タイヤが完成し、次いで、この生タイヤを加硫し(ステップS22)、タイヤ1を得る。
【0047】
上記他の実施形態に係る製造方法によっても、表示面2側のサイドウォール13におけるインナーライナージョイント部29aに対応する位置にRFIDタグ60が配置されたタイヤ1が製造される。
【0048】
(5)他の実施形態に係る製造方法においては、タイヤ構成部材としてビード11を有し、予めビード11にRFIDタグ60が配置され、成型ドラム70の周方向における基準位置にRFIDタグ60が配置されるように、ビード11が成型ドラム70に対して仮配置され、周方向位置識別工程では、インナーライナージョイント部29aが識別され、識別されたインナーライナージョイント部29aが基準位置である真上に配置され、RFIDタグ配置工程では、ビード11が、仮配置の状態から、RFIDタグ60が基準位置(真上)に保持されたままインナーライナー29の外周上に配置される。
【0049】
これにより、RFIDタグ60のタイヤ周方向位置をインナーライナージョイント部29aに対応する位置に容易に配置することができる。
【0050】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 タイヤ
11 ビード(タイヤ構成部材)
12 トレッド(タイヤ構成部材)
13 サイドウォール(タイヤ構成部材)
23 カーカスプライ(タイヤ構成部材)
29 インナーライナー
29a インナーライナージョイント部
60 RFIDタグ
70 成型ドラム
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B