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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087535
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/66 20170101AFI20240624BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240624BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
G06T7/66
B41J2/01 451
B41J29/393 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202417
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 政人
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
5L096
【Fターム(参考)】
2C056EB27
2C056EB36
2C056EC26
2C056EC37
2C056EC77
2C061AP01
2C061AQ05
2C061KK18
5L096FA60
(57)【要約】
【課題】処理時間を増加させることなくドットの誤検出を低減することが可能な画像処理装置を提供する。
【解決手段】ドットを含む印刷画像を読み取って得られた画像データにおける探索領域の濃度重心を算出する探索処理を2回実施し、2回目の探索処理で算出した濃度重心をドットの位置と判定するドット探索処理部11を備える。ドット探索処理部11は、1回目の探索処理で算出した濃度重心に基づき、2回目の探索処理における探索領域を設定するものであり、2回目の探索処理で算出した濃度重心が、1回目の探索処理における探索領域の外側にある場合には、1回目の探索処理で算出した濃度重心を含まない領域を探索領域に設定して2回目の探索処理をやり直す。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドットを含む印刷画像を読み取って得られた画像データにおける探索領域の濃度重心を算出する探索処理を2回実施し、2回目の探索処理で算出した濃度重心をドットの位置と判定するドット探索処理部を備え、
前記ドット探索処理部は、
1回目の探索処理で算出した濃度重心に基づき、2回目の探索処理における探索領域を設定するものであり、
2回目の探索処理で算出した濃度重心が、1回目の探索処理における探索領域の外側にある場合には、1回目の探索処理で算出した濃度重心を含まない領域を探索領域に設定して2回目の探索処理をやり直す、画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置のプリントタイミングを補正するために、調整パターンのドット座標と設計上のドット座標とのずれ量からプリントタイミングの補正量を算出することが行われている。ドット位置を算出する際には、基準となるマーカが印字された印刷物をスキャンして画像を解析し、マーカを検出する。検出したマーカの位置に基づいて基準位置を設定し、基準位置を中心として正方形或いは長方形の探索窓を設定し、探索窓内にて濃度重心を算出することにより、ドットの位置を決定する。
【0003】
しかし、用紙に夾雑物が存在し用紙表面に汚れが生じる場合には、ドット探索に影響を及ぼすことがある。特に、ドット探索窓の境界を跨ぐような大きな汚れが発生した場合に、ドット位置を誤検出してしまう。
【0004】
また、今回のドット探索によって決定された座標を基準とし、所定距離だけ移動した先に、次回探索時の探索窓を設定するので、一度ドット位置がずれると後続のドット探索で本来探索するべきドットとは異なるドットを探索してしまう場合がある。このため、プリントタイミング補正量の算出精度が低下する。
【0005】
特許文献1には、ドットや汚れの面積によりノイズを除去することでドットの位置の誤検出を抑制することが開示されている。
【0006】
特許文献2には、ノイズによりドット検出が失敗した場合には、ユーザが汚れを取り除くなどの対策を採ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-291107号公報
【特許文献2】特許6915632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した特許文献1に開示された技術では、ドットの面積、汚れの面積を計算するため、処理時間が増加する恐れがある。また、特許文献2では、ユーザの手で取り除くことができない汚れが存在する場合には、処理時間が増加する恐れがある。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、処理時間を増加させることなくドットの誤検出を低減することが可能な画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本願発明に係る画像処理装置は、ドットを含む印刷画像を読み取って得られた画像データにおける探索領域の濃度重心を算出する探索処理を2回実施し、2回目の探索処理で算出した濃度重心をドットの位置と判定するドット探索処理部を備え、前記ドット探索処理部は、1回目の探索処理で算出した濃度重心に基づき、2回目の探索処理における探索領域を設定するものであり、2回目の探索処理で算出した濃度重心が、1回目の探索処理における探索領域の外側にある場合には、1回目の探索処理で算出した濃度重心を含まない領域を探索領域に設定して2回目の探索処理をやり直す。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、処理時間を増加させることなくドットの誤検出を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、ドット探索処理部の詳細構成を示すブロック図である。
図3図3は、調整パターンに印刷されているドットを探索する処理を示す説明図である。
図4図4は、ドット探索を2回実施する際の処理を示す説明図である。
図5図5は、ドットd1-1の探索時に、ドット位置D2-1がドットd1から大きく離れた場合の、後続のドット探索処理を示す説明図である。
図6図6は、探索窓を小さく設定してドット位置を探索する処理を示す説明図である。
図7A図7Aは、調整パターンに小さい汚れが存在する場合のドット探索処理を示す説明図である。
図7B図7Bは、ドット位置D2-1が大きくずれたときの、ドット探索処理を示す説明図である。
図8図8は、ドット位置D2-1が探索窓P1と探索窓th1-1の間に存在する例を示す説明図であり、(a)はドット位置D1-1とD2-1の差分が閾値TH1よりも大きい場合を示し、(b)はドット位置D1-1とD2-1がほぼ一致している場合を示している。
図9図9は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置の処理手順を示すフローチャートである。
図10A図10Aは、ドット位置の取得処理を示すフローチャートの第1の分図である。
図10B図10Bは、ドット位置の取得処理を示すフローチャートの第2の分図である。
図11図11は、従来の面積判定によるドット検出及び本実施形態によるドット検出において、演算回数の比較結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、部材ないし部分の縦横の寸法や縮尺は実際のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法や縮尺は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0014】
以下に示す実施形態では、画像処理装置の一例としてインクジェット印刷装置100を例に挙げて説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置100(以下、「印刷装置100」と略す)の構成を示すブロック図、図2は、図1に示すドット探索処理部11の詳細構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、印刷装置100は、制御部1と、サイド給紙部2と、内部給紙部3と、印刷処理部4と、反転部5と、排紙部6と、操作パネル7と、スキャナ部8、を備えている。
【0016】
サイド給紙部2は、印刷装置100を構成する筐体内に一部が配置され、筐体外に一部が突出する状態で設置されている。サイド給紙部2は、印刷媒体を載置する給紙台を備えており、所定のタイミングで印刷媒体を印刷処理部4に送り出す。
【0017】
内部給紙部3は、印刷装置100を構成する筐体内に配置されている。内部給紙部3は、印刷媒体を載置する給紙台を備えており、所定のタイミングで印刷媒体を印刷処理部4に送り出す。
【0018】
印刷処理部4は、4つのラインヘッドを備えるヘッドユニット41を有しており、搬送ベルト(図示省略)によって搬送された印刷媒体にインクを吐出して印刷処理を施す。印刷処理部4は、プリントタイミング調整用のパターンを含む画像データを印刷する。
【0019】
反転部5は、印刷処理部4によって一方の面に印刷処理が施された印刷済みの印刷媒体を反転し、再度印刷処理部4の上流側へ搬送する。印刷済みの印刷媒体の他方の面に印刷処理を施すことができる。
【0020】
排紙部6は、印刷装置100の筐体から突出したトレイを有し、印刷処理部4で印刷済みの印刷媒体を収容する。
【0021】
操作パネル7は、液晶ディスプレイを有するタッチパネルを備え、種々の設定入力画面を表示し、印刷開始の指示入力や印刷条件の設定入力などの種々の設定入力を受け付ける。
【0022】
スキャナ部8は、印刷処理部4で印刷されたプリントタイミング調整用の調整パターンが印刷された印刷媒体の画像を読み取り、画像データを取得する。
【0023】
制御部1は、CPU(Central Processing Unit)および半導体メモリなどを備える。制御部1は、半導体メモリに予め記憶されたプログラムをCPUに実行させることによって、印刷装置100の各部の動作を制御する。
【0024】
制御部1は、スキャナで読み取られた画像データを取得し、その画像データに基づいて、印刷処理部4を制御することによって印刷処理を実行する。制御部1は、ドット探索処理部11と、補正パラメータ生成部12、及びタイミング補正部13を備えている。
【0025】
図2に示すようにドット探索処理部11は、基準検出部111と、領域・閾値設定部112と、ドット探索部113と、ドット位置判定部114、を備えている。
【0026】
基準検出部111は、調整パターンの画像に含まれるマーカを検出し、このマーカから基準となるドットを検出する。
【0027】
領域・閾値設定部112は、基準となるドットを中心として所定の範囲となる領域(例えば、矩形の領域)を探索領域に設定する。領域・閾値設定部112は、探索領域の大きさを示す閾値を設定する。領域・閾値設定部112はまた、後述するドット位置判定部で判定されたドット位置を基準として、所定の距離だけ移動した地点を次回の探索の基準となるドットに設定し、更に、このドットに対して探索領域を設定する。
【0028】
ドット探索部113は、領域・閾値設定部112で設定された探索領域中のドットを探索する。ドット探索部113は、基準となるドット以外に、他のドット、汚れにより生じているドットなどを探索する。
【0029】
ドット位置判定部114は、探索領域中に含まれるドットから、ドットの重心を算出し、この重心位置をドット位置として判定する。探索領域中に、基準となるドットのみが存在する場合には、このドットの位置がドット位置として設定される。
【0030】
図1に示す補正パラメータ生成部12は、各探索領域で判定されたドット位置に基づいて、プリントタイミングの補正パラメータを生成する。
【0031】
タイミング補正部13は、補正パラメータ生成部12で生成された補正パラメータに基づいて、ヘッドユニット41によるプリントタイミングを補正する。即ち、タイミング補正部13は、記録媒体に対してインクを吐出する複数のインクジェットヘッドを、印刷媒体およびインクジェットヘッドの少なくとも一方の移動方向に直交する方向に複数配列したヘッドユニット41のプリントタイミングを補正する。
【0032】
[探索領域の設定、ドット探索処理の説明]
次に、本実施形態に係る印刷装置100による探索領域の設定及びドット探索処理について、図3図8を参照して説明する。
【0033】
図3は、調整パターンに印刷されているドットを探索する処理を示す説明図である。調整パターンには、ドットd1-1、d1-2、d1-3からなるドット群、及びドットd2-1、d2-2、d2-3からなるドット群が存在している。そして、領域・閾値設定部112は、探索窓(探索領域)を設定することにより、ドットd1-1、d1-2、d1-3の順に探索する。
【0034】
領域・閾値設定部112により、基準となるドットとして例えばドットd1-1が設定される。更に図3の符号X1に示すようにドットd1-1を中心とした探索窓th1-1が設定される。探索窓th1-1内におけるドット濃度の重心をドット位置D1-1(図中「×」で記載)として算出する。探索窓th1-1内にはドットd1-1のみが存在するので、探索窓th1-1のドット位置D1-1は、ドットd1-1の位置と一致する。
【0035】
このドット位置D1-1から所定距離だけ移動した地点を中心として、2つ目のドット探索を行う。即ち、符号X2に示すように探索窓th1-2を設定してドット探索を行う。その結果、ドットd1-2が探索され、ドット位置D1-2が算出される。即ち、調整パターンに汚れが存在しない場合には、1つ目のドット位置D1-1から所定距離だけ移動させることにより、2つ目のドット位置D1-2を精度良く探索することができる。
【0036】
一方、調整パターンに汚れが生じている場合には、図3に示したようにドット位置D1-1、D1-2を高精度に探索することができない。そこで、ドット探索を2回実施することが行われる。図4は、ドット探索を2回実施する際の処理を示す説明図であり、1回目の探索窓th1-1、及び2回目の探索窓th2-1を示している。
【0037】
この処理では、1回目のドット探索にて図3に示したようにドットd1-1を中心として探索窓th1-1を設定し、この内部においてドット濃度の重心をドット位置D1-1とする。更に、ドット位置D1-1を中心として探索窓th1-1と同一サイズの探索窓th2-1を設定する。探索窓th2-1内のドット濃度の重心をドット位置D2-1とし、このドット位置D2-1を基準として後続のドットd1-2(図3参照)を探索する。
【0038】
図4(a)は調整パターンに汚れが生じていない場合、(b)は調整パターンに汚れQ1が生じている場合、(c)は調整パターンに汚れQ1に対して相対的に大きい汚れQ2が生じている場合における探索窓th1-1、th2-1を示している。
【0039】
図4(a)に示すように、調整パターンに汚れが発生していない場合には、1回目の探索窓th1-1により、ドットd1-1の位置がドット位置D1-1として算出される。更に、このドット位置D1-1を中心として2回目の探索窓th2-1が設定され、ドット位置D2-1が算出される。2回目の探索窓th2-1は1回目の探索窓th1-1と一致するので、ドット位置D2-1は、ドットd1-1と一致する。従って、後続のドットd1-2(図3参照)の探索に影響を与えない。
【0040】
図4(b)に示すように、調整パターンに汚れQ1が発生している場合には、1回目の探索窓th1-1によりドットd1-1、及び汚れQ1が検出される。従って、探索窓th1-1内におけるドット濃度の重心を示すドット位置D1-1は、図4(b)のようにドットd1-1から離れた位置に移動する。
【0041】
汚れQ1は、探索窓th1-1内に全て含まれているので、ドット位置D1-1を中心として2回目の探索窓th2-1を設定した場合に、ドット位置D2-1はドット位置D1-1と一致する。従って、後続のドットd1-2(図3参照)の探索への影響は小さい、或いは影響を与えない。即ち、調整パターンに汚れQ1が存在する場合でも、その大きさが小さければ、1回目の探索窓th1-1で算出したドット位置D1-1と、2回目の探索窓th2-1で算出したドット位置D2-1は一致するので、後続のドット探索へ影響を与えないものと考えられる。
【0042】
図4(c)に示すように、調整パターンに前述した汚れQ1よりも相対的に大きい汚れQ2が発生している場合には、1回目の探索窓th1-1によりドットd1-1、及び汚れQ2の一部が検出される。従って、ドット位置D1-1は図4(c)のように、ドットd1-1から離れた位置に移動する。
【0043】
汚れQ2は、探索窓th1-1の外側まで存在しているので、このドット位置D1-1を中心として2回目の探索窓th2-1を設定すると、ドット位置D2-1(図中、「+」で表記)は1回目の探索窓th1-1の外側の領域となってしまう。即ち、大きい汚れQ2が存在すると、ドット位置D2-1はドットd1-1から大きく離れてしまうことになる。この場合には、後続のドット探索に大きく影響を与えてしまい、正確なドット探索ができなくなってしまう。以下、この内容について図5を参照して説明する。
【0044】
図5は、ドットd1-1の探索時に、ドット位置D2-1がドットd1から大きく離れた場合の、後続のドット探索処理を示す説明図である。なお、図5では、2回目の探索窓th2-1の記載を省略している。
【0045】
図5に示すように、調整パターンにドットd1-1、d1-2、d1-3からなるドット群R1、及びドットd2-1、d2-2、d2-3からなるドット群R2が存在している場合には、領域・閾値設定部112は、ドットd1-1、d1-2、d1-3の順に探索する必要がある。
【0046】
しかし、探索窓th1-1内に汚れQ3が存在する場合には、上述したように探索窓th1-1に対してドット位置D2-1が設定される。このドット位置D2-1を基準とすると、次回の探索では探索窓th1-2が設定されてしまい、この場合には、探索窓th1-2内にドットd2-2が含まれてしまい、ドットd2-2がドット位置D2-2に設定されてしまう。このため、その後の探索ではドットd2-3を含む探索窓th1-3が設定されてしまい、探索するべきドット群を誤認識してしまう。
【0047】
本実施形態では図4(c)に示したように、2回目の探索窓th2-1で探索されたドット位置D2-1が、1回目の探索窓th1-1の外部である場合には、探索窓の大きさが小さくなるように変更して、再度ドットの探索処理を行う。即ち、探索窓th1-1による1回目の探索処理及び探索窓th2-1による2回目の探索処理を1ループとする処理を2回繰り返す。即ち、第1のループ及び第2のループを実行する。以下では、第1のループにおける1回目の探索窓をth1-1、2回目の探索窓をth2-1として記載し、第2のループにおける1回目の探索窓をth1’-1、2回目の探索窓をth2’-1として記載する。
【0048】
以下、図6を参照して詳細に説明する。図6(a)は前述した図4(c)と同様に、汚れQ4が存在することにより、ドット位置D2-1が1回目の探索窓th1-1の外側になった場合の例を示す説明図である。図6(b)は、第2のループにおいて探索窓th1’-1が小さくなるように変更した場合におけるドット位置D2-1の探索結果を示す説明図である。
【0049】
第1のループ(1回目の探索処理及び2回目の探索処理)が終了した時点で、ドット位置D2-1が1回目の探索窓th1-1の外側になった場合には、探索窓th1-1を、ドット位置D1-1を含まないように小さくした探索窓th1’-1に変更して、第2のループ(1回目の探索処理及び2回目の探索処理)を行う。
【0050】
図6(a)に示すように、汚れQ4によりドット位置D2-1が探索窓th1-1の外側となった場合には、図6(b)に示すように、第2のループにおいて、探索窓th1’-1がドット位置D1-1を含まないように探索窓th1’-1が小さくなるように変更して、再度1回目の探索処理及び2回目の探索処理を行う。
【0051】
図6(b)に示すように、第2のループにおける探索窓th1’-1が小さくなるように変更したことにより、汚れQ4は探索窓th1’-1に含まれなくなる。このため、第2のループで探索されるドット位置D1-1、D2-1は、ドットd1-1と一致する。従って、後続のドット探索に影響を及ぼすことを回避できる。
【0052】
即ち、第2のループで探索窓th1’-1を小さく設定することにより、図4(c)に示した例では探索の継続が困難とされていた汚れQ2が存在する場合でも、高精度にドットd1-1、d1-2、d1-3(図5参照)の探索、即ち、同一のドット群の探索が可能になる。
【0053】
図6(c)は、図6(a)に示した汚れQ4よりも相対的に大きい汚れQ5が存在することにより、ドット位置D2-1が1回目の探索窓th1-1の外側になった場合の例を示している。第2のループでは、第1のループで探索したドット位置D1-1を含まないように小さくした探索窓th1’-1を採用して、1回目の探索処理及び2回目の探索処理を行う。
【0054】
具体的には、図6(c)に示すように、ドット位置D2-1が探索窓th1-1の外側であると判定された場合には、図6(d)に示すように、第2のループにおいて探索窓th1’-1がドット位置D1-1を含まないように探索窓th1’-1の大きさを変更して、再度1回目の探索処理及び2回目の探索処理を行う。
【0055】
図6(d)に示すように、探索窓th1-1を小さくした第2のループにおいても、汚れQ5は探索窓th1’-1に含まれている。このため、第2のループの探索処理によるドット位置D2-1は、ドットd1-1から離れた位置になってしまう。このような場合には、調整パターンには画像補正に適していない汚れが存在する画像であると判断して、ディスプレイ(図示省略)などにエラーメッセージを表示する。
【0056】
また、図6(a)では、第1のループにおいてドット位置D2-1が探索窓th1-1の外側となった場合に、図6(b)に示すように、第2のループにおいて探索窓th1’-1が第1のループで探索したドット位置D1-1を含まないように変更することについて示した。本実施形態では、ドット位置D2-1が探索窓th1-1の内側である場合でも、ドット位置D1-1と、ドット位置D2-1の差分が閾値TH1よりも大きい場合には、探索窓th1-1がドット位置D1-1を含まないように変更する。
【0057】
以下、図7A図7Bを参照して詳細に説明する。なお、図7A図7Bでは、2回目の探索窓th2-1の記載を省略している。図7Aは、調整パターンに小さい汚れQ6が存在する場合のドット探索処理を示す説明図である。図7Aの符号X11に示すように、探索窓th1-1内に汚れQ6が存在する場合であっても、汚れQ6が小さい場合には、ドット位置D2-1はドットd1-1から大きく離間しない。従って、符号X12に示すように、次回の探索窓th1-2を設定すると、この探索窓th1-2には、ドットd2-2は含まれず、ドット位置D2-2はドットd1-2の位置に戻る。したがって、後続のドット探索に影響を与えない。
【0058】
一方、図7Bの符号X21に示すように、ドット位置D2-1が探索窓th1-1の境界のギリギリの位置である場合には、次回の探索窓th1-2を設定すると、符号X22に示すように探索窓th1-2には、ドットd1-2の一部、及びドットd2-2の一部が含まれてしまう。従って、ドット位置D2-2は、ドットd1-2から大きく離れてしまい、後続のドット探索に影響を与えてしまう。
【0059】
1回目の探索窓th1-1により探索されたドット位置D1-1、及び2回目の探索窓th2-1により探索されたドット位置D2-1の差分が閾値TH1よりも大きい場合には、ドット位置をずらす要因が存在し、ドット位置D1-1とD2-1がほぼ同一である場合には、その位置にドットが存在すると推察できる。
【0060】
本実施形態では、図8に示すように第1のループにおける探索窓th1-1に対して数%小さい領域となる探索窓P1を設定し、ドット位置D2-1が探索窓P1と探索窓th1-1の間に存在するか否か、及び、1回目の探索窓th1-1のドット位置D1-1と2回目の探索窓th2-1のドット位置D2-1に応じて、第2のループを実施するか否かを判定する。
【0061】
以下、図8を参照して詳細に説明する。図8(a)は、ドット位置D2-1が探索窓P1と探索窓th1-1の間に存在し、且つ、ドット位置D1-1とD2-1の差分が閾値TH1よりも大きい場合を示している。ドット位置D1-1とD2-1の差分が閾値TH1よりも大きいということは、探索窓th1-1の内部にドット位置をずらす要因が存在していると推察できる。この場合には、前述した図6(b)に示したように、探索窓を探索窓th1’-1となるように小さく変更して、第2のループを実施する。
【0062】
図8(b)は、ドット位置D2-1が探索窓P1と探索窓th1-1の間に存在し、且つ、ドット位置D1-1とD2-1がほぼ一致している場合を示している。2つのドット位置が一致しているということは、その位置にドットd1-1が存在していると推察できる。従って、第2のループを実施しない。
【0063】
以下、図9図10A図10Bに示すフローチャートを参照して、本実施形態に係る印刷装置100の処理手順について説明する。
【0064】
初めに図9に示すステップS1において、印刷装置100により、プリントタイミング調整パターンを印刷する。
【0065】
ステップS2において制御部1は、スキャナ部8により、プリントタイミング調整パターンの画像を読み取る。
【0066】
ステップS3において、プリントタイミング調整パターンから、ドット位置を取得する。ドット位置の取得について図10A図10Bを参照して後述する。
【0067】
ステップS4において制御部1は、ドット位置が正常に取得されたか否かを判定する。
【0068】
正常に取得された場合には(S4;YES)、ステップS5において、プリントタイミング補正量を算出する。その後、本処理を終了する。
【0069】
正常に取得されない場合には(S4;NO)、ステップS6において、ディスプレイ(図示省略)にエラーメッセージを表示する。その後、本処理を終了する。
【0070】
次に、図10A図10Bに示すフローチャートを参照して、ステップS3に示したドット位置を取得する処理について説明する。
【0071】
初めに図10AのステップS11において基準検出部111は、調整パターンに含まれるマーカを検出し、このマーカから基準点(基準となるドット)を探索する。具体的には、図6(a)に示したドットd1-1を探索する。
【0072】
ステップS12において領域・閾値設定部112は、前述した閾値TH1を設定する。
【0073】
ステップS13において領域・閾値設定部112は、ドットを探索する際の探索窓を設定する。具体的には、図6(a)に示したように、ドットd1-1を基準とした探索窓th1-1、及びドット位置D1-1を基準とした探索窓th2-1を設定する。
【0074】
ステップS14において領域・閾値設定部112は、1回目の探索窓th1-1、及び2回目の探索窓th2-1の大きさを設定する。
【0075】
ステップS15においてドット探索部113は、1回目のドット探索を行う。具体的には、図6(a)に示したように探索窓th1-1内のドットを探索する。
【0076】
ステップS16においてドット位置判定部114は、探索窓th1-1内におけるドットの重心を算出し、この位置をドット位置D1-1に設定する。ドット位置D1-1を図示省略のメモリなどに保存する。
【0077】
ステップS17においてドット探索部113は、2回目のドット探索を行う。具体的には、図6(a)に示したようにドット位置D1-1を基準として設定した探索窓th2-1内のドットを探索する。
【0078】
ステップS18においてドット位置判定部114は、探索窓th2-1内におけるドットの重心を算出し、この位置をドット位置D2-1に設定する。ドット位置D2-1を図示省略のメモリなどに保存する。
【0079】
ステップS19においてドット位置判定部114は、メモリに保存されているドット位置D1-1、D2-1を比較判定する。
【0080】
図10BのステップS20においてドット位置判定部114は、ドット位置D2-1が探索窓th1-1の内部に存在するか否かを判定する。ドット位置D2-1が探索窓th1-1の内部に存在する場合には(S20;YES)、ステップS21に処理を進め、そうでなければ(S20;NO)、ステップS23に処理を進める。例えば、図6(a)、(c)に示したように、ドット位置D2-1が探索窓th1-1の内部に存在しない場合には、ステップS20においてNO判定となる。
【0081】
ステップS21においてドット位置判定部114は、ドット位置D2-1が探索窓P1とth1-1との間にあるか否かを判定する。探索窓P1とth1-1との間にあると判定された場合には(S21;YES)、ステップS22に処理を進め、そうでなければ(S21;NO)、ステップS24に処理を進める。例えば、図8(a)、(b)に示したように、ドット位置D2-1が探索窓P1とth1-1との間に存在する場合には、ステップS21においてYES判定となる。
【0082】
ステップS22においてドット位置判定部114は、ドット位置D1-1とD2-1の差分がステップS12で設定した閾値TH1未満であるか否かを判定する。閾値TH1未満である場合には(S22;YES)、ステップS24に処理を進め、そうでなければ(S22;NO)、ステップS23に処理を進める。
【0083】
図8(a)に示したように、ドット位置D1-1とD2-1の差分が閾値TH1よりも大きいということは、探索窓th1-1の内部にドット位置をずらす要因が存在していると推察されるので、ステップS23に処理を進める。即ち、リトライフラグの判定結果に応じて第2のループを実施するか否かが決定される。
【0084】
一方、図8(b)に示したように、ドット位置D2-1が探索窓P1と探索窓th1-1の間に存在し、且つ、ドット位置D1-1とD2-1がほぼ一致している場合には、その位置にドットが存在していると推察されるので、リトライを実行せずにステップS24に処理を進める。
【0085】
ステップS23において、ドット位置判定部114は、リトライフラグが立っているか否かを判定する。リトライフラグが立っていない場合には(S23;NO)、図10Aに示すステップS25に処理を進め、そうでなければ(S23;YES)、異常判定を通知して本処理を終了する。初期的には、リトライフラグは立っていないので、ステップS23においてNO判定となる。
【0086】
ステップS25においてドット位置判定部114は、リトライフラグを立てる。
【0087】
ステップS26において、領域・閾値設定部112は、ドット位置D1-1を含まないように、探索窓を再設定する。具体的には、図6(b)、(d)に示したように、第1のループで設定した探索窓th1-1よりも小さい探索窓th1’-1を設定する。探索窓th1’-1は、第1のループで設定されたドット位置D1-1を含まない範囲に設定する。その後、ステップS14以降の処理を繰り返す。
【0088】
第2のループにおいて設定された探索窓th1’-1が、第1のループにおいて設定された探索窓th1-1よりも小さいことにより、例えば図6(b)に示したように、汚れQ4が存在する場合に、この汚れQ4が探索窓th2’-1に含まれなくなるので、汚れQ4の影響を受けずに第2のループのドット位置D2-1を探索できる。即ち、ステップS20において、YES判定となる。
【0089】
一方、図6(d)に示したように、汚れQ4よりも相対的に大きい汚れQ5が存在する場合には、汚れQ5の一部が第2のループの探索窓th2’-1に含まれるので、汚れQ5の影響を受けてしまい、ステップS20において、NO判定となる。その後、ステップS23においてリトライフラグが立っていると判定されるので、異常であると判定される。即ち、図6(c)、(d)に示したように、大きい汚れQ5が存在する場合には、この調整パターンは使用することができない程度の汚れが存在するものと判定して、異常判定を通知する。
【0090】
ステップS24においてドット探索部113は、最後のドットについての探索が終了したか否かを判定し、終了していない場合には(S24;NO)、ステップS13に処理を戻し、そうでなければ(S24;YES)、本処理を終了する。
【0091】
図11は、従来の面積判定によるドット検出及び本実施形態によるドット検出において、演算回数の比較結果を示す説明図である。
【0092】
図11に示すように、従来の面積判定では本実施形態のドット検出と比較して、加算処理が著しく増加している。また、汚れ判定処理が「+α」として発生している。これらの結果から、本実施形態では、演算負荷が軽減していることが理解される。
【0093】
このように、本実施形態に係る印刷装置100(画像処理装置)は、ドットを含む印刷画像を読み取って得られた画像データにおける探索領域の濃度重心を算出する探索処理を2回実施し、2回目の探索処理で算出した濃度重心をドットの位置と判定するドット探索処理部11を備える。ドット探索処理部11は、1回目の探索処理で算出した濃度重心に基づき、2回目の探索処理における探索領域を設定するものであり、2回目の探索処理で算出した濃度重心が、1回目の探索処理における探索領域の外側にある場合には、1回目の探索処理で算出した濃度重心を含まない領域を探索領域に設定して2回目の探索処理をやり直す。
【0094】
従って、用紙に汚れが存在する場合であっても、汚れの面積が小さい場合には、即時にドット探索の誤検知を回避することができる。このため、処理速度の大幅な増加が生じることなくプリントタイミング補正量を正確に算出することが可能になる。即ち、本実施形態に係る印刷装置では、処理時間を増加させることなくドットの誤検出を低減することが可能になる。
【0095】
また、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0096】
[付記1]
ドットを含む印刷画像を読み取って得られた画像データにおける探索領域の濃度重心を算出する探索処理を2回実施し、2回目の探索処理で算出した濃度重心をドットの位置と判定するドット探索処理部を備え、
前記ドット探索処理部は、
1回目の探索処理で算出した濃度重心に基づき、2回目の探索処理における探索領域を設定するものであり、
2回目の探索処理で算出した濃度重心が、1回目の探索処理における探索領域の外側にある場合には、1回目の探索処理で算出した濃度重心を含まない領域を探索領域に設定して2回目の探索処理をやり直す、画像処理装置。
【符号の説明】
【0097】
1 制御部
2 サイド給紙部
3 内部給紙部
4 印刷処理部
5 反転部
6 排紙部
7 操作パネル
8 スキャナ部
11 ドット探索処理部
12 補正パラメータ生成部
13 タイミング補正部
41 ヘッドユニット
100 インクジェット印刷装置
111 基準検出部
112 領域・閾値設定部
113 ドット探索部
114 ドット位置判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11