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特開2024-87456ヒアルロン酸含有疎水化ナノ粒子を含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087456
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸含有疎水化ナノ粒子を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240624BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240624BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240624BHJP
   A61K 8/88 20060101ALI20240624BHJP
   A61K 8/65 20060101ALI20240624BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20240624BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20240624BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20240624BHJP
   A61K 8/20 20060101ALI20240624BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240624BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/36
A61K8/81
A61K8/88
A61K8/65
A61K8/64
A61K8/55
A61K8/365
A61K8/20
A61K8/49
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022202286
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】新美 類
(72)【発明者】
【氏名】河西 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】五十島 健史
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AB341
4C083AB342
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC251
4C083AC252
4C083AC261
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC402
4C083AC611
4C083AC612
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD131
4C083AD321
4C083AD331
4C083AD332
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD371
4C083AD372
4C083AD411
4C083AD412
4C083AD431
4C083BB33
4C083BB34
4C083BB42
4C083CC03
4C083DD23
4C083DD39
4C083EE01
4C083EE07
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】ヒアルロン酸含有ナノ粒子を含む組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、特定の条件下で、(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、(b-1)ヒアルロン酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種の第1のアニオン性ポリマー、(b-2)(b-1)第1のアニオン性ポリマーとは異なる少なくとも1種の第2のアニオン性ポリマー、(c)少なくとも1種の非ポリマー酸又はその塩、(d)少なくとも1種の任意選択の金属塩、(e)少なくとも1種の脂肪酸、並びに(f)水を含む、組成物に関する。本発明による組成物は、安定性且つ透明又は半透明であり得る。更に、本発明による組成物は、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体を、皮膚等のケラチン物質中に、より深く送達することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(b-1)ヒアルロン酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種の第1のアニオン性ポリマー、
(b-2)前記(b-1)第1のアニオン性ポリマーとは異なる少なくとも1種の第2のアニオン性ポリマー、
(c)少なくとも1種の非ポリマー酸又はその塩、
(d)少なくとも1種の任意選択の金属塩、及び
(e)少なくとも1種の脂肪酸、
並びに
(f)水
を含むナノ粒子を含む組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚化粧用組成物であって、
前記ナノ粒子の量が、前記組成物の総質量に対して0.01質量%から0.58質量%、好ましくは0.05質量%から0.57質量%、より好ましくは0.1質量%から0.56質量%であり、
前記(a)カチオン性ポリマーの量の、前記ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.06~0.25であり、
前記(b-2)第2のアニオン性ポリマーの量の、前記ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.26以上であり、
前記(c)非ポリマー酸又はその塩の量の、前記ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.03以上であり、
前記(d)任意選択の金属塩の量の、前記ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.30以下であり、
前記(e)脂肪酸の量の、前記ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.001以上である、組成物。
【請求項2】
前記(a)カチオン性ポリマーが、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基、及びピリジル基からなる群から選択される少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(a)カチオン性ポリマーが、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えばキトサン及び(コ)ポリリジン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばコラーゲン及びアルギニン/リジンポリペプチド、カチオン性セルロースポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中の、前記(a)カチオン性ポリマーの量の、前記ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.06~0.24、好ましくは0.07~0.22、より好ましくは0.08~0.20である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記(b-1)第1のアニオン性ポリマーが、2,000kDa以下、好ましくは1,000kDa以下、より好ましくは100kDa以下の分子量を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中の、前記(b-1)第1のアニオン性ポリマーの量の、前記ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.01~0.8、好ましくは0.02~0.7、より好ましくは0.03~0.6である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記(b-2)第2のアニオン性ポリマーが、カラギーナン、ペクチン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中の、前記(b-2)第2のアニオン性ポリマーの量の、前記ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.26~0.9、好ましくは0.28~0.8、より好ましくは0.30~0.7である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記(c)非ポリマー酸又はその塩が、フィチン酸、クエン酸、乳酸及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物中の、前記(c)非ポリマー酸又はその塩の量の、前記ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.03~0.6、好ましくは0.035~0.5、より好ましくは0.04~0.4である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記(d)任意選択の金属塩が、多価金属塩、好ましくは二価金属塩、より好ましくはカルシウム塩、例えば塩化カルシウム及びピロリドンカルボン酸カルシウム、並びにマグネシウム塩、例えば塩化マグネシウムから選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物中の、前記(d)任意選択の金属塩の量の、前記ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.001~0.30、好ましくは0.005~0.25、より好ましくは0.01~0.20である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記(e)脂肪酸が、C4~C22、好ましくはC6~C20、より好ましくはC8~C18飽和及び不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物中の、前記(e)脂肪酸の量の、前記ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.001~0.4、好ましくは0.002~0.3、より好ましくは0.003~0.2である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物中の前記(f)水の量が、前記組成物の総質量に対して、50質量%~95質量%、好ましくは60質量%~90質量%、より好ましくは70質量%~85質量%である、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
皮膚等のケラチン物質のために美容方法であって、
請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物を前記ケラチン物質に適用する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸又はその塩を含むナノ粒子を含む組成物、及び該組成物を使用する美容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、皮膚内で見出される優勢なグルコサミノグリカンである。そのため、線維芽細胞は、コラーゲン、コラーゲン以外のマトリックス糖タンパク質(フィブロネクチン、ラミニン)、プロテオグリカン及びエラスチンを優勢的に合成する。ケラチン生成細胞は、それらの部分のために、硫酸化グリコサミノグリカン及びヒアルロン酸を優勢的に合成する。ヒアルロン酸は、ヒアルロナン(HA)とも呼ばれる。
【0003】
ヒアルロン酸は、表皮内及び真皮内に遊離状態で存在し、皮膚の膨満状態を左右する。この多糖は、実際、その質量の1000倍までに相当する大きい体積の水を保持することができる。この意味で、ヒアルロン酸は、組織内に結合されている水の量の増加、更には皮膚の機械的特性、及びしわ形成においても、重要な役割を果たす。
【0004】
ヒアルロン酸は、その高い保湿効果に起因して、化粧成分として広く使用されてきた。
【0005】
JP-A-2014-114272は、ヒアルロン酸、キトサン、及びヒアルロン酸以外のアニオン性ポリマーを含む複合粒子を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】JP-A-2014-114272
【特許文献2】欧州特許出願第0080976号
【特許文献3】仏国特許第2077143号
【特許文献4】仏国特許第2393573号
【特許文献5】仏国特許第1492597号
【特許文献6】米国特許第4,131,576号
【特許文献7】米国特許第3,589,578号
【特許文献8】米国特許第4,031,307号
【特許文献9】仏国特許第2162025号
【特許文献10】仏国特許第2280361号
【特許文献11】仏国特許第2252840号
【特許文献12】仏国特許第2368508号
【特許文献13】仏国特許第1,583,363号
【特許文献14】米国特許第3,227,615号
【特許文献15】米国特許第2,961,347号
【特許文献16】仏国特許第2080759号
【特許文献17】追加特許第2190406号
【特許文献18】仏国特許第2320330号
【特許文献19】仏国特許第2270846号
【特許文献20】仏国特許第2316271号
【特許文献21】仏国特許第2336434号
【特許文献22】仏国特許第2413907号
【特許文献23】米国特許第2,273,780号
【特許文献24】米国特許第2,375,853号
【特許文献25】米国特許第2,388,614号
【特許文献26】米国特許第2,454,547号
【特許文献27】米国特許第3,206,462号
【特許文献28】米国特許第2,261,002号
【特許文献29】米国特許第2,271,378号
【特許文献30】米国特許第3,874,870号
【特許文献31】米国特許第4,001,432号
【特許文献32】米国特許第3,929,990号
【特許文献33】米国特許第3,966,904号
【特許文献34】米国特許第4,005,193号
【特許文献35】米国特許第4,025,617号
【特許文献36】米国特許第4,025,627号
【特許文献37】米国特許第4,025,653号
【特許文献38】米国特許第4,026,945号
【特許文献39】米国特許第4,027,020号
【特許文献40】欧州特許出願第0122324号
【特許文献41】EP-A-0750899
【特許文献42】EP-A-1069172
【特許文献43】EP-A-0173109
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「Hyaluronan fragments:an information-rich system」、R. Sternら、European Journal of Cell Biology 58 (2006)、699~715頁
【非特許文献2】D. Campocciaら、「Semisynthetic resorbable materials from hyaluronan esterification」、Biomaterials 19 (1998) 2101~2127頁
【非特許文献3】「Micelle formation of random copolymers of sodium 2-(acrylamido)-2-methylpropanesulfonate and nonionic surfactant macromonomer in water as studied by fluorescence and dynamic light scattering - Macromolecules、2000年、第33巻、第10号-3694~3704頁」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
JP-A-2014-114272に開示されているようなヒアルロン酸を含む複合粒子は、場合によっては、皮膚等のケラチン物質中への浸透が困難であることが発見された。
【0009】
更に、一部の例では、そのような複合粒子を含む組成物は、沈殿を生じない安定性と、低レベルの濁度を有する透明性又は半透明性とが必要とされる。更に、皮膚等のケラチン物質中への浸透力の観点から、複合粒子は、ナノメートルサイズ(1,000nm未満)を有するように小さいことが好ましい。
【0010】
したがって、本発明の目的は、ヒアルロン酸を皮膚等のケラチン物質中により深く送達することができる、ヒアルロン酸含有ナノ粒子を含む、安定性で透明又は半透明の組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記の目的は、
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(b-1)ヒアルロン酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種の第1のアニオン性ポリマー、
(b-2)(b-1)第1のアニオン性ポリマーとは異なる少なくとも1種の第2のアニオン性ポリマー、
(c)少なくとも1種の非ポリマー酸又はその塩、
(d)少なくとも1種の任意選択の金属塩、及び
(e)少なくとも1種の脂肪酸、
並びに
(f)水
を含むナノ粒子を含む組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚化粧用組成物であって、
ナノ粒子の量が、組成物の総質量に対して0.01質量%から0.58質量%、好ましくは0.05質量%から0.57質量%、より好ましくは0.1質量%から0.56質量%であり、
(a)カチオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.06~0.25であり、
(b-2)第2のアニオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.26以上であり、
(c)非ポリマー酸又はその塩の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.03以上であり、
(d)任意選択の金属塩の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.30以下であり、
(e)脂肪酸の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.001以上である、組成物によって達成することができる。
【0012】
(a)カチオン性ポリマーは、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基及びピリジル基からなる群から選択される少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有してもよい。
【0013】
(a)カチオン性ポリマーは、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えばキトサン及び(コ)ポリリジン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばコラーゲン及びアルギニン/リジンポリペプチド、カチオン性セルロースポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択することができる。
【0014】
本発明による組成物中の(a)カチオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.06~0.24、好ましくは0.07~0.22、より好ましくは0.08~0.20であってもよい。
【0015】
(b-1)第1のアニオン性ポリマーは、2,000kDa以下、好ましくは1,000kDa以下、より好ましくは100kDa以下の分子量を有してもよい。
【0016】
組成物中の、(b-1)第1のアニオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.01~0.8、好ましくは0.02~0.7、より好ましくは0.03~0.6であってもよい。
【0017】
(b-2)第2のアニオン性ポリマーは、カラギーナン、ペクチン及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0018】
本発明による組成物中の、(b-2)第2のアニオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.26~0.9、好ましくは0.28~0.8、より好ましくは0.30~0.7であってもよい。
【0019】
(c)非ポリマー酸又はその塩は、フィチン酸、クエン酸、乳酸及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0020】
本発明による組成物中の、(c)非ポリマー酸又はその塩の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.03~0.6、好ましくは0.035~0.5、より好ましくは0.04~0.4であってもよい。
【0021】
(d)任意選択の金属塩は、多価金属塩、好ましくは二価金属塩、より好ましくはカルシウム塩、例えば塩化カルシウム及びピロリドンカルボン酸カルシウム、並びにマグネシウム塩、例えば塩化マグネシウムから選択されてもよい。
【0022】
本発明による組成物中の、(d)任意選択の金属塩の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.001~0.30、好ましくは0.005~0.25、より好ましくは0.01~0.20であってもよい。
【0023】
(e)脂肪酸は、C4~C22、好ましくはC6~C20、より好ましくはC8~C18飽和及び不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から選択され得る。
【0024】
本発明による組成物中の、(e)脂肪酸の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.001~0.4、好ましくは0.002~0.3、より好ましくは0.003~0.2であってもよい。
【0025】
本発明による組成物中の(f)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~95質量%、好ましくは60質量%~90質量%、より好ましくは70質量%~85質量%であってもよい。
【0026】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
鋭意検討の結果、本発明者らは、ヒアルロン酸を皮膚等のケラチン物質中により深く送達することができる、ヒアルロン酸含有ナノ粒子を含む、安定性で透明又は半透明の組成物を提供することが可能であることを発見した。
【0028】
したがって、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚化粧用組成物である、本発明による組成物は、
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(b-1)ヒアルロン酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種の第1のアニオン性ポリマー、
(b-2)(b-1)第1のアニオン性ポリマーとは異なる少なくとも1種の第2のアニオン性ポリマー、
(c)少なくとも1種の非ポリマー酸又はその塩、
(d)少なくとも1種の任意選択の金属塩、及び
(e)少なくとも1種の脂肪酸、
並びに
(f)水
を含むナノ粒子を含み、
ナノ粒子の量は、組成物の総質量に対して0.01質量%から0.58質量%、好ましくは0.05質量%から0.57質量%、より好ましくは0.1質量%から0.56質量%であり、
(a)カチオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.06~0.25であり、
(b-2)第2のアニオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.26以上であり、
(c)非ポリマー酸又はその塩の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.03以上であり、
(d)任意選択の金属塩の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.30以下であり、
(e)脂肪酸の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.001以上である。
【0029】
用語「ナノ粒子」は、1,000nm未満の粒径又は直径を有する粒子を意味する。ナノ粒子の粒径又は直径は、動的光散乱法によって測定することができる。この粒径は、体積平均直径に基づき得る。
【0030】
本発明による組成物は、(a)カチオン性ポリマー、(b-1)第1のアニオン性ポリマー、(b-2)第2のアニオン性ポリマー、(c)非ポリマー酸又はその塩、(d)任意選択の金属塩、及び(e)脂肪酸を含むナノ粒子を含むことができる。(b-1)第1のアニオン性ポリマーは、ヒアルロン酸及びその誘導体から選択される。したがって、ナノ粒子は、少なくとも1種のヒアルロン酸及び/又は少なくとも1種のヒアルロン酸誘導体を含む。
【0031】
ナノ粒子は、ポリイオンコンプレックスによって形成されるポリイオンコンプレックス粒子であってもよい。
【0032】
(a)カチオン性ポリマーは、(e)脂肪酸によって疎水化されてもよい。(a)カチオン性ポリマー中の第四級アンモニウム基等のカチオン性基は、(f)脂肪酸のアニオン性であるカルボン酸基とイオン的に相互作用することができる。(e)脂肪酸は疎水性部分を有するため、(a)カチオン性ポリマーはイオン的に疎水化され得、十分な疎水性を有することができる。したがって、(a)カチオン性ポリマーを含むナノ粒子は、(e)脂肪酸によって疎水化され得る。驚くべきことに、疎水化ナノ粒子は、非疎水化ナノ粒子と比較して、皮膚等のケラチン物質中により深く浸透することができる。
【0033】
ナノ粒子は、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体に基づく美容効果を発揮することができる。したがって、本発明による組成物は、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体に基づく、保湿効果等の美容効果をもたらすことができる。
【0034】
本発明による組成物は、安定性且つ透明又は半透明であり得る。更に、本発明による組成物は、皮膚等のケラチン物質中への浸透力が強化された、ヒアルロン酸含有ナノ粒子を含むことができる。したがって、本発明による組成物は、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体を、皮膚等のケラチン物質中に、より深く送達することができる。
【0035】
以下、本発明による組成物及び方法等をより詳細に説明する。
【0036】
[ナノ粒子]
本発明による組成物は、
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(b-1)ヒアルロン酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種の第1のアニオン性ポリマー、
(b-2)(b-1)第1のアニオン性ポリマーとは異なる少なくとも1種の第2のアニオン性ポリマー、
(c)少なくとも1種の非ポリマー酸又はその塩、
(d)少なくとも1種の任意選択の金属塩、及び
(e)少なくとも1種の脂肪酸
を含むナノ粒子を含む。
【0037】
上記の成分(a)~(e)、具体的には、主に成分(a)、(b-1)、(b-2)及び(c)は、ポリイオンコンプレックスを形成することができる。ポリイオンコンプレックスは、ナノ粒子の形態であってもよい。
【0038】
2種以上の異なるタイプのナノ粒子を組み合わせて存在させてもよい。したがって、単一のタイプのナノ粒子又は異なるタイプのナノ粒子の組合せが、本発明による組成物中に存在し得る。
【0039】
ナノ粒子の粒径又は直径は、5nm~500nm、好ましくは10nm~400nm、より好ましくは20nm~300nm、更により好ましくは30nm~00nmであってもよい。粒径又は直径は、体積ベースの平均粒径又は直径であってもよい。
【0040】
本発明による組成物中のナノ粒子の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~0.58質量%、好ましくは0.05質量%~0.57質量%、より好ましくは0.1質量%~0.56質量%、更により好ましくは0.2質量%~0.55質量%である。
【0041】
(カチオン性ポリマー)
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含む。2種以上の異なるタイプのカチオン性ポリマーを組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプのカチオン性ポリマー、又は異なるタイプのカチオン性ポリマーの組合せを使用してもよい。
【0042】
(a)カチオン性ポリマーは、正の電荷密度を有する。(a)カチオン性ポリマーの電荷密度は、0.01meq/g~20meq/g、好ましくは0.05~15meq/g、より好ましくは0.1~10meq/gでもよい。
【0043】
(a)カチオン性ポリマーの分子量は、500以上、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更により好ましくは3,000以上であることが好ましい場合がある。説明中に別段の定義がない限り、「分子量」は質量平均分子量を意味する。
【0044】
(a)カチオン性ポリマーは、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基、及びピリジル基からなる群から選択される少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有してもよい。用語「(第一級)アミノ基」は、本明細書では、-NH2基を意味する。
【0045】
(a)カチオン性ポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。用語「コポリマー」は、2種類のモノマーから得られるコポリマーと、2種類超のモノマーから得られるもの、例えば3種類のモノマーから得られるターポリマーとの両方を意味すると理解される。
【0046】
(a)カチオン性ポリマーは、天然及び合成カチオン性ポリマーから選択され得る。(a)カチオン性ポリマーの非限定例は、以下の通りである。
【0047】
(1)アクリル酸又はメタクリル酸のエステル及びアミドに由来し、以下の式:
【0048】
【化1】
【0049】
(式中:
R1及びR2は、同一であっても異なっていてもよく、水素、及び1~6個の炭素原子を含むアルキル基、例えば、メチル及びエチル基から選択され、
R3は、同一であっても異なっていてもよく、水素及びCH3から選択され、
記号Aは、同一であっても異なっていてもよく、1~6個の炭素原子、例えば2~3個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基、及び1~4個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基から選択され、
R4、R5、及びR6は、同一であっても異なっていてもよく、1~18個の炭素原子を含むアルキル基、及びベンジル基から選択され、少なくとも1つの実施形態では、1~6個の炭素原子を含むアルキル基であり、
Xは、無機又は有機酸に由来するアニオン、例えばメト硫酸アニオン及びハロゲン化物イオン、例として塩化物イオン及び臭化物イオンである)の単位から選択される少なくとも1つの単位を含むホモポリマー及びコポリマー。
【0050】
上記のファミリー(1)のコポリマーはまた、コモノマーに由来する少なくとも1つの単位も含んでよく、これは、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、窒素原子が(C1~C4)低級アルキル基で置換されているアクリルアミド及びメタクリルアミド、アクリル酸又はメタクリル酸及びそのエステルに由来する基、ビニルラクタム、例えばビニルピロリドン及びビニルカプロラクタム、並びにビニルエステルから選択することができる。
【0051】
ファミリー(1)のコポリマーの例としては、限定されないが、以下が挙げられる:
アクリルアミドと、硫酸ジメチル又はハロゲン化ジメチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルとのコポリマー、
アクリルアミドとメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドとのコポリマー、例えば欧州特許出願第0080976号に記載されているもの、
アクリルアミドとメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメトサルフェートとのコポリマー、
四級化又は非四級化ビニルピロリドン/アクリル酸又はメタクリル酸ジアルキルアミノアルキルコポリマー、例えば仏国特許第2077143号及び同第2393573号に記載されているもの、
メタクリル酸ジメチルアミノエチル/ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドンターポリマー、
ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピルジメチルアミンコポリマー、四級化ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドコポリマー、並びに
架橋メタクリロイルオキシ(C1~C4)アルキルトリ(C1~C4)アルキルアンモニウム塩ポリマー、例えば塩化メチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルの単独重合、又はアクリルアミドと、塩化メチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルとの共重合、その単独重合又は共重合に続いて、オレフィン性不飽和を含有する化合物、例えばメチレンビスアクリルアミドで架橋することによって得られるポリマー。
【0052】
(2)カチオン性セルロースポリマー、例えば仏国特許第1492597号に記載されている、1つ又は複数の第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体等、例えばUnion Carbide Corporation社により名称「JR」(JR 400、JR 125、JR 30M)又は「LR」(LR 400、LR 30M)で販売されているポリマー。これらのポリマーはまた、CTFA辞典において、トリメチルアンモニウム基で置換されているエポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロースの第四級アンモニウムとして定義されている。
【0053】
カチオン性セルロースポリマーが、少なくとも1つの第四級アンモニウム基、好ましくは第四級トリアルキルアンモニウム基、より好ましくは第四級トリメチルアンモニウム基を有することが好ましい。
【0054】
第四級アンモニウム基は、以下の化学式(I):
【0055】
【化2】
【0056】
(式中、
R1及びR2のそれぞれは、C1~C3アルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基を示し、
R3は、C1~C24アルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基を示し、
X-は、アニオン、好ましくはハロゲン化物イオン、より好ましくは塩化物イオンを示し、
nは、0~30、好ましくは0~10、より好ましくは0の整数を示し、
R4は、C1~C4アルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基を示す)で表され得る第四級アンモニウム基含有基中に存在し得る。
【0057】
上記の化学式(I)中の最左のエーテル結合(-O-)は、多糖の糖環に結合することができる。
【0058】
第四級アンモニウム基含有基が、-O-CH2-CH(OH)-CH2-N+(CH3)3であることが好ましい。
【0059】
(3)カチオン性セルロースポリマー、例えば米国特許第4,131,576号に記載の、第四級アンモニウムの水溶性モノマーでグラフト化されたセルロースコポリマー及びセルロース誘導体等、例えばヒドロキシアルキルセルロース、例としては、例えばメタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、及びジメチルジアリルアンモニウム塩から選択される塩でグラフト化されたヒドロキシメチル-、ヒドロキシエチル-、及びヒドロキシプロピルセルロース。
【0060】
これらのポリマーに相当する市販製品としては、例えば、National Starch社により名称「Celquat(登録商標)L 200」及び「Celquat(登録商標)H 100」で販売されている製品が挙げられる。
【0061】
(4)米国特許第3,589,578号及び同第4,031,307号に記載されている、非セルロース系カチオン性多糖、例えばカチオン性トリアルキルアンモニウム基を含むグアーガム、カチオン性ヒアルロン酸及びデキストランヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド。塩、例えば2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムの塩化物で修飾されたグアーガム(グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド)もまた、使用してもよい。
【0062】
このような製品は、例えば、MEYHALL社により商品名JAGUAR(登録商標)C13 S、JAGUAR(登録商標)C15、JAGUAR(登録商標)C17及びJAGUAR(登録商標)C162で販売されている。
【0063】
(5)ピペラジニル単位と、酸素、硫黄、窒素、芳香族環及び複素環式環から選択される少なくとも1つの要素により任意選択で割り込まれた直鎖又は分枝鎖を含む二価のアルキレン又はヒドロキシアルキレン基とを含むポリマー、並びにまたこれらのポリマーの酸化及び/又は四級化生成物。このようなポリマーは、例えば仏国特許第2162025号及び同第2280361号に記載されている。
【0064】
(6)例えば酸性化合物をポリアミンと重縮合させることによって調製される水溶性ポリアミノアミドであり、これらのポリアミノアミドは、エピハロヒドリン;ジエポキシド;二無水物;不飽和二無水物;ビス不飽和誘導体;ビスハロヒドリン;ビスアゼチジニウム;ビスハロアシルジアミン;ビスアルキルハライド;ビスハロヒドリン、ビスアゼチジニウム、ビスハロアシルジアミン、ビスアルキルハライド、エピハロヒドリン、ジエポキシド及びビス不飽和誘導体から選択される要素と反応性である二官能性化合物の反応から得られるオリゴマーから選択される要素で架橋されている場合があり;その架橋剤は、ポリアミノアミドのアミン基1つ当たり0.025~0.35molの範囲の量で使用され;これらのポリアミノアミドは、任意選択でアルキル化されているか、又はこれらが少なくとも1つの第三級アミン官能基を含む場合、それらは、四級化されていてもよい。このようなポリマーは、例えば仏国特許第2252840号及び同第2368508号に記載されている。
【0065】
(7)ポリアルキレンポリアミンをポリカルボン酸と縮合させ、続いて二官能性作用剤でアルキル化することから得られるポリアミノアミド誘導体、例えば、メチル、エチル及びプロピル基等、アルキル基が1~4個の炭素原子を含み、エチレン基等、アルキレン基が1~4個の炭素原子を含む、アジピン酸/ジアルキルアミノヒドロキシアルキルジアルキレントリアミンポリマー。このようなポリマーは、例えば仏国特許第1,583,363号に記載されている。少なくとも1つの実施形態では、これらの誘導体は、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミンポリマーから選択され得る。
【0066】
(8)2つの第一級アミン基及び少なくとも1つの第二級アミン基を含むポリアルキレンポリアミンと、ジグリコール酸、及び3~8個の炭素原子を含む飽和脂肪族ジカルボン酸から選択されるジカルボン酸との反応によって得られるポリマー。ポリアルキレンポリアミンのジカルボン酸に対するモル比は、0.8:1~1.4:1の範囲であってもよく、それから得られるポリアミノアミドを、エピクロロヒドリンと、エピクロロヒドリンの、ポリアミノアミドの第二級アミン基に対するモル比0.5:1~1.8:1の範囲で反応させる。このようなポリマーは、例えば、米国特許第3,227,615号及び同第2,961,347号に記載されている。
【0067】
(9)アルキルジアリルアミンのシクロポリマー、及びジアルキルジアリル-アンモニウムのシクロポリマー、例えば、鎖の主要構成要素として、以下の式(Ia)及び(Ib):
【0068】
【化3】
【0069】
(式中:
k及びtは、同一であっても異なっていてもよく、0又は1に等しく、和k+tは、1に等しく、
R12は、水素及びメチル基から選択され、
R10及びR11は、同一であっても異なっていてもよく、1~6個の炭素原子を含むアルキル基、アルキル基が例えば1~5個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基、及び低級(C1~C4)アミドアルキル基から選択され、又はR10及びR11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、複素環式基、例えばピペリジニル及びモルホリニルを形成してもよく、
Y'は、アニオン、例えば臭化物イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、ホウ酸イオン、クエン酸イオン、酒石酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸水素イオン、硫酸イオン及びリン酸イオンである)の単位から選択される少なくとも1つの単位を含むホモポリマー及びコポリマー。これらのポリマーは、例えば仏国特許第2080759号及びその追加特許第2190406号に記載されている。
【0070】
一実施形態では、R10及びR11は、同一であっても異なっていてもよく、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。
【0071】
このようなポリマーの例としては、これらに限定されないが、(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、例えばCALGON社により名称「MERQUAT(登録商標)100」で販売されているジメチルジアリルアンモニウムクロリドホモポリマー(及び低質量平均分子量のそのホモログ)、並びに名称「MERQUAT(登録商標)550」で販売されているジアリルジメチルアンモニウムクロリドとアクリルアミドとのコポリマーが挙げられる。
【0072】
(10) 式(II):
【0073】
【化4】
【0074】
(式中:
R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、1~20個の炭素原子を含む脂肪族、脂環式及びアリール脂肪族基、並びに低級ヒドロキシアルキル脂肪族基から選択され、或いは、R13、R14、R15及びR16は、それらが結合している窒素原子と一緒になって又は別々に、窒素以外の第2のヘテロ原子を任意選択で含む複素環を形成してもよく、或いは、R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、ニトリル基、エステル基、アシル基、アミド基、-CO-O-R17-E基及び-CO-NH-R17-E基(式中、R17は、アルキレン基であり、Eは、第四級アンモニウム基である)から選択される少なくとも1つの基で置換されている直鎖状又は分枝状C1~C6アルキル基から選択され、
A1及びB1は、同一であっても異なっていてもよく、2~20個の炭素原子を含むポリメチレン基から選択され、これは、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和であってもよく、これは、芳香族環、酸素、硫黄、スルホキシド基、スルホン基、ジスルフィド基、アミノ基、アルキルアミノ基、ヒドロキシル基、第四級アンモニウム基、ウレイド基、アミド基及びエステル基から選択される少なくとも1つの要素を、主鎖中に、連結又は挿入されて含んでもよく、
X-は、無機酸又は有機酸に由来するアニオンであり、
A1、R13及びR15は、それらが結合している2個の窒素原子と一緒になってピペラジン環を形成してもよく、
A1が、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和アルキレン又はヒドロキシアルキレン基から選択される場合、B1は、以下:
-(CH2)n-CO-E'-OC-(CH2)n-
{式中、E'は、
a)式-O-Z-O-のグリコール残基[式中、Zは、直鎖状又は分枝状の炭化水素系基、及び以下の式の基:
-(CH2-CH2-O)x-CH2-CH2-
-[CH2-CH(CH3)-O]y-CH2-CH(CH3)-
(式中、x及びyは、同一であっても異なっていてもよく、定義された独自の重合度を表す1~4の範囲の整数、及び平均重合度を表す1~4の範囲の数から選択される)
から選択される]、
b)ビス-第二級ジアミン残基、例えばピペラジン誘導体、
c)式-NH-Y-NH-(式中、Yは、直鎖状又は分枝状炭化水素系基及び二価基-CH2-CH2-S-S-CH2-CH2-から選択される)のビス-第一級ジアミン残基、並びに
d)式-NH-CO-NH-のウレイレン基
から選択され得る}
から選択され得る)の少なくとも1つの繰り返し単位を含む第四級ジアンモニウムポリマー。
【0075】
少なくとも1つの実施形態では、X-は、アニオン、例えば塩化物イオン又は臭化物イオンである。
【0076】
このタイプのポリマーは、例えば、仏国特許第2320330号、同第2270846号、同第2316271号、同第2336434号及び同第2413907号、並びに米国特許第2,273,780号、同第2,375,853号、同第2,388,614号、同第2,454,547号、同第3,206,462号、同第2,261,002号、同第2,271,378号、同第3,874,870号、同第4,001,432号、同第3,929,990号、同第3,966,904号、同第4,005,193号、同第4,025,617号、同第4,025,627号、同第4,025,653号、同第4,026,945号、及び同第4,027,020号に記載されている。
【0077】
このようなポリマーの非限定的な例としては、式(III):
【0078】
【化5】
【0079】
(式中、R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、1~4個の炭素原子を含むアルキル基及びヒドロキシアルキル基から選択され、n及びpは、同一であっても異なっていてもよく、2~20の範囲の整数であり、X-は、無機又は有機酸に由来するアニオンである)の少なくとも1つの繰り返し単位を含むものが挙げられる。
【0080】
(11)式(IV):
【0081】
【化6】
【0082】
(式中:
R18、R19、R20及びR21は、同一であっても異なっていてもよく、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、β-ヒドロキシエチル基、β-ヒドロキシプロピル基、-CH2CH2(OCH2CH2)pOH基(式中、pは、0~6の範囲の整数から選択される)から選択され、但し、R18、R19、R20及びR21が同時に水素であることはなく、
r及びsは、同一であっても異なっていてもよく、1~6の範囲の整数から選択され、
qは、0~34の範囲の整数から選択され、
X-は、アニオン、例えばハロゲン化物イオンであり、
Aは、ジハライド及び-CH2-CH2-O-CH2-CH2-の基から選択される)の単位を含むポリ四級アンモニウムポリマー。
【0083】
このような化合物は、例えば、欧州特許出願第0122324号に記載されている。
【0084】
(12)ビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの第四級ポリマー。
【0085】
好適なカチオン性ポリマーの他の例には、カチオン性タンパク質及びカチオン性タンパク質加水分解物、ポリアルキレンイミン、例えばポリエチレンイミン、ビニルピリジン単位及びビニルピリジニウム単位から選択される単位を含むポリマー、ポリアミンとエピクロロヒドリンとの縮合物、第四級ポリウレイレン、並びにキチン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
本発明の一実施形態によれば、(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマーは、第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体、例えばUNION CARBIDE CORPORATION社により名称「JR 400」で販売されている製品、カチオン性シクロポリマー、例えばCALGON社により名称MERQUAT(登録商標)100、MERQUAT(登録商標)550及びMERQUAT(登録商標)Sで販売されているジメチルジアリルアンモニウムクロリドのホモポリマー及びコポリマー、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウム塩で修飾されたグアーガム、並びにビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの第四級ポリマーから選択される。
【0087】
(13)ポリアミン
(a)カチオン性ポリマーとして、複数のアミノ基を有する、ホモポリマー又はコポリマーでもよい(コ)ポリアミンを使用することも可能である。アミノ基は、第一級、第二級、第三級又は第四級アミノ基であってもよい。アミノ基は、(コ)ポリアミンのポリマー主鎖、又は存在する場合はペンダント基中に存在してもよい。
【0088】
(コ)ポリアミンの例として、キトサン、(コ)ポリアリルアミン、(コ)ポリビニルアミン、(コ)ポリアニリン、(コ)ポリビニルイミダゾール、(コ)ポリジメチルアミノエチレンメタクリレート、(コ)ポリビニルピリジン、例えば(コ)ポリ-1-メチル-2-ビニルピリジン、(コ)ポリイミン、例えば(コ)ポリエチレンイミン、(コ)ポリピリジン、例えば(コ)ポリ(第四級ピリジン)、(コ)ポリビグアニド、例えば(コ)ポリアミノプロピルビグアニド、(コ)ポリリジン、(コ)ポリオルニチン、(コ)ポリアルギニン、(コ)ポリヒスチジン、アミノデキストラン、アミノセルロース、アミノ(コ)ポリビニルアセタール、及びこれらの塩を挙げることができる。
【0089】
(コ)ポリアミンとしては、(コ)ポリリジンを使用することが好ましい。ポリリジンは周知である。ポリリジンは、細菌発酵によって生成され得るL-リジンの天然ホモポリマーであることができる。例えば、ポリリジンは、食品中の天然保存料として典型的に使用されるε-ポリ-L-リジンであることができる。ポリリジンは、極性溶媒、例えば水、プロピレングリコール及びグリセロールに可溶性の高分子電解質である。ポリリジンは、ポリD-リジン及びポリL-リジン等の多様な形態で市販されている。ポリリジンは、塩及び/又は溶液の形態にあることができる。
【0090】
アルギニン/リジンポリペプチドも使用することができる。
【0091】
(14)カチオン性ポリアミノ酸
(a)カチオン性ポリマーとして、複数のアミノ基及びカルボキシル基を有する、カチオン性ホモポリマー又はコポリマーであり得るカチオン性ポリアミノ酸を使用することもまた可能であり得る。アミノ基は、第一級、第二級、第三級又は第四級アミノ基であってもよい。アミノ基は、カチオン性ポリアミノ酸のポリマー主鎖、又は存在する場合はペンダント基中に存在してもよい。カルボキシル基は、存在する場合はカチオン性ポリアミノ酸のペンダント基中に存在してもよい。
【0092】
カチオン性ポリアミノ酸の例としては、カチオン化コラーゲン、カチオン化ゼラチン、ステアルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コンキオリンタンパク、ステアルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解ダイズタンパク、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク等を挙げることができる。
【0093】
(15)カチオン性デンプン
(a)カチオン性ポリマーとして、カチオン性デンプンも挙げることができる。
【0094】
カチオン性デンプンの例として、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウム塩(例えば塩化物)で修飾されたデンプン、例えば、Ondeo社から名称SENSOMER Cl-50、又はIngredion社から名称Pencare(商標)DP 1015で販売されている、INCI名によりデンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドとして公知の製品を挙げることができる。
【0095】
(16)カチオン性ガム
(a)カチオン性ポリマーとして、カチオン性ガムも挙げることができる。
【0096】
ガムは、例えば、カッシアガム、カラヤガム、コンニャクガム、トラガカントガム、タラガム、アカシアガム及びアラビアガムからなる群から選択され得る。
【0097】
カチオン性ガムの例としては、カチオン性ポリガラクトマンナン誘導体、例えばグアーガム誘導体及びカッシアガム誘導体、例えばCTFA:グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、及びカッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドが挙げられる。グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドは、Rhodia Inc.社からJaguar(商標)の商標名シリーズ、及びAshland Inc.社からN-Hanceの商標名シリーズで市販されている。カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドは、Lubrizol Advanced Materials, Inc.社からSensomer(商標)CT-250及びSensomer(商標)CT-400又はAshland Inc.社からClearHance(商標)の商標名で市販されている。
【0098】
以下の説明は、(a)カチオン性ポリマーの好ましい実施形態に関する。
【0099】
(a)カチオン性ポリマーは、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えばキトサン及び(コ)ポリリジン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばカチオン化コラーゲン及びアルギニン/リジンポリペプチド、カチオン性セルロースポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0100】
(a)カチオン性ポリマーが、ポリリジン、例えばポリ-α-リジン及びポリ-ε-リジン、アルギニン/リジンポリペプチド、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、キトサン、例えばキトサン、並びにこれらの混合物からなる群から選択されることが、より好ましい場合がある。
【0101】
(a)カチオン性ポリマーが、ポリリジン、例えばポリ-α-リジン及びポリ-ε-リジン、アルギニン/リジンポリペプチド、キトサン、例えばキトサン、並びにこれらの混合物から選択されることが、更により好ましい場合がある。
【0102】
本発明による組成物中の、(a)カチオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.06~0.25である。
【0103】
本発明による組成物中の、(a)カチオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.06~0.24、好ましくは0.07~0.22、より好ましくは0.08~0.20であってもよい。
【0104】
(アニオン性ポリマー)
本発明による組成物は:
(b-1)ヒアルロン酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種の第1のアニオン性ポリマー、並びに
(b-2)(b-1)第1のアニオン性ポリマーとは異なる少なくとも1種の第2のアニオン性ポリマー
を含む。
【0105】
2種以上の異なるタイプのアニオン性ポリマーを、(b-1)第1のアニオン性ポリマー及び(b-2)第2のアニオン性ポリマーのそれぞれに組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプのアニオン性ポリマー又は異なるタイプのアニオン性ポリマーの組合せを、(b-1)第1のアニオン性ポリマー及び(b-2)第2のアニオン性ポリマーのそれぞれに使用することができる。
【0106】
(b-1)第1のアニオン性ポリマー及び(b-2)第2のアニオン性ポリマーは、負の電荷密度を有する。(b-1)第1のアニオン性ポリマー及び(b-2)第2のアニオン性ポリマーのそれぞれの電荷密度は、0.1meq/g~20meq/g、好ましくは1~15meq/g、より好ましくは4~10meq/gでもよい。
【0107】
第1のアニオン性ポリマー:
本発明によれば、(b-1)第1のアニオン性ポリマーは、ヒアルロン酸及びその誘導体から選択される。
【0108】
ヒアルロン酸は、以下の化学式によって表すことができる。
【0109】
【化7】
【0110】
本発明の文脈では、用語「ヒアルロン酸」は、具体的には、次式のヒアルロン酸の基本単位を包含する。
【0111】
【化8】
【0112】
これは、二糖ダイマー、すなわちD-グルクロン酸及びN-アセチルグルコサミンを含むヒアルロン酸の最小の部分である。
【0113】
用語「ヒアルロン酸及びその誘導体」はまた、本発明の文脈では、380から13,000,000ダルトンの間の範囲であり得る分子量(MW)を有する、交互β(1,4)及びβ(1,3)グルコシド結合を介して鎖内で一緒に結合される上記のポリマー単位を含む直鎖状ポリマーも含む。説明中に別段の定義がない限り、「分子量」は質量平均分子量を意味する。この分子量は、主に、ヒアルロン酸が得られる供給源に、及び/又は調製方法に依存する。
【0114】
用語「ヒアルロン酸及びその誘導体」はまた、本発明の文脈では、ヒアルロン酸塩も含む。塩として、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0115】
自然状態では、ヒアルロン酸は、真皮及び上皮組織等の脊椎動物の臓器の結合組織の基体中の細胞周囲ゲル中に存在し、具体的には、表皮中、関節の滑液中、硝子体液中、ヒト臍帯中、及び鶏冠突起中に存在する。
【0116】
そのため、用語「ヒアルロン酸及びその誘導体」は、特に上記の分子量範囲内の分子量を有するヒアルロン酸の全画分又はサブ単位を含む。
【0117】
本発明の文脈では、炎症活性を有していないヒアルロン酸画分が、好ましくは使用される。
【0118】
多様なヒアルロン酸画分の例示を介して、ヒアルロン酸の列挙されている生物活性をその分子量に応じて概説している文献「Hyaluronan fragments:an information-rich system」、R. Sternら、European Journal of Cell Biology 58 (2006)、699~715頁を参照することができる。
【0119】
(b-1)第1のアニオン性ポリマー、すなわちヒアルロン酸又はその誘導体の分子量は、2,000kDa以下、好ましくは1,000kDa以下、より好ましくは100kDa以下であってもよい。
【0120】
(b-1)第1のアニオン性ポリマー、すなわちヒアルロン酸又はその誘導体の分子量は、0.4kDa以上、好ましくは1kDa以上、より好ましくは10kDa以上であってもよい。
【0121】
(b-1)第1のアニオン性ポリマー、すなわちヒアルロン酸又はその誘導体の分子量は、0.4~2,000kDa、好ましくは1~1,000kDa、より好ましくは10~100kDaであってもよい。
【0122】
最後に、用語「ヒアルロン酸及びその誘導体」はまた、ヒアルロン酸エステル、特に酸官能基のカルボン酸基の全て又は一部がオキシエチレン化アルキル又はアルコールでエステル化されているものであって、1~20個の炭素原子を含有する、特にヒアルロン酸のD-グルクロン酸のレベルの置換度が0.5~50%の範囲であるものも含む。
【0123】
特に、ヒアルロン酸のメチル、エチル、n-プロピル、n-ペンチル、ベンジル及びドデシルエステルを挙げることができる。そのようなエステルは、特に、D. Campocciaら、「Semisynthetic resorbable materials from hyaluronan esterification」、Biomaterials 19 (1998) 2101~2127頁に記載されている。
【0124】
ヒアルロン酸誘導体は、例えば、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩、例えばアセチル化ヒアルロン酸ナトリウムでもよい。
【0125】
上に示した分子量はまた、ヒアルロン酸エステルにも有効である。
【0126】
本発明による組成物中の、(b-1)第1のアニオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.01以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.03以上であってもよい。
【0127】
本発明による組成物中の、(b-1)第1のアニオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.8以下、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下であってもよい。
【0128】
組成物中の、(b-1)第1のアニオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.01~0.8、好ましくは0.02~0.7、より好ましくは0.03~0.6であってもよい。
【0129】
第2のアニオン性ポリマー:
(b-2)第2のアニオン性ポリマーは、(b-1)第1のアニオン性ポリマーとは異なる。
【0130】
(b-2)第2のアニオン性ポリマーの分子量は、1,000以上、好ましくは10,000以上、より好ましくは50,000以上、更により好ましくは100,000以上であってもよい。説明中に別段の定義がない限り、「分子量」は質量平均分子量を意味する。
【0131】
(b-2)第2のアニオン性ポリマーは、硫酸基、スルフェート基、スルホン酸基、スルホネート基、リン酸基、ホスフェート基、ホスホン酸基、ホスホネート基、カルボン酸基及びカルボキシレート基からなる群から選択される、少なくとも1つの負電荷を有することができる及び/又は負電荷を有する部分を有してもよい。
【0132】
(b-2)第2のアニオン性ポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーでもあってもよい。用語「コポリマー」は、2種類のモノマーから得られるコポリマーと、2種類超のモノマーから得られるもの、例えば3種類のモノマーから得られるターポリマーとの両方を意味すると理解される。
【0133】
(b-2)第2のアニオン性ポリマーは、天然及び合成のアニオン性ポリマーから選択することができる。
【0134】
(b-2)第2のアニオン性ポリマーは、少なくとも1つの疎水性鎖を含んでもよい。
【0135】
少なくとも1つの疎水性鎖を含んでもよい(b-2)第2のアニオン性ポリマーは、α,β-エチレン性不飽和を含むカルボン酸(モノマーa')及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(モノマーa'')から選択されるモノマー(a)を、(a)以外のエチレン性不飽和を含む非表面活性モノマー(b)、及び/又はα,β-モノエチレン性不飽和を含むアクリルモノマー若しくはモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートモノマーと、一価の非イオン性両親媒性成分又は第一級若しくは第二級脂肪アミンとの反応から得られるエチレン性不飽和を含むモノマー(c)と、共重合させることによって得ることができる。
【0136】
そのため、少なくとも1つの疎水性鎖を有するアニオン性ポリマーは、2つの合成経路のいずれかによって得ることができる:
- モノマー(a')と(c)、若しくは(a')と(b)と(c)、若しくは(a'')と(c)、若しくは(a'')と(b)と(c)との共重合、
- 又はモノマー(a')、若しくはモノマー(a')と(b)、若しくは(a'')と(b)とから形成されたコポリマーを、一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪アミンで修飾(具体的にはエステル化若しくはアミド化)すること。
【0137】
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸コポリマーとしては、特に、論文「Micelle formation of random copolymers of sodium 2-(acrylamido)-2-methylpropanesulfonate and nonionic surfactant macromonomer in water as studied by fluorescence and dynamic light scattering - Macromolecules、2000年、第33巻、第10号-3694~3704頁」並びに出願EP-A-0750899及びEP-A-1069172に開示されているものを挙げることができる。
【0138】
モノマー(a')を構成する、α,β-モノエチレン性不飽和を含むカルボン酸は、多数の酸から、特に、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸及びマレイン酸から選択することができる。これは、好ましくは、アクリル酸又はメタクリル酸である。
【0139】
コポリマーは、界面活性剤特性を有さないモノエチレン性不飽和を含むモノマー(b)を含んでもよい。好ましいモノマーは、単独重合する場合に水不溶性ポリマーをもたらすものである。これらは、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸アルキル(C1~C4)、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル又は対応するメタクリレートから選択することができる。より特に好ましいモノマーは、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルである。使用することができる他のモノマーは、例えば、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル及び塩化ビニリデンである。非反応性モノマーが好ましく、これらのモノマーは、単一のエチレン性基が、重合条件下で反応性である唯一の基であるものである。しかしながら、熱の作用下で反応する基を含むモノマー、例えばアクリル酸ヒドロキシエチルを任意選択で使用することができる。
【0140】
モノマー(c)は、α,β-モノエチレン性不飽和を含むアクリルモノマー、例えば(a)、又はモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートモノマーと、一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪アミンとの反応によって得られる。
【0141】
非イオン性モノマー(c)を生成するのに使用される一価の非イオン性両親媒性化合物又は第一級若しくは第二級脂肪アミンは、周知である。一価の非イオン性両親媒性化合物は、一般に、分子の親水性部分を形成するアルキレンオキシドを含むアルコキシル化疎水性化合物である。疎水性化合物は、一般に、脂肪族アルコール又はアルキルフェノールで構成され、その化合物中、少なくとも6個の炭素原子を含む炭素性鎖が、両親媒性化合物の疎水性部分を構成する。
【0142】
好ましい一価の非イオン性両親媒性化合物は、以下の式(V):
R-(OCH2CHR')m-(OCH2CH2)n-OH (V)
(式中、Rは、6~30個の炭素原子を含むアルキル又はアルキレン基、及び8~30個の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキルアリール基から選択され、R'は、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、nは、およそ1~150の範囲の平均数であり、mは、およそ0~50の範囲の平均数であり、但し、nは、少なくともmと同じ大きさである)を有する化合物である。
【0143】
好ましくは、式(V)の化合物中、R基は、12から26個の炭素原子を含むアルキル基及びアルキル基がC8~C13であるアルキルフェニル基から選択され、R'基は、メチル基であり、m=0であり、n=1から25である。
【0144】
好ましい第一級及び第二級脂肪アミンは、6~30個の炭素原子を含む1つ又は2つのアルキル鎖から構成される。
【0145】
非イオン性ウレタンモノマー(c)を形成するのに使用されるモノマーは、きわめて多様な化合物から選択することができる。共重合性不飽和、例えばアクリル性、メタクリル性又はアリル性不飽和を含む、任意の化合物を使用してもよい。モノマー(c)は、特に、モノエチレン性不飽和を含むイソシアネート、例えば特にα,α-ジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネートから得ることができる。
【0146】
モノマー(c)は、特に、オキシエチレン化(1から50EO)C6~C30脂肪アルコールのアクリレート、メタクリレート又はイタコネート、例えばメタクリル酸ステアレス-20、オキシエチレン化(25EO)ベヘニルメタクリレート、オキシエチレン化(20EO)モノセチルイタコネート、オキシエチレン化(20EO)モノステアリルイタコネート又はポリオキシエチレン化(25EO)C12~C24アルコールで修飾されたアクリレートから、及びオキシエチレン化(1から50EO)C6~C30脂肪アルコールのジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネート、例えば特にオキシエチレン化ベヘニルアルコールのジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネートから選択することができる。
【0147】
本発明の特定の実施形態によれば、(b-2)第2のアニオン性ポリマーは、(a)α,β-エチレン性不飽和を含むカルボン酸、(b)(a)以外のエチレン性不飽和を含む非表面活性モノマー、及び(c)一価の非イオン性両親媒性化合物とモノエチレン性不飽和を含むイソシアネートとの反応生成物である非イオン性ウレタンモノマーから得られるアクリルターポリマーから選択される。
【0148】
少なくとも1つの疎水性鎖を含むアニオン性ポリマーとしては、特に、アクリル酸/アクリル酸エチル/アクリル酸アルキルターポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Acusol 823で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリレート/メタクリル酸ステアレス-20コポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Aculyn 22で販売されている製品;(メタ)アクリル酸/アクリル酸エチル/オキシエチレン化(25EO)ベヘニルメタクリレートターポリマー、例えばRohm & Haas社によって名称Aculyn 28で販売されている水性エマルションとしての製品;アクリル酸/オキシエチレン化(20EO)モノセチルイタコネートコポリマー、例えばNational Starch社によって名称Structure 3001で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリル酸/オキシエチレン化(20EO)モノステアリルイタコネートコポリマー、例えばNational Starch社によって名称Structure 2001で販売されている30%水性分散体としての製品;アクリレート/ポリオキシエチレン化(25EO)C12~C24アルコールで修飾されたアクリレートのコポリマー、例えば3V SA社によって名称Synthalen W2000で販売されている30~32%コポリマーラテックス;又はメタクリル酸/アクリル酸メチル/エトキシル化ベヘニルアルコールのジメチル-メタ-イソプロペニルベンジルイソシアネートのターポリマー、例えば文献EP-A-0173109に開示された40個のエチレンオキシド基を含む24%水性分散体としての製品を挙げることができる。
【0149】
(b-2)第2のアニオン性ポリマーはまた、ポリエステル-5、例えば、以下の化学式を有する、EASTMAN CHEMICAL社により名称Eastman AQ(商標)55S Polymerで販売されている製品であってもよい。
【0150】
【化9】
【0151】
A:ジカルボン酸部分
G:グリコール部分
SO3 -Na+: ナトリウムスルホ基
OH:ヒドロキシル基
【0152】
(b-2)第2のアニオン性ポリマーが、多糖、例えば、カラギーナン(例えば、ι-カラギーナン及びΛ-カラギーナン)、ペクチン、アルギン酸(アルギン)、及びセルロースポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース)、アニオン性(コ)ポリアミノ酸、例えば(コ)ポリグルタミン酸、(コ)ポリ(メタ)アクリル酸、(コ)ポリアミン酸、(コ)ポリスチレンスルホネート、(コ)ポリ(ビニルサルフェート)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、(コ)ポリマレイン酸、(コ)ポリフマル酸、マレイン酸(コ)ポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0153】
マレイン酸コポリマーは、1つ又は複数のマレイン酸コモノマー、並びに酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、2~20個の炭素原子を含むオレフィン、及びスチレンから選択される1つ又は複数のコモノマーを含んでもよい。
【0154】
したがって、「マレイン酸コポリマー」は、1つ又は複数のマレイン酸コモノマーと、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、2~20個の炭素原子を含むオレフィン、例えばオクタデセン、エチレン、イソブチレン、ジイソブチレン又はイソオクチレン、及びスチレンから選択される1つ又は複数のコモノマーとの共重合によって得られる任意のポリマーを意味すると理解され、マレイン酸コモノマーは、任意選択で部分的に又は完全に加水分解されている。好ましくは、親水性ポリマー、すなわち水溶解度が2g/l以上であるポリマーが使用される。
【0155】
本発明の有利な態様では、マレイン酸コポリマーは、マレイン酸単位のモル分率が、0.1から1の間、好ましくは0.4から0.9の間であってもよい。
【0156】
マレイン酸コポリマーの質量平均モル質量は、1,000から500,000の間、好ましくは1,000から50,000の間であってもよい。
【0157】
マレイン酸コポリマーが、スチレン/マレイン酸コポリマー、より好ましくはスチレン/マレイン酸コポリマーナトリウムであることが好ましい。
【0158】
好ましくは、50/50の比のスチレンとマレイン酸とのコポリマーが使用される。
【0159】
例えば、Cray Valley社により参照名SMA1000H(登録商標)で販売されている、水中30%でアンモニウム塩の形態のスチレン/マレイン酸(50/50)コポリマー、又はCray Valley社により参照名SMA1000HNa(登録商標)で販売されている、水中40%でナトリウム塩の形態のスチレン/マレイン酸(50/50)コポリマーを使用することができる。
【0160】
(b-2)第2のアニオン性ポリマーは、カラギーナン、例えばι-カラギーナン及びΛ-カラギーナン、アルギン、コンドロイチン硫酸、ペクチン、並びにそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0161】
(b-2)第2のアニオン性ポリマーは、カラギーナン、ペクチン及びこれらの混合物からなる群から選択されることが、より好ましい場合がある。
【0162】
本発明による組成物中の、(b-2)第2のアニオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.26以上、好ましくは0.28以上、より好ましくは0.30以上である。
【0163】
本発明による組成物中の、(b-2)第2のアニオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.9以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下であってもよい。
【0164】
本発明による組成物中の、(b-2)第2のアニオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.26~0.9、好ましくは0.28~0.8、より好ましくは0.30~0.7であってもよい。
【0165】
(非ポリマー酸)
本発明による組成物は、(c)少なくとも1種の非ポリマー酸又はその塩を含む。2種以上の異なるタイプの非ポリマー酸又はその塩を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの非ポリマー酸若しくはその塩、又は異なるタイプの非ポリマー酸若しくはその塩の組合せを使用してもよい。
【0166】
(c)非ポリマー酸又はその塩は、一価の非ポリマー酸及びその塩、多価(例えば、二価又は三価)の非ポリマー酸又はその塩、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0167】
一価のポリマー酸は、1つのみのpKa値を有し得る。他方で、多価の非ポリマー酸は、2つ以上のpKa値を有してもよい。pKa値(酸解離定数)は、当業者に周知であり、一定の温度、例えば25℃で決定されるべきである。
【0168】
(c)非ポリマー酸又はその塩は、ポリイオンコンプレックスであってもよいナノ粒子中に含まれ得る。多価の非ポリマー酸又はその塩は、(a)カチオン性ポリマー、又は(a)カチオン性ポリマー並びに(b-1)第1のアニオン性ポリマー及び/又は(b-2)第2のアニオン性ポリマーの架橋剤として機能することができる。
【0169】
用語「非ポリマー」は、本明細書では、酸が、2種以上のモノマーを重合させることによって得られるものではないことを意味する。したがって、非ポリマー酸は、ポリカルボン酸等の2種以上のモノマーを重合することによって得られる酸には相当しない。
【0170】
(c)非ポリマー酸又はその塩の分子量は、1000以下、好ましくは800以下、より好ましくは700以下であることが好ましい。
【0171】
用語「塩」は、本明細書では、非ポリマー酸に、好適な塩基を添加することによって形成される塩を意味し、これは、当業者に公知の方法による非ポリマー酸と塩基との反応から得ることができる。塩として、金属塩、例えば、Na及びK等のアルカリ金属との塩並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0172】
(c)非ポリマー酸又はその塩は、有機若しくは無機酸又はその塩、好ましくは親水性又は水溶性の有機酸又はその塩であってもよい。
【0173】
一価の非ポリマー酸は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、又はフェノール性ヒドロキシル基からなる群から選択され得る単一の酸基を有する。
【0174】
多価の非ポリマー酸は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、フェノール性ヒドロキシル基、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る少なくとも2つの酸基を有する。
【0175】
一価の非ポリマー酸は、好ましくは、一価のカルボン酸から選択することができる。
【0176】
一実施形態では、一価の非ポリマー酸は、ヒドロキシル酸、好ましくはアルファ-ヒドロキシ酸から選択され得る。アルファ-ヒドロキシ酸としては、例えば、乳酸及びグリコール酸を挙げることができる。
【0177】
多価の非ポリマー酸又はその塩は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、アコニット酸、オキサロ酢酸、酒石酸、及びそれらの塩;アスパラギン酸、グルタミン酸、及びそれらの塩;テレフタリリデンジカンファースルホン酸、又はその塩(Mexoryl SX)、ベンゾフェノン-9;フィチン酸及びその塩;赤色2号(アマランス)、赤色102号(ニューコクシン)、黄色5号(タルトラジン)、黄色6号(サンセットイエローFCF)、緑色3号(ファストグリーンFCF)、青色1号(ブリリアントブルーFCF)、青色2号(インジゴカルミン)、赤色201号(リソールルビンB)、赤色202号(リソールルビンBCA)、赤色204号(レーキレッドCBA)、赤色206号(リソールレッドCA)、赤色207号(リソールレッドBA)、赤色208号(リソールレッドSR)、赤色219号(ブリリアントレーキレッドR)、赤色220号(ディープマルーン)、赤色227号(ファストアシッドマジェンタ)、黄色203号(キノリンイエローWS)、緑色201号(アリザニンシアニングリーンF)、緑色204号(ピラニンコンク)、緑色205号(ライトグリーンSF黄)、青色203号(パテントブルーCA)、青色205号(アルファズリンFG)、赤色401号(ビオラミンR)、赤色405号(パーマネントレッドF5R)、赤色502号(ポンソー3R)、赤色503号(ポンソーR)、赤色504号(ポンソーSX)、緑色401号(ナフトールグリーンB)、緑色402号(ギネアグリーンB)及び黒色401号(ナフトールブルーブラック);葉酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、及びそれらの塩;シスチン及びその塩;EDTA及びその塩;グリチルリチン及びその塩;並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0178】
多価の非ポリマー酸又はその塩が、テレフタリリデンジカンファースルホン酸及びその塩(Mexoryl SX)、黄色6号(サンセットイエローFCF)、アスコルビン酸、フィチン酸及びそれらの塩、並びにこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0179】
(c)非ポリマー酸又はその塩は、フィチン酸、クエン酸、乳酸及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0180】
本発明による組成物中の、(c)非ポリマー酸又はその塩の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.03以上、好ましくは0.035以上、より好ましくは0.04以上である。
【0181】
本発明による組成物中の、(c)非ポリマー酸又はその塩の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.6以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下であってもよい。
【0182】
本発明による組成物中の、(c)非ポリマー酸又はその塩の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.03~0.6、好ましくは0.035~0.5、より好ましくは0.04~0.4であってもよい。
【0183】
[金属塩]
本発明による組成物は、(d)少なくとも1種の金属塩を含んでもよい。2種以上の金属塩を組み合わせて使用してもよい。
【0184】
(d)少なくとも1種の金属塩は、任意選択の成分である。したがって、ナノ粒子は、(d)金属塩を含まなくてもよい。
【0185】
用語「金属塩」は、本明細書では、水性媒体中で陽イオンを生成する美容上許容される水溶性の塩を意味する。本発明の組成物中に使用される金属塩は、好ましくは、多価金属塩、例えば二価又は三価金属塩から選択され、より好ましくは、カルシウム、マグネシウム、及び亜鉛塩等の二価金属塩から選択される。塩化カルシウム、ピロリドンカルボン酸カルシウム(PCA)、酢酸カルシウム、アスパラギン酸カルシウム、乳酸カルシウム等のカルシウム塩が好ましい。とりわけ、塩化カルシウム及びピロリドンカルボン酸カルシウムが最も好ましい。
【0186】
(d)金属塩は、多価金属塩、好ましくは二価金属塩、より好ましくはカルシウム塩、例えば塩化カルシウム及びピロリドンカルボン酸カルシウム、並びにマグネシウム塩、例えば塩化マグネシウムから選択されてもよい。
【0187】
本発明による組成物中の、(d)金属塩の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.001以上、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上であってもよい。
【0188】
本発明による組成物中の、(d)金属塩の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.30以下、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.20以下である。
【0189】
本発明による組成物中の、(d)金属塩の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.001~0.30、好ましくは0.005~0.25、より好ましくは0.01~0.20であってもよい。
【0190】
[脂肪酸]
本発明による組成物は、(e)少なくとも1種の脂肪酸を含む。2種以上の脂肪酸が使用される場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0191】
本明細書において用語「脂肪酸」は、脂肪族炭素の長鎖を有するカルボン酸を意味する。
【0192】
(e)脂肪酸は、少なくとも4個の炭素原子、好ましくは少なくとも6個の炭素原子、より好ましくは少なくとも8個の炭素原子を有する。(e)脂肪酸は、最大24個の炭素原子、好ましくは最大22個の炭素原子、より好ましくは最大20個の炭素原子を含んでもよい。(e)脂肪酸は、C4~C24脂肪酸、より好ましくはC6~C22脂肪酸、更により好ましくはC8~C20脂肪酸から選択されることが好ましい。
【0193】
(e)脂肪酸は、直鎖状でも分枝状でもよい飽和脂肪酸から選択することができる。
【0194】
飽和脂肪酸としては、例えば、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、パルミチン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、イソステアリン酸(C18)、ノナデカン酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、及びリグノセリン酸(C24)を挙げることができる。
【0195】
(e)脂肪酸は、直鎖状でも分枝状でもよい不飽和脂肪酸から選択することができる。
【0196】
不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸として、一価不飽和の直鎖状若しくは分枝状脂肪酸又は多価不飽和の直鎖状若しくは分枝状脂肪酸を使用してもよい。不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸の不飽和部分として、炭素間二重結合又は炭素間三重結合を挙げることができる。
【0197】
不飽和脂肪酸としては、例えば、ミリストレイン酸(C14)、パルミトレイン酸(C16)、オレイン酸(C18)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、エライジン酸(C18)、アラキドン酸(C20)、エイコセン酸(C20)、エルカ酸(C22)、及びネルボン酸(C24)を挙げることができる。
【0198】
好ましい実施形態では、(e)脂肪酸は、飽和又は不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から選択され得る。したがって、(e)脂肪酸は、C4~C22、好ましくはC6~C20、より好ましくはC8~C18飽和及び不飽和の直鎖状又は分枝状脂肪酸から選択され得る。
【0199】
(e)脂肪酸は、カプリル酸、カプリン酸、オレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0200】
(e)脂肪酸は、その遊離酸の形態又はその塩の形態であってもよい。脂肪酸の塩として、無機塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、並びに有機塩、例えばアンモニウム塩(第4級アンモニウム塩等)及びアミン塩(トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等)を挙げることができる。単一のタイプの脂肪酸塩又は異なるタイプの脂肪酸塩の組合せを使用してもよい。更に、遊離酸の形態の1種又は複数の脂肪酸と、塩の形態の1種又は複数の脂肪酸との組合せを使用することができ、1種又は複数のタイプの塩を使用することもできる。
【0201】
本発明による組成物中の、(e)脂肪酸の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.001以上、好ましくは0.002以上、より好ましくは0.003以上である。
【0202】
本発明による組成物中の、(e)脂肪酸の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.4以下、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下であってもよい。
【0203】
本発明による組成物中の、(e)脂肪酸の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比は、0.001~0.4、好ましくは0.002~0.3、より好ましくは0.003~0.2の範囲であってもよい。
【0204】
[水]
本発明による組成物は、(f)水を含む。
【0205】
本発明による組成物中の(f)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であってもよい。
【0206】
本発明による組成物中の(f)水の量は、組成物の総質量に対して、95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下であってもよい。
【0207】
本発明による組成物中の(f)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~95質量%、好ましくは60質量%~90質量%、より好ましくは70質量%~85質量%であってもよい。
【0208】
[pH]
本発明による組成物のpHは、3~9、好ましくは3.3~8.5、より好ましくは3.5~8であってもよい。
【0209】
3~9のpHで、成分(a)~(e)、特に成分(a)、(b-1)、(b-2)及び(c)によって形成されるポリイオンコンプレックスは非常に安定性であることができる。
【0210】
本発明による組成物のpHは、(c)非ポリマー酸又はその塩以外に、少なくとも1種のアルカリ剤及び/又は少なくとも1種の酸を添加することによって調整することができる。本発明による組成物のpHはまた、少なくとも1種の緩衝剤を添加することによって調整することもできる。
【0211】
(アルカリ剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種のアルカリ剤を含んでもよい。2種以上のアルカリ剤を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプのアルカリ剤、又は異なるタイプのアルカリ剤の組合せを使用してもよい。
【0212】
アルカリ剤は、無機アルカリ剤であってもよい。無機アルカリ剤は、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属リン酸塩及びリン酸一水素塩、例えばリン酸ナトリウム又はリン酸一水素ナトリウムからなる群から選択されることが好ましい。
【0213】
無機アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物の例としては、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを挙げることができる。無機アルカリ剤として、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0214】
アルカリ剤は、有機アルカリ剤であってもよい。有機アルカリ剤は、モノアミン及びその誘導体、ジアミン及びその誘導体、ポリアミン及びその誘導体、塩基性アミノ酸及びその誘導体、塩基性アミノ酸のオリゴマー及びその誘導体、塩基性アミノ酸のポリマー及びその誘導体、尿素及びその誘導体、並びにグアニジン及びその誘導体からなる群から選択されることが好ましい。
【0215】
有機アルカリ剤の例として、アルカノールアミン、例えばモノ-、ジ-及びトリ-エタノールアミン、並びにイソプロパノールアミン;尿素、グアニジン及びそれらの誘導体;塩基性アミノ酸、例えばリジン、オルニチン又はアルギニン;並びにジアミン、例えば以下の構造:
【0216】
【化10】
【0217】
(式中、Rは、ヒドロキシル又はC1~C4アルキル基で任意選択により置換されているプロピレン等のアルキレンを示し、R1、R2、R3及びR4は、独立に、水素原子、アルキル基又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を示す)で記載され、1,3-プロパンジアミン及びその誘導体によって例示することができるものを挙げることができる。アルギニン、尿素、及びモノエタノールアミンが好ましい。
【0218】
アルカリ剤は、それらの溶解度に応じて、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.02質量%~10質量%、より好ましくは0.03質量%~5質量%の総量で使用することができる。
【0219】
(酸)
本発明による組成物は、少なくとも1種の酸を含んでもよい。2種以上の酸を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの酸、又は異なるタイプの酸の組合せを使用してもよい。
【0220】
酸としては、化粧料中で一般に使用される任意の無機又は有機酸、好ましくは無機酸を挙げることができる。一価の酸及び/又は多価酸を使用してもよい。硫酸、リン酸及び塩酸(HCl)等の一価の酸を使用することができる。HClが好ましい。
【0221】
酸は、それらの溶解度に応じて、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.02質量%~10質量%、より好ましくは0.03質量%~5質量%の総量で使用することができる。
【0222】
(緩衝剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種の緩衝剤を含んでもよい。2種以上の緩衝剤を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの緩衝剤、又は異なるタイプの緩衝剤の組合せを使用してもよい。
【0223】
緩衝剤としては、酢酸緩衝液(例えば、酢酸+酢酸ナトリウム)、リン酸緩衝液(例えば、リン酸二水素ナトリウム+リン酸水素二ナトリウム)、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸+クエン酸ナトリウム)、ホウ酸緩衝液(例えば、ホウ酸+ホウ酸ナトリウム)、酒石酸緩衝液(例えば、酒石酸+酒石酸ナトリウム二水和物)、トリス緩衝液(例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、及びHepes緩衝液(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を挙げることができる。
【0224】
[任意選択の成分]
本発明による組成物は、前述の必須成分に加えて、具体的には、油、界面活性剤又は乳化剤、親水性又は親油性増粘剤、有機の揮発性又は不揮発性溶媒、例えばポリオール、特にグリセリン及びグリセロール、シリコーン及びシリコーン誘導体、動物又は植物に由来する天然抽出物、ワックス、フィラー、UV遮蔽剤等から選択することができる、化粧品に典型的に用いられる少なくとも1種の任意選択の成分を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。
【0225】
本発明による組成物は、上記の任意成分を、組成物の総質量に対して、0.01質量%~50質量%、好ましくは0.05質量%~30質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の量で含んでもよい。
【0226】
しかし、本発明による組成物は、非常に限られた量の界面活性剤又は乳化剤を含むことが好ましい。本発明による組成物中の界面活性剤又は乳化剤の量は、組成物の総質量に対して1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下であってもよい。本発明による組成物が界面活性剤又は乳化剤を含まないことが特に好ましい。
【0227】
[組成物]
本発明による組成物は、上記で説明した必須成分、及び必要な場合、上記で説明した任意成分を混合することによって、調製することができる。
【0228】
上記の必須成分及び任意選択の成分を混合する方法及び手段は、限定されない。任意の従来の方法及び手段を使用して、上記の必須成分及び任意選択の成分を混合し、本発明による組成物を調製することができる。
【0229】
本発明による組成物は、化粧用組成物として使用されることが意図されてもよい。したがって、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質への適用が意図されてもよい。ケラチン物質は、本明細書では、ケラチンを主な構成要素として含有する物質を意味し、その例には、皮膚、頭皮、爪、唇、毛髪等が挙げられる。したがって、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質、特に皮膚のための美容方法に使用されることが好ましい。
【0230】
本発明による組成物は、透明であっても半透明であってもよいが、好ましくは透明であり得る。
【0231】
透明度は、濁度を測定することによって測定され得る(例えば、濁度は、丸型セル(直径25mm及び高さ60mm)、及び可視光(400から800nmの間、好ましくは400~500nm)を発することができるタングステンフィラメントランプを有する2100Q(Hach Company社によって市販されている)を用いて測定することができる)。測定は、無希釈組成物において実施することができる。ブランクは、蒸留水を用いて決定され得る。
【0232】
本発明による組成物は、300NTU以下、好ましくは200NTU以下、より好ましくは100NTU以下、更により好ましくは50NTU以下の濁度を有し得る。
【0233】
[美容方法及び使用]
本発明はまた、
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、方法にも関する。
【0234】
美容方法は、本明細書では、皮膚等のケラチン物質の表面をケア及び/又はメイクアップするための非治療的美容方法を意味する。
【0235】
本発明による美容方法は、皮膚等のケラチン物質に、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体から誘導される美容効果をもたらすことができる。例えば、本発明による美容方法は、皮膚等のケラチン物質に保湿効果をもたらすことができる。
【0236】
本発明はまた、
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー、
(b-1)ヒアルロン酸及びその誘導体から選択される少なくとも1種の第1のアニオン性ポリマー、
(b-2)(b-1)第1のアニオン性ポリマーとは異なる少なくとも1種の第2のアニオン性ポリマー、
(c)少なくとも1種の非ポリマー酸又はその塩、及び
(d)少なくとも1種の任意選択の金属塩、並びに
(f)水
を含む組成物中の(e)少なくとも1種の脂肪酸の使用であって、
成分(a)、(b-1)、(b-2)、(c)、(d)及び(e)が、ナノ粒子を形成することができ、その量は、組成物の総質量に対して0.01質量%から0.58質量%、好ましくは0.05質量%から0.57質量%、より好ましくは0.1質量%から0.56質量%であり、
(a)カチオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.06~0.25であり、
(b-2)第2のアニオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.26以上であり、
(c)非ポリマー酸又はその塩の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.03以上であり、
(d)任意選択の金属塩の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.30以下であり、及び
(e)脂肪酸の量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.001以上であり、
皮膚等のケラチン物質中へのナノ粒子の侵入力を強化することを目的とした、使用にも関し得る。
【0237】
上記の使用は、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体を、皮膚等のケラチン物質中に、より深く送達することができる。したがって、本発明による上記の使用は、皮膚等のケラチン物質に、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸誘導体から誘導される美容効果をもたらすことができる。例えば、本発明による使用は、皮膚等のケラチン物質に保湿効果をもたらすことができる。
【実施例0238】
本発明は、実施例によって、より詳細な方法で記載されることになる。しかしながら、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【0239】
(実施例1及び比較例1)
[調製]
実施例1及び比較例1による組成物のそれぞれを、表1に示す成分を混合して調製した。表1中の成分の量についての数値は全て、活性材料の「質量%」に基づく。
【0240】
実施例1及び比較例1による組成物は、ヒアルロン酸を含むナノ粒子を含んでいた。表1中の「HANP」は、ヒアルロン酸ナノ粒子の略語である。表1中の(a)~(f)は、特許請求の範囲内のものに対応している。
【0241】
【表1】
【0242】
[評価]
(ヒアルロン酸が浸透した表皮厚さ)
浸透試験の実験を、Biopredic International社(仏国)から供給されたダーマトームドヒト皮膚を有するフランツ型拡散セル(Hanson)を使用して実施した。この機器は、ドナー部及びレセプター部で構成され、ダーマトームドヒト皮膚は、ドナー部とレセプター部との間にあった。所定の体積を有するレセプター部を、32℃の温度で維持されている受容溶液(receiving solution)(pH7のリン酸緩衝液)で満たし、これを小さなマグネチックバーによって連続的に撹拌した。実施例1及び比較例1による各組成物を、スパチュラを用いて、30mg/cm2の量でドナー部のメンブレンに塗り広げた。24時間後、ダーマトームドヒト皮膚を取り除き、低温切開し、HANPの侵入深さを、蛍光顕微鏡を用いた断面観察によって測定した。
【0243】
結果を、表1中の「ヒアルロン酸が浸透した表皮厚さ(μm)」と表記した行に示す。
【0244】
(外観)
実施例1及び比較例1による組成物の態様を、以下の基準に従って、室温(25℃)で目視により評価した。
良好: 透明
不良: 混濁
【0245】
結果を、表1中の「外観」と表記した行に示す。
【0246】
(粒径)
実施例1及び比較例1による組成物中のHANPの粒径又は直径を、室温(25℃)で、大塚電子株式会社製の粒径分析装置ELSZ-2000によって測定した。
【0247】
結果を、表1中の「粒径(nm)」と表記した行に示す。
【0248】
(濁度)
実施例1及び比較例1による組成物の濁度を、室温(25℃)で、濁度計2100Q(Hach Company社)によって測定した。
【0249】
結果を、表1中の「濁度(NTU)」と表記した行に示す。
【0250】
(概略)
表1中に示した実験データは、脂肪酸で疎水化されたHANPが、疎水化されていないHANPより深く皮膚中に浸透したことを実証している。
【0251】
したがって、(e)少なくとも1種の脂肪酸を含む、本発明による組成物中のナノ粒子は、皮膚中により深く浸透することができる。
【0252】
(実施例2~6及び比較例2)
[調製]
実施例2~6及び比較例2による組成物のそれぞれを、表2に示す成分を混合して調製した。表2中の成分の量についての数値は全て、活性材料の「質量%」に基づく。
【0253】
実施例2~6及び比較例2による組成物は、ヒアルロン酸を含む粒子を含んでいた。表2中の「HANP」は、ヒアルロン酸ナノ粒子の略語である。表2中の(a)~(f)は、特許請求の範囲内のものに対応している。
【0254】
【表2A】
【0255】
【表2B】
【0256】
[評価]
(外観)
実施例2~6及び比較例2による組成物の態様を、以下の基準に従って、室温(25℃)で目視により評価した。
良好: 透明
不良: 沈殿物が観察された
【0257】
結果を、表2中の「外観」と表記した行に示す。
【0258】
(粒径)
実施例2~6及び比較例2による組成物中のHANPの粒径又は直径を、室温(25℃)で、大塚電子株式会社製の粒径分析装置ELSZ-2000によって測定した。
【0259】
結果を、表2中の「粒径(nm)」と表記した行に示す。
【0260】
(濁度)
実施例2~6及び比較例2による組成物の濁度を、室温(25℃)で、濁度計2100Q(Hach Company社)によって測定した。
【0261】
結果を、表2中の「濁度(NTU)」と表記した行に示す。
【0262】
(概略)
表2中に示した実験データは、ナノ粒子の量が、組成物の総質量に対して0.59質量%以上である場合、沈殿が生じることを実証している。
【0263】
(参考例1及び実施例7~11)
[調製]
参考例1及び実施例7~11による組成物のそれぞれを、表3に示す成分を混合して調製した。表3中の成分の量についての数値は全て、活性材料の「質量%」に基づく。
【0264】
参考例1及び実施例7~11による組成物は、ヒアルロン酸を含む(参考例1を除く)粒子を含んでいた。表3中の「HANP」は、ヒアルロン酸ナノ粒子の略語である。表3中の(a)~(f)は、特許請求の範囲内のものに対応している。
【0265】
【表3A】
【0266】
【表3B】
【0267】
[評価]
(外観)
参考例1及び実施例7~11による組成物の態様を、以下の基準に従って、室温(25℃)で目視により評価した。
良好: 透明
不良: 混濁
【0268】
結果を、表3中の「外観」と表記した行に示す。
【0269】
(粒径)
参考例1及び実施例7~11による組成物中のHANPの粒径又は直径を、室温(25℃)で、大塚電子株式会社製の粒径分析装置ELSZ-2000によって測定した。
【0270】
結果を、表3中の「粒径(nm)」と表記した行に示す。
【0271】
(濁度)
参考例1及び実施例7~11による組成物の濁度を、室温(25℃)で、濁度計2100Q(Hach Company社)によって測定した。
【0272】
結果を、表3中の「濁度(NTU)」と表記した行に示す。
【0273】
(概略)
表3中に示した実験データは、ナノ粒子が、(b-1)第1のアニオン性ポリマーの量に関係なく調製することができることを実証している。
【0274】
しかしながら、(b-1)第1のアニオン性ポリマーを使用しない場合(参考例1)、(b-1)第1のアニオン性ポリマーから誘導される美容効果を得ることはできない。
【0275】
(実施例12~15及び比較例3~6)
[調製]
実施例12~15及び比較例3~6による組成物のそれぞれを、表4に示す成分を混合して調製した。表4中の成分の量についての数値は全て、活性材料の「質量%」に基づく。
【0276】
実施例12~15及び比較例3~6による組成物は、ヒアルロン酸を含む粒子を含んでいた。表4中の「HANP」は、ヒアルロン酸ナノ粒子の略語である。表4中の(a)~(f)は、特許請求の範囲内のものに対応している。
【0277】
【表4A】
【0278】
【表4B】
【0279】
[評価]
(外観)
実施例12~15及び比較例3~6による組成物の態様を、以下の基準に従って、室温(25℃)で目視により評価した。
良好: 透明
不良: 混濁
【0280】
結果を、表4中の「外観」と表記した行に示す。
【0281】
(粒径)
実施例12~15及び比較例3~6による組成物中のHANPの粒径又は直径を、室温(25℃)で、大塚電子株式会社製の粒径分析装置ELSZ-2000によって測定した。
【0282】
結果を、表4中の「粒径(nm)」と表記した行に示す。
【0283】
(濁度)
実施例12~15及び比較例3~6による組成物の濁度を、室温(25℃)で、濁度計2100Q(Hach Company社)によって測定した。
【0284】
結果を、表4中の「濁度(NTU)」と表記した行に示す。
【0285】
(概略)
表4中に示した実験データは、(b-2)第2のアニオン性ポリマーの量の、ナノ粒子の総質量に対する質量比が、0.254以下である場合、ナノ粒子を含む組成物の外観は混濁してくる(不透明になる)ことを実証している。
【0286】
(実施例16~20及び比較例7~9)
[調製]
実施例16~20及び比較例7~9による組成物のそれぞれを、表5に示す成分を混合して調製した。表5中の成分の量についての数値は全て、活性材料の「質量%」に基づく。
【0287】
実施例16~20及び比較例7~9による組成物は、ヒアルロン酸を含む粒子を含んでいた。表5中の「HANP」は、ヒアルロン酸ナノ粒子の略語である。表5中の(a)~(f)は、特許請求の範囲内のものに対応している。
【0288】
【表5A】
【0289】
【表5B】
【0290】
[評価]
(外観)
実施例16~20及び比較例7~9による組成物の態様を、以下の基準に従って、室温(25℃)で目視により評価した。
良好: 透明
不良: 沈殿物が観察された
【0291】
結果を、表5中の「外観」と表記した行に示す。
【0292】
(粒径)
実施例16~20及び比較例7~9による組成物中のHANPの粒径又は直径を、室温(25℃)で、大塚電子株式会社製の粒径分析装置ELSZ-2000によって測定した。
【0293】
結果を、表5中の「粒径(nm)」と表記した行に示す。
【0294】
表5中のNA(測定不可)は、ナノ粒子が見つからなかったことを意味する。
【0295】
(濁度)
実施例16~20及び比較例7~9による組成物の濁度を、室温(25℃)で、濁度計2100Q(Hach Company社)によって測定した。
【0296】
結果を、表5中の「濁度(NTU)」と表記した行に示す。
【0297】
(概略)
表5中に示した実験データは、(a)カチオン性ポリマーの量の、粒子の総質量に対する質量比が、0.057以下である場合、粒子がナノサイズ(1000nm未満)を有することができず、(a)カチオン性ポリマーの量の、粒子の総質量に対する質量比が、0.258以上である場合、沈殿が生じ、粒子を含む組成物の濁度が過度に高くなることを実証している。
【0298】
(実施例21~26及び比較例10~11)
[調製]
実施例21~26及び比較例10~11による組成物のそれぞれを、表6に示す成分を混合して調製した。表6中の成分の量についての数値は全て、活性材料の「質量%」に基づく。
【0299】
実施例21~26及び比較例10~11による組成物は、ヒアルロン酸を含む粒子を含んでいた。表6中の「HANP」は、ヒアルロン酸ナノ粒子の略語である。表6中の(a)~(f)は、特許請求の範囲内のものに対応している。
【0300】
【表6A】
【0301】
【表6B】
【0302】
[評価]
(外観)
実施例21~26及び比較例10~11による組成物の態様を、以下の基準に従って、室温(25℃)で目視により評価した。
良好: 透明
不良: ゲル
【0303】
結果を、表6中の「外観」と表記した行に示す。
【0304】
(粒径)
実施例21~26及び比較例10~11による組成物中のHANPの粒径又は直径を、室温(25℃)で、大塚電子株式会社製の粒径分析装置ELSZ-2000によって測定した。
【0305】
結果を、表6中の「粒径(nm)」と表記した行に示す。
【0306】
表6中のNA(測定不可)は、ナノ粒子が見つからなかったことを意味する。
【0307】
(濁度)
実施例21~26及び比較例10~11による組成物の濁度を、室温(25℃)で、濁度計2100Q(Hach Company社)によって測定した。
【0308】
結果を、表6中の「濁度(NTU)」と表記した行に示す。
【0309】
(概略)
表6中に示した実験データは、(c)非ポリマー酸又はその塩の量の、粒子の総質量に対する質量比が、0.022以下である場合、粒子がナノサイズ(1000nm未満)を有することができず、(c)非ポリマー酸又はその塩の量がゼロである場合、ゲルが形成されることを実証している。
【0310】
(実施例27~32及び比較例12~13)
[調製]
実施例27~32及び比較例12~13による組成物のそれぞれを、表7に示す成分を混合して調製した。表7中の成分の量についての数値は全て、活性材料の「質量%」に基づく。
【0311】
実施例27~32及び比較例12~13による組成物は、ヒアルロン酸を含む粒子を含んでいた。表7中の「HANP」は、ヒアルロン酸ナノ粒子の略語である。表7中の(a)~(f)は、特許請求の範囲内のものに対応している。
【0312】
【表7A】
【0313】
【表7B】
【0314】
[評価]
(外観)
実施例27~32及び比較例12~13による組成物の態様を、以下の基準に従って、室温(25℃)で目視により評価した。
良好: 透明
不良: 沈殿物が観察された
【0315】
結果を、表7中の「外観」と表記した行に示す。
【0316】
(粒径)
実施例27~32及び比較例12~13による組成物中のHANPの粒径又は直径を、室温(25℃)で、大塚電子株式会社製の粒径分析装置ELSZ-2000によって測定した。
【0317】
結果を、表7中の「粒径(nm)」と表記した行に示す。
【0318】
(濁度)
実施例27~32及び比較例12~13による組成物の濁度を、室温(25℃)で、濁度計2100Q(Hach Company社)によって測定した。
【0319】
結果を、表7中の「濁度(NTU)」と表記した行に示す。
【0320】
(概略)
表7中に示した実験データは、(d)金属塩の量の、粒子の総質量に対する質量比が、0.323以上である場合、粒子がナノサイズ(1000nm未満)を有することができず、沈殿が生じることを実証している。
【0321】
(参考例2及び実施例33~39)
[調製]
参考例2及び実施例33~39による組成物のそれぞれを、表8に示す成分を混合して調製した。表8中の成分の量についての数値は全て、活性材料の「質量%」に基づく。
【0322】
参考例2及び実施例33~39による組成物は、ヒアルロン酸を含むナノ粒子を含んでいた。表8中の「HANP」は、ヒアルロン酸ナノ粒子の略語である。表8中の(a)~(f)は、特許請求の範囲内のものに対応している。
【0323】
【表8A】
【0324】
【表8B】
【0325】
[評価]
(外観)
参考例2及び実施例33~39による組成物の態様を、以下の基準に従って、室温(25℃)で目視により評価した。
良好: 透明
不良: 混濁
【0326】
結果を、表8中の「外観」と表記した行に示す。
【0327】
(粒径)
参考例2及び実施例33~39による組成物中のHANPの粒径又は直径を、室温(25℃)で、大塚電子株式会社製の粒径分析装置ELSZ-2000によって測定した。
【0328】
結果を、表8中の「粒径(nm)」と表記した行に示す。
【0329】
(濁度)
参考例2及び実施例33~39による組成物の濁度を、室温(25℃)で、濁度計2100Q(Hach Company社)によって測定した。
【0330】
結果を、表8中の「濁度(NTU)」と表記した行に示す。
【0331】
(概略)
表8中に示した実験データは、ナノ粒子が、(e)脂肪酸の量に関係なく調製することができることを実証している。
【0332】
しかしながら、(e)脂肪酸を使用しない場合(参考例2)、(e)脂肪酸から誘導される皮膚浸透改善効果を得ることはできない。
【0333】
(実施例40~44)
[調製]
実施例40~44による組成物のそれぞれを、表9に示す成分を混合して調製した。表9中の成分の量についての数値は全て、活性材料の「質量%」に基づく。
【0334】
実施例40~44による組成物は、ヒアルロン酸を含むナノ粒子を含んでいた。表9中の「HANP」は、ヒアルロン酸ナノ粒子の略語である。表9中の(a)~(f)は、特許請求の範囲内のものに対応している。
【0335】
【表9A】
【0336】
【表9B】
【0337】
[評価]
(外観)
実施例40~44による組成物の態様を、以下の基準に従って、室温(25℃)で目視により評価した。
良好: 透明
不良: 混濁
【0338】
結果を、表9中の「外観」と表記した行に示す。
【0339】
(粒径)
実施例40~44による組成物中のHANPの粒径又は直径を、室温(25℃)で、大塚電子株式会社製の粒径分析装置ELSZ-2000によって測定した。
【0340】
結果を、表9中の「粒径(nm)」と表記した行に示す。
【0341】
(濁度)
実施例40~44による組成物の濁度を、室温(25℃)で、濁度計2100Q(Hach Company社)によって測定した。
【0342】
結果を、表9中の「濁度(NTU)」と表記した行に示す。
【0343】
(概略)
表9中に示した実験データは、様々なヒアルロン酸を(b-1)第1のアニオン性ポリマーとして使用できることを実証している。
【0344】
(実施例45~54)
[調製]
実施例45~54による組成物のそれぞれを、表10に示す成分を混合して調製した。表10中の成分の量についての数値は全て、活性材料の「質量%」に基づく。
【0345】
実施例45~54による組成物は、ヒアルロン酸を含むナノ粒子を含んでいた。表10中の「HANP」は、ヒアルロン酸ナノ粒子の略語である。表10中の(a)~(f)は、特許請求の範囲内のものに対応している。
【0346】
【表10A】
【0347】
【表10B】
【0348】
[評価]
(外観)
実施例45~54による組成物の態様を、以下の基準に従って、室温(25℃)で目視により評価した。
良好: 透明
不良: 混濁
【0349】
結果を、表10中の「外観」と表記した行に示す。
【0350】
(粒径)
実施例45~55による組成物中のHANPの粒径又は直径を、室温(25℃)で、大塚電子株式会社製の粒径分析装置ELSZ-2000によって測定した。
【0351】
結果を、表10中の「粒径(nm)」と表記した行に示す。
【0352】
(濁度)
実施例45~55による組成物の濁度を、室温(25℃)で、濁度計2100Q(Hach Company社)によって測定した。
【0353】
結果を、表10中の「濁度(NTU)」と表記した行に示す。
【0354】
(概略)
表10中に示した実験データは、様々な(a)カチオン性ポリマー、(b-2)第2のアニオン性ポリマー、(c)非ポリマー酸又はその塩、(d)金属塩、及び(e)脂肪酸を使用できることを実証している。
【外国語明細書】