(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087518
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】揚水発電システム、情報処理システム及び情報処理方法、並びに、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240624BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202380
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】521495404
【氏名又は名称】Team Energy 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠司
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】電力市場で電力売買をして収益の最適化を図ることが可能な揚水発電システムを提供すること。
【解決手段】揚水発電設備1は、電力市場EMから買電した電力を用いて揚水をし、当該揚水された水を用いて発電をし、当該発電により得られた電力を電力市場EMに売電する。電力価格予測システム2は、気象等情報を少なくとも含む入力パラメータ情報を用いて電力市場EMにおける予測電力価格を求め、当該予測電力価格に基づいて、揚水発電設備1の用水及び発電のタイミングを制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の電力市場から買電した電力を用いて下部貯水場から上部貯水場に揚水をし、前記上部貯水場から前記下部貯水場に流下された水を用いて発電をし、当該発電により得られた電力を前記電力市場に売電する揚水発電設備と、
当該揚水発電設備に対する揚水及び発電のタイミングを制御する情報処理システムと、
を備える揚水発電システムであって、
前記情報処理システムは、
気象等情報を少なくとも含む入力パラメータ情報を取得する取得手段と、
前記入力パラメータ情報を用いて前記電力市場における予測電力価格を求める予測手段と、
前記予測電力価格に基づいて、当該揚水発電設備の用水及び発電のタイミングを制御する制御手段と、
を有する揚水発電システム。
【請求項2】
前記揚水発電設備は、
前記電力市場から買電した電力を用いて駆動して、前記下部貯水場から前記上部貯水場に揚水し、
前記上部貯水場から前記下部貯水場に流下された水を用いて駆動して、発電をする、
コアレスモータ、
を有する請求項1に記載の揚水発電システム。
【請求項3】
所定の電力市場から買電した電力を用いて下部貯水場から上部貯水場に揚水をし、前記上部貯水場から前記下部貯水場に流下された水を用いて発電をし、当該発電により得られた電力を前記電力市場に売電する揚水発電設備に対して、揚水及び発電のタイミングを制御する情報処理システムであって、
気象等情報を少なくとも含む入力パラメータ情報を取得する取得手段と、
前記入力パラメータ情報を用いて前記電力市場における予測電力価格を求める予測手段と、
前記予測電力価格に基づいて、当該揚水発電設備の用水及び発電のタイミングを制御する制御手段と、
を有する情報処理システム。
【請求項4】
前記制御手段は、
第1基準よりも前記予測電力価格が高い時間帯においては前記揚水発電設備が発電をするように制御し、
当該第1基準以下の第2基準よりも前記予測電力価格が低い時間帯においては前記揚水発電設備が陽水をするように制御する、
請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記予測手段は、
所定の機械学習の結果得られたモデルであって、前記入力パラメータ情報を入力すると前記予測電力価格を出力するモデルを用いて、
当該予測電力価格を求める、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記モデルは、
前記入力パラメータ情報のうち、前記気象等情報を少なくとも含む情報を入力すると、前記電力市場における需要サイド及び供給サイドの夫々の動向を出力する第1モデルと、
前記第1モデルの出力を少なくとも含む情報を入力すると、前記予測電力価格を出力する第2モデルと、
を有する請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記所定の機械学習を実行することで、前記モデルを生成又は更新をする学習手段
をさらに備える請求項5又は6に記載の情報処理システム。
【請求項8】
所定の電力市場から買電した電力を用いて下部貯水場から上部貯水場に揚水をし、前記上部貯水場から前記下部貯水場に流下された水を用いて発電をし、当該発電により得られた電力を前記電力市場に売電する揚水発電設備に対して、揚水及び発電のタイミングを制御する情報処理システムが実行する情報処理方法であって、
気象等情報を少なくとも含む入力パラメータ情報を取得する取得ステップと、
前記入力パラメータ情報を用いて前記電力市場における予測電力価格を求める予測ステップと、
前記予測電力価格に基づいて、当該揚水発電設備の用水及び発電のタイミングを制御する制御ステップと、
を含む情報処理方法。
【請求項9】
所定の電力市場から買電した電力を用いて下部貯水場から上部貯水場に揚水をし、前記上部貯水場から前記下部貯水場に流下された水を用いて発電をし、当該発電により得られた電力を前記電力市場に売電する揚水発電設備に対して、揚水及び発電のタイミングを制御するコンピュータに、
気象等情報を少なくとも含む入力パラメータ情報を取得する取得ステップと、
前記入力パラメータ情報を用いて前記電力市場における予測電力価格を求める予測ステップと、
前記予測電力価格に基づいて、当該揚水発電設備の用水及び発電のタイミングを制御する制御ステップと、
を含む制御処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚水発電システム、情報処理システム及び情報処理方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力会社は、ダム等の大型設備を用いた揚水発電システムについて、発電計画を立案していた(例えば、特許文献1及び2参照)。
ところで、近年、従来の電力会社とは別に、電力市場で電力売買をすることを目的とした発電システムを所有したり運営するユーザが増加している。このような発電システムとしては、太陽光発電のシステムが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-014262号公報
【特許文献2】特開2019-525705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、電力市場での電力売買を目的とした揚水発電システムの実現が要望されているが、上述の特許文献1及ぶ2を含め従来の技術はあくまでも大掛かりな設備を前提としたものであり、そのまま適用したとしても収益を最適化することは非常に困難であり、当該要望に応えることができない状況である。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、電力市場で電力売買をして収益の最適化を図ることが可能な揚水発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の揚水発電システムは、
所定の電力市場から買電した電力を用いて下部貯水場から上部貯水場に揚水をし、前記上部貯水場から前記下部貯水場に流下された水を用いて発電をし、当該発電により得られた電力を前記電力市場に売電する揚水発電設備と、
当該揚水発電設備に対する揚水及び発電のタイミングを制御する情報処理システムと、
を備える揚水発電システムであって、
前記情報処理システムは、
気象等情報を少なくとも含む入力パラメータ情報を取得する取得手段と、
前記入力パラメータ情報を用いて前記電力市場における予測電力価格を求める予測手段と、
前記予測電力価格に基づいて、当該揚水発電設備の用水及び発電のタイミングを制御する制御手段と、
を有する。
【0007】
また、本発明の一態様の情報処理システムは、上述の本発明の一態様の揚水発電システムにおける情報処理システムに対応するものである。本発明の一態様の情報処理方法及びプログラムの夫々は、上述の本発明の一態様の情報処理システムに対応する方法及びプログラムの夫々である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電力市場で電力売買をして収益の最適化を図ることが可能な揚水発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の揚水発電システムの一実施形態の構成例の概要を示す図である。
【
図2】
図1の揚水発電システムのうち電力価格予測システム、即ち、本発明の情報処理システムの一実施形態の電力価格予測システムの構成例を示す図である。
【
図3】気象等情報のうち気温と電力価格との一日の推移の一例であって、日本国の冬の異なる2日の一例を示したものである。
【
図4】気象等情報のうち気温と電力価格との一日の推移の一例であって、日本国の春の異なる2日の一例を示したものである。
【
図5】気象等情報のうち気温と電力価格との一日の推移の一例であって、日本国の夏の異なる2日の一例を示したものである。
【
図6】気象等情報のうち気温と電力価格との一日の推移の一例であって、日本国の秋の異なる2日の一例を示したものである。
【
図7】
図2の電力価格予測システムのうち予測制御装置のハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【
図8】
図7の予測制御装置の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図9】
図8の発電/揚水制御部により決定された冬の揚水及び発電のタイミングの具体例を示す図である。
【
図10】
図8の発電/揚水制御部により決定された冬の揚水及び発電のタイミングの具体例であって、
図9とは異なる例を示す図である。
【
図11】
図8の発電/揚水制御部により決定された春の揚水及び発電のタイミングの具体例を示す図である。
【
図12】
図8の発電/揚水制御部により決定された春の揚水及び発電のタイミングの具体例であって、
図11とは異なる例を示す図である。
【
図13】
図8の発電/揚水制御部により決定された夏の揚水及び発電のタイミングの具体例を示す図である。
【
図14】
図8の発電/揚水制御部により決定された夏の揚水及び発電のタイミングの具体例であって、
図13とは異なる例を示す図である。
【
図15】
図8の発電/揚水制御部により決定された秋の揚水及び発電のタイミングの具体例を示す図である。
【
図16】
図8の発電/揚水制御部により決定された秋の揚水及び発電のタイミングの具体例であって、
図15とは異なる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の揚水発電システムの一実施形態の構成例の概要を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の揚水発電システムは、揚水発電設備1と、本発明の情報処理システムの一実施形態である電力価格予測システム2と、から構成されている。
【0011】
揚水発電設備1は、水車可逆式発電機11と、上部タンク12と、下部タンク13とを含むように構成されている。
発電時には、水車可逆式発電機11は、上部タンク12から下部タンク13に流下された水により水車を回転させることで発電する。水車可逆式発電機11の発電により得られた電力は、所定の電力市場EMに売電される。
一方、揚水時には、水車可逆式発電機11は、電力市場EMから買電した電力により駆動する電動機(ポンプ)として機能して、下部タンク13から上部タンク12に揚水する。
【0012】
このように、本実施形態の揚水発電設備1は、貯水池とダムを用いた従来の大型のものとは異なり、上部タンク12及び下部タンク13を用いた原則50KW以下の小型のものであり、電力市場EMで電力を売買することを目的とした一般的なユーザでも所有や管理が可能となっている。
このような小型の揚水発電設備1の水車可逆式発電機11としては、発電効率が優れたものが要求されるため、本実施形態ではトルクの小さいコアレスモータを採用している。
【0013】
具体的には例えば、上部タンク12から下部タンク13までの総落差は13.0mであり、損失落差は3.0mであり、有効落差は10.0mであるものとする。
また、上部タンク12及び下部タンク13の容量は50tであり、サイクル時間は1hrであるものとする。従って、流下する水の流量は50.00t/hr、即ち0.014m^2/sであるものとする。
この場合、本実施形態の揚水発電設備1の発電出力は、次の式(1)に示すように1.0kWになる。
9.8×0.014×10×0.82×0.9・・・(1)
このため、本実施形態の揚水発電設備1の1年間の発電電力量は、設備利用率を0.94とすると、次の式(2)に示すように、8245.1kWhとなる。
1.0kW×8208hr・・・(2)
【0014】
ところで、日本国の電源構成の変化とともに、日中のみしか発電しない太陽光発電の大量設置が続いたため、日本国の電力市場EM(例えばJEPX(登録商標))の日中の電力取引価格(以下、単に「電力価格」と呼ぶ)が大幅な変動を続けている状況である。
具体的には例えば、1日のうちでの価格差は変動の大きい夏や冬では50円程度となるのが常態化している他、春や秋でも20乃至30円の変動幅となっている。
【0015】
そこで、本実施形態の電力価格予測システム2は、AI等を用いて、電力市場EMにおける電力価格を予測し、その予測結果に基づいて発電/揚水のタイミングを決定して、発電/揚水の切替指示を揚水発電設備1に対して出力する。
具体的には、電力価格予測システム2は、電力価格の高い時間帯では発電の指示を揚水発電設備1に出力する一方、電力価格の安い時間帯では揚水の指示を揚水発電設備1に出力する。このようにして、電力価格予測システム2は、揚水発電設備1に対して最適な揚水時間及び発電時間を制御する。
これにより、本実施形態の揚水発電システムは、結果的に蓄電システムとして機能し、利益の極大化(収益の最適化)を図ることができる。
【0016】
さらに、このような本実施形態の揚水発電システムを複数用意して、夫々を地域の小規模分散電源として採用することができる。その際、例えばブロックチーン技術を用いた制御を行うことで、地域の安定的な電力供給の一役を担うことが可能になる。
【0017】
図2は、
図1の揚水発電システムのうち電力価格予測システム、即ち、本発明の情報処理システムの一実施形態の電力価格予測システムの構成例を示す図である。
図2に示すように、本実施形態の電力価格予測システム2は、学習装置21と、当該学習装置21により生成又は更新されるAI22と、当該AI22を用いる予測制御装置23と、を備えている。
【0018】
学習装置21は、ディープラーニング等の所定手法の機械学習を実行することで、所定の入力パラメータ情報を入力すると電力価格を予測(出力)するAI22を生成又は更新する。
生成とは、最初の学習により得られることをいい、更新とは、2回目以降の再学習により得られることをいう。
【0019】
機械学習の手法は、特に限定されないが、ここでは例示として1つの簡単な手法について説明する。
即ち、気候や気象の情報(以下、「気象等情報」と呼ぶ)と、現状の電力価格(例えばJEPX(登録商標)での電力取引価格)の推移との間には、大きな関連性があるとされている。
【0020】
そこで、本発明者は、気象等情報と電力価格との夫々の実績(例えば
図3乃至
図6の実績)に基づいて、気象等情報がどのように影響するかを考察した。
【0021】
図3は、気象等情報のうち気温と電力価格との一日の推移の一例であって、日本国の冬の異なる2日の一例を示したものである。
図3(A)は、冬の晴れた日の一例である。この日は、最高気温:8.4℃、最低気温:-3.5℃、日照時間:8.9時間、最高日射量:2.03(MJ/m^2:12時)であった。
図3(B)は、冬の雨の日の一例である。この日は、最高気温:7.2℃、最低気温:4.3℃、日照時間:0時間、最高日射量:0.29(MJ/m^2:12時)であった。
図3(A)及び(B)共に、横軸は時間を示し、縦軸は電力価格又は気温を示している。実線のグラフは、気温のグラフであり、破線のグラフは、電力価格である。
図3(B)に示すように、冬の雨の日の日中(特に午前中)でも、気温が6度程度と低く日照時間も少ないことから、需要サイドの電力の使用量(例えばエアコンの稼働状況)は高まると判断される。また、供給サイド(例えば太陽光発電)については、日射時間も最高日射量も少ないので、発電量は必然的に少なくなる。このように、冬の雨の日については、需要サイドは電力の使用量が多くなるのに対して、供給サイドは電力の発電量は少なくなる。その結果、電力価格は高騰(午前中は80円程度)している。
一方、
図3(A)に示すように、冬でも晴れていると、需要サイドの電力の使用量(例えばエアコンの稼働状況)はそこまで高くならないと判断される。また、供給サイド(例えば太陽光発電)については、日射時間も最高日射量も多くなるので、発電量は必然的に多くなる。このように、冬の晴の日については、需要サイドは電力の使用量がさほど多くならないのに対して、供給サイドは電力の発電量は多くなる。その結果、電力価格はさほど上がらない(夕食時間の50円程度が最高)ことになる。
【0022】
図4は、気象等情報のうち気温と電力価格との一日の推移の一例であって、日本国の春の異なる2日の一例を示したものである。
図4(A)は、春の晴れた日の一例である。この日は、最高気温:21.7℃、最低気温:9.7℃、日照時間:11.8時間、最高日射量:3.29(MJ/m^2:12時)であった。
図4(B)は、春の雨の日の一例である。この日は、最高気温:9.8℃、最低気温:6.7℃、日照時間:0時間、最高日射量:0.45(MJ/m^2:12時)であった。
図4(A)及び(B)共に、横軸は時間を示し、縦軸は電力価格又は気温を示している。実線のグラフは、気温のグラフであり、破線のグラフは、電力価格である。
ここで、需要サイドの点からすると、春は冬に対してエアコンの需要はさほどなくなり、需要サイドの電力の使用量(例えばエアコンの稼働状況)も春は冬に対して低くなると判断される。
このような状況で、
図4(A)に示すように、春の晴れた日は、供給サイド(例えば太陽光発電)については、日射時間も最高日射量も多くなるので、発電量は必然的に多くなる。このように、春の晴れの日は、冬の晴れの日よりもさらに需要サイドは電力の使用量が低くなるのに対して、供給サイドは電力の発電量は多くなる。その結果、電力価格は低くなる(昼の12時では10円まで下がる)ことになる。
一方、
図4(B)に示すように、春の雨の日は、供給サイド(例えば太陽光発電)については、日射時間も最高日射量も少ないので、発電量は必然的に少なくなる。ただし、冬の雨の日に比べて、需要サイドの電力の使用量はさほど多くない。その結果、電力価格は、春の晴れの日よりも高くなるが、冬の雨の日と比べて低くなる。
【0023】
図5は、気象等情報のうち気温と電力価格との一日の推移の一例であって、日本国の夏の異なる2日の一例を示したものである。
図5(A)は、夏の晴れた日の一例である。この日は、最高気温:37.0℃、最低気温:25.4℃、日照時間:11.5時間、最高日射量:3.31(MJ/m^2:12時)であった。
図5(B)は、夏の曇りのち雨の日の一例である。この日は、最高気温:28.5℃、最低気温:22.7℃、日照時間:0時間、最高日射量:1.11(MJ/m^2:12時)であった。
図5(A)及び(B)共に、横軸は時間を示し、縦軸は電力価格又は気温を示している。実線のグラフは、気温のグラフであり、破線のグラフは、電力価格である。
ここで、需要サイドの点からすると、夏は春に対してエアコンの需要は高くなり、需要サイドの電力の使用量(例えばエアコンの稼働状況)も夏は春に対して高くなると判断される。
このような状況で、
図5(A)に示すように、夏の晴れた日は、供給サイド(例えば太陽光発電)については、日射時間も最高日射量も多くなることから、発電量は必然的に多くなるものの、需要サイドのエアコンの需要に追い付けないため、電力価格は高騰する(特に夕食時間帯には200円まで跳ね上がる)。
一方、
図5(B)に示すように、夏の(曇りのち)雨の日は、供給サイド(例えば太陽光発電)については、日射時間も最高日射量も少ないので、発電量は必然的に少なくなるものの、夏の晴れの日に比べて、需要サイドの電力の使用量はさほど多くない。その結果、電力価格は、夏の晴れの日よりも低くなる。
【0024】
図6は、気象等情報のうち気温と電力価格との一日の推移の一例であって、日本国の秋の異なる2日の一例を示したものである。
図6(A)は、秋の晴れた日の一例である。この日は、最高気温:20.7℃、最低気温:9.7℃、日照時間:9.7時間、最高日射量:2.63(MJ/m^2:12時)であった。
図6(B)は、夏の曇りのち雨の日の一例である。この日は、最高気温:13.3℃、最低気温:11.3℃、日照時間:0時間、最高日射量:0.23(MJ/m^2:12時)であった。
図6(A)及び(B)共に、横軸は時間を示し、縦軸は電力価格又は気温を示している。実線のグラフは、気温のグラフであり、破線のグラフは、電力価格である。
ここで、需要サイドの点からすると、秋は夏に対してエアコンの需要は低くなり、需要サイドの電力の使用量(例えばエアコンの稼働状況)も秋は夏に対して低くなると判断される。この点、需要サイドの秋の動向は、春と似ているとも把握できる。
このような状況で、
図4(A)に示すように、秋の晴れた日は、供給サイド(例えば太陽光発電)については、日射時間も最高日射量も多くなることから、発電量は必然的に多くなるのに対して、需要サイドのエアコンの需要はないため、電力価格は暴落する(特に昼12時頃には0円近くまで暴落する)。電力価格という点でみると、秋の動向は夏の動向と真逆になる。
一方、
図6(B)に示すように、夏の(曇りのち)雨の日は、供給サイド(例えば太陽光発電)については、日射時間も最高日射量も少ないので、発電量は必然的に少なくなるものの、夏の晴れの日に比べて、需要サイドの電力の使用量はさほど多くない。その結果、電力価格は、夏の晴れの日よりも低くなる。
【0025】
以上説明したように、気象等情報と電力価格とは関連性があるものの、単純な関連性ではなく、1段階目として、気象等情報と供給サイド(例えば太陽光発電)の動向との間の関連性(以下、「供給サイド関連性」と呼ぶ)と、気象等情報と需要サイド(例えばエアコンの稼働)の動向との間の関連性(以下、「需要サイド関連性」と呼ぶ)とが存在するものと把握される。
ここで、気象等情報は、単純に晴れとか日射量とかだけでなく、何年何月何日何時といった時間(季節という概念も含む)の情報も結び付けられている。即ち、気象等情報には、季節も含む時間情報が含まれている。
供給サイド関連性については、気象等情報のうち日照時間や日射量と、太陽光発電の発電量(供給サイドの動向)とが密接な関係となっていることは明確である。
需要サイド関連性については、気象等情報のうち、季節、天候、気温、湿度等の項目(情報)が、エアコン稼働状況(需要サイドの動向の一例)に大きな影響を及ぼしているとみられており、気象×人間の行動=生気象の研究の必要性が近年取りざたされている。
そして、2段階目として、供給サイド及び需要サイドの動向と、電力価格とが関連していると把握される。
【0026】
図2に戻り、そこで、本実施形態の学習装置21は、気象等情報と供給サイドの動向との組の過去の多数の実績、及び、気象等情報と需要サイドの動向との組の過去の多数の実績を学習用データとして取得する。
学習装置21は、これらの学習用データを用いて機械学習を実行する。これにより、気象等情報を入力パラメータ情報として入力すると、需要サイド及び供給サイドの夫々の動向を出力(予測)するAIが生成又は更新される。なお以下、このようなAIを「需給予測AI」と呼ぶ。
【0027】
また、上述したように、需要サイド及び供給サイドの夫々の動向と、電力価格との間に密接な関連性があることは明らかである。
そこで、学習装置21は、供給サイドの動向と電力価格との組の過去の多数の実績、及び、需要サイドの動向と電力価格との組の過去の多数の実績を学習用データとして取得する。
学習装置21は、これらの学習用データを用いて機械学習を実行する。これにより、需要サイド及び供給サイドの夫々の動向(需給予測AIの出力)を入力パラメータ情報として入力すると、電力価格を出力(予測)するAIが生成又は更新される。なお以下、このようなAIを「電力価格予測AI」と呼ぶ。
【0028】
以上の電力価格予測AIは簡単な一例であるが、実際には、電力価格の動向は、供給サイドの動向と需要サイドの動向の他、さらに、原油等の燃料価格、その時々の天候情報や燃料価格見通し、加えて天候不順等による人間の感覚や気分等の複数の要素が絡み合って、大きく変動するとみられる。
そこで、本実施形態では、学習装置21は、供給サイドの動向と電力価格との組の過去の多数の実績、及び、需要サイドの動向と電力価格との組の過去の多数の実績に加えて、さらに、これらの複数の要素と電力価格との組の過去の多数の実績を学習用データとして取得する。
学習装置21は、これらの学習用データを用いて機械学習を実行する。これにより、需要サイド及び供給サイドの夫々の動向、並びに他の1以上の要素を入力パラメータ情報として入力すると、電力価格を出力(予測)する電力価格予測AIが生成又は更新される。
【0029】
以上まとめると、本実施形態では、需給予測AIと電力価格予測AIの2段階からなるAIが、AI22として学習装置21により生成又は更新される。
【0030】
予測制御装置23は、気象等情報を少なくとも含む入力パラメータ情報を取得すると、当該入力パラメータ情報をAI22に入力して電力価格を予測(出力)し、その予測した電力価格に基づいて発電/揚水のタイミングを決定して、そのタイミングでの発電/揚水の切替指示を、揚水発電設備1に対して出力する。
【0031】
図7は、
図2の電力価格予測システムのうち予測制御装置のハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【0032】
予測制御装置23は、CPU(Central Processing Unit)31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memoy)33と、バス34と、入出力インターフェース35と、入力部36と、出力部37と、記憶部38と、通信部39と、ドライブ40と、を備えている。
【0033】
CPU31は、ROM32に記録されているプログラム、又は記憶部38からRAM33にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM33には、CPU31が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0034】
CPU31、ROM32及びRAM33は、バス34を介して相互に接続されている。このバス34にはまた、入出力インターフェース35も接続されている。入出力インターフェース35には、入力部36、出力部37、記憶部38、通信部39及びドライブ40が接続されている。
【0035】
入力部36は、各種ハードウェア釦等で構成され、操作者の指示操作に応じて各種情報を入力する。
出力部37は、液晶等のディスプレイにより構成され、各種画像を表示する。
【0036】
記憶部38は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各種データを記憶する。
通信部39は、インターネットを含むネットワークを介して他の装置(
図2に示した学習装置21等)との間で行う通信を制御する。
【0037】
ドライブ40は、必要に応じて設けられる。ドライブ40には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア41が適宜装着される。ドライブ40によってリムーバブルメディア41から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部38にインストールされる。また、リムーバブルメディア41は、記憶部38に記憶されている各種データも、記憶部38と同様に記憶することができる。
【0038】
なお、図示はしないが、学習装置21も
図7と同様のハードウェア構成を有している。
【0039】
図8は、
図7の予測制御装置の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0040】
図4に示すように、予測制御装置23には、パラメータ取得部51と、予測部52と、修正可否判定部53と、スイッチ54と、予測修正部55と、発電/揚水制御部56と、が設けられている。
【0041】
パラメータ取得部51は、気象等情報を少なくとも含む入力パラメータ情報を外部から取得する。
予測部52は、入力パラメータ情報をAI22に入力して電力価格を予測(出力)する。
具体的には例えば、本実施形態では学習装置21(
図2)により、AI22として、需給予測AI221と電力価格予測AI222とが生成又は更新されて、予測部52に提供される。
予測部52は、入力パラメータ情報のうち、気象等情報の少なくとも一部を含む情報を需給予測AI221に入力させ、当該需給予測AI221の出力、即ち、需要サイド及び供給サイドの夫々の予測動向を取得する。
予測部52は、需給予測AI221の出力、即ち、需要サイド及び供給サイドの夫々の予測動向を少なくとも含む情報を電力価格予測AI222に入力させ、当該電力価格予測AI222の出力、即ち電力価格の予測値を外部に出力する。
【0042】
ここで、本実施形態の予測制御装置23は、例えば1時間毎に、電力価格の予測値と電力価格の実価格とを比較し、予測値を修正する必要がある場合は他の予測方法(回帰分析等)により調整や修正をする。
このため、予測制御装置23には、修正可否判定部53と、スイッチ54と、予測修正部55とが設けられている。
【0043】
修正可否判定部53は、予測部52から出力された電力価格の予測値と、電力市場EMから取得した電力価格の実価格とを比較し、当該予測値の修正可否を判定する。
修正可否判定部53は、修正不要と判断した場合、スイッチ54の出力を発電/揚水制御部56側に切替える。これにより、予測部52から出力された電力価格の予測値は、発電/揚水制御部56に提供される。
これに対して、修正可否判定部53は、修正不要と判断した場合、スイッチ54の出力を予測修正部55側に切替える。これにより、予測部52から出力された電力価格の予測値は、予測修正部55に提供される。
予測修正部55は、予測部52から出力された電力価格の予測値に対して、他の予測方法(回帰分析等)により調整や修正をしたうえで、発電/揚水制御部56に提供する。
【0044】
発電/揚水制御部56は、電力価格の予測値に基づいて、揚水及び発電のタイミングを決定して、当該タイミングに発電/揚水の切替指示を揚水発電設備1に対して出力する。
【0045】
具体的には例えば、発電/揚水制御部56は、最大4時間サイクルの揚水発電設備1を利用するものとして、揚水及び発電のタイミングに関しては、揚水効率と発電効率分を減じる必要があるため、揚水→発電→揚水のサイクルの夫々で、65円以上の値差が生じる時間帯のうち、最安値のタイミングを揚水のタイミングとして決定する一方、最高値のタイミングを発電のタイミングとして決定する。
発電/揚水制御部56における電力価格の予測値の確定タイミングについては、気象等情報に関しては最長でも6時間間隔で最新の情報をアップデートしたうえで予測部52に予測させることで、確定していく。
加えて、上述したように、修正可否判定部53は、1時間毎に電力価格の予測値と実価格とを比較する。修正可否判定部53により修正が必要と判定された場合、予測修正部55は、他の予測方法(回帰分析など)により予測値の調整や修正をする。
【0046】
発電/揚水制御部56により決定された、春夏秋冬における揚水及び発電のタイミングの具体例が、
図9乃至
図16に示されている。
【0047】
図9は、
図8の発電/揚水制御部により決定された冬の揚水及び発電のタイミングの具体例を示す図である。
図9(A)には、入力パラメータ情報としての気象等情報の一部として、気温と日射量の夫々の予報値が示されている。
図9(B)には、
図9(A)の入力パラメータ情報を用いて予測された電力価格の予測値と、当該予測値に基づいて決定された揚水及び発電のタイミングが示されている。同図中、密な右上りのハッチング(以下、「右上りハッチング」と呼ぶ)の時間帯は揚水(蓄電)の時間帯を示しており、右下りのハッチング(以下、「右下りハッチング」と呼ぶ)の時間帯は発電(売電)の時間帯を示している。なお、疎な右上がりのハッチング(以下、「疎ハッチング」と呼ぶ)の時間帯は、揚水も発電も行われない予備時間帯である。
即ち、
図9の例では、
図8のパラメータ取得部51は、季節が冬という情報と、
図9(A)に示す気温と日射量の夫々の予報値とを少なくとも含む入力パラメータ情報を取得した。予測部52は、この入力パラメータ情報を用いて、
図9(B)に示すように、電力価格の予測値を1時間間隔で予測した。発電/揚水制御部56は、当該予測値に基づいて、
図9(B)に示すように、揚水及び発電のタイミングを決定した。
【0048】
図10は、
図8の発電/揚水制御部により決定された冬の揚水及び発電のタイミングの具体例であって、
図9とは異なる例を示す図である。
図10(A)には、入力パラメータ情報としての気象等情報の一部として、気温と日射量の夫々の予報値が示されている。
図10(B)には、
図10(A)の入力パラメータ情報を用いて予測された電力価格の予測値と、当該予測値に基づいて決定された揚水及び発電のタイミングが示されている。同図中、右上りハッチングの時間帯は揚水(蓄電)の時間帯を示しており、右下りハッチングの時間帯は発電(売電)の時間帯を示している。なお、疎ハッチングの時間帯は、揚水も発電も行われない予備時間帯である。
即ち、
図10の例では、
図8のパラメータ取得部51は、季節が冬という情報と、
図10(A)に示す気温と日射量の夫々の予報値とを少なくとも含む入力パラメータ情報を取得した。予測部52は、この入力パラメータ情報を用いて、
図10(B)に示すように、電力価格の予測値を1時間間隔で予測した。発電/揚水制御部56は、当該予測値に基づいて、
図10(B)に示すように、揚水及び発電のタイミングを決定した。
【0049】
図11は、
図8の発電/揚水制御部により決定された春の揚水及び発電のタイミングの具体例を示す図である。
図11(A)には、入力パラメータ情報としての気象等情報の一部として、気温と日射量の夫々の予報値が示されている。
図11(B)には、
図11(A)の入力パラメータ情報を用いて予測された電力価格の予測値と、当該予測値に基づいて決定された揚水及び発電のタイミングが示されている。同図中、右上りハッチングの時間帯は揚水(蓄電)の時間帯を示しており、右下りハッチングの時間帯は発電(売電)の時間帯を示している。なお、疎ハッチングの時間帯は、揚水も発電も行われない予備時間帯である。
即ち、
図11の例では、
図8のパラメータ取得部51は、季節が春という情報と、
図11(A)に示す気温と日射量の夫々の予報値とを少なくとも含む入力パラメータ情報を取得した。予測部52は、この入力パラメータ情報を用いて、
図11(B)に示すように、電力価格の予測値を1時間間隔で予測した。発電/揚水制御部56は、当該予測値に基づいて、
図11(B)に示すように、揚水及び発電のタイミングを決定した。
【0050】
図12は、
図8の発電/揚水制御部により決定された春の揚水及び発電のタイミングの具体例であって、
図11とは異なる例を示す図である。
図12(A)には、入力パラメータ情報としての気象等情報の一部として、気温と日射量の夫々の予報値が示されている。
図12(B)には、
図12(A)の入力パラメータ情報を用いて予測された電力価格の予測値と、当該予測値に基づいて決定された揚水及び発電のタイミングが示されている。同図中、右上りハッチングの時間帯は揚水(蓄電)の時間帯を示しており、右下りハッチングの時間帯は発電(売電)の時間帯を示している。なお、疎ハッチングの時間帯は、揚水も発電も行われない予備時間帯である。
即ち、
図12の例では、
図8のパラメータ取得部51は、季節が春という情報と、
図12(A)に示す気温と日射量の夫々の予報値とを少なくとも含む入力パラメータ情報を取得した。予測部52は、この入力パラメータ情報を用いて、
図12(B)に示すように、電力価格の予測値を1時間間隔で予測した。発電/揚水制御部56は、当該予測値に基づいて、
図11(B)に示すように、揚水及び発電のタイミングを決定した。
【0051】
図13は、
図8の発電/揚水制御部により決定された夏の揚水及び発電のタイミングの具体例を示す図である。
図13(A)には、入力パラメータ情報としての気象等情報の一部として、気温と日射量の夫々の予報値が示されている。
図13(B)には、
図13(A)の入力パラメータ情報を用いて予測された電力価格の予測値と、当該予測値に基づいて決定された揚水及び発電のタイミングが示されている。同図中、右上りハッチングの時間帯は揚水(蓄電)の時間帯を示しており、右下りハッチングの時間帯は発電(売電)の時間帯を示している。なお、疎ハッチングの時間帯は、揚水も発電も行われない予備時間帯である。
即ち、
図13の例では、
図8のパラメータ取得部51は、季節が夏という情報と、
図13(A)に示す気温と日射量の夫々の予報値とを少なくとも含む入力パラメータ情報を取得した。予測部52は、この入力パラメータ情報を用いて、
図13(B)に示すように、電力価格の予測値を1時間間隔で予測した。発電/揚水制御部56は、当該予測値に基づいて、
図13(B)に示すように、揚水及び発電のタイミングを決定した。
【0052】
図14は、
図8の発電/揚水制御部により決定された夏の揚水及び発電のタイミングの具体例であって、
図13とは異なる例を示す図である。
図14(A)には、入力パラメータ情報としての気象等情報の一部として、気温と日射量の夫々の予報値が示されている。
図14(B)には、
図14(A)の入力パラメータ情報を用いて予測された電力価格の予測値と、当該予測値に基づいて決定された揚水及び発電のタイミングが示されている。同図中、右上りハッチングの時間帯は揚水(蓄電)の時間帯を示しており、右下りハッチングの時間帯は発電(売電)の時間帯を示している。なお、疎ハッチングの時間帯は、揚水も発電も行われない予備時間帯である。
即ち、
図14の例では、
図8のパラメータ取得部51は、季節が夏という情報と、
図14(A)に示す気温と日射量の夫々の予報値とを少なくとも含む入力パラメータ情報を取得した。予測部52は、この入力パラメータ情報を用いて、
図14(B)に示すように、電力価格の予測値を1時間間隔で予測した。発電/揚水制御部56は、当該予測値に基づいて、
図14(B)に示すように、揚水及び発電のタイミングを決定した。
【0053】
図15は、
図8の発電/揚水制御部により決定された秋の揚水及び発電のタイミングの具体例を示す図である。
図15(A)には、入力パラメータ情報としての気象等情報の一部として、気温と日射量の夫々の予報値が示されている。
図15(B)には、
図15(A)の入力パラメータ情報を用いて予測された電力価格の予測値と、当該予測値に基づいて決定された揚水及び発電のタイミングが示されている。同図中、右上りハッチングの時間帯は揚水(蓄電)の時間帯を示しており、右下りハッチングの時間帯は発電(売電)の時間帯を示している。なお、疎ハッチングの時間帯は、揚水も発電も行われない予備時間帯である。
即ち、
図15の例では、
図8のパラメータ取得部51は、季節が秋という情報と、
図15(A)に示す気温と日射量の夫々の予報値とを少なくとも含む入力パラメータ情報を取得した。予測部52は、この入力パラメータ情報を用いて、
図15(B)に示すように、電力価格の予測値を1時間間隔で予測した。発電/揚水制御部56は、当該予測値に基づいて、
図15(B)に示すように、揚水及び発電のタイミングを決定した。
【0054】
図16は、
図8の発電/揚水制御部により決定された冬の揚水及び発電のタイミングの具体例であって、
図15とは異なる例を示す図である。
図16(A)には、入力パラメータ情報としての気象等情報の一部として、気温と日射量の夫々の予報値が示されている。
図16(B)には、
図16(A)の入力パラメータ情報を用いて予測された電力価格の予測値と、当該予測値に基づいて決定された揚水及び発電のタイミングが示されている。同図中、右上りハッチングの時間帯は揚水(蓄電)の時間帯を示しており、右下りハッチングの時間帯は発電(売電)の時間帯を示している。なお、疎ハッチングの時間帯は、揚水も発電も行われない予備時間帯である。
即ち、
図16の例では、
図8のパラメータ取得部51は、季節が冬という情報と、
図16(A)に示す気温と日射量の夫々の予報値とを少なくとも含む入力パラメータ情報を取得した。予測部52は、この入力パラメータ情報を用いて、
図16(B)に示すように、電力価格の予測値を1時間間隔で予測した。発電/揚水制御部56は、当該予測値に基づいて、
図16(B)に示すように、揚水及び発電のタイミングを決定した。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0056】
例えば、揚水発電設備は、上述の実施形態では、水車可逆式発電機11と、上部タンク12と、下部タンク13とを含むように構成されたが、特にこれに限定されない。
即ち、所定の電力市場から買電した電力を用いて下部貯水場から上部貯水場に揚水をし、前記上部貯水場から前記下部貯水場に流下された水を用いて発電をし、当該発電により得られた電力を前記電力市場に売電する揚水発電設備であれば足りる。
換言すると、所定の電力市場の一例が
図1の電力市場EMであり、上部貯水場の一例が
図1の上部タンク12であり、下部貯水場の一例が
図1の下部タンク13である。
そして、所定の電力市場と電力を売買するための発電設備という点では、従来のようなダムを用いた大掛かりな設備では不適であり、
図1の水車可逆式発電機11と、上部タンク12と、下部タンク13とを含むように構成された小型の揚水発電設備1が好適である。
さらに小型という点で、水車可逆式発電機11としては、コアレスモータが採用されると好適である。コアレスモータならば、電力市場から買電した電力を用いて駆動して、下部貯水場から上部貯水場に揚水をするための十分なトルクを発生すると共に、上部貯水場から下部貯水場に流下された水を用いて駆動して、発電をするためのトルクを十分に発生することが可能だからである。
【0057】
例えば、所定の電力市場の電力価格の予測値(以下、「予測電力価格」と呼ぶ)の予測手法は、上述の実施形態に特に限定されず、例えばルールベースを用いた手法でもよい。
しかしながら、電力価格の動向(変動)は、上述したように、需要サイドと供給サイドの夫々の動向が関連しており、需要サイドと供給サイドの夫々の動向は気象等情報が関連していることはわかるものの、これらがどの程度かつどのように関連しているのかについては未知な部分も存在する。また、これら以外の各種各様な要素、例えば、原油等の燃料価格、その時々の天候情報や燃料価格見通し、加えて天候不順等による人間の感覚や気分等の複数の要素が絡み合って、電力価格が大きく変動するとみられることは上述した通りである。
このようなことから鑑みると、予測電力価格を求める予測装置(システム)は、ディープラーニング型のAIによる開発が適していると判断される。
そして、このような開発により得られるAIモデルについては、その開発の中で適切な入力パラメータ情報が同定されていくため、上述の
図2のAI22(
図8の需給予測AI221及び電力価格予測AI222)に特に限定されない。
【0058】
また例えば、揚水発電設備に対する制御手法は、予測電力価格を用いるものであれば足り、上述の例に特に限定されない。
例えば、第1基準よりも予測電力価格が高い時間帯においては揚水発電設備が発電をするように制御し、当該第1基準以下の第2基準よりも予測電力価格が低い時間帯においては揚水発電設備が陽水をするように制御するような制御手法であれば、各種各様な制御手法を採用することができる。
【0059】
また例えば、電力価格予測システム2の構成は、上述の
図2の構成に特に限定されない。例えば、
図2の例では、学習装置21と、いわゆる推論装置としての予測制御装置23とは別々の装置とされたが、学習装置21に対応する学習部と、予測制御装置23に対応する推論部とを共に有する1つの装置とされてもよい。
【0060】
また例えば、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、
図8の予測制御装置23の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。
即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が情報処理システムに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に
図8の例に限定されない。例えば、各種処理の実行に必要となる機能ブロック及びデータベース(需給予測AI221及び電力価格予測AI222含む)の少なくとも一部を、他の情報処理装置(サーバ)に移譲させてもよい。逆に他の情報処理装置(サーバ)の機能ブロック及びデータベースを予測制御装置23等に移譲させてもよい。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0061】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。
また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えばサーバの他汎用のスマートフォンやパーソナルコンピュータであってもよい。
【0062】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される図示せぬリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。
【0063】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0064】
以上を換言すると、本発明が適用される揚水発電システムは、次のような構成を有していれば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される陽水発電システムは、
所定の電力市場(例えば
図1の電力市場EM)から買電した電力を用いて下部貯水場(例えば
図1の下部タンク13)から上部貯水場(例えば
図1の上部タンク12)に揚水をし、前記上部貯水場から前記下部貯水場に流下された水を用いて発電をし、当該発電により得られた電力を前記電力市場に売電する揚水発電設備(例えば
図1の揚水発電設備1)と、
当該揚水発電設備に対する揚水及び発電のタイミングを制御する情報処理システム(例えば
図1の電力価格予測システム2)と、
を備える揚水発電システムであって、
前記情報処理システムは、
気象等情報を少なくとも含む入力パラメータ情報を取得する取得手段(例えば
図8のパラメータ取得部51)と、
前記入力パラメータ情報を用いて前記電力市場における予測電力価格を求める予測手段(例えば
図8の予測部52)と、
前記予測電力価格に基づいて、当該揚水発電設備の用水及び発電のタイミングを制御する制御手段(例えば
図8の発電/揚水制御部56)と、
を有すれば足りる。
【0065】
ここで、前記揚水発電設備は、
前記電力市場から買電した電力を用いて駆動して、前記下部貯水場から前記上部貯水場に揚水をし、
前記上部貯水場から前記下部貯水場に流下された水を用いて駆動して、発電をする、
コアレスモータ(例えば
図1の水車可逆式発電機11)
を有することができる。
【0066】
また、本発明が適用される情報処理システムは、次のような構成を有していれば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される情報処理システムは、
所定の電力市場(例えば
図1の電力市場EM)から買電した電力を用いて下部貯水場(例えば
図1の下部タンク13)から上部貯水場(例えば
図1の上部タンク12)に揚水をし、前記上部貯水場から前記下部貯水場に流下された水を用いて発電をし、当該発電により得られた電力を前記電力市場に売電する揚水発電設備(例えば
図1の揚水発電設備1)に対して、揚水及び発電のタイミングを制御する情報処理システム(例えば
図1の電力価格予測システム2)であって、
気象等情報を少なくとも含む入力パラメータ情報を取得する取得手段(例えば
図8のパラメータ取得部51)と、
前記入力パラメータ情報を用いて前記電力市場における予測電力価格を求める予測手段(例えば
図8の予測部52)と、
前記予測電力価格に基づいて、当該揚水発電設備の用水及び発電のタイミングを制御する制御手段(例えば
図8の発電/揚水制御部56)と、
を備えれば足りる。
【0067】
ここで、前記制御手段は、
第1基準よりも前記予測電力価格が高い時間帯においては前記揚水発電設備が発電をするように制御し、
当該第1基準以下の第2基準よりも前記予測電力価格が低い時間帯においては前記揚水発電設備が陽水をするように制御する(例えば
図9乃至
図16に示すように制御する)、
ことができる。
【0068】
また、前記予測手段は、
所定の機械学習の結果得られたモデルであって、前記入力パラメータ情報を入力すると前記予測電力価格を出力するモデル(例えば
図2のAI22)を用いて、
当該予測電力価格を求める、
ことができる。
【0069】
さらに、前記モデルは、
前記入力パラメータ情報のうち、前記気象等情報を少なくとも含む情報を入力すると、前記電力市場における需要サイド及び供給サイドの夫々の動向を出力する第1モデル(例えば
図8の需給予測AI221)と、
前記第1モデルの出力を少なくとも含む情報を入力すると、前記予測電力価格を出力する第2モデル(例えば
図8の電力価格予測AI222)と、
を有するようにすることができる。
【0070】
また、前記所定の機械学習を実行することで、前記モデルを生成又は更新をする学習手段(例えば
図2の学習装置21)
をさらに備えることができる。
【符号の説明】
【0071】
1・・・揚水発電設備、2・・・電力価格予測システム、11・・・水車可逆式発電機、12・・・上部タンク、13・・・下部タンク、21・・・学習装置、22・・・AI、23・・・予測制御装置、31・・・CPU、32・・・ROM、33・・・RAM、34・・・バス、35・・・入出力インターフェース、36・・・入力部、37・・・出力部、38・・・記憶部、39・・・通信部、40・・・ドライブ、41・・・リムーバブルメディア、51・・・パラメータ取得部、52・・・予測部、53・・・修正可否判定部、54・・・スイッチ、55・・・予測修正部、56・・・発電/揚水制御部、211・・・需給予測AI、222・・・電力価格予測AI、EM・・・電力市場