IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 一文機工株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-スタッド溶接用プラグ 図1
  • 特開-スタッド溶接用プラグ 図2
  • 特開-スタッド溶接用プラグ 図3
  • 特開-スタッド溶接用プラグ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008754
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】スタッド溶接用プラグ
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/20 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B23K9/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022120003
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】594077367
【氏名又は名称】一文機工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】増田 文一郎
(72)【発明者】
【氏名】増田 朋紀
(57)【要約】
【課題】溶接ピンを磁気吸着する吸着力を大きくできるスタッド溶接用プラグを提供する。
【解決手段】スタッド溶接用プラグ10は、溶接電流が通電される円柱状の電極11と、電極11の外周側に電極11と同心状に設けられた環状の永久磁石21と、永久磁石21の一方の磁気吸着面22に電極11と同心状に設けられた環状のフロントヨーク31と、永久磁石21の他方の磁気吸着面23に設けられた円盤状のバックヨーク41と、バックヨーク41と一体に形成され、永久磁石21の外周面24及びフロントヨーク31の外周面34を覆う円筒状の外周ヨーク51とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ガンの先端部に取り付けられ、ワッシャー部と前記ワッシャー部に立設したピン部とを有する溶接ピンを磁気吸着しつつ、前記溶接ピンと前記溶接ガンとを電気的に接続して溶接電流を通電するためのスタッド溶接用プラグであって、
前記溶接電流が通電される円柱状の電極と、
前記電極の外周側に前記電極と同心状に設けられた環状の磁石と、
前記磁石の一方の磁気吸着面に前記電極と同心状に設けられた環状のフロントヨークと、
前記磁石の他方の磁気吸着面に設けられた円盤状のバックヨークと、
前記バックヨークと一体に形成され、前記磁石の外周面及び前記フロントヨークの外周面を覆う円筒状の外周ヨークと、
を備えたことを特徴とするスタッド溶接用プラグ。
【請求項2】
前記フロントヨークの内周面に形成された縮径段部が、前記電極の先端部の外周面に形成された拡径段部に係合していることを特徴とする請求項1に記載のスタッド溶接用プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ガンの先端部に取り付けられ、ワッシャーを有する溶接ピンを磁気吸着しつつ、この溶接ピンと溶接ガンとを電気的に接続するためのスタッド溶接用プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
ダクトやパネル材等の母材に断熱材や防音材等の被覆材を固定するために、母材に仮保持した被覆材にワッシャーを有する溶接ピンを挿通した後、この溶接ピンの先端部を母材にスタッド溶接(コンデンサ放電(CD)型スタッド溶接)で溶着するものが知られている。
【0003】
上述したスタッド溶接においては、溶接ピンの保持と溶接電流の通電のため、溶接ガンの先端部にスタッド溶接用プラグを取り付けて使用する。
このようなスタッド溶接用プラグとして、実開昭49-63131号公報(特許文献1)の図2には、溶接電流を通電する円柱状の電極の外周側に複数の磁石を環状に設け、この磁石の磁気吸着力で溶接ピンのワッシャーを吸着して保持するものが記載されている。
【0004】
また、他のスタッド溶接用プラグとして、特開2021-87965号公報(特許文献2)の図5には、円柱状の電極の外周側に環状に設けた磁石をキャップ状のヨークで覆い、ヨークの先端面で溶接ピンのワッシャーを磁気吸着するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭49-63131号公報
【特許文献2】特開2021-87965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のスタッド溶接用プラグにあっては、当該プラグに磁気吸着して保持した溶接ピンを被覆材に挿通しようとする際に、当該プラグの磁気吸着面上で溶接ピンの吸着位置がずれてしまうことがあるといった課題があり、溶接ピンを磁気吸着する吸着力を大きくできるスタッド溶接用プラグの出現が望まれていた。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために案出されたものであり、溶接ピンを磁気吸着する吸着力を大きくできるスタッド溶接用プラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明のスタッド溶接用プラグは、溶接ガンの先端部に取り付けられ、ワッシャー部と前記ワッシャー部に立設したピン部とを有する溶接ピンを磁気吸着しつつ、前記溶接ピンと前記溶接ガンとを電気的に接続して溶接電流を通電するためのスタッド溶接用プラグであって、
前記溶接電流が通電される円柱状の電極と、
前記電極の外周側に前記電極と同心状に設けられた環状の磁石と、
前記磁石の一方の磁気吸着面に前記電極と同心状に設けられた環状のフロントヨークと、
前記磁石の他方の磁気吸着面に設けられた円盤状のバックヨークと、
前記バックヨークと一体に形成され、前記磁石の外周面及び前記フロントヨークの外周面を覆う円筒状の外周ヨークと、を備えている。
【0009】
本発明のスタッド溶接用プラグにおいては、磁石の溶接ピンを吸着する側の磁気吸着面にフロントヨークを設けた。これにより、磁石の一方の磁気吸着面(例えばN極)→フロントヨーク→溶接ピンのワッシャー部→外周ヨーク→バックヨーク→磁石の他方の磁気吸着面(例えばS極)からなる磁気回路が形成されるため、溶接ピンを磁気吸着する吸着力が大きくなる。
【0010】
本発明のスタッド溶接用プラグにあっては、前記フロントヨークの内周面に形成された縮径段部が、前記電極の先端部の外周面に形成された拡径段部に係合していることが好ましい。
【0011】
このような構成とすることにより、前記フロントヨークの前記磁石と反対方向への移動が防止できるため、溶接後にスタッド溶接用プラグを溶接ピンから取り外す際に、フロントヨークが磁石から離脱するのを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスタッド溶接用プラグによれば、溶接ピンを磁気吸着する吸着力が大きくなるため、当該プラグに吸着された溶接ピンの吸着位置のずれを防止することができ、これにより、スタッド溶接の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るスタッド溶接用プラグを使用したスタッド溶接装置の概略構成を示す模式的な構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係るスタッド溶接用プラグの模式的な断面図である。
図3図2に示すスタッド溶接用プラグの模式的な正面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係るスタッド溶接用プラグの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、スタッド溶接装置1は、溶接ガン2と、溶接装置本体(電源部)3とを備えており、溶接ガン2と溶接装置本体(電源部)3とは溶接ケーブル4で接続されている。
【0015】
溶接ガン2の先端部2aには、溶接ピン7を保持しつつ、溶接ガン2と溶接ピン7とを電気的に接続して溶接電流を通電するためのスタッド溶接用プラグ10が取り付けられている。
【0016】
本実施形態に係るスタッド溶接用プラグ10(以下、「プラグ10」とも称す。)は、図2及び図3に示すように、中心部に設けられた円柱状の電極11と、円環状(リング状)のネオジム磁石等の永久磁石21と、円環状(リング状)のフロントヨーク31と、円盤状のバックヨーク41と、円筒状の外周ヨーク51と、絶縁性カバー61とを備えて構成されている。なお、円環状に形成された永久磁石21に替えて、複数の永久磁石を電極11の外周側に環状に設けてもよい。
【0017】
図2において、符号7は、プラグ10に磁気吸着される溶接ピンを示しており、この溶接ピン7は、銅メッキ軟鉄線等からなり、先端部71が先尖りの細長いピン部72と、亜鉛メッキ鋼板等からなる薄肉円盤状のワッシャー部74とを有しており、ピン部71の基端部73がワッシャー部74の中心部にカシメ結合されている。なお、ピン部72やワッシャー部73は、上述した材料に限られず、他の材料を用いてもよい。
【0018】
図2に示すように、円柱状の電極11の先端部12には、径方向に拡大する段部13が形成されており、電極11の基端部14は、バックヨーク41に形成された貫通孔42及び絶縁性カバー61に形成された貫通孔62を貫通してプラグ10の外部に露出している。
【0019】
円環状の永久磁石21は、電極11と同心状に設けられている。永久磁石21の一方の磁気吸着面(例えばN極の磁極)22には、フロントヨーク31が吸着しており、このフロントヨーク31の溶接ピン7を吸着する側の吸着面32は、電極11の先端面16と中心方向(又は放射方向)に面一となるように構成されている。
また、永久磁石21の他方の磁気吸着面(例えばS極の磁極)23には、円盤状のバックヨーク41が吸着している。
【0020】
フロントヨーク31の内周面には、径方向に縮小する段部33が形成されており、この段部33は、電極11の先端部12に形成された段部13と係合している。この係合により、溶接後にプラグ10を溶接ピン7から取り外す際に、フロントヨーク31が永久磁石21から離脱するのを防止している。
【0021】
永久磁石21の外周面24及びフロントヨーク31の外周面34は、電極11と同心状に設けられた円筒状の外周ヨーク51で覆われている。この外周ヨーク51は、円盤状のバックヨーク41と一体に形成されており、バックヨーク41は、直接又は他の部材を介して電極11の外周面15に取り付けられている。
【0022】
外周ヨーク51の先端面52の内周側の面部53は、フロントヨーク31の吸着面32と中心方向(又は放射方向)に略同一面となるように構成されている。また、先端面52の外周側の面部54は、溶接ピン7のワッシャー部74の周縁部の斜面部75を磁気吸着し易いように傾斜面となっている。
【0023】
絶縁性カバー61は、バックヨーク41の背面43を覆う円盤状の背面カバー部63と、外周ヨーク51の外周面55を覆う円筒状の外周ヨークカバー部64とが一体に形成されており、絶縁性カバー61は、直接又は他の部材を介して電極11の外周面15に取り付けられている。
【0024】
絶縁性カバー61の外周ヨークカバー部64の先端部65は、外周ヨーク51の先端面52及びフロントヨーク31の吸着面32よりも軸方向にわずかに突出している。
【0025】
以上のような構成において、プラグ10は、電極11の基端部14が溶接ガン2の先端部2aに取り付けられて、溶接ピン7のワッシャー部74をフロントヨーク31の吸着面32及び外周ヨーク51の先端面52で磁気吸着して溶接ピン7を保持する。また、プラグ10は、電極11の先端面16が溶接ピン7のピン部71の基端部73の端面に当接して、溶接ピン7に溶接電流を通電する。
【0026】
本実施形態のプラグ10は、永久磁石21の一方の磁気吸着面(N極)22に吸着するフロントヨーク31を設け、このフロントヨーク31の吸着面32と外周ヨーク51の先端面52で溶接ピン7のワッシャー部74を吸着するように構成されている。これにより、プラグ10によれば、永久磁石21の一方の磁気吸着面(N極)22→フロントヨーク31→溶接ピン7のワッシャー部74→外周ヨーク51→バックヨーク41→永久磁石21の他方の磁気吸着面(S極)23からなる磁気回路が形成されるため、溶接ピン7を磁気吸着する吸着力が大きくなる。
この結果、プラグ10に磁気吸着して保持した溶接ピン7を被覆材に挿通しようとする際に、溶接ピン7の吸着位置のずれを防止することができ、これにより、スタッド溶接の作業性を向上させることができる。
【0027】
また、本実施形態のプラグ10においては、永久磁石21の一方の磁気吸着面22に吸着するフロントヨーク31を設ける構成のため、プラグ10の径方向及び軸方向の大型化を防止しつつ、溶接ピン7を磁気吸着する吸着力を大きくすることができる。
【0028】
さらに、本実施形態のプラグ10によれば、溶接ピン7を磁気吸着する吸着力が大きくなるため、ワッシャー部に亜鉛メッキ鋼板よりも磁気吸着力が小さくなる材料を用いた溶接ピンであっても、溶接ピンの吸着位置のずれを防止することができ、ワッシャー部の材料選択の自由度を高めることができる。
【0029】
また、図2及び図3に示した本実施形態のプラグ10において、図4に示すように、永久磁石21の外周面24及びフロントヨーク31の外周面34と外周ヨーク51の内周面56と隙間に、樹脂や非磁性金属からなる円筒状のスペーサー101を設けてもよい。このようなスペーサー101を設けることにより、前記隙間への磁性体の侵入による磁気回路の乱れを防止できるとともに、永久磁石21及びフロントヨーク31と外周ヨーク51との間隔を一定に保つことができる。
【符号の説明】
【0030】
1 スタッド溶接装置
2 溶接ガン
3 溶接装置本体(電源装置)
7 溶接ピン
10 スタッド溶接用プラグ
11 電極
21 永久磁石
22 一方の磁気吸着面
23 他方の磁気吸着面
31 フロントヨーク
41 バックヨーク
51 外周ヨーク
71 ピン部
74 ワッシャー部
図1
図2
図3
図4