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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087434
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】止水装置
(51)【国際特許分類】
   E21F 17/103 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
E21F17/103
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202258
(22)【出願日】2022-12-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000252207
【氏名又は名称】六菱ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 奏一朗
(57)【要約】
【課題】労力や手間を軽減しながら十分な止水性能を確保可能とする止水装置の提供。
【解決手段】止水装置2は、トンネル1の内周面に固定される反力受け3と、トンネル1の内周面寄りの環状領域を除く他領域を塞ぐように反力受け3の一側に配置される止水蓋4と、トンネル1の内周面との間に所定の空間を作るように止水蓋4の外周に設けられる筒状のシールケース5と、このシールケース5の中心軸線方向の一端側と他端側とにそれぞれ径方向外向きに延出してトンネル1の内周面に近接するように設けられる第1、第2側壁51,52と、シールケース5の外周面において第1側壁51寄りの領域と第2側壁52寄りの領域とに嵌め合わされてトンネル1の内周面に接触させられるリング状の第1、第2チューブシール6,7と、第1、第2チューブシール6,7の中空部に流体を加圧供給する加圧装置10と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内の所定位置に設置されることにより、前記トンネルの上流側領域と下流側領域とを分断する止水装置であって、
前記トンネルの内周面に固定される反力受けと、
前記トンネルの内周面寄りの環状領域を除く他領域を塞ぐように前記反力受けの一側に配置される止水蓋と、
前記トンネルの内周面との間に所定の空間を作るように前記止水蓋の外周に設けられる筒状のシールケースと、
このシールケースの中心軸線方向の一端側と他端側とにそれぞれ径方向外向きに延出して前記トンネルの内周面に近接するように設けられる第1、第2側壁と、
前記シールケースの外周面において前記第1側壁寄りの領域と前記第2側壁寄りの領域とに嵌め合わされて前記トンネルの内周面に接触させられるリング状の第1、第2チューブシールと、
前記第1、第2チューブシールの中空部に流体を加圧供給する加圧装置と、を備えていることを特徴とする止水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の止水装置において、
前記シールケースの外周面には、前記第1側壁との間に第1環状溝を作る第1中間壁と、前記第2側壁との間に第2環状溝を作る第2中間壁と、が設けられており、
前記第1環状溝には、前記第1チューブシールが収納されており、前記第2環状溝には、前記第2チューブシールが収納されていることを特徴とする止水装置。
【請求項3】
請求項2に記載の止水装置において、
前記第1中間壁と前記第2中間壁とは、それらの間に第3環状溝を作るように離隔されており、
前記第3環状溝には、流体を加圧供給することにより前記トンネルの内周面に対する前記第1、第2チューブシールの接触部分の止水試験を行う止水試験装置が接続されていることを特徴とする止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内の所定位置に設置されることにより、前記トンネルの上流側領域と下流側領域とを分断する止水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば大雨などにより円筒形状のトンネル内に水が流れ込むような場合、前記トンネル内の所定位置で止水する必要がある。
【0003】
例えば特許文献1には、円筒形状のトンネル内の所定位置に止水壁を設置することにより、前記トンネル内の所定位置より先に水が流れ込むことを防止するということが記載されている。この特許文献1では、前記止水壁を複数の鋼板で構成しており、それらの連結部分に止水ゴムを設けている。
【0004】
例えば特許文献2には、円筒形状のトンネル内の所定位置に遮水壁を設置することにより、前記トンネル内の所定位置より先に水が流れ込むことを防止するということが記載されている。
【0005】
例えば特許文献3には、管路内における流水その他を閉塞するための管路用閉塞栓において、受板と押板との間に介装した断面U形の環状パッキングを、基板に螺合された緊締杆によって回動することによって前記押板を押進して円周方向に弯曲膨出させて、前記パッキングの中間部を管体の内面に圧接させるということが記載されている。
【0006】
例えば特許文献4には、管への水、土砂の進入防止用盲蓋において、円板の側面に円筒を固設し、該円筒の外周に柔軟材製で、断面がV字状でシールリングの2個を向い合わせてはめ、前記円板に挿通した多数のボルトを前記シールリングの孔を貫通してフランジのスリーブに螺合してなるということが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4588232号公報
【特許文献2】特開平10-299400号公報
【特許文献3】実開平5-61287号公報
【特許文献4】実公昭55-7481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1,2では、トンネルの内周と止水壁の外周との間の止水性能が不十分であることが懸念される。
【0009】
また、上記特許文献3,4では、円周方向の複数ヶ所に螺合される緊締杆、ボルトを個別に締め込む作業が必要になるなど、労力と手間がかかり過ぎるとともに、管、管体の内周面に対するパッキン、シールリングの接触状態を円周方向で均等に調整することが困難であることが懸念される。
【0010】
このような事情に鑑み、本発明は、労力や手間を軽減しながら十分な止水性能を確保可能とする止水装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、トンネル内の所定位置に設置されることにより、前記トンネルの上流側領域と下流側領域とを分断する止水装置であって、前記トンネルの内周面に固定される反力受けと、前記トンネルの内周面寄りの環状領域を除く他領域を塞ぐように前記反力受けの一側に配置される止水蓋と、前記トンネルの内周面との間に所定の空間を作るように前記止水蓋の外周に設けられる筒状のシールケースと、このシールケースの中心軸線方向の一端側と他端側とにそれぞれ径方向外向きに延出して前記トンネルの内周面に近接するように設けられる第1、第2側壁と、前記シールケースの外周面において前記第1側壁寄りの領域と前記第2側壁寄りの領域とに嵌め合わされて前記トンネルの内周面に接触させられるリング状の第1、第2チューブシールと、前記第1、第2チューブシールの中空部に流体を加圧供給する加圧装置と、を備えていることを特徴としている。
【0012】
この構成によれば、前記止水蓋が前記反力受けにより支えられているので、前記トンネル内において前記反力受けと反対側から大量の水が流入してきた場合にも、当該水の圧力によって前記止水蓋が倒れることが防止される。
【0013】
しかも、前記止水装置の設置時において、前記加圧装置により前記トンネルの中心軸線方向に並ぶ前記第1、第2チューブシールを円周方向に均等に径方向外向きに膨張させることにより、前記第1、第2チューブシールを前記トンネルの内周面に円周方向に均等に圧接させることができる。
【0014】
これにより、前記トンネルの内周面と前記第1、第2チューブシールとの接触部分の止水性能を十分に高めることができるとともに、前記止水性能を確保するための労力や手間を従来例に比べて大幅に軽減することができる。
【0015】
ところで、上記止水装置において、前記シールケースの外周面には、前記第1側壁との間に第1環状溝を作る第1中間壁と、前記第2側壁との間に第2環状溝を作る第2中間壁と、が設けられており、前記第1環状溝には、前記第1チューブシールが収納されており、前記第2環状溝には、前記第2チューブシールが収納されている構成とすることができる。
【0016】
この構成によれば、前記第1、第2チューブシールの中空部に流体を加圧供給したときに、当該第1、第2チューブシールがその中心軸線方向への膨張が制限されることになって径方向外向きに効率良く膨張されるようになる。これにより、前記第1、第2チューブシールの止水性能がさらに向上する。
【0017】
また、上記止水装置において、前記第1中間壁と前記第2中間壁とは、それらの間に第3環状溝を作るように離隔されており、前記第3環状溝には、流体を加圧供給することにより前記トンネルの内周面に対する前記第1、第2チューブシールの接触部分の止水試験を行う止水試験装置が接続されている構成とすることができる。
【0018】
この構成によれば、前記止水装置の設置後に、前記第3環状溝と前記トンネルの内周面とで囲む環状空間に前記止水試験装置により流体を加圧供給することにより、前記トンネルの内周面に対する前記第1、第2チューブシールの接触部分からの前記流体の漏洩を調べることが可能になる。
【0019】
これにより、前記止水装置の設置時に、当該止水装置の止水性能を確認できるようになるとともに、長期間設置時に止水性能を定期的に確認することができるなど、信頼性の向上に貢献できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、労力や手間を軽減しながら十分な止水性能を確保可能とする止水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る止水装置の一実施形態で、図3の矢印(1)方向から見た図である。
図2】トンネルに止水装置を使用する形態を断面で示す模式図である。
図3図1の(3)-(3)線断面を矢印方向から見た図である。
図4図3の矢印(4)方向から見た図である。
図5図3のシールケースを矢印(5)方向から見た図である。
図6図3の(6)の円内を拡大した図である。
図7】本発明に係る止水装置の他の実施形態で、図3に対応する図である。
図8】本発明に係る止水装置においてトンネルの断面形状の他の例を説明するための断面図である。
図9】本発明に係る止水装置においてトンネルの断面形状のさらに他の例を説明するための断面図である。
図10】本発明に係る止水装置の他の使用形態を断面で示す模式図である。
図11】本発明に係る止水装置のさらに他の使用形態を平面的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1から図6に本発明の一実施形態を示している。トンネル1は、図2に示すように、立坑1aの下端に接続される横穴とされており、このトンネル1内の所定位置には、止水装置2が設置されている。このトンネル1の断面形状は、円形に形成されている。
【0024】
止水装置2は、トンネル1の上流側領域と下流側領域とを分断するものであって、反力受け3、止水蓋4、シールケース5、第1、第2チューブシール6,7、加圧装置10などを備えている。
【0025】
止水装置2は、例えば図2に示すように、トンネル1を図2の破線で示すように延長する際に、仮に立坑1aから水が流入しても、この水がトンネル1に浸入することを防止するために使用することができる。
【0026】
反力受け3は、例えば鋼材などにより形成されており、図1に示すように、トンネル1の内周面において円周方向の複数ヶ所に配置されていて、アンカーボルト(符号省略)などにより固定されている。
【0027】
止水蓋4は、トンネル1の内周面寄りの環状領域を除く他領域を塞ぐように反力受け3の一側に配置されている。
【0028】
この止水蓋4は、図1図3ならびに図4に示すように、外形が円形に形成されていて、複数のピース4aを組み合わせることにより形成されている。
【0029】
前記各ピース4aは、平板(金属、または樹脂など)の片面にU形鋼4bが取り付けられることにより補強されている。このような複数のピース4aを面状に並べるとともに、図6に示すように、当該各ピース4aのU形鋼4b同士を重ね合わせて、この重ね合わせ部分を締結部材(例えばボルトなど、符号省略)で連結することにより、止水蓋4が形成される。
【0030】
この止水蓋4の所定領域には、例えば1つの扉41、例えば4つの通孔42,43,44,45が設けられている。
【0031】
扉41は、詳細に図示していないが、トンネル1内において止水装置2により分断される上流側領域と下流側領域との間で作業員が出入り可能とする。扉41の周辺は、詳細に図示していないが、適宜のパッキンやシールなどによって密封されるようになっている。また、通孔42~45は、例えば加圧装置10の各管、その他の配管、ケーブルなどが密封された状態で挿通される。
【0032】
シールケース5は、止水蓋4の外周に当該止水蓋4の中心軸線方向の一方(図3の左側)へ延出するように設けられていて、トンネル1の内周面との間に所定の空間を作る。
【0033】
このシールケース5は、図5に示すように、円筒形状に形成されていて、複数のピース5aを組み合わせることにより形成されている。
【0034】
前記各ピース5aは、外形が矩形の平板(金属、または樹脂など)が扇形に湾曲されていて、一端および他端にフランジ5bが設けられているとともに、当該両端のフランジ5bの間に補強リブ5cが取り付けられて補強されている。このような複数のピース5aを円周方向に並べて当該各ピース5aのフランジ5b同士を重ね合わせて、この重ね合わせ部分を締結部材(例えばボルトなど、符号省略)で連結することにより、シールケース5が形成される。
【0035】
図3に示すように、シールケース5の中心軸線方向の一端側には第1側壁51が、また、シールケース5の中心軸線方向の他端側には第2側壁52が、それぞれ設けられている。
【0036】
第1、第2側壁51,52は、シールケース5と別体に形成されており、シールケース5の一端側と他端側とにそれぞれ第1、第2当て板5d,5eを介して締結部材(例えばボルトなど、符号省略)で連結されている。第1、第2側壁51,52の外周面は、トンネル1の内周面に近接されている。
【0037】
第1、第2側壁51,52は、環状に形成されていて、複数のピース51a,52aを円周方向に組み合わせることにより形成されている。
【0038】
前記各ピース51a,52aは、外形が扇形の平板(金属、または樹脂など)の一端および他端にフランジ51b,52bが設けられているとともに、外側面に補強リブ51c,52cが取り付けられて補強されている。このような複数のピース51a,52aは、円周方向に並べるようにして第1、第2当て板5d,5eに軸方向から重ね合わせ、当該重ね合わせ部分を締結部材(例えばボルトなど、符号省略)で連結することにより、第1、第2側壁51,52が形成される。各ピース51a,52aのフランジ51b,52b同士は重ね合わされている。
【0039】
なお、前記各ピース4a,5a,51a,52aの組み合わせ部分は、詳細に図示していないが、適宜のパッキンやシールなどによって密封されるようになっている。
【0040】
シールケース5の外周面において第1側壁51寄りの領域には、第1中間壁53が離隔して対向配置されている。この第1中間壁53と第1側壁51との対向間を第1環状溝55と言う。
【0041】
シールケース5の外周面において第2側壁52寄りの領域には、第2中間壁54が離隔して対向配置されている。この第2中間壁54と第2側壁52との対向間を第2環状溝56と言う。
【0042】
第1、第2中間壁53,54は、環状板とされており、トンネル1の内周面に近接されている。第1中間壁53と第2中間壁54とは、離隔して対向配置されている。この第1中間壁53と第2中間壁54との対向間を第3環状溝57と言う。
【0043】
この第3環状溝57は、トンネル1の内周面との間に環状空間を作る。この環状空間は、トンネル1の内周面に対する第1、第2チューブシール6,7の接触部分の止水試験を行うための空間とされる。
【0044】
ところで、止水蓋4は、反力受け3に拘束状態で支持されていないので、トンネル1内における径方向の位置(高さ位置)は、高さ調整装置20により調整されるようになっている。
【0045】
高さ調整装置20は、図1および図3に示すように、複数(例えば4つ)のブラケット21と、複数(例えば4つ)のボルト22と、を含んだ構成である。
【0046】
ブラケット21は、第1、第2側壁51,52の下側領域の円周方向の複数ヶ所(例えば4ヶ所)に設けられている。ボルト22は、各ブラケット21にそれぞれ1つずつ径方向外向きにねじ込み装着されている。
【0047】
そして、当該各ボルト22のねじ軸部分の先端をトンネル1の内周面に当接させるとともに、ボルト22のねじ込み量を調整することにより、トンネル1内における止水蓋4およびシールケース5の径方向の位置(高さ位置)を調整することができるようになる。
【0048】
これにより、止水蓋4の外周面とトンネル1の内周面との対向間隔を調整できるので、トンネル1の内周面に対する第1、第2側壁51,52および第1、第2中間壁53,54の対向隙間を調整できるようになる。
【0049】
第1、第2チューブシール6,7は、リング状である。第1チューブシール6は、第1環状溝55に配置されており、トンネル1の内周面に接触させられるようになっている。第2チューブシール7は、第2環状溝56に収納されており、トンネル1の内周面に接触させられるようになっている。
【0050】
加圧装置10は、第1、第2チューブシール6,7の中空部に流体(例えば水、空気、油など)を加圧供給するものであって、ポンプ11、第1、第2ノズル12a,12b、第1、第2加圧管13a,13b、第1、第2供給弁14a,14b、第1、第2ゲージ15a,15b、第1、第2排出管16a,16b、第1、第2排出弁17a,17bなどを備えている。
【0051】
この加圧装置10は、さらに止水試験装置(符号省略)として、第3ノズル12c、第3加圧管13c、第3供給弁14c、第3ゲージ15c、第3排出管16c、第3排出弁17cなどを備えている。
【0052】
第1ノズル12aの先端は、第1チューブシール6の中空部内に挿入されている。第2ノズル12bの先端は、第2チューブシール7の中空部内に挿入されている。第3ノズル12cの先端は、第3環状溝57内に挿入されている。
【0053】
次に、止水装置2の使用方法を説明する。
【0054】
第1、第2チューブシール6,7を装着した止水蓋4をトンネル1内において反力受け3よりも上流側領域に配置して、高さ調整装置20によりトンネル1内での止水蓋4の径方向位置を調整することにより、第1、第2チューブシール6,7の外周とトンネル1の内周面との間隔を円周方向に均等にする。
【0055】
そして、トンネル1の中心軸線方向に並ぶ第1、第2チューブシール6,7に加圧装置10により流体を加圧供給することにより、第1、第2チューブシール6,7を第1、第2環状溝55,56内において径方向外向きのみに膨張させてトンネル1の内周面に圧接させる。なお、第1、第2チューブシール6,7において、流体を加圧供給した膨張状態が図3の二点鎖線で示されており、流体を加圧供給していない収縮状態が図3の実線で示されている。
【0056】
このように、止水装置2を設置した後、第3環状溝57とトンネル1の内周面とで囲む環状空間に前記止水試験装置により流体(例えば水)を加圧供給することにより、トンネル1の内周面に対する第1、第2チューブシール6,7の接触部分からの流体の漏洩を調べることが可能になる。
【0057】
これにより、止水装置2の設置時に、当該止水装置2の止水性能を確認できるようになるとともに、長期間設置時に止水性能を定期的に確認することができるなど、信頼性の向上に貢献できる。
【0058】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態によれば、止水蓋4が反力受け3により支えられているので、トンネル1の立坑1aから大量の水が流入してきた場合にも、水圧によって止水装置2の止水蓋4が倒れることが防止される。しかも、加圧装置10により第1、第2チューブシール6,7を円周方向に均等に径方向外向きに膨張させることができるので、第1、第2チューブシール6,7をトンネル1の内周面に円周方向に均等に圧接させることができる。
【0059】
これにより、トンネル1の内周面と第1、第2チューブシール6,7との接触部分の止水性能を十分に高めることができるとともに、当該止水性能を確保するための労力や手間を従来例に比べて大幅に軽減することができる。
【0060】
さらに、上記止水装置2は、それを構成する部品を分解して、別の現場において再度組み合わせることにより、再利用することが可能であるなど、経済的に有利になる。
【0061】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲内で適宜に変更することが可能である。
【0062】
(1)上記実施形態では、反力受け3を円周方向の複数ヶ所に設置した例を挙げているが、本発明はこれのみに限定されるものではない。反力受け3は、例えば図示していないが、円周方向に連続する環状部材にすることが可能である。
【0063】
(2)例えば図7に本発明の他の実施形態を示している。図7は、図3に対応する図である。
【0064】
この実施形態では、トンネル1の内径側に二次覆工31を設置するとともに、この二次覆工31の端部に下駄材32を設け、この下駄材32の側部に反力受け33を配置する構成になっている。なお、下駄材32は、例えば鋼材またはコンクリートでされる。また、反力受け33は、例えば円盤形状とされる。但し、反力受け33の代わりに、図1に示した複数の鋼材製の反力受け3を用いることも可能である。
【0065】
その他の構成については、図1に示す実施形態と基本的に同様とされている。この実施形態でも上記実施形態と同様の作用、効果が得られる。
【0066】
(3)上記各実施形態では、トンネル1の断面形状を円形とした例を挙げているが、本発明はこれのみに限定されるものではない。
【0067】
トンネル1の断面形状は、例えば図8に示すように矩形状とすることができる他、図9に示すように楕円形状とすることができる。
【0068】
このような矩形状または楕円形状のトンネル1の場合、共に、トンネル1の内周面に第1、第2チューブシール6,7を密に接触させるために、トンネル1の内隅を丸く形成することが好ましい。
【0069】
(4)上記各実施形態に示した止水装置2は、図10に示すように、トンネル1において立坑1aを挟んだ左側領域と右側領域とに設置することが可能である。
【0070】
このような設置形態では、立坑1aから流入する水がトンネル1の左側領域と右側領域に浸入することを防止できるようになる。
【0071】
(5)上記各実施形態に示した止水装置2は、図11に示すように、シールドマシンと呼ばれる掘削機40によりトンネル1の所定位置に直交する方向から分岐トンネル1bを接続する際に、トンネル1の前記所定位置を挟む両側に設置することが可能である。
【0072】
このような設置形態では、分岐トンネル1bを作る過程において掘削土や地中に含まれる水分などがトンネル1に流入することを防止できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、トンネルの止水装置に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 トンネル
1a 立坑
2 止水装置
3 反力受け
4 止水蓋
5 シールケース
51 第1側壁
52 第2側壁
53 第1中間壁
54 第2中間壁
55 第1環状溝
56 第2環状溝
57 第3環状溝
6 第1チューブシール
7 第2チューブシール
10 加圧装置
11 ポンプ
12a 第1ノズル
12b 第2ノズル
12c 第3ノズル
13a 第1加圧管
13b 第2加圧管
13c 第3加圧管
14a 第1供給弁
14b 第2供給弁
14c 第3供給弁
15a 第1ゲージ
15b 第2ゲージ
15c 第3ゲージ
16a 第1排出管
16b 第2排出管
16c 第3排出管
17a 第1排出弁
17b 第2排出弁
17c 第3排出弁
20 高さ調整装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11