(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087522
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】ドリルヘッド及び刃先交換式ドリル
(51)【国際特許分類】
B23B 51/00 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
B23B51/00 L
B23B51/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202386
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】小関 佑駿
(72)【発明者】
【氏名】臼井 正洋
(72)【発明者】
【氏名】木村 友樹
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 翔一
【テーマコード(参考)】
3C037
【Fターム(参考)】
3C037BB13
3C037BB15
3C037DD01
(57)【要約】
【課題】ドリルの回転力(トルク)が伝達されるドリルヘッドとホルダの接触面同士の間に、スラッジが浸入することを抑制でき、ドリルの工具寿命を安定して延ばすことができるドリルヘッド、及び刃先交換式ドリルを提供する。
【解決手段】先端面3と、外周面8と、先端面3及び外周面8に開口し、先端面3から軸方向の後端側に延びる切屑排出溝104と、切屑排出溝104のドリル回転方向Tを向く面と先端面3とが接続される稜線部に配置される切刃7と、ドリル回転方向Tとは反対側を向き、ドリルヘッド取付座のドリル回転方向Tを向く支持面と接触する被支持面15と、先端面3と被支持面15との間に配置されて溝状に延び、径方向外側の端部が外周面8に開口するスラッジ排出凹部16と、を備え、スラッジ排出凹部16は、先端面3と被支持面15とを隔てるように設けられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダのドリルヘッド取付座に取り付けられ、前記ホルダとともに中心軸回りのドリル回転方向に回転させられるドリルヘッドであって、
前記中心軸が延びる軸方向の先端側を向く先端面と、
前記中心軸と直交する径方向の外側を向く外周面と、
前記先端面及び前記外周面に開口し、前記先端面から軸方向の後端側に延びる切屑排出溝と、
前記切屑排出溝の前記ドリル回転方向を向く面と前記先端面とが接続される稜線部に配置される切刃と、
前記ドリル回転方向とは反対側を向き、前記ドリルヘッド取付座の前記ドリル回転方向を向く支持面と接触する被支持面と、
前記先端面と前記被支持面との間に配置されて溝状に延び、径方向外側の端部が前記外周面に開口するスラッジ排出凹部と、を備え、
前記スラッジ排出凹部は、前記先端面と前記被支持面とを隔てるように設けられる、
ドリルヘッド。
【請求項2】
前記スラッジ排出凹部は、前記ドリル回転方向を向く壁面を有する、
請求項1に記載のドリルヘッド。
【請求項3】
前記切屑排出溝は、前記先端面の前記ドリル回転方向とは反対側の端部に接続されるシンニング面を有し、
前記スラッジ排出凹部は、径方向内側の端部が前記シンニング面に開口する、
請求項1または2に記載のドリルヘッド。
【請求項4】
前記スラッジ排出凹部は、前記スラッジ排出凹部が延びる方向と垂直な断面の断面積が、径方向外側へ向かうに従い大きくなる、
請求項1または2に記載のドリルヘッド。
【請求項5】
前記先端面に開口して当該ドリルヘッドを軸方向に貫通し、当該ドリルヘッドと前記ホルダとを締結する締結部材が挿入される締結部材挿入孔をさらに備え、
前記スラッジ排出凹部は、前記締結部材挿入孔と連通する、
請求項1または2に記載のドリルヘッド。
【請求項6】
前記スラッジ排出凹部と前記被支持面との間に配置される面取り部をさらに備える、
請求項1または2に記載のドリルヘッド。
【請求項7】
軸方向の先端部に前記ドリルヘッド取付座が形成された前記ホルダと、
前記ドリルヘッド取付座に着脱可能に取り付けられる請求項1または2に記載のドリルヘッドと、を備える、
刃先交換式ドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリルヘッド及び刃先交換式ドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホルダの先端部にドリルヘッドが着脱可能に取り付けられる刃先交換式ドリルが知られている。なお、以下の説明ではドリルヘッドまたは刃先交換式ドリルを、単にドリルと呼ぶ場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1のモジュール式ドリル(刃先交換式ドリル)は、シャンク部(ホルダ)と、シャンク部にその先端側で接続されまたは接続可能である切削部(ドリルヘッド)と、を備える。切削部は、ドリル本体先端面と、ドリル本体先端面に隣接するトルク受け面と、を有する。シャンク部は、シャンク部から切削部へとドリル回転方向にトルクを伝達するためのトルク伝達面を有する。トルク伝達面は、トルク受け面と接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のモジュール式ドリルでは、特にクーラントを供給しながら被削材を穴あけ加工する湿式切削の場合に、切削によって生成された細かい切粉がクーラントと混じり合いスラッジとなって、ドリル本体先端面上からトルク受け面とトルク伝達面との接触部位に浸入しやすい。このスラッジによって、トルク受け面やトルク伝達面が摩耗し、ドリルの工具寿命の短縮を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、ドリルの回転力(トルク)が伝達されるドリルヘッドとホルダの接触面同士の間に、スラッジが浸入することを抑制でき、ドリルの工具寿命を安定して延ばすことができるドリルヘッド、及び刃先交換式ドリルを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0008】
〔本発明の態様1〕
ホルダのドリルヘッド取付座に取り付けられ、前記ホルダとともに中心軸回りのドリル回転方向に回転させられるドリルヘッドであって、前記中心軸が延びる軸方向の先端側を向く先端面と、前記中心軸と直交する径方向の外側を向く外周面と、前記先端面及び前記外周面に開口し、前記先端面から軸方向の後端側に延びる切屑排出溝と、前記切屑排出溝の前記ドリル回転方向を向く面と前記先端面とが接続される稜線部に配置される切刃と、前記ドリル回転方向とは反対側を向き、前記ドリルヘッド取付座の前記ドリル回転方向を向く支持面と接触する被支持面と、前記先端面と前記被支持面との間に配置されて溝状に延び、径方向外側の端部が前記外周面に開口するスラッジ排出凹部と、を備え、前記スラッジ排出凹部は、前記先端面と前記被支持面とを隔てるように設けられる、ドリルヘッド。
【0009】
本発明のドリルヘッド及びこれを備える刃先交換式ドリルでは、被削材の穴あけ加工時に生じる切粉とクーラントを含むスラッジが、ドリルヘッドの先端面上からスラッジ排出凹部に流入する。スラッジ排出凹部に流入したスラッジは、遠心力等の作用によりスラッジ排出凹部内を流れ、ドリルヘッドの外周面に排出される。このためスラッジが、ドリルヘッドの先端面上から被支持面と支持面との接触部位に浸入することは抑制される。これにより、被支持面及び支持面がスラッジによって摩耗するのを抑えることができる。
【0010】
以上より本発明によれば、ドリルの回転力(トルク)が伝達されるドリルヘッドとホルダの接触面同士(被支持面と支持面)の間に、スラッジが浸入することを抑制でき、これら接触面の摩耗を抑制することができる。したがって、ドリルの工具寿命を安定して延ばすことができる。
【0011】
また、スラッジ排出凹部はシンプルな溝形状を有しており、スラッジ排出凹部をドリルヘッドに設けるにあたって、複雑な製造工程等は必要とされない。また、スラッジ排出凹部の機能を得るために、ホルダの製造にあたって特別な製造工程等は必要ではない。このため、ドリルの製造が容易であり、製造時間も短縮される。
【0012】
〔本発明の態様2〕
前記スラッジ排出凹部は、前記ドリル回転方向を向く壁面を有する、態様1に記載のドリルヘッド。
【0013】
この場合、スラッジ排出凹部は、ドリル回転方向を向く壁面を有している。このような壁面が設けられることにより、先端面から被支持面と支持面との接触部位へ向かうスラッジの流れを堰き止めて、スラッジをスラッジ排出凹部に効率よく流入させることができる。このため、スラッジ排出凹部による上述の作用効果が安定して奏功される。
【0014】
〔本発明の態様3〕
前記切屑排出溝は、前記先端面の前記ドリル回転方向とは反対側の端部に接続されるシンニング面を有し、前記スラッジ排出凹部は、径方向内側の端部が前記シンニング面に開口する、態様1または2に記載のドリルヘッド。
【0015】
この場合、切刃近傍に供給されるクーラントが、シンニング面上からスラッジ排出凹部に流入する。スラッジ排出凹部に流入したクーラントは、先端面上からスラッジ排出凹部に流入したスラッジとともに、径方向外側へ流される。スラッジ排出凹部によるスラッジの排出作用(機能)が、より安定して高められる。
【0016】
〔本発明の態様4〕
前記スラッジ排出凹部は、前記スラッジ排出凹部が延びる方向と垂直な断面の断面積が、径方向外側へ向かうに従い大きくなる、態様1から3のいずれか1つに記載のドリルヘッド。
【0017】
この場合、遠心力等の作用によりスラッジ排出凹部内を径方向外側へ向けて流れるスラッジの流出量(排出量)が、より大きく確保される。すなわち、先端面上からスラッジ排出凹部に流入可能なスラッジの収容量がより大きく確保されるため、スラッジ排出凹部によるスラッジの排出作用がより高められる。
【0018】
〔本発明の態様5〕
前記先端面に開口して当該ドリルヘッドを軸方向に貫通し、当該ドリルヘッドと前記ホルダとを締結する締結部材が挿入される締結部材挿入孔をさらに備え、前記スラッジ排出凹部は、前記締結部材挿入孔と連通する、態様1から4のいずれか1つに記載のドリルヘッド。
【0019】
この場合、先端面上から締結部材挿入孔に流入したスラッジが、締結部材挿入孔からスラッジ排出凹部を通して外周面に排出される。すなわち、スラッジ排出凹部のみならず、締結部材挿入孔に流入したスラッジについても外周面へ排出することができる。このため、スラッジが、先端面上から被支持面と支持面との接触部位に浸入することをより安定して抑制できる。
【0020】
なお、締結部材挿入孔とスラッジ排出凹部とが互いに連通することなく隣接して配置される場合、これらの間に形成される壁部の厚さ寸法が薄くなりやすく、壁厚を確保することが難しい。この点、本発明の上記構成によれば、このような壁厚の薄い壁部が形成されにくくなる。したがって、例えば締結部材をレンチ等の作業用工具で締め付ける際などに、作業用工具が上記壁部に接触してこの壁部が破損するような不具合が抑えられる。
【0021】
〔本発明の態様6〕
前記スラッジ排出凹部と前記被支持面との間に配置される面取り部をさらに備える、態様1から5のいずれか1つに記載のドリルヘッド。
【0022】
この場合、スラッジ排出凹部と被支持面との間に形成される壁部に、面取り部が設けられるため、この壁部の強度が確保される。スラッジ排出凹部によるスラッジの排出作用が、長期にわたり安定して奏功される。
【0023】
〔本発明の態様7〕
軸方向の先端部に前記ドリルヘッド取付座が形成された前記ホルダと、前記ドリルヘッド取付座に着脱可能に取り付けられる態様1から6のいずれか1つに記載のドリルヘッドと、を備える、刃先交換式ドリル。
【発明の効果】
【0024】
本発明の前記態様のドリルヘッド及び刃先交換式ドリルによれば、ドリルの回転力(トルク)が伝達されるドリルヘッドとホルダの接触面同士の間に、スラッジが浸入することを抑制でき、ドリルの工具寿命を安定して延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本実施形態の刃先交換式ドリルを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の刃先交換式ドリルを示す側面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の刃先交換式ドリルを示す正面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態のドリルヘッドを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本実施形態のドリルヘッドを示す正面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の第1変形例のドリルヘッドを示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の第1変形例のドリルヘッドを示す正面図である。
【
図12】
図12は、本実施形態の第2変形例のドリルヘッドを示す斜視図である。
【
図13】
図13は、本実施形態の第2変形例のドリルヘッドを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態のドリルヘッド10及び刃先交換式ドリル100について、
図1~
図7を参照して説明する。なお本実施形態においても、ドリルヘッド10または刃先交換式ドリル100を、単にドリルと呼ぶ場合がある。
【0027】
図1~
図3に示すように、刃先交換式ドリル100は、中心軸Oを中心とする略円柱状をなしている。刃先交換式ドリル100は、シャンク部101と、穴あけ有効部102と、フランジ部103と、切屑排出溝104と、クーラント孔105と、を備える。シャンク部101、穴あけ有効部102及びフランジ部103は、中心軸Oを共通軸として互いに同軸に配置されている。シャンク部101、フランジ部103及び穴あけ有効部102は、中心軸Oが延びる方向に沿って、この順に並んで配置される。
【0028】
また刃先交換式ドリル100は、中心軸Oを中心とする略円柱状のホルダ20と、ホルダ20のドリルヘッド取付座106に着脱可能に取り付けられるドリルヘッド10と、ドリルヘッド取付座106にドリルヘッド10を固定する締結部材30と、を備える。
ドリルヘッド10は、例えば超硬合金製であり、穴あけ有効部102の一部(先端部)を構成している。またホルダ20は、例えば鋼製であり、穴あけ有効部102の上記一部以外の部分と、フランジ部103と、シャンク部101とを構成している。
【0029】
〔方向の定義〕
本実施形態では、ドリルの中心軸Oが延びる方向を軸方向と呼ぶ。中心軸Oは、ドリルヘッド10の中心軸であり、かつ刃先交換式ドリル100の中心軸である。軸方向のうち、シャンク部101から穴あけ有効部102へ向かう方向を軸方向の先端側、または単に先端側と呼び、穴あけ有効部102からシャンク部101へ向かう方向を軸方向の後端側、または単に後端側と呼ぶ。
【0030】
また、中心軸Oと直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Oに近づく方向を径方向内側、または単に内側と呼び、中心軸Oから離れる方向を径方向外側、または単に外側と呼ぶ。
【0031】
また、中心軸O回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。周方向のうち、穴あけ加工時にドリルが回転させられる方向をドリル回転方向Tと呼び、これとは反対の方向を、ドリル回転方向Tとは反対側、または反ドリル回転方向と呼ぶ。
【0032】
〔ホルダ〕
図1及び
図2に示すように、シャンク部101は、中心軸Oを中心として軸方向に延びる柱状であり、具体的には略円柱状である。シャンク部101は、刃先交換式ドリル100の後端側部分に配置される。シャンク部101は、例えば、図示しない工作機械の主軸やボール盤のチャック等(以下、主軸等と省略する)に着脱可能に取り付けられ、保持される。シャンク部101が主軸等によってドリル回転方向Tに回転させられつつ、軸方向の先端側に移動させられることで、ドリルは被削材に切り込んで穴あけ加工を行う。
【0033】
フランジ部103は、軸方向において、シャンク部101と穴あけ有効部102との間に配置される。フランジ部103は、刃先交換式ドリル100において最も外径寸法が大きい部分である。フランジ部103の後端側を向く端面103aは、図示しない主軸等の先端面に接触する。フランジ部103の先端側を向く面103bは、先端側へ向かうに従い縮径するテーパ面状をなしている。
【0034】
穴あけ有効部102は、中心軸Oを中心として軸方向に延びる柱状である。穴あけ有効部102は、ドリルヘッド10と、ホルダ20の先端側部分と、を含む。穴あけ有効部102は、ドリルヘッド10によって被削材に切り込んで穴あけ加工を行い、加工穴に挿入される。
【0035】
切屑排出溝104は、穴あけ有効部102の先端面(ドリルヘッド10の後述する先端面3)及び外周面に開口し、略軸方向に延びる溝状である。詳しくは、切屑排出溝104は、穴あけ有効部102の先端面から後端側へ向かうに従い、ドリル回転方向Tとは反対側へ向けて略螺旋状に延びる。本実施形態では切屑排出溝104が、穴あけ有効部102、及びフランジ部103の面103bにわたって配置されている。特に図示しないが、切屑排出溝104は、さらにフランジ部103の外周面にまで配置されていてもよい。なお切屑排出溝104は、少なくとも穴あけ有効部102に配置されていればよいことから、フランジ部103には配置されていなくてもよい。
【0036】
切屑排出溝104は、切屑排出溝104の先端部に配置されるヘッド切屑排出溝104aと、切屑排出溝104の先端部以外の部分に配置されるホルダ切屑排出溝104bと、を有する。ヘッド切屑排出溝104aは、切屑排出溝104のうちドリルヘッド10に配置される部分である。ホルダ切屑排出溝104bは、切屑排出溝104のうちホルダ20に配置される部分である。以下の説明では、ヘッド切屑排出溝104aまたはホルダ切屑排出溝104bを、単に切屑排出溝104と呼ぶ場合がある。
【0037】
また、切屑排出溝104は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられている。
図3に示すように、本実施形態では切屑排出溝104が、周方向において等ピッチで一対設けられている。
【0038】
図2及び
図3に示すように、クーラント孔105は、刃先交換式ドリル100の内部を延びて形成されている。本実施形態ではクーラント孔105が、ホルダ20を軸方向に貫通する。クーラント孔105には、図示しない主軸等を介して、切削油剤や圧縮エア等のクーラントが供給される。
【0039】
クーラント孔105は、シャンク部101の後端面に開口する後端側流路(図示省略)と、後端側流路よりも先端側に配置され、後端側流路に接続されて切屑排出溝104に開口する先端側流路105aと、を有する。
【0040】
後端側流路は、少なくともシャンク部101の内部に配置される。
先端側流路105aは、少なくとも、穴あけ有効部102のうちドリルヘッド10以外の部分の内部に配置される。先端側流路105aの後端部は、後端側流路の先端部に接続される。先端側流路105aは、複数設けられる。複数の先端側流路105aは、周方向に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では先端側流路105aが、一対の切屑排出溝104に一つずつ開口して一対設けられる。具体的に、先端側流路105aは、ホルダ切屑排出溝104bのドリル回転方向Tとは反対側を向く壁面に開口する。
なお、後端側流路については、先端側流路105aと同数設けられていてもよいし、1つのみ設けられていてもよい。
【0041】
図1~
図3に示すように、ドリルヘッド取付座106は、ホルダ20の先端部に形成されている。ドリルヘッド取付座106は、軸方向の先端側を向く着座面107と、着座面107よりも先端側に突出し、ドリル回転方向Tを向く支持面108と、着座面107から軸方向の後端側に窪む嵌合穴109と、を有する。
【0042】
着座面107は、中心軸Oと垂直な方向に広がる平面状である。特に図示しないが、着座面107には、軸方向に延びる図示しない雌ネジ穴が開口する。雌ネジ穴は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態では雌ネジ穴が、周方向に等ピッチで一対設けられる。
【0043】
本実施形態では支持面108が、平面状である。
図3に示すように軸方向から見て、支持面108は、径方向外側へ向かうに従いドリル回転方向Tに向けて延びる。また支持面108は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態では支持面108が、周方向に等ピッチで一対設けられる。
【0044】
図2に示すように、嵌合穴109は、中心軸Oを中心とする有底穴であり、具体的には、円穴状である。嵌合穴109は、着座面107に開口し、軸方向に延びる。
【0045】
〔ドリルヘッド〕
ドリルヘッド10は、ホルダ20の先端部に配置されるドリルヘッド取付座106に取り付けられ、図示しない主軸等により、ホルダ20とともに中心軸O回りのドリル回転方向Tに回転させられる。
【0046】
図4~
図7に示すように、ドリルヘッド10は、軸方向の先端側を向く先端面3と、径方向外側を向く外周面8と、先端面3及び外周面8に開口し、先端面3から軸方向の後端側に延びる切屑排出溝104と、すくい面5と、逃げ面6と、切刃7と、後端面9と、嵌合部13と、締結部材挿入孔14と、被支持面15と、スラッジ排出凹部16と、面取り部17と、を有する。
【0047】
ドリルヘッド10が有する上記切屑排出溝104は、具体的には、前述したヘッド切屑排出溝104aである。切屑排出溝104(ヘッド切屑排出溝104a)は、先端面3から軸方向の後端側へ向かうに従い、反ドリル回転方向に向けて延びる。
【0048】
切屑排出溝104は、シンニング面11を有する。シンニング面11は、ヘッド切屑排出溝104aの先端部に配置される。シンニング面11は、先端面3のドリル回転方向Tとは反対側の端部に接続される。シンニング面11は、反ドリル回転方向へ向かうに従い軸方向の後端側に向けて延びる。
【0049】
すくい面5は、切屑排出溝104(ヘッド切屑排出溝104a)のドリル回転方向Tを向く面のうち、少なくとも先端部に位置する。すなわち、切屑排出溝104は、さらにすくい面5を有する。すくい面5は、シンニングすくい面51と、主すくい面52と、を有する。
【0050】
シンニングすくい面51は、切屑排出溝104の先端部のうち、径方向内端部に配置される。シンニングすくい面51は、シンニング面11の径方向内端部に接続され、ドリル回転方向Tを向く。本実施形態では、シンニングすくい面51が、略三角形の平面状である。
【0051】
主すくい面52は、シンニングすくい面51の径方向外側に配置される。本実施形態では、主すくい面52が、凹曲面状の部分と、凹曲面状の部分の径方向外側に配置される平面状の部分と、を有する。
主すくい面52のうち上記凹曲面状の部分は、中心軸Oと垂直な断面視(以下、単に横断面視と呼ぶ場合がある)において、反ドリル回転方向に窪む凹曲線状をなす。また、主すくい面52のうち上記平面状の部分は、横断面視において、径方向外側へ向かうに従い反ドリル回転方向に向けて延びる直線状をなす。
【0052】
逃げ面6は、先端面3に配置される。すなわち、先端面3は、逃げ面6を有する。逃げ面6は、第1逃げ面61と、第1逃げ面61の反ドリル回転方向に隣接して配置される第2逃げ面62と、を有する。
【0053】
第1逃げ面61は、反ドリル回転方向へ向かうに従い軸方向の後端側に向けて延びる。第2逃げ面62は、反ドリル回転方向へ向かうに従い軸方向の後端側に向けて延びる。第1逃げ面61及び第2逃げ面62は、上述のようにそれぞれ傾斜させられることで、逃げ角が付与されている。また第2逃げ面62は、第1逃げ面61よりも大きな逃げ角を有する。すなわち、第2逃げ面62における周方向に沿う単位長さあたりの軸方向への変位量(逃げ角に相当する傾き)は、第1逃げ面61における前記変位量よりも大きい。
【0054】
図5に示すように、ドリルヘッド10を軸方向に沿って先端側から見た正面視において、第1逃げ面61は、径方向に延びる帯状(径方向に長い略多角形状)をなしており、第2逃げ面62は、略扇形状をなしている。
【0055】
なお本実施形態においては、逃げ面6が、互いに逃げ角が異なる2つの傾斜面(第1逃げ面61及び第2逃げ面62)を有している例を挙げたが、これに限らない。逃げ面6は、例えば、単一の傾斜面により形成されていてもよく、あるいは、周方向に並ぶ3つ以上の傾斜面を有していてもよい。
【0056】
図4に示すように、切刃7は、切屑排出溝104(ヘッド切屑排出溝104a)のドリル回転方向Tを向く面と、先端面3とが接続される稜線部に配置される。具体的に、切刃7は、すくい面5と逃げ面6とが接続される稜線部に配置される。切刃7は、ドリルヘッド10に、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態では切刃7が、周方向に等ピッチで2つ設けられる。すなわち、本実施形態のドリルヘッド10及び刃先交換式ドリル100は、2枚刃のツイストドリルである。
【0057】
図4~
図7に示すように、切刃7は、シンニング刃71と、主切刃72と、を有する。
シンニング刃71は、切刃7のうち径方向内端部に配置される。シンニング刃71は、シンニングすくい面51と第1逃げ面61とが接続される稜線部に配置される。シンニング刃71は、ドリルの正面視で、中心軸O付近から径方向外側へ向けて、略径方向に沿って延びる。またシンニング刃71は、径方向外側へ向かうに従い、軸方向の後端側に向けて延びる。本実施形態ではシンニング刃71が、直線状である。
【0058】
主切刃72は、シンニング刃71の径方向外側に配置される。主切刃72は、主すくい面52と第1逃げ面61とが接続される稜線部に配置される。主切刃72は、ドリルの正面視で反ドリル回転方向に窪む凹曲線状の部分と、この凹曲線状の部分よりも径方向外側に配置される直線状の部分と、を有する。上記直線状の部分は、主切刃72のうち径方向外端部に配置される。上記直線状の部分は、径方向外側へ向かうに従い反ドリル回転方向に向けて延びる。
【0059】
また主切刃72は、径方向外側へ向かうに従い、軸方向の後端側に向けて延びる。主切刃72の径方向内側の端部は、シンニング刃71の径方向外側の端部に接続される。本実施形態では、主切刃72とシンニング刃71との接続部分が、ドリル回転方向Tに向けて突出する凸曲線状をなす。この凸曲線状の部分により、主切刃72とシンニング刃71とは滑らかに接続されている。
【0060】
また特に図示しないが、切刃7は、切刃7の刃先に配置されるホーニングを有していてもよい。ホーニングは、切刃7が延びる方向(刃長方向)に沿って延びる。この場合、ホーニングは丸ホーニングでもよいし、チャンファホーニングでもよい。
【0061】
外周面8は、マージン81と、二番取り面82と、を有する。
マージン81は、外周面8のうちドリル回転方向Tの端部に配置され、略軸方向に延びる。具体的に、マージン81は、軸方向の後端側へ向かうに従い、反ドリル回転方向に向けて延びる。
【0062】
マージン81と主すくい面52とは、稜線部(リーディングエッジ12)を介して互いに接続される。マージン81は、リーディングエッジ12の反ドリル回転方向に隣接して配置される。マージン81は、リーディングエッジ12を中心軸O回りに回転させて得られる図示しない円筒状の回転軌跡上に位置する。マージン81は、中心軸Oと垂直な横断面視において、中心軸Oを中心とする円弧状をなす。なおリーディングエッジ12には、バックテーパが付与されていてもよい。この場合、リーディングエッジ12は、軸方向の後端側へ向かうに従い、わずかに径方向内側に位置する。
【0063】
二番取り面82は、マージン81の反ドリル回転方向に隣り合って配置される。二番取り面82は、マージン81よりも径方向内側に配置される。二番取り面82は、穴あけ加工時において、被削材の加工穴の内周面と径方向に隙間をあけて対向する。
【0064】
後端面9は、軸方向の後端側を向く。後端面9は、中心軸Oと垂直な方向に広がる平面状である。
図2に示すように、ドリルヘッド10がドリルヘッド取付座106に取り付けられたときに、後端面9は、着座面107と接触する。これによりドリルヘッド10は、ドリルヘッド取付座106に軸方向の後端側から支持される。
【0065】
図6及び
図7に示すように、嵌合部13は、後端面9から軸方向の後端側に突出する。嵌合部13は、中心軸Oを中心とする柱状であり、具体的には、軸方向に延びる略円柱状である。
図2に示すように、嵌合部13は、ドリルヘッド取付座106の嵌合穴109に挿入される。嵌合部13と嵌合穴109とは、互いに嵌合する。これによりドリルヘッド10は、ドリルヘッド取付座106に径方向において位置決めされる。
【0066】
図4及び
図5に示すように、締結部材挿入孔14は、先端面3に開口してドリルヘッド10を軸方向に貫通する。締結部材挿入孔14は、軸方向に延びる多段円孔状である。締結部材挿入孔14の内径寸法は、軸方向の後端側へ向かうに従い段階的に小さくなる。締結部材挿入孔14の先端部は、第2逃げ面62に開口する。締結部材挿入孔14の後端部は、後端面9に開口する。締結部材挿入孔14は、周方向に互いに間隔をあけて複数(本実施形態では一対)設けられる。
【0067】
図1及び
図3に示すように、締結部材挿入孔14には、ドリルヘッド10とホルダ20とを締結する締結部材30が挿入される。本実施形態では締結部材30が、例えばクランプネジ等である。締結部材30は、締結部材挿入孔14に挿通され、ドリルヘッド取付座106の着座面107に開口する雌ネジ穴(図示省略)に螺着される。これによりドリルヘッド10は、ドリルヘッド取付座106に着脱可能に固定される。
【0068】
図4~
図7に示すように、被支持面15は、周方向において、切屑排出溝104(ヘッド切屑排出溝104a)と二番取り面82との間に配置される。被支持面15は、ドリル回転方向Tとは反対側を向く。本実施形態では被支持面15が、平面状である。被支持面15は、多角形面状であり、具体的には、略五角形面状である。
図5に示すように軸方向から見て、被支持面15は、径方向外側へ向かうに従いドリル回転方向Tに向けて延びる。
【0069】
被支持面15は、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態では被支持面15が、周方向に等ピッチで一対設けられる。
図1~
図3に示すように、被支持面15は、ドリルヘッド取付座106のドリル回転方向Tを向く支持面108と接触する。これによりドリルヘッド10は、ドリルヘッド取付座106に反ドリル回転方向から支持される。
【0070】
図4~
図7に示すように、スラッジ排出凹部16は、先端面3と被支持面15との間に配置され、略径方向に沿って溝状に延びる。具体的に、スラッジ排出凹部16は、第2逃げ面62のドリル回転方向Tとは反対側、かつ被支持面15のドリル回転方向Tに位置しており、被支持面15と隣接するように配置されている。スラッジ排出凹部16は、先端面3と被支持面15とを隔てるように設けられる。
【0071】
図5に示すように軸方向から見て、スラッジ排出凹部16は、被支持面15と平行に延びている。本実施形態ではスラッジ排出凹部16が、軸方向から見たドリルの正面視で、径方向外側へ向かうに従いドリル回転方向Tに向けて、直線状に延びている。
【0072】
図6及び
図7に示すように、スラッジ排出凹部16は、スラッジ排出凹部16が延びる方向と垂直な断面の形状が、軸方向の先端側に開口するU字状またはV字状等である。本実施形態では、スラッジ排出凹部16の前記断面の面積(断面積)が、スラッジ排出凹部16が延びる方向に沿って略一定である。
【0073】
スラッジ排出凹部16は、その径方向外側の端部が外周面8に開口する。具体的に、スラッジ排出凹部16の径方向外端部は、二番取り面82に開口する。また
図4及び
図5に示すように、スラッジ排出凹部16は、その径方向内側の端部がシンニング面11に開口する。
このように、スラッジ排出凹部16は、ドリルの先端側に向けて開口し、かつ、切屑排出溝104の一部(シンニング面11)と外周面8の一部(二番取り面82)とを連通する。
【0074】
また
図4~
図7に示すように、スラッジ排出凹部16は、ドリル回転方向Tを向く壁面16aを有する。壁面16aは、スラッジ排出凹部16が延びる方向に沿って延びている。本実施形態では壁面16aが、軸方向の先端側へ向かうに従い反ドリル回転方向に位置する傾斜面状である。
【0075】
面取り部17は、スラッジ排出凹部16と被支持面15との間に配置される。具体的に、面取り部17は、スラッジ排出凹部16と被支持面15との間に形成される壁部の軸方向の先端部に配置されており、スラッジ排出凹部16が延びる方向に沿って延びている。面取り部17は、反ドリル回転方向へ向かうに従い、軸方向の後端側に位置する傾斜面状である。面取り部17は、第2逃げ面62を反ドリル回転方向に延ばした図示しない仮想延長面よりも、軸方向の後端側に配置されている(
図7を参照)。
【0076】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態のドリルヘッド10及びこれを備える刃先交換式ドリル100では、被削材の穴あけ加工時に生じる切粉とクーラントを含むスラッジが、ドリルヘッド10の先端面3上からスラッジ排出凹部16に流入する。スラッジ排出凹部16に流入したスラッジは、遠心力等の作用によりスラッジ排出凹部16内を流れ、ドリルヘッド10の外周面8に排出される。このためスラッジが、ドリルヘッド10の先端面3上から被支持面15と支持面108との接触部位に浸入することは抑制される。これにより、被支持面15及び支持面108がスラッジによって摩耗するのを抑えることができる。
【0077】
以上より本実施形態によれば、ドリルの回転力(トルク)が伝達されるドリルヘッド10とホルダ20の接触面同士(被支持面15と支持面108)の間に、スラッジが浸入することを抑制でき、これら接触面15,108の摩耗を抑制することができる。したがって、ドリルの工具寿命を安定して延ばすことができる。
【0078】
また、スラッジ排出凹部16はシンプルな溝形状を有しており、スラッジ排出凹部16をドリルヘッド10に設けるにあたって、複雑な製造工程等は必要とされない。また、スラッジ排出凹部16の機能を得るために、ホルダ20の製造にあたって特別な製造工程等は必要ではない。このため、ドリルの製造が容易であり、製造時間も短縮される。
【0079】
また本実施形態において、スラッジ排出凹部16は、ドリル回転方向Tを向く壁面16aを有している。このような壁面16aが設けられることにより、先端面3から被支持面15と支持面108との接触部位へ向かうスラッジの流れを堰き止めて、スラッジをスラッジ排出凹部16に効率よく流入させることができる。このため、スラッジ排出凹部16による上述の作用効果が安定して奏功される。
【0080】
また本実施形態において、スラッジ排出凹部16は、径方向内側の端部がシンニング面11に開口する。
この場合、クーラント孔105の先端側流路105aから切刃7近傍に供給されるクーラントが、シンニング面11上からスラッジ排出凹部16に流入する。スラッジ排出凹部16に流入したクーラントは、先端面3上からスラッジ排出凹部16に流入したスラッジとともに、径方向外側へ流される。スラッジ排出凹部16によるスラッジの排出作用(機能)が、より安定して高められる。
【0081】
また本実施形態では、ドリルヘッド10が、スラッジ排出凹部16と被支持面15との間に配置される面取り部17を備えている。
この場合、スラッジ排出凹部16と被支持面15との間に形成される壁部に、面取り部17が設けられるため、この壁部の強度が確保される。スラッジ排出凹部16によるスラッジの排出作用が、長期にわたり安定して奏功される。
【0082】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。なお、変形例の図示においては、前述の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、下記では主に異なる点について説明する。
【0083】
図8~
図11は、前述の実施形態で説明したドリルヘッド10の第1変形例であるドリルヘッド10Aを示す。この第1変形例では、スラッジ排出凹部16は、スラッジ排出凹部16が延びる方向と垂直な断面の断面積が、径方向外側へ向かうに従い大きくなる。具体的に、このスラッジ排出凹部16は、スラッジ排出凹部16が延びる方向に沿って径方向外側へ向かうに従い、溝深さ寸法が大きくなる。また、スラッジ排出凹部16は、スラッジ排出凹部16が延びる方向に沿って径方向外側へ向かうに従い、溝幅寸法が大きくなる。
また、スラッジ排出凹部16のドリル回転方向Tを向く壁面16aは、スラッジ排出凹部16が延びる方向に沿って径方向外側へ向かうに従い、軸方向寸法が大きくなる。
【0084】
この第1変形例によれば、遠心力等の作用によりスラッジ排出凹部16内を径方向外側へ向けて流れるスラッジの流出量(排出量)が、より大きく確保される。すなわち、先端面3上からスラッジ排出凹部16に流入可能なスラッジの収容量がより大きく確保されるため、スラッジ排出凹部16によるスラッジの排出作用がより高められる。
【0085】
図12~
図15は、前述の実施形態で説明したドリルヘッド10の第2変形例であるドリルヘッド10Bを示す。この第2変形例では、スラッジ排出凹部16が、締結部材挿入孔14と連通している。
【0086】
この第2変形例によれば、先端面3上から締結部材挿入孔14に流入したスラッジが、締結部材挿入孔14からスラッジ排出凹部16を通して外周面8に排出される。すなわち、スラッジ排出凹部16のみならず、締結部材挿入孔14に流入したスラッジについても外周面8へ排出することができる。このため、スラッジが、先端面3上から被支持面15と支持面108との接触部位に浸入することをより安定して抑制できる。
【0087】
なお、上述した第1変形例のように、締結部材挿入孔14とスラッジ排出凹部16とが互いに連通することなく隣接して配置されると、これらの間に形成される壁部の厚さ寸法が薄くなりやすく、壁厚を確保することが難しい場合がある。この点、第2変形例の上記構成によれば、このような壁厚の薄い壁部が形成されにくくなる。したがって、例えば締結部材30をレンチ等の作業用工具で締め付ける際などに、作業用工具が上記壁部に接触してこの壁部が破損するような不具合が抑えられる。
【0088】
また、前述の実施形態及び変形例では、スラッジ排出凹部16のドリル回転方向Tを向く壁面16aが、軸方向の先端側へ向かうに従い反ドリル回転方向に位置する傾斜面状である例を挙げたが、これに限らない。スラッジ排出凹部16の壁面16aは、例えば、軸方向の各位置において互いの周方向位置が同じとされた、縦壁状等であってもよい。
【0089】
前述の実施形態及び変形例では、ドリルが、2枚刃のツイストドリルである例を挙げたが、これに限らない。ドリルは、1枚刃または3枚刃以上のドリルであってもよい。
【0090】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態及び変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のドリルヘッド及び刃先交換式ドリルによれば、ドリルの回転力(トルク)が伝達されるドリルヘッドとホルダの接触面同士の間に、スラッジが浸入することを抑制でき、ドリルの工具寿命を安定して延ばすことができる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0092】
3…先端面
7…切刃
8…外周面
10,10A,10B…ドリルヘッド
11…シンニング面
14…締結部材挿入孔
15…被支持面
16…スラッジ排出凹部
16a…壁面
17…面取り部
20…ホルダ
30…締結部材
100…刃先交換式ドリル
104…切屑排出溝
104a…ヘッド切屑排出溝
106…ドリルヘッド取付座
108…支持面
O…中心軸
T…ドリル回転方向