(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087433
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】樹脂材料、硬化物及び多層プリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20240624BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20240624BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240624BHJP
C08G 59/42 20060101ALI20240624BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20240624BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
C08L63/00 Z
C08L27/12
C08K3/36
C08G59/42
C08L79/08
H05K1/03 610L
H05K1/03 610R
H05K1/03 610S
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202257
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大當 悠太
(72)【発明者】
【氏名】馬場 奨
(72)【発明者】
【氏名】脇岡 さやか
(72)【発明者】
【氏名】増井 良平
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002BD12Y
4J002BD13Y
4J002BD14Y
4J002BD15Y
4J002BD16Y
4J002CD00W
4J002CD02W
4J002CD05W
4J002CD06W
4J002CD14W
4J002CM04X
4J002DJ017
4J002DJ018
4J002EU106
4J002FB07Y
4J002FD018
4J002GJ01
4J002GQ01
4J002GQ05
4J036AD08
4J036AF06
4J036AF08
4J036AJ18
4J036DB23
4J036FA05
4J036FB01
4J036JA06
4J036JA07
4J036JA08
(57)【要約】
【課題】硬化物の誘電率を低くすることができ、かつメッキピール強度を高めることができる樹脂材料を提供する。
【解決手段】本発明に係る樹脂材料は、エポキシ化合物と、活性エステル化合物と、ポリイミド化合物又はマレイミド化合物である重量平均分子量が500以上のイミド化合物Xと、無機微粒子付きフッ素樹脂粒子とを含み、前記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子は、フッ素樹脂粒子と、前記フッ素樹脂粒子の外表面を被覆する無機微粒子とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物と、
活性エステル化合物と、
ポリイミド化合物又はマレイミド化合物である重量平均分子量が500以上のイミド化合物Xと、
無機微粒子付きフッ素樹脂粒子とを含み、
前記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子は、フッ素樹脂粒子と、前記フッ素樹脂粒子の外表面を被覆する無機微粒子とを備える、樹脂材料。
【請求項2】
前記無機微粒子が、シリカ微粒子である、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項3】
樹脂材料の100℃における溶融粘度が、5Pa・s以上500Pa・s以下である、請求項1又は2に記載の樹脂材料。
【請求項4】
前記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の平均粒子径が、0.1μm以上5μm以下である、請求項1又は2に記載の樹脂材料。
【請求項5】
樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、前記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の含有量が、70重量%以下である、請求項1又は2に記載の樹脂材料。
【請求項6】
無機充填材をさらに含む、請求項1又は2に記載の樹脂材料。
【請求項7】
前記無機充填材がシリカである、請求項6に記載の樹脂材料。
【請求項8】
硬化促進剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の樹脂材料。
【請求項9】
樹脂フィルムである、請求項1又は2に記載の樹脂材料。
【請求項10】
多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために用いられる、請求項1又は2に記載の樹脂材料。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の樹脂材料の硬化物。
【請求項12】
回路基板と、
前記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、
複数の前記絶縁層間に配置された金属層とを備え、
複数の前記絶縁層の内の少なくとも1層が、請求項1又は2に記載の樹脂材料の硬化物である、多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ化合物を含む樹脂材料に関する。また、本発明は、上記樹脂材料の硬化物に関する。さらに、本発明は、上記樹脂材料を用いた多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置、積層板及びプリント配線板等の電子部品を得るために、様々な樹脂材料が用いられている。例えば、多層プリント配線板では、内部の層間を絶縁するための絶縁層を形成したり、表層部分に位置する絶縁層を形成したりするために、樹脂材料が用いられている。上記絶縁層の表面には、一般に金属である配線が積層される。また、上記絶縁層を形成するために、フィルム状の樹脂材料(樹脂フィルム)が用いられることがある。上記樹脂材料は、ビルドアップフィルムを含む多層プリント配線板用の絶縁材料等として用いられている。
【0003】
下記の特許文献1には、(A)エポキシ樹脂、(B)マレイミド化合物、(C)無機充填材、及び(D)フッ素系充填材を含み、(B)成分の量が、(A)成分100質量%に対して、10質量%~70質量%である樹脂組成物が開示されている。
【0004】
下記の特許文献2には、成分(A)エポキシ樹脂、成分(B)活性エステル化合物、成分(C)無機充填材、及び成分(D)フッ素系充填材を含む樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物では、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合に、成分(D)の含有量が10質量%~40質量%であり、成分(C)及び成分(D)の含有量の合計を100質量%とした場合に、成分(D)が20質量%~70質量%である。
【0005】
下記の特許文献3には、エポキシ樹脂と、硬化剤と、フッ素樹脂フィラーとを含み、フッ素樹脂フィラーの含有量が、樹脂組成物の固形分に対して、50質量%~85質量%である樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-035051号公報
【特許文献2】特開2018-141053号公報
【特許文献3】特開2016-166347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1~3に記載のように、エポキシ化合物とフッ素樹脂粒子(フッ素系充填材)とを含む樹脂材料が知られている。フッ素樹脂粒子を用いることにより、樹脂材料の硬化物の誘電率をある程度低くすることができる。
【0008】
しかしながら、フッ素樹脂粒子を含む従来の樹脂材料では、樹脂材料中でのフッ素樹脂粒子の分散性が低く、フッ素樹脂粒子が樹脂材料中で凝集したり、局在したりしやすい。フッ素樹脂粒子が良好に分散していない樹脂材料を用いて絶縁層を形成した場合には、絶縁層と該絶縁層の表面上にめっき処理により積層した金属層とのメッキピール強度が十分に高くならないことがある。
【0009】
本発明の目的は、硬化物の誘電率を低くすることができ、かつメッキピール強度を高めることができる樹脂材料を提供することである。また、本発明は、上記樹脂材料の硬化物を提供することも目的とする。さらに、本発明は、上記樹脂材料を用いた多層プリント配線板を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書において、以下の樹脂材料、硬化物、及び多層プリント配線板を開示する。
【0011】
項1.エポキシ化合物と、活性エステル化合物と、ポリイミド化合物又はマレイミド化合物である重量平均分子量が500以上のイミド化合物Xと、無機微粒子付きフッ素樹脂粒子とを含み、前記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子は、フッ素樹脂粒子と、前記フッ素樹脂粒子の外表面を被覆する無機微粒子とを備える、樹脂材料。
【0012】
項2.前記無機微粒子が、シリカ微粒子である、項1に記載の樹脂材料。
【0013】
項3.樹脂材料の100℃における溶融粘度が、5Pa・s以上500Pa・s以下である、項1又は2に記載の樹脂材料。
【0014】
項4.前記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の平均粒子径が、0.1μm以上5μm以下である、項1~3のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【0015】
項5.樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、前記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の含有量が、70重量%以下である、項1~4のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【0016】
項6.無機充填材をさらに含む、項1~5のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【0017】
項7.前記無機充填材がシリカである、項6に記載の樹脂材料。
【0018】
項8.硬化促進剤をさらに含む、項1~7のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【0019】
項9.樹脂フィルムである、項1~8のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【0020】
項10.多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために用いられる、項1~9のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【0021】
項11.項1~10のいずれか1項に記載の樹脂材料の硬化物。
【0022】
項12.回路基板と、前記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、複数の前記絶縁層間に配置された金属層とを備え、複数の前記絶縁層の内の少なくとも1層が、項1~10のいずれか1項に記載の樹脂材料の硬化物である、多層プリント配線板。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る樹脂材料は、エポキシ化合物と、活性エステル化合物と、ポリイミド化合物又はマレイミド化合物である重量平均分子量が500以上のイミド化合物Xと、無機微粒子付きフッ素樹脂粒子とを含む。上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子は、フッ素樹脂粒子と、上記フッ素樹脂粒子の外表面を被覆する無機微粒子とを備える。本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、硬化物の誘電率を低くすることができ、かつメッキピール強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂材料を用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0026】
(樹脂材料)
本発明に係る樹脂材料は、エポキシ化合物と、活性エステル化合物と、ポリイミド化合物又はマレイミド化合物である重量平均分子量が500以上のイミド化合物Xと、無機微粒子付きフッ素樹脂粒子とを含む。上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子は、フッ素樹脂粒子と、上記フッ素樹脂粒子の外表面を被覆する無機微粒子とを備える。
【0027】
本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、硬化物の誘電率を低くすることができ、かつメッキピール強度を高めることができる。
【0028】
本発明に係る樹脂材料では、無機微粒子付きフッ素樹脂粒子が用いられているので、樹脂材料中での無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の分散性を高めることができる。また、無機微粒子付きフッ素樹脂粒子に加えて、エポキシ化合物、活性エステル化合物及びイミド化合物Xが組み合わせて用いられているので、硬化物の誘電率を低くすることができ、かつメッキピール強度を高めることができる。
【0029】
また、本発明に係る樹脂材料では、硬化物の誘電正接も低くすることができる。さらに、本発明に係る樹脂材料では、樹脂材料中での無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の分散性を高めることができるので、樹脂材料の粘度が過度に大きくなりにくく、配線への埋め込み性を良好にすることができる。従って、本発明に係る樹脂材料は、これらの性能が求められる用途(例えばプリント配線板用途等)に好適に用いることができる。
【0030】
本発明に係る樹脂材料は、樹脂組成物であってもよく、樹脂フィルムであってもよい。上記樹脂組成物は、流動性を有する。上記樹脂組成物は、ペースト状であってもよい。上記ペースト状には液状が含まれる。取扱性に優れることから、本発明に係る樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。
【0031】
本発明に係る樹脂材料は、熱硬化性樹脂材料であることが好ましい。上記樹脂材料が樹脂フィルムである場合には、該樹脂フィルムは、熱硬化性樹脂フィルムであることが好ましい。
【0032】
以下、本発明に係る樹脂材料に用いられる各成分の詳細、及び本発明に係る樹脂材料の用途などを説明する。
【0033】
[エポキシ化合物]
上記樹脂材料は、エポキシ化合物を含む。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0034】
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノールE型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。
【0035】
上記エポキシ化合物は、グリシジルエーテル化合物であってもよい。上記グリシジルエーテル化合物とは、グリシジルエーテル基を少なくとも1個有する化合物である。
【0036】
上記エポキシ化合物は、芳香環を有するエポキシ化合物を含むことが好ましく、ナフタレン骨格又はフェニル骨格を有するエポキシ化合物を含むことがより好ましく、芳香環を有するエポキシ化合物であることがさらに好ましい。この場合には、硬化物の誘電率及び誘電正接をより一層低くすることができ、かつ硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0037】
硬化物の誘電率及び誘電正接をより一層低くし、かつ硬化物の線膨張係数(CTE)を良好にする観点からは、上記エポキシ化合物は、25℃で液状のエポキシ化合物を含むことが好ましく、25℃で液状のエポキシ化合物と25℃で固形のエポキシ化合物とを含むことがより好ましい。
【0038】
上記25℃で液状のエポキシ化合物の25℃での粘度は、1000mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることがより好ましい。
【0039】
上記エポキシ化合物の粘度は、例えば動的粘弾性測定装置(レオロジカ・インスツルメンツ社製「VAR-100」)等を用いて測定することができる。
【0040】
上記エポキシ化合物の分子量は1000以下であることがより好ましい。この場合には、樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、無機微粒子付きフッ素樹脂粒子と無機充填材との合計含有量が50重量%以上であっても、絶縁層の形成時に流動性が高い樹脂材料が得られやすい。
【0041】
上記エポキシ化合物の分子量は、上記エポキシ化合物が重合体ではない場合、及び上記エポキシ化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記エポキシ化合物が重合体である場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を意味する。
【0042】
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、好ましくは45重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。上記エポキシ化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の誘電率及び誘電正接をより一層低くすることができ、また、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0043】
[活性エステル化合物]
上記樹脂材料は、活性エステル化合物を含む。上記活性エステル化合物は、硬化剤として機能する。また、上記活性エステル化合物を用いることにより、硬化物の誘電率をより一層低くすることができる。また、硬化物の熱寸法安定性を高めることもできる。上記活性エステル化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記活性エステル化合物とは、エステル結合を少なくとも1個有し、かつ、エステル結合の両側に脂肪族鎖、脂肪族環又は芳香環が結合している化合物をいう。上記活性エステル化合物は、例えば、カルボン酸化合物又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物又はチオール化合物との縮合反応によって得られる。上記活性エステル化合物としては、下記式(A)で表される化合物等が挙げられる。
【0045】
【0046】
上記式(A)中、X1は、脂肪族鎖を有する基、脂肪族環を有する基又は芳香環を有する基を表し、X2は、芳香環を有する基を表す。上記芳香環を有する基の好ましい例としては、置換基を有していてもよいベンゼン環、及び置換基を有していてもよいナフタレン環等が挙げられる。上記置換基としては、炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
【0047】
上記式(A)中、X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいベンゼン環との組み合わせ、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。さらに、上記式(A)中、X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいナフタレン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。
【0048】
上記活性エステル化合物は特に限定されない。硬化物の熱寸法安定性及び難燃性をより一層高める観点からは、上記活性エステル化合物は、2個以上の芳香環を有する活性エステル化合物であることが好ましい。硬化物の誘電正接を低くし、かつ硬化物の熱寸法安定性を高める観点から、上記活性エステル化合物は、主鎖骨格中にナフタレン環、又はジシクロペンタジエン骨格を有することがより好ましい。
【0049】
上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「HPC-8000-65T」、「EXB9416-70BK」、「HPC-8150-62T」、「EXB-8」及び「EXB8100-65T」等が挙げられる。
【0050】
上記樹脂材料において、上記エポキシ化合物100重量部に対する、上記活性エステル化合物の含有量は、好ましくは70重量部以上、より好ましくは85重量部以上、好ましくは150重量部以下、より好ましくは120重量部以下である。上記活性エステル化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性により一層優れ、熱寸法安定性をより一層高め、残存未反応成分の揮発をより一層抑制できる。
【0051】
上記樹脂材料において、上記エポキシ化合物と上記イミド化合物Xとの合計含有量100重量部に対する、上記活性エステル化合物の含有量は、好ましくは30重量部以上、より好ましくは40重量部以上、好ましくは100重量部以下、より好ましくは90重量部以下である。上記活性エステル化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性により一層優れ、熱寸法安定性をより一層高め、残存未反応成分の揮発をより一層抑制できる。
【0052】
[イミド化合物X]
上記樹脂材料は、イミド化合物Xを含む。上記イミド化合物Xは、ポリイミド化合物又はマレイミド化合物である重量平均分子量が500以上のイミド化合物である。上記イミド化合物Xは、重量平均分子量が500以上のポリイミド化合物であってもよく、重量平均分子量が500以上のマレイミド化合物であってもよく、重量平均分子量が500以上のポリイミド化合物と重量平均分子量が500以上のマレイミド化合物との双方であってもよい。上記イミド化合物Xを用いることにより、硬化物の誘電率及び誘電正接を低くすることができる。また、上記イミド化合物Xを用いることにより、メッキピール強度を高めることができる。上記イミド化合物Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0053】
上記イミド化合物Xの重量平均分子量は、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上、好ましくは100000以下、より好ましくは75000以下、更に好ましくは50000以下である。上記重量平均分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の誘電率及び誘電正接をより一層低くすることができ、また、メッキピール強度をより一層高めることができる。上記イミド化合物Xの重量平均分子量は、5000以上であってもよく、7500以上であってもよく、10000以上であってもよく、20000以下であってもよく、15000以下であってもよく、10000以下であってもよい。
【0054】
上記イミド化合物Xである上記ポリイミド化合物の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは7500以上、更に好ましくは10000以上、好ましくは100000以下、より好ましくは75000以下、更に好ましくは50000以下である。上記重量平均分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の誘電率及び誘電正接をより一層低くすることができ、また、メッキピール強度をより一層高めることができる。
【0055】
上記イミド化合物Xである上記マレイミド化合物の重量平均分子量は、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上、好ましくは20000以下、より好ましくは15000以下、更に好ましくは10000以下である。上記重量平均分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の誘電率及び誘電正接をより一層低くすることができ、また、メッキピール強度をより一層高めることができる。
【0056】
上記イミド化合物Xの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を意味する。
【0057】
上記イミド化合物Xは、熱硬化性化合物であってもよく、熱可塑性化合物であってもよい。
【0058】
上記イミド化合物Xである上記マレイミド化合物は、マレイミド基を、1個以上有していてもよく、2個以上有していてもよく、3個以上有していてもよく、200個以下有していてもよく、150個以下有していてもよく、100個以下有していてもよい。
【0059】
上記イミド化合物Xである上記ポリイミド化合物は、テトラカルボン酸二無水物とダイマージアミンとを反応させて得られるポリイミド化合物であることが好ましい。上記イミド化合物Xである上記ポリイミド化合物は、テトラカルボン酸二無水物とダイマージアミンとの反応物であることが好ましい。
【0060】
上記テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルエーテル二無水物、及びビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。上記テトラカルボン酸二無水物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
上記ダイマージアミン(上記ダイマージアミンの市販品)としては、BASFジャパン社製「バーサミン551」(3,4-ビス(1-アミノヘプチル)-6-ヘキシル-5-(1-オクテニル)シクロヘキセン)、コグニクスジャパン社製「バーサミン552」(バーサミン551の水添物)、並びに、クローダジャパン社製「PRIAMINE1075」及び「PRIAMINE1074」等が挙げられる。上記ダイマージアミンは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
上記イミド化合物Xである上記マレイミド化合物の市販品としては、Designer Molecules Inc.社製「BMI-689」、「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-3000」及び「BMI-3000J」、大和化成工業社製「BMI-4000」及び「BMI-5100」等が挙げられる。
【0063】
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記イミド化合物Xの含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。上記イミド化合物Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の誘電率及び誘電正接をより一層低くすることができ、また、メッキピール強度をより一層高めることができる。
【0064】
[無機微粒子付きフッ素樹脂粒子]
上記樹脂材料は、無機微粒子付きフッ素樹脂粒子を含む。上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子は、フッ素樹脂粒子と、上記フッ素樹脂粒子の外表面を被覆する無機微粒子とを備える。上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子を用いることにより、硬化物の誘電率を低くすることができる。また、上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子を用いることにより、無機微粒子が付着していないフッ素樹脂粒子を用いた場合と比べて、該粒子の樹脂材料中での分散性を高めることができる。そのため、樹脂材料の粘度が過度に大きくなりにくく、メッキピール強度及び配線への埋め込み性を良好にすることができる。上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
フッ素樹脂粒子:
上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子は、フッ素樹脂粒子を備える。上記フッ素樹脂粒子は、フッ素樹脂を含む粒子である。上記フッ素樹脂は、フッ素原子を有する樹脂である。上記フッ素樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0066】
上記フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロジオキソールコポリマー(TFE/PDD)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、及びポリビニルフルオライド(PVF)等が挙げられる。
【0067】
硬化物の誘電率及び誘電正接をより一層低くする観点からは、上記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、テトラフルオロエチレン-パーフルオロジオキソールコポリマー、又はポリビニルフルオライドであることが好ましく、ポリテトラフルオロエチレンであることがより好ましい。
【0068】
硬化物の誘電率及び誘電正接を更により一層低くする観点からは、上記フッ素樹脂粒子は、ポリテトラフルオロエチレン粒子であることが好ましい。
【0069】
上記フッ素樹脂の重量平均分子量は、1000以上であってもよく、2000以上であってもよく、5000以上であってもよく、5000000以下であってもよく、4000000以下であってもよく、3000000以下であってもよい。
【0070】
上記フッ素樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を意味する。
【0071】
上記フッ素樹脂粒子100重量%中、上記フッ素樹脂の含有量は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは98重量%以上、特に好ましくは99重量%以上である。ただし、上記フッ素樹脂粒子100重量%中、上記フッ素樹脂の含有量は、100重量%以下であってもよく、100重量%未満であってもよく、99.5重量%以下であってもよく、99重量%以下であってもよい、
【0072】
無機微粒子:
上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子は、無機微粒子を備える。上記無機微粒子は、上記フッ素樹脂粒子の外表面を被覆している。上記無機微粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
上記無機微粒子としては、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、水酸化アルミニウム微粒子、ジルコニア微粒子、及びチタニア微粒子等が挙げられる。
【0074】
上記無機微粒子は、シリカ微粒子、又はアルミナ微粒子であることが好ましく、シリカ微粒子であることがより好ましい。この場合には、無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の樹脂材料中での分散性をより一層高めることができる。そのため、樹脂材料の粘度が過度に大きくなりにくく、メッキピール強度及び配線への埋め込み性を良好にすることができる。また、硬化物の誘電率をより一層低くすることができる。
【0075】
上記無機微粒子は、表面処理されていてもよく、表面処理されていなくてもよい。
【0076】
上記無機微粒子の平均粒子径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、更に好ましくは5nm以上、好ましくは800nm以下、より好ましくは500nm以下、更に好ましくは300nm以下である。上記平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の樹脂材料中での分散性をより一層高めることができる。
【0077】
上記無機微粒子の平均粒子径は、上記無機微粒子が真球状である場合には、直径を示し、上記無機微粒子が真球状ではない場合には、最大径を示す。上記無機微粒子の平均粒子径は、例えば、無機微粒子付きフッ素樹脂粒子を電子顕微鏡にて観察し、20個以上の無機微粒子の粒子径をそれぞれ求め、それらの粒子径の平均値を算出することにより求めることができる。
【0078】
無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の他の詳細:
上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子では、上記無機微粒子が、上記フッ素樹脂粒子の外表面の全体を被覆していてもよく、上記フッ素樹脂粒子の外表面の一部を被覆していてもよい。
【0079】
上記フッ素樹脂粒子の外表面の表面積100%中、上記無機微粒子により被覆されている部分の面積(被覆率)は、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上である。上記被覆率が上記下限以上であると、無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の樹脂材料中での分散性をより一層高めることができる。なお、上記フッ素樹脂粒子の外表面の表面積100%中、上記無機微粒子により被覆されている部分の面積(被覆率)は、100%以下であってもよく、98%以下であってもよく、95%以下であってもよい。
【0080】
上記被覆率は、上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子を電子顕微鏡にて観察し、無機微粒子により覆われている表面積の、フッ素樹脂粒子の投影面積に対する百分率を算出することにより求められる。上記被覆率は、20個以上の無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の被覆率をそれぞれ求め、それらの被覆率の平均値を算出することにより求めることが好ましい。
【0081】
上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.5μm以上、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、更に好ましくは3μm以下である。上記平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の樹脂材料中での分散性をより一層高めることができる。そのため、樹脂材料の粘度が過度に大きくなりにくく、メッキピール強度及び配線への埋め込み性を良好にすることができる。また、硬化物の誘電率をより一層低くすることができる。
【0082】
上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の平均粒子径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒子径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
【0083】
上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の市販品としては、アドマテックス社製「P20-D1」等が挙げられる。また、上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子は、フッ素樹脂粒子(市販品のフッ素樹脂粒子又は合成したフッ素樹脂粒子)の外表面に無機微粒子を付着させることにより作製することもできる。フッ素樹脂粒子の外表面に無機微粒子を付着させる方法としては、フッ素樹脂粒子と無機微粒子とを単に混合する方法、及びフッ素樹脂粒子と無機微粒子との間に応力を加えながらフッ素樹脂粒子と無機微粒子とを混合する方法等が挙げられる。
【0084】
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは70重量%以下、より好ましくは65重量%以下である。上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の樹脂材料中での分散性をより一層高めることができる。そのため、樹脂材料の粘度が過度に大きくなりにくく、メッキピール強度及び配線への埋め込み性を良好にすることができる。また、硬化物の誘電率をより一層低くすることができる。
【0085】
[無機充填材]
上記樹脂材料は、無機充填材を含まないか又は含む。上記樹脂材料は、無機充填材を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記樹脂材料は、無機充填材を含むことが好ましい。上記無機充填材の使用により、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができる。また、上記無機充填材の使用により、硬化物の熱による寸法変化がより一層小さくなる。上記無機充填材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
上記無機充填材としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ダイヤモンド、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素等が挙げられる。
【0087】
上記無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さを小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くすることができる。また、硬化物の表面に微細な配線を形成することができ、硬化物により良好な絶縁信頼性を付与することができる。上記無機充填材がシリカである場合には、硬化物の熱膨張率がより一層低くなり、また、硬化物の誘電正接がより一層低くなる。なお、上記シリカは、中空シリカであってもよい。
【0088】
熱伝導率を高め、かつ絶縁性を高める観点からは、上記無機充填材は、アルミナ又は窒化ホウ素であることが好ましい。特に、窒化ホウ素は異方性を有するため、熱線膨張係数をより一層小さくすることができる。
【0089】
上記無機充填材の平均粒径は、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは500nm以上、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、更に好ましくは1μm以下である。上記無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、エッチング後の表面粗度を小さくし、かつメッキピール強度を高くすることができ、また、絶縁層と金属層との密着性をより一層高めることができる。
【0090】
上記無機充填材の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。なお、無機充填材が凝集粒子の場合には、無機充填材の平均粒径は、一次粒子径を意味する。
【0091】
上記無機充填材は、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、更に硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。上記無機充填材が球状である場合には、上記無機充填材のアスペクト比は、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
【0092】
上記無機充填材は、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤による表面処理物であることがより好ましく、シランカップリング剤による表面処理物であることが更に好ましい。上記無機充填材が表面処理されていることにより、粗化硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。また、上記無機充填材が表面処理されていることにより、硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができ、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
【0093】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン、及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0094】
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記無機充填材の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは70重量%以下、より好ましくは65重量%以下である。上記無機充填材の含有量が上記下限以上であると、誘電正接が効果的に低くなる。上記無機充填材の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくすることができ、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができる。さらに、この無機充填材の含有量であれば、硬化物の熱膨張率を低くすることと同時に、スミア除去性を良好にすることも可能である。
【0095】
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子と上記無機充填材との合計含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは75重量%以下である。上記合計含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0096】
上記樹脂材料において、上記無機充填材の含有量の、上記無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の含有量に対する重量比(無機充填材の含有量/無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の含有量)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、好ましくは15以下、より好ましくは10以下である。上記重量比(無機充填材の含有量/無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0097】
[硬化促進剤]
上記樹脂材料は、硬化促進剤を含まないか又は含む。上記樹脂材料は、硬化促進剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記樹脂材料は、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。樹脂材料を速やかに硬化させることで、硬化物における架橋構造が均一になると共に、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。また、上記硬化促進剤の使用により、樹脂材料を比較的低い温度でも良好に硬化させることができる。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0098】
上記硬化促進剤としては、イミダゾール化合物等のアニオン性硬化促進剤;アミン化合物等のカチオン性硬化促進剤;有機リン化合物及び有機金属化合物等のアニオン性及びカチオン性硬化促進剤以外の硬化促進剤;過酸化物等のラジカル性硬化促進剤等が挙げられる。
【0099】
上記イミダゾール化合物としては、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0100】
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、m-キシリレンジ(ジメチルアミン)、N,N’-ジメチルピペラジン、N-メチルピロリジン、N-メチルハイドロオキシピペリジン、m-キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、ポリオキシプロピレンポリアミン、及び4,4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。また、アミン化合物は、これらのアミン化合物の変性品であってもよい。
【0101】
上記有機リン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリベンジルホスフィン、ジフェニル(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、及びアルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン化合物、並びに、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のホスホニウム塩化合物等が挙げられる。
【0102】
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
【0103】
上記過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカボネート、モノパーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジベンジルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、及びケトンパーオキサイド等が挙げられる。
【0104】
上記硬化促進剤は、アミン化合物、イミダゾール化合物、又は有機リン化合物を含むことが好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0105】
上記樹脂材料において、上記エポキシ化合物と上記イミド化合物Xとの合計含有量100重量部に対する、上記硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0106】
[溶剤]
上記樹脂材料は、溶剤を含まないか又は含む。上記樹脂材料は、溶剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記溶剤の使用により、樹脂材料の粘度を好適な範囲に制御でき、樹脂材料の塗工性を高めることができる。また、上記溶剤は、上記無機充填材を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0107】
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N-メチル-ピロリドン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
【0108】
上記溶剤の多くは、上記樹脂組成物をフィルム状に成形するときに除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記樹脂組成物中の上記溶剤の含有量は特に限定されない。上記樹脂組成物の塗工性などを考慮して、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
【0109】
上記樹脂材料がBステージフィルムである場合には、上記Bステージフィルム100重量%中、上記溶剤の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0110】
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記樹脂材料は、上述した成分(エポキシ化合物、活性エステル化合物、イミド化合物X、無機充填材、硬化促進剤及び溶剤)以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、エポキシ化合物及びイミド化合物Xの双方とは異なる硬化性化合物;活性エステル化合物以外の硬化剤;イミド化合物X以外の熱可塑性樹脂;有機充填材;レベリング剤;難燃剤;カップリング剤;着色剤;酸化防止剤;紫外線劣化防止剤;消泡剤;増粘剤;揺変性付与剤等が挙げられる。上記他の成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0111】
上記硬化性化合物(エポキシ化合物及びイミド化合物Xの双方とは異なる硬化性化合物)としては、ビニル化合物、フェノキシ化合物、オキセタン化合物、マレイミド化合物、シアネート化合物、ポリアリレート化合物、ジアリルフタレート化合物、エピスルフィド化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、及びシリコーン化合物等が挙げられる。
【0112】
上記硬化剤(活性エステル化合物以外の硬化剤)としては、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)、ベンゾオキサジン化合物(ベンゾオキサジン硬化剤)、カルボジイミド化合物(カルボジイミド硬化剤)、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、ホスフィン化合物、ジシアンジアミド、及び酸無水物等が挙げられる。
【0113】
上記熱可塑性樹脂(イミド化合物X以外の熱可塑性樹脂)としては、フェノキシ樹脂及びポリビニルアセタール樹脂等が挙げられる。
【0114】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0115】
(樹脂フィルム)
上述した樹脂組成物をフィルム状に成形することにより樹脂フィルム(Bステージ化物/Bステージフィルム)が得られる。上記樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムは、Bステージフィルムであることが好ましい。
【0116】
樹脂組成物をフィルム状に成形して、樹脂フィルムを得る方法としては、以下の方法が挙げられる。押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法。溶剤を含む樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法。従来公知のその他のフィルム成形法。薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
【0117】
樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば50℃~150℃で1分間~10分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムである樹脂フィルムを得ることができる。
【0118】
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
【0119】
上記樹脂フィルムは、プリプレグでなくてもよい。上記樹脂フィルムがプリプレグではない場合には、ガラスクロス等に沿ってマイグレーションが生じなくなる。また、樹脂フィルムをラミネート又はプレキュアする際に、表面にガラスクロスに起因する凹凸が生じなくなる。
【0120】
上記樹脂フィルムは、金属箔又は基材フィルムと、該金属箔又は基材フィルムの表面に積層された樹脂フィルムとを備える積層フィルムの形態で用いることができる。上記金属箔は銅箔であることが好ましい。
【0121】
上記積層フィルムの上記基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルム等のオレフィン樹脂フィルム、並びにポリイミド樹脂フィルム等が挙げられる。上記基材フィルムの表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
【0122】
樹脂フィルムの硬化度をより一層均一に制御する観点からは、上記樹脂フィルムの厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。上記樹脂フィルムを回路の絶縁層として用いる場合、上記樹脂フィルムにより形成された絶縁層の厚さは、回路を形成する導体層(金属層)の厚さ以上であることが好ましい。上記絶縁層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。
【0123】
(樹脂材料の他の詳細)
上記樹脂材料の100℃における溶融粘度は、好ましくは5Pa・s以上、より好ましくは10Pa・s以上、更に好ましくは20Pa・s以上、好ましくは500Pa・s以下、より好ましくは400Pa・s以下、更に好ましくは300Pa・s以下である。上記溶融粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、メッキピール強度及び配線への埋め込み性をより一層良好にすることができる。上記溶融粘度は、フッ素樹脂粒子の外表面を被覆する無機微粒子の種類、及び無機微粒子付きフッ素樹脂粒子の含有量等により調整することができる。
【0124】
上記樹脂材料の100℃における溶融粘度は、Rheometer装置(例えば、TAインスツルメント社製「AR-2000」)を用いて、周波数6.28rad/sec、開始温度60℃、測定間隔温度2.5℃、昇温速度5℃/分、及び歪み21.8%の条件で動的粘弾性を測定することにより求められる。
【0125】
上記樹脂材料は、様々な用途に用いることができる。上記樹脂材料は、例えば、半導体装置において半導体チップを埋め込むモールド樹脂を形成するために好適に用いられる。また、上記樹脂材料は、液晶ポリマー(LCP)の代替用途、ミリ波アンテナ用途、再配線層用途に好適に用いられる。上記樹脂材料は、上記用途に限られず、配線形成用途全般に好適に用いられる。
【0126】
上記樹脂材料は、接着材料として好適に用いられる。上記樹脂材料は、例えば、パワーオーバーレイパッケージ用接着材料、プリント配線基板用接着材料、フレキシブルプリント回路基板のカバーレイ用接着材料、半導体接合用接着材料として好適に用いられる。上記樹脂材料は、接着材料であることが好ましい。
【0127】
上記樹脂材料は、絶縁材料として好適に用いられる。上記樹脂材料は、プリント配線板において絶縁層を形成するために好適に用いられ、多層プリント配線板において絶縁層を形成するためにより好適に用いられる。上記樹脂材料は、絶縁材料であることが好ましく、層間絶縁材料であることがより好ましい。上記絶縁材料は、接着材料としての役割も備え得る。
【0128】
本発明に係る硬化物は、上述した樹脂材料が硬化された樹脂材料の硬化物である。本発明に係る硬化物は、樹脂材料の硬化物であって、該樹脂材料が上述した樹脂材料である。本発明に係る硬化物は、上述した樹脂材料を硬化させることにより得ることができる。本発明に係る硬化物を得る際の、上記樹脂材料の加熱条件は、樹脂材料が硬化する限り、特に限定されない。
【0129】
(積層構造体及び銅張積層板)
上記樹脂フィルムに対して、片面又は両面に金属層を表面に有する積層対象部材を積層することにより、積層構造体を得ることができる。上記積層構造体は、金属層を表面に有する積層対象部材と、上記金属層の表面上に積層された樹脂フィルムとを備え、上記樹脂フィルムが上述した樹脂材料である。上記樹脂フィルムと上記積層対象部材とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、平行平板プレス機又はロールラミネーター等の装置を用いて、加熱しながら又は加熱せずに加圧しながら、上記樹脂フィルムを、上記積層対象部材に積層可能である。
【0130】
上記金属層の材料は銅であることが好ましい。
【0131】
上記金属層を表面に有する積層対象部材は、銅箔等の金属箔であってもよい。
【0132】
上記樹脂材料は、銅張積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備え、上記樹脂フィルムが上述した樹脂材料である、銅張積層板が挙げられる。
【0133】
上記銅張積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1μm以上100μm以下であることが好ましい。また、上記樹脂材料の硬化物と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法等が挙げられる。
【0134】
(絶縁層付き回路基板)
上記樹脂材料は、絶縁層付き回路基板を得るために好適に用いられる。上記絶縁層付き回路基板の一例として、回路基板と、該回路基板の表面上に配置された絶縁層とを備え、上記絶縁層が、上述した樹脂材料の硬化物である絶縁層付き回路基板が挙げられる。
【0135】
上記絶縁層付き回路基板において、上記絶縁層は、回路基板の回路が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記絶縁層付き回路基板において、上記絶縁層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
【0136】
上記絶縁層付き回路基板は、従来公知の方法により得ることができる。
【0137】
(多層基板及び多層プリント配線板)
上記樹脂材料は、多層基板を得るために好適に用いられる。上記多層基板の一例として、回路基板と、該回路基板上に積層された絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。上記多層基板の絶縁層が、上述した樹脂材料の硬化物である。上記絶縁層は、回路基板の回路(金属層)が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記絶縁層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
【0138】
上記多層基板では、上記絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されていることが好ましい。
【0139】
粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ、特に限定されない。上記絶縁層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
【0140】
また、上記多層基板は、上記絶縁層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備えることが好ましい。
【0141】
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された絶縁層と、該絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える多層基板が挙げられる。上記絶縁層が、銅箔と該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張積層板を用いて、上記樹脂フィルムを硬化させることにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
【0142】
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数の絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。上記回路基板上に配置された上記複数の絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂材料を用いて形成される。上記多層基板は、上記樹脂フィルムを用いて形成されている上記絶縁層の少なくとも一方の表面に積層されている回路をさらに備えることが好ましい。
【0143】
上記樹脂材料は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために好適に用いられる
【0144】
上記多層プリント配線板は、例えば、回路基板と、上記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、複数の上記絶縁層間に配置された金属層とを備える。上記多層プリント配線板では、上記絶縁層の内の少なくとも1層が、上述した樹脂材料の硬化物である。
【0145】
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂材料を用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
【0146】
図1に示す多層プリント配線板11では、回路基板12の上面12aに、複数の絶縁層13~16が積層されている。絶縁層13~16は、硬化物層である。回路基板12の上面12aの一部の領域には、金属層17が形成されている。複数の絶縁層13~16のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する絶縁層16以外の絶縁層13~15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。回路基板12と絶縁層13の間、及び積層された絶縁層13~16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
【0147】
多層プリント配線板11では、絶縁層13~16が、上記樹脂材料の硬化物により形成されている。本実施形態では、絶縁層13~16の表面が粗化処理されているので、絶縁層13~16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。また、多層プリント配線板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。また、多層プリント配線板11では、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続で接続されていない上方の金属層と下方の金属層との間に、良好な絶縁信頼性が付与されている。
【0148】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0149】
以下の材料を用意した。
【0150】
(エポキシ化合物)
ビフェニル型エポキシ化合物(日本化薬社製「NC3000」、25℃で固形)
ナフトールアラルキル型エポキシ化合物(新日鐵住金化学社製「ESN-475V」、25℃で固形)
ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物(ADEKA社製「EP-4088S」、25℃で液状、25での粘度:230mPa・s)
【0151】
(硬化剤)
活性エステル化合物含有液(DIC社製「HPC-8000-65T」、固形分65重量%)
シアネート化合物含有液(ロンザジャパン社製「BA-3000S」、固形分75重量%)
【0152】
(無機微粒子付きフッ素樹脂粒子)
無機微粒子付きフッ素樹脂粒子1:
ポリテトラフルオロエチレン粒子(PTFE粒子)の外表面がシリカ微粒子により被覆された粒子(アドマテックス社製「P20-D1」、平均粒子径:2μm)
無機微粒子付きフッ素樹脂粒子2:
ポリテトラフルオロエチレン粒子(PTFE粒子)の外表面がアルミナ微粒子により被覆された粒子(下記の作製方法Aにより作製、平均粒子径:2μm)
【0153】
無機微粒子付きフッ素樹脂粒子2の作製方法A:
平均粒子径10nmのアルミナ微粒子3重量部と、平均粒子径2μmの球状PTFE(PTFE粒子)100重量部とを混合した。得られた混合物をハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所製)を用いて、最外周速度100m/sで3分間処理を行い、無機微粒子付きフッ素樹脂粒子2を得た。
【0154】
(フッ素樹脂粒子)
ポリテトラフルオロエチレン粒子(PTFE粒子)(ダイキン社製「L-5」、平均粒子径:0.2μm)
【0155】
(イミド化合物X)
ポリイミド化合物(下記の合成例Xに従って合成、重量平均分子量:20000)
マレイミド化合物(Designer Molecules Inc.社製「BMI-3000J」、重量平均分子量:3000)
【0156】
(合成例X)
撹拌機、分水器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、テトラカルボン酸二無水物(SABICジャパン合同会社製「BisDA-1000」)300.0gと、シクロヘキサノン665.5gとを入れ、容器中の溶液を60℃まで加熱した。次いで、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)(東京化成工業社製、脂肪族構造の炭素数15)137.4gを滴下した。その後、メチルシクロヘキサン121.0gと、エチレングリコールジメチルエーテル423.5gとを入れ、140℃で10時間かけてイミド化反応を行い、ポリイミド化合物含有溶液(不揮発分26.6重量%)を得た。なお、得られたポリイミド化合物の酸成分/アミン成分のモル比は1.04であった。
【0157】
(イミド化合物Xに相当しないマレイミド化合物)
フェニルマレイミド(分子量:173)
【0158】
(無機充填材)
シリカ含有スラリー(シリカ70重量%:アドマテックス社製「SC2050-HNG」、平均粒径0.5μm、フェニルアミノシラン処理、シクロヘキサノン30重量%)
【0159】
(硬化促進剤)
イミダゾール化合物(2-フェニル-4-メチルイミダゾール、四国化成工業社製「2P4MZ」、アニオン性硬化促進剤)
【0160】
(実施例1~7及び比較例1~4)
下記の表1,2に示す成分を下記の表1,2に示す配合量(単位は固形分重量部)で配合し、均一な溶液となるまで常温で撹拌し、樹脂材料を得た。
【0161】
樹脂フィルムの作製:
アプリケーターを用いて、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、東レ社製「XG284」、厚み25μm)の離型処理面上に得られた樹脂材料を塗工した後、100℃のギヤオーブン内で2分30秒間乾燥し、溶剤を揮発させた。このようにして、PETフィルム上に、厚さが40μmである樹脂フィルム(Bステージフィルム)が積層されている積層フィルム(PETフィルムと樹脂フィルムとの積層フィルム)を得た。
【0162】
(評価)
(1)粒子の分散性
得られた樹脂材料(ワニス)を、孔径20μmのメッシュフィルターに通した。粒子の分散性を以下の基準より評価した。本評価では、樹脂材料中の無機微粒子付きフッ素樹脂粒子(実施例1~7及び比較例2~4)又はフッ素樹脂粒子(比較例1)の分散性が評価されている。
【0163】
[粒子の分散性の判定基準]
○:メッシュフィルターを通したときに、残渣が存在しない
×:メッシュフィルターを通したときに、残渣が存在する
【0164】
(2)樹脂材料の100℃における溶融粘度
得られた樹脂フィルムの100℃における溶融粘度を、Rheometer装置(TAインスツルメント社製「AR-2000」)を用いて、周波数6.28rad/sec、開始温度60℃、測定間隔温度2.5℃、昇温速度5℃/分、及び歪み21.8%の条件で動的粘弾性を測定することにより求めた。
【0165】
[樹脂材料の100℃における溶融粘度の判定基準]
○○:溶融粘度が5Pa・s以上400Pa・s以下
○:溶融粘度が400Pa・sを超え500Pa・s以下
△:溶融粘度が5Pa・s未満又は500Pa・sを超える
【0166】
(3)硬化物の誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)
得られた厚さ40μmの樹脂フィルムを180℃で30分間加熱して仮硬化させた後、200℃で90分間加熱して、硬化物を得た。得られた硬化物を、幅2mm、長さ80mmの大きさに裁断して10枚を重ね合わせ、測定サンプルとした。関東電子応用開発社製「空洞共振摂動法誘電率測定装置CP521」及びキーサイトテクノロジー社製「ネットワークアナライザーN5224A PNA」を用いて、空洞共振法で常温(23℃)及び周波数5.8GHzにて、硬化物の誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を測定した。
【0167】
[硬化物の誘電率(Dk)の判定基準]
○:誘電率が2.80未満
△:誘電率が2.80以上3.00以下
×:誘電率が3.00超える
【0168】
[硬化物の誘電正接(Df)の判定基準]
○:誘電正接が4.00×10-3未満
△:誘電正接が4.00×10-3以上6.00×10-3未満
×:誘電正接が6.00×10-3以上
【0169】
(3)配線への埋め込み性
銅張り積層板(厚さ150μmのガラスエポキシ基板と厚さ35μmの銅箔との積層体)を用意した。銅箔をエッチング処理し、L/Sが50μm/50μm及び長さが1cmである銅パターンを26本作製し、凹凸基板を得た。得られた凹凸基板の両面に、名機製作所社製「バッチ式真空ラミネーターMVLP-500/600-IIA」を用いて、得られた積層フィルムの樹脂フィルム(Bステージフィルム)側を銅張積層板上に重ねてラミネートした。ラミネートの条件は、30秒減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃及び圧力0.7MPaでラミネートし、その後更にプレス圧力0.8MPa及びプレス温度100℃で60秒間プレスする条件とした。このようにして、凹凸基板上に樹脂フィルムが積層されている積層体を得た。PETフィルムを剥離した後、光学顕微鏡を用いて、凹凸基板における凹部分を観察し、凹部分において樹脂フィルムのボイドの有無を確認した。
【0170】
また、25℃で50時間保存した樹脂フィルムについても、同様の評価を行った。
【0171】
[パターン埋め込み性の判定基準]
○:保存前及び保存後の樹脂フィルムにおいて、ボイドが発生していない
△:保存前及び保存後の樹脂フィルムにおいて、ボイドが3個以下で発生
×:保存前又は保存後の樹脂フィルムにおいて、ボイドが3個を超えて発生
【0172】
(4)メッキピール強度
ラミネート工程及び半硬化処理:
100mm角の両面銅張積層板(CCL基板)(昭和電工マテリアルズ社製「MCL-E679FG」)を用意した。この両面銅張積層板の銅箔面の両面をメック社製「Cz8101」に浸漬して、銅箔の表面を粗化処理した。名機製作所社製「バッチ式真空ラミネーターMVLP-500-IIA」を用いて、粗化処理された銅張積層板の両面に、得られた積層フィルムの樹脂フィルム(Bステージフィルム)側を銅張積層板上に重ねてラミネートして、積層構造体を得た。ラミネートの条件は、30秒減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃及び圧力0.7MPaでラミネートし、更にプレス圧力0.8MPa及びプレス温度100℃で60秒間プレスした。その後、PETフィルムを付けたまま、積層構造体における樹脂フィルムを100℃で30分間加熱した後、180℃で30分間さらに加熱し、樹脂フィルムを半硬化させた。その後、PETフィルムを剥離することで、CCL基板に樹脂フィルムの半硬化物が積層されている積層体を得た。
【0173】
粗化処理:
(a)膨潤処理:
60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップセキュリガントP」)に、得られた積層体を入れて、10分間揺動させた。その後、純水で洗浄した。
【0174】
(b)過マンガン酸塩処理(粗化処理及びデスミア処理):
80℃の過マンガン酸カリウム(アトテックジャパン社製「コンセントレートコンパクトCP」)粗化水溶液に、膨潤処理後の積層体を入れて、30分間揺動させた。次に、40℃の洗浄液(アトテックジャパン社製「リダクションセキュリガントP」)を用いて2分間処理した後、純水で洗浄を行い、粗化処理した。
【0175】
無電解めっき処理:
得られた粗化処理された硬化物の表面を、60℃のアルカリクリーナ(アトテックジャパン社製「クリーナーセキュリガント902」)で5分間処理し、脱脂洗浄した。洗浄後、上記硬化物を25℃のプリディップ液(アトテックジャパン社製「プリディップネオガントB」)で2分間処理した。その後、上記硬化物を40℃のアクチベーター液(アトテックジャパン社製「アクチベーターネオガント834」)で5分間処理し、パラジウム触媒を付けた。次に、30℃の還元液(アトテックジャパン社製「リデューサーネオガントWA」)により、硬化物を5分間処理した。
【0176】
次に、上記硬化物を化学銅液(アトテックジャパン社製「ベーシックプリントガントMSK-DK」、「カッパープリントガントMSK」、「スタビライザープリントガントMSK」、及び「リデューサーCu」)に入れ、無電解めっきをめっき厚さが0.5μm程度になるまで実施した。無電解めっき後に、残留している水素ガスを除去するため、120℃の温度で30分間アニール処理した。なお、無電解めっきの工程までの全ての工程は、ビーカースケールで処理液を2Lとし、硬化物を揺動させながら実施した。
【0177】
電解めっき処理:
次に、無電解めっき処理された硬化物に、電解めっきをめっき厚さが25μmとなるまで実施した。電解銅めっきとして硫酸銅溶液(和光純薬工業社製「硫酸銅五水和物」、和光純薬工業社製「硫酸」、アトテックジャパン社製「ベーシックレベラーカパラシド HL」、アトテックジャパン社製「補正剤カパラシド GS」)を用いて、0.6A/cm2の電流を流しめっき厚さが25μm程度となるまで電解めっきを実施した。銅めっき処理後、硬化物を200℃で60分間加熱し、硬化物を更に硬化させた。このようにして、銅めっき層が上面に積層された硬化物を得た。
【0178】
メッキピール強度の測定:
得られた銅めっき層が上面に積層された硬化物の銅めっき層の表面に10mm幅の短冊状の切込みを、5mm間隔で合計6箇所入れた。90°剥離試験機(テスター産業社製「TE-3001」)に銅めっき層が上面に積層された硬化物をセットし、つかみ具で切込みの入った銅めっき層の端部をつまみあげ、銅めっき層を20mm剥離して剥離強度(メッキピール強度)を測定した。6箇所の切り込み箇所に対してそれぞれ剥離強度(メッキピール強度)を測定し、メッキピール強度の平均値を求めた。メッキピール強度を下記の基準で判定した。
【0179】
[メッキピール強度の判定基準]
○:メッキピール強度の平均値が0.50kgf/cm以上
△:メッキピール強度の平均値が0.30kgf/cm以上0.50kgf/cm未満
×:メッキピール強度の平均値が0.30kgf/cm未満
【0180】
組成及び結果を下記の表1,2に示す。
【0181】
【0182】
【符号の説明】
【0183】
11…多層プリント配線板
12…回路基板
12a…上面
13~16…絶縁層
17…金属層