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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087525
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】焼結パレット台車用吊具
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/28 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
B66C1/28 F
B66C1/28 H
B66C1/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202391
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】藤島 隆之
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004AA08
3F004AB14
3F004AD03
3F004AD07
3F004AE01
3F004AG03
3F004EA32
(57)【要約】
【課題】作業負荷の低減と作業効率の向上に加えて安全性を向上することが可能な焼結パレット台車用吊具を提供する。
【解決手段】支持梁2と、支持梁2の長手方向両端部2Aの下方に配置され、開閉自在であるとともにパレット台車の車軸に係合可能な一対のフック部3、4と、支持梁2の長手方向両端部2Aにあって、フック部3、4を開閉自在な状態で保持する保持部5と、フック部3、4の開閉動作を支援する支援装置6と、が備えられ、支援装置6には、フック部3、4のうちの何れか一方のフック部の開度に応じて他方のフック部の開度を追従させるために、フック部3、4の上端部に設けられた連動機構と、フック部3、4と、支持梁2または保持部5とをそれぞれ連結する引張ばねと、フック部3、4を開状態または閉状態に固定可能な位置決め機構と、が備えられている、焼結パレット台車用吊具1を採用する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持梁と、
前記支持梁の長手方向両端部の下方に配置され、開閉自在であるとともにパレット台車の車軸に係合可能な一対のフック部と、
前記支持梁の長手方向両端部にあって、前記一対のフック部を開閉自在な状態で保持する保持部と、
前記一対のフック部の開閉動作を支援する支援装置と、が備えられ、
前記支援装置には、
前記一対のフック部のうちの何れか一方のフック部の開度に応じて他方の前記フック部の開度を追従させるために、前記一対のフック部の上端部に設けられた連動機構と、
前記一方のフック部および前記他方のフック部と、前記支持梁または前記保持部とをそれぞれ連結する引張ばねと、
前記一対のフック部を開状態または閉状態に固定可能な位置決め機構と、が備えられている、焼結パレット台車用吊具。
【請求項2】
前記連動機構は、
前記一対のフック部の各上端部を、前記保持部に回動自在に支持させる回動軸と、
前記一対のフック部の前記上端部の端面にそれぞれに設けられ、相互にかみ合わされるラック部と、
から構成される、請求項1に記載の焼結パレット台車用吊具。
【請求項3】
前記位置決め機構は、
前記一方のフック部に対して一端側が回動自在に取り付けられ、他端側に長孔部が設けられた板状のストッパ本体と、
前記他方のフック部に取り付けられ、前記長孔部に挿入され、前記長孔部内を移動可能な突起部と、
前記ストッパ本体に対してスライド自在に取り付けられて、前記長孔部における前記突起部の移動を規制するスライドバーと、
から構成され、
前記長孔部は、前記一対のフック部を開状態にした場合に前記突起部が位置する第1孔部と、前記一対のフック部を閉状態にした場合に前記突起部が位置する第2孔部と、前記第1孔部と前記第2孔部とを連通させる第3孔部と、が設けられている、請求項1に記載の焼結パレット台車用吊具。
【請求項4】
前記支持梁は、吊り下げ対象物であるパレット台車の幅よりも長く、かつ前記パレット台車の壁部の上端に対する積載面を有する、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の焼結パレット台車用吊具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結パレット台車用吊具に関する。
【背景技術】
【0002】
ドワイト・ロイド焼結機(以下、DL焼結機という)は、無端状に並べた複数台のパレット台車を、無限軌道上にて循環移動させつつ、焼結原料をパレット台車に積載し、焼結材料の上面に点火した後、パレット台車の下部から炎を吸引することによって、焼結材の製造を行っている。
【0003】
ところで、パレット台車を保守点検する場合は、従来、玉掛け用具としてワイヤを利用し、天井クレーンにてパレット台車を吊上げるいわゆる玉掛け作業により、無端状に連なった複数のパレット台車の列から、一台づつパレット台車を抜き出している。また、玉掛け用具としてのワイヤに代えて、焼結機のパレット台車の吊り具として、特許文献1~4に記載された吊り具が知られている。
【0004】
特許文献1には、パンタグラフ機構と、2個の吊りかぎ部からなる吊具部とを備えた焼結機のパレット吊具が記載されている。
【0005】
特許文献2には、ビーム状本体の左右向端付近に、本体の前後方向を軸線方向とする水平のピンで連結した左右一対の等長、複節数のリンクの下端をそれぞれ起伏回動自在に連結するとともに、両リンクの上端を一つのシャックルに連結し、さらに、前記本体の中心部に、リンク屈折により下降した際のシャックルを受止め自在としたシャックル受台を設ける一方、本体の左右向端付近における前後左右4箇所に、本体の左右方向に軸線を向けた支軸により、被吊物の左右側の軸状掛止部への掛合を自在としたフックを有する定形物吊り具が記載されている。
【0006】
特許文献3には、焼結パレットの幅以上の長さを有するビームと、焼結パレットの進行方向に平行で爪部が互いに内側を向き上端がピン固定されて回動が可能な2組のフックをビーム両端に持ち、且つ各フック胴部の内面が山型状に傾斜しており、更には先端にかぎ穴を有する回動可能な連結棒が一方のフック側面にピン固定され、他方のフック側面に連結棒固定用のピンを有する焼結パレット用吊具が記載されている。
【0007】
特許文献4には、支持梁の端部それぞれに、支持梁から下垂する下部吊りアームが支持梁の長手方向に回動可能に支持されてなる焼結機用拡幅パレット台車の吊り具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭48-79803号公報
【特許文献2】実開昭57-62769号公報
【特許文献3】実開平5-26986号公報
【特許文献4】特開2009-155035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、玉掛け用具としてのワイヤや、特許文献1~4に記載された吊具を利用したパレット台車の玉掛け作業は、安全面、作業効率面において作業の負荷が大きく、かつ複数人による作業が必要であった。
【0010】
本発明は、従来からの課題である作業負荷の低減と作業効率の向上に加えて安全性を向上することが可能な焼結パレット台車用吊具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 支持梁と、
前記支持梁の長手方向両端部の下方に配置され、開閉自在であるとともにパレット台車の車軸に係合可能な一対のフック部と、
前記支持梁の長手方向両端部にあって、前記一対のフック部を開閉自在な状態で保持する保持部と、
前記一対のフック部の開閉動作を支援する支援装置と、が備えられ、
前記支援装置には、
前記一対のフック部のうちの何れか一方のフック部の開度に応じて他方の前記フック部の開度を追従させるために、前記一対のフック部の上端部に設けられた連動機構と、
前記一方のフック部および前記他方のフック部と、前記支持梁または前記保持部とをそれぞれ連結する引張ばねと、
前記一対のフック部を開状態または閉状態に固定可能な位置決め機構と、が備えられている、焼結パレット台車用吊具。
[2] 前記連動機構は、
前記一対のフック部の各上端部を、前記保持部に回動自在に支持させる回動軸と、
前記一対のフック部の前記上端部の端面にそれぞれに設けられ、相互にかみ合わされるラック部と、
から構成される、[1]に記載の焼結パレット台車用吊具。
[3] 前記位置決め機構は、
前記一方のフック部に対して一端側が回動自在に取り付けられ、他端側に長孔部が設けられた板状のストッパ本体と、
前記他方のフック部に取り付けられ、前記長孔部に挿入され、前記長孔部内を移動可能な突起部と、
前記ストッパ本体に対してスライド自在に取り付けられて、前記長孔部における前記突起部の移動を規制するスライドバーと、
から構成され、
前記長孔部は、前記一対のフック部を開状態にした場合に前記突起部が位置する第1孔部と、前記一対のフック部を閉状態にした場合に前記突起部が位置する第2孔部と、前記第1孔部と前記第2孔部とを連通させる第3孔部と、が設けられている、[1]に記載の焼結パレット台車用吊具。
[4] 前記支持梁は、吊り下げ対象物であるパレット台車の幅よりも長く、かつ前記パレット台車の壁部の上端に対する積載面を有する、[1]乃至[3]の何れか一項に記載の焼結パレット台車用吊具。
【発明の効果】
【0012】
本発明の焼結パレット台車用吊具によれば、一対のフック部の開閉動作を支援する支援装置として、一対のフック部の開度を連動させる連動機構と、引張ばねと、位置決め機構とが備えられており、連動機構によって一方のフック部を操作して開度を調整することで、他方のフック部の開度を同時に操作することができ、その際に、引張ばねのばね力によってフック部を操作する際の入力量が軽減され、更に位置決め機構により一対のフック部を開状態または閉状態に固定できる。このため、本発明の焼結パレット台車用吊具によれば、従来、複数名の作業者が必要であったパレット台車に対する玉掛け作業を、一名の作業者で行うことが可能になり、作業負荷も軽減される。よって、パレット台車の玉掛け作業における作業負荷の低減と作業効率の向上に加えて安全性を向上することができる。更に、従来に比べて作業時間も大幅に短縮できる。
【0013】
また、本発明の焼結パレット台車用吊具によれば、支援装置の連動機構が、一対のフック部を保持部に回動自在に支持させる回動軸と、一対のフック部の上端部の端面にそれぞれに設けられ、相互にかみ合わされるラック部と、から構成され、簡単な構造で一対のフック部を連動させることができるので、故障が少なく、保守管理を容易に行うことができる。
【0014】
更に、本発明の焼結パレット台車用吊具によれば、位置決め機構が、第1孔部、第2孔部及び第3孔部を有する長穴部が設けられたストッパ本体と、長穴部を移動自在な突起部と、突起部の移動を規制するスライドバーとからなり、一対のフック部及びストッパ本体を操作することによって突起部を第1孔部または第2孔部に位置させるとともに、スライドバーによって突起部の移動を規制することにより、一対のフック部の開度の変更および開度の固定を容易に行うことができ、複数名の作業者が必要であったパレット台車に対する玉掛け作業を、一名の作業者で行うことが可能になり、作業効率を向上できる。
【0015】
また、本発明の焼結パレット台車用吊具によれば、支持梁に、パレット台車の壁部の上端に対する積載面があるので、パレット台車の壁部の上端に積載した状態で、パレット台車に対する一対のフック部の係合作業または係合の解除作業を行うことが可能になり、支持梁を吊り下げた状態でこれらの作業を行う場合に比べて、作業を安全に行うことできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態である焼結パレット台車用吊具を示す正面図。
図2図2は、本発明の実施形態である焼結パレット台車用吊具を示す図であって、一対のフック部が閉状態にあることを示す側面図。
図3図3は、本発明の実施形態である焼結パレット台車用吊具を示す図であって、一対のフック部が開状態にあることを示す側面図。
図4図4は、焼結パレット台車用吊具の支援装置の要部を示す正面図。
図5図5は、焼結パレット台車用吊具の支持梁の長手方向端部を示す上面図。
図6図6は、焼結パレット台車用吊具の支持梁の長手方向端部を示す正面図。
図7図7は、焼結パレット台車用吊具の保持部の外観を示す正面図。
図8図8は、焼結パレット台車用吊具の保持部の内部構造を示す正面図。
図9図9は、焼結パレット台車用吊具の一方のフック部を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は側面図。
図10図10は、焼結パレット台車用吊具の他方のフック部を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は側面図。
図11図11は、焼結パレット台車用吊具の支援装置に備えられるストッパ本体を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は(a)のA-A線に対応する断面図であり、(c)は側面図であり、(d)は平面図である。
図12図12は、焼結パレット台車用吊具の支援装置に備えられる保持部材を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
図13図13は、焼結パレット台車用吊具の支援装置に備えられるスライドバーを示す正面図。
図14図14は、開の状態にある焼結パレット台車用吊具を示す図であって、(a)は支援装置の要部を示す正面図であり、(b)は焼結パレット台車用吊具の側面図である。
図15図15は、焼結パレット台車用吊具を閉状態から開の状態に変更する際の操作方法を示す図であって、(a)は支援装置の要部を示す正面図であり、(b)は焼結パレット台車用吊具の側面図である。
図16図15は、焼結パレット台車用吊具を閉状態から開の状態に変更する際の操作方法を示す図であって、(a)は支援装置の要部を示す正面図であり、(b)は焼結パレット台車用吊具の側面図である。
図17図15は、焼結パレット台車用吊具を閉状態から開の状態に変更する際の操作方法を示す図であって、(a)は支援装置の要部を示す正面図であり、(b)は焼結パレット台車用吊具の側面図である。
図18図15は、焼結パレット台車用吊具を閉状態から開の状態に変更する際の操作方法を示す図であって、(a)は支援装置の要部を示す正面図であり、(b)は焼結パレット台車用吊具の側面図である。
図19図15は、焼結パレット台車用吊具を閉状態から開の状態に変更する際の操作方法を示す図であって、(a)は支援装置の要部を示す正面図であり、(b)は焼結パレット台車用吊具の側面図である。
図20図20は、閉の状態にある焼結パレット台車用吊具を示す図であって、(a)は支援装置の要部を示す正面図であり、(b)は焼結パレット台車用吊具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態である焼結パレット台車用吊具について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態の焼結パレット台車用吊具1(以下、吊具1という)の吊り荷であるパレット台車100は、DL焼結機に備えられているものであって、図1に示すように、パレット本体100aと、パレット本体100aの幅方向両側の前後所定位置に配置された車輪100bと、を有している。車輪100bは、車軸100dに取り付けられている。車軸100dの一部および車輪100bは、パレット本体100aの幅方向両側に突出されている。車輪100bは、DL焼結機に備えられた無限軌道上をパレット台車100が走行する場合に走行輪として機能する。また、パレット台車100には、パレット本体100aの幅方向両端部に壁部100cが設けられている。
【0019】
また、図2には、吊具1の一対のフック部3、4が閉状態にあって、パレット台車100の車軸100dにフック部3、4が係合した状態を示し、図3には、吊具1の一対のフック部3、4が開状態にあって、パレット台車100の車軸100dにフック部3、4が係合されていない状態を示している。このように、パレット台車100の車軸100dには、吊具1のフック部3、4が係合可能とされており、吊具1ごとパレット台車100を吊り上げまたは吊り下げられるようになっている。
【0020】
図1図2及び図3に示すように、本実施形態の吊具1は、支持梁2と、一対のフック部3、4と、フック部3、4を保持する保持部5と、フック部3、4の開閉動作を支援する支援装置6とが備えられている。
【0021】
図1に示すように、支持梁2は、その長手方向がほぼ水平な方向に向けられた状態とされる。支持梁2は、例えば、H型鋼からなり、H型鋼を構成する一対のフランジ部2a、2bが支持梁2の上面2c及び下面2dを構成している。支持梁2の上面2cには、フック付ワイヤなどの玉掛け用具を取り付けるための取付部2eが設けられている。支持梁2は、その全長が、吊り下げ対象物であるパレット台車100の幅よりも長くなっている。支持梁2の下面2dには、パレット台車100の壁部100cに対する積載面2fが設けられている。
【0022】
図1及び図5図8に示すように、支持梁2の長手方向両端部2Aの下方には、一対のフック部3、4を開閉自在な状態で保持するための保持部5が備えられている。保持部5は、一対の保持板5aから構成されている。保持板5aは、所定の間隔を空けて互いに平行に向き合わされた状態で、支持梁2の下面2dに接合されている。支持梁2の下側のウエブ部2bには、ウエブ部2bから突出する4つの板状の取り付け部2fが接合されている。保持板5aは、これらの取り付け部2fと、支持梁2の下方のフランジ部2bとに取り付けられている。保持板5aにはそれぞれ、2つの貫通孔5bが設けられている。この貫通孔5bには、一対のフック部3、4をそれぞれ回動自在に保持するための回動軸5cが挿入されるようになっている。また、保持部5には、カバー部材5dが取り付けられている。なお、図2及び図3では、保持部5の図示を省略している。
【0023】
図1図3及び図9並びに図10に示すように、一対のフック部3、4は、支持梁2の長手方向両端部の下方に配置され、開閉自在であるとともにパレット台車100の車軸100dに係合可能とされている。一対のフック部3、4は、板状の部材から構成され、上端部3a、4aと、パレット台車100の車軸100dに係合可能な下端部3b、4bと、上端部3a、4aと下端部3b、4bを連結するアーム部3c、4cとを有する。各フック部3、4は、全体として湾曲した左右非対称な形状とされている。湾曲形状とされた各フック部3、4の内側の端面には、アーム部3c、4cと下端部3b、4bとにかけて延在する保持板3d、4dが接合されている。また、保持板3d、4dは、パレット台車100の車軸100dに当接可能とされている。湾曲形状とされた各フック部3、4の外側のアーム部3c、4cの端面には、引張ばね7を取り付けるための取り付け部3e、4eが設けられている。更に、各フック部3、4の上端部3a、4aには、貫通孔3f、4fが設けられている。この貫通孔3f、4fには、各フック部3、4が保持部5に保持される際に、各フック部3、4をそれぞれ回動自在に保持するための回動軸5c、5cが挿入されるようになっている。更に、図9及び図10に示すように、各フック部3、4には、開度を調整する際に作業者が操作するためのハンドル3g、4gが取り付けられている。
【0024】
次に、支援装置6について説明する。
図1図3及び図4に示すように、支援装置6は、一対のフック部3、4の開閉動作を支援するものであり、一対のフック部3、4の上端部3a、4aに設けられた連動機構8と、引張ばね7と、一対のフック部3、4を開状態または閉状態に固定可能な位置決め機構9と、が備えられている。なお、図4には、フック部3、4が閉状態にある場合の支援装置6の外観を示している。
【0025】
図2図4に示すように、連動機構8は、各フック部3、4の上端部3a、4aに設けられた回動軸5cとラック部8a、8bよりなる。各フック部3、4の上端部3a、4aには、上述したように、保持部5に対して各フック部3、4の上端部3a、4aを回転自在に保持するための回動軸5c、5cがある。また、図2図4及び図9並びに図10に示すように、各フック部3、4の上端部3a、4aの端面には、ラック部8a、8bが設けられている。一方のフック部3に設けられたラック部8aは、相互に離間しつつ端面から突出して設けられた2つの歯から構成されている。他方のフック部4に設けられたラック部8bは、端面から突出して設けられた1つの歯から構成されている。そして、各ラック部8a、8bが相互にかみ合わされている。
【0026】
これにより、図2及び図3に示すように、一対のフック部3、4のうち、他方のフック部4のみを操作してその開度を変化させると、当該フック部4の上端部4aが回動軸5cを中心にして回転し、これに伴い当該フック部4のラック部8bが回動軸5cの周方向に沿って変動する。一方のラック部8bが変動すると、これに追従してもう一方のラック部8aも回動軸5cを中心にして変動し、その結果、一方のフック部3の開度も変化させられる。このようにして連動機構8は、一対のフック部3、4のうちの何れか一方のフック部3、4の開度に応じて他方のフック部4、3の開度を追従させる。
【0027】
図2及び図3に示すように、引張ばね7は、一方のフック部3および他方のフック部4と、支持梁2とをそれぞれ連結するようにフック部3、4及び支持梁2に取り付けられている。引張ばね7は、各フック部3、4の外側に設けられたばね取り付け部3e、4eと、支持梁2に取り付けられたばね取り付け部2g、2gとの間に架け渡されている。引張ばね7の自然ばね長は、各フック部3、4が開状態と閉状態との間の中間状態に位置するときの各ばね取り付け部3e、4e、2gの間隔に合うように調整されている。これにより、一対のフック部3、4が中間状態から閉状態になるに従い、引張ばね7は自然ばね長よりも伸ばされ、一対のフック部3、4が中間状態から開状態になるに従い、引張ばね7は自然ばね長よりも圧縮される。なお、引張ばね7は、支持梁2ではなく、保持部5に取り付けられてもよい。
【0028】
図2図4に示すように、位置決め機構9は、一対のフック部3、4を開状態または閉状態に固定可能とするものであり、一方のフック部3に取り付けられたストッパ本体9aと、他方のフック部4に取り付けられた突起部9bと、ストッパ本体9aにスライド自在に取り付けられたスライドバー9cと、から構成される。位置決め機構9は、一対のフック部3、4の上端部3a、4aに配設されている。
【0029】
図4及び図11に示すように、ストッパ本体9aは、板状の部材であり、その長手方向の一端に回動軸9mが設けられている。ストッパ本体9aは、この回動軸9mを介して、その長手方向一端9dが一方のフック3に対して回動自在に取り付けられている。ストッパ本体9aの他端9e側には、長孔部10が設けられている。長孔部10は、ストッパ本体9aの板厚方向に貫通するように設けられている。長孔部10には、他方のフック部4に取り付けられた突起部9bが挿入可能とされている。また、ストッパ本体9aには、ストッパ本体9aの向きを操作するためのハンドル9fが備えられている。ハンドル9fを操作することで、回転軸9cを中心にしてストッパ本体9aが上下方向に回動可能とされている。更に、図4及び図11に示すように、ストッパ本体9aには、スライドバー9cを取り付けるための保持部材9g(図4及び図12参照)と、スライドバー9cをストッパ本体9aの長手方向に沿ってスライドさせる際にスライドバー9cを案内するガイド部材9hとが備えられている。また、ストッパ本体9aの他端9eには、スライドバー9cの移動範囲を規制する規制部材9iが設けられている。
【0030】
図4及び図11に示すように、長孔部10には、一対のフック部3、4を開状態にした場合に突起部9bが位置する第1孔部10aと、一対のフック部3、4を閉状態にした場合に突起部9bが位置する第2孔部10bと、第1孔部10aと第2孔部10bとを連通する第3孔部10cと、から構成されている。第1孔部10a及び第2孔部10bはそれぞれ、ストッパ本体9aの長手方向と直交する幅方向に沿って延在している。第3孔部10cは、ストッパ本体9aの長手方向に沿って延在している。第1孔部10aおよび第3孔部10cと、第2孔部10bおよび第3孔部10cとは、それぞれ相互に連通している。なお、図2及び図4には、一対のフック部3、4が閉状態にある場合に、第1孔部10aに突起部9bが位置していることが示されている。また、図3には、一対のフック部3、4が開状態にある場合に、第2孔部10bに突起部9bが位置していることが示されている。
【0031】
突起部9bは、他方のフック部3に取り付けられており、ストッパ本体9aの長孔部10に挿入されている。突起部9bは、一対のフック部3、4の開度に合わせて長孔部10内を移動可能とされている。
【0032】
図4及び図13に示すように、スライドバー9cは、棒状の部材であり、ストッパ本体9aおよび保持部材9gによって、ストッパ本体9aに対してスライド自在に取り付けられている。スライドバー9cは、ストッパ本体9aに設けられたガイド部材9hによって、ストッパ本体9aの長手方向に沿ってスライドするように取り付けられている。スライドバー9cには、その長手方向の一端側にハンドル9jが取り付けられており、長手方向の他端には凹部9kが設けられている。凹部9kは、ストッパ本体9aの他端9eに設けられた規制部材9iに嵌め合わされるようになっている。
【0033】
図4及び図11に示すように、ストッパ本体9aにおけるスライドバー9cの取り付け位置は、長孔部10の第1孔部10aと第3孔部10cの接続部分と、第2孔部10bと第3孔部10cの接続部分とに重なる位置とされている。第1孔部10aまたは第2孔部10bに突起部9bが位置する場合に、スライドバー9cがストッパ本体9aの他端9e寄りに位置すると、突起部9bの進路がスライドバー9cによって規制された状態になり、第1孔部10aまたは第2孔部10bから第3孔部10cへの突起部9bの移動が制限される。一方、スライドバー9cが、ストッパ本体9aの一端9d寄りに位置すると、第1孔部10a、第2孔部10b及び第3孔部10cにおける突起部9bの移動がスライドバー9cによって規制されない状態になる。
【0034】
次に、図14図20を参照して、吊具1のフック部3、4を閉状態から開の状態に変更する際の操作方法を説明する。
【0035】
図14には、開の状態にある吊具1が示されている。図14では、ストッパ本体9aに設けられた長孔部10の第2孔部10bに突起部9bが位置しており、また、スライドバー9cがストッパ本体9aの他端側(図中左寄り)に位置しており、長孔部10内における突起部9bの自由な移動が規制された状態にある。これにより、一方のフック部3に対して回動軸9mを介して回動自在に取り付けられているストッパ本体9aは、その回動軸9mを介しての動きが規制された状態になる。一方のフック部3と他方のフック部4は、動きが規制されたストッパ本体9aによって連結された状態になっている。これにより、一対のフック部3、4は開状態のまま保持部5に保持された状態になる。
【0036】
次に、図15に示すように、スライドバー9cをストッパ本体9aに対してスライドさせ、ストッパ本体9aの一端9d側(右寄り)に位置させる。これにより、長孔部10内における突起部9bの自由な移動が可能な状態になる。これに伴い、一方のフック部3に対して回動軸9mを介してストッパ本体9aを動かすことが可能になる。
【0037】
次に、図16に示すように、作業者によってストッパ本体9aのハンドル9fを操作させて、回動軸9mを中心にしてストッパ本体9aを上方に持ち上げ、ストッパ本体9aの姿勢を図16に示す姿勢とさせる。長孔部10内の突起部9bは、この動きに追従して第2孔部10bから第3孔部10cに相対移動させられる。なお、この段階に至るまでの間、引張ばね7は自然長よりも圧縮された状態にある。
【0038】
次に、図17に示すように、作業者によって一方のフック部3または他方のフック部4のいずれか一方を操作させて、一対のフック部3、4を中間状態にする。作業者が他方のフック部4を操作すると、一方のフック部3は連動機構8によって他方のフック部4と同様にその開度が変更される。ここで、中間状態は、開状態と閉状態の中間の状態であり、引張ばね7は自然長の状態になる。そのため、引張ばね7は、図16に示す状態から図17に示す状態に至る間に、圧縮状態から自然長の状態に変化し、この際のばね力がフック部3、4の質量の一部を負担することになり、フック部3、4を操作する作業者の負担が軽減される。
【0039】
更に、図18に示すように、作業者によって一方のフック部3または他方のフック部4のいずれか一方を更に操作させて、一対のフック部3、4を閉状態にする。連動機構8は、引き続き、作業者による他方のフック部4の操作に合わせて、一方のフック部3の開度を変更させる。ここで、閉状態における引張ばね7は自然長よりも伸ばされた状態にある。そのため、引張ばね7は、図17に示す状態から図18に示す状態に至る間に、自然長状態から引張状態に変化するため、作業者によるフック部4の操作の際に、若干の押し込みが必要になる。
【0040】
また、一対のフック部3、4が開状態から中間状態を経て閉状態に至ると、フック部3、4同士が接近して間隔が短くなる。これにより、長孔部10内の突起部9bは、第3孔部10cを移動して第2孔部10b側から第1孔部10a側に至る。
【0041】
次に、図19に示すように、作業者によってストッパ本体9aのハンドル9fを操作させて、回動軸9mを中心にしてストッパ本体9aを下方に引き下げ、ストッパ本体9aの姿勢を図19に示す姿勢とさせる。長孔部10内の突起部9bは、この動きに追従して第3孔部10cから第1孔部10aに相対移動させられる。
【0042】
次に、図20に示すように、スライドバー9cをストッパ本体9aに対してスライドさせ、ストッパ本体9aの他端9e側(左寄り)に位置させる。これにより、長孔部10内における突起部9bの自由な移動が規制される。これに伴い、一方のフック部3に対して回動軸9mを介してストッパ本体9aを動かすことができなくなる。これにより、一対のフック部3、4が閉状態のまま固定される。
【0043】
図20では、ストッパ本体9aに設けられた長孔部10の第1孔部10aに突起部9bが位置しており、また、スライドバー9cがストッパ本体9aの他端9e側(図中左寄り)に位置しており、長孔部10内における突起部9bの自由な移動が規制された状態にある。これにより、一方のフック部3に対して回動軸9mを介して回動自在に取り付けられているストッパ本体9aは、その回動軸9mを介しての動きが規制された状態になる。一方のフック部3と他方のフック部4は、動きが規制されたストッパ本体9aによって連結された状態になっている。これにより、一対のフック部3、4は閉状態のまま保持部に保持された状態になる。ここまでの作業を実行するために必要な作業者の人数は、1名で十分である。
【0044】
以上、図14図20を参照しつつ、一対のフック部3、4を開状態から閉状態にする際の一連の動作を説明した。これと逆に、一対のフック部3、4を閉状態から開状態にする際には、図14図20を参照しつつ説明した動作を、逆順に行えばよい。
【0045】
本実施形態の吊具1を用いて、例えば、DL焼結機に備えられたパレット台車100を、DL焼結機から搬出する際には、クレーンのフックに本実施形態の吊具1を吊り下げた状態で、吊具1をパレット台車100上に配置する。このとき、図1及び図2に示すように、パレット台車100のパレット本体100aの壁部100cの上に、支持梁2を載置させる。なお、一対のフック部3、4は、開状態にしておく。そして、作業者が支援装置6を操作することで、一対のフック部3、4を閉状態に固定し、これにより一対のフック部3、4をパレット台車100の車軸100dに係合させる。その上で、クレーンによって吊具1とともにパレット台車100を吊り上げる。一対のフック部3、4を閉状態から開状態に、あるいは、開状態から閉状態にするには、図14図20を参照しつつ説明したように、1名の作業者が対応すれば十分である。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の吊具1によれば、一対のフック部3、4の開閉動作を支援する支援装置6として、一対のフック部3、4の開度を連動させる連動機構8と、引張ばね7と、位置決め機構9とが備えられており、連動機構8によって一方のフック部3、4を操作して開度を調整することで、他方のフック部4、3の開度を同時に操作することができ、その際に、引張ばね7のばね力によってフック部3、4を操作する際の入力量が軽減され、更に位置決め機構9により一対のフック部3、4を開状態または閉状態に固定できる。このため、本実施形態の吊具1によれば、従来、複数名の作業者が必要であったパレット台車100に対する玉掛け作業を、一名の作業者で行うことが可能になり、作業負荷も軽減される。よって、パレット台車100の玉掛け作業における作業負荷の低減と作業効率の向上に加えて安全性を向上することができる。
【0047】
また、本実施形態の吊具1によれば、支援装置6の連動機構8が、一対のフック部3、4を保持部5に回動自在に支持させる回動軸5cと、一対のフック部3、4の上端部3a、4aの端面にそれぞれに設けられ、相互にかみ合わされるラック部8a、8bと、から構成され、簡単な構造で一対のフック部3、4を連動させることができるので、故障が少なく、保守管理を容易に行うことができる。
【0048】
更に、本実施形態の吊具1によれば、位置決め機構9が、第1孔部10a、第2孔部10b及び第3孔部10cを有する長孔部10が設けられたストッパ本体9aと、長孔部10を移動自在な突起部9bと、突起部9bの移動を規制するスライドバー9cとからなり、一対のフック部3、4及びストッパ本体9aを操作することによって突起部9bを第1孔部10aまたは第2孔部10bに位置させるとともに、スライドバー9cによって突起部9bの移動を規制することにより、一対のフック部3、4の開度の変更および開度の固定を容易に行うことができ、複数名の作業者が必要であったパレット台車100に対する玉掛け作業を、一名の作業者で行うことが可能になり、作業効率を向上できる。
【0049】
また、本実施形態の吊具1によれば、支持梁2に、パレット台車100の壁部100cの上端に対する積載面2fがあるので、パレット台車100の壁部100c上端に積載した状態で、パレット台車100に対する一対のフック部3、4の係合作業または係合の解除作業を行うことが可能になり、支持梁2を吊り下げたままの状態でこれらの作業を行う場合に比べて、作業を安全に行うことできる。
【0050】
更に、本実施形態の吊具1によれば、従来に比べてパレット台車100の玉掛け作業の作業時間も大幅に短縮できる。例えば、従来の玉掛け用具としてワイヤ用い、パレット台車100の4つの車軸100dにそれぞれワイヤを装着し、このワイヤをクレーンのフックに掛けた状態にして、パレット台車100を吊り上げるまでに要する作業時間を100とした場合、本実施形態の吊具1を用いた場合の作業時間は57となり、約40%の時間短縮を図ることができる。
【符号の説明】
【0051】
1…吊具(焼結パレット台車用吊具)、2…支持梁、2A…長手方向両端部、2f…積載面、3、4…フック部、3a、4a…フック部の上端部、5…保持部、5c…回動軸、6…支援装置、7…引張ばね、8…連動機構、8a、8b…ラック部、9…位置決め機構、9a…ストッパ本体、9b…突起部、9c…スライドバー、10…長孔部、10a…第1孔部、10b…第2孔部、10c…第3孔部、100…パレット台車、100b…車輪、100c…壁部、100d…車軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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