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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087444
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
B25J19/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202269
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 祐介
(72)【発明者】
【氏名】谷 優作
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS11
3C707BS12
3C707BT05
3C707CT05
3C707CV08
3C707CW08
3C707CX01
3C707CY03
3C707CY12
3C707CY37
3C707DS01
(57)【要約】
【課題】支持アームを枢動させると、挿通部から支持アームまでの間を露出したケーブルが、収容部に擦れてしまい、ケーブルが摩耗することがある。
【解決手段】産業用ロボット1のアーム部22には、第4軸J4からオフセットした位置で、長手方向Dに延在するアーム本体22Cと、アーム本体22Cの基端側において、支持アーム30を駆動する第5および第6モータ40E、40Fが収容された収容部22Bと、が形成されている。収容部22Bは、アーム本体22Cと収容部22Bとで、挿通部22Fの一部を、第4軸J4の周りで囲うように、第5軸J5に沿った方向に、アーム本体22Cから突出している。挿通孔21aには、ケーブル52が挿通される筒状のインナガイド60が、第4軸J4の周りに、回転自在に遊嵌されている。第5軸に沿った方向から見た側面視において、インナガイド60は、挿通部22Fから、支持アーム30側に突出している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に基端が枢着されたロアアームと、
前記ロアアームの先端に枢着されたアッパアームと、
前記アッパアームの先端に枢着された支持アームと、
少なくとも前記アッパアームから前記支持アームまで配設されたケーブルと、を備えた産業用ロボットであって、
前記アッパアームは、前記ロアアームの先端に枢着される関節部と、前記アッパアームの長手方向に沿った回転軸で回転自在となるように、前記関節部に取り付けられたアーム部と、を備えており、
前記アッパアームは、前記アーム部を前記関節部に取り付けた状態で、前記回転軸に沿って、前記ケーブルを挿通する挿通孔が形成された挿通部を有しており、
前記アーム部には、前記回転軸からオフセットした位置で、前記長手方向に延在するアーム本体と、
前記アーム本体の基端側において、前記挿通部と隣接する位置に、前記支持アームを駆動する駆動モータが収容された収容部と、が形成されており、
前記収容部は、前記アーム本体と前記収容部とで、前記挿通部の一部を、前記回転軸の周りで囲うように、前記支持アームが枢動する枢動軸に沿った方向に、前記アーム本体から突出しており、
前記挿通孔には、前記ケーブルが挿通される筒状のインナガイドが、前記回転軸の周りに、回転自在に遊嵌されており、
前記枢動軸に沿った方向から見た側面視において、前記インナガイドは、前記挿通部から、前記支持アーム側に突出していることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記駆動モータは、
前記支持アームを、前記枢動軸の周りに枢動させる枢動モータと、
前記支持アームを、前記支持アームの長手方向に沿った回動軸の周りで回動させる回動モータと、で構成され、
前記収容部には、前記枢動モータと前記回動モータとが、前記アッパアームの前記長手方向に並んで収容されていることを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記長手方向において、前記インナガイドは、前記収容部よりも、前記支持アーム側に、突出するように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記収容部の表面のうち、前記回転軸と対向する対向面は、前記支持アーム側に進むに従って、前記回転軸から離れるように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の産業用ロボットとして、特許文献1には、基台に基端が枢着されたロアアームと、ロアアームの先端に枢着されるアッパアームと、アッパアームの先端に枢着された支持アームと、を備えた産業用ロボットが提案されている。
【0003】
このアッパアームは、ロアアームの先端に枢着される関節部と、アッパアームの長手方向に沿った回転軸で回転自在となるように、関節部に取り付けられたアーム部と、を備えている。
【0004】
アーム部は、回転軸からオフセットした位置で、長手方向に延在するアーム本体と、アーム本体の基端側において、支持アームを駆動する駆動モータが収容された収容部と、が設けられている。
【0005】
アッパアームの基端部には、ケーブルを挿通する挿通孔が形成された挿通部が形成されており、ケーブルは、挿通部を挿通した状態で、支持アームまで案内されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-264525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に係る産業用ロボットでは、支持アームを枢動させると、挿通部から支持アームまでの間を露出したケーブルが、収容部に擦れてしまい、ケーブルが摩耗することがある。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、挿通部から支持アームまでの間のケーブルが、収容部に擦れて、ケーブルが摩耗することを抑制することができる産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を鑑みて、本発明に係る産業用ロボットは、基台に基端が枢着されたロアアームと、前記ロアアームの先端に枢着されたアッパアームと、前記アッパアームの先端に枢着された支持アームと、少なくとも前記アッパアームから前記支持アームまで配設されたケーブルと、を備えた産業用ロボットであって、前記アッパアームは、前記ロアアームの先端に枢着される関節部と、前記アッパアームの長手方向に沿った回転軸で回転自在となるように、前記関節部に取り付けられたアーム部と、を備えており、前記アッパアームは、前記アーム部を前記関節部に取り付けた状態で、前記回転軸に沿って、前記ケーブルを挿通する挿通孔が形成された挿通部を有しており、前記アーム部には、前記回転軸からオフセットした位置で、前記長手方向に延在するアーム本体と、前記アーム本体の基端側において、前記挿通部と隣接する位置に、前記支持アームを駆動する駆動モータが収容された収容部と、が形成されており、前記収容部は、前記アーム本体と前記収容部とで、前記挿通部の一部を、前記回転軸の周りで囲うように、前記支持アームが枢動する枢動軸に沿った方向に、前記アーム本体から突出しており、前記挿通孔には、前記ケーブルが挿通される筒状のインナガイドが、前記回転軸の周りに、回転自在に遊嵌されており、前記枢動軸に沿った方向から見た側面視において、前記インナガイドは、前記挿通部から、前記支持アーム側に突出している。
【0010】
本発明によれば、アーム部のアーム本体は、回転軸からオフセットした位置で、アッパアームの長手方向に延在している。これにより、挿通部の挿通孔を通過したケーブルは、挿通部と支持アームとの間で、露出することになる。ここで、駆動モータを収容する収容部は、アーム本体と収容部とで、挿通部の一部を、前記回転軸の周りで囲うように、支持アームが枢動する枢動軸に沿った方向に、アーム本体から突出している。したがって、露出したケーブルは、支持アームの枢動により、収容部に近づこうとする。
【0011】
しかしながら、本発明によれば、挿通孔に回転自在に遊嵌されたインナガイドは、挿通部から支持アーム側に突出しているので、挿通部から突出していないインナガイドを用いた場合に比べて、支持アーム寄りに、ケーブルを露出させることができる。これにより、挿通部から突出していないインナガイドを用いた場合に比べて、露出したケーブルが、高い面圧で、収容部に接触することを抑えることができる。このような結果、挿通部から支持アームまでの間の露出したケーブルが、収容部に擦れて、ケーブルが摩耗することを抑制することができる。
【0012】
より好ましい態様としては、前記駆動モータは、前記支持アームを、前記枢動軸の周りに枢動させる枢動モータと、前記支持アームを、前記支持アームの長手方向に沿った回動軸の周りで回動させる回動モータと、で構成され、前記収容部には、前記枢動モータと前記回動モータとが、前記アッパアームの前記長手方向に並んで収容されている。
【0013】
この態様によれば、収容部に、枢動モータと回動モータとを、アッパアームの長手方向に並べて収容すると、収容部は、この長手方向に延在することになり、収容部に露出したケーブルが接触し易い。しかしながら、このような収容部であっても、インナガイドを、挿通部から支持アーム側に突出させているので、挿通部から支持アームまでの間の露出したケーブルが、収容部に擦れることを効果的に抑えることができる。
【0014】
より好ましい態様としては、前記長手方向において、前記インナガイドは、前記収容部よりも、前記支持アーム側に、突出するように配置されている。この態様によれば、インナガイドが、収容部よりも、支持アーム側に突出しているので、インナガイドを挿通したケーブルは、収容部よりも支持アーム側において露出する。この結果、ケーブルが支持アームに接触することを確実に回避することができる。
【0015】
より好ましい態様としては、前記収容部の表面のうち、前記回転軸と対向する対向面は、前記支持アーム側に進むに従って、前記回転軸から離れるように傾斜している。この態様によれば、収容部の対向面が、支持アーム側に進むに従って、回転軸から離れるように傾斜しているので、収容部に近づくケーブルを逃がすことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、挿通部から支持アームまでの間のケーブルが、収容部に擦れて、ケーブルが摩耗することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る産業用ロボットを正面側から視た斜視図である。
図2図1に示す産業用ロボットを他方の正面側から視た斜視図である。
図3図1に示す産業用ロボットのアッパアームを背面側から視た斜視図である。
図4図1に示すアッパアームの長手方向に沿った断面図である。
図5図1に示すインナガイドに分解斜視図である。
図6図4の変形例に係るアッパアームの長手方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態に係る産業用ロボット1(以下、ロボット1という)を図1図6を参照しながら詳述する。
【0019】
1.ロボット1の全体構造
ロボット1は、その先端に把持装置、溶接用トーチなどエンドエフェクタ(図示せず)が取り付けられるものであり、エンドエフェクタには、ケーブル52が接続されている。ロボット1は、マニュピュレータである。なお、ロボット1は、各モータ等を制御する制御装置(図示せず)を備えており、制御装置により、ロボット1の動作が制御される。
【0020】
ロボット1は、基台11を備えており、基台11は、設置面に設置されている。基台11は、設置面に固定された固定台11aと、設置面に対して直交する方向に沿った第1軸J1の周りに旋回する旋回台11bと、を備えている。旋回台11bは、減速機(図示せず)等を介して第1モータ40Aの出力軸(図示せず)が接続されている。これにより、旋回台11bを固定台11aに対して第1軸J1の周りに枢動する。
【0021】
ロボット1は、基台11に基端が枢着されたロアアーム12と、ロアアーム12の先端に枢着されたアッパアーム20と、アッパアーム20の先端に枢着された支持アーム30と、を備えている。これらのアームは、金属製であり、たとえば、鋳鉄、アルニウム合金鋳物の鋳物からなる。
【0022】
ロアアーム12は、第2モータ40Bを介して、第1軸J1と直交する方向に平行となる第2軸J2に、基台11に対して枢動自在(回転自在)に取り付けられている。アッパアーム20は、第3モータ40Cを介して、第2軸J2と平行となる第3軸J3の周りに、ロアアーム12に対して枢動自在(回転自在)に取り付けられている。第2モータ40Bを駆動することにより、ロアアーム12は、第2軸J2の周りを枢動する。第3モータ40Cを駆動することにより、アッパアーム20は、第3軸J3の周りを枢動する。
【0023】
アッパアーム20は、ロアアーム12の先端に枢着される関節部21と、アッパアーム20の長手方向に沿った第4軸J4で回転自在となるように、関節部21に取り付けられたアーム部22と、を備えている。
【0024】
具体的には、ロアアーム12と関節部21とが、上述した第3モータ40Cを介して、枢動自在に取り付けられている。図2に示すように、第3モータ40Cは、関節部21内に収容された状態で、関節部21に固定されている。第3モータ40Cは、動力伝達ベルトおよび減速機等を介して、アーム部22に接続されている。これにより、関節部21に、第4軸J4に沿って、ケーブル52を挿通する挿通孔21aの一部を形成することができる。なお、アーム部22は、第4モータ40Dの動力により、関節部21に対して第4軸J4の周りに回転する。第4軸J4は、本発明でいう「回転軸」に相当する。
【0025】
さらに、アッパアーム20の先端は、ロボット1の手首部に相当する部分であり、エンドエフェクタ(図示せず)を支持する支持アーム30が取り付けられている。本実施形態では、アッパアーム20のアーム部22には、支持アーム30をアーム部22に対して枢動させる第5モータ40Eが固定されている。
【0026】
第5モータ40Eには、アーム本体22Cに内蔵された動力伝達ベルト等を介して、支持アーム30に接続されている。これにより、第5モータ40Eの動力が、アーム本体22Cに内蔵された動力伝達ベルト(図示せず)に伝達されることで、支持アーム30は、アーム部22に対して第5軸J5で枢動(揺動)する。
【0027】
より具体的には、支持アーム30は、アッパアーム20に対して片持ち支持されており、アッパアーム20に取り付けられた関節部31と、関節部31に取り付けられた支持部本体32と、を備えている。
【0028】
関節部31は、その片側において、アッパアーム20のアーム部22の先端において、第5軸J5で枢動自在となるようにアーム部22に枢着されている。支持部本体32は、関節部31に対して、支持アーム30の軸心周りに回動自在に関節部31に取り付けられている。
【0029】
アーム本体22Cには、支持アーム30の長手方向に沿った第6軸J6の周りに、支持部本体32を回転させる第6モータ40Fが固定されている。図面では、詳細な構造を省略しているが、第6モータ40Fは、動力伝達ベルトおよびベベルギア(図示せず)を介して、支持部本体32に接続されている。
【0030】
これにより、第5モータ40Eの動力で、関節部31が、アーム部22に対して支持部本体32とともに第5軸J5を枢動する。これに加えて、第6モータ40Fの動力で、支持部本体32が、関節部31に対して第6軸J6を回転する。なお、第5軸J5が本発明でいうところの「枢動軸」に相当し、第5モータ40Eが、本発明でいうところの「枢動モータ」に相当する。さらに、第6軸J6が、本発明でいうところの「回動軸」に相当し、第6モータ40Fが、本発明でいうところの「回動モータ」に相当する。
【0031】
ロボット1には、基台11からロアアーム12に沿って、ケーブル51が配設されている。ケーブル51は、ロボット1を作動させるモータに電力を供給するケーブルである。その他にも、図1等の二点鎖線の仮想線で示すように、ロボット1には、少なくともアッパアーム20から支持アーム30まで、ケーブル52が配設されている。ケーブル52は、支持アーム30に取り付けられたエンドエフェクタ(図示せず)に接続されるケーブルである。
【0032】
たとえば、エンドエフェクタ(図示せず)が、溶接用トーチである場合には、ケーブル52は、溶接用ワイヤが挿通されたケーブルであり、溶接用ワイヤは、ケーブル52内を移動する。エンドエフェクタが、把持装置である場合には、把持装置への電力を供給する配線、把持装置に制御信号を送信する配線などが挿通されている。
【0033】
2.アッパアーム20の構造について
アッパアーム20は、ロアアーム12の先端に枢着される関節部21と、アッパアームの長手方向Dに沿った第4軸J4で回転自在となるように、関節部21に取り付けられたアーム部22と、を備えている。アーム部22は、接続部22Aで、関節部21に接続されている。アーム部22の先端には、枢動自在に支持アーム30の関節部31に接続されている。図4に示すように、アーム部22は、1つの部材として形成されているが、複数の部材をボルト等を介して連結することにより、形成されていてもよい。
【0034】
アッパアーム20は、アーム部22を関節部21に取り付けた状態で、第4軸J4に沿って、ケーブル52を挿通する挿通孔21aが形成された挿通部22Fを有している。挿通孔21aは、アーム部22と関節部21とに形成されている。挿通孔21aは、関節部21とアーム部22とにおいて、第4軸J4の周りに形成された円筒状の空間である。
【0035】
アーム部22には、アーム本体22Cと収容部22Bが形成されている。アーム本体22Cは、第4軸J4からオフセットした位置で、アッパアーム20の長手方向Dに延在している。収容部22Bは、アーム本体22Cの基端側において、挿通部22Fと隣接する位置に、形成されている。収容部22Bは、筐状の部分であり、図4に示すように、第5モータ40Eと第6モータ40Fとが、アッパアーム20の長手方向Dに並んで収容されている。これにより、アッパアーム20の長手方向に沿って、第5モータ40Eと第6モータ40Fを配置するので、アッパアーム20の第4軸J4の周りの振れを抑えることができる。図4に示すように、長手方向Dにおいて、収容部22Bは、挿通部22Fよりも、支持アーム30側に張り出している。
【0036】
さらに、本実施形態では、図2に示すように、収容部22Bは、アーム本体22Cと収容部22Bとで、挿通部22Fの一部を、第4軸J4の周りで囲うように、第5軸J5に沿った方向に、アーム本体22Cから突出している。具体的には、収容部22Bは、挿通部22Fの一部に対してオーバハングするように、アーム本体22Cから、第5軸J5に沿った方向に、張り出している。
【0037】
これにより、挿通部22Fを挿通し、挿通部22Fを通過して支持アーム30に向かうケーブル52は、挿通部22Fと支持アーム30との間に形成された空間において、収容部22Bと対向した位置に配置される。ここで、収容部22Bの表面のうち、第4軸J4と対向する対向面22bは、支持アーム30側に進むに従って、第4軸J4から離れるように傾斜している。具体的には、対向面22bは、長手方向Dに沿った収容部22Bの端面に連続しており、ケーブル52を逃がすように形成されている。
【0038】
本実施形態では、挿通部22Fの挿通孔21aには、ケーブル52が挿通される筒状のインナガイド60が、前回転軸の周りに、挿通部22Fに対して、回転自在に遊嵌されている。図5に示すインナガイド60は、絶縁性の樹脂材料からなり、円筒状の筒体61と、筒体61の端部に対して、着脱自在に取り付けられたガイド部材62とを備えている。ガイド部材62の周縁には、係合爪62dが形成されており、この係合爪62dを、弾性変形させて、筒体61の周縁に形成された係合孔(図示せず)に係合させることにより、筒体61とガイド部材62を着脱自在に取り付けることができる。
【0039】
ガイド部材62の先端には、インナガイド60の開口の一部を覆うように半円状の案内壁62bが形成されており、案内壁62bは、ガイド部材62の先端62aに向かって、湾曲しながら傾斜している。ガイド部材62の周壁62eと案内壁62bとにより、ガイド部材62の先端側には、半円状の挿通口63cが形成されている。
【0040】
図3および図4に示すように、インナガイド60に挿通されるケーブル52は、筒体61を通過し、案内壁62bの先端側の部分に当接し、第4軸J4に対して斜め方向に開口した挿通口63cを通過する。これにより、ケーブル52は、ガイド部材62の先端62aを通過することになる。なお、本実施形態では、ロボット1は、第4軸J4と第6軸J6とが、同一直線上となる姿勢において、挿通口63cは、斜め下方に向いて形成されているが、インナガイド60は、第4軸J4の周りに回転自在に遊嵌されているため、挿通口63cの縁部が、第4軸J4に対して傾斜していれば、この縁部の傾斜する方向は、図4等に示す方向に限定されるものではない。
【0041】
本実施形態では、第5軸J5に沿った方向から見た側面視において、インナガイド60(具体的には、インナガイド60の先端62a)は、挿通部22Fから、支持アーム30側に突出している。
【0042】
本実施形態によれば、アーム部22のアーム本体22Cは、第4軸J4からオフセットした位置で、アッパアーム20の長手方向Dに延在している。これにより、挿通部22Fの挿通孔21aを通過したケーブル52は、挿通部22Fと支持アーム30との間の空間において、露出することになる。これにより、ケーブル52を緩やかに湾曲させて、支持アーム30の枢動および回動によるケーブル長さを確保することができる。
【0043】
ここで、第5モータ40Eおよび第6モータ40Fを収容する収容部22Bは、第4軸J4から沿った方向から視て、アーム本体22Cと収容部22Bとで、挿通部22Fの一部を、第4軸J4の周りで囲うように、支持アーム30が枢動する第5軸J5に沿った方向に、アーム本体22Cから突出している。したがって、露出したケーブル52は、支持アーム30の枢動により、収容部22Bに近づこうとする。
【0044】
しかしながら、挿通孔21aに回転自在に遊嵌されたインナガイド60は、挿通部22Fから支持アーム30側に突出しているので、挿通部から突出していないインナガイドを用いた場合に比べて、支持アーム30寄りに、ケーブル52を露出させることができる。これにより、挿通部から突出していないインナガイドを用いた場合に比べて、露出したケーブル52が、高い面圧で、収容部22Bに接触することを抑えることができる。このような結果、挿通部22Fから支持アーム30までの間の露出したケーブル52が、収容部22Bに擦れて、ケーブル52が摩耗することを抑制することができる。
【0045】
特に、収容部22Bに、第5モータ40Eと第6モータ40Fとを、アッパアーム20の長手方向Dに並べて収容すると、アッパアーム20の第4軸J4の周りの回転の振れを抑えることができる。ただし、収容部20Bは、この長手方向Dに延在することになり、収容部20Bに露出したケーブル52が接触し易い。しかしながら、このような収容部20Bであっても、インナガイド60を、挿通部22Fから支持アーム30側に突出させているので、挿通部22Fから支持アーム30までの間の露出したケーブル52が、収容部22Bに擦れることを効果的に抑えることができる。本実施形態では、収容部22Bの対向面22bが、支持アーム30側に進むに従って、第4軸J4から離れるように傾斜しているので、収容部22Bに近づくケーブル52を逃がすことができる。
【0046】
図6は、図4の変形例に係るアッパアーム20の長手方向Dに沿った断面図である。この変形例では、長手方向Dにおいて、インナガイド60(の先端62a)は、収容部22Bよりも、支持アーム30側に、突出するように配置されている。
【0047】
このように、インナガイド60が、収容部22Bよりも、支持アーム30側に突出しているので、インナガイド60を挿通したケーブル52は、収容部22Bよりも支持アーム30側において露出する。この結果、ケーブル52が支持アーム30に接触することを確実に回避することができる。
【0048】
さらに、本実施形態およびその変形例によれば、挿通部22Fを支持アーム30側に延ばすことなく、インナガイド60の長さを設定するだけで、ケーブル52が収容部22Bに接触することを回避することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0050】
1:ロボット(産業用ロボット)、11:基台、12:ロアアーム、20:アッパアーム、21:関節部、21a:挿通孔、22:アーム部、22B:収容部、22C:アーム本体、22F:挿通部、30:支持アーム、40E:第5モータ(枢動モータ)、40F:第6モータ(回動モータ)、30:支持アーム、52:ケーブル、60:インナガイド、J4:第4軸(回転軸)、J5:第5軸(枢動軸)、J6:第6軸(回動軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6