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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008752
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】乳化処理柑橘果汁
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20240112BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20240112BHJP
   A23L 2/70 20060101ALI20240112BHJP
   A23L 29/25 20160101ALI20240112BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240112BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20240112BHJP
【FI】
A23L19/00 Z
A23L2/02 B
A23L2/00 K
A23L29/25
A23L5/00 K
A23L29/10
A23L2/70 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022119095
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
【テーマコード(参考)】
4B016
4B035
4B041
4B117
【Fターム(参考)】
4B016LC06
4B016LE05
4B016LG02
4B016LK03
4B016LK05
4B016LK09
4B016LP02
4B016LP04
4B016LP05
4B016LP11
4B035LC04
4B035LG05
4B035LG09
4B035LG13
4B035LG28
4B035LG32
4B035LK12
4B035LK13
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP41
4B035LP43
4B041LC04
4B041LD01
4B041LE08
4B041LH09
4B041LK08
4B041LK18
4B041LK30
4B041LP01
4B041LP04
4B041LP16
4B041LP25
4B117LC09
4B117LC15
4B117LE10
4B117LG02
4B117LG05
4B117LK07
4B117LK09
4B117LK10
4B117LK13
4B117LL06
4B117LP16
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】 本発明は、混濁果汁である柑橘果汁の濁度を低減した乳化処理柑橘果汁及びその製造方法等を提供する。
【解決手段】
柑橘果汁にポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は酵素分解レシチンを含有させ乳化処理することで、柑橘果汁の濁度を低減できることを見出し、本発明を完成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柑橘果汁と、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は酵素分解レシチンとを含む乳化組成物である乳化処理柑橘果汁であって、
乳化組成物全量に対して、アラビアガムが10重量%未満、多価アルコールが20重量%以下であり、
濁度(OD650)が、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び酵素分解レシチン非存在下で乳化処理した柑橘果汁の濁度に比べて、低減している乳化処理柑橘果汁。
【請求項2】
柑橘果汁100重量%に対し、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.5重量%以上含み、かつ酵素分解レシチンを0.5重量%以上含む、請求項1記載の乳化処理柑橘果汁。
【請求項3】
ポリグリセリン脂肪酸エステル及び酵素分解レシチン非存在下で乳化処理した柑橘果汁の濁度を100%とした場合に、濁度が80%未満である、請求項1又は2記載の乳化処理柑橘果汁。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の乳化処理柑橘果汁を含む飲食品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の乳化処理柑橘果汁を含む容器詰め飲料。
【請求項6】
柑橘果汁にポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は酵素分解レシチンを含有させ乳化処理して乳化組成物である乳化処理柑橘果汁を得る工程を含み、
乳化組成物全量に対して、アラビアガムが10重量%未満、多価アルコールが20重量%以下であり、
濁度(OD650)が、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び酵素分解レシチン非存在下で乳化処理した柑橘果汁の濁度に比べて、低減している乳化処理柑橘果汁の製造方法。
【請求項7】
柑橘果汁を遠心分離処理して液部を回収する工程を含む、請求項6記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濁度を低減した乳化処理柑橘果汁及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
果実を搾汁して得られるストレート果汁は、パルプ質、ペクチン等がコロイド状をなして混濁している混濁果汁で、特に柑橘類から得られる混濁果汁は、テルペン類等の水不溶性の香気成分を含んでおり、混濁果汁の清澄化方法として、酵素を用いる方法が知られている(非特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、10~30重量%のアラビアガムを含有する平均粒子径0.704~0.733μmの範囲内の乳化組成物を混濁柑橘属果汁と混在させると、混濁柑橘属果汁の沈殿をマスキングすることができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6671094号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本食品工業学会誌,第13巻,第7号,269-273,1966年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、混濁果汁である柑橘果汁の濁度を低減した乳化処理柑橘果汁及びその製造方法等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、柑橘果汁にポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は酵素分解レシチンを含有させ乳化処理することで、柑橘果汁の濁度を低減できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]の態様に関する。
[1]柑橘果汁と、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は酵素分解レシチンとを含む乳化組成物である乳化処理柑橘果汁であって、
乳化組成物全量に対して、アラビアガムが10重量%未満、多価アルコールが20重量%以下であり、
濁度(OD650)が、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び酵素分解レシチン非存在下で乳化処理した柑橘果汁の濁度に比べて、低減している乳化処理柑橘果汁。
[2]柑橘果汁100重量%に対し、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.5重量%以上含み、かつ酵素分解レシチンを0.5重量%以上含む、[1]記載の乳化処理柑橘果汁。
[3]ポリグリセリン脂肪酸エステル及び酵素分解レシチン非存在下で乳化処理した柑橘果汁の濁度を100%とした場合に、濁度が80%未満である、[1]又は[2]記載の乳化処理柑橘果汁。
[4][1]~[3]の何れかに記載の乳化処理柑橘果汁を含む飲食品。
[5][1]~[3]の何れかに記載の乳化処理柑橘果汁を含む容器詰め飲料。
[6]柑橘果汁にポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は酵素分解レシチンを含有させ乳化処理して乳化組成物である乳化処理柑橘果汁を得る工程を含み、
乳化組成物全量に対して、アラビアガムが10重量%未満、多価アルコールが20重量%以下であり、
濁度(OD650)が、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び酵素分解レシチン非存在下で乳化処理した柑橘果汁の濁度に比べて、低減している乳化処理柑橘果汁の製造方法。
[7]柑橘果汁を遠心分離処理して液部を回収する工程を含む、[6]記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、混濁果汁である柑橘果汁の濁度を低減した乳化処理柑橘果汁及びその製造方法を提供できるようになり、爽やかな柑橘風味を有し、清澄性を高めた飲料等を調製することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、柑橘果汁と、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は酵素分解レシチンとを含む乳化組成物である乳化処理柑橘果汁であって、乳化組成物全量に対して、アラビアガムが10重量%未満、多価アルコールが20重量%以下であり、濁度(OD650)が、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び酵素分解レシチン非存在下で乳化処理した柑橘果汁の濁度に比べて、低減している乳化処理柑橘果汁である。また、希釈後の溶液を冷解凍しても乳化粒子が壊れにくく、乳化粒子が均一に分散している水溶液を調製できる。
【0011】
本発明で原料とする柑橘果汁は、カンキツ属、キンカン属及びカラタチ属に含まれる果実で、例えば温州ミカン、オレンジ、ネーブル、グレープフルーツ、ブンタン、夏ミカン、ハッサク、日向夏、シークワーサー、レモン、ライム、ダイダイ、キンカン、ユズ、カボス等を搾汁して得られた混濁果汁であればよく、果汁100重量%のストレート果汁を使用できる。
【0012】
本発明に記載のポリグリセリン脂肪酸エステルは、本発明の濁度が低減した乳化処理柑橘果汁が得られれば特に限定されず、市販の食品用乳化剤を使用することができる。デカグリセリンモノカプレート、テトラグリセリンモノラウレート、ペンタグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノラウレート、ペンタグリセリンモノミリステート、デカグリセリンモノミリステート、ペンタグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンジステアレート、ペンタグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリンモノオレエート、デカグリセリンモノオレエート等が例示でき、一種又は二種類以上を使用できる。ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値(Hydrophile-Lipophile Balance Value)は、10~20が好ましく、12~18がより好ましく、13~16がさらに好ましい。
【0013】
ポリグリセリン脂肪酸エステル含有量は、本発明の濁度が低減した乳化処理柑橘果汁が得られれば特に限定されないが、果汁100重量%の柑橘果汁を100重量%とした場合に、0.5重量%以上が好ましく、0.7重量%以上20重量%以下がより好ましく、1.0重量%以上15重量%以下がさらに好ましく、1.5重量%以上10重量%以下が特に好ましい。また、酵素分解レシチン1重量部に対して、ポリグリセリン脂肪酸エステル含有量は0.1重量部以上12重量部以下が好ましく、0.2重量部以上10重量部以下がより好ましく、0.5重量部以上8量部以下がさらに好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルを含ませることで、混濁果汁の濁度を低減できる。
【0014】
本発明に記載の酵素分解レシチンは、本発明の濁度が低減した乳化処理柑橘果汁が得られれば特に限定されないが、大豆レシチン、ひまわりレシチン、卵黄レシチン等のレシチンを、ホスホリパーゼ等の酵素で分解した酵素分解レシチンで、市販品を使用できる。
【0015】
酵素分解レシチン含有量は、本発明の濁度が低減した乳化処理柑橘果汁が得られれば特に限定されないが、果汁100重量%の柑橘果汁を100重量%とした場合に、0.5重量%以上が好ましく、0.7重量%以上20重量%以下がより好ましく、1.0重量%以上15重量%以下がさらに好ましく、1.2重量%以上10重量%以下が特に好ましい。酵素分解レシチンを含ませることで、混濁果汁の濁度を低減できる。
【0016】
本発明の製造方法は、原料である柑橘果汁と、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は酵素分解レシチンとを含む原料を乳化処理することで、乳化組成物である、濁度が低減した乳化処理柑橘果汁が得られる。原料である柑橘果汁を遠心分離処理するのが好ましく、遠心分離前及び/又は遠心分離後に回収した液部に乳化剤を添加し、乳化処理してもよく、乳化剤はポリグリセリン脂肪酸エステル及び酵素分解レシチンを含むのが好ましい。柑橘果汁にポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は酵素分解レシチンを配合し、遠心分離後に回収した液部を乳化処理してもよく、柑橘果汁を遠心分離後に回収した液部にポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は酵素分解レシチンを配合し、乳化処理してもよく、柑橘果汁にポリグリセリン脂肪酸エステルを配合し、遠心分離後に回収した液部に酵素分解レシチンを配合し、乳化処理してもよく、柑橘果汁に酵素分解レシチンを配合し、遠心分離後に回収した液部にポリグリセリン脂肪酸エステルを配合し、乳化処理してもよいが、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、遠心分離前に配合するのが好ましく、また酵素分解レシチンは、ポリグリセリン脂肪酸エステルと同時期に配合するか又は遠心分離後に配合するのが好ましい。乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル及び酵素分解レシチンを両方含ませ乳化処理することで、希釈後の溶液を加熱殺菌しても、乳化粒子が安定的に分散状態を維持でき、沈殿を生じ難く、保存安定性が高い水溶液を調製できる。
【0017】
乳化処理は、前記成分を混合し、均質化すればよく、一般的な乳化方法で行うことができる。例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は酵素分解レシチンを溶解した柑橘果汁を、公知の乳化方法により乳化処理することで製造できる。乳化処理に用いる乳化装置としては、ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル等の高速回転型乳化装置、高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー等の高圧乳化装置、超音波式乳化装置、膜式乳化装置等を例示でき、二種類以上の装置を組み合わせてもよい。本発明は、常圧下での乳化処理で、微細な乳化粒子が均一に分散した乳化組成物を得ることが可能なため、特殊な減圧装置等を必要とせず、製造コストが安く、濁度が低減した乳化処理柑橘果汁を得ることができる。
【0018】
本発明では、乳化組成物全量に対して、アラビアガムが10重量%未満であり、好ましくは8重量%以下であり、例えば0.001~5重量%、0.002~3重量%又は0.005~1重量%であり、含まないのがより好ましい。また、果汁100重量%の柑橘果汁100重量%とした場合に、アラビアガムが0.02重量%未満であるのが好ましく、0.01重量%以下がより好ましく、例えば0.0001~0.005重量%、0.0002~0.003重量%又は0.005~0.001重量%であり、含まないのがより好ましい。
【0019】
本発明では、乳化組成物全量に対して、多価アルコールが20重量%以下であり、好ましくは15重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下であり、例えばグリセリン、プロピレングリコール等が0.01~8重量%、0.02~5重量%であり、含まないのがより好ましい。
【0020】
本発明の乳化組成物である乳化処理柑橘果汁中の乳化粒子径は特に限定されないが、平均粒子径は10~500nmが好ましく、15~400nmがより好ましく、20~300nmがさらに好ましい。乳化粒子の平均粒子径は、市販の粒度分布計等で測定することができる。本発明の乳化処理柑橘果汁は微細な乳化粒子径を有することで、果汁を清澄化でき、また、乳化粒子が壊れにくく、乳化安定性に優れており、該乳化処理柑橘果汁を添加した飲食品中で分散性がよい。
【0021】
本発明の濁度が低減している乳化処理柑橘果汁とは、濁度(OD650)が、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び酵素分解レシチン非存在下で乳化処理した柑橘果汁の濁度に比べて、低減している乳化処理柑橘果汁である。濁度の測定は、測定値が0.01~2.00程度になるように、例えば果汁1重量%の濃度の水溶液を調製し、分光光度計(UV-1900、株式会社島津製作所製)を用いて650nmの波長における吸収度(OD650、光路長:1cm)を測定する。値の高いものほど水溶液の清澄性が低く、値の低いものほど清澄性が高いことを意味する。濁度が低減している乳化処理柑橘果汁の濁度(OD650)は、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び酵素分解レシチン非存在下で乳化処理した柑橘果汁の濁度に比べて、低ければ特に限定されないが、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び酵素分解レシチン非存在下で乳化処理した柑橘果汁の濁度を100%とした場合に、80%未満が好ましく、50%未満がより好ましく、30%未満がさらに好ましく、10%未満が特に好ましい。また、果汁1重量%の濃度の水溶液の濁度(OD650)は、1.000未満が好ましく、0.800未満がより好ましく、0.500未満がさらに好ましく、0.300未満が特に好ましく、0.100未満が最も好ましく、濁度が低いほど、原料の果汁と比べ、清澄性が改善され、乳化粒子が溶液中で安定に分散し、希釈後の溶液を冷解凍しても乳化粒子が壊れにくく、乳化粒子の分散状態を維持でき、沈殿を生じ難く、保存安定性が高い水溶液を調製できる。本発明の乳化処理柑橘果汁は、さらに、ドラムドライ、エアードライ、スプレードライ、真空乾燥及び/又は凍結乾燥等を行い、濃縮品又は乾燥品として利用しても良い。
【0022】
本発明の乳化処理柑橘果汁は、希釈して喫することができ、各飲食品に添加して使用することができる。各飲食品に添加することにより、柑橘の爽やかな香りを付与し、通常の混濁柑橘果汁を使用した飲食品より清澄性を高めた各飲食品を製造できる。各飲食品への添加量は良好な官能が得られれば特に限定されないが、好ましくは0.01~50重量%、より好ましくは0.05~40重量%、さらに好ましくは0.1~20重量%である。添加する飲食品は特に限定されないが、非アルコール飲料、アルコール飲料等の飲料、スープ、ゼリー、キャンディ等が例示でき、透明度が求められる飲食品に好適であり、容器詰め飲料を調製でき、液状の飲食品中で乳化粒子が均一に分散し、透明度が高い。飲食品中の乳化処理柑橘果汁の果汁濃度は、ストレート換算で好ましくは0.01~50重量%、より好ましくは0.05~40重量%、さらに好ましくは0.1~20重量%である。
【実施例
【実施例0023】
混濁果汁である柚子果汁(果汁100重量%、株式会社つえエーピー製)100gに、乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルであるモノミリスチン酸デカグリセリルMVEX(HLB14.6、日光ケミカルズ株式会社製)5g及び酵素分解レシチンであるSLP-ホワイトリゾ(リン脂質含有量:92%以上、辻製油株式会社製)2g(実施例1-1)、モノミリスチン酸デカグリセリルMVEX 5gのみ(実施例1-2)又はSLP-ホワイトリゾ2gのみ(実施例1-3)を添加して、25℃で1時間攪拌して溶解させた後、ローター型遠心分離機を用いて遠心分離処理(5000×G、10分間)し、回収した液部の内各20gをホモジナイザー(ヒスコトロンNS-20、株式会社マイクロテック・ニチオン製)を用いて乳化処理(15,000rpm、1分間)することにより、各乳化処理柚子果汁(実施品1-1~1-3)を得た。果汁100重量%の柚子果汁を100重量%とした場合の各乳化剤の添加割合(重量%)を表1に示した。
【0024】
[比較例1]
乳化剤を添加しない以外は実施例1と同様に処理して得られたものを比較品1とした。
【実施例0025】
混濁果汁である柚子果汁(果汁100重量%、株式会社つえエーピー製)100gに、乳化剤として、酵素分解レシチンであるSLP-ホワイトリゾ2g(実施例2-1)若しくはポリグリセリン脂肪酸エステルであるモノミリスチン酸デカグリセリルMVEX 5g(実施例2-2)を添加し25℃で1時間攪拌して溶解させ、又は乳化剤は添加せず(実施例2-3)、ローター型遠心分離機を用いて遠心分離処理(5000×G、10分間)し、回収した液部の内各20gに、乳化剤として、モノミリスチン酸デカグリセリルMVEX 1g(実施例2-1)若しくはSLP-ホワイトリゾ0.4g(実施例2-2)、又はモノミリスチン酸デカグリセリルMVEX 1g及びSLP-ホワイトリゾ0.4g(実施例2-3)を添加して溶解させた後、ホモジナイザーを用いて乳化処理(15,000rpm、1分間)することにより、各乳化処理柚子果汁(実施品2-1~2-3)を得た。乳化剤の添加時期、及び果汁100重量%の柚子果汁を100重量%とした場合の各乳化剤の添加割合(%)を表2に示した。
【0026】
[評価試験1]
実施品1-1~1-3、2-1~2-3及び比較品1の1重量%水溶液(果汁1重量%)を調製して濁度を測定し、比較例1の濁度を100%とした場合の各実施品の濁度の割合を算出して表1に記載し、10%未満を◎:非常に濁度が低減されている、10%以上50%未満を○:濁度が低減されている、50%以上80%未満を△:やや濁度が低減されている、80%以上を×:濁度が低減されていない、として表1に記載し、濁度の低減における乳化剤の効果を評価した。さらに、1重量%水溶液(果汁1重量%)の耐熱性試験及び耐冷凍性試験を行い、試験後の濁度を測定し、試験前の濁度を100%とした場合の各試験後の濁度の割合を算出して表1に記載した。耐熱性試験又は耐冷凍性試験後の濁度に変化が少ない程良く、90%以上を◎:非常に耐性あり、60%以上90%未満を○:耐性あり、40%以上60%未満を△:やや耐性あり、40%未満を×:耐性なし、として表1に記載し、耐熱性又は耐冷凍性に対する耐性を評価した。尚、耐熱性試験又は耐冷凍性試験後の濁度に変化が少ないことは、試験後も乳化粒子が壊れず、乳化粒子が液中で均一に分散していることを意味し、特に、本耐熱性試験において熱耐性を有することは、果汁を飲料等に添加して製品とした場合に、安定的に分散状態を継続し、沈殿を生じ難く、保存安定性が高いことを意味する。
尚、濁度の測定は、分光光度計(UV-1900:株式会社島津製作所製)を用いて、光路長1cm、波長650nmの条件で光学密度650(OD650)を測定した。耐熱性試験は、121℃、20分間加熱処理し、耐冷凍性試験は、-20℃で24時間冷凍保存後(冷凍後)、解凍した。
また、各1重量%水溶液について、官能検査を実施した。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
乳化剤であるポリグリセリン脂肪酸エステル又は酵素分解レシチンを添加し、乳化処理することで、柚子果汁の濁度の低減がみられ、さらに、耐冷凍性も有する果汁添加水溶液が得られることが分かった。特に、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル及び酵素分解レシチンを両方遠心分離前に添加することで、混濁果汁について優れた清澄効果がみられると共に、耐熱性にも優れた果汁添加水溶液が得られることが分かった。
【0030】
また、乳化剤の添加時期は、遠心分離前後の何れでも混濁果汁の濁度の低減及び耐冷凍性に効果がみられたが、酵素分解レシチンとポリグリセリン脂肪酸エステルとは遠心分離前後で同時期に添加するか、又は遠心分離前後で別々に添加する場合は、酵素分解レシチンを遠心分離後に添加する方が清澄化及び耐熱性の何れにおいても優れた効果がみられた。
【0031】
官能については、実施品も比較品も1重量%水溶液で爽やかな柚子風味を有しており、乳化剤の影響はみられなかった。
【実施例0032】
混濁果汁である柚子果汁(果汁100重量%、株式会社つえエーピー製)100gをローター型遠心分離機を用いて遠心分離処理(5000×G、10分間)し、回収した液部の内70gに、ポリグリセリン脂肪酸エステルであるモノミリスチン酸デカグリセリルMVEXを0.5g(実施例3-1)、1.0g(実施例3-2)、1.5g(実施例3-3)若しくは各2.5g(実施例3-4~3-6)、酵素分解レシチンであるSLP-ホワイトリゾを0g(実施例3-1~3-3)、0.5g(実施例3-4)、1.0g(実施例3-5)若しくは1.5g(実施例3-6)、及び水道水を29.5g(実施例3-1)、29.0g(実施例3-2)、28.5g(実施例3-3)、27.0g(実施例3-4)、26.5g(実施例3-5)若しくは26.0g(実施例3-6)添加し、25℃で1時間攪拌して溶解させた後、ホモジナイザーを用いて乳化処理(15,000rpm、1分間)することにより、各乳化処理柚子果汁(実施品3-1~3-6)を得た。果汁100重量%の柚子果汁を100重量%とした場合の各乳化剤の添加割合(%)を表3に示した。
【0033】
[比較例2]
乳化剤の代わりに水を添加する以外は実施例3と同様に処理して得られたものを比較品2とした。
【0034】
[評価試験2]
実施品3-1~3-6及び比較品2の1重量%水溶液(果汁0.7重量%)を調製して濁度を測定し、比較例2の濁度を100%とした場合の各実施品の濁度の割合を算出し、評価試験1に従って濁度を評価して表3に記載した。
尚、濁度の測定は、評価試験1に従って行った。
【0035】
【表3】
【0036】
乳化剤であるポリグリセリン脂肪酸エステル又は酵素分解レシチンは、何れも果汁100重量%の柚子果汁を100重量%とした場合に、少なくとも0.7重量%含むことで、混濁果汁の濁度の低減に効果がみられることが分かった。
【実施例0037】
混濁果汁であるシークワーサー果汁(果汁100重量%、カーギルジャパン合同会社製)100gに、乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルであるモノラウリン酸デカグリセリルLVEX(HLB15.6、日光ケミカルズ株式会社製)2g及び酵素分解レシチンであるSLP-ホワイトリゾ1gを添加し、25℃で1時間攪拌して溶解させ、ローター型遠心分離機を用いて遠心分離処理(5000×G、10分間)し、回収した液部の内20gを、ホモジナイザーを用いて乳化処理(15,000rpm、1分間)することにより、乳化処理シークワーサー果汁(実施品4)を得た。果汁100重量%のシークワーサー果汁を100重量%とした場合の各乳化剤の添加割合(重量%)を表4に示した。
【0038】
[比較例3]
乳化剤を添加しない以外は実施例4と同様に処理して得られたものを比較品3とした。
【0039】
[評価試験3]
実施品4及び比較品3の1重量%水溶液(果汁1.0重量%)を調製して濁度を測定し、比較例3の濁度を100%とした場合の実施品の濁度の割合を算出し、評価試験1に従って濁度を評価して表4に記載した。さらに、1重量%水溶液(果汁1.0重量%)の耐熱性試験及び耐冷凍性試験を行い、試験後の濁度を測定し、試験前の濁度を100%とした場合の各試験後の濁度の割合を算出し、評価試験1に従って耐熱性及び耐冷凍性を評価して表4に記載した。
尚、濁度の測定、耐熱性試験及び耐冷凍性試験は、評価試験1に従って行った。
【0040】
【表4】
【0041】
乳化剤であるポリグリセリン脂肪酸エステル及び酵素分解レシチンを添加し、乳化処理することで、混濁シークワーサー果汁の濁度の低減がみられ、さらに、耐熱性及び耐冷凍性にも優れたシークワーサー果汁添加水溶液が得られることが分かった。
【0042】
以上より、混濁果汁である柑橘果汁に、ポリグリセリン脂肪酸エステル又は酵素分解レシチンを添加して乳化処理することで得られる乳化組成物である乳化処理柑橘果汁は、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び酵素分解レシチン非存在下で乳化処理した柑橘果汁と比べ、濁度が低減された乳化処理柑橘果汁であり、乳化剤を用いて乳化処理することで、柑橘果汁の清澄化に効果があり、希釈後の溶液を冷解凍しても乳化粒子が壊れにくく、乳化粒子が均一に分散している水溶液を調製できることが分かった。
また、柑橘果汁に、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び酵素分解レシチンを添加して乳化処理することで、希釈後の溶液を加熱殺菌しても、乳化粒子が安定的に分散状態を維持でき、沈殿を生じ難く、保存安定性が高い水溶液を調製できることが分かり、果汁添加飲料(アルコール又は非アルコール飲料)の製造においても有用であることが分かった。