(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087440
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】クレーン装置
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20240624BHJP
B66C 23/88 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B66C13/00 D
B66C23/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202264
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】原田 美森
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA06
3F205AC01
3F205CB02
3F205DA04
3F205KA10
(57)【要約】
【課題】適切な安全処理を自動で行い、且つ使い勝手の良いクレーン装置を提供する。
【解決手段】クレーン装置のコントローラが実装する制御プログラムは、センサが計測した揚程L2、及びブーム先端部から吊荷までの距離である繰り出し長さL1を取得する(S12)。制御プログラムは、揚程L2及び繰り出し長さL1に基づいて、監視対象面から吊荷までの距離である吊荷高さHを算出する(S13)。制御プログラムは、揚程L2及び吊荷高さHに基づいて判断領域を設定する(S14)。制御プログラムは、設定した判断領域と監視画像データとに基づいて、人が映っているか否かが判断される判断画像データを生成する。制御プログラムは、判断画像データが示す判断画像に人が映っているとの判断結果を取得した場合(S18及びS19:Yes)、ウインチ等の駆動を停止させる(S23)。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
起伏及び伸縮可能なブームと、
上記ブームの基端部側に設けられ、ワイヤロープの繰り出し及び巻き取りが可能なウインチと、
上記ウインチから繰り出されて上記ブームの先端部に掛け回された上記ワイヤロープに繋がれた吊荷用フックと、
上記ブームの先端部に設置されており、下方を撮像して監視画像データを出力する監視カメラと、
上記監視画像データが入力されるコントローラと、を備え、
上記コントローラは、
監視対象面から上記吊荷用フックに吊下された吊荷までの距離である吊荷高さを決定する吊荷高さ決定処理と、
上記吊荷高さ及び上記監視画像データに基づいて、上記監視画像データが示す監視画像の一部の領域を、人が映っているか否かを判断する判断領域として設定する判断領域設定処理と、
上記判断領域に人が映っているか否かの判断結果を取得する結果取得処理と、
上記判断領域に人が映っていることを示す上記判断結果を取得したことに基づいて所定の安全処理と、を実行するクレーン装置。
【請求項2】
上記ブームの先端部からの上記ワイヤロープの繰り出し長さに応じた第1計測値を出力するワイヤ長さセンサと、
上記ブームの先端部に設置されており、当該先端部から上記監視対象面までの距離に応じた第2計測値を出力する測距センサと、を更に備え、
上記吊荷高さ決定処理は、
上記第1計測値が示す上記繰り出し長さ、及び上記第2計測値が示す距離に基づいて、上記吊荷高さを算出する処理である、請求項1に記載のクレーン装置。
【請求項3】
上記ブームの先端部からの上記ワイヤロープの繰り出し長さに応じた第1計測値を出力するワイヤ長さセンサと、
上記ブームの長さに応じた第3計測値を出力するブーム長さセンサと、
上記ブームの起伏角度に応じた第4計測値を出力する起伏角度センサと、
上記吊荷が上記ワイヤロープに加える負荷に応じた第5計測値を出力する吊荷荷重センサと、を更に備え、
上記吊荷高さ決定処理は、
上記第5計測値が示す上記負荷がゼロから変化したとき或いはゼロになったときである所定時点における上記第1計測値、上記第3計測値、及び上記第4計測値を取得する第1取得処理と、
上記第1取得処理で取得した上記第1計測値、上記第3計測値、及び上記第4計測値に基づいて、クレーン設置面と上記監視対象面との高さの差を示す相対高さを算出する処理と、
上記相対高さと、新たに取得した上記第1計測値、上記第3計測値、及び上記第4計測値に基づいて、上記吊荷高さを算出する処理と、を含む、請求項1に記載のクレーン装置。
【請求項4】
上記ブームの先端部からの上記ワイヤロープの繰り出し長さに応じた第1計測値を出力するワイヤ長さセンサと、
上記ブームの長さに応じた第3計測値を出力するブーム長さセンサと、
上記ブームの起伏角度に応じた第4計測値を出力する起伏角度センサと、
クレーン設置面と上記監視対象面との差を示す相対高さの入力を受け付ける入力装置と、を更に備え、
上記吊荷高さ決定処理は、
上記相対高さ、上記第1計測値、上記第3計測値、及び上記第4計測値に基づいて、上記吊荷高さを算出する処理である、請求項1に記載のクレーン装置。
【請求項5】
上記吊荷高さ決定処理は、
上記監視画像に映る特定物体のサイズと、メモリに予め記憶された閾値サイズ或いは演算式とに基づいて上記吊荷高さを決定する処理を含む、請求項1に記載のクレーン装置。
【請求項6】
上記監視カメラの画角は一定であり、
上記コントローラは、
上記監視対象面から上記監視カメラまでの距離であるカメラ高さを決定するカメラ高さ決定処理を更に実行し、
上記判断領域設定処理は、上記カメラ高さに更に基づいて上記判断領域を設定する処理である、請求項1に記載のクレーン装置。
【請求項7】
上記コントローラは、
コンピュータと、
上記吊荷高さ決定処理、判断領域設定処理、結果取得処理、及び安全処理を上記コンピュータに実行させる制御プログラム、及び人が映っているか否かを判断する人判断処理と判断結果を出力する処理とを上記コンピュータに実行させる人判断プログラムを記憶するメモリと、を備え、
上記判断領域設定処理は、
上記吊荷高さ及び上記監視画像データに基づいて判断画像データを生成する処理含み、
上記結果取得処理は、
上記判断画像データを上記人判断プログラムに受け渡す処理と、
上記人判断プログラムから上記判断結果を受け取る処理とを含む、請求項1に記載のクレーン装置。
【請求項8】
上記コントローラは、
上記監視対象面から上記監視カメラまでの距離であるカメラ高さを決定するカメラ高さ決定処理を更に実行し、
上記判断領域設定処理は、
上記カメラ高さ及び上記監視画像データに基づいて吊荷の揺れの振幅を決定する振幅決定処理を含み、当該振幅に更に基づいて上記判断領域を設定する処理である、請求項1に記載のクレーン装置。
【請求項9】
旋回台と、
上記旋回台に搭載され、且つ起伏及び伸縮可能なブームと、
上記ブームの基端部側に設けられ、ワイヤロープの繰り出し及び巻き取りが可能なウインチと、
上記ウインチから繰り出されて上記ブームの先端部に掛け回された上記ワイヤロープに繋がれた吊荷用フックと、
上記ブームの先端部に設置されており、下方を撮像して監視画像データを出力する監視カメラと、
上記旋回台の旋回操作と、上記ブームの起伏操作及び伸縮操作とを受け付ける操縦装置と、
上記監視画像データが入力されるコントローラと、を備え、
上記コントローラは、
監視対象面から上記吊荷用フックまでの距離であるフック高さを決定するフック高さ決定処理と、
上記フック高さが、メモリに予め記憶された閾値高さ未満であるか否かを判断するフック高さ判断処理と、
上記フック高さが上記閾値高さ未満であることに基づいて、上記旋回操作、上記起伏操作、及び上記伸縮操作がそれぞれ示す移動方向及び移動速度に基づいて、所定時間経過後までの上記吊荷用フックの移動軌跡を推定する軌跡推定処理と、
上記監視画像データ及び上記移動軌跡に基づいて、上記監視画像データが示す画像の一部の領域を、人が映っているか否かを判断する判断領域として設定する判断領域設定処理と、
上記判断領域に人が映っているか否かの判断結果を取得する結果取得処理と、
上記判断領域に人が映っていることを示す上記判断結果を取得したことに基づいて所定の安全処理と、を実行するクレーン装置。
【請求項10】
吊荷が上記ワイヤロープに加える負荷に応じた計測値を出力する吊荷荷重センサを更に備え、
上記コントローラは、上記計測値が示す負荷がゼロであることに基づいて、上記フック高さ決定処理、上記軌跡推定処理、上記判断領域設定処理、上記結果取得処理、及び上記安全処理を実行する、請求項9に記載のクレーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームの先端部に監視カメラが設けられたクレーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、監視カメラを備えるクレーン装置を開示する。監視カメラは、ブームの先端部に取り付けられ、吊荷及びその周辺を撮影する。監視カメラが撮影した監視映像は、キャビンに設置された監視モニタに表示される。オペレータ(操縦者)は、監視映像を見ながらクレーン装置の操縦を行う。
【0003】
特許文献1に記載されたクレーン装置では、監視映像の中央部分を囲むオブジェクトが監視映像に重ねて表示される。当該オブジェクトは、フックの垂直投影点を中心とする円であり、これは地面における所定半径(5m)の円形領域を示す。このオブジェクトは、吊荷の運搬作業における安全性を確保するため、オペレータに注意を促す領域(注意領域)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたクレーン装置では、上記注意領域に映った人をオペレータが看過してしまうおそれがある。そこで、本願発明者は、上記注意領域に人が映っているか否かの判断を、オペレータではなくプログラム(いわゆる人判断プログラム)に行わせる点に着目した。そして、上記注意領域に人が映っていると人判断プログラムが判断した場合に、クレーンの駆動停止等の処理(安全処理)をクレーン装置に自動で行わせることにより、作業の安全性をより向上させることができると考えた。
【0006】
ただし、安全処理の自動実行が採用される場合、次のような問題の発生が予想される。すなわち、人が映っているか否かの判断の対象となる領域(判断領域)が、人の存在により作業の安全上支障が生じると想定される範囲(想定範囲)よりも広く設定されると、安全上支障がないにも拘らず安全処理が実行され、作業中にクレーン装置が停止する。
【0007】
一方、クレーン装置では、吊荷の運搬作業の前後において、吊荷用フックが地表などの作業面付近を移動される場合がある。そこで、本願発明者は、作業面付近における吊荷用フックの移動においても、人判断プログラムを用いて上記安全処理を自動で行うことにより、作業の安全性を向上させるべきであると考えた。
【0008】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、適切な安全処理を自動で行い、使い勝手を向上させたクレーン装置を提供することである。また、本発明の第2の目的は、作業面(監視対象面)付近において吊荷用フックを安全に移動させることが可能なクレーン装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 第1の発明に係るクレーン装置は、起伏及び伸縮可能なブームと、上記ブームの基端部側に設けられ、ワイヤロープの繰り出し及び巻き取りが可能なウインチと、上記ウインチから繰り出されて上記ブームの先端部に掛け回された上記ワイヤロープに繋がれた吊荷用フックと、上記ブームの先端部に設置されており、下方を撮像して監視画像データを出力する監視カメラと、上記監視画像データが入力されるコントローラと、を備える。上記コントローラは、監視対象面から上記吊荷用フックに吊下された吊荷までの距離である吊荷高さを決定する吊荷高さ決定処理と、上記吊荷高さ及び上記監視画像データに基づいて、上記監視画像データが示す監視画像の一部の領域を、人が映っているか否かを判断する判断領域として設定する判断領域設定処理と、上記判断領域に人が映っているか否かの判断結果を取得する結果取得処理と、上記判断領域に人が映っていることを示す上記判断結果を取得したことに基づいて所定の安全処理と、を実行する。
【0010】
人の存在により作業の安全上支障が生じると想定される想定範囲は、吊荷の高さが高くなるほど広くなり、吊荷の高さが低くなるほど狭くなる。人が映っているか否かが判断される判断領域は、想定範囲と一致するように、想定範囲に影響を及ぼす吊荷高さに応じて設定される。したがって、第1の発明に係るクレーン装置は、判断領域が想定範囲に一致するように適切に設定することができる。その結果、第1の発明に係るクレーン装置は、適切な安全処理を自動で行い、且つ使い勝手を向上させることができる。
【0011】
(2) 第1の発明に係るクレーン装置は、上記ブームの先端部からの上記ワイヤロープの繰り出し長さに応じた第1計測値を出力するワイヤ長さセンサと、上記ブームの先端部に設置されており、当該先端部から上記監視対象面までの距離に応じた第2計測値を出力する測距センサと、を更に備えていてもよい。上記吊荷高さ決定処理は、上記第1計測値が示す上記繰り出し長さ、及び上記第2計測値が示す距離に基づいて、上記吊荷高さを算出する処理である。
【0012】
吊荷高さは、ワイヤ長さセンサが出力した第1計測値、及び測距センサが出力した第2計測値に基づいて算出される。したがって、監視対象面の高さ位置やクレーン設置面の高さ位置に関係なく吊荷高さを決定することができる。その結果、どのような作業環境であっても、判断領域を適切に設定することができる。
【0013】
(3) 第1の発明に係るクレーン装置は、上記ブームの先端部からの上記ワイヤロープの繰り出し長さに応じた第1計測値を出力するワイヤ長さセンサと、上記ブームの長さに応じた第3計測値を出力するブーム長さセンサと、上記ブームの起伏角度に応じた第4計測値を出力する起伏角度センサと、上記吊荷が上記ワイヤロープに加える負荷に応じた第5計測値を出力する吊荷荷重センサと、を更に備えていてもよい。上記吊荷高さ決定処理は、上記第5計測値が示す上記負荷がゼロから変化したとき或いはゼロになったときである所定時点における上記第1計測値、上記第3計測値、及び上記第4計測値を取得する第1取得処理と、上記第1取得処理で取得した上記第1計測値、上記第3計測値、及び上記第4計測値に基づいて、クレーン設置面と上記監視対象面との高さの差を示す相対高さを算出する処理と、上記相対高さと、新たに取得した上記第1計測値、上記第3計測値、及び上記第4計測値に基づいて、上記吊荷高さを算出する処理と、を含む。
【0014】
吊荷がワイヤロープに加える負荷がゼロから変化したときは、ワイヤロープの巻き上げにより吊荷が監視対象面から離れた(いわゆる、地切り)ときを示す。当該負荷がゼロになったときは、ワイヤロープの巻き下げにより吊荷が監視対象面に着地したときを示す。コントローラは、所定時点における第1計測値、第3計測値、及び第4計測値に基づいて、クレーン設置面と上記監視対象面との差に応じた相対高さを算出する。コントローラは、算出した相対高さと、新たに取得した第1計測値、第3計測値、及び第4計測値とに基づいて、吊荷高さを算出する。したがって、監視対象面の高さ位置やクレーン設置面の高さ位置に関係なく吊荷高さを決定することができる。その結果、どのような作業環境であっても、判断領域を適切に設定することができる。
【0015】
(4) 第1の発明に係るクレーン装置は、上記ブームの先端部からの上記ワイヤロープの繰り出し長さに応じた第1計測値を出力するワイヤ長さセンサと、上記ブームの長さに応じた第3計測値を出力するブーム長さセンサと、上記ブームの起伏角度に応じた第4計測値を出力する起伏角度センサと、クレーン設置面と上記監視対象面との差を示す相対高さの入力を受け付ける入力装置と、を更に備えていてもよい。上記吊荷高さ決定処理は、上記相対高さ、上記第1計測値、上記第3計測値、及び上記第4計測値に基づいて、上記吊荷高さを算出する処理である。
【0016】
吊荷高さは、ワイヤ長さセンサが出力した第1計測値、ブーム長さセンサが出力した第3計測値、起伏角度センサが出力した第4計測値、及びオペレータが入力した相対高さに基づいて算出される。したがって、どのような作業環境であっても、判断領域を適切に設定することができる。
【0017】
(5) 上記吊荷高さ決定処理は、上記監視画像に映る特定物体のサイズと、メモリに予め記憶された閾値サイズ或いは演算式とに基づいて上記吊荷高さを決定する処理を含んでいてもよい。
【0018】
吊荷高さは、監視画像に映る特定物体のサイズと、メモリに予め記憶された閾値サイズとに基づいて決定される。したがって、監視対象面の高さ位置やクレーン設置面の高さ位置に関係なく吊荷高さを決定することができる。その結果、どのような作業環境であっても、判断領域を適切に設定することができる。
【0019】
(6) 上記監視カメラの画角は一定であってもよい。上記コントローラは、上記監視対象面から上記監視カメラまでの距離であるカメラ高さを決定するカメラ高さ決定処理を更に実行する。上記判断領域設定処理は、上記カメラ高さに更に基づいて上記判断領域を設定する処理である。
【0020】
監視カメラの画角が一定である場合、カメラ高さに応じて撮像範囲が変化する。判断領域は、撮像範囲に影響を及ぼすカメラ高さに更に基づいて設定される。したがって、画角が一定であるカメラを監視カメラとして使用したとしても、判断領域を適切に設定することができる。
【0021】
(7) 上記コントローラは、コンピュータと、上記吊荷高さ決定処理、判断領域設定処理、結果取得処理、及び安全処理を上記コンピュータに実行させる制御プログラム、及び人が映っているか否かを判断する人判断処理と判断結果を出力する処理とを上記コンピュータに実行させる人判断プログラムを記憶するメモリと、を備えていてもよい。上記判断領域設定処理は、上記吊荷高さ及び上記監視画像データに基づいて判断画像データを生成する処理含む。上記結果取得処理は、上記判断画像データを上記人判断プログラムに受け渡す処理と、上記人判断プログラムから上記判断結果を受け取る処理とを含む。
【0022】
制御プログラムは、判断画像データを、吊荷高さに基づいて監視画像データから生成し、生成した判断画像データを人判断プログラムに受け渡し、判断結果を人判断プログラムから受け取る。例えばディープラーニングで育成した人判断プログラムがクレーン装置に搭載されて使用される。
【0023】
(8) 上記コントローラは、上記監視対象面から上記監視カメラまでの距離であるカメラ高さを決定するカメラ高さ決定処理を更に実行してもよい。上記判断領域設定処理は、上記カメラ高さ及び上記監視画像データに基づいて吊荷の揺れの振幅を決定する振幅決定処理を含み、当該振幅に更に基づいて上記判断領域を設定する処理である。
【0024】
吊荷の揺れの振幅が大きくなるほど、人の存在により作業の安全上支障が生じると想定される想定範囲が広くなる。第1の発明に係るクレーン装置は、カメラ高さ及び監視画像データに基づいて吊荷の揺れの振幅を決定し、決定した振幅に基づいて判断領域を設定する。したがって、判断領域を更に適切に設定することができる。
【0025】
(9) 第2の発明に係るクレーン装置は、旋回台と、上記旋回台に搭載され、且つ起伏及び伸縮可能なブームと、上記ブームの基端部側に設けられ、ワイヤロープの繰り出し及び巻き取りが可能なウインチと、上記ウインチから繰り出されて上記ブームの先端部に掛け回された上記ワイヤロープに繋がれた吊荷用フックと、上記ブームの先端部に設置されており、下方を撮像して監視画像データを出力する監視カメラと、上記旋回台の旋回操作と、上記ブームの起伏操作及び伸縮操作とを受け付ける操縦装置と、上記監視画像データが入力されるコントローラと、を備える。上記コントローラは、監視対象面から上記吊荷用フックまでの距離であるフック高さを決定するフック高さ決定処理と、上記フック高さが、メモリに予め記憶された閾値高さ未満であるか否かを判断するフック高さ判断処理と、上記フック高さが上記閾値高さ未満であることに基づいて、上記旋回操作、上記起伏操作、及び上記伸縮操作がそれぞれ示す移動方向及び移動速度に基づいて、所定時間経過後までの上記吊荷用フックの移動軌跡を推定する軌跡推定処理と、上記監視画像データ及び上記移動軌跡に基づいて、上記監視画像データが示す画像の一部の領域を、人が映っているか否かを判断する判断領域として設定する判断領域設定処理と、上記判断領域に人が映っているか否かの判断結果を取得する結果取得処理と、上記判断領域に人が映っていることを示す上記判断結果を取得したことに基づいて所定の安全処理と、を実行する。
【0026】
閾値高さは、人の背丈に応じた値とされる。すなわち、フック高さ判断処理では、吊荷用フックが、人に衝突するおそれのある高さにあるか否かが判断される。吊荷用フックが、人に衝突するおそれのある高さにあると判断されると、操縦装置が受け付けている操作が示す移動方向及び移動速度に基づいて、所定時間経過後までの吊荷用フックの移動軌跡が推定される。そして、推定された移動軌跡を含む判断領域に人が映っているか否かが判断される。判断領域に人が映っていると判断されると、所定の安全処理が実行される。したがって、第2の発明に係るクレーン装置は、監視対象面(作業面)付近において吊荷用フックを安全に移動させることができる。
【0027】
(10) 第2の発明に係るクレーン装置は、吊荷が上記ワイヤロープに加える負荷に応じた計測値を出力する吊荷荷重センサを更に備えていてもよい。上記コントローラは、上記計測値が示す負荷がゼロであることに基づいて、上記フック高さ決定処理、上記軌跡推定処理、上記判断領域設定処理、上記結果取得処理、及び上記安全処理を実行する。
【0028】
吊荷が吊り下げられていない場合にのみ、フック高さ決定処理等の一連の処理が実行される。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るクレーン装置は、適切な安全処理を自動で行い、使い勝手を向上させることができる。また、本発明に係るクレーン装置は、作業面付近において吊荷用フックを安全に移動させることができる
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、ブーム22が起立した状態のクレーン車10の側面図である。
【
図2】
図2は、クレーン装置12の機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、運転室13内の操縦装置29を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る撮像領域と想定範囲とを示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る撮像領域と想定範囲とを示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る監視処理のフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1実施形態の変形例1に係る撮像領域と想定範囲とを示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の変形例1に係る撮像領域と想定範囲とを示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の変形例1に係る監視処理のフローチャートである。
【
図10】
図10は、第1実施形態の変形例2に係る撮像領域と想定範囲とを示す図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態の変形例2に係る監視処理のフローチャートである。
【
図12】
図12は、第1実施形態の変形例3に係る撮像領域と想定範囲とを示す図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態の変形例3に係る監視処理のフローチャートである。
【
図14】
図14は、第1実施形態の変形例4に係る監視処理のフローチャートである。
【
図15】
図15(A)は、第2実施形態に係る撮像領域を示す図であり、
図15(B)は、移動推定軌跡及び判断領域を説明する説明図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係る監視処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下に説明される各実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、各実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。例えば、後述する各処理の実行順序は、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更することができる。或いは、後述の処理の一部は、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜省略することができる。
【0032】
[第1実施形態]
【0033】
本実施形態では、
図1が示すクレーン車10が説明される。クレーン車10は、ラフテレーンクレーンである。但し、クレーン車10は、オールテレーンクレーンであってもよい。
【0034】
クレーン車10は、走行体11と、走行体11に付設されたアウトリガ装置14と、走行体11に搭載されたクレーン装置12及び運転室13と、を備える。
【0035】
アウトリガ装置14は、地面に接地してクレーン車10の姿勢を安定させる複数のジャッキ18を有する。クレーン装置12は、ジャッキ18が伸長されてクレーン車10の姿勢が安定した状態で使用される。
【0036】
クレーン装置12は、旋回台21、ブーム22、ウインチ23、センサ群26(
図2参照)、油圧アクチュエータ群27(
図2参照)、油圧供給装置28(
図2参照)、操縦装置29(
図2参照)、制御モニタ80(
図2参照)、フックブロック32、監視カメラ17、及びコントローラ70(
図2参照)を有する。
【0037】
旋回台21は、走行体11に旋回可能に保持されている。そして、ブーム22は、旋回台21に起伏可能に支持されている。ブーム22は、複数の筒体が入れ子状に配置されており、いわゆるテレスコピックを構成し、伸縮可能である。すなわち、ブーム22は、起伏可能、伸縮可能、且つ旋回可能である。ブーム22は、略水平方向に沿う倒伏位置と、略鉛直方向に沿う起立位置との間で起伏する。クレーン車10は、ブーム22が縮小且つ倒伏された状態(いわゆる「格納状態」)で走行する。
【0038】
ウインチ23は、ブーム22の基端或いは旋回台21に取り付けられている。ウインチ23は、ワイヤロープ41(以下、「ワイヤ41」と記載する)を巻き付けられたドラム56及びワイヤ41が掛け回されるシーブ57を有している。ワイヤ41は、ウインチ23が駆動されることにより、ドラム56に巻き取られ、或いはドラム56から繰り出される。
【0039】
ワイヤ41は、ブーム22の基端部に設けられたシーブ57、ブーム22の先端部に設けられたシーブ58、及び不図示の滑車装置に掛け回されている。当該滑車装置は、ブーム22の先端部に設けられた不図示の複数の第1シーブと、フックブロック32に設けられた不図示の複数の第2シーブとを有している。
【0040】
フックブロック32は、フック本体33と、フック本体33内に回転可能に保持された複数の第2シーブ(不図示)と、フック本体33の下面に設けられたフック34とを備える。
【0041】
ワイヤ41が第1シーブ及び第2シーブに掛け回される回数は、いわゆる「ワイヤ掛数」である。ワイヤ掛数が大きいほど、クレーン装置12が吊り下げ可能な荷物の最大値である最大吊荷重量が増加する。すなわち、ワイヤ掛数が大きいほどクレーン装置12の吊荷性能が増加する。なお、
図1が示す例では、ブーム22の先端部とフックブロック32との間に疑似的に4本のワイヤ41が視認可能であり、ワイヤ掛数は「4」である。ワイヤ掛数は、例えば後述の制御モニタ80(
図2参照)を通じてコントローラ70に入力されてメモリ72(
図2参照)に記憶される。ワイヤ掛数は、ブーム22の先端部から吊荷35までの距離である繰り出し長さL1(
図4参照)の算出に用いられる。
【0042】
2つのウインチ23がクレーン装置12に設けられていてもよい。いわゆるメインフックであるフックブロック32が、一方のウインチ23が有するワイヤ41に繋がれ、不図示のサブフックが、他方のウインチ23が有するワイヤ41に繋がれる。フックブロック32及びサブフックは、特許請求の範囲に記載された「吊荷用フック」に相当する。
【0043】
図2が示すように、クレーン装置12は、油圧アクチュエータ群27を備える。油圧アクチュエータ群27は、旋回モータ51と、起伏シリンダ52と、伸縮シリンダ53と、油圧モータ54とを有する。
【0044】
旋回モータ51は、油圧供給装置28から供給された作動油を介して回転する油圧モータであり、旋回台21を旋回させる。起伏シリンダ52は、油圧供給装置28から供給された作動油を介して伸縮する油圧シリンダであり、ブーム22を起伏させる。伸縮シリンダ53は、油圧供給装置28から供給された作動油を介して伸縮する油圧シリンダであり、ブーム22を伸縮させる。油圧モータ54は、油圧供給装置28から供給された作動油を介して回転し、ウインチ23のドラム56を回転させる。
【0045】
油圧供給装置28は、走行体11が搭載するエンジン15によって駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプと上記油圧アクチュエータ群27の旋回モータ51等とを繋ぐ配管と、この配管等に設けられた油圧切換弁等とを備える。油圧切換弁はいわゆる電磁弁であってもよく、コントローラ70から入力される駆動信号によって駆動される。電磁弁が駆動することにより、旋回モータ51、起伏シリンダ52、伸縮シリンダ53、油圧モータ54が駆動される。すなわち、コントローラ70は、駆動信号を出力することにより、ブーム22を旋回、起伏、及び伸縮させ、ワイヤ41を巻き取り或いは繰り出すことができる。
【0046】
センサ群26は、旋回角センサ61、ブーム長さセンサ62、起伏角度センサ63、ドラムセンサ64、測距センサ65を有する。なお、
図2において破線で示された吊荷荷重センサ66は変形例1において説明される。
【0047】
旋回角センサ61は、旋回台21の旋回基準位置からの旋回角度に応じた物理量を計測値として出力する。旋回基準位置は、上記格納状態にあるブーム22が前方に向かって突出する状態の位置である。旋回角センサ61は、例えば旋回台21の旋回軸に設けられたロータリエンコーダである。旋回角センサ61は、旋回台21の旋回角度に応じた個数のパルス信号を計測値として出力する。
【0048】
ブーム長さセンサ62は、ブーム22の長さに応じた物理量を計測値として出力する。ブーム長さセンサ62は、ブーム22の長さを示す計測値を出力するセンサであってもよいし、伸縮シリンダ53の伸長長さを示す計測値を出力するセンサであってもよいし、伸縮シリンダ53の駆動時間を示す計測値を出力するセンサであってもよい。ブーム長さセンサ62が出力する計測値は、特許請求の範囲に記載された「第3計測値」に相当する。
【0049】
起伏角度センサ63は、ブーム22の起伏角度に応じた物理量を計測値として出力する。起伏角度センサ63は、例えば水平面に対する角度を出力する傾斜センサや水平センサである。或いは起伏角度センサ63は、起伏シリンダ52の伸長長さや駆動時間を示す計測値を出力するセンサである。起伏角度センサ63が出力する計測値は、特許請求の範囲に記載された「第4計測値」に相当する。
【0050】
ドラムセンサ64は、ウインチ23からのワイヤ41の繰り出し長さに応じた物理量を計測値として出力する。ドラムセンサ64は、例えばドラム56の軸に取り付けられたロータリエンコーダである。ドラムセンサ64は、ワイヤ41の繰り出し及び巻き取りに応じてパルス信号を出力する。単位時間当たりのパルス数は、ドラム56の回転速度、すなわちワイヤ41の繰出速度や巻取速度を示し、パルスの総数は、ドラム56の回転量、すなわちワイヤ41の繰り出し長さや巻き取り長さを示す。ドラムセンサ64は、特許請求の範囲に記載された「ワイヤ長さセンサ」に相当する。ドラムセンサ64が出力するパルス信号は、特許請求の範囲に記載された「第1計測値」に相当する。
【0051】
測距センサ65は、ブーム22の先端部に取り付けられており、下方を検知領域としている。測距センサ65は、レーザ光を鉛直下向きへ照射し、監視対象面(作業面)で反射された反射光を受光して距離を計測するレーザ測距センサである。或いは、測距センサ65は、音波或いは電波を出力し、監視対象面で反射された反射波を受信して距離を計測する音波センサ或いは電波センサであってもよい。測距センサ65が出力する計測値は、特許請求の範囲に記載された「第2計測値」に相当する。
【0052】
以下では、旋回角センサ61やブーム長さセンサ62や起伏角度センサ63やドラムセンサ64や測距センサ65等のセンサが出力する計測値が「センサ計測値」とも記載されて説明がされる。
【0053】
図1が示すように、監視カメラ17は、ブーム22の先端部に設けられており、当該先端部の下方を撮像領域とする。例えば監視カメラ17は、ブーム22の起伏角度に拘らず常にブーム22の先端部の下方を撮影領域とするような広角レンズを有する。或いはブーム22の起伏角度に応じて監視カメラ17の向きを変更する向き変更機構がブーム22の先端部に設けられている。以下では、監視カメラ17の自重によって監視カメラ17のレンズを常に下向きに向ける向き変更機構がブーム22に設けられているものとして説明がされる。
【0054】
監視カメラ17は、レンズで集光した光を検出する複数の撮像素子を有している。撮像素子は、CCDやCMOSなどである。各撮像素子は、画素データをそれぞれ出力する。画素データは、色などを示すデータであって、例えば8ビットのデータである。監視カメラ17は、画素データに基づいて画像データを生成し、生成した画像データを出力する。なお、画像データは、画素データの他、画素の位置を示す画素位置データや解像度を含む。以下では、監視カメラ17が出力する画像データを「監視画像データ」と記載し、監視画像データが示す画像を「監視画像」と記載して説明がされる。監視画像は、静止画像であってもよいし、映像を構成する1つのフレームであってもよい。
【0055】
センサ群26の旋回角センサ61、ブーム長さセンサ62、起伏角度センサ63、ドラムセンサ64、及び測距センサ65と、監視カメラ17とは、不図示の信号線によってコントローラ70と接続されている。すなわち、旋回角センサ61等が出力したセンサ計測値と、監視カメラ17が出力した監視画像データとは、コントローラ70に入力される。もっとも、監視カメラ17は、コントローラ70と無線接続されていてもよい。その場合、バッテリ及び送信アンテナが監視カメラ17に付設され、信号線等によってコントローラ70と接続された受信アンテナが運転室13に設置される。監視カメラ17は、バッテリから供給された電力によって撮像を行い、監視画面データを送信アンテナから送信する。送信された監視画像データは、受信アンテナで受信されてコントローラ70に入力される。
【0056】
旋回角センサ61等の各センサは、所定の時間間隔(いわゆるサンプリング期間/サンプリング周期)で連続して検出を行って所定の時間間隔でセンサ計測値を出力する。また、監視カメラ17は、所定の時間間隔で連続して撮像を行って所定の時間間隔で監視画像データを出力する。
【0057】
図3は、運転室13内の操縦装置29を示す図である。
【0058】
図3が示すように、操縦装置29は、運転室13に配置されている。操縦装置29は、オペレータによって操作される操作レバー、フットペダル、及び操作ボタン等と、制御モニタ80と、監視モニタ84と、を備える。
【0059】
操縦装置29は、不図示の信号線によってコントローラ70と接続されている。オペレータは、操縦装置29を操作してコントローラ70に指示を入力し、クレーン装置12の操縦を行う。
【0060】
図2が示すように、制御モニタ80は、ディスプレイ81と、ディスプレイ81に重ねられた透明なシート状のタッチセンサ82と、スピーカ83とを備える。すなわち、制御モニタ80は、いわゆる「AML」である。オペレータは、タッチセンサ82を用いて、ワイヤ掛数などの各種の入力を行う。なお、スピーカ83は、制御モニタ80とは別に設けられていてもよい。例えば、クレーン車10の外部に報知を行うスピーカ83がクレーン装置12に設けられていてもよい。制御モニタ80或いはタッチセンサ82は、特許請求の範囲に記載された「入力装置」に相当する。
【0061】
監視モニタ84は、上記監視画像或いは当該監視画像を加工した画像である後述の判断画像を表示するモニタである。
【0062】
なお、クレーン車10は、操縦装置29に加え、或いは操縦装置29に代えて、不図示の遠隔操作装置を備えていてもよい。遠隔操作装置は、例えば、オペレータの入力を受け付けるタッチパネルや入力ボタンや入力レバー等と、オペレータの入力操作に応じた操作信号を送出するアンテナとを備える。遠隔操作装置が送出した操作信号は、クレーン車10の運転室13等に設置されたアンテナによって受信され、コントローラ70に入力される。もっとも、コントローラ70自体が遠隔操作装置に組み込まれていてもよい。遠隔操作装置は、特許請求の範囲に記載された「入力装置」の一例である。
【0063】
コントローラ70は、中央演算処理装置であるCPU71と、メモリ72と、電源回路74と、不図示の通信バスとを備える。コントローラ70は、制御基板に実装されたIC、マイクロコンピュータ、抵抗、ダイオード、及びコンデンサ等によって実現される。制御基板は、例えば、運転室13に配置された制御ボックス内に配置されている。CPU71は、特許請求の範囲に記載された「コンピュータ」に相当する。なお、破線で示された通信インタフェース73、及び管理サーバ100については、その他の変形例で説明される。
【0064】
CPU71、メモリ72、油圧供給装置28、センサ群26の旋回角センサ61等、監視カメラ17、及び操縦装置29は、不図示の通信バスに接続されている。CPU71によって実行される後述の制御プログラム75は、メモリ72からデータや情報を読み出し、メモリ72にデータや情報を記憶させ、油圧アクチュエータ群27の駆動を制御する。また、制御プログラム75は、センサ群26が出力したセンサ計測値や監視カメラ17が出力した監視画像データやオペレータが操縦装置29に対して行った入力を取得する。
【0065】
メモリ72は、オペレーティングシステムであるOS77と、CPU71によって実行される制御プログラム75及び人判断プログラム76とを予め記憶する。また、メモリ72は、オブジェクトデータ、警告音データ、演算式、対応テーブル、画角φ、及び種々の定数を予め記憶する。オブジェクトデータは、監視カメラに映る画像に重ねて表示される警告などの文字や図形を示すデータである。警告音データは、アラーム音や警告音声を示すデータである。画角φは、監視カメラ17の視野角を示す定数である。演算式や対応テーブルや定数は、後述の監視処理において判断画像データの生成に用いられる。破線で示された判定テーブルは、後述の変形例3で説明され、破線で示された閾値高さKは、後述の第2実施形態で説明される。
【0066】
制御プログラム75は、操縦装置29から入力した操作信号に基づいて油圧アクチュエータ群27等の駆動を制御し、且つ後述の監視処理(
図6参照)を実行するプログラムである。
【0067】
人判断プログラム76は、画像に人が映っているか否かを判断するプログラムである。人判断プログラム76は、ディープラーニングなどの学習によって育成されるプログラムである。人判断プログラム76は、例えば画像データを2値化処理によって簡素化した後、複数の外形ラインを抽出し、抽出した外形ラインが、人を示す特定パターンに一致或いは近似するか否かによって、人が画像に映っているか否かを判断する。上記学習は、上記特定パターンの種類や当該近似の範囲等を最適化することを意味する。なお、上記の人判断方法は一例であって、人判断プログラム76は、他の方法によって人が画像に映っているか否かを判断してもよい。
【0068】
電源回路74は、走行体11に搭載されたバッテリ16から供給された直流電圧を、5Vや12Vや24Vなどの所定の電圧値の直流電圧に変換して出力する。電源回路74は、例えば、DC/DCコンバータである電源IC、コンデンサ、抵抗、ダイオード、及びコイルなどによって実現される。なお、バッテリ16は、走行体11が有するエンジン15によって充電される。電源回路74が出力する直流電圧は、CPU71や操縦装置29やセンサ群26や監視カメラ17などに供給される。
図2では、電源回路74からセンサ群26等への給電線の図示は省略されている。
【0069】
図4及び
図5は、監視カメラ17が撮像を行う撮像領域と、人の存在により作業の安全上支障が生じると想定される想定範囲とを示す図である。
図4は、監視対象面がクレーン設置面より低い掘下面である場合を示している。
図5は、監視対象面がクレーン設置面より高い建設面或いは屋上面である場合を示している。また、
図4(A)及び
図5(A)は、吊荷35が比較的低い高さ位置にある場合を示し、
図4(B)及び
図5(B)は、吊荷35が比較的高い高さ位置にある場合を示している。
【0070】
図4及び
図5に示された「角度φ」は、監視カメラ17の画角(視野角)を示す。なお、本実施形態では、高さに依らず画角φが一定である監視カメラ17が用いられた例が説明される。
【0071】
図4及び
図5に示された「撮像領域」は、監視カメラ17が撮像する領域を示す。なお、画角φは一定であるから、ブーム22の先端部の位置が高くなるほど、撮像領域は広くなる。
【0072】
図4及び
図5に示された「繰り出し長さL1」は、ブーム22の先端部から吊荷35までの距離を示す。
【0073】
図4及び
図5に示された「揚程L2」は、ブーム22の先端部から監視対象面(作業面)までの距離を示す。揚程L2は、特許請求の範囲に記載された「カメラ高さ」に相当する。
【0074】
図4及び
図5に示された「吊荷高さH」は、監視対象面から吊荷35までの距離を示す。吊荷高さHは、揚程L2から繰り出し長さL1を減算した距離である。
【0075】
図6は、コントローラ70の制御プログラム75が実行する監視処理のフローチャートである。
【0076】
以下、監視処理について説明がされる。なお、制御プログラム75が実行する処理は、コントローラ70或いはCPU71が実行する処理でもある。
【0077】
制御プログラム75は、例えば操縦装置29の電源がオンにされたことに基づいて、或いはオペレータが操縦装置29や制御モニタ80に所定の入力を行ったことに基づいて、
図6が示す監視処理を開始する。
【0078】
制御プログラム75は、監視処理において、監視カメラ17が出力した監視画像データを取得する(S11)。また、制御プログラム75は、旋回角センサ61等の各センサがそれぞれ出力したセンサ計測値を取得する(S12)。測距センサ65が計測した揚程L2を取得するステップS12の処理は、特許請求の範囲に記載された「カメラ高さ決定処理」に相当する。
【0079】
制御プログラム75は、ステップS12で取得したセンサ計測値に基づいて、監視対象面から吊荷35までの距離である吊荷高さHを算出する(S13)。詳しく説明すると、制御プログラム75は、メモリ72に記憶されたワイヤ掛数と、ドラムセンサ64が計測した計測値とに基づいて、ブーム22の先端部から吊荷35までの距離である繰り出し長さL1(
図4及び
図5参照)を算出する。制御プログラム75は、例えば、ドラムセンサ64が出力したパルス数に基づいてブーム22の先端部からのワイヤ41の総繰出長を算出し、算出した総繰出長をワイヤ掛数で除すことにより、繰り出し長さL1を算出する。なお、以下では、ドラムセンサ64が計測した長さ及びワイヤ掛数に基づいて算出された繰り出し長さL1は、単に「ドラムセンサ64が計測した繰り出し長さL1」或いは「繰り出し長さL1」と記載されて説明がされる。
【0080】
制御プログラム75は、測距センサ65が計測した揚程L2(
図4及び
図5参照)から繰り出し長さL1を減算することにより、吊荷高さHを算出する。ステップS13の処理は、特許請求の範囲に記載された「吊荷高さ決定処理」に相当する。
【0081】
制御プログラム75は、ステップS12で取得した揚程L2と、ステップS13で算出した吊荷高さHとに基づいて、人が映っているか否かが判断される判断領域を決定する(S14)。詳しく説明すると、メモリ72は、判断領域を決定する演算式(
図2参照)を予め記憶する。当該演算式は、判断領域を示す画素の番号列を出力するものである。当該演算式は、揚程L2と吊荷高さHとを入力されることにより、判断領域を示す画素の番号列を出力する。なお、当該番号列は、解像度も示す。例えば、800×800の解像度の監視画像データに対して、50×50の解像度の範囲が判断画像データとされる。
【0082】
このように、判断領域は、監視カメラ17の高さを示す揚程L2と、吊荷高さHとに基づいて決定される。すなわち、判断領域は、監視カメラ17の高さに応じた、且つ吊荷高さに応じた、適切な範囲に決定される。
【0083】
なお、上記演算式に代えて、当該画素の番号列と揚程L2と吊荷高さHとが対応付けられた対応テーブル(
図2参照)がメモリ72に予め記憶されていてもよい。
【0084】
制御プログラム75は、ステップS14で決定した判断領域を示す上記番号列と、ステップS11で取得した監視画像データとに基づいて、人が映っているか否かの判断の対象とされる判断画像データを生成する(S15)。詳しく説明すると、制御プログラム75は、監視画像データが有する複数の画素データのうち、ステップS14で決定した上記番号列が示す画素データを選択し、選択した画素データに新たに画素番号を付し、或いは並べ替えることにより、判断画像データを生成する。
【0085】
なお、上記想定範囲の形状が「円」である場合、制御プログラム75は、例えば上記選択した画素データに白を示す画素データを追加することにより、判断画像データが示す判断画像の形状を疑似的に「矩形」に加工してもよい。すなわち、上記想定範囲が「矩形」であっても「円」であっても、矩形の判断画像を示す判断画像データが生成される。ステップS14、S15の処理は、特許請求の範囲に記載された「判断領域設定処理」に相当する。
【0086】
制御プログラム75は、ステップS15で生成した判断画像データを、OS77を介して人判断プログラム76に受け渡し、判断画像データが示す判断画像に人が映っているか否かの判断を人判断プログラム76に指示する(S16)。ステップS16の処理は、特許請求の範囲に記載された「受け渡す処理」に相当する。
【0087】
人判断プログラム76は、受け渡された判断画像データが示す判断画像に、人が映っているか否かを判断する(S17)。人判断プログラム76は、人が映っていないことを示す第1判断結果、或いは人が映っていることを示す第2判断結果を、OS77を介して制御プログラム75に返す。当該第2判断結果は、人が映っていることを示す情報に加え、判断画像において人と判断した領域を示す位置情報を含む。人が映っていないことを示す第1判断結果は、例えば「0」の値の判断フラグであり、人が映っていることを示す情報は、「1」の値の判断フラグである。上記位置情報は、例えば人が映っている領域の境界を示す画素の番号列である。ステップS17の処理は、特許請求の範囲に記載された「人判断処理」に相当する。
【0088】
制御プログラム75は、人判断プログラム76が出力した判断結果を受け取る(S18)。ステップS16、S18の処理は、特許請求の範囲に記載された「結果取得処理」に相当する。ステップS18の処理は、特許請求の範囲に記載された「受け取る処理」に相当する。
【0089】
制御プログラム75は、受け取った判断結果に基づいて、判断画像に人が映っているか否か、すなわち上記想定範囲に人が居るか否かを判断する(S19)。具体的には、制御プログラム75は、受け取った判断結果に含まれる判断フラグの値が「0」であるか「1」であるかを判断する。制御プログラム75は、上記想定範囲に人が居ないと判断すると(S19:No)、ステップS15で生成した判断画像データ、或いはステップS11で取得した監視画像データを監視モニタ84に出力する(S20)。その結果、判断画像或いは監視映像が監視モニタ84に表示される。
【0090】
制御プログラム75は、上記想定範囲に人が居ると判断すると(S19:Yes)、判断画像データ或いは監視画像データと、メモリ72から読み出した強調オブジェクトデータ及び警告オブジェクトデータと、配置位置情報と、を監視モニタ84に出力する(S21。強調オブジェクトデータは、判断画像データが示す判断画像に映る人を囲む円や楕円や矩形などを示すデータである。警告オブジェクトデータは、例えば「人が居ます。ご注意ください。」などの警告を示す文字である。配置位置情報は、強調オブジェクトデータが示す円や楕円や矩形を配置する位置を示す情報である。制御プログラム75は、ステップS18で取得した判断結果に含まれる上記位置情報に基づいて、配置位置情報を生成する。
【0091】
また、制御プログラム75は、メモリに記憶された警告音データをスピーカ83に出力し、アラーム音や警告音声をスピーカ83に出力させる(S22)。当該アラーム音や警告音声は、運転席のオペレータのみが聞こえるものであってもよいし、クレーン車10の周囲の人に聞こえるものであってもよい。
【0092】
また、制御プログラム75は、ウインチ23、ブーム22、旋回台21の全部或いは一部の駆動を強制停止させる(S23)。
【0093】
強調オブジェクトや警告オブジェクトを監視モニタ84に表示させるステップS21の処理、アラーム音や警告音声をスピーカ83に出力させるステップS22の処理、ウインチ23、ブーム22、旋回台21の全部或いは一部の駆動を強制停止させるステップS23の処理は、いずれも特許請求の範囲に記載された「安全処理」に相当する。
【0094】
なお、強調オブジェクトや警告オブジェクトを監視モニタ84に表示させるステップS21の処理と、ステップS22の処理と、ステップS23の処理とのいずれか1つの処理だけが安全処理として実行されてもよい。
【0095】
制御プログラム75は、監視処理を終了するか否かを判断する(S24)。例えば制御プログラム75は、操縦装置29の電源をオフにする入力や、操縦装置29に特定の入力がされたことに基づいて監視処理を終了する。制御プログラム75は、監視処理を終了しないと判断すると(S24:No)、ステップS11以降の処理を再度実行する。繰り返し実行されるステップS11以降の処理は、例えば数十m秒から数秒の時間間隔(サンプリング期間)で行われる。制御プログラム75は、監視処理を終了すると判断すると(S24:Yes)、監視処理を終了する(エンド)。
【0096】
[第1実施形態の作用効果]
【0097】
物体が落下する場合、高い位置からの落下の方が、落下地点がばらつく。すなわち、人の存在により作業の安全上支障が生じると想定される想定範囲は、吊荷の高さが高くなるほど広くなる。一方、人が映っているか否かが判断される判断領域を、安全マージンをとって広くし過ぎると、安全性は高くなるが、人が居ても安全に作業ができる場合においても、警告がされたり、強制停止がされてしまい、クレーン装置12の使い勝手が悪くなってしまう。本実施形態では、人が映っているか否かが判断される判断領域は、想定範囲と一致するように、吊荷高さHに応じて設定される(S14)。したがって、本実施形態に係るクレーン装置12は、適切な安全処理を自動で行うことができ、且つクレーン装置12の使い勝手を向上させることができる。
【0098】
本実施形態では、判断画像データの生成に必要な揚程L2及び吊荷高さHを、ドラムセンサ64及び測距センサ65が出力した計測値に基づいて算出する(S12、S13)。したがって、監視対象面が掘下面(
図4参照)及び建設面(
図5参照)であるか否かに拘らず、且つクレーン設置面が地表であるか否かに拘らず、判断画像データを生成することができる。
【0099】
本実施形態では、吊荷高さHに加え、監視カメラ17の高さ(揚程L2)にも基づいて判断領域が決定される(S14)。したがって、画角φが一定である監視カメラ17が使用されても、適切に判断領域を設定することができる。
【0100】
本実施形態では、制御プログラム75は、判断画像データを人判断プログラム76に受け渡し(S16)、判断結果を人判断プログラム76から受け取る(S18)。したがって、ディープラーニング等で育成した人判断プログラム76をコントローラ70にモジュールとして組み込んで使用することができる。また、ディープラーニング等で育成した新たな人判断プログラムを用いて、コントローラ70に組み込んだ人判断プログラム76を更新することができる。すなわち、人判断プログラム76のバージョンアップを容易に行うことができる。
【0101】
[第1実施形態の変形例1]
本変形例では、クレーン装置12が、測距センサ65に代えて吊荷荷重センサ66(
図2参照)を備える例が説明される。なお、以下で説明される構成及び処理以外の構成及び処理は、第1実施形態で説明された構成及び処理と同じである。第1実施形態と同じ構成及び処理には、同一の符号が付されて説明が省略される。
【0102】
吊荷荷重センサ66は、吊荷35がワイヤ41に加える負荷に応じた物理量を計測する。吊荷荷重センサ66は、例えば起伏シリンダ52に供給される油圧を計測する油圧センサである。メモリ72は、ブーム長さセンサ62が計測したブーム長さと、起伏角度センサ63が計測した起伏角度と、吊荷荷重センサ66である上記油圧センサが計測した油圧とに基づいて吊荷35がワイヤ41に加える負荷を算出する演算式を予め記憶する。或いは、メモリ72は、ブーム長さセンサ62が計測したブーム長さと、起伏角度センサ63が計測した起伏角度と、吊荷荷重センサ66である上記油圧センサが計測した油圧と、吊荷35がワイヤ41に加える負荷とを対応付けた対応テーブルを予め記憶する。当該演算式或いは対応テーブルを用いて吊荷35がワイヤ41に加える負荷が算出される。つまり、吊荷荷重センサ66である上記油圧センサが計測する油圧は、「吊荷35がワイヤ41に加える負荷に応じた物理量」である。吊荷荷重センサ66が出力する計測値は、特許請求の範囲に記載された「第5計測値」に相当する。
【0103】
なお、吊荷荷重センサ66は、吊荷35がワイヤ41に加える負荷を直接計測するテンションメータやロードセルやウインチ23に供給される油圧を計測する圧力センサなどであってもよい。
【0104】
メモリ72は、定数D(
図7及び
図8参照)を予め記憶する。定数Dは、タイヤからブーム22の基端までの高さである。
【0105】
図7(A)は、監視対象面(作業面)が地表より低い掘下面であり、且つ吊荷35が監視対象面に接地している状態を示している。
図7(B)は、監視対象面(作業面)が上記掘下面であり、且つクレーン装置12が吊荷35を吊り上げて作業中である状態を示している。
【0106】
図8(A)は、監視対象面(作業面)が、地表より高い建設面或いは屋上面であり、且つ吊荷35が監視対象面に接地している状態を示している。
図8(B)は、監視対象面(作業面)が上記建設面或いは屋上面であり、且つクレーン装置12が吊荷35を吊り上げて作業中である状態を示している。建設面は、建設中の建築物の最上面であり、屋上面は、建築物の屋上である。
【0107】
図7(A)及び
図8(A)に示された「繰り出し長さL1a」は、吊荷35が監視対象面に接地している状態における監視対象面からブーム22の先端部までの距離である。一方、
図7(B)及び
図8(B)に示された「繰り出し長さL1b」は、作業中におけるブーム22の先端部から吊荷35までの距離であって、刻々変化する値である。
【0108】
図7(A)及び
図8(A)に示された「θa」は、吊荷35が監視対象面に接地している状態におけるブーム22の起伏角度である。一方、
図7(B)及び
図8(B)に示された「θb」は、作業中におけるブーム22の起伏角度であって、刻々変化する値である。
【0109】
図7(A)及び
図8(A)に示された「ブーム長さL3a」は、吊荷35が監視対象面に接地している状態におけるブーム22の長さである。一方、
図7(B)及び
図8(B)に示された「ブーム長さL3b」は、作業中におけるブーム22の長さであって、刻々変化する値である。
【0110】
図7及び
図8に示された「相対高さE」は、監視対象面からクレーン設置面までの距離である。
【0111】
図9は、本変形例において実行される監視処理のフローチャートである。本変形例では、コントローラ70(制御プログラム75)は、
図6に示される監視処理に代えて、
図9に示される監視処理を実行する。
【0112】
監視処理において制御プログラム75は、監視カメラ17が出力した監視画像データを取得する(S11)。また、制御プログラム75は、吊荷荷重センサ66が計測した吊荷荷重を取得し、メモリ72に記憶させる(S31)。制御プログラム75は、ステップS31の処理を、所定のサンプリング期間で周期的に実行する。メモリ72には、少なくとも2つの吊荷荷重を記憶する領域が設定されている。
【0113】
制御プログラム75は、メモリ72に記憶された最新の吊荷荷重と、その前にメモリ72に記憶された吊荷荷重とを比較し、吊荷荷重が変化したか否かを判断する(S32)。吊荷荷重は、吊荷35が監視対象面に接地している状態からワイヤ41が巻き上げられた瞬間に、ゼロからプラスに変化する。また、吊荷荷重は、吊荷35が監視対象面に接地していない状態からワイヤ41が巻き下げられて吊荷35が監視対象面に接地した瞬間に、プラスからゼロに変化する。
【0114】
制御プログラム75は、吊荷荷重が変化したと判断すると(S32:Yes)、センサ計測値を取得する(S33)。具体的には、
図7(A)及び
図8(A)に示された繰り出し長さL1a、ブーム長さL3a、及び起伏角度θaを取得する。制御プログラム75は、取得した繰り出し長さL1a、ブーム長さL3a、及び起伏角度θaに基づいて、相対高さEを算出する。具体的には、制御プログラム75は、E=L3a*sinθa+D-L1aを算出する。演算式における「*」は、乗算を意味する。当該演算式は、メモリ72に予め記憶される。なお、監視対象面が掘下面である場合(
図7(A)参照)、相対高さEは負の値となり、監視対象面が建設面である場合(
図8(A)参照)、相対高さEは正の値となる。吊荷荷重が変化したと判断した瞬間(S32:Yes)は、特許請求の範囲に記載された「所定時点」に相当する。ステップS33の処理は、特許請求の範囲に記載された「第1取得処理」に相当する。
【0115】
図9が示すように、制御プログラム75は、算出した相対高さEをメモリ72に記憶させる(S34)。ステップS34の処理は、特許請求の範囲に記載された「相対高さを算出する処理」に相当する。
【0116】
一方、制御プログラム75は、吊荷荷重が変化していないと判断すると(S32:No)、ステップS33、S34の処理をスキップする。
【0117】
次に、制御プログラム75は、センサ計測値を再度取得する(S35)。ステップS35で取得されるセンサ計測値は、作業中における計測値であって、
図7(B)及び
図8(B)に示された繰り出し長さL1b、ブーム長さL3b、及び起伏角度θbである。
【0118】
図9が示すように、制御プログラム75は、ステップS35で取得したセンサ計測値と、ステップS34でメモリ72に記憶させた相対高さEとを用いて、吊荷高さH及び揚程L2を算出する(S36)。具体的には、制御プログラム75は、吊荷高さH=(D-E)+L3b*sinθb-L1b(
図7(B)及び
図8(B)参照)を算出する。また、制御プログラム75は、算出した吊荷高さHに、ステップS35で取得した繰り出し長さL1bを加算することにより、揚程L2を算出する(S36)。ステップS36のうち、吊荷高さHを算出する部分は、特許請求の範囲に記載された「吊荷高さ決定処理」に相当する。ステップS36のうち、揚程L2を算出する部分は、特許請求の範囲に記載された「カメラ高さ決定処理」に相当する。
【0119】
制御プログラム75は、ステップS36で算出した吊荷高さH及び揚程L2を用いて、ステップS14からS24までの処理を実行する。
【0120】
[第1実施形態の変形例1の作用効果]
【0121】
本変形例では、判断画像データの生成に必要な揚程L2及び吊荷高さHは、ブーム長さセンサ62、起伏角度センサ63、ドラムセンサ64、及び吊荷荷重センサ66が出力した計測値に基づいて算出される(ステップS31からS36)。したがって、監視対象面が掘下面(
図7参照)であるか建設面或いは屋上面(
図8参照)であるか否かに拘らず、且つクレーン設置面が地表であるか否かに拘らず、判断画像データを生成することができる。
【0122】
[第1実施形態の変形例2]
【0123】
変形例1では、ブーム長さセンサ62、起伏角度センサ63、ドラムセンサ64、及び吊荷荷重センサ66が出力する計測値に基づいて相対高さE(
図7及び
図8参照)が算出される例が説明された。本変形例では、オペレータが、制御モニタ80(いわゆる、AML)のタッチセンサ82を用いて相対高さE(
図10参照)を入力する例が説明される。なお、以下で説明される構成及び処理以外の構成及び処理は、第1実施形態や変形例1で説明された構成及び処理と同じである。第1実施形態や変形例1と同じ構成及び処理には、同一の符号が付されて説明が省略される。
【0124】
なお、本変形例では、クレーン装置12は、測距センサ65を備えない。
【0125】
図10(A)は、監視対象面が、クレーン設置面よりも低い掘下面である場合を示す。
図10(B)は、監視対象面が建設面或いは屋上面であってクレーン設置面よりも高い場合を示す。
図11は、本変形例において実行される監視処理のフローチャートである。本変形例では、コントローラ70(制御プログラム75)は、
図6に示される監視処理に代えて、
図11に示される監視処理を実行する。
【0126】
オペレータは、監視対象面とクレーン設置面との間の距離である相対距離Eを、制御モニタ80を通じて入力する。なお、オペレータは、例えば監視対象面がクレーン設置面よりも低い場合(
図10(A))、負の値として相対高さEを入力し、監視対象面がクレーン設置面よりも高い場合(
図10(B))、正の値として相対高さEを入力する。なお、オペレータは、相対高さEの入力に代えて、地表から監視対象面までの距離と、地表からクレーン設置面までの距離とを制御モニタ80に入力してもよい。その場合、制御プログラム75は、入力された地表から監視対象面までの距離及び地表からクレーン設置面までの距離に基づいて、相対高さEを算出する。すなわち、オペレータによって入力される値は、相対高さEを算出可能な値であれば、どのような値であってもよい。
【0127】
制御プログラム75は、相対高さEの入力を受け付けたか否かを判断する(S41)。制御プログラム75は、相対高さEの入力を受け付けたと判断すると(S41:Yes)、入力された相対高さEをメモリ72に記憶させる(S42)。一方、制御プログラム75は、相対高さEの入力を受け付けなかったと判断すると(S41:No)、ステップS42の処理をスキップする。
【0128】
その後、制御プログラム75は、ステップS11、S35、S36、及びステップS14からS24までの処理を実行する。
【0129】
[第1実施形態の変形例2の作用効果]
【0130】
本変形例では、判断画像データの生成に必要な揚程L2及び吊荷高さHは、ブーム長さセンサ62、起伏角度センサ63、及びドラムセンサ64が出力した計測値と、オペレータが入力した相対距離Eとに基づいて算出される。したがって、監視対象面が掘下面(
図10(A)参照)であるか建設面或いは屋上面(
図10(B)参照)であるかに拘らず、且つクレーン設置面が地表であるか否かに拘らず、判断画像データを生成することができる。
【0131】
また、測距センサ65を設けることなく、判断画像データを生成することができる。
【0132】
[第1実施形態の変形例3]
【0133】
本変形例では、揚程L2が、監視画像に映った特定物体のサイズと、メモリ72に予め記憶された判定テーブル(
図2参照)とに基づいて決定される例が説明される。なお、以下で説明される構成及び処理以外の構成及び処理は、第1実施形態で説明された構成及び処理と同じである。第1実施形態と同じ構成及び処理には、同一の符号が付されて説明が省略される。
【0134】
判定テーブルは、複数の閾値範囲と揚程L2とがそれぞれ対応付けられている。特定物体のサイズが取得され、取得されたサイズがいずれの閾値範囲に属するかにより、揚程L2が決定される。閾値範囲の下限値及び上限値は、特許請求の範囲に記載された「閾値サイズ」に相当する。
【0135】
なお、本変形例では、クレーン装置12は、測距センサ65を備えない。
【0136】
図12(A)は、監視対象面が、クレーン設置面よりも低い掘下面である場合を示す。
図12(B)は、監視対象面が建設面或いは屋上面であってクレーン設置面よりも高い場合を示す。
図13は、本変形例において実行される監視処理のフローチャートである。本変形例では、コントローラ70(制御プログラム75)は、
図6に示される監視処理に代えて、
図13に示される監視処理を実行する。
【0137】
監視処理において制御プログラム75は、監視カメラ17が出力した監視画像データを取得する(S11)。制御プログラム75は、監視画像データが示す監視画像に特定物体が映っているか否かを判断する(S51)。特定物体は、玉掛け等を行う作業者などの「人」や、監視対象面に置かれた所定サイズの「マーカ」などである。
【0138】
特定物体が人である場合にステップS51で制御プログラム75が行う処理が具体的に説明される。まず、制御プログラム75は、OS77を介して監視画像データを人判断プログラム76に受け渡し、判断結果を人判断プログラム76から受け取る。制御プログラム75は、監視画像に人が映っているとの判断結果を取得したことに基づいて、監視画像に特定物体が映っていると判断する(S51:Yes)。
【0139】
特定物体がマーカである場合にステップS51で制御プログラム75が行う処理が具体的に説明される。制御プログラム75は、ステップS11で取得した監視画像データにおいて、輝度差や明度差や色差等を用いて境界線情報を取得する。制御プログラム75は、取得した境界線情報が示す境界線に囲まれた形状のそれぞれについて、マーカの形状としてメモリ72に予め記憶された形状と一致或いは近似するか否かを判断する。制御プログラム75は、上記境界線に囲まれた形状が、メモリ72に予め記憶された形状と一致或いは近似する場合に、監視画像に特定物体が映っていると判断する(S51:Yes)。
【0140】
制御プログラム75は、監視画像に特定物体が映っていると判断したことに基づいて(S51:Yes)、特定物体のサイズを決定或いは算出する(S52)。具体的には、特定物体が人である場合、制御プログラム75は、人判断プログラム76から受け取った判断結果に含まれる上記位置情報に基づいて、監視画像に映る人のサイズを決定する。特定物体がマーカである場合、制御プログラム75は、一致或いは近似すると判断した上記形状のサイズを境界線情報に基づいて算出する。
【0141】
制御プログラム75は、ステップS52で決定或いは算出した特定物体サイズと、メモリ72に記憶された判定テーブルとに基づいて揚程L2を決定し、揚程L2をメモリ72に記憶させる(S53)。
【0142】
制御プログラム75は、ドラムセンサ64が計測した繰り出し長さL1(
図12参照)を取得する(S12)。制御プログラム75は、ステップS53でメモリ72に記憶させた揚程L2から、ステップS12で取得した繰り出し長さL1を減算することにより、吊荷高さH(
図12参照)を算出する(S13)。その後、制御プログラム75は、ステップS14からS24までの処理を実行する。
【0143】
[第1実施形態の変形例3の作用効果]
【0144】
本変形例では、判断画像データの生成に必要な揚程L2及び吊荷高さHは、ドラムセンサ64が出力した計測値と、監視画像データとに基づいて算出される。したがって、監視対象面が掘下面(
図12(A)参照)であるか建設面或いは屋上面(
図12(B)参照)であるか否かに拘らず、且つクレーン設置面が地表であるか否かに拘らず、判断画像データを生成することができる。
【0145】
また、測距センサ65を設けることなく、判断画像データを生成することができる。
【0146】
なお、メモリ72は、上記判定テーブルに代えて、特定物体のサイズを入力されることによって揚程L2を出力する演算式を予め記憶していてもよい。
【0147】
[第1実施形態の変形例4]
【0148】
本変形例では、監視画像データに基づいて吊荷35の揺れの振幅Fが算出され、算出された振幅Fに更に基づいて判断領域が決定される例が説明される。なお、以下で説明される構成及び処理以外の構成及び処理は、第1実施形態で説明された構成及び処理と同じである。第1実施形態と同じ構成及び処理には、同一の符号が付されて説明が省略される。
【0149】
図14は、本変形例において実行される監視処理のフローチャートである。本変形例では、コントローラ70(制御プログラム75)は、
図6に示される監視処理に代えて、
図14に示される監視処理を実行する。
【0150】
監視処理において制御プログラム75は、監視カメラ17が出力した監視画像データと、ドラムセンサ64が計測した繰り出し長さL1と、測距センサ65が計測した揚程L2とを取得する(S11、S12)。なお、ステップS11では、吊荷35の揺れの周期以上の期間の間、監視画像データを繰り返し取得する。
【0151】
制御プログラム75は、ステップS11で取得した複数の監視画像データにおいて、吊荷35と背景との境界線を示す境界線情報をそれぞれ取得する。制御プログラム75は、取得した境界線情報に基づいて境界線の変化量(例えば画素数)を算出し、当該変化量に基づいて、監視画像における揺れの振幅F0を算出する(S61)。ステップS61の処理は、特許請求の範囲に記載された「振幅決定処理」に相当する。
【0152】
制御プログラム75は、算出した振幅F0と、監視カメラ17の解像度と、画角φと、揚程L2とに基づいて、吊荷35の揺れの実際の振幅Fを算出する(S62)。具体的には、制御プログラム75は、F=F0*L2tanφ*(1/解像度)*1/2を演算する。当該演算式は、メモリ72に予め記憶される。ステップS62の処理は、特許請求の範囲に記載された「振幅決定処理」に相当する。なお、画角φは、画角が一定である監視カメラ17が用いられる場合、定数としてメモリ72に予め記憶される。
【0153】
制御プログラム75は、ステップS12で取得した繰り出し長さL1及び揚程L2に基づいて、吊荷高さHを算出する(S13)。制御プログラム75は、ステップS12で取得した揚程L2(監視カメラ17の高さ)と、ステップS13で算出した吊荷高さHと、ステップS63で算出した振幅Fとに基づいて、判断領域を設定する(S63)。詳しく説明すると、揚程L2、吊荷高さH、及び振幅Fを入力されることにより画素の番号列を出力する演算式がメモリ72に予め記憶されている。制御プログラム75は、この演算式に揚程L2、吊荷高さH、及び振幅Fを入力することにより、判断領域を示す画素の番号列を取得する。制御プログラム75は、取得した番号列と、監視画像データとに基づいて、判断領域を示す判断画像データを生成する。
【0154】
制御プログラム75は、ステップS15で生成した判断画像データに基づいて、ステップS16からS24までの処理を実行する。
【0155】
[第1実施形態の変形例4の作用効果]
【0156】
物体の落下地点は、落下開始時の高さと速度の水平成分とに応じて概ね決まる。落下開始時の高さは吊荷高さHである。落下開始時の速度の水平成分は揺れの振幅Fに応じた値である。本変形例では、吊荷35の揺れの振幅F及び吊荷高さHに基づいて判断領域を設定するから、判断領域を更に適切に設定することができる。
【0157】
なお、監視画像における振幅F0を、解像度を用いた値として算出すると、振幅Fは、解像度を用いずに算出することができる。解像度を用いた値とは、例えば解像度の0.015倍などである。
【0158】
なお、本変形例において、揚程L2及び吊荷高さHは、変形例1から変形例3で説明した方法によって算出或いは決定されてもよい。
【0159】
また、本変形例において、監視カメラ17の画角が揚程L2(監視カメラ17の高さ)に応じて変更され、撮像範囲が一定である場合、振幅Fは、F=F0*A/2*(1/解像度)*1/2によって算出される。すなわち、画角を変更して撮像範囲を常に一定にする監視カメラ17を用いる場合、振幅Fの算出に画角φは不要になる。
【0160】
[第2実施形態]
【0161】
クレーン作業では、荷物が積載された位置(玉掛け位置)までフックブロック32が監視対象面に沿って水平に移動されることがある。本実施形態では、このようなクレーン作業における安全性を向上可能なクレーン装置12が説明される。なお、以下で説明される構成及び処理以外の構成及び処理は、第1実施形態で説明された構成及び処理と同じである。第1実施形態と同じ構成及び処理には、同一の符号が付されて説明が省略される。
【0162】
メモリ72は、
図2が示す閾値高さKを予め記憶する。閾値高さKは、人の背丈に応じた値であって人の背丈に安全マージンを加えた値とされる。閾値高さKは、例えば2.5mから3mの範囲とされる。
【0163】
センサ群26は、旋回角センサ61、ブーム長さセンサ62、起伏角度センサ63、ドラムセンサ64、測距センサ65、及び吊荷荷重センサ66を備える。
【0164】
図15(A)は、フックブロック32の高さ(以下、「フック高さQ」)が閾値高さK以下である状態を示す図である。フック高さQは、監視対象面からフックブロック32の最下点までの距離である。
【0165】
図15(B)は、現時点から0.2秒後までのフックブロック32の移動推定軌跡と、人が映っているか否かが判断される判断領域(想定範囲)とを監視画像に示した説明図である。
図15(B)において、現時点でのフックブロック32の位置は、監視画像の中央に位置するドットである。0.2秒後のフックブロック32の位置は、監視画像の左上に位置するドットで示されている。移動推定軌跡は、2つのドットを繋ぐ実線(曲線)で示されている。判断領域の境界は、破線で示されている。
【0166】
図16は、コントローラ70(制御プログラム75)が実行する監視処理のフローチャートを示す図である。
【0167】
以下、監視処理について説明がされる。なお、以下では、監視処理は、制御プログラム75が実行するものとして記載されるが、制御プログラム75が実行する処理は、コントローラ70或いはCPU71が実行する処理でもある。
【0168】
制御プログラム75は、監視カメラ17が出力する監視画像データ、及びセンサ群26が出力する各センサ計測値をそれぞれ取得する(S11、S12)。制御プログラム75は、吊荷荷重センサ66によって計測された吊荷荷重に基づいて、吊荷荷重がゼロ、或いはゼロに近い値であるか否かを判断する(S71)。すなわち、制御プログラム75は、ブーム22が吊荷35を吊り下げているか否かを判断する。制御プログラム75は、吊荷荷重がゼロでなく、吊荷35を吊り下げていると判断すると(S71:No)、第1実施形態及び各変形例で説明された監視処理(
図6、
図9、
図11、
図13、
図14参照)を実行する。すなわち、吊荷35の運搬中は、第1実施形態及び各変形例で説明された監視処理が実行され、吊荷35の運搬の前後においては、本実施形態で説明される監視処理のステップS72以降の処理が実行される。
【0169】
制御プログラム75は、吊荷荷重がゼロあり、吊荷35を吊り下げていないと判断すると(S71:Yes)、ステップS12で取得したセンサ計測値に基づいて、フック高さQを算出する(S72)。具体的には、制御プログラム75は、測距センサ65が計測した揚程L2から、繰り出し長さL1を減算することにより、フック高さQを算出する。ステップS72の処理は、特許請求の範囲に記載された「フック高さ決定処理」に相当する。
【0170】
制御プログラム75は、ステップS72で算出したフック高さQが、メモリ72に記憶された閾値高さK未満であるか否かを判断する(S73)。すなわち、ステップS73では、フックブロック32が、人と衝突する可能性のある高さであるか否かが判断される。ステップS73の処理は、特許請求の範囲に記載された「フック高さ判断処理」に相当する。
【0171】
制御プログラム75は、フック高さQが閾値高さK未満であると判断すると(S73:Yes)、オペレータが操作している操縦装置29の操作量を取得する(S74)。オペレータの操作には、旋回台21の旋回を指示する旋回操作、ブーム22の起伏を指示する起伏操作、及びブーム22の伸縮を指示する伸縮操作が含まれる。操縦装置29の操作量は、操作ペダルの踏み込み量や、操作レバーの操作の向き及び移動量や、操作ボタン等の操作の有無などである。すなわち、ステップS74では、ブーム22の旋回、起伏、伸縮の方向及び速度が取得される。ブーム22の旋回、起伏、伸縮の方向及び速度は、特許請求の範囲に記載された「移動方向及び移動速度」に相当する。
【0172】
制御プログラム75は、ステップS74で取得した操作量に基づいて、現時点から所定時間経過後(例えば0.2秒後)までのフックブロック32の移動推定軌跡を算出する(S75)。制御プログラム75は、例えば、旋回台21の旋回を示す旋回ベクトル、ブーム22の起伏を示す起伏ベクトル、ブーム22の伸縮を示す伸縮ベクトルを合成(演算)することにより、移動推定軌跡を算出する。なお、合成(演算)に用いる演算式や座標系は、メモリ72に予め記憶される。当該座標系の原点は、例えば、移動推定軌跡の始点となる監視画像の中央位置である。ステップS75の処理は、特許請求の範囲に記載された「軌跡推定処理」に相当する。
【0173】
制御プログラム75は、ステップS75で算出した移動推定軌跡に基づいて、判断領域を設定する(S76)。例えば、メモリ72は、移動推定軌跡を示す式や座標点群が入力されることによって、判断領域を示す画素の番号列を出力する演算式を予め記憶する。制御プログラム75は、当該演算式と移動推定軌跡とを用いて、判断領域を示す画素の番号列を取得する。ステップS76の処理は、特許請求の範囲に記載された「判断領域設定処理」に相当する。
【0174】
制御プログラム75は、ステップS11で取得した監視画像データと、ステップS76で設定した判断領域とに基づいて、第1実施形態と同様にして判断画像データを生成する(S77)。
【0175】
制御プログラム75は、生成した判断画像データを人判断プログラム76に受け渡すステップS16以降の処理を実行する。一方、制御プログラム75は、フック高さQが閾値高さK未満でないと判断すると(S73:No)、ステップS74からS23までの処理をスキップする。
【0176】
制御プログラム75は、監視処理を終了していないと判断すると(S24:No)、すなわちクレーン装置12の駆動が継続して行われていると判断すると、ステップS11以降の処理を再度実行する。すなわち、所定の時間間隔(サンプリング周期)で監視画像データが取得され、フック高さの判定(S73)、移動推定軌跡の算出(S75)、判断画像データの生成(S77)、人が居るか否かの判断(S19)、及び安全処理(S21、S22、S23)等の処理が実行される。
【0177】
[第2実施形態の作用効果]
【0178】
本実施形態では、フックブロック32が、人に衝突するおそれのある高さにあると判断されると、操縦装置29が受け付けている操作の操作量に基づいて、所定時間経過後までのフックブロック32の移動推定軌跡が算出される。そして、算出された移動推定軌跡を含む判断領域に、人が映っているか否かが判断される。判断領域に人が映っていると判断されると、安全処理(S21、S22、S23)が実行される。したがって、クレーン装置12は、監視対象面(作業面)付近においてフックブロック32を安全に移動させることができる。
【0179】
本実施形態では、吊荷35が吊り下げられていない場合にのみ、フック高さQを算出するステップS72以降の一連の処理が実行される。したがって、常にステップS72以降の処理を実行する場合に比べ、CPU71の処理負担を低減することができる。
【0180】
[第2実施形態の変形例]
【0181】
上述の第2実施形態では、測距センサ65がクレーン装置12に設けられ、測距センサ65を用いて揚程L2やフック高さQが算出される例が説明された。しかしながら、測距センサ65がクレーン装置12に設けられていなくてもよい。その場合、制御プログラム75は、第1実施形態の各変形例と同様に、吊荷荷重センサ66が出力した計測値に基づいて、或いはオペレータが入力した相対高さEに基づいて、或いは監視画像データに基づいて、揚程L2やフック高さQを算出してもよい。
【0182】
[第1実施形態及び第2実施形態のその他の変形例]
【0183】
上述の第1実施形態、第2実施形態、及び各変形例では、監視カメラ17の画角φが一定であり、判断画像データが、吊荷高さH及び揚程L2を用いて生成される例(S14、S15)が説明された。もっとも、画角が揚程L2(監視カメラ17の高さ)に応じて変更され、撮像領域が常に一定範囲である場合、判断画像データは、揚程L2を用いずに吊荷高さHに基づいて生成されてもよい。その場合、吊荷高さHを入力されることにより画素の番号列を出力する演算式がメモリ72に記憶される。
【0184】
上述の第1実施形態、第2実施形態、及び各変形例では、人判断プログラム76がコントローラ70に実装された例が説明された。もっとも、人判断プログラム76は、
図2が示す管理サーバ100に実装されていてもよい。管理サーバ100は、インターネット101に接続された、いわゆるWEBサーバである。この場合、コントローラ70は、インターネット101に接続可能な通信インタフェース73を備える。インターネット101に接続可能な車両は、いわゆる「つながる車」とも称される。制御プログラム75は、監視処理のステップS16において、通信インタフェース73及びインターネット101を通じて管理サーバ100に判断画像データを含むHTTPリクエストを送信する。管理サーバ100は、受信した判断画像データが示す判断画像に人が映っているか否かを人判断プログラムに判断させる。管理サーバ100は、人判断プログラムが出力した判断結果を含むHTTPレスポンスをクレーン装置12に返信する。制御プログラム75は、ステップS18において、管理サーバ100が返信した判断結果を取得する。制御プログラム75が、判断結果を含むHTTPレスポンスを受信する処理は、特許請求の範囲に記載された「結果取得処理」に相当する。
【0185】
上述の第1実施形態、第2実施形態、及び各変形例において、制御プログラム75は、人判断プログラム76の更新処理を実行してもよい。制御プログラム75は、通信インタフェース73及びインターネット101を通じて、人判断プログラムを教育する管理サーバ100に、人判断プログラムを返信することの要求及び現在の人判断プログラム76のバージョンを含むHTTPリクエストを送信する。当該HTTPリクエストを受信した管理サーバ100は、新たなバージョンの人判断プログラムを含むHTTPレスポンスをクレーン装置12に返信する。当該HTTPレスポンスを受信したクレーン装置12の制御プログラム75は、HTTPレスポンスに含まれる新たなバージョンの人判断プログラムで、現在実装している人判断プログラム76を更新する。
【0186】
上述の第1実施形態や第2実施形態や各変形例では、監視モニタ84が運転室13に設けられ、判断画像或いは監視画像が監視モニタ84に映される例が説明された。もっとも、安全処理(S21、S22、S23)が自動で実行されるから、監視モニタ84は、設けられていなくてもよい。
【0187】
上述の第1実施形態、第2実施形態、及び各変形例では、ドラムセンサ64が計測するワイヤ41の繰り出し長さL1は、ブーム22の先端部から吊荷35の最下点までの距離である場合が説明された。もっとも、ドラムセンサ64が計測するワイヤ41の繰り出し長さL1は、ブーム22の先端部からフックブロック32の最下点までの距離であってもよいし、ブーム22の先端部からフックブロック32の最上点までの距離であってもよい。制御プログラム75は、ドラムセンサ64が計測するワイヤ41の繰り出し長さL1に、フックブロック32の長さや、フックブロック32の最下点から吊荷35の最下端までの距離を加減算することにより、ワイヤ41の繰り出し長さL1を調整して使用する。
【0188】
上述の変形例1及び第2実施形態では、吊荷荷重センサ66は、吊荷35がワイヤ41に加える荷重に応じた計測値を出力するものとして説明がされた。もっとも、吊荷荷重センサ66は、吊荷35及びフックブロック32がワイヤ41に加える荷重に応じた計測値を出力するものであってもよい。その場合、制御プログラム75は、フックブロック32がワイヤ41に加える荷重を、吊荷荷重センサ66が計測した荷重から減算して、吊荷35がワイヤ41に加える荷重を算出する。フックブロック32がワイヤ41に加える荷重は、メモリ72に予め記憶される。
【符号の説明】
【0189】
10・・・クレーン車
11・・・走行体
12・・・クレーン装置
13・・・運転室
17・・・監視カメラ
21・・・旋回台
22・・・ブーム
23・・・ウインチ
26・・・センサ群
29・・・操縦装置
32・・・フックブロック
34・・・フック
35・・・吊荷
41・・・ワイヤロープ
61・・・旋回角センサ
62・・・ブーム長さセンサ
63・・・起伏角度センサ
64・・・ドラムセンサ
65・・・測距センサ
66・・・吊荷荷重センサ
70・・・コントローラ
71・・・CPU
72・・・メモリ
75・・・制御プログラム
76・・・人判断プログラム
80・・・制御モニタ
81・・・ディスプレイ
82・・・タッチセンサ
83・・・スピーカ
84・・・監視モニタ
100・・・管理サーバ
101・・・インターネット