(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008748
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】水溶性切削液用フィルター
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/10 20060101AFI20240112BHJP
B01D 39/06 20060101ALI20240112BHJP
B01D 24/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B23Q11/10 E
B23Q11/10 Z
B01D39/06
B01D29/08 520A
B01D29/08 530E
B01D29/08 540A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022119090
(22)【出願日】2022-07-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】521343437
【氏名又は名称】株式会社NMC
(72)【発明者】
【氏名】岡部 弘善
【テーマコード(参考)】
3C011
4D019
4D116
【Fターム(参考)】
3C011EE01
3C011EE09
4D019AA03
4D019BA05
4D019BB12
4D019BD01
4D019CB03
4D019CB04
4D116AA08
4D116AA30
4D116BA02
4D116BA05
4D116DD04
4D116FF02A
4D116GG03
4D116GG24
4D116HH30A
4D116KK04
4D116QA14C
4D116QA14F
4D116QA25C
4D116QA25F
4D116QB25
4D116UU11
4D116VV01
4D116VV30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水溶性切削液のべた付きを改善し性能を回復させることで水溶性切削液の交換サイクルを延命できるフィルターであり、小型化、低価格化を実現する。
【解決手段】工作機械のクーラントポンプ等の下流に取り付け、機械加工時に使用する水溶性切削液用フィルターであり、両端に開口部を有する筒状本体の内部に流れ方向に沿った2つの流路を有し、1つの流路は内部に前記水溶性切削液が流れる程度の大きさ、および形状のセラミックスを収納し、かつ、該セラミックスが流出しないよう両端出入口をメッシュ構造としたことを特徴とする水溶性切削液用フィルター。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械のクーラントポンプ等の下流に取り付け、機械加工時に使用する水溶性切削液用フィルターであり、両端に開口部を有する筒状本体の内部に流れ方向に沿った2つの流路を有し、1つの流路は内部に前記水溶性切削液が流れる程度の大きさ、および形状のセラミックスを収納し、かつ、該セラミックスが流出しないよう両端出入口をメッシュ構造としたことを特徴とする水溶性切削液用フィルター。
【請求項2】
工作機械のクーラントポンプ等の下流に取り付け、機械加工時に使用する水溶性切削液用フィルターであり、両端に開口部を有する筒状本体と該本体の内径より小さいサイズの外径で、前記本体から出し入れを可能に装着できる筒状カセットとからなり、該カセットは両端に開口部を有し、内部に2つの流路を有し、1つの流路は内部に前記水溶性切削液が流れる程度の大きさ、および形状の遠赤外線を出すセラミックスを収納し、かつ、該セラミックスが流出しないよう両端出入口をメッシュ構造としたことを特徴とする水溶性切削液用フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のポンプの流量を利用する事が可能で、水溶性切削液の性能を改善させることで水溶性切削液の交換サイクルを延命するフィルターである。なお、本発明でいう水溶性切削液の性能を改善させるとは、具体的には水溶性切削液に混入し結合した、機械油分が原因で起こる高粘性化をセラミックの遠赤外線の効果によって新油に近い性能に改善させることを言う。
【背景技術】
【0002】
日本国内での水溶性切削液の販売量は年間約5万トンとも言われる。その多くは約20倍希釈で使用される、そのほとんどは一定期間使用して廃液として処理されている。地球温暖化対策として交換サイクルを伸ばし廃液を少なくする事は環境負荷軽減の為には重要な課題である。
【0003】
水溶性加工液は使用条件下によって違いはあるが、永遠に使い続けられるものではない。使用経時とともに機械油の混入の影響からべたつきが発生し作業効率の悪化が発生する。また粘性が出てくる事から腐敗問題にまでにも繋がり、腐敗臭による作業環境の悪化につながる。切削液の性能悪化により加工物の仕上がり具合にまで影響が出るため、加工液の交換が迫られる事となる。
【0004】
水溶性切削液の延命にセラミックスを使った技術は既に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セラミックスを詰めた機材が水溶性切削液に良い効果を与える事は前記特許文献で開示されている。またセラミックをクーラントに入れておくだけでは接触する流量が足らず効果の維持が難しいため、一定量の流量をセラミックに接触させる事が必要となる。また、セラミックスが詰まった筒状の機材が、水溶性切削液による詰まりが生じた際の対策も必要となる。これらの課題の対策として従来は、専用のポンプと制御盤などとセラミックスを詰めた機材とを組み合わせた専用装置を設けていた。この専用装置の購入コストと設置場所が必要になるため導入に至る事は少なかった。
そこで、本発明はセラミックスを詰めた機材の専用装置ではなく、マシニングセンター、旋盤等の工作機械で水溶性切削液を使用する既存の機械本体で既に使われている水溶性切削液用のクーラントポンプの下流側の配管の一部に取り付ける事を可能にすることで、購入コストと設置場所の課題を解消した。
【課題を解決する為の手段】
【0006】
本発明の第一の発明は、工作機械のクーラントポンプ等の下流に取り付け、機械加工時に使用する水溶性切削液用フィルターであり、両端に開口部を有する筒状本体の内部に流れ方向に沿った2つの流路を有し、1つの流路は内部に前記水溶性切削液が流れる程度の大きさ、および球体の遠赤外線を出すセラミックスを収納し、かつ、該セラミックスが流出しないよう両端出入口をメッシュ構造としたことを特徴とする水溶性切削液用フィルターを提供する。
【0007】
本発明の第2の発明は、工作機械のクーラントポンプ等の下流に取り付け、機械加工時に使用する水溶性切削液用フィルターであり、両端に開口部を有する筒状本体と該本体の内径より小さいサイズの外径で、前記本体から出し入れを可能に装着できる筒状カセットとからなり、該カセットは両端に開口部を有し、内部に2つの流路を有し、1つの流路は内部に前記水溶性切削液が流れる程度の大きさ、および球形の遠赤外線を出すセラミックスを収納し、かつ、該セラミックスが流出しないよう両端出入口をメッシュ構造としたことを特徴とする水溶性切削液用フィルターを提供する。
【発明の効果】
【0008】
セラミックスが詰まった機材を、工作機械に付属しているポンプの下流に取り付ける事としたため、水溶性切削液用フィルターの小型化、低価格化を実現できる。
【0009】
筒状機器の内部を2つの流路を存在させる構造としたことで、内部を流れる水溶性切削液によって1つのセラミックスを収納した流路が異物等により詰まりが発生しても、もう一方の流路は詰まることなく流れるので、機械が必要とする流量にほとんど影響が出ない。
【0010】
定期的メンテナンスの場合にも、本発明フィルターのみを交換すればよく、簡単かつ安価にできる。従来の制御盤、ポンプなどを作ったシステム的製品と比較して約1/10程度の価格で提供が可能となる。
【0011】
本発明の第2の発明においては、フィルターが本体とカセットとに分かれているため、カセットの交換だけで良く、さらに簡単かつ安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明の第2の発明の正面断面図および側面図
【
図3】本発明の使用状態を示す説明図(機材内部の簡素図)
【発明を実施するための形態】
【0013】
水溶性切削液の流れを実施形態の図に沿って説明する。
図1において、1、2はマシニングセンター、旋盤等工作機械の水溶性切削液用クーラントポンプ等の下流に伸びる配管の一部であり、2は流入側接続口、1は排出側接続口になる。機械の配管への取り付けはJIS規格のネジとなる。20A、25Aなどのオネジとメネジの接続部品を用意する。ポンプ下流の接続場所の径に合わせて接続口を選定する。3、4は前記接続口と本フィルターとを接合する固定具である。
【0014】
本フィルターの本体5は前記配管の径に対応する径を有する筒状であり、両側は開口している。前記本体5の内部に設けた隔壁により6と7の2つの流路を合わせたものがあり、流路に並行している。流路6には球系のセラミックスが詰まっており、流路7は何も施されていない。さらに該セラミックの入った流路6には前記セラミックスが流出しないよう両端出入口をメッシュ構造としている。このメッシュ構造は図面の構造に限定されるものではなく、セラミックが流出せずかつ水溶性切削液が流れる構造であれば採用できる。また、両側開口部周辺には、前記接合部に合せた接続部品1,2を置き、接合する為に3、4の固定具がある。
【0015】
本フィルター本体の中に存在する6の流路には直径8mm前後の球系セラミックスが詰め込まれている。切削液の流れが抵抗少なく6の流路を流れるようにセラミックスの形状は直径8mm前後の球形とした。
【0016】
第二の発明に用いるカセットを
図2に示す。第二の発明は、両端に開口部を有する筒状本体5と該本体5の内径より小さいサイズの外径で、前記本体5から出し入れを可能に装着できる筒状カセット8とからなる。該カセット8は両端に開口部を有し、内部に設けた隔壁により6と7の2つの流路を合わせたものがあり、流路に並行している。流路6には球系のセラミックスが詰まっており、流路7は何も施されていない。さらに該セラミックの入った流路6には前記セラミックスが流出しないよう両端出入口をメッシュ構造としている。このメッシュ構造は図面の構造に限定されるものではなく、セラミックが流出せずかつ水溶性切削液が流れる構造であれば採用できる。そして、前記本体5の内部に前記カセット8を装着した状態で、前記本体5の両側開口部周辺には、前記接合部に合せた接続部品1,2を置き、固定具3、4で接合する。
なお、第二の発明においては、メンテナンス等によるセラミックスの交換時には、本体5とカセット8との接合口から取り外し、カセット8を本体から取り出し、他のカセット8を本体5に装着するだけの交換が可能となり、交換作業の短時間化かつ低コスト化が実現する。またメンテナンスが発生した時は簡単に行える。
【0017】
本発明フィルターによる水溶性切削液の性能の回復を以下の試験によって検証した。
図3に示すように、ポンプから流れてきた水溶性切削液は本製品に入り、空洞とセラミックスが詰まった平行する2つの流路を通過する。セラミックス部分は抵抗があるものの、直径を8mm程度の球形としたことで多くの切削液が流れ込む。全流量の1/4は通過するものと推測する。前記実機実験結果より、毎分18Lのポンプでクーラントが200L、60分で効果が出たという事は、単純に計算すると以下の通りとなる。
・セラミック通過の流量
18Lの1/4は4.5L 毎分4.5Lの切削液がセラミックスの通路を通った事となる。60分で効果が確認できたという事から、60分では270Lもの切削液がセラミックスに接触した事になる。
・効果の持続性
前記実験結果より、3時間の効果が持続する事となった。取り付け機械の稼働状況により効果の持続性は変動する。
【0018】
筒状断面とカセットの断面は1/2がセラミックスの流路であり1/2は何も施さない空洞で設計した。
これで水溶性切削液の回復に重要な項目である切削液中に存在する混合油分が切削液と分離できたかどうか社内試験を行った。判断基準は流路が2つに分割された機材を、同じ水溶性切削液を使って、通過させた切削液と、通過させる前の切削液を透明容器に入れて外観で比較し判断した。次に実機試験を行った。デモ機はスイッチ付ポンプ付きデモ機を使った。スイッチを入れ効果を確認し、スイッチを切ってからどれくらい効果が持続するかで判断した。判断基準は、水溶性切削液のべた付き具合である。水溶性加工液をエアブローで除去する時、切削液がべた付くか、べたつきが軽減できているかはオペレーターの感覚的な判断となる。これは繰り返し試験を行った。
「試験条件」
・水溶性切削液の容量(タンク)は200L
・使用ポンプは18リットル/毎分
「試験結果」
効果はスイッチを入れて60分程で表れ、スイッチを切ってから効果が失われ始めるのは、3時間程度からとなった。
【符号の説明】
【0019】
1:接続口
2:接続口
3:本体と接続口の固定具
4:本体と接続口の固定具
5:本体
6:セラミックスを入れた流路
7:流路
8:カセット
9:セラミックス
10:切削液(入口)
11:切削液(セラミックスに接触)
12:切削液(出口)
13:切削液(通過)