(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087498
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240624BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202346
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 征和
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
5F004BA04
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB28
5F004BD01
5F004BD04
5F004CA01
5F004CA06
5F004DB03
5F004DB07
5F004EA28
5F045AA08
5F045DP03
5F045EE19
5F045EF05
5F045EF14
5F045EF20
5F045EG05
5F045EH04
5F045EH05
5F045EH14
5F045EM05
(57)【要約】
【課題】安定ステップを省略した場合でも基板の処理特性を向上させること。
【解決手段】実施形態のプラズマ処理装置は、基板を処理する処理容器と、処理容器内に処理ガスを供給する上部電極と、上部電極に対向して処理容器内に配置され、基板が載置される下部電極と、上部電極および下部電極の少なくともいずれかに電力を供給して処理容器内にプラズマを生成する電源と、処理容器内を排気する排気部と、を備え、上部電極は、下部電極に対向する第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面と、第1及び第2の面の間に介在され、処理ガスが拡散される拡散部と、第1の面に配置され、処理容器内に処理ガスを供給する複数のガス供給孔と、第2の面に配置され、排気部に接続される複数のガス排気孔と、を有し、複数のガス排気孔の総面積は、複数のガス供給孔の総面積よりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理容器と、
前記処理容器内に処理ガスを供給する上部電極と、
前記上部電極に対向して前記処理容器内に配置され、前記基板が載置される下部電極と、
前記上部電極および前記下部電極の少なくともいずれかに電力を供給して前記処理容器内にプラズマを生成する電源と、
前記処理容器内を排気する排気部と、を備え、
前記上部電極は、
前記下部電極に対向する第1の面と、
前記第1の面とは反対側の第2の面と、
前記第1及び第2の面の間に介在され、前記処理ガスが拡散される拡散部と、
前記第1の面に配置され、前記処理容器内に前記処理ガスを供給する複数のガス供給孔と、
前記第2の面に配置され、前記排気部に接続される複数のガス排気孔と、を有し、
前記複数のガス排気孔の総面積は、
前記複数のガス供給孔の総面積よりも大きい、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記複数のガス排気孔の平均直径は、
前記複数のガス供給孔の平均直径よりも大きい、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記上部電極は、
前記拡散部を複数の領域に区画する隔壁を更に有し、
前記複数のガス排気孔は、
前記第2の面の前記複数の領域に対応する位置に分散して配置されている、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
基板が処理される処理容器内に基板を搬入し、
前記処理容器内の上部電極に対向する下部電極に前記基板を載置し、
前記上部電極の、前記下部電極に対向する第1の面に配置される複数のガス供給孔から第1の処理ガスを供給し、
前記上部電極および前記下部電極の少なくともいずれかに電力を供給し、前記処理容器内に第1の期間、前記第1の処理ガスのプラズマを生成し、
前記第1の期間が経過した後、前記プラズマの生成および前記第1の処理ガスの供給を停止し、
前記第1の面に配置される複数のガス供給孔から第2の処理ガスを供給し、
前記上部電極および前記下部電極の少なくともいずれかに電力を供給し、前記処理容器内に第2の期間、第2の処理ガスのプラズマを生成し、
前記プラズマの生成および前記第1の処理ガスの供給を停止した後、前記第2の処理ガスの供給前に、前記第1の面から前記第1の処理ガスが拡散される拡散部を隔てて、前記第1の面とは反対側に設けられた第2の面に配置される複数のガス排気孔を介して、前記拡散部内の前記第1の処理ガスを排気する、
半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記拡散部内の前記第1の処理ガスを排気するときは、
前記拡散部内の前記第1の処理ガスの排気と並行して前記処理容器内を排気し、このとき、前記拡散部内の圧力が前記処理容器内の圧力よりも低くなるよう制御する、
請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記拡散部内の前記第1の処理ガスを排気するときは、
前記複数のガス排気孔と、前記処理容器内を排気する排気部との間に設けられたバルブを開いて前記第1の処理ガスを排気する、
請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラズマ処理装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、異なる処理ガスでそれぞれ基板を処理するステップを複数回繰り返すサイクル処理が行われる場合がある。このようなサイクル処理において、処理ガスの切り替え時に処理ガスの流量等を安定させる安定ステップを省略することで、生産性を向上させることが可能である。
【0003】
しかしながら、安定ステップの省略により、直前のステップで用いた処理ガスが混入された状態で基板が処理されてしまい、基板の処理特性が悪化してしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-123780号公報
【特許文献2】特許第5444044号公報
【特許文献3】特許第6085106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1つの実施形態は、安定ステップを省略した場合でも基板の処理特性を向上させることが可能なプラズマ処理装置および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のプラズマ処理装置は、基板を処理する処理容器と、前記処理容器内に処理ガスを供給する上部電極と、前記上部電極に対向して前記処理容器内に配置され、前記基板が載置される下部電極と、前記上部電極および前記下部電極の少なくともいずれかに電力を供給して前記処理容器内にプラズマを生成する電源と、前記処理容器内を排気する排気部と、を備え、前記上部電極は、前記下部電極に対向する第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面と、前記第1及び第2の面の間に介在され、前記処理ガスが拡散される拡散部と、前記第1の面に配置され、前記処理容器内に前記処理ガスを供給する複数のガス供給孔と、前記第2の面に配置され、前記排気部に接続される複数のガス排気孔と、を有し、前記複数のガス排気孔の総面積は、前記複数のガス供給孔の総面積よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態にかかるプラズマ処理装置の構成の一例を模式的に示す断面図。
【
図2】実施形態にかかるシャワーヘッドの構成の一例を示す模式図。
【
図3】実施形態にかかるプラズマ処理装置によるウェハのプラズマ処理について説明する模式図。
【
図4】実施形態にかかるプラズマ処理装置による処理を経て製造される半導体装置の構成の一例を示す断面図。
【
図5】比較例にかかるプラズマ処理装置によるプラズマ処理のタイミングチャート図。
【
図6】実施形態の変形例にかかるプラズマ処理装置によるプラズマ処理のタイミングチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0009】
(プラズマ処理装置の構成例)
図1は、実施形態にかかるプラズマ処理装置1の構成の一例を模式的に示す断面図である。プラズマ処理装置1は、例えばウェハ100上に形成された所定の層をエッチング処理するエッチング装置として構成されている。
【0010】
図1に示すように、プラズマ処理装置1は、基板としてのウェハ100を処理する処理容器としてのチャンバ11を備える。チャンバ11は例えばアルミニウム製であり、気密に封止することが可能である。
【0011】
チャンバ11の上部には、上部電極として機能するシャワーヘッド18が設けられている。シャワーヘッド18は、チャンバ11内に面する第1の面としての下面18aと、下面18aの反対側に設けられた第2の面としての上面18bと、を備え、ウェハ100を処理する際に使用される処理ガスをチャンバ11内に供給する。シャワーヘッド18の下面18aと上面18bとの間には空隙が介在されており、ウェハ100を処理する処理ガスを拡散させる拡散部18cとなっている。
【0012】
シャワーヘッド18の上面18bには、複数のガス導入路182と、複数のガス排気孔183とが設けられている。
【0013】
複数のガス導入路182には、配管を通じてガス供給装置が接続され(いずれも不図示)、複数のガス導入路182から拡散部18cへと処理ガスが導入される。
【0014】
複数のガス排気孔183は、ガス排気管184を介して後述する真空ポンプ14pに接続される。ガス排気管184の上流端は複数に分岐しており、複数のガス排気孔183にそれぞれ接続される。複数に分岐したガス排気管184には、それぞれバルブ185が設けられている。ガス排気管184の下流端は、ガス排気口14に設けられた分岐口14bを介して真空ポンプ14pに接続される。
【0015】
シャワーヘッド18の下面18aには、チャンバ11へと貫通する複数のガス供給孔181が設けられている。ガス導入路182から拡散部18cへと供給された処理ガスは、ガス供給孔181を介してチャンバ11内に供給される。シャワーヘッド18の下方には、シャワーヘッド18に対向するように静電チャック20が配置されている。
【0016】
静電チャック20は、チャンバ11内で処理対象のウェハ100を水平に支持するとともに、ウェハ100を静電的に吸着し、また、下部電極としても機能する。チャンバ11の側面には図示しないウェハ100の搬入出口が設けられており、ウェハ100はこの搬入出口より図示しない搬送アームによってチャンバ11内の静電チャック20に載置される。
【0017】
静電チャック20は、チャンバ11の中央付近の底壁から鉛直上方に筒状に突出する支持部12上に支持されている。支持部12は、シャワーヘッド18から所定の距離を隔てたチャンバ11の中央付近に、シャワーヘッド18と平行に対向するように静電チャック20を支持する。このような構造によって、シャワーヘッド18と静電チャック20とは、1対の平行平板電極を構成している。
【0018】
また、静電チャック20は、ウェハ100を静電吸着するチャック機構を備える。チャック機構は、チャック電極24、給電線45、及び電源46を備える。チャック電極24には、給電線45を介して電源46が接続されている。このような機構によって、電源46からチャック電極24に直流電力が供給されて、静電チャック20上面が静電的に帯電される。
【0019】
下部電極としての静電チャック20には、給電線41が接続されている。給電線41には、ブロッキングコンデンサ42、整合器43、及び高周波電源44が接続されている。プラズマ処理の際には、高周波電源44から静電チャック20に所定の周波数の高周波電力が供給される。このような機構によって、チャンバ11内に処理ガスのプラズマが生成される。
【0020】
静電チャック20の外周には、静電チャック20の側面および底面の周縁部を覆うようにインシュレータリング15が配置されている。インシュレータリング15の上方には、静電チャック20の外周を取り囲むように外周リング16が設けられている。外周リング16は、ウェハ100のエッチング時に、電界がウェハ100の周縁部で鉛直方向、つまり、ウェハ100の面に垂直な方向に対して偏向しないように電界を調整する。
【0021】
インシュレータリング15とチャンバ11の側壁との間には、バッフルプレート17が設けられている。バッフルプレート17は、板厚方向にバッフルプレート17を貫通する複数のガス排出孔17eを有する。
【0022】
チャンバ11のバッフルプレート17よりも下部にはガス排気口14が設けられている。ガス排気口14には、チャンバ11内の雰囲気を排気する真空ポンプ14pが接続されている。ガス排気口14は、上述のガス排気管184が接続される分岐口14bを有する。ここで、真空ポンプ14pは排気部の一例である。
【0023】
チャンバ11内の静電チャック20及びバッフルプレート17と、シャワーヘッド18とで仕切られた領域は、プラズマ処理室61となる。シャワーヘッド18で仕切られたチャンバ11内上部の拡散部18cはガス供給室となる。静電チャック20及びバッフルプレート17で仕切られたチャンバ11内下部の領域はガス排気室63となる。
【0024】
プラズマ処理装置1は、真空ポンプ14p、高周波電源44、整合器43、電源46、バルブ185、及びガス供給装置等のプラズマ処理装置1の各部を制御する制御部50を備える。制御部50は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等を備えるコンピュータとして構成されている。制御部50が、プラズマ処理装置1用途向けの機能を有するASIC(Application Specific Integrated Curcuit)等として構成されていてもよい。
【0025】
ウェハ100のプラズマ処理時には、制御部50の制御にしたがって、静電チャック20上に処理対象であるウェハ100が載置され、チャック機構によって吸着される。また、ガス排気口14に接続される真空ポンプ14pでチャンバ11内が真空引きされる。チャンバ11内が所定の圧力に達すると、図示しないガス供給装置からシャワーヘッド18の拡散部18cに処理ガスが供給され、ガス供給孔181を介してプラズマ処理室61に供給される。
【0026】
また、制御部50の制御にしたがって、上部電極であるシャワーヘッド18を接地した状態で、下部電極である静電チャック20に高周波電圧を印加して、プラズマ処理室61内にプラズマを生成させる。下部電極側には高周波電圧による自己バイアスにより、プラズマとウェハ100との間に電位勾配が生じ、プラズマ中のイオンが静電チャック20へと加速されることになり、異方性エッチング処理が行われる。
【0027】
また、制御部50の制御にしたがって、ガス排気管184に接続されるバルブ185が開かれることにより、拡散部18c内の余剰な処理ガスが排気される。
【0028】
(上部電極の構成例)
次に、
図2を用いてシャワーヘッド18の詳細の構成について説明する。
図2は、実施形態にかかるシャワーヘッド18の構成の一例を示す模式図である。
【0029】
図2(a)は、シャワーヘッド18の上面18bを上から見た図であるが、上面18bの裏面、つまり、拡散部18c側の面に設けられた複数の隔壁187a,187bを破線で示している。
【0030】
図2(a)に示すように、複数の隔壁187a,187bは、シャワーヘッド18の上面18bから拡散部18c内へと突出し、拡散部18cを複数の領域に区画している。
【0031】
図2(a)の例では、2つの隔壁187a,187bが、円板状のシャワーヘッド18の上面18bと同心円状に設けられている。隔壁187aは、上面18bの中心寄りに配置され、比較的小さな径を有する。隔壁187bは、上面18bの外周寄りに配置され、隔壁187aよりも大きな径を有する。
【0032】
また、中心寄りの隔壁187aにより、拡散部18cの中心領域186aが他の領域から区画される。外周寄りの隔壁187bにより、拡散部18cの外周領域186cが他の領域から区画される。隔壁187aと隔壁187bとにより、中心領域186aと外周領域186cとの間の中間領域186bが他の領域から区画される。
【0033】
上述の複数のガス導入路182と複数のガス排気孔183とは、隔壁187a,187bで区画されたそれぞれの領域に対応する上面18bの位置に分散して配置されている。このとき、複数のガス排気孔183は、複数のガス導入路182との干渉を回避しつつ上面18bに分散配置される。
【0034】
図2(a)の例では、複数のガス導入路182は、中心領域186a、中間領域186b、及び外周領域186cに径方向に直線状に並んで分散配置されている。また、複数のガス排気孔183は、中心領域186aから中間領域186bを経て外周領域186cへと放射状に分散配置されている。
【0035】
これにより、中心領域186aにはガス導入路182とガス排気孔183とが1つずつ配置される。また、中間領域186bには、2つのガス導入路182と4つのガス排気孔183とが配置される。また、外周領域186cには、2つのガス導入路182と8つのガス排気孔183とが配置される。
【0036】
図2(b)は、シャワーヘッド18の下面18aを下方から見た図である。
【0037】
図2(b)に示すように、上述の複数のガス供給孔181は、シャワーヘッド18の下面18aに分散して配置されている。
図2(b)の例では、複数のガス供給孔181は、シャワーヘッド18の下面18aの中心寄りと外周寄りとに分かれて、下面18aの中心から外周へと放射状に分散配置されている。
【0038】
ここで、複数のガス排気孔183の総面積が、複数のガス供給孔181の総面積よりも大きくなるよう、複数のガス排気孔183の総数および個々の直径が設定されている。
図2の例では、総じて数の多いガス供給孔181に対し、複数のガス排気孔183の直径を大きく構成することで、複数のガス排気孔183の総面積を複数のガス供給孔181の総面積よりも増大させている。
【0039】
一例として、ガス供給孔181の個々の径が1mm以下であって例えば0.5mmであり、ガス供給孔181が200個程度設けられているとした場合、ガス排気孔183の個々の径を数mm~数十mmであって例えば10mmとし、ガス排気孔183の個数を例えば十数個~20個程度とすることができる。
【0040】
なお、
図2の例では、複数のガス排気孔183の直径は互いに等しく、複数のガス供給孔181の直径は互いに等しく、複数のガス排気孔183の個々の直径は、いずれもガス供給孔181の直径より大きくなるよう設定されている。しかし、複数のガス排気孔183の直径は互いに異なっていてもよく、ガス供給孔181より直径が小さいガス排気孔183が含まれていてもよい。この場合であっても、例えば複数のガス排気孔183の平均直径を、複数のガス供給孔181の平均直径より大きくなるよう設定するなどして、複数のガス排気孔183の総面積が、複数のガス供給孔181の総面積より大きくなっていればよい。
【0041】
(プラズマ処理の例)
次に、
図3を用いて、実施形態のプラズマ処理装置1によるウェハ100のプラズマ処理の例について説明する。プラズマ処理装置1によるウェハ100のプラズマ処理は、例えば半導体装置の製造工程の一環として行われる。
【0042】
図3は、実施形態にかかるプラズマ処理装置1によるウェハ100のプラズマ処理について説明する模式図である。
図3(a)はプラズマ処理のタイミングチャート図であり、
図3(b)はエッチング対象物の断面図である。
図3の例では、複数の酸化シリコン層OLと複数の窒化シリコン層NLとが1層ずつ交互に積層された積層体をプラズマ処理装置1によりエッチングする場合について説明する。
【0043】
このとき、エッチング処理の対象領域に開口部OPを有するマスクパターンMKを積層体の上面に形成し、第1の処理ガスとしてCmFnガスを用いたプラズマで第1の層としての酸化シリコン層OLをエッチングするステップと、第2の処理ガスとしてCxHyFzガスを用いたプラズマで第2の層としての窒化シリコン層NLをエッチングするステップとを、交互に複数回繰り返すサイクル処理を行うこととする。
【0044】
酸化シリコン層OLのエッチングにCmFnガスを用いることで、窒化シリコン層NLに対して酸化シリコン層OLが選択的にエッチングされる。窒化シリコン層NLのエッチングにCxHyFzガスを用いることで、酸化シリコン層OLに対して窒化シリコン層NLが選択的にエッチングされる。
【0045】
図3に示すように、例えば最上層の酸化シリコン層OLをエッチングするため、時刻t1において、CmFnガスをガス導入路182から拡散部18cに導入し、更にガス供給孔181からチャンバ11内にCmFnガスを供給する。
【0046】
CmFnガスの供給タイミングと同じく、時刻t1において、高周波電源44から静電チャック20に高周波電力(RF)を供給し、チャンバ11内にCmFnガスのプラズマを生成する。
【0047】
これにより、最上層の酸化シリコン層OLのエッチングが開始される。なお、CmFnガスの供給開始直後、CmFnガスの流量は、若干の時間が経過後、所望の値に安定する。
【0048】
その後、例えば第1の期間としての所定期間、CmFnガスのプラズマが維持されることで、所定の層厚の酸化シリコン層OLが除去されて、開口部OPの底部に下地の窒化シリコン層NLが露出する。この所定期間が経過し、最上層の酸化シリコン層OLが除去された時刻t2のタイミングで、高周波電源44からの高周波電力の供給を停止するとともに、CmFnガスの供給を停止する。
【0049】
時刻t2におけるCmFnガスの供給停止後、時刻t3までの間に、チャンバ11下部に接続された真空ポンプ14pにより、チャンバ11内に残留するCmFnガスが排気される。また、チャンバ11内の排気と並行して、時刻t2から時刻t3までの間、複数のバルブ185を開き、拡散部18c内に残留するCmFnガスが、ガス排気孔183からガス排気管184を介して真空ポンプ14pへと排気される。
【0050】
ここで、上述のように、複数のガス排気孔183の総面積は、複数のガス供給孔181の総面積よりも大きくなるよう設計されている。このため、チャンバ11上部のガス排気孔183と、チャンバ11下部のガス排気口14とからそれぞれ真空ポンプ14pを用いて排気を行った場合、拡散部18c内の圧力がチャンバ11内の圧力よりも低くなる。よって、チャンバ11内に残留するCmFnガスは、チャンバ11下部のガス排気口14を介して排気され、拡散部18c内に残留するCmFnガスは、チャンバ11内に流入することなく、ガス排気孔183を介してチャンバ11上部から排気される。
【0051】
チャンバ11内、及び拡散部18c内からそれぞれCmFnガスが排気された後、時刻t3にてバルブ185を閉じ、拡散部18c内の排気を停止する。
【0052】
また、例えば最上層の酸化シリコン層OLが除去され、開口部OPに露出した窒化シリコン層NLをエッチングするため、時刻t3から時刻t4の間、ガス導入路182から拡散部18c、及びガス供給孔181を介してチャンバ11内にCxHyFzガスを供給するとともに、高周波電源44から高周波電力を供給し、チャンバ11内にCxHyFzガスのプラズマを生成する。
【0053】
これにより、酸化シリコン層OLのエッチングにより露出した窒化シリコン層NLのエッチングが開始される。なお、CxHyFzガスの供給開始直後、CxHyFzガスの流量は、若干の時間が経過後、所望の値に安定する。
【0054】
その後、例えば第2の期間としての所定期間、CxHyFzガスのプラズマが維持されることで、所定の層厚の窒化シリコン層NLが除去されて、開口部OPの底部に下地の酸化シリコン層OLが露出する。この所定期間が経過し、上層の窒化シリコン層NLが除去された時刻t4のタイミングで、高周波電源44からの高周波電力の供給を停止するとともに、CxHyFzガスの供給を停止する。
【0055】
時刻t4におけるCxHyFzガスの供給停止後、時刻t5までの期間、チャンバ11下部に接続された真空ポンプ14pにより、チャンバ11内に残留するCxHyFzガスを排気するとともに、複数のバルブ185を開き、拡散部18c内に残留するCxHyFzガスを、ガス排気孔183から排気する。
【0056】
このときにも、拡散部18c内の圧力がチャンバ11内の圧力よりも低くなる。よって、チャンバ11内に残留するCxHyFzガスは、チャンバ11下部のガス排気口14を介して排気され、拡散部18c内に残留するCxHyFzガスは、チャンバ11内に流入することなく、ガス排気孔183を介してチャンバ11上部から排気される。
【0057】
チャンバ11内、及び拡散部18c内からそれぞれCxHyFzガスが排気された後、時刻t5にてバルブ185を閉じ、拡散部18c内の排気を停止する。
【0058】
その後、時刻t5から時刻t6までの期間、チャンバ11内にCmFnガスを供給し、高周波電力を供給して、CmFnガスのプラズマで次の酸化シリコン層OLをエッチングする。
【0059】
また、時刻t6から時刻t7までの期間、チャンバ11内に残留するCmFnガスを、ガス排気口14を介して排気するとともに、バルブ185を開いて拡散部18c内に残留するCmFnガスを、ガス排気孔183を介して排気する。
【0060】
その後、バルブ185を閉じて、時刻t7から時刻t8までの期間、チャンバ11内にCxHyFzガスを供給し、高周波電力を供給して、CxHyFzガスのプラズマで次の窒化シリコン層NLをエッチングする。
【0061】
また、時刻t8から時刻t9までの期間、チャンバ11内に残留するCxHyFzガスを、ガス排気口14を介して排気するとともに、バルブ185を開いて拡散部18c内に残留するCxHyFzガスを、ガス排気孔183を介して排気する。
【0062】
その後、バルブ185を閉じて、時刻t9から時刻t10までの期間、チャンバ11内にCmFnガスを供給し、高周波電力を供給して、CmFnガスのプラズマで次の酸化シリコン層OLをエッチングする。
【0063】
また、時刻t10から時刻t11までの期間、チャンバ11内に残留するCmFnガスを、ガス排気口14を介して排気するとともに、バルブ185を開いて拡散部18c内に残留するCmFnガスを、ガス排気孔183を介して排気する。
【0064】
その後、バルブ185を閉じて、時刻t11から時刻t12までの期間、チャンバ11内にCxHyFzガスを供給し、高周波電力を供給して、CxHyFzガスのプラズマで次の窒化シリコン層NLをエッチングする。
【0065】
これ以降も、上記と同様に、CmFnガスとCxHyFzガスとの供給を交互に繰り返し、これらのガスのプラズマを交互に生成して、酸化シリコン層OLと窒化シリコン層NLとを適宜エッチングしていく。
【0066】
以上により、実施形態のプラズマ処理装置1によるウェハ100の処理が終了する。
【0067】
なお、
図3において、異種ガスを用いた各ステップが図面上で区別しやすいよう、CxHyFzガスの流量をCmFnガスの流量より多いこととし、CxHyFzガスのプラズマ生成時の高周波電力をCmFnガスのプラズマ生成時の高周波電力より小さいこととした。しかし、
図3に示すタイミングチャートは、あくまでも一例であって、CmFnガスとCxHyFzガスとの流量比、及び各ガスのプラズマ生成時の高周波電力の大小関係等は様々に設定可能である。
【0068】
(半導体装置の構成例)
次に、
図4を用いて、上述のプラズマ処理装置1による処理を含んで製造される半導体装置2の構成例について説明する。ただし、
図4においては図面の見やすさを考慮してハッチングを省略する。また、
図4において、X方向およびY方向は共に、後述するワード線WLの面の向きに沿う方向であり、X方向とY方向とは互いに直交する。
【0069】
図4に示すように、半導体装置2は、基板SB上に、周辺回路CUA、メモリ領域MR、貫通コンタクト領域TP、及び階段領域SRを備える。
【0070】
基板SBは、例えばシリコン基板等の半導体基板である。基板SB上にはトランジスタTR及び配線等を含む周辺回路CUAが配置されている。周辺回路CUAは、後述するメモリセルの動作に寄与する。
【0071】
周辺回路CUAは絶縁層40で覆われている。絶縁層40上にはソース線SLが配置されている。ソース線SL上には、それぞれの間に酸化シリコン層等の絶縁層を介在させて複数のワード線WLが積層されている。複数のワード線WLは絶縁層50で覆われている。絶縁層50は、複数のワード線WLの周囲にも広がっている。
【0072】
複数のワード線WLには、X方向に並ぶメモリ領域MR、階段領域SR、及び貫通コンタクト領域TPが設けられている。
【0073】
メモリ領域MRは、複数のワード線WLのX方向両端部にそれぞれ配置されている。メモリ領域MRには、ワード線WLを積層方向に貫通する複数のピラーPLが配置されている。ピラーPLとワード線WLとの交差部には複数のメモリセルが形成される。これにより、半導体装置2は、例えばメモリ領域MRにメモリセルが3次元に配置された3次元不揮発性メモリとして構成される。
【0074】
階段領域SR及び貫通コンタクト領域TPは、X方向両側のメモリ領域MRの間の位置に配置される。
【0075】
階段領域SRでは、複数のワード線WLが積層方向に階段状に掘り下げられている。すなわち、複数のワード線WLは、階段領域SRにおいて、X方向側およびY方向側から底面に向かって階段状に下降していく。
【0076】
各階層のワード線WLは、階段領域SRを挟んだX方向両側で電気的な導通を保っている。複数のワード線WLの各段のテラス部分には、各階層のワード線WLと上層配線とを接続するコンタクトCCがそれぞれ配置される。
【0077】
これにより、多層に積層されるワード線WLを個々に引き出すことができる。これらのコンタクトCCからは、X方向両側のメモリ領域MR内のメモリセルに対し、そのメモリセルと同じ高さ位置のワード線WLを介して書き込み電圧および読み出し電圧等が印加される。
【0078】
貫通コンタクト領域TPには、複数のワード線WLを貫通する貫通コンタクトC4が配置されている。貫通コンタクトC4は、下方の基板SB上に配置された周辺回路CUAと、階段領域SRのコンタクトCCに接続される上層配線とを接続する。コンタクトCCからメモリセルに印加される各種電圧は、貫通コンタクトC4及び上層配線等を介して周辺回路CUAにより制御される。
【0079】
このような半導体装置2を製造するにあたっては、周辺回路CUAが形成された基板SB上にソース線SLを介して、複数の酸化シリコン層と複数の窒化シリコン層とが1層ずつ交互に積層された積層体を形成する。
【0080】
また、この積層体の一部領域を階段状にエッチング加工して階段領域SRを形成する。また、ピラーPLを形成するためのメモリホールを同じくエッチング加工により積層体に形成し、メモリホール内にメモリ層および半導体層等を充填する。
【0081】
その後、リプレース処理と呼ばれる処理により、積層体の複数の窒化シリコン層を導電層に置き換えてワード線WLを形成する。また、階段領域SRにコンタクトCCを形成し、積層体の上層には上層配線等を形成する。
【0082】
上記製造工程において、リプレース処理前の積層体をエッチング加工する際に、例えば上述のプラズマ処理装置1によるサイクル処理が用いられる。すなわち、積層体の酸化シリコン層OLと窒化シリコン層NLとをガス種を切り替えながらプラズマ処理することで、積層体に所望の構成を形成することができる。
【0083】
(比較例)
半導体装置の製造工程において、複数種類の層が積層された構造を、ガス種を切り替えながらエッチングするプラズマ処理が行われることがある。プラズマ処理装置においては、ガスの切り替え時等、プラズマ処理条件が異なるステップ間に、安定ステップを挿入することが一般的である。安定ステップについて
図5に示す。
【0084】
図5は、比較例にかかるプラズマ処理装置によるプラズマ処理のタイミングチャート図である。
図5に示すように、比較例のプラズマ処理では、時刻t1,t5,t9において高周波電力を印加してCmFnガスのプラズマを生成する前、及び時刻t3,t7,t11において高周波電力を印加してCxHyFzガスのプラズマを生成する前、時刻tsに、それぞれのCmFnガス及びCxHyFzガスの供給を開始する。そして、この時刻tsから、それぞれのガス流量、及びチャンバ内の圧力の安定を図る安定ステップが行われる。それぞれのガス流量、及びチャンバ内の圧力が所望の値に安定した後、時刻t1,t5,t9、または、時刻t3,t7,t11のタイミングで高周波電力を印加してプラズマ処理を開始する。
【0085】
また、比較例のプラズマ処理では、時刻t2,t6,t10においてCmFnガスの供給を停止してから次の時刻tsまでの間と、時刻t4,t8,t12においてCxHyFzガスの供給を停止してから次の時刻tsまでの間とに、チャンバ内から残留ガスを排気するステップが設けられる。
【0086】
ここで、積層構造が多層化するにつれ、プラズマ処理に長時間を要し、スループットが低下してしまうため、例えばガスの切り替え時の安定ステップを省略して生産性の向上が図られる場合がある。各ガスの切り替え時に
図5に示す安定ステップを省略することで、多層化した積層構造に対してサイクル処理を行う際などには、スループット向上の効果が得られる。
【0087】
しかしながら、ガス種の切り替え時、前のステップで用いた処理ガスがシャワーヘッドの拡散部に残留していることがある。安定ステップを省略した場合、この残留ガスが次のステップに混入し、プラズマ処理特性を悪化させてしまうことが判った。具体的には、異種層のエッチング処理では、例えばそれぞれ他方の層に対して選択性を有する処理ガスが用いられるため、混入した残留ガスが他方の層に対する選択比を低下させてしまうことが挙げられる。これにより、一方の層を除去する過程で、下地となる他方の層までもが除去されてしまい、プロセスの制御性が低下する。
【0088】
実施形態のプラズマ処理装置1によれば、シャワーヘッド18は、下面18aに配置され、チャンバ11内に処理ガスを供給する複数のガス供給孔181と、上面18bに配置され、真空ポンプ14pに接続される複数のガス排気孔183と、を有する。また、複数のガス排気孔183の総面積は、複数のガス供給孔181の総面積よりも大きい。
【0089】
このような装置構成により、ガス種の切り替え時、拡散部18cに残留した前のステップの処理ガスをチャンバ11上部から排気することができる。ガス排気孔183の総面積をガス供給孔181よりも増大させているので、残留した処理ガスがチャンバ11内に供給されてしまうことも抑制される。これにより、安定ステップを省略した場合でもウェハ100の処理特性を向上させることができる。
【0090】
実施形態のプラズマ処理装置1によれば、複数のガス排気孔183は、隔壁187a,187bにより分割された拡散部18cの複数の領域に対応する上面18bの位置に分散して配置されている。これにより、分割された拡散部18cの各領域から残留した処理ガスを排気することができる。
【0091】
実施形態の半導体装置2の製造方法によれば、CmFnガスのプラズマ生成およびCmFnガスの供給を停止した後、CxHyFzガスの供給前に、シャワーヘッド18の上面18bに配置される複数のガス排気孔183を介して、拡散部18c内のCmFnガスを排気する。これにより、安定ステップを省略した場合でもウェハ100の処理特性を向上させることができる。
【0092】
実施形態の半導体装置2の製造方法によれば、拡散部18c内のCmFnガスを排気するときは、拡散部18c内のCmFnガスの排気と並行してチャンバ11内を排気し、このとき、拡散部18c内の圧力がチャンバ11内の圧力よりも低くなるよう制御する。
【0093】
これにより、残留したCmFnガスがチャンバ11内に供給されてしまうことが抑制され、次のステップのCxHyFzガスにCmFnガスが混入されてしまうのをいっそう抑制することができる。
【0094】
また、上記のように、ガス排気口14を介したチャンバ11内の排気と並行して、拡散部18cの排気を行うので、拡散部18c内の排気を行っても安定ステップを省略したことによるスループットの向上効果を維持することができる。
【0095】
実施形態の半導体装置2の製造方法によれば、拡散部18c内のCmFnガスを排気するときは、複数のガス排気孔183と、チャンバ11内を排気する真空ポンプ14pとの間に設けられたバルブ185を開いてCmFnガスを排気し、CxHyFzガスの供給前に、バルブ185を閉じて拡散部18cの排気を停止する。これにより、シャワーヘッド18にガス排気孔183等を設けたことによって、プラズマ処理に影響を及ぼしてしまうことを抑制することができる。
【0096】
実施形態の半導体装置2の製造方法によれば、酸化シリコン層OLの処理ガスとして、窒化シリコン層NLに対して酸化シリコン層OLが選択的にエッチングされるガス種を選択し、窒化シリコン層NLの処理ガスとして、酸化シリコン層OLに対して窒化シリコン層NLが選択的にエッチングされるガス種を選択する。
【0097】
これらの処理ガスを用い、安定ステップを省略したサイクル処理を行った場合でも、酸化シリコン層OLの処理ガスと窒化シリコン層NLの処理ガスとが混合して各層の選択比が悪化してしまうのを抑制することができる。
【0098】
なお、上述の実施形態では、複数のガス排気孔183に対し、ガス排気管184の分岐させた上流端のそれぞれにバルブ185を設けることとしたが、1つに統合された下流側のガス排気管184に少なくともバルブを設けることとしてもよい。また、ガス排気管184に設けるバルブは、開度を変化させて残留ガスの排気量を調整可能なバタフライバルブ等であってもよい。
【0099】
また、上述の実施形態では、プラズマ処理装置1において、下部電極である静電チャック20に高周波電力を印加することとしたが、高周波電力は上部電極であるシャワーヘッド18に印加されてもよく、上下部電極の両方に印加されてもよい。その他、プラズマ処理装置は、ICP(Inductively Coupled Plasma)等の他のプラズマソースを用いた装置であってもよい。
【0100】
また、上述の実施形態では、プラズマ処理装置1は、ウェハ100上の所定の層をエッチングするエッチング装置であることとした。しかし、上述の実施形態の構成は、ウェハに所定の層を形成するCVD(Chemical Vapor Deposition)装置、またはレジスト層等の有機層を除去するアッシング装置等にも適用可能である。
【0101】
(変形例)
次に、
図6を用いて、実施形態の変形例のプラズマ処理の例について説明する。変形例のプラズマ処理では、ガス種の切り替え時、次の処理ガスの供給を前倒しで行う点が、上述の実施形態とは異なる。
【0102】
なお、以下の説明においては、上述の実施形態の
図1及び
図2等を援用し、プラズマ処理装置の各部構成に上述の実施形態のプラズマ処理装置1と同様の符号を用いることとする。
【0103】
図6は、実施形態の変形例にかかるプラズマ処理装置によるプラズマ処理のタイミングチャート図である。
【0104】
図6に示すように、変形例のプラズマ処理においても、CmFnガスを用いたプラズマで酸化シリコン層OLをエッチングするステップと、CxHyFzガスを用いたプラズマで窒化シリコン層NLをエッチングするステップとを、交互に複数回繰り返すサイクル処理を行うこととする。
【0105】
すなわち、時刻t1から時刻t2までの期間、チャンバ11内にCmFnガスを供給し、高周波電力を供給して、CmFnガスのプラズマで酸化シリコン層OLをエッチングする。
【0106】
また、時刻t2から時刻t3までの期間、チャンバ11内に残留するCmFnガスを、ガス排気口14を介して排気するとともに、バルブ185を開いて拡散部18c内に残留するCmFnガスを、ガス排気孔183を介して排気する。
【0107】
変形例のプラズマ処理では、上記のCmFnガスの排気と並行して、時刻t2において、次のステップの処理ガスであるCxHyFzガスの、ガス導入路182から拡散部18cへの導入を開始する。
【0108】
このように、次のプラズマ処理が開始される時刻t3より前のタイミングで、CxHyFzガスの拡散部18cへの導入を開始することで、例えば時刻t3において次のプラズマ処理が開始されるまでの間に、CxHyFzガスの流量の安定化を図ることができる。よって、より迅速に次のステップに移行することができ、また、CxHyFzガスによるプラズマ処理における処理特性が向上する。
【0109】
また仮に、拡散部18c内の排気時間内である時刻t2から時刻t3までの間に、CxHyFzガスの流量を充分に安定させることができなくとも、時刻t3においてプラズマ処理が開始された後に、CxHyFzガスの流量が安定するまでに要する時間を短縮することができる。これにより、CxHyFzガスの流量が不安定なままプラズマ処理が進行する時間を短くすることができ、この場合であっても、CxHyFzガスによるプラズマ処理の処理特性が向上する。
【0110】
このとき、拡散部18c内はガス排気孔183を介して排気中である。したがって、拡散部18cに導入されたCxHyFzガスの大半は、チャンバ11内に供給されることなく、拡散部18c内に残留するCmFnガスとともに、そのままガス排気孔183から排気される。これにより、CmFnガスの排気中にCxHyFzガスの導入を開始しても、例えばチャンバ11内および拡散部18c内からのCmFnガスの排気が阻害されるのを抑制することができる。
【0111】
その後、CxHyFzガスの拡散部18c内への導入を継続したままバルブ185を閉じて、CxHyFzガスのチャンバ11内への供給を開始し、時刻t3から時刻t4までの期間、高周波電力を供給して、CxHyFzガスのプラズマで窒化シリコン層NLをエッチングする。
【0112】
また、時刻t4から時刻t5までの期間、チャンバ11内に残留するCxHyFzガスを、ガス排気口14を介して排気するとともに、バルブ185を開いて拡散部18c内に残留するCxHyFzガスを、ガス排気孔183を介して排気する。
【0113】
変形例のプラズマ処理では、このときにも、上記のCxHyFzガスの排気と並行して、時刻t4において、次のステップの処理ガスであるCmFnガスの、ガス導入路182から拡散部18cへの導入を開始する。
【0114】
このように、次のプラズマ処理が開始される時刻t5より前のタイミングで、CmFnガスの拡散部18cへの導入を開始することで、例えば時刻t5において次のプラズマ処理が開始されるまでの間に、CmFnガスの流量の安定化を図ることができ、あるいは、次のプラズマ処理を開始した後、CmFnガスの流量が安定するまでに要する時間を短縮することができる。また、より迅速に次のステップに移行することができる。
【0115】
また、拡散部18cに導入されたCmFnガスの大半は、チャンバ11内に供給されることなく、拡散部18c内に残留するCxHyFzガスとともに、そのままガス排気孔183から排気される。このため、例えばチャンバ11内および拡散部18c内からのCxHyFzガスの排気が阻害されるのを抑制することができる。
【0116】
その後、CmFnガスの拡散部18c内への導入を継続したままバルブ185を閉じて、CmFnガスのチャンバ11内への供給を開始し、時刻t5から時刻t6までの期間、高周波電力を供給して、CmFnガスのプラズマで酸化シリコン層OLをエッチングする。
【0117】
これ以降も、上記と同様に、CmFnガスとCxHyFzガスとの供給を交互に繰り返し、これらのガスのプラズマを交互に生成して、酸化シリコン層OLと窒化シリコン層NLとを適宜エッチングしていく。
【0118】
以上により、実施形態のプラズマ処理が終了する。
【0119】
なお、
図6の例では、バルブ185を開けて拡散部18c内の排気を開始するタイミングと、CmFnガスとCxHyFzガスとの各処理ガスの拡散部18c内への導入を開始するタイミングとを同時刻とした。しかし、処理ガスの導入開始から流量が安定するまでに要する時間が充分に短い場合には、拡散部18c内の排気を開始するタイミングより遅れて、各処理ガスの拡散部18c内への導入を開始してもよい。
【0120】
変形例のプラズマ処理装置によれば、拡散部18c内のCmFnガスを排気するときは、拡散部18c内のCmFnガスの排気と並行して、拡散部18c内へのCxHyFzガスの導入を開始する。これにより、迅速に次のステップに移行して、プラズマ処理装置のスループットをよりいっそう向上させることができる。また、次のプラズマ処理時のCxHyFzガスの流量を安定させることができ、よりいっそうウェハの処理特性を向上させることができる。
【0121】
変形例のプラズマ処理装置によれば、その他、上述の実施形態のプラズマ処理装置1と同様の効果を奏する。
【0122】
(付記)
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0123】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
基板を処理する処理容器と、
前記処理容器内に処理ガスを供給する上部電極と、
前記上部電極に対向して前記処理容器内に配置され、前記基板が載置される下部電極と、
前記上部電極および前記下部電極の少なくともいずれかに電力を供給して前記処理容器内にプラズマを生成する電源と、
前記処理容器内を排気する排気部と、を備え、
前記上部電極は、
前記下部電極に対向する第1の面と、
前記第1の面とは反対側の第2の面と、
前記第1及び第2の面の間に介在され、前記処理ガスが拡散される拡散部と、
前記第1の面に配置され、前記処理容器内に前記処理ガスを供給する複数のガス供給孔と、
前記第2の面に配置され、前記排気部に接続される複数のガス排気孔と、を有し、
前記複数のガス排気孔の総面積は、
前記複数のガス供給孔の総面積よりも大きい、
プラズマ処理装置が提供される。
【0124】
(付記2)
上記の付記1に記載のプラズマ処理装置において、
前記上部電極は、
前記第2の面に配置され、前記拡散部および前記ガス供給孔を介して前記処理容器内に前記処理ガスを供給する複数のガス導入路を更に有し、
前記複数のガス排気孔は、
前記複数のガス導入路との干渉を回避しつつ前記第2の面に分散して配置されている。
【0125】
(付記3)
本発明の他の態様によれば、
基板が処理される処理容器内に基板を搬入し、
前記処理容器内の上部電極に対向する下部電極に前記基板を載置し、
前記上部電極の、前記下部電極に対向する第1の面に配置される複数のガス供給孔から第1の処理ガスを供給し、
前記上部電極および前記下部電極の少なくともいずれかに電力を供給し、前記処理容器内に第1の期間、前記第1の処理ガスのプラズマを生成し、
前記第1の期間が経過した後、前記プラズマの生成および前記第1の処理ガスの供給を停止し、
前記第1の面に配置される複数のガス供給孔から第2の処理ガスを供給し、
前記上部電極および前記下部電極の少なくともいずれかに電力を供給し、前記処理容器内に第2の期間、第2の処理ガスのプラズマを生成し、
前記プラズマの生成および前記第1の処理ガスの供給を停止した後、前記第2の処理ガスの供給前に、前記第1の面から前記第1の処理ガスが拡散される拡散部を隔てて、前記第1の面とは反対側に設けられた第2の面に配置される複数のガス排気孔を介して、前記拡散部内の前記第1の処理ガスを排気する、
半導体装置の製造方法が提供される。
【0126】
(付記4)
上記の付記3に記載の半導体装置の製造方法において、
前記拡散部内の前記第1の処理ガスを排気するときは、
前記複数のガス排気孔と、前記処理容器内を排気する排気部との間に設けられたバルブを開いて前記第1の処理ガスを排気する。
【0127】
(付記5)
上記の付記4に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の処理ガスを排気した後、前記第2の処理ガスの供給前に、前記バルブを閉じて前記拡散部の排気を停止する。
【0128】
(付記6)
上記の付記3に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の処理ガスのプラズマ生成と、前記第2の処理ガスのプラズマ生成とを複数回繰り返し、
前記第2の処理ガスのプラズマを生成した後に前記第1の処理ガスのプラズマを生成するときは、
前記第2の期間が経過して、前記プラズマの生成および前記第2の処理ガスの供給を停止した後、前記第1の処理ガスの供給前に、前記複数のガス排気孔を介して前記拡散部内の前記第2の処理ガスを排気する。
【0129】
(付記7)
上記の付記6に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の処理ガスのプラズマにより第1の層をエッチングし、
前記第2の処理ガスのプラズマにより第2の層をエッチングし、
前記第1の処理ガスとして、
前記第1の処理ガスのプラズマによって、前記第2の層に対して前記第1の層が選択的にエッチングされるガス種を選択し、
前記第2の処理ガスとして、
前記第2の処理ガスのプラズマによって、前記第1の層に対して前記第2の層が選択的にエッチングされるガス種を選択する。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0131】
1…プラズマ処理装置、2…半導体装置、14p…真空ポンプ、18…シャワーヘッド、18a…下面、18b…上面、18c…拡散部、20…静電チャック、44…高周波電源、181…ガス供給孔、182…ガス導入路、183…ガス排気孔、184…ガス排気管、185…バルブ、186a…中心領域、186b…中間領域、186c…外周領域、187a,187b…隔壁、NL…窒化シリコン層、OL…酸化シリコン層。