IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特開-電動機及び電動機の製造方法 図1
  • 特開-電動機及び電動機の製造方法 図2
  • 特開-電動機及び電動機の製造方法 図3
  • 特開-電動機及び電動機の製造方法 図4
  • 特開-電動機及び電動機の製造方法 図5
  • 特開-電動機及び電動機の製造方法 図6
  • 特開-電動機及び電動機の製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087505
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】電動機及び電動機の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/52 20060101AFI20240624BHJP
   H02K 15/12 20060101ALI20240624BHJP
   H02K 15/095 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H02K3/52 Z
H02K15/12 C
H02K15/095
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202356
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉村 友彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 希幸
【テーマコード(参考)】
5H604
5H615
【Fターム(参考)】
5H604AA05
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604QA01
5H604QA03
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB14
5H615BB16
5H615PP16
5H615QQ02
5H615QQ19
5H615SS44
(57)【要約】
【課題】コイルの膨らみがばらついていても、コイルをティースに向けて押圧できる電動機及び電動機の製造方法を提供する。
【解決手段】スロット絶縁部材50は、スロット33内において隣り合うコイル14を各々巻回されたティース32に押圧するスペーサとして、ヨーク31の径方向において外周側に配置され、内周側に向けてヨーク31の周方向に幅広となる第1スペーサ51と、ヨーク31の径方向において第1スペーサ51よりも内周側に配置され、第1スペーサ51の幅よりも大きくなるように内周側に向けてヨーク31の周方向に幅広となる一対の第2スペーサ52と、第1スペーサ51の内周端部と一対の第2スペーサ52の外周端部とをそれぞれ連結し、回転軸の軸方向に延在する一対の連結部53とを有する。第1スペーサ51、一対の第2スペーサ52、及び一対の連結部53で区画される充填空間55には樹脂15が充填されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に固定され、前記回転軸と一体に回転するロータと、
前記回転軸の軸方向に延びる円筒形状のヨークを有し、前記ヨークの内周面から前記ロータに向かって延びる複数のティースを有するステータと、
複数の前記ティースの各々に巻回されるコイルと、
を備え、
前記ステータは、前記ヨークの周方向に隣り合う前記ティースによって区画されるスロット内において、前記回転軸の軸方向に延在し、隣り合う前記コイルの間に配置されたスロット絶縁部材を有する電動機であって、
前記スロット絶縁部材は、
前記スロット内において隣り合う前記コイルを各々巻回された前記ティースに押圧するスペーサとして、
前記ヨークの径方向において外周側に配置され、内周側に向けて前記ヨークの周方向に幅広となる第1スペーサと、
前記ヨークの径方向において前記第1スペーサよりも内周側に配置され、前記第1スペーサの幅よりも大きくなるように内周側に向けて前記ヨークの周方向に幅広となる一対の第2スペーサと、
前記第1スペーサの内周端部と一対の前記第2スペーサの外周端部とをそれぞれ連結し、前記回転軸の軸方向に延在する一対の連結部と、
を有し、
前記第1スペーサ、一対の前記第2スペーサ、及び一対の前記連結部で区画される充填空間には樹脂が充填されていることを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記第1スペーサは、前記ヨークの軸方向における端面である第1端面と、前記第1端面とは反対側に位置する第2端面とを有し、
一対の前記第2スペーサは、互いに対向し、対向する間隔が内周側に向けて漸次大きくなる対向面をそれぞれ有し、
前記対向面は、前記第1スペーサの前記第1端面から前記第2端面に向かうにつれて一対の前記対向面の間隔が狭くなるように傾斜する傾斜面である請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記スロット絶縁部材は、前記第1スペーサの前記第2端面から前記ヨークの軸方向に突出する突出部を有し、
前記樹脂は、前記第1スペーサの前記第1端面を覆う第1被覆部と、前記第1スペーサの前記第2端面を覆う第2被覆部とを有し、
前記突出部は、前記第2被覆部内に埋まっている請求項2に記載の電動機。
【請求項4】
回転軸に固定され、前記回転軸と一体に回転するロータと、
前記回転軸の軸方向に延びる円筒形状のヨークを有し、前記ヨークの内周面から前記ロータに向かって延びる複数のティースを有するステータと、
複数の前記ティースの各々に巻回されるコイルと、
を備え、
前記ステータは、前記ヨークの周方向に隣り合う前記ティースによって区画されるスロット内において、前記回転軸の軸方向に延在し、隣り合う前記コイルの間に配置されたスロット絶縁部材を有する電動機において、
前記スロット絶縁部材を前記スロット内に挿入する電動機の製造方法であって、
前記スロット絶縁部材は、
前記スロット内において隣り合う前記コイルを各々巻回された前記ティースに押圧するスペーサとして、
前記ヨークの径方向において外周側に配置され、内周側に向けて前記ヨークの周方向に幅広となる第1スペーサと、
前記ヨークの径方向において前記第1スペーサよりも内周側に配置され、前記第1スペーサの幅よりも大きくなるように内周側に向けて前記ヨークの周方向に幅広となる一対の第2スペーサと、
前記第1スペーサの内周端部と一対の前記第2スペーサの外周端部とをそれぞれ連結し、前記回転軸の軸方向に延在する一対の連結部と、
を有し、
前記第2スペーサが前記ヨークの径方向において前記第1スペーサよりも内周側に位置するように、前記スロットの上方に前記スロット絶縁部材を配置する配置工程と、
前記第1スペーサ、一対の前記第2スペーサ、及び一対の前記連結部で区画される充填空間に樹脂を充填することによって、前記第2スペーサが前記コイルを前記ティースに向けて押圧しながら、前記第2スペーサが前記連結部によって前記第1スペーサに連結された状態で前記スロット絶縁部材が前記スロット内に挿入される充填工程と、
を有することを特徴とする電動機の製造方法。
【請求項5】
前記第1スペーサは、前記ヨークの軸方向における端面である第1端面と、前記第1端面とは反対側に位置する第2端面とを有し、
一対の前記第2スペーサは、互いに対向し、対向する間隔が内周側に向けて漸次大きくなる対向面をそれぞれ有し、
前記対向面は、前記第1スペーサの前記第1端面から前記第2端面に向かうにつれて一対の前記対向面の間隔が狭くなるように傾斜する傾斜面であり、
前記充填工程において、前記樹脂は、前記第1端面側から充填される請求項4に記載の電動機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機及び電動機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機は、ロータと、ステータと、コイルとを備えている。ロータは、回転軸に固定されている。ロータは、回転軸と一体に回転する。ステータは、ヨークと、複数のティースと、スロット絶縁部材とを有している。ヨークは、円筒形状である。ヨークは、回転軸の軸方向に延びている。複数のティースは、ヨークの内周面からロータに向かって延びている。コイルは、複数のティースの各々に集中巻きされている。スロット絶縁部材は、ヨークの周方向に隣り合うティースによって区画されるスロット内において、回転軸の軸方向に延在するとともに隣り合うコイルの間に配置されている。
【0003】
特許文献1には、2つの羽根部を有するスロット絶縁部材が開示されている。羽根部は、例えば、V字状である。2つの羽根部は、ヨークの軸方向に並んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-29419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コイルは、ヨークの周方向におけるティースの両端面から離れるように膨らむことがある。この場合、ティースの両端面から離れたコイルにおけるロータと対向する部分には、ロータの磁束の影響によって渦電流が流れる。すると、渦電流損が生じる。このため、ヨークの周方向におけるティースの両端面からコイルが離れないように、スロット絶縁部材によってコイルをティースに向けて押圧することが考えられる。なお、コイルの膨らみはコイル毎にばらついているため、スロット絶縁部材には各コイルの膨らみに応じてコイルを押圧することが求められる。
【0006】
例えば、特許文献1の絶縁部材の羽根部によって、コイルを押圧することが考えられる。しかしながら、羽根部は、ヨークの周方向に隣り合う一対のコイル間の隙間に流し込まれた接着剤が垂れ落ちることを抑制するためのものである。したがって、羽根部は、コイルに当接することによってコイルとスロット絶縁部材との隙間を塞ぐことは可能であるとしても、ティースの両端面からコイルが離れないようにコイルを押圧することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための電動機は、回転軸に固定され、前記回転軸と一体に回転するロータと、前記回転軸の軸方向に延びる円筒形状のヨークを有し、前記ヨークの内周面から前記ロータに向かって延びる複数のティースを有するステータと、複数の前記ティースの各々に巻回されるコイルと、を備え、前記ステータは、前記ヨークの周方向に隣り合う前記ティースによって区画されるスロット内において、前記回転軸の軸方向に延在し、隣り合う前記コイルの間に配置されたスロット絶縁部材を有する電動機であって、前記スロット絶縁部材は、前記スロット内において隣り合う前記コイルを各々巻回された前記ティースに押圧するスペーサとして、前記ヨークの径方向において外周側に配置され、内周側に向けて前記ヨークの周方向に幅広となる第1スペーサと、前記ヨークの径方向において前記第1スペーサよりも内周側に配置され、前記第1スペーサの幅よりも大きくなるように内周側に向けて前記ヨークの周方向に幅広となる一対の第2スペーサと、前記第1スペーサの内周端部と一対の前記第2スペーサの外周端部とをそれぞれ連結し、前記回転軸の軸方向に延在する一対の連結部と、を有し、前記第1スペーサ、一対の前記第2スペーサ、及び一対の前記連結部で区画される充填空間には樹脂が充填されていることを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、一対の連結部は、第1スペーサの内周端部と第2スペーサの外周端部とをそれぞれ連結するとともに回転軸の軸方向に延在している。このため、充填空間に樹脂が充填される前の状態において、一対の第2スペーサは、一対の連結部を軸に第1スペーサに対して回動可動である。すなわち、スロット絶縁部材は、ヨークの周方向における一対の第2スペーサの幅を調整可能に構成されている。そして、充填空間に樹脂が充填されると、一対の第2スペーサは、充填された樹脂によってコイルに向けて加圧される。これにより、一対の第2スペーサの幅がヨークの周方向に隣り合うコイルの間隔に対応するように、一対の第2スペーサは一対の連結部を軸に第1スペーサに対して回動する。その結果、一対の第2スペーサは、第1スペーサの幅よりも大きくなるように内周側に向けてヨークの周方向に幅広になるとともに、コイルを各々巻回されたティースに押圧する。よって、コイルの膨らみがばらついていても、スロット絶縁部材により、コイルをティースに向けて押圧することができる。
【0009】
上記電動機において、前記第1スペーサは、前記ヨークの軸方向における端面である第1端面と、前記第1端面とは反対側に位置する第2端面とを有し、一対の前記第2スペーサは、互いに対向し、対向する間隔が内周側に向けて漸次大きくなる対向面をそれぞれ有し、前記対向面は、前記第1スペーサの前記第1端面から前記第2端面に向かうにつれて一対の前記対向面の間隔が狭くなるように傾斜する傾斜面であってもよい。
【0010】
上記構成によれば、スロット絶縁部材の充填空間に樹脂を充填するのと同時に、スロット内において隣り合うコイルの間にスロット絶縁部材を挿入しやすくなる。詳しくは、コイルが巻回されたステータは、ヨークの軸方向が鉛直方向と一致する状態で成形型内に配置される。スロット絶縁部材は、第1スペーサの第1端面が鉛直方向上側に位置し、かつ第1スペーサの第2端面が鉛直方向下側に位置する状態でスロットの上方に配置される。この状態でスロット絶縁部材の充填空間に硬化前の液状の樹脂が充填される。一対の対向面は、第1スペーサの第1端面から第2端面に向かうにつれて一対の対向面の間隔が狭くなるように傾斜する傾斜面である。このため、一対の対向面は、樹脂から鉛直方向下方に向かう圧力を受ける。これにより、スロット絶縁部材は下降することによって、スロット内において隣り合うコイルの間に挿入される。この場合、スロット絶縁部材の充填空間に樹脂を充填する前にスロット内において隣り合うコイルの間にスロット絶縁部材を挿入しておく手間を省くことができる。
【0011】
上記電動機において、前記スロット絶縁部材は、前記第1スペーサの前記第2端面から前記ヨークの軸方向に突出する突出部を有し、前記樹脂は、前記第1スペーサの前記第1端面を覆う第1被覆部と、前記第1スペーサの前記第2端面を覆う第2被覆部とを有し、前記突出部は、前記第2被覆部内に埋まっていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、スロット絶縁部材の充填空間に樹脂を充填することによってスロット内において隣り合うコイルの間にスロット絶縁部材を挿入する際、突出部は第1スペーサとともに下降する。そして、突出部の先端部が成形型の底壁に接触すると、スロット絶縁部材の更なる下降が規制される。このように突出部が成形型の底壁と第1スペーサとの間に位置することによって、スロット絶縁部材が樹脂の圧力によってスロットよりも下方まで下降することが抑制される。その結果、スロット絶縁部材がスロット外にはみ出すことを抑制できる。
【0013】
上記問題点を解決するための電動機の製造方法は、回転軸に固定され、前記回転軸と一体に回転するロータと、前記回転軸の軸方向に延びる円筒形状のヨークを有し、前記ヨークの内周面から前記ロータに向かって延びる複数のティースを有するステータと、複数の前記ティースの各々に巻回されるコイルと、を備え、前記ステータは、前記ヨークの周方向に隣り合う前記ティースによって区画されるスロット内において、前記回転軸の軸方向に延在し、隣り合う前記コイルの間に配置されたスロット絶縁部材を有する電動機において、前記スロット絶縁部材を前記スロット内に挿入する電動機の製造方法であって、前記スロット絶縁部材は、前記スロット内において隣り合う前記コイルを各々巻回された前記ティースに押圧するスペーサとして、前記ヨークの径方向において外周側に配置され、内周側に向けて前記ヨークの周方向に幅広となる第1スペーサと、前記ヨークの径方向において前記第1スペーサよりも内周側に配置され、前記第1スペーサの幅よりも大きくなるように内周側に向けて前記ヨークの周方向に幅広となる一対の第2スペーサと、前記第1スペーサの内周端部と一対の前記第2スペーサの外周端部とをそれぞれ連結し、前記回転軸の軸方向に延在する一対の連結部と、を有し、前記第2スペーサが前記ヨークの径方向において前記第1スペーサよりも内周側に位置するように、前記スロットの上方に前記スロット絶縁部材を配置する配置工程と、前記第1スペーサ、一対の前記第2スペーサ、及び一対の前記連結部で区画される充填空間に樹脂を充填することによって、前記第2スペーサが前記コイルを前記ティースに向けて押圧しながら、前記第2スペーサが前記連結部によって前記第1スペーサに連結された状態で前記スロット絶縁部材が前記スロット内に挿入される充填工程と、を有することを要旨とする。
【0014】
スロット絶縁部材の一対の連結部は、第1スペーサの内周端部と第2スペーサの外周端部とをそれぞれ連結するとともに回転軸の軸方向に延在している。このため、配置工程において、一対の第2スペーサは一対の連結部を軸に第1スペーサに対して回動可動である。すなわち、ヨークの周方向における一対の第2スペーサの幅は調整可能である。そして、充填工程において充填空間に樹脂が充填されると、一対の第2スペーサは、充填された樹脂によりコイルに向けて加圧される。これにより、一対の第2スペーサの幅がヨークの周方向に隣り合うコイルの間隔に対応するように、一対の第2スペーサは一対の連結部によって第1スペーサに連結された状態のまま第1スペーサに対して回動する。その結果、一対の第2スペーサは、第1スペーサの幅よりも大きくなるように内周側に向けてヨークの周方向に幅広になるとともに、コイルを各々巻回されたティースに押圧する。よって、コイルの膨らみがばらついていても、スロット絶縁部材により、コイルをティースに向けて押圧することができる。
【0015】
また、充填工程において、スロット絶縁部材は、樹脂からの圧力によってスロット内における隣り合うコイルの間に挿入される。したがって、充填工程と同時にスロット内における隣り合うコイルの間にスロット絶縁部材を挿入できる。
【0016】
上記電動機の製造方法において、前記第1スペーサは、前記ヨークの軸方向における端面である第1端面と、前記第1端面とは反対側に位置する第2端面とを有し、一対の前記第2スペーサは、互いに対向し、対向する間隔が内周側に向けて漸次大きくなる対向面をそれぞれ有し、前記対向面は、前記第1スペーサの前記第1端面から前記第2端面に向かうにつれて一対の前記対向面の間隔が狭くなるように傾斜する傾斜面であり、前記充填工程において、前記樹脂は、前記第1端面側から充填されてもよい。
【0017】
一対の対向面は、第1スペーサの第1端面から第2端面に向かうにつれて一対の対向面の間隔が狭くなるように傾斜する傾斜面である。このため、充填工程において、一対の対向面は、樹脂から鉛直方向下方に向かう圧力を受ける。これにより、スロット内において隣り合うコイルの間にスロット絶縁部材を挿入しやすくなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コイルの膨らみがばらついていても、コイルをティースに向けて押圧できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態における電動機を示す平面図である。
図2】実施形態におけるステータ及びコイルを示す部分平面図である。
図3】実施形態におけるステータ及びコイルを模式的に示す部分側面図である。
図4】実施形態におけるスロット絶縁部材を示す斜視図である。
図5】実施形態におけるステータ及びコイルを示す部分平面図である。
図6】実施形態における電動機の製造方法を説明するための図である。
図7】実施形態における電動機の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、電動機及び電動機の製造方法を具体化した一実施形態を図1図7にしたがって説明する。
<電動機の構成>
図1及び図2に示すように、電動機10は、回転軸11と、ロータ12と、ステータ13と、コイル14と、樹脂15とを備えている。なお、図1及び図2では、樹脂15を二点鎖線で図示している。
【0021】
図1に示すように、ロータ12は、円筒形状のロータコア21と、複数の永久磁石22とを有している。ロータコア21は、複数の磁石収容孔21aを有している。複数の磁石収容孔21aは、ロータコア21の周方向に並んでいる。各磁石収容孔21aは、ロータコア21を軸方向に貫通している。永久磁石22は、磁石収容孔21aに収容されている。本実施形態のロータ12は、永久磁石22がロータコア21の内部に埋め込まれているIPM(Interior Permanent Magnet)型のロータである。ロータコア21の内側には、回転軸11が挿通されている。ロータ12は、回転軸11に固定されている。ロータ12は、回転軸11と一体に回転する。
【0022】
ステータ13は、ロータ12の外側に配置されている。ステータ13は、ステータコア30と、樹脂製のスロット絶縁部材50とを有している。
ステータコア30は、円筒形状のヨーク31と、複数のティース32とを有している。ヨーク31は、回転軸11の軸方向に延びている。したがって、ヨーク31の軸方向は、回転軸11の軸方向と一致している。ティース32は、ヨーク31の内周面からロータ12に向かって延びている。複数のティース32は、ヨーク31の周方向において間隔を空けて配置されている。ヨーク31の周方向に隣り合うティース32によって区画される空間をスロット33という。
【0023】
図1及び図2に示すように、コイル14は、複数のティース32の各々に巻回されている。コイル14は、各ティース32に集中巻きされている。ティース32に対するコイル14の巻回回数は、ティース32の先端から基端に向かうにつれて増大している。したがって、ヨーク31の周方向において隣り合う一対のコイル14の間隔は、ヨーク31の外周側から内周側に向けて広くなっている。
【0024】
図3に示すように、コイル14は、一対の主部41と、一対のコイルエンド42とを有している。一対の主部41は、ヨーク31の周方向においてティース32の両側に位置している。一対の主部41は、スロット33内に位置している。一対のコイルエンド42は、ヨーク31の軸方向においてティース32の両側に位置している。一対のコイルエンド42は、スロット33外に位置している。以下の説明では、一対のコイルエンド42のうち、一方のコイルエンド42を第1コイルエンド42aとし、他方のコイルエンド42を第2コイルエンド42bとする。
【0025】
<スロット絶縁部材>
図2及び図3に示すように、スロット絶縁部材50は、スロット33内において、回転軸11の軸方向に延在するとともにヨーク31の周方向に隣り合う一対のコイル14の間に配置されている。
【0026】
図4に示すように、スロット絶縁部材50は、第1スペーサ51と、一対の第2スペーサ52と、一対の連結部53とを有している。第1スペーサ51及び一対の第2スペーサ52は、スロット33内において隣り合うコイル14を各々巻回されたティース32に向けて押圧するスペーサである。本実施形態では、第1スペーサ51及び一対の第2スペーサ52はそれぞれ、三角柱状である。第1スペーサ51の高さ方向は、ヨーク31の軸方向と一致している。第2スペーサ52の高さ方向は、ヨーク31の軸方向に対して直交している。
【0027】
図2に示すように、第1スペーサ51は、ヨーク31の径方向において外周側に配置されている。一対の第2スペーサ52は、ヨーク31の径方向において第1スペーサ51よりも内周側に位置している。すなわち、一対の第2スペーサ52は、ヨーク31の径方向において第1スペーサ51よりもロータ12側に位置している。一対の第2スペーサ52は、ヨーク31の周方向において間隔を空けて並んでいる。
【0028】
図3に示すように、第1スペーサ51は、第1端面51aと、第2端面51bとを有している。第1端面51a及び第2端面51bは、ヨーク31の軸方向における第1スペーサ51の端面である。第2端面51bは、第1端面51aの反対側に位置する面である。第1端面51aは、第1コイルエンド42a側に位置している。第2端面51bは、第2コイルエンド42b側に位置している。
【0029】
本実施形態では、第1スペーサ51の第2端面51bから突出部54が突出している。したがって、スロット絶縁部材50は、第1スペーサ51の第2端面51bからヨーク31の軸方向に突出する突出部54を有している。
【0030】
図2に示すように、第1スペーサ51は、第1側面51cと、第2側面51dと、第3側面51eとを有している。第1側面51cは、ヨーク31の周方向に隣り合う一対のコイル14のうちの一方と対向し、第2側面51dは、ヨーク31の周方向に隣り合う一対のコイル14のうちの他方と対向している。第1側面51cと第2側面51dとの距離は、ティース32の基端から先端に向かうにつれて長くなっている。すなわち、第1スペーサ51は、ヨーク31の径方向外周側から内周側に向けてヨーク31の周方向に幅広となっている。第3側面51eは、ロータ12と対向している。
【0031】
第2スペーサ52は、第1面52aと、第2面52bと、第3面52cとを有している。第1面52aは、コイル14の主部41と当接している。第2面52bは、もう一方の第2スペーサ52の第2面52bと対向している。したがって、一対の第2スペーサ52は、互いに対向する対向面としての第2面52bをそれぞれ有している。一対の第2面52bが対向する間隔は、ヨーク31の周方向外周側から内周側に向けて漸次大きくなっている。第3面52cは、第1スペーサ51の第3側面51eと対向している。
【0032】
一対の第2スペーサ52の幅は、ヨーク31の径方向外周側から内周側に向けて大きくなっている。ここで、一対の第2スペーサ52の幅とは、一方の第2スペーサ52の第1面52aと他方の第2スペーサ52の第1面52aとの距離のことである。また、一対の第2スペーサ52の幅は、第1スペーサ51の幅よりも大きい。詳しくは、一対の第2スペーサ52の幅は、第3側面51eにおける第1スペーサ51の幅よりも大きい。すなわち、一対の第2スペーサ52は、第1スペーサ51の幅よりも大きくなるようにヨーク31の内周側に向けてヨーク31の周方向に幅広となっている。
【0033】
図3及び図4に示すように、本実施形態では、各第2面52bは、第1面52aと第2面52bとの距離が第1スペーサ51の第1端面51aから第2端面51bに向かうにつれて長くなるように傾斜する傾斜面である。一対の第2面52bはそれぞれ、第1スペーサ51の第1端面51aから第2端面51bに向かうにつれて一対の第2面52bの間隔が徐々に狭くなるように傾斜する傾斜面である。
【0034】
一対の連結部53は、第1スペーサ51の内周端部と一対の第2スペーサ52の外周端部とをそれぞれ連結している。一対の連結部53はそれぞれ、回転軸11の軸方向に延在している。
【0035】
詳しくは、一方の連結部53は、第1スペーサ51の第1側面51cと第3側面51eとを接続する辺と、一方の第2スペーサ52の第1面52aと第3面52cとを接続する辺とを接続している。第1スペーサ51の第1側面51cと第3側面51eとを接続する辺は、第1スペーサ51の内周端部である。一方の第2スペーサ52の第1面52aと第3面52cとを接続する辺は、一方の第2スペーサ52の外周端部である。第1スペーサ51の内周端部及び一方の第2スペーサ52の外周端部はそれぞれ、回転軸11の軸方向に延在している。したがって、一方の連結部53は、回転軸11の軸方向に延在している。
【0036】
また、他方の連結部53は、第1スペーサ51の第2側面51dと第3側面51eとを接続する辺と、他方の第2スペーサ52の第1面52aと第3面52cとを接続する辺とを接続している。第1スペーサ51の第2側面51dと第3側面51eとを接続する辺は、第1スペーサ51の内周端部である。他方の第2スペーサ52の第1面52aと第3面52cとを接続する辺は、他方の第2スペーサ52の外周端部である。第1スペーサ51の内周端部及び他方の第2スペーサ52の外周端部はそれぞれ、回転軸11の軸方向に延在している。したがって、他方の連結部53は、回転軸11の軸方向に延在している。
【0037】
スロット絶縁部材50は、充填空間55を有している。充填空間55は、第1スペーサ51、一対の第2スペーサ52、及び一対の連結部53で区画されている。詳しくは、充填空間55は、第1スペーサ51の第3側面51eと、一対の第2スペーサ52の第2面52bと、一対の連結部53とで区画されている。
【0038】
<樹脂>
図3に示すように、樹脂15は、ステータ13及びコイル14を覆っている。樹脂15は、第1被覆部15aと、第2被覆部15bと、充填部15cとを有している。第1被覆部15aは、コイル14の第1コイルエンド42a及びスロット絶縁部材50の第1スペーサ51の第1端面51aを覆っている。第2被覆部15bは、コイル14の第2コイルエンド42b及びスロット絶縁部材50の第1スペーサ51の第2端面51bを覆っている。突出部54は、第2被覆部15b内に埋まっている。充填部15cは、スロット絶縁部材50の充填空間55に位置している。したがって、充填空間55には、樹脂15が充填されている。一対の第2スペーサ52は、充填部15cにより互いに離れる方向に加圧されることによって、一対のコイル14をティース32に向けて押圧している。
【0039】
図2及び図5に示すように、ヨーク31の周方向におけるティース32の端面からのコイル14の膨らみは、コイル14毎に異なっている。一対の第2スペーサ52の幅は、コイル14毎に異なるコイル14の膨らみに対応している。例えば、図2に示すように、ヨーク31の周方向に隣り合う一対のコイル14の膨らみが大きい場合、ヨーク31の周方向に隣り合う一対のコイル14の間隔は狭くなる。この場合、一対の第2スペーサ52の幅は、ヨーク31の周方向に隣り合う一対のコイル14の間隔に対応して狭くなっている。図5に示すように、ヨーク31の周方向に隣り合う一対のコイル14の膨らみが小さい場合、ヨーク31の周方向に隣り合う一対のコイル14の間隔は広くなる。この場合、一対の第2スペーサ52の幅は、ヨーク31の周方向に隣り合う一対のコイル14の間隔に対応して広くなっている。その結果、一対の第2スペーサ52の幅は、スロット絶縁部材50毎に異なっている。ただし、図1では、図示の簡略化のため、一対の第2スペーサ52の幅は、全てのスロット絶縁部材50で同じ幅で図示している。
【0040】
<電動機の製造方法>
電動機10の製造方法について、図6及び図7を用いて説明する。
図6に示すように、電動機10の製造方法は、成形型100内にステータ13を配置する配置工程を有している。成形型100は、円環板状の底壁101と、円筒状の外周壁102と、図示しない円筒状の内周壁とを有している。外周壁102は、底壁101の外周縁から立設されている。内周壁は、底壁101の内周縁から立設されている。
【0041】
配置工程では、ステータ13は成形型100内に配置される。なお、コイル14は、複数のティース32の各々に対して予め集中巻きされている。ヨーク31の軸方向は、鉛直方向と一致している。第1コイルエンド42aは鉛直方向上側に位置している。第2コイルエンド42bは、鉛直方向下側に位置している。
【0042】
スロット絶縁部材50は、スロット33の上方に配置されている。第1スペーサ51の第1端面51aは、鉛直方向上側に位置している。第1スペーサ51の第2端面51bは、鉛直方向下側に位置している。一対の第2スペーサ52は、ヨーク31の径方向において第1スペーサ51よりも内周側に位置するとともにヨーク31の周方向に間隔を空けて並んでいる。突出部54は、第1スペーサ51の第2端面51bから鉛直方向下側に向けて突出している。
【0043】
配置工程において、一対の第2スペーサ52は、一対の連結部53を軸に第1スペーサ51に対して回動可能である。本実施形態では、一対の第2スペーサ52は、一対の第2スペーサ52の幅が最も狭くなるように、一対の連結部53を軸に第1スペーサ51に対して回動されている。第2スペーサ52の第3面52cは、第1スペーサ51の第3側面51eと当接している。一対の第2スペーサ52の幅は、第1スペーサ51の第3側面51eにおける幅とほぼ同じである。
【0044】
図7に示すように、電動機10の製造方法は、挿入工程と充填工程とを有している。挿入工程は、スロット33内において隣り合う一対のコイル14の間にスロット絶縁部材50を挿入する工程である。充填工程は、スロット絶縁部材50の充填空間55に樹脂15を充填するために、成形型100内に樹脂15を充填する工程である。なお、充填工程において充填される樹脂15は液状である。
【0045】
本実施形態では、充填工程において充填空間55に樹脂15を充填することによって、スロット絶縁部材50は、第2スペーサ52がコイル14をティース32に向けて押圧しながらスロット33内に挿入される。すなわち、本実施形態では、挿入工程と充填工程は同時に行われる。このとき、スロット絶縁部材50は、一対の第2スペーサ52が一対の連結部53によって第1スペーサ51に連結された状態でスロット33内に挿入される。
【0046】
詳しくは、樹脂15は、第1スペーサ51の第1端面51a側から成形型100内に充填される。ヨーク31の周方向において一対の第2スペーサ52の間には隙間が存在している。したがって、充填された樹脂15は、充填空間55を通ってスロット絶縁部材50よりも下方まで流れる。そして、樹脂15は、コイル14の第2コイルエンド42bと成形型100の底壁101との間に入り込む。
【0047】
また、本実施形態では、一対の第2スペーサ52の第2面52bはそれぞれ、第1スペーサ51の第1端面51aから第2端面51bに向かうにつれて一対の第2面52bの間隔が狭くなるように傾斜する傾斜面である。したがって、一対の第2面52bは、樹脂15から鉛直方向下方に向かう圧力を受ける。これにより、スロット絶縁部材50は下降することによって、スロット33内における一対のコイル14の間に挿入される。
【0048】
スロット絶縁部材50は、一対の第2スペーサ52がヨーク31の径方向において第1スペーサ51よりも内周側に位置するようにスロット33内において一対のコイル14の間に挿入される。スロット絶縁部材50がスロット33内において一対のコイル14の間に挿入された状態において、第1スペーサ51の第1側面51c及び第2側面51dは、コイル14の主部41をティース32に向けて押圧する。また、一対の第2スペーサ52の第1面52aは、コイル14の主部41と対向する。
【0049】
本実施形態では、第1スペーサ51の第2端面51bから突出部54が突出している。このため、突出部54は、スロット絶縁部材50とともに下降する。そして、突出部54の先端部が成形型100の底壁101に接触すると、スロット絶縁部材50の更なる下降が規制される。また、突出部54は、成形型100に充填された樹脂15に埋まった状態となる。
【0050】
樹脂15の充填を続けると、樹脂15は、充填空間55に充填される。一対の第2スペーサ52は、充填空間55に充填された樹脂15により互いに離れる方向に加圧される。上述したように、一対の第2スペーサ52は、一対の連結部53を軸に第1スペーサ51に対して回動可能である。したがって、一対の第2スペーサ52は、充填空間55に充填された樹脂15により互いに離れる方向に加圧されると、一対の第3面52cが第1スペーサ51の第3側面51eから離れるように、一対の連結部53を軸に第1スペーサ51に対して回動する。これにより、一対の第2スペーサ52は、第1スペーサ51の幅よりも大きくなるようにヨーク31の径方向内周側に向けてヨーク31の周方向に幅広になるとともに、コイル14をティース32に向けて押圧する。
【0051】
図2及び図5に示すように、第1スペーサ51に対する一対の第2スペーサ52の回動量は、コイル14の膨らみに応じて異なる。例えば、図2に示すように、ヨーク31の周方向に隣り合う一対のコイル14の膨らみが大きい場合には、第1スペーサ51に対する一対の第2スペーサ52の回動量は小さくなるため、一対の第2スペーサ52の幅は狭くなる。図5に示すように、ヨーク31の周方向に隣り合う一対のコイル14の膨らみが小さい場合には、第1スペーサ51に対する一対の第2スペーサ52の回動量は大きくなるため、一対のコイル14の幅は広くなる。その結果、一対の第2スペーサ52の幅は、スロット絶縁部材50毎に異なる。
【0052】
充填空間55に樹脂15が充填された後も成形型100への樹脂15の充填を続けると、樹脂15は、コイル14の第1コイルエンド42a及び第1スペーサ51の第1端面51aを覆う。
【0053】
樹脂15の硬化後、成形型100を取り外すことによって、樹脂15によって覆われたステータ13及びコイル14が完成する。コイル14の第2コイルエンド42bと成形型100の底壁101との間、及び第1スペーサ51の第2端面51bと成形型100の底壁101との間に位置する樹脂15が硬化することによって第2被覆部15bが形成される。充填空間55に充填された樹脂15が硬化することによって充填部15cが形成される。コイル14の第1コイルエンド42a及び第1スペーサ51の第1端面51aを覆う樹脂15が硬化することによって第1被覆部15aが形成される。
【0054】
[本実施形態の作用及び効果]
本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)ステータ13は、スロット絶縁部材50を有している。スロット絶縁部材50は、ヨーク31の周方向に隣り合うティース32によって区画される各スロット33内において、回転軸11の軸方向に延在するとともに、隣り合うコイル14の間に配置されている。スロット絶縁部材50は、第1スペーサ51と、一対の第2スペーサ52と、一対の連結部53とを有している。第1スペーサ51及び一対の第2スペーサ52は、スロット33内において隣り合うコイル14を各々巻回されたティース32に押圧するスペーサである。第1スペーサ51は、ヨーク31の径方向において外周側に配置されている。第1スペーサ51は、内周側に向けてヨーク31の周方向に幅広になっている。一対の第2スペーサ52は、ヨーク31の径方向において第1スペーサ51よりも内周側に配置されている。一対の第2スペーサ52は、第1スペーサ51の幅よりも大きくなるように内周側に向けてヨーク31の周方向に幅広となっている。一対の連結部53は、第1スペーサ51の内周端部と一対の第2スペーサ52の外周端部とをそれぞれ連結している。一対の連結部53はそれぞれ、回転軸11の軸方向に延在している。第1スペーサ51、一対の第2スペーサ52、及び一対の連結部53で区画される充填空間55には、樹脂15が充填されている。
【0055】
この構成によれば、充填空間55に樹脂15が充填される前の状態において、一対の第2スペーサ52は、一対の連結部53を軸に第1スペーサ51に対して回動可能である。すなわち、スロット絶縁部材50は、ヨーク31の周方向における一対の第2スペーサ52の幅を調整可能に構成されている。そして、充填空間55に樹脂15が充填されると、一対の第2スペーサ52は、充填された樹脂15によってコイル14に向けて加圧される。これにより、一対の第2スペーサ52の幅がヨーク31の周方向に隣り合うコイル14の間隔に対応するように、一対の第2スペーサ52は一対の連結部53を軸に第1スペーサ51に対して回動する。その結果、一対の第2スペーサ52は、第1スペーサ51の幅よりも大きくなるように内周側に向けてヨーク31の周方向に幅広になるとともに、コイル14を各々巻回されたティース32に押圧する。よって、コイル14の膨らみがばらついていても、スロット絶縁部材50により、コイル14をティース32に向けて押圧することができる。
【0056】
(2)第1スペーサ51は、ヨーク31の軸方向における端面である第1端面51aと、第1端面51aとは反対側に位置する第2端面51bとを有している。一対の第2スペーサ52は、互いに対向するとともに、対向する間隔が内周側に向けて漸次大きくなる第2面52bをそれぞれ有している。第2面52bは、第1スペーサ51の第1端面51aから第2端面51bに向かうにつれて一対の第2面52bの間隔が狭くなるように傾斜する傾斜面である。
【0057】
この構成によれば、スロット絶縁部材50の充填空間55に樹脂15を充填するのと同時に、スロット33内において隣り合うコイル14の間にスロット絶縁部材50を挿入しやすくなる。詳しくは、コイル14が巻回されたステータ13は、ヨーク31の軸方向が鉛直方向と一致する状態で成形型100内に配置される。スロット絶縁部材50は、第1スペーサ51の第1端面51aが鉛直方向上側に位置し、かつ第1スペーサ51の第2端面51bが鉛直方向下側に位置する状態でスロット33の上方に配置される。この状態でスロット絶縁部材50の充填空間55に硬化前の液状の樹脂15が充填される。一対の第2スペーサ52の第2面52bは、第1スペーサ51の第1端面51aから第2端面51bに向かうにつれて一対の第2面52bの間隔が狭くなるように傾斜する傾斜面である。このため、一対の第2面52bは、樹脂15から鉛直方向下方に向かう圧力を受ける。これにより、スロット絶縁部材50は下降することによって、スロット33内において隣り合うコイル14の間に挿入される。この場合、スロット絶縁部材50の充填空間55に樹脂15を充填する前にスロット33内において隣り合うコイル14の間にスロット絶縁部材50を挿入しておく手間を省くことができる。
【0058】
(3)スロット絶縁部材50は、第1スペーサ51の第2端面51bからヨーク31の軸方向に突出する突出部54を有している。樹脂15は、第1スペーサ51の第1端面51aを覆う第1被覆部15aと、第1スペーサ51の第2端面51bを覆う第2被覆部15bとを有している。突出部54は、第2被覆部15b内に埋まっている。
【0059】
この構成によれば、スロット絶縁部材50の充填空間55に樹脂15を充填することによってスロット33内において隣り合うコイル14の間にスロット絶縁部材50を挿入する際、突出部54は第1スペーサ51とともに下降する。そして、突出部54の先端部が成形型100の底壁101に接触すると、スロット絶縁部材50の更なる下降が規制される。このように突出部54が成形型100の底壁101と第1スペーサ51との間に位置することによって、スロット絶縁部材50が樹脂15の圧力によってスロット33よりも下方まで下降することが抑制される。その結果、スロット絶縁部材50がスロット33外にはみ出すことを抑制できる。
【0060】
(4)電動機10の製造方法は、第2スペーサ52がヨーク31の径方向において第1スペーサ51よりも内周側に位置するようにスロット33の上方にスロット絶縁部材50を配置する配置工程を有している。また、電動機10の製造方法は、充填空間55に樹脂15を充填することによって、第2スペーサ52がコイル14をティース32に向けて押圧しながら、第2スペーサ52が連結部53によって第1スペーサ51に連結された状態でスロット絶縁部材50がスロット33内に挿入される挿入工程を有している。
【0061】
スロット絶縁部材50の一対の連結部53は、第1スペーサ51の内周端部と第2スペーサ52の外周端部とをそれぞれ連結するとともに回転軸11の軸方向に延在している。このため、配置工程において、一対の第2スペーサ52は一対の連結部53を軸に第1スペーサ51に対して回動可動である。すなわち、ヨーク31の周方向における一対の第2スペーサ52の幅は調整可能である。そして、充填工程において充填空間55に樹脂15が充填されると、一対の第2スペーサ52は、充填された樹脂15によりコイル14に向けて加圧される。これにより、一対の第2スペーサ52の幅がヨーク31の周方向に隣り合うコイル14の間隔に対応するように、一対の第2スペーサ52は一対の連結部53によって第1スペーサ51に連結された状態のまま第1スペーサ51に対して回動する。その結果、一対の第2スペーサ52は、第1スペーサ51の幅よりも大きくなるように内周側に向けてヨーク31の周方向に幅広になるとともに、コイル14を各々巻回されたティース32に押圧する。よって、コイル14の膨らみがばらついていても、スロット絶縁部材50により、コイル14をティース32に向けて押圧することができる。
【0062】
また、充填工程において、スロット絶縁部材50は、樹脂15からの圧力によってスロット33内における隣り合うコイル14の間に挿入される。したがって、充填工程と同時にスロット33内における隣り合うコイル14の間にスロット絶縁部材50を挿入できる。
【0063】
(5)第2スペーサ52の第2面52bは、第1スペーサ51の第1端面51aから第2端面51bに向かうにつれて一対の第2面52bの間隔が狭くなるように傾斜する傾斜面である。充填工程において、樹脂15は、第1スペーサ51の第1端面51a側から充填される。このため、一対の第2面52bは、樹脂15から鉛直方向下方に向かう圧力を受ける。これにより、スロット33内において隣り合うコイル14の間にスロット絶縁部材50を挿入しやすくなる。
【0064】
(6)スロット絶縁部材50は、コイル14の膨らみがばらついていてもコイル14をティース32に向けて押圧することができる。したがって、コイル14は、ヨーク31の周方向におけるティース32の両端面から離れにくくなるため、ロータ12と対向しにくくなる。その結果、コイル14におけるロータ12と対向する部分にロータ12の磁束の影響によって渦電流が流れることによって生じる渦電流損を低減できる。
【0065】
(7)本実施形態では、ヨーク31の周方向において隣り合う一対のコイル14の間隔は、ヨーク31の外周側から内周側に向かうにつれて広くなっている。ヨーク31の径方向外周側に配置される第1スペーサ51は、内周側に向けてヨーク31の周方向に幅広となっている。このため、第1スペーサ51の第1側面51c及び第2側面51dは、一対のコイル14の主部41に沿いやすくなる。したがって、第1スペーサ51は、一対のコイル14をティース32に向けて押圧しやすくなる。
【0066】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0067】
○ 第2スペーサ52の形状は、三角柱状に限定されない。第2スペーサ52は、例えば、四角柱状であってもよい。この場合、一対の第2スペーサ52の第2面52bの間隔は、ヨーク31の軸方向において一定である。
【0068】
○ 上記実施形態では、第2スペーサ52の第2面52bは平坦面であったが、湾曲面であってもよい。
○ 一対の第2スペーサ52の第2面52bは、第1スペーサ51の第1端面51aから第2端面51bに向かうにつれて一対の第2面52bの間隔が段階的に狭くなるような階段形状であってもよい。
【0069】
○ スロット33内にティース32とコイル14とを絶縁する絶縁紙を設けてもよい。また、スロット33内にヨーク31とコイル14とを絶縁する絶縁紙を設けてもよい。
○ 突出部54は省略されてもよい。
【0070】
○ 挿入工程と充填工程は同時に行われなくてもよい。充填工程は、挿入工程後に行われてもよい。
○ 充填工程において、樹脂15は、第1スペーサ51の第2端面51b側から充填されてもよい。
【0071】
○ ロータ12の構成は、適宜変更されてもよい。例えば、ロータ12は、ロータコア21の外周面に永久磁石22が配置されたSPM(Surface Permanent Magnet)型のロータであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
10…電動機、11…回転軸、12…ロータ、13…ステータ、14…コイル、15…樹脂、15a…第1被覆部、15b…第2被覆部、31…ヨーク、32…ティース、33…スロット、50…スロット絶縁部材、51…第1スペーサ、51a…第1端面、51b…第2端面、52…第2スペーサ、52b…対向面としての第2面、53…連結部、54…突出部、55…充填空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7