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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087552
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】地盤改良体への二酸化炭素の固定方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240624BHJP
   B60P 3/16 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B01D53/14 100
B60P3/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202439
(22)【出願日】2022-12-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構/カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発/コンクリート、セメント、炭酸塩、炭素、炭化物などへのCO2利用技術開発「セメント系廃材を活用したCO2固定プロセス及び副産物の建設分野への利用技術の研究」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 南
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴穂
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 邦生
(72)【発明者】
【氏名】小島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】池尾 陽作
(72)【発明者】
【氏名】川尻 聡
(72)【発明者】
【氏名】松下 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】西岡 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隆仁
(72)【発明者】
【氏名】片村 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】竹内 勇斗
(72)【発明者】
【氏名】奈良 知幸
(72)【発明者】
【氏名】景山 勇輝
【テーマコード(参考)】
4D020
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020BA30
4D020BB01
4D020CA05
4D020DA03
4D020DB20
(57)【要約】
【課題】地盤改良体に二酸化炭素を固定する。
【解決手段】地盤改良体への二酸化炭素の固定方法は、土とセメント系固化材との硬化体である地盤改良体50を破砕した破砕体100を作製する破砕工程と、破砕体100に排ガス60に含まれる二酸化炭素を接触させて固定させる固定工程と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土とセメント系固化材との硬化体である地盤改良体を破砕した破砕体を作製する破砕工程と、
前記破砕体に二酸化炭素を接触させて固定させる固定工程と、
を備えた地盤改良体への二酸化炭素の固定方法。
【請求項2】
前記破砕工程では、前記破砕体の重量平均粒径を55mm以下とする、
請求項1に記載の地盤改良体への二酸化炭素の固定方法。
【請求項3】
前記破砕工程では、前記破砕体の重量平均粒径を30mm以下とする、
請求項2に記載の地盤改良体への二酸化炭素の固定方法。
【請求項4】
前記破砕工程では、前記破砕体の重量平均粒径を10mmとする、
請求項3に記載の地盤改良体への二酸化炭素の固定方法。
【請求項5】
前記固定工程は、前記破砕体を運送する貨物自動車のタンクで行う、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の地盤改良体への二酸化炭素の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良体への二酸化炭素の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水素イオン濃度指数(pH)が12未満のアルカリ性建設汚泥を改質するとともに中性化して高品質の再生土を製造する再生土製造システムおよび再生土製造方法に関する技術が開示されている。
【0003】
特許文献2には、コンクリート構造物の解体に伴って生じるコンクリート廃棄物から再生骨材を製造する方法と、この方法によって得られる再生骨材に関する技術が開示されている。
【0004】
特許文献3には、コンクリート構造物の解体等によって生じるコンクリート廃棄物の処理方法に関し、特に、コンクリート廃棄物から炭酸塩と再生骨材を得る方法に関する技術が開示されている。
【0005】
特許文献4には、コンクリート廃材から粗骨材を取り出して再生粗骨材を得る方法に係り、特に付着モルタル分が極めて少ない再生粗骨材を製造する方法に関する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献5及び特許文献6には、セメント質硬化体に二酸化炭素含有ガス(例えば、工場の排ガス)中の二酸化炭素を固定化するための方法に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-103071号公報
【特許文献2】特開平5-238792号公報
【特許文献3】特開平11-319765号公報
【特許文献4】特開平8-109052号公報
【特許文献5】特開2020-131074号公報
【特許文献6】特開2020-131076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コンクリート構造物の解体等によって生じるコンクリート廃棄物に二酸化炭素を固定することが提案されている。コンクリート廃棄物への二酸化炭素の固定は、例えばコンクリート廃棄物を粉砕した後、コンクリート成分の粉体と骨材等に分級して分け、コンクリート成分の粉体に二酸化炭素を固定する。
【0009】
しかし、土とセメント系固化材との硬化体である地盤改良体に二酸化炭素を固定することは行われていない。
【0010】
本発明は、上記事実を鑑み、地盤改良体に二酸化炭素を固定することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一態様は、土とセメント系固化材との硬化体である地盤改良体を破砕した破砕体を作製する破砕工程と、前記破砕体に二酸化炭素を接触させて固定させる固定工程と、を備えた地盤改良体への二酸化炭素の固定方法である。
【0012】
第一態様の地盤改良体への二酸化炭素の固定方法では、地盤改良体を破砕して破砕体とし、この破砕体に二酸化炭素を接触させることで二酸化炭素を効率的に固定させる。
【0013】
ここで、土とセメント系固化材との硬化体である地盤改良体には、コンクリートガラ等のコンクリート廃棄物とは異なり、骨材が入っていない又は殆ど入っていない。よって、地盤改良体を破砕した破砕体から骨材を分離することなく、そのまま二酸化炭素を固定できる。
【0014】
第二態様は、前記破砕工程では、前記破砕体の重量平均粒径を55mm以下とする、第一態様に記載の地盤改良体への二酸化炭素の固定方法である。
【0015】
第二態様の地盤改良体への二酸化炭素の固定方法では、破砕体の重量平均粒径を55mm以下とすることで、効率的に二酸化炭素を固定できる。
【0016】
第三態様は、前記破砕工程では、前記破砕体の重量平均粒径を30mm以下とする、第二態様の地盤改良体への二酸化炭素の固定方法である。
【0017】
第三態様の地盤改良体への二酸化炭素の固定方法では、破砕体の重量平均粒径を30mm以下とすることで、更に効率的に二酸化炭素を固定できる。
【0018】
第四態様は、前記破砕工程では、前記破砕体の重量平均粒径を10mmとする、第四態様に記載の地盤改良体への二酸化炭素の固定方法である。
【0019】
第四態様の地盤改良体への二酸化炭素の固定方法では、破砕体の重量平均粒径を10mmとすることで、二酸化炭素の削減量を最大又は略最大にすることができる
【0020】
第五態様は、前記固定工程は、前記破砕体を運送する貨物自動車のタンクで行う、第一態様~第四態様のいずれか一態様に記載の地盤改良体への二酸化炭素の固定方法である。
【0021】
第五態様の地盤改良体への二酸化炭素の固定方法では、破砕体を運送する貨物自動車のタンクで破砕体に二酸化炭素を固定するので効率的である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、地盤改良体に二酸化炭素を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】地盤改良体と普通コンクリートとの違いをまとめた表である。
図2】(A)は地盤改良体を模試的に示す断面図であり、(B)は地盤改良体を掘り起こして解体した状態を模式的に示す断面図である。
図3】(A)は破砕機で破砕して破砕体を作製する工程を模式的に示す工程図であり、(B)は二酸化炭素固定装置で破砕体に二酸化炭素を固定する工程を模式的に示す工程図である。
図4】破砕体の粒径と二酸化炭素の吸収量との関係及び破砕体の粒径と二酸化炭素の排出量との関係を説明するグラフである。
図5】破砕体の粒径と二酸化炭素の削減量との関係を測定した実験に用いた各試験体の粒度分布を示すグラフである。
図6】破砕体の粒径と二酸化炭素の削減量との関係を測定した実験の実験結果のグラフである。
図7】破砕体を輸送するタンクで二酸化炭素を固定するトラックの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<実施形態>
本発明の実施形態の地盤改良体への二酸化炭素の固定方法の一例について説明する。
【0025】
ここで、「地盤改良体」とは、セメントスラリー等のセメント系固化材と土とを攪拌して硬化したものである。地盤改良体には、コンクリートのように石などの骨材が含まれていない又は殆ど含まれてない。
【0026】
図1の表には、普通コンクリートと一般的な地盤改良体とを比較したものがまとめられている。なお、この図1の表の「主材料寸法」は、コンクリート成分以外の主成分の寸法(大きさ)である。また、この図1の表の「材料の質量比率例」は、水セメント比が50%の普通コンクリートの一般的な材料の質量比と、水セメント比が200%の地盤改良体の一般的な材料の質量比と、が示されている。
【0027】
[地盤改良体への二酸化炭素の固定工程]
地盤改良体への二酸化炭素の固定工程の一例について説明する。
【0028】
地盤改良体に二酸化炭素を固定する固定工程では、破砕機10(図2(A)参照)及び二酸化炭素固定装置20(図2(B)参照)を用いる。破砕機10は既製品を用いることができる。二酸化炭素固定装置20は、コンクリート廃棄物を粉砕して分級したコンクリート成分の粉体に二酸化炭素を固定する装置を流用することができる。
【0029】
なお、破砕機10(図2(A)参照)及び二酸化炭素固定装置20(図2(B)参照)は、地盤改良体50(図1(A))を掘り起こして解体する解体現場に設置されているが、これに限定されるものではない。
【0030】
まず、図2(A)及び図2(B)に示すように、地盤40中に構築されている地盤改良体50を、バックホウ、油圧ショベル及びパワーショベル等の掘削用建設機械で掘り起こして解体する。なお、地盤改良体50を掘り起こして解体したものを解体物52とする。
【0031】
図3(A)に示すように、解体物52を破砕機10で破砕して破砕体100を作製する。破砕機10は、破砕されて形成された破砕体100が予め定めた粒径となるように設定して破砕する。なお、「破砕体」とは、破砕された粒状の破砕物の集合体である。
【0032】
破砕体100の粒径は、後述するように破砕体100に固定される単位重量当たりの二酸化炭素の固定量から地盤改良体50を破砕体100に破砕するために要する単位重量当たりの二酸化炭素の排出量を引いた単位重量当たりの二酸化炭素の削減量に基づいて、設定する。本実施形態では、二酸化炭素の削減量が最大となる粒径に設定されている。二酸化炭素の削減量が最大となる破砕体100の粒径の求め方等は後述する。
【0033】
図3(B)に示すように、地盤改良体50(図2(A)参照)を破砕して作製した破砕体100を二酸化炭素固定装置20に投入し、二酸化炭素含有ガスの一例としての工場の排ガス60と破砕体100とを攪拌して、破砕体100と排ガス60中の二酸化炭素を接触させ、二酸化炭素を破砕体100に固定する。破砕体100に二酸化炭素を固定する際の温度及び湿度等は適宜設定する。例えば、コンクリート廃棄物を粉砕して分級したコンクリート成分の粉体に二酸化炭素を固定する場合と同様の方法で適切な温度及び湿度等に設定すればよい。
【0034】
なお、本実施形態では、排ガス60は、工場等からパイプライン62で輸送しているが、これに限定されるものではない。
【0035】
二酸化炭素が固定された破砕体100は、廃棄処理又は再利用する。廃棄処理する場合は、処分場等に埋め立て処理すること等が挙げられる。再利用の場合は、地盤改良体を構築する際に二酸化炭素が固定された破砕体100をセメント系固化材の替わりに又はこれにまぜて使用すること等が挙げられる。
【0036】
なお、前述した「二酸化炭素含有ガス」とは、炭酸ガス、つまり気体である二酸化炭素を含むガスを意味する。二酸化炭素含有ガスの例としては、工場の排ガス等が挙げられる。工場の排ガスとしては、セメント工場及び石炭火力発電所等の排ガスが挙げられる。また、工場の排ガスとしては、工場の排ガスから分離及び回収してなる高純度化したガスを用いることもできる。
【0037】
[破砕体の粒径の設定方法]
次に、破砕機10(図3(A)参照)で破砕する際に設定する破砕体100の粒径の設定方法について説明する。
【0038】
図4は、破砕体100の粒径の設定方法の概要を示している。図4のグラフのX軸は粒径であり、Y軸は二酸化炭素量である。
【0039】
グラフの線3Aは、破砕体100の粒径と二酸化炭素の固定量との関係を示している。このように、破砕体100の粒径が小さくなるにしたがって、比表面積が大きくなるので、その分二酸化炭素の固定量が多くなる。
【0040】
しかし、地盤改良体50(図2(A)参照)を破砕して形成する破砕体100の粒径を小さくすると、それに要するエネルギー消費量が増加する。つまり、地盤改良体50(図2(A)参照)を破砕して破砕体100とするために要する二酸化炭素の排出量が増加する。グラフの線3Bは、破砕体100の粒径と二酸化炭素の排出量との関係を示している。このように、破砕体100の粒径が小さくなるにしたがって、エネルギー消費量が増加するので、二酸化炭素の排出量が多くなる。
【0041】
図における粒径範囲S1及び粒径範囲S4は、二酸化炭素の固定量が二酸化炭素の排出量よりも小さい。これに対して、粒径範囲S2及び粒径範囲S3は、二酸化炭素の固定量が二酸化炭素の排出量よりも大きい。
【0042】
このように、粒径範囲S1及び粒径範囲S4では、二酸化炭素の固定量が二酸化炭素の排出量よりも小さいので、二酸化炭素は削減されない。これに対して、粒径範囲S2及び粒径範囲S3では、二酸化炭素の固定量が二酸化炭素の排出量よりも大きいので、二酸化炭素が削減される。
【0043】
なお、粒径範囲S2は、粒径を小さくするにしたがって二酸化炭素の固定量から排出量を引いた二酸化炭素の削減量が多くなる。粒径範囲S3は、粒径を小さくするにしたがって二酸化炭素の固定量から排出量を引いた二酸化炭素の削減量が小さくなる。そして、粒径S5が、二酸化炭素の削減量が最大となる。
【0044】
よって、二酸化炭素の削減量が最大となる粒径S5に設定することが望ましく、本実施形態においてもそのように設定している。
【0045】
[粒径と二酸化炭素と削減量との関係]
次に、破砕体100の粒径と二酸化炭素の削減量との関係を測定した実験例について説明する。
【0046】
まず、地盤改良体50(図2(A)参照)のサンプルを破砕して破砕体の試験体を作製する。このとき、粒径が異なる試験体を複数種類作製する。本実験では、試験体5A、5B、5C、5D、5E、5F、5G、5H、5J(図5参照)を作成した。また、本実験では、ハンマーで砕いて破砕した。そして、破砕後に透過百分率の100%の異なるふるい目のふるいでふるって、試験体5A、5B、5C、5D、5E、5F、5G、5H、5Jを作製した。
【0047】
図5は、試験体5A、5B、5C、5D、5E、5F、5G、5H、5Jの粒径分布を示している。なお、各試験体5A、5B、5C、5D、5E、5F、5G、5H、5Jの透過重量率が50%の値を重量平均粒径とする。なお、ふるい目の大きさが試験体の最大粒径と一致又は略一致する。また、粒径は、破砕体の一粒(破砕物)の最大寸法部分である。例えば、楕円形であれば、長軸の長さが粒径である。
【0048】
例えば、図5の試験体5Aの最大粒径は約125mmで重量平均粒径は約90mmであり、試験体5Bの最大粒径は約75mmで重量平均粒径は約55mmである。また、試験体5Cの最大粒径は約45mmで重量平均粒径は約30mmであり、試験体5Eの最大粒径は約20mmで重量平均粒径は約10mmである
【0049】
次に、試験体5A、5B、5C、5D、5E、5F、5G、5H、5Jをそれぞれ試験用の炭酸ガスと一緒に袋に入れて養生し、質量の増加が止まるまで放置する。そして、質量の増加量をそれぞれの試験体の二酸化炭素の固定量とする。なお、乾式と湿式との両方を行ったが湿式は乾式よりも固定量が少なったので、ここではデータから削除した。
【0050】
試験体5A、5B、5C、5D、5E、5F、5G、5H、5Jの粒径に破砕することに要する二酸化炭素の排出量は、破砕に用いたハンマーの打撃のエネルギーに基づいて算出した。
【0051】
具体的には、ハンマー重量を1.9kg、打撃速度を0.335秒/回、振り下ろし高さを10センチとし、破砕前の試料サイズを0.1m×0.1m×0.03とした。そして、それぞれの重量中心粒径になるまでハンマーで打撃した際のエネルギー量を求め、求めたエネルギー量を二酸化炭素の排出量に換算した。なお、エネルギー量の二酸化炭素の排出量への換算は、東京電力ホールディングス株式会社の2020年度の二酸化炭素排出係数である0.434kg-CO/kWhを用いた。
【0052】
次に、重量平均粒径が1mm(最大粒径2mm)の試験体5Hを例にとって算出手順を説明する。
【0053】
ハンマーの打撃回数は
1610秒/0.335=4806回
である。
ハンマーの重量を1.9kgで、振り下ろし量を0.075mとすると、
1.9(kg)×9.8×0.075(m)×4806(回)=6712(J)
1(kWh)=3.6×10^6(J)
となる。
【0054】
よって、
6712/(3.6×10^6)=1.86×10^(-3)(kWh)となり、
これを1m換算すると
1.86×10^(-3)/(3×10^(-4))=6.2(kWh)
となる。
【0055】
エネルギーロス率を20%と仮定し、
6.2×10/8=7.8(kWh)
東京電力ホールディングス株式会社の2020年度のCO排出係数
0.434kg-CO/kWhより
0.434×7.8=3.4(kg)
となり、3.4kgの二酸化炭素を排出すると算出される。
【0056】
このようにして算出した結果をまとめたものが、図6のグラフである。図6のグラフの黒三角(▲)の線6Aは、破砕体の単位重量当たりの重量平均粒径と二酸化炭素の排出量との関係を示している。重量平均粒径が30mm以上では、破砕に要するエネルギーは非常に小さいので、二酸化炭素の排出量は略0になっている。
【0057】
図6のグラフの白三角(△)の線6Bは、破砕体の単位重量当たりの粒径と二酸化炭素の固定量との関係を示している。そして、黒丸(●)の線6Cは、二酸化炭素の固定量から排出量を引いた破砕体の単位重量当たりの重量平均粒径と二酸化炭素の削減量との関係を示している。なお、線6Dは破砕体100(地盤改良体50)の単位重量当たりの二酸化炭素の固定量の理論値である。
【0058】
ここで、「二酸化炭素の固定量の理論値」とは、単位重量当たりに含まれる破砕体(地盤改良体)に含まれる酸化カルシウム(CaO)に全て二酸化炭素が反応したと仮定した場合の固定量である。なお、下記は、反応式である。
【0059】
CaO(56)+CO(44)=CaCO(100)+HO(18)
【0060】
そして、図6のグラフから破砕体100の重量平均粒径を約55mm以下とすれば、理論値の50%以上の二酸化炭素が固定されることが判る。なお、この破砕体100の重量平均粒径約55mmは、グラフの変曲点となっている。
【0061】
また、破砕体100の重量平均粒径を約30mm以下とすれば、理論値の70%以上の二酸化炭素を固定されることが判る。そして、破砕体100の重量平均粒径を約10mmとれば、二酸化炭素の削減量が最大又は略最大となる(図4のS5)。
【0062】
よって、破砕体100の重量平均粒径を55mm以下に設定することが望ましく、更に破砕体100の重量平均粒径を30mm以下とすることが望ましく、更に破砕体100の重量平均粒径を約10mmとすることが望ましい。なお、本実施形態では、破砕体100の重量平均粒径を約10mmに設定している。つまり、破砕機10の粒径の設定を破砕体100の重量平均粒径が約10mmになるように設定している。
【0063】
[作用及び効果]
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0064】
地盤改良体50を破砕して破砕体100とし、この破砕体100に排ガス60に含まれる二酸化炭素を接触させることで、地盤改良体50に二酸化炭素を固定させる。
【0065】
ここで、土とセメント系固化材との硬化体である地盤改良体50には、コンクリートガラ等のコンクリート廃棄物とは異なり、骨材が入っていない又は殆ど入っていない。よって、地盤改良体50を破砕した破砕体100から骨材を分離することなく二酸化炭素を固定できる。つまり、地盤改良体50を破砕機10で破砕するだけで地盤改良体50に二酸化炭素を固定することができる。
【0066】
また、地盤改良体50は、コンクリート廃棄物に比べて空隙率が大きいので(図1の表を参照)、その分接触面積が大きくなる。よって、コンクリート廃棄物を粉砕して分級したコンクリート成分の粉体に二酸化炭素を固定する場合よりも、地盤改良体50を破砕した破砕体100に固定する場合の方が、効率的に二酸化炭素を固定できる。また、このため、二酸化炭素を固定する際の排ガス60の温度(雰囲気温度)を低くできると考えられる。
【0067】
このように、地盤改良体50は、コンクリート廃棄物よりも簡易に且つ効率的に二酸化炭素を固定することができる。
【0068】
また、地盤改良体50を破砕した作製した破砕体100の重量平均粒径を、二酸化炭素の固定量から破砕に要する二酸化炭素の排出量を引いた二酸化炭素の削減量が最大又は略最大となる粒径、つまり重量平均粒径を10mmに設定している。よって、地盤改良体50の破砕体100に二酸化炭素を固定することによる二酸化炭素の削減量が最大又は略最大となる。
【0069】
なお、前述したように、二酸化炭素を固定する際の排ガス60の温度(雰囲気温度)を低くできると考えられるので、この点においても二酸化炭素を削減できると考えられる。
【0070】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0071】
例えば、上記実施形態では、地盤改良体50を破砕した作製した破砕体100の重量平均粒径を、二酸化炭素の削減量が最大又は略最大となるように設定、つまり図4の粒径S5又はその近傍になるように設定したが、これに限定されるものではない。
【0072】
なお、図4の粒径範囲S2又は粒径範囲S3が望ましく、更に粒径範囲S2の方が望ましい。或いは、前述したように破砕体100の重量平均粒径を55mm以下に設定することが望ましく、更に破砕体100の重量平均粒径を30mm以下とすることが望ましい。
【0073】
しかし、粒径範囲S1又は粒径範囲S4であってもよいし、破砕体100の重量平均粒径が55mmよりも大きくてもよい。つまり、破砕体100は、二酸化炭素の削減量を考慮しないで破砕されたものであってもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、地盤改良体50を掘削用建設機械で掘り起こして解体した解体物52を破砕機10で破砕して破砕体100を作製したが、これに限定されるものではない。地盤改良体50を掘削用建設機械で掘り起こして解体した解体物52を破砕機10で破砕することなく、解体物52に二酸化炭素を定着させてもよい。つまり、地盤改良体50を掘削用建設機械で掘り起こして解体したものを破砕体とし、これに二酸化炭素を固定させてもよい。なお、この場合においても、地盤改良体50を掘削用建設機械で掘り起こして解体して作製した破砕体の粒径は、図4の粒径範囲S2、粒径範囲S3及び重量平均粒径が55mm以下のいずれかであることが望ましい。
【0075】
また、例えば、上記実施形態では、破砕機10及び二酸化炭素固定装置20は、地盤改良体50を掘り起こして解体する解体現場に設置されているが、これに限定されるものではない。例えば、破砕機10は解体現場に設置し、二酸化炭素固定装置20は別の場所に設置されていてもよいし、破砕機及び二酸化炭素固定装置20の両方共に別の場所に設置してもよい。「別の場所」とは、例えば排ガス60を排出する工場の敷地内、或いはその近く等である。
【0076】
或いは、破砕機10で破砕した破砕体100を、破砕体100を使用する現場等に運送する貨物自動車のタンクで行ってもよい。具体的には、図7に示すトラック500のように密閉可能なタンク502に排ガス60等の二酸化炭素含有ガスと破砕体100とを入れ、ミキサー車のようにタンク502全体を回転させて撹拌しながら輸送、或いは、タンク502内に設けた図示されていない撹拌羽で撹拌しながら輸送する。そして、このように破砕体の輸送中に二酸化炭素を固定することで、二酸化炭素が更に削減される。
【0077】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0078】
40 地盤
50 地盤改良体
52 解体物(破砕体の一例)
60 排ガス(二酸化炭素含有ガスの一例)
100 破砕体
500 トラック(貨物自動車の一例)
502 タンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7