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  • 特開-温度センサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087474
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】温度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/22 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
G01K7/22 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202314
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】杉山 達雄
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056QF02
2F056QF04
2F056QF08
(57)【要約】
【課題】 ハンダ接合し難い被測定物であっても接着剤を用いずに安定して固定可能で高精度な温度測定が可能な温度センサを提供すること。
【解決手段】 被測定物Sに設置される温度センサ1であって、絶縁性基板2と、絶縁性基板の上面に設けられた感熱素子3と、絶縁性基板の下面であって少なくとも感熱素子の直下に配され絶縁性基板よりも熱伝導率の高い材料で形成された集熱膜4と、被測定物に集熱膜を直接又は金属部材5を介して接触させた状態で絶縁性基板を被測定物に固定する取付用部材6とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に設置される温度センサであって、
絶縁性基板と、
前記絶縁性基板の上面に設けられた感熱素子と、
前記絶縁性基板の下面であって少なくとも前記感熱素子の直下に配され前記絶縁性基板よりも熱伝導率の高い材料で形成された集熱膜と、
前記被測定物に前記集熱膜を直接又は金属部材を介して接触させた状態で前記絶縁性基板を前記被測定物に固定する取付用部材とを備えていることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記取付用部材が、前記絶縁性基板又は前記金属部材と前記被測定物とを挟んで固定するクリップ状の弾性部材であることを特徴とする温度センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の温度センサにおいて、
前記被測定物が、板状部を有し、
前記金属部材が、前記集熱膜に接合材で固定され、
前記金属部材と前記集熱膜又は前記絶縁性基板との間に、隙間部が形成され、
前記取付用部材が、上側板部と、下側板部と、前記上側板部の基端部と前記下側板部の基端部とを接続する接続板部とを備え、
前記上側板部が、前記隙間部に挿入されると共に前記板状部の上面に配され、
前記下側板部が、前記板状部の下面に配され、
前記取付用部材が、前記金属部材と前記板状部とを挟持することを特徴とする温度センサ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記絶縁性基板が、絶縁性フィルムで形成され、
前記絶縁性基板の上面にパターン形成され前記感熱素子に接続された一対のパターン配線を備えていることを特徴とする温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り付けが容易で高い測温特性を有する温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスエポキシ(ガラエポ)基板やFPC基板等をベースにサーミスタ等の感熱素子を搭載した温度センサでは、被測定物に取り付ける際に、測定面にハンダや接着剤等で直に取り付けている。特に、被測定物との接触面に、集熱を目的とした金属膜等の集熱膜を設けた温度センサが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、絶縁性フィルムと、絶縁性フィルムの表面にサーミスタ材料でパターン形成された薄膜サーミスタ部と、薄膜サーミスタ部の上及び下の少なくとも一方に複数の櫛部を有して互いに対向してパターン形成された一対の櫛型電極と、一対の櫛型電極に接続され絶縁性フィルムの表面にパターン形成された一対のパターン電極と、絶縁性フィルムの裏面であって薄膜サーミスタ部の直下に絶縁性フィルムよりも熱伝導率の高い材料でパターン形成された集熱膜とを備えている温度センサが記載されている。
さらに、特許文献2にも、絶縁性基板の一面に感熱膜と電極とを形成すると共に絶縁性基板の他面に金属等の集熱膜を形成した感熱素子を備えた温度センサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-138773号公報
【特許文献2】実全平4-3325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
被測定物に集熱膜を高温ハンダ等で接合して温度センサを固定することができない場合、例えばハンダ接合し難いSUSやAl等の材料で形成されている被測定物の場合等、樹脂等の接着剤によって集熱膜を被測定物に接触させて温度センサを固定する方法がある。しかしながら、この場合、数十~数百μmの接着層が、被測定物と温度センサとの間に介在しており、熱応答性等の測温特性及び取付信頼性が低下してしてしまう不都合があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、ハンダ接合し難い被測定物であっても接着剤を用いずに安定して固定可能で高精度な温度測定が可能な温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る温度センサは、被測定物に設置される温度センサであって、絶縁性基板と、前記絶縁性基板の上面に設けられた感熱素子と、前記絶縁性基板の下面であって少なくとも前記感熱素子の直下に配され前記絶縁性基板よりも熱伝導率の高い材料で形成された集熱膜と、前記被測定物に前記集熱膜を直接又は金属部材を介して接触させた状態で前記絶縁性基板を前記被測定物に固定する取付用部材とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この温度センサでは、被測定物に集熱膜を直接又は金属部材を介して接触させた状態で絶縁性基板を被測定物に着脱可能に固定する取付用部材を備えているので、ハンダで被測定物に直接固定できない場合でも、接着剤を用いず、取付用部材で被測定物に集熱膜又は金属部材を接触固定できる。したがって、高熱伝導の集熱膜又は金属部材が被測定物に接触した状態を保持できるので、感熱素子に効率的に被測定物の熱を伝えて、高い測温特性及び取付信頼性を得ることができる。
【0009】
第2の発明に係る温度センサは、第1の発明において、前記取付用部材が、前記絶縁性基板又は前記金属部材と前記被測定物とを挟んで固定するクリップ状の弾性部材であることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、取付用部材が、絶縁性基板又は金属部材と被測定物とを挟んで固定するクリップ状の弾性部材であるので、被測定物に絶縁性基板の集熱膜又は金属部材を押し付けた状態で固定でき、より安定にかつ容易に取り付けることができる。
【0010】
第3の発明に係る温度センサは、第2の発明において、前記被測定物が、板状部を有し、前記金属部材が、前記集熱膜に接合材で固定され、前記金属部材と前記集熱膜又は前記絶縁性基板との間の一部に、隙間部が形成され、前記取付用部材が、上側板部と、下側板部と、前記上側板部の基端部と前記下側板部の基端部とを接続する接続板部とを備え、前記上側板部が、前記隙間部に挿入されると共に前記板状部の上面に配され、前記下側板部が、前記板状部の下面に配され、前記取付用部材が、前記金属部材と前記板状部とを挟持することを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、上側板部が、隙間部に挿入されると共に板状部の上面に配され、下側板部が、板状部の下面に配され、取付用部材が、金属部材と板状部とを挟持するので、金属部材を確実に板状部に押し付けることができる。また、隙間部に上側板部を挿入するだけで、金属部材を介して絶縁性基板を取付用部材に取り付けることができ、板状部への取り付けが容易となる。
【0011】
第4の発明に係る温度センサは、第1又は第2の発明において、前記絶縁性基板が、絶縁性フィルムで形成され、前記絶縁性基板の上面にパターン形成され前記感熱素子に接続された一対のパターン配線を備えていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、絶縁性基板が、絶縁性フィルムで形成され、絶縁性基板の上面にパターン形成され感熱素子に接続された一対のパターン配線を備えているので、フィルム状の絶縁性基板により高い熱応答性が得られると共に、柔軟な絶縁性基板及びパターン配線により配線及び設置の自由度が高くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る温度センサによれば、被測定物に集熱膜を直接又は金属部材を介して接触させた状態で絶縁性基板を被測定物に着脱可能に固定する取付用部材を備えているので、ハンダで被測定物に直接固定できない場合でも、接着剤を用いず、取付用部材で被測定物に集熱膜又は金属部材を接触固定できる。
したがって、本発明の温度センサでは、高熱伝導の集熱膜又は金属部材が被測定物に接触した状態を保持できるので、感熱素子に効率的に被測定物の熱を伝えて、高い測温特性及び取付信頼性を得ることができる。特に、測温特性の向上により、自動車等の150℃を超える高温使用に対しても対応可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る温度センサの一実施形態において、被測定物に取り付けた状態の温度センサを示す要部の拡大側面図である。
図2】本実施形態において、被測定物に取り付けた状態の温度センサを示す斜視図である。
図3】本実施形態において、被測定物に取り付けた状態の温度センサを、内部を透視して示す平面図である。
図4図3のA-A線断面図である。
図5】本実施形態において、取付用部材を外した温度センサを示す要部の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る温度センサの一実施形態を、図1から図5を参照しながら説明する。
【0015】
本実施形態の温度センサ1は、図1から図5に示すように、被測定物Sに設置される温度センサであって、絶縁性基板2と、絶縁性基板2の上面に設けられた感熱素子3と、絶縁性基板2の下面であって少なくとも感熱素子3の直下に配され絶縁性基板2よりも熱伝導率の高い材料で形成された集熱膜4と、被測定物Sに集熱膜4を直接又は金属部材5を介して接触させた状態で絶縁性基板2を被測定物Sに固定する取付用部材6とを備えている。
【0016】
なお、本実施形態の温度センサ1では、金属部材5を介して集熱膜4を被測定物Sに接触させた状態で取り付けている。
上記取付用部材6は、絶縁性基板2又は金属部材5と被測定物Sとを挟んで固定するクリップ状の弾性部材である
上記被測定物Sは、板状部S1を有し、ハンダ接合し難いステンレスやAl等で形成されている。
【0017】
上記金属部材5は、集熱膜4にハンダ等の接合材(図示略)で固定されている。
金属部材5と集熱膜4又は絶縁性基板2との間の一部には、図5に示すように、隙間部5aが形成されている。
金属部材5は、銅等で形成された円環状部材であり、集熱膜4に接合された上側凸部5bと、上側凸部5bよりも外径が大きいフランジ部5cとを有している。すなわち、上側凸部5bに接合された集熱膜4とフランジ部5cとの間に隙間部5aが形成されている。
【0018】
上記取付用部材6は、上側板部6aと、下側板部6bと、上側板部6aの基端部と下側板部6bの基端部とを接続する接続板部6cとを備えている。
すなわち、取付用部材6は、側面視で略コ字状に形成されており、ステンレス等の金属板部材で形成されている。
上側板部6aは、隙間部5aに挿入されると共に板状部S1の上面に配されている。
また、下側板部6bは、板状部S1の下面に配されている。
したがって、取付用部材6は、取付時に金属部材5と板状部S1とを挟持する。
【0019】
上記絶縁性基板2は、絶縁性フィルムで形成され、図3に示すように、絶縁性基板2の上面にパターン形成され感熱素子3に一端が接続された一対のパターン配線7を備えている。
上記感熱素子3は、例えばチップサーミスタ、フレーク型サーミスタ、薄膜サーミスタ等であり、本実施形態では、感熱素子3としてチップサーミスタを採用している。
なお、本実施形態の温度センサ1は、絶縁性基板2上で感熱素子3を樹脂によりドーム状に封止する樹脂封止部8を備えている。
【0020】
上記集熱膜4は、感熱素子3の直下に例えば矩形状に形成された銅箔等の金属膜である。
上記上側板部6aは、スリット部6dを挟んだ二股状なっており、金属部材5の隙間部5aに二股の上側板部6aを両側から差し込んで隙間部5a内に金属部材5の上側凸部5bを挟んだ状態とすることで、取付用部材6が、金属部材5に取り付けられる。
上記一対のパターン配線7は、他端が一対の外部リード線Lに接続されている。
一対のパターン配線7と一対の外部リード線Lとの接続部は、保護樹脂部9で封止されている。
【0021】
本実施形態の温度センサ1を被測定物Sに取り付ける場合、上側板部6aと下側板部6bとの間に、被測定物Sの板状部S1を差し込むことで、取付用部材6が被測定物S(板状部S1)を挟持して温度センサ1を取り付けることができる。
この際、上側板部6aにより金属部材5が被測定物S(板状部S1)の上面に接触した状態となると共に、下側板部6bが被測定物S(板状部S1)の下面に接触した状態となる。
【0022】
したがって、被測定物S(板状部S1)の熱は、金属部材5及び集熱膜4を介して直上の感熱素子3に効率的に伝達される。
また、金属で形成された取付用部材6を介しても、被測定物S(板状部S1)の熱は感熱素子3に伝達される。
【0023】
このように本実施形態の温度センサ1では、被測定物Sに集熱膜4を直接又は金属部材5を介して接触させた状態で絶縁性基板2を被測定物Sに着脱可能に固定する取付用部材6を備えているので、ハンダで被測定物Sに直接固定できない場合でも、接着剤を用いず、取付用部材6で被測定物Sに集熱膜4又は金属部材5を接触固定できる。
したがって、高熱伝導の集熱膜4又は金属部材5が被測定物Sに接触した状態を保持できるので、感熱素子3に効率的に被測定物Sの熱を伝えて、高い測温特性及び取付信頼性を得ることができる。
【0024】
また、取付用部材6が、絶縁性基板2又は金属部材5と被測定物Sとを挟んで固定するクリップ状の弾性部材であるので、被測定物Sに絶縁性基板2の集熱膜4又は金属部材5を押し付けた状態で固定でき、より安定にかつ容易に取り付けることができる。
【0025】
また、上側板部6aが、隙間部5aに挿入されると共に板状部S1の上面に配され、下側板部6bが、板状部S1の下面に配され、取付用部材6が、金属部材5と板状部S1とを挟持するので、金属部材5を確実に板状部S1に押し付けることができる。また、隙間部5aに上側板部6aを挿入するだけで、金属部材5を介して絶縁性基板2を取付用部材6に取り付けることができ、板状部S1への取り付けが容易となる。
【0026】
さらに、絶縁性基板2が、絶縁性フィルムで形成され、絶縁性基板2の上面にパターン形成され感熱素子3に接続された一対のパターン配線7を備えているので、フィルム状の絶縁性基板2により高い熱応答性が得られると共に、柔軟な絶縁性基板2及びパターン配線7により配線及び設置の自由度が高くなる。
【0027】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本実施形態では、被測定物に金属部材を介して集熱膜を接触させた状態で取付用部材によって絶縁性基板を被測定物に固定しているが、被測定物に直接、集熱膜を接触させた状態で取付用部材によって絶縁性基板を被測定物に固定する構造としても構わない。
【符号の説明】
【0028】
1…温度センサ、2…絶縁性基板、3…感熱素子、4…集熱膜、5…金属部材、5a…隙間部、6…取付用部材、6a…上側板部、6b…下側板部、6c…接続板部、7…パターン配線、S…被測定物、S1…板状部
図1
図2
図3
図4
図5