(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087432
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202256
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 敬介
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA35
5E316AA43
5E316BB02
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5E316GG15
5E316GG17
5E316HH03
5E316JJ02
5E316JJ03
(57)【要約】
【課題】配線基板における導体層の層数抑制と適正で低損失の信号の伝送、及び品質向上。
【解決手段】実施形態の配線基板1は、第1面21a及び第1面21aの反対面である第2面21bを有する第1絶縁層21と、第1絶縁層21の第1面21a側に形成されている第1導体層31と、を含んでいる。第1導体層31は、1以上の配線パターンを含む第1導体部31aと、第1導体部31aの厚さよりも大きな厚さを有していて1以上の配線パターンを含んでいる第2導体部31bと、を有し、第1導体部31aは第1信号配線パターン311を含み、第2導体部31bは、第1信号配線パターン311の厚さよりも大きな厚さを有する第2信号配線パターン312を含み、第1導体部31aにおける第1絶縁層21の第2面21b側と反対側の表面と、第2導体部31bにおける第1絶縁層21の第2面21b側と反対側の表面とが略面一である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び前記第1面の反対面である第2面を有する第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の前記第1面側に形成されている第1導体層と、
を含む配線基板であって、
前記第1導体層は、1以上の配線パターンを含む第1導体部と、前記第1導体部の厚さよりも大きな厚さを有していて1以上の配線パターンを含んでいる第2導体部と、を有し、
前記第1導体部は第1信号配線パターンを含み、
前記第2導体部は、前記第1信号配線パターンの厚さよりも大きな厚さを有する第2信号配線パターンを含み、
前記第1導体部における前記第1絶縁層の前記第2面側と反対側の表面と、前記第2導体部における前記第1絶縁層の前記第2面側と反対側の表面とが略面一である。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2信号配線パターンは、少なくとも部分的に前記第1絶縁層の中に埋まっている。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1導体層が前記第1絶縁層の中に埋まっていて、前記第1導体層における前記第1絶縁層の前記第1面側の表面が前記第1面に露出している。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1導体部の前記表面及び前記第2導体部の前記表面それぞれの算術平均粗さRaは、0.3μmより小さい。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、さらに、平面視において所定の経路で形成されていて前記第1絶縁層を貫通する溝を有し、
前記第2信号配線パターンは、前記溝を埋める導電体によって、又は、前記溝を埋める導電体及び前記第1絶縁層の前記第1面上に前記溝に沿って配置されている導電体によって構成されている。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、さらに第2絶縁層及び前記第2絶縁層の上に形成されている第2導体層を含んでおり、
前記第1絶縁層は、前記第2面を前記第2絶縁層に向けて前記第2絶縁層及び前記第2導体層の上に積層されており、
前記第2信号配線パターンは前記第2導体層に接している。
【請求項7】
請求項6記載の配線基板であって、
前記第2導体層は、前記第2信号配線パターンと平面視で重なる導体パターンを含み、
前記第2信号配線パターンは前記導体パターンと接している。
【請求項8】
請求項7記載の配線基板であって、前記第2信号配線パターンと前記導体パターンとによって単一の配線が構成されている。
【請求項9】
請求項8記載の配線基板であって、前記第1絶縁層の前記第1面及び前記第2面それぞれにおける前記単一の配線の幅は、前記第1面と前記第2面との中間部での幅よりも大きい。
【請求項10】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1絶縁層は、周波数1GHzにおいて、3.5以下の比誘電率、及び、0.005以下の誘電正接を有している。
【請求項11】
請求項1記載の配線基板であって、さらに、前記配線基板の使用時に半導体素子に覆われる部品領域を有し、
前記第2導体部は平面視で前記部品領域外に位置し、前記第1導体部は平面視で前記部品領域内に位置している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、大電流を流す厚膜配線パターンと信号データを伝送する微細配線パターンとが混在する第1導体層を含む配線基板が開示されている。微細配線パターンは、厚膜配線パターンの線幅よりも小さい線幅及び厚膜配線パターンの厚さよりも小さい厚さを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の配線基板では、信号を伝送する微細配線パターンは、厚膜配線パターンに比べて細い線幅を有する上に小さな厚さを有している。そのため、微細配線パターンの導体抵抗が大きく、十分な効率で信号が伝送され得ないことがある。また、微細配線パターンにおける特性インピーダンスの設定の自由度が低く、1つの導体層において所望の特性インピーダンスが得られないため高速信号が適正に伝送されないことがあると考えられる。また、厚膜配線パターンの一部がその上の樹脂絶縁層内に入り込んでいるため、この樹脂絶縁層の表面に起伏が生じ、配線基板の品質が影響を受けることがあると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、第1面及び前記第1面の反対面である第2面を有する第1絶縁層と、前記第1絶縁層の前記第1面側に形成されている第1導体層と、を含んでいる、そして、前記第1導体層は、1以上の配線パターンを含む第1導体部と、前記第1導体部の厚さよりも大きな厚さを有していて1以上の配線パターンを含んでいる第2導体部と、を有し、前記第1導体部は第1信号配線パターンを含み、前記第2導体部は、前記第1信号配線パターンの厚さよりも大きな厚さを有する第2信号配線パターンを含み、前記第1導体部における前記第1絶縁層の前記第2面側と反対側の表面と、前記第2導体部における前記第1絶縁層の前記第2面側と反対側の表面とが略面一である。
【0006】
本発明の実施形態によれば、少ない層数の導体層を含む配線基板において、所望の伝送特性を備えた配線による損失の少ない適正な信号伝送、及び安定した品質が実現されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
【
図3】
図1の配線基板の第2信号配線パターンで形成される配線の一例を示す斜視図。
【
図4】
図1の配線基板の各信号配線パターンの一例を部分的に示す平面図。
【
図5】
図1の配線基板における第2信号配線パターンの変形例を示す断面図。
【
図6】一実施形態の配線基板の変形例を示す断面図。
【
図8A】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図8B】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図8C】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図8D】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図8E】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図8F】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図8G】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図9A】一実施形態の配線基板の製造工程の他の例を示す断面図。
【
図9B】一実施形態の配線基板の製造工程の他の例を示す断面図。
【
図9C】一実施形態の配線基板の製造工程の他の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。
図1には、本実施形態の配線基板の一例である配線基板1の断面図が示されている。
図2には、
図1のII部の拡大図が示されている。なお、配線基板1は実施形態の配線基板の一例に過ぎない。例えば、実施形態の配線基板に含まれる導体層及び絶縁層それぞれの数は、
図1の配線基板1に含まれる導体層及び絶縁層それぞれの数に限定されない。すなわち、実施形態の配線基板は、配線基板1が有する絶縁層及び導体層に加えて、任意の数の絶縁層及び導体層を含んでいてもよく、
図1の配線基板1が有する絶縁層及び導体層の全てを実施形態の配線基板が含まないこともあり得る。なお、以下の説明で参照される各図面では、開示される実施形態が理解され易いように特定の部分が拡大して描かれていることがあり、大きさや長さに関して、各構成要素が互いの間の正確な比率で描かれていない場合がある。
【0009】
図1に示されるように、配線基板1は、コア基板5と、コア基板5の一面5a上に交互に積層されている絶縁層及び導体層を含んでいる。コア基板5は絶縁層51及び導体層52を含んでいる。コア基板5の一面5a上には、順に絶縁層24、導体層34、絶縁層23、導体層33、絶縁層22(第2絶縁層)、導体層32(第2導体層)、絶縁層21(第1絶縁層)、導体層31(第1導体層)、絶縁層25、及び導体層35が、積層されている。図示されていないが、導体層35、及び導体層35に覆われていない絶縁層25の表面上に、導体層35の一部を露出させるようにソルダーレジストが形成されていてもよい。なお、
図1では配線基板1におけるコア基板5の一面5aの反対側は描かれていないが、配線基板1は、コア基板5の一面5aの反対側にも、それぞれ1以上の絶縁層及び導体層を備え得る。
【0010】
絶縁層23及び絶縁層24には、各絶縁層を貫通して各絶縁層を挟む2つの導体層同士を接続するビア導体43が設けられている。一例として、絶縁層23を貫通するビア導体43は、導体層33と導体層34とを接続している。なお、
図1には示されていないが、絶縁層21、22、及び25にも、ビア導体43と同様のビア導体が形成されていてもよい。コア基板5の絶縁層51には、導体層52と、一面5aと反対側の表面上に形成されている図示されない導体層とを接続するスルーホール導体53が設けられている。スルーホール導体53の中空部は、エポキシ樹脂などからなる充填体54で充填されている。
【0011】
図1の例の配線基板1は、配線基板1の使用時に配線基板1に搭載される部品Eに平面視において覆われる部品領域A1と、部品領域A1外の領域A2とを有している。部品Eとしては、マイコンやメモリなどの半導体集積回路装置や、トランジスタやダイオードなどの個別半導体素子などが例示される。部品Eは、例えばパッケージングされた、若しくはベアチップ状態の半導体素子であり得る。なお「平面視」は、配線基板1の厚さ方向に沿う視線で対象物を見ることを意味している。
【0012】
実施形態の説明では、配線基板1の厚さ方向(積層方向)において絶縁層51から遠い側は、「外側」、「上側」もしくは「上方」、又は単に「上」とも称され、絶縁層51に近い側は、「内側」、「下側」もしくは「下方」、又は単に「下」とも称される。さらに、導体層や絶縁層のような各構成要素において絶縁層51と反対側を向く表面は「上面」とも称され、絶縁層51側を向く表面は「下面」とも称される。また、配線基板1の厚さ方向は「Z方向」とも称される。
【0013】
絶縁層21は、コア基板5(絶縁層51)と反対側を向く上面である第1面21aと、第1面21aの反対面であってコア基板5側を向く下面である第2面21bとを有している。絶縁層21は、第2面21bを絶縁層22に向けて絶縁層22及び導体層32の上に積層されている。導体層32は、絶縁層22の上に形成されている。一方、導体層31は、絶縁層21の第1面21a側に形成されている。
図1の例では、導体層31は、主に絶縁層21の第1面21aの上に形成されている。
【0014】
絶縁層21~25及び絶縁層51は、それぞれ、絶縁性樹脂を用いて形成され得る。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、又はフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂、及び、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、フッ化エチレン(PTFE)樹脂、ポリエステル(PE)樹脂、及び変性ポリイミド(MPI)樹脂のような熱可塑性樹脂が例示される。絶縁層21~25及び絶縁層51は、シリカやアルミナなどの無機フィラー(図示せず)を含み得る。
図1において絶縁層51は、ガラス繊維などの補強材(芯材)51a含んでいる。絶縁層21~25も、例えばガラス繊維からなる図示されない補強材を含んでいてもよい。
【0015】
絶縁層21~25が無機フィラーを含む場合、含まれる無機フィラーとしては、粒径(無機フィラーの表面上の2点間の最長距離)の小さな無機フィラーが好ましい。例えば、絶縁層21~25は、最大でも1μm以下の粒径を有する複数の無機フィラーを含み得る。各絶縁層に含まれる無機フィラーの粒径が小さいと、無機フィラーに沿ったリーク経路などによる短絡不良が生じ難いことがある。また、微小なビア導体43の形成が容易なことがある。
【0016】
加えて、絶縁層21~25の材料としては、低い比誘電率及び低い誘電正接を有している絶縁材が好ましい。絶縁層21~25それぞれの上に形成される各導体層において良好な高周波信号の伝送特性が得られると考えられる。例えば、1GHzの周波数において絶縁層21~25それぞれの比誘電率は、3.0以上、3.5以下程度であり得、誘電正接は、0.001以上、0.005以下程度であり得る。例えば、絶縁層21が、周波数1GHzにおいて、3.5以下の比誘電率、及び、0.005以下の誘電正接を有していてもよい。主に導体層31において高周波信号が適正に伝送されると考えられる。
【0017】
導体層31~35、導体層52、ビア導体43、及びスルーホール導体53は、例えば銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成されている。これら各導体層31~35、52、各ビア導体43、及びスルーホール導体53は、
図1では簡略化されて1つの層だけを有するように描かれているが、拡大図である
図2に示される導体層31などのように多層構造を有し得る。具体的には、導体層31~35のような各導体層、及びビア導体43は、
図2に示されるように、下層30aと、下層30a上に形成されている上層30bとによって構成されていてもよい。下層30aは、例えば、無電解めっき膜やスパッタ膜であり得、上層30bは、下層30aを給電層として用いて形成される電解めっき膜であり得る。
【0018】
導体層31~35及び導体層52は、それぞれ、電流が流れたり電気信号が伝播したりする配線パターンや、ビア導体43のようなビア導体と接続されるビアパッドなどの任意の導体パターンを含み得る。
図1の例において導体層31は、複数の第1信号配線パターン311及び複数の第2信号配線パターン312を含んでいる。また、導体層35は、配線基板1の使用時に配線基板1に搭載される部品Eと接続される部品搭載パッド351を含んでいる。「信号配線パターン」は、その両端間の任意の区間において、例えばデジタル信号やアナログ信号などの任意の電気信号を単一方向又は双方向に伝播させる信号線として機能する導体パターンである。
【0019】
図1に示されるように、第2信号配線パターン312は第1信号配線パターン311の厚さよりも大きな厚さを有している。すなわち、導体層31は、第1信号配線パターン311のような1以上の配線パターンを含む第1導体部31aと、第1導体部31aの厚さよりも大きな厚さを有している第2導体部31bと、を有している。第2導体部31bは、第2信号配線パターン312のような1以上の配線パターンを含んでいる。
図1の例において第1導体部31aは複数の第1信号配線パターン311を含み、第2導体部31bは複数の第2信号配線パターン312を含んでいる。しかし、本実施形態において第1導体部31aは、1以上の任意の数の第1信号配線パターン311を含み得る。同様に、本実施形態において第2導体部31bは、1以上の任意の数の第2信号配線パターン312を含み得る。
【0020】
このように実施形態の配線基板では、導体層31のような1つの導体層が、互いに厚さの異なる部分(導体層31において、第1導体部31a、及び第1導体部31aよりも厚い第2導体部31b)を有している。そして、各導体部が信号配線パターンを含んでいる。
図1の例において第1導体部31aは第1信号配線パターン311を含み、第2導体部31bは、第1信号配線パターン311よりも厚い第2信号配線パターン312を含んでいる。
【0021】
実施形態の配線基板では、このように1つの導体層が互いに異なる厚さを有する信号配線パターンを含んでいるので、例えば、求められる特性インピーダンスが互いに異なる2つの信号線を1つの導体層内に配置し易いことがある。そのため、それぞれが所望の特性インピーダンスを有する複数の信号線を含む配線基板が、層数の少ない導体層で実現され得ることがある。
【0022】
加えて、挿入損失の少ない信号線を含む導体層と別個の導体層を設けることなく、比較的高い特性インピーダンスを有していてファインピッチで並ぶ信号線を配置し得ることがある。すなわち、実施形態の配線基板では、1つの導体層(
図1の例において導体層31)が、互いに厚さの異なる第1信号配線パターン311と第2信号配線パターン312とを含んでいる。第1信号配線パターン311は、第2信号配線パターン312よりも薄いので第2信号配線パターン312よりも高い特性インピーダンスを有し得る。従って、第2信号配線パターン312で構成される挿入損失の少ない信号線と、例えばこの信号線よりも高い特性インピーダンスを有する信号線(第1信号配線パターン311で構成され得る信号線)とを、1つの導体層(
図1の例において導体層31)に混在させ得ることがある。このように、本実施形態によれば、より少ない数の導体層を含む配線基板において、所望の伝送特性を備えた配線による、損失の少ない適正な信号伝送が実現されると考えられる。
【0023】
さらに、本実施形態では、
図2に示されるように、第1導体部31aにおける絶縁層21の第2面21b側と反対側の表面である上面31cと、第2導体部31bにおける絶縁層21の第2面21b側と反対側の表面である上面31dとは略面一である。そのため、導体層31を覆う絶縁層25において平坦な上面が得られ、導体層35が安定して形成されると考えられる。従って、導体層35において、引いては、配線基板1において安定した品質が得られると考えられる。加えて、配線基板1に、所望の部品(図示せず)が安定して搭載されることもある。また、第1導体部31aの上面31cと第2導体部31bの上面31dとが略面一なので、第1信号配線パターン311の上面と、第2信号配線パターン312の上面も略面一である。例えば、第1信号配線パターン311及び第2信号配線パターン312それぞれの上に同じ条件で容易に、ビア導体43のようなビア導体が形成され得ることがある。なお、第1導体部31aの上面31cと第2導体部31bの上面31dとが「略面一」は、上面31cと上面31dとのZ方向における位置の差が1μm以内であることを意味している。
【0024】
図1の例の配線基板1では、第2導体部31bは、平面視で部品領域A1外の領域A2に位置し、第1導体部31aは平面視で部品領域A1内に位置している。従って、第1信号配線パターン311は、部品領域A1内に配置されている。
図2に示されるように、第1信号配線パターン311の最小の配線幅W1は、第2信号配線パターン312の最小の配線幅W2よりも小さい。また、第1信号配線パターン311のような第1導体部31aに含まれる配線パターン同士の最小の間隔G1は、第2信号配線パターン312のような第2導体部31bに含まれる配線パターン同士の最小の間隔G2よりも小さい。配線基板1の使用時に半導体素子のような部品Eに覆われる部品領域A1に、微細なピッチで並ぶ第1信号配線パターン311を配置することによって、部品Eの微細なピッチで並ぶ電極を効率良く引き出し得ることがある。
【0025】
第1導体部31aの上面31c及び第2導体部31bの上面31dは、それぞれ、任意の面粗度を有し得る。しかし、これら各導体部の上面31c及び上面31d、すなわち、第1信号配線パターン311及び第2信号配線パターン312それぞれの上面(絶縁層21側と反対側の表面)の低い面粗度が、良好な信号伝送の観点で好ましいことがある。すなわち、これら各信号配線パターンを高周波信号が伝播する時に、表皮効果によってもたらされる伝送損失が抑制されることがある。そのため、第1導体部31aの上面31c及び第2導体部31bの上面31dは、配線基板1の製造工程において、任意の方法による研磨によって仕上げられた研磨面であってもよい。研磨によって、上面31c及び31dにおいて低い面粗度が得られることがある。一例として、第1導体部31aの上面31c及び第2導体部31bの上面31dそれぞれの算術平均粗さRaは、0.03μm以上であって、0.3μmより小さい。適度な研磨時間で上述したような伝送損失の抑制効果が得られることがある。
【0026】
図2の例において第1信号配線パターン311は、その全体が、絶縁層21の第1面21a上に形成されていて、第1信号配線パターン311全体が絶縁層21の第1面21aから突出している。第2信号配線パターン312以外の部分における導体層31の厚さでもあり得る第1信号配線パターン311の厚さT1は、例えば、5μm以上、15μm以下であり得る。ファインピッチで並ぶ第1信号配線パターン311のような配線パターンが、導体層31に形成されると考えられる。
【0027】
一方、第2信号配線パターン312は、部分的に絶縁層21の中に埋まっている。
図2の例において第2信号配線パターン312は、絶縁層21の中に埋まっている第1部分3aと、絶縁層21の第1面21a上に突出している第2部分3bとを有している。そのため、第2信号配線パターン312は、第1信号配線パターン311よりも大きな厚さを有し得る。
図2の例の第2信号配線パターン312の第1部分3aと第2部分3bとは、一体的に形成されている。なお、後に参照される
図6及び
図7に示される例のように、第2信号配線パターン312の全体が絶縁層21の中に埋まっていてもよい。本実施形態において第2信号配線パターン312は、少なくとも部分的に絶縁層21の中に埋まっている。
【0028】
引き続き
図2を参照すると共に
図3及び
図4を参照して、本実施形態の配線基板1における導体層31の第1導体部31a、第2導体部31b、第1信号配線パターン311、及び第2信号配線パターン312が、さらに詳細に説明される。
図3には、第2信号配線パターン312で形成される配線Cの一例が示されており、
図4には、第1信号配線パターン311及び第2信号配線パターン312の一部についての導体層35(
図1参照)側からの平面図が示されている。
【0029】
図2に示されるように、配線基板1は、絶縁層21を貫通する溝6を有している。溝6は、
図3及び
図4に示されるように、平面視において所定の経路で形成されている。第2信号配線パターン312の第1部分3aは、溝6の内部に形成されている。換言すると、溝6は、第2信号配線パターン312の第1部分3aで充填されている。そして、第2信号配線パターン312の第2部分3bは、
図2~
図4に示されるように、絶縁層21の第1面21a上に溝6に沿って延在している。このように、第2信号配線パターン312は、溝6を埋める導電体である第1部分3aと、絶縁層21の第1面21a上に溝6に沿って配置されている導電体である第2部分3bとによって構成されている。
【0030】
このように構成される第2信号配線パターン312は、第2部分3bにおいて比較的小さな幅を有していても、第1部分3aによって信号線の断面積を補うことができる。そのため、第2信号配線パターン312の導体抵抗を、第1部分3aを有さない信号配線パターンと比べて小さくすることができ、伝送損失の少ない信号線をファインピッチで配置し得ることがある。
【0031】
すなわち、ファインピッチで信号線が並ぶように信号配線パターンの幅が小さくされると、信号線の導体抵抗は増加する。さらに、ファインピッチで並ぶように狭い間隔で配置される信号配線パターンは、その形成において適切にパターニングされるように、比較的小さな厚さで形成される。そのため、信号線の導体抵抗はさらに増加傾向となり、その結果、例えば、挿入損失のような高周波信号伝送時の損失が増大する。これに対して、
図2などに例示の実施形態が含む第2信号配線パターン312は、絶縁層21の中に埋まっている第1部分3aを有している。絶縁層21上の第2部分3bの幅や厚さの増大ではなく、第1部分3aの具備によって、導体抵抗の増加が低減されている。そのため、挿入損失の抑制が必要な信号線を第2信号配線パターン312で構成することによって、ファインピッチで並びながら、挿入損失の少ない信号線を実現し得ることがある。
【0032】
さらに、
図2の例において第2信号配線パターン312は、導体層32(第2導体層)に接している。導体層32は、第2信号配線パターン312と平面視で重なる導体パターン322を含んでいる。導体パターン322に第2信号配線パターン312が接している。その結果、
図3に示されるように、第2信号配線パターン312と導体パターン322とによって、信号線である単一の配線Cが構成されている。そのため、導体層322の一部も、第2信号配線パターン312内を伝播する信号の伝送に寄与し得る。すなわち、第2信号配線パターン312を伝播する電気信号に対する配線Cの電気抵抗は、第2信号配線パターン312単独の導体抵抗よりも小さい。従って、第2信号配線パターン312を伝播する電気信号の伝送損失が一層抑制されると考えられる。
【0033】
図2などの例では、溝6及び第2信号配線パターン312の第1部分3aは、絶縁層21の第1面21a側から第2面21b側に向かって先細りするテーパー形状を有している。第2信号配線パターン312の第1部分3aと接する導体層32の導体パターン322の幅を、第2部分3bの幅よりも小さくし得ることがある。
【0034】
図3に示されるように、絶縁層21の第1面21a及び第2面21bそれぞれにおける単一の配線Cの幅D1、D2は、第1面21aと第2面21bとの中間部Mにおける単一の配線Cの最大の幅D3よりも大きい。表皮効果によって表面付近を伝播する高周波信号に対する実質的な伝送路の断面積が大きいので、伝送効率に関して有利なことがある。中間部Mでの単一の配線Cの幅D3は、例えば、絶縁層21の第1面21aにおける単一の配線Cの幅D1の50%以上、80%以下である。すなわち、第2信号配線パターン312の第1部分3aの幅は、絶縁層21の第1面21aと第2面21bとの間の全体に渡って、第2部分3bの幅の50%以上、80%以下であり得る。第2信号配線パターン312と導体パターン322との適切な接続強度が得られると共に、溝6同士の間での絶縁層21の破損が防止されると考えられる。
【0035】
第2信号配線パターン312に貫通される絶縁層21の厚さT4(導体層32の上面と絶縁層21の第1面21aとの間のZ方向における距離)は、例えば、3μm以上、25μm以下である。そして第2信号配線パターン312の全体の厚さT2(導体層32と対向する下面と、上面31βとの間のZ方向における距離)は、例えば、8μm以上、40μm以下である。さらに単一の配線C全体の厚さT3(導体パターン322の下面と第2信号配線パターン312の上面31βとの間のZ方向における距離)は、例えば、13μm以上、55μm以下である。実施形態の配線基板が無用に厚くならずに、第2信号配線パターン312が所望の小さな導体抵抗を有し得ることがある。
【0036】
図4の例において、第1信号配線パターン311及び第2信号配線パターン312は、第1信号配線パターン311及び第2信号配線パターン312が並んでいる方向と略直交する方向に延びている。
図4の例では、3つの第2信号配線パターン312のうちの右端の第2信号配線パターン312の第2部分3bは、絶縁層25(
図1参照)を貫通するビア導体42によって導体層35(
図1参照)と接続されている。一方、右端の第2信号配線パターン312と接している導体層32の導体パターン322は、絶縁層22(
図2参照)を貫くビア導体41によってさらに下側の導体層33(
図2参照)と接続されている。従って
図4の例において右端の第2信号配線パターン312は、導体層35及び導体層33と電気的に接続されている。このように、実施形態の配線基板において第2信号配線パターンは、第2信号配線パターンの少なくとも一部を含む導体層(導体層31)及び第2信号配線パターンと接する導体層(導体層32)両方の、上側及び/又は下側の導体層と電気的に接続されていてもよい。
【0037】
図5には、本実施形態の配線基板における第2信号配線パターン312の変形例が、
図2と同様の第1信号配線パターン311と共に示されている。
図5の例の第2信号配線パターン312では、第2信号配線パターン312の第1部分3aと第2部分3bは、界面ISを介して接している。第1部分3a及び第2部分3bそれぞれが、個別に下層30a及び上層30bを含んでいる。すなわち、
図5の例の第2信号配線パターン312は、第1部分3aと第2部分3bとを順次形成することによって形成されている。絶縁層21の第1面21a上に延在する導電体(第2信号配線パターン312の第2部分3b)と、絶縁層21を貫通する溝6内を充填する導電体(第2信号配線パターン312の第1部分3a)と、絶縁層21の第2面21bから絶縁層21の内部に入り込んでいる導電体(導体層32の導体パターン322)とによって、単一の配線Cが形成されている。実施形態の配線基板は、
図5の例のような第2信号配線パターン312を含んでいてもよい。第2信号配線パターン312の形成が容易なことがある。
【0038】
図6には、本実施形態の配線基板の変形例である、配線基板1aが示されている。
図7には、
図6の配線基板1aのVII部の拡大図が示されている。なお、配線基板1aは、主に、導体層31の構造に関して、
図1などに例示の配線基板1と異なっている。以下では、配線基板1aにおける配線基板1との相違点が主に説明され、配線基板1と同様の構造や構成材料についての説明は省略される。
図6及び
図7においても、
図1又は
図2に示される構成要素と同様の構成要素については、
図1又は
図2に付されている符号と同様の符号が付されるか適宜省略されている。
【0039】
図6及び
図7に示されるように、配線基板1aにおいても、導体層31は、第1導体部31aと、第1導体部31aの厚さよりも大きな厚さを有する第2導体部31bを有している。第1導体部31aは、第1信号配線パターン311のような1以上の配線パターンを含み、第2導体部31bは、第2信号配線パターン312のような、第1信号配線パターン311の厚さよりも大きな厚さを有する1以上の配線パターンを含んでいる。また、第1導体部31aの上面と第2導体部31bの上面とが略面一である。しかし配線基板1aでは、導体層31は絶縁層21の中に埋まっていて、導体層31における絶縁層21の第1面21a側の表面である上面310が、絶縁層21の第1面21aに露出している。すなわち、導体層31は絶縁層21の第1面21a付近に埋設されていて、上面310以外の導体層31の表面は絶縁層21に覆われている。
【0040】
このような配線基板1aでは、
図7に示されるように、第1信号配線パターン311も絶縁層21に埋まっていてその上面が絶縁層21の第1面21aに露出している。また、第2信号配線パターン312は、第1部分3aだけでなく第2部分3bも含めて全体的に絶縁層21に埋まっていてその上面が絶縁層21の第1面21aに露出している。
【0041】
配線基板1aにおいても、導体層31の上面310は研磨面であり得、この研磨面が絶縁層21の第1面21aに露出している。
図7の例では、導体層31の上面310(すなわち第1信号配線パターン311の上面及び第2信号配線パターン312の上面)は、絶縁層21の第1面21aと略面一である。研磨面であり得る導体層31の露出面が絶縁層21の第1面21aと略面一なので、配線基板1aの表面において、一層高い平坦性が得られると考えられる。配線基板1aに、所望の部品(図示せず)が、より安定して搭載され得ると考えられる。
【0042】
配線基板1aは、
図1などに例示の配線基板1と同様に、絶縁層21を貫通する溝6を有し、第2信号配線パターン312は、溝6を埋める導電体によって構成されている。すなわち、第2信号配線パターン312の全体が、溝6を埋める導電体によって構成されている。配線基板1aは、さらに、絶縁層21の第1面21aに絶縁層21を貫通しない溝61を有しており、第1信号配線パターン311は、溝61内に形成されていて溝61を充填している。配線基板1aの導体層31はその全体が、絶縁層21の第1面21aに設けられている有底の凹部又は貫通孔内に形成されていてその有底の凹部及び貫通孔を充填している。このような構造を有する導体層31では、配線基板1の製造時に、第1信号配線パターン311や第2信号配線パターン312のような各配線パターン同士の間に導電体の残渣が存在し難く、そのため短絡不良が生じ難いと考えられる。従って、一層微細なピッチで並ぶ各信号配線パターンの実現が可能なことがある。
【0043】
配線基板1aが含む溝6は、導体層32に達する第1部分6aと、第1部分6aと絶縁層21の第1面21aとの間の部分である第2部分6bとを有している。第2信号配線パターン312は、溝6の第1部分6aを充填する第1部分3aと、溝6の第2部分6bを充填する第2部分3bとを有している。第2信号配線パターン312の第1部分3aと第2部分3bは一体的に形成されている。
【0044】
図1などに例示の配線基板1と同様に、第1信号配線パターン311及び第2信号配線パターン312は、それぞれ、例えばスパッタ膜である下層30aと、下層30a上に形成されている例えば電解めっき膜である上層30bとによって構成されている。そして配線基板1aにおいて下層30aは、溝6又は溝61の底面及び壁面に沿って形成されている。すなわち導体層31が含んでいる第1信号配線パターン311や第2信号配線パターン312のような導体パターンにおいて下層30aは上層30bの下面及び側面を覆っている。下層30aは、上層30bと絶縁層21との間に介在している。
【0045】
図6では省略されているが、
図6の例の配線基板1aが含む絶縁層21は、
図7に示されるようにバリア層21cを含むことがある。バリア層21cにおける絶縁層21の第1面21a側の表面は、第2信号配線パターン312の第2部分3b及び第1信号配線パターン311それぞれにおける絶縁層21の第2面21b側の表面に接している。
図7の例の絶縁層21は、バリア層21cと、バリア層21cよりも上側及び下側の部分を構成する本体層21dとによって構成されている。本体層21dは、
図1の配線基板1の絶縁層21の材料として例示されたエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂や各種の熱可塑性樹脂によって形成されている。
【0046】
一方、バリア層21cは、絶縁層21への溝61や、溝6の第2部分6bの形成に用いられる加工手段への耐性が本体層21dの構成材料よりも高い材料で形成される。例えばエキシマレーザー光が照射されるレーザー加工で溝61などが形成される場合、バリア層21cは、シリコン酸化物、又は、シリコン窒化物で形成され得る。そのようなバリア層21cを絶縁層21が含んでいると、所望の深さを有する溝6の第2部分6bや溝61の形成が容易なことがある。なお、バリア層21cは配線基板1aにおいて絶縁層21に含まれていなくてもよい。例えば、溝61などの形成における加工条件、例えばレーザー光のパワーなどを調整することによって、所望の深さの溝61が形成され得る。
【0047】
なお、
図7に例示のバリア層21cを含む絶縁層21が形成される場合は、後述される絶縁層21の形成工程において、フィルム状の樹脂の積層及び熱圧着が2回行われ、その間にバリア層21cが形成される。すなわち、1回目のフィルム状樹脂の積層及び熱圧着によって、絶縁層21におけるバリア層21cよりも下側の本体層21dが形成される。その後、その本体層21d上に、例えばスパッタリングによって、バリア層21cとしてシリコン酸化膜やシリコン窒化膜が形成される。そのバリア層21c上に2回目のフィルム状樹脂の積層及び熱圧着を行うことによって、バリア層21cよりも上側の本体層21dが形成される。
【0048】
つぎに、
図1の配線基板1が製造される場合を例に、一実施形態の配線基板を製造する方法の一例が、
図8A~
図8Gを参照して説明される。なお、先に為された配線基板1の各構成要素の材料の説明と異なる説明がない限り、各構成要素は、各構成要素について先に説明された材料のいずれかを用いて形成され得る。
【0049】
図8Aに示されるように、絶縁層51とその両面の導体層52とを含むコア基板5が用意され、その両面に絶縁層24が形成される。コア基板5の用意では、例えば絶縁層51となる絶縁層とその両面に接合された金属箔とを含む両面銅張積層板が用意され、例えばドリル加工による貫通孔の形成後、例えば無電解めっき及び電解めっきによって貫通孔内にスルーホール導体53が形成される。スルーホール導体53の内部をエポキシ樹脂などで充填することによって充填体54が形成された後、例えば、無電解めっき及び電解めっきを含むサブトラクティブ法によって、所定の導体パターンを含む導体層52が形成される。導体層52と絶縁層51とを含むコア基板5が用意される。
【0050】
用意されたコア基板5の両面に、例えばフィルム状のエポキシ樹脂を絶縁層51及び導体層52上に積層して熱圧着することによって、絶縁層24が形成される。前述したように、絶縁層24は、エポキシ樹脂以外にも、BT樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、又はフッ素樹脂やLCPなどの熱可塑性樹脂を用いて形成され得る。
【0051】
図8Bに示されるように、コア基板5の一面5a上の絶縁層24の上に、導体層34が形成される。まず、絶縁層24におけるビア導体43の形成位置に、炭酸ガスレーザー光の照射などによって貫通孔が形成される。その後、例えばセミアディティブ法などの任意の導体層の形成方法を用いて、導体層34が形成される。絶縁層24に形成された貫通孔内にはビア導体43が形成される。なお、
図8B、及び、以下で参照される
図8C~
図8G及び
図9A~
図9Cでは、コア基板5の一面5a側と反対側の描画は省略されている。しかし、コア基板5の一面5a側と反対側においても、
図8B~
図8G又は
図9A~
図9Cに示される工程で、コア基板5の一面5a側と同様の積層構造又は異なる積層構造を有する絶縁層と導体層との積層体が形成されてもよい。
【0052】
上述の絶縁層24、ビア導体43、及び導体層34それぞれの形成方法と同様の方法で、絶縁層23、絶縁層23を貫くビア導体43、及び導体層33が形成され、さらに同様の方法で、絶縁層22及び導体層32が形成される。
図8Bの例では、適切なめっきマスクの使用によって、導体層32に導体パターン322が設けられている。導体パターン322は、後工程で形成される導体層31の第2信号配線パターン312(
図1参照)が形成されるべき経路に平面視において沿うように形成される。なお、導体層32~34は、
図8C~
図8Fを参照して以下に説明される導体層31の形成方法と同じ方法で形成されてもよい。
【0053】
図8Cに示されるように、さらに、絶縁層22及び導体層32の上に、絶縁層24の形成方法と同様の方法で絶縁層21が形成される。すなわち、例えばフィルム状のエポキシ樹脂を絶縁層22及び導体層32上に積層し、熱圧着することによって絶縁層21が形成される。前述したように絶縁層21は、エポキシ樹脂以外にも、BT樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、又はフッ素樹脂やLCPなどの熱可塑性樹脂を用いて形成され得る。
【0054】
絶縁層21には、導体層32に達する溝6が、炭酸ガスレーザー光、エキシマレーザー光、又はUVレーザー光などの照射によって形成される。溝6は、後工程で形成される導体層31の第2信号配線パターン312(
図1参照)が形成されるべき経路に沿って形成される。すなわち、溝6は、導体層32の導体パターン322の上に形成される。導体パターン322は、溝6を形成すべく照射されるレーザー光のストッパとして機能する。
【0055】
溝6の形成後、好ましくは、溝6の内部に残る樹脂屑(スミア)を除去するデスミア処理が行われる。デスミア処理は、過マンガン酸塩溶液などの薬液への浸漬を含むウェット処理であってもよいが、ドライ処理であってもよい。例えば、アルゴン、四フッ化メタン、四フッ化メタンと酸素との混合気、又は、六フッ化硫黄などのプラズマガスを用いるプラズマ処理が、ドライ処理として行われてもよい。プラズマ処理によるデスミア処理では、ウェット処理と比べて絶縁層21の第1面21aの浸食が抑制されることがある。
【0056】
そして、溝6の内部の露出面、並びに絶縁層21の第1面21aの全面に、例えばスパッタリングや無電解めっきによって、例えば銅やニッケルなどからなるシード層30aaが形成される。スパッタリングを用いることによって、絶縁層21との間で高い密着性を示すシード層30aaを形成し得ることがある。シード層30aaの一部は、後工程で形成される導体層31の下層30a(
図2参照)となり得る。
【0057】
図8Dに示されるように、シード層30aa上にめっきレジストR1が、例えばシード層30aa上へのドライフィルムレジストのラミネートにより形成される。めっきレジストR1には、それぞれ溝状の開口部R11及び開口部R12が形成される。開口部R11、R12は、例えばフォトリソグラフィ技術により形成される。開口部R11は、平面視で溝6と重なることによって、シード層30aaに覆われた溝6が開口部R11内に収まるように溝6の経路に沿って形成される。例えば、それぞれが15μm~45μmの幅を有していて15μm~45μmの間隔で並ぶ複数の溝状の開口部R11が形成される。
【0058】
一方、開口部R12は、導体層31の第1信号配線パターン311(
図1参照)が形成されるべき経路に沿って形成される。めっきレジストR1には、開口部R11、R12以外にも、導体層31が含むべき導体パターンに対応するパターンで開口部が形成される。
【0059】
めっきレジストR1の形成後、めっきレジストR1の開口部R11、R12内に、シード層30aaを給電層として用いる電解めっきによって電解めっき膜30bbが形成される。例えば銅やニッケルなどからなる電解めっき膜30bbが形成される。
図8Dの例のように、開口部R11、R12内を全て充填し、さらにめっきレジストR1の上面よりも上側に向かって突出するように形成されてもよい。
【0060】
電解めっき膜30bbの形成によって、絶縁層21の第1面21a上に導体層31が形成される。電解めっき膜30bbの一部は、導体層31の上層30b(
図2参照)となり得る。溝6及び開口部R11内のシード層30aa及び電解めっき膜30bbは、配線基板の完成時には第2信号配線パターン312(
図1参照)を構成する。溝状の開口部R12内のシード層30aa及び電解めっき膜30bbは、配線基板の完成時には第1信号配線パターン311(
図1参照)を構成する。
【0061】
めっきレジストR1の上面からの突出部分を含む電解めっき膜30bbの上面側の一部が、
図8Eに示されるように、研磨によって除去される。めっきレジストR1の上面側の一部も、電解めっき膜30bbの一部と共に除去されてもよい。金属膜30bb及びめっきレジストR1の研磨は、例えば化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)などの任意の方法により行われる。研磨の結果、金属膜30bbの上面は、0.3μm以下の算術平均粗さRaを有し得る。高周波信号の伝送に関して良好な伝送特性を有する配線パターンが得られることがある。
【0062】
電解めっき膜30bbの研磨後、めっきレジストR1が除去される。さらに、シード層30aaにおける電解めっき膜30bbに覆われていない部分が、例えばクイックエッチングなどによって除去される。
【0063】
その結果、
図8Fに示されるように、第1信号配線パターン311及び第2信号配線パターン312などの互いに分離された所定の導体パターンを含む導体層31が得られる。電解めっき膜30bb(
図8E参照)が研磨されているので、第1信号配線パターン311の上面と第2信号配線パターン312の上面とは略面一である。第2信号配線パターン312は、導体層32の導体パターン322と接している。第2信号配線パターン312と、導体パターン322とによって単一の配線が構成されている。
【0064】
図8Gに示されるように、絶縁層21及び導体層31の上に、絶縁層25及び導体層35が形成される。絶縁層25は、例えば、前述された絶縁層24の形成方法と同様の方法で形成され得る。また、導体層35は、例えば、前述された導体層34の形成方法、又は、前述された導体層31の形成方法と同様の方法で形成され得る。以上の工程を経ることによって、
図1の例の配線基板1が完成する。
【0065】
なお、
図5の変形例の第2信号配線パターン312が形成される場合は、
図8Cに示される状態から、シード層30aaの全面に電解めっき膜が形成され、絶縁層21の第1面21a上のシード層30aa及びその上に形成された電解めっき膜が研磨によって除去される。溝6内だけにシード層30aa及びその上に形成された電解めっき膜が残存し、それらによって構成される第2信号配線パターン312の第1部分3a(
図5参照)が形成される。それらの上にスパッタリングなどで、第2信号配線パターン312の第2部分3bの下層30a(
図5参照)となるシード層が形成される。そして、例えば
図8D~
図8Fを参照して説明された方法と同様の方法で、第2信号配線パターン312の第2部分3bや第1信号配線パターン311などを含む導体層31が形成される。
【0066】
つぎに、
図6の配線基板1aが製造される場合を例に、一実施形態の配線基板を製造する方法の他の例が、
図9A~
図9Cを参照して説明される。なお、前述したように、配線基板1aは、主に導体層31の構造に関して、
図1などに例示の配線基板1と異なるので、導体層31の形成方法が主に説明される。
【0067】
図9Aに示されるように、先に参照された
図8Bに示される状態から、
図8Cを参照して説明された方法と同様の方法で絶縁層21が形成され、絶縁層21に、絶縁層21を貫通する溝6、及び絶縁層21を貫通しない溝61が形成される。絶縁層21の形成において、前述されたような方法でバリア層21c(
図7参照)が形成されてもよい。溝6として、導体層32に達する第1部分6aと、第1部分6aと絶縁層21の第1面21aとの間の部分である第2部分6bとを有する溝が形成される。絶縁層21には、溝6、61以外にも、導体層31(
図9C参照)が含むべき導体パターンに対応するパターンで、溝、凹部、及び/又は貫通孔などが形成され得る。
【0068】
溝6は、後工程で形成される導体層31の第2信号配線パターン312(
図9C参照)が形成されるべき経路に沿って形成される。溝61は、導体層31の第1信号配線パターン311(
図9C参照)が形成されるべき経路に沿って形成される。溝6の第1部分6aは、例えば、炭酸ガスレーザー光やUVレーザー光の照射によって形成される。溝6の第1部分6aは、バリア層21c(
図7参照)が形成されている場合には、バリア層21cを貫いて導体層32に達するように形成される。
【0069】
溝61、及び溝6の第2部分6bは、例えばエキシマレーザー光の照射によって、所定の深さを有するように形成される。
図7に例示のバリア層21cが形成されている場合は、バリア層21cでレーザー光の透過が防がれるため、容易に、所望の深さの溝61、及び溝6の第2部分6bを形成し得ることがある。バリア層21cが形成されていなくても、例えばエキシマレーザー光の条件の調整などにより、所望の深さの溝61などを形成することができる。溝61などの形成のためのレーザー光による加工が絶縁層21の第1面21aから所定の深さまでに制限されるように、レーザー光に対する被加工性の異なる材料の積層体として絶縁層21が形成されてもよい。
【0070】
溝61及び溝6の形成後、好ましくはプラズマ処理などによるデスミア処理が行われる。そして、溝6及び溝61それぞれの内部の露出面、並びに絶縁層21の第1面21aの全面に、例えば、スパッタリングや無電解めっきによってシード層30aaが形成される。シード層30aaの一部は、導体層31の下層30a(
図7参照)となり得る。
【0071】
図9Bに示されるように、溝6及び溝61の内面、並びに絶縁層21の第1面21aを覆っているシード層30aa上の全面に電解めっき膜30bbが形成される。シード層30aaが給電層として用いられる。電解めっき膜30bbの一部は、導体層31の上層30b(
図7参照)となり得る。電解めっき膜30bbは、好ましくは、絶縁層21の第1面21aの上に所望の厚みを有するように形成される。溝6及び溝61が、電解めっき膜30bbで充填される。
【0072】
絶縁層21の第1面21a上のシード層30aa及び電解めっき膜30bbが、例えばCMPなどの任意の方法を用いる研磨によって除去される。電解めっき膜30bbは、溝61の底面上のシード層30aaとの合計の厚さが、導体層31(
図9C参照)に求められる厚さに達するまで研磨される。電解めっき膜30bbの研磨の際に、絶縁層21の第1面21a付近も研磨によって除去されてもよい。
【0073】
図9Cに示されるように、絶縁層21の第1面21a上のシード層30aa及び電解めっき膜30bb(
図9B参照)の除去により、溝61及び溝6内の電解めっき膜30bbのような導電体が個々に分離される。溝61内に第1信号配線パターン311が得られ、溝6内には第2信号配線パターン312が得られる。これら所望の導体パターンを含んでいて所望の厚さを有する導体層31が得られる。第2信号配線パターン312と、導体層32の導体パターン322とによって単一の配線が構成されている。
図9A~
図9Cを参照して説明された方法では、第2信号配線パターン312などの導体パターンの間に形成されていたシード層30aaのような導電体は、エッチングなどではなく研磨によってより確実に除去される。短絡不良が生じ難いので、第1信号配線パターン311や第2信号配線パターン312が、一層微細なピッチで配置され得ることがある。
【0074】
その後、
図8Gを参照して説明された方法と同様の方法で、絶縁層21及び導体層31の上に、絶縁層25及び導体層35が形成される。以上の工程を経ることによって、
図6の例の配線基板1aが完成する。
【0075】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。前述したように、実施形態の配線基板は、任意の数の絶縁層及び導体層を含み得る。また、実施形態の配線基板は、コア基板を有さない所謂コアレスタイプの配線基板であってもよい。導体層31(第1導体層)の第1導体部は第1信号配線パターン以外の導体パターンを含んでいてもよく、第2導体部が第2信号配線パターン以外の導体パターンを含んでいてもよい。また、第2信号配線パターンは導体層32(第2導体層)と離間していてもよい。また、第2信号配線パターンの第1部分は、
図1の例のようなテーパー形状ではなく、絶縁層21(第1絶縁層)の厚さ方向において略一定の幅を有していてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1、1a 配線基板
21 絶縁層(第1絶縁層)
21a 第1面
21b 第2面
22 絶縁層(第2絶縁層)
31 導体層(第1導体層)
31a 第1導体部
31b 第2導体部
31c 第1導体部の上面(第1絶縁層の第2面側と反対側の表面)
31d 第2導体部の上面(第1絶縁層の第2面側と反対側の表面)
311 第1信号配線パターン
312 第2信号配線パターン
32 導体層(第2導体層)
322 導体パターン
6、61 溝
A1 部品領域
A2 部品領域外の領域
C 単一の配線
D1 第1絶縁層の第1面での単一の配線の幅
D2 第1絶縁層の第2面での単一の配線の幅
D3 中間部での単一の配線の幅
E 部品(半導体素子)