(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087554
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理方法、情報処理装置及びモデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202441
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】511265154
【氏名又は名称】SPPテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】平村 建夫
(57)【要約】
【課題】高い精度で半導体製造装置の排気系統の異常を判定するプログラム等を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係るプログラムは、半導体製造装置内に供給されるガスの種類及び流量、チャンバ内圧力、または自動圧力制御装置のバルブ開度のうち少なくとも二つを含むプロセスデータを取得し、前記プロセスデータを入力した場合に前記半導体製造装置内の推定圧力値を出力するように学習された学習モデルに、前記プロセスデータを入力して前記推定圧力値を出力し、前記推定圧力値に基づいて異常状態であるか判定する処理をコンピュータに実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置内に供給されるガスの種類及び流量、チャンバ内圧力、または自動圧力制御装置のバルブ開度のうち少なくとも二つを含むプロセスデータを取得し、
前記プロセスデータを入力した場合に前記半導体製造装置内の推定圧力値を出力するように学習された学習モデルに、前記プロセスデータを入力して前記推定圧力値を出力し、
前記推定圧力値に基づいて異常状態であるか判定する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
前記半導体製造装置内の真空計によって測定された実測圧力値を取得し、
前記推定圧力値と前記実測圧力値とに基づいて異常状態であるか判定する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
半導体装置内にガスを供給する製造プロセスを開始する前の装置アイドル状態において、前記プロセスデータを取得する
請求項1または2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記プロセスデータは、排気ポンプの稼働状態を含む
請求項1または2に記載のプログラム。
【請求項5】
前記実測圧力値と、前記推定圧力値との差分が所定値以上である場合、異常状態であると判定する
請求項2に記載のプログラム。
【請求項6】
前記推定圧力値と、前記実測圧力値との差分を連続的に取得し、
前記差分と時間を対応させた時系列データを作成し、
前記時系列データを表示部に表示する
請求項2に記載のプログラム。
【請求項7】
前記時系列データに基づいて、前記差分が所定値以上になる時間を予測する
請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
半導体製造装置内に供給されるガスの種類及び流量、チャンバ内圧力、または自動圧力制御装置のバルブ開度のうち少なくとも二つを含むプロセスデータを取得し、
前記プロセスデータを入力した場合に前記半導体製造装置内の推定圧力値を出力するように学習された学習モデルに、前記プロセスデータを入力して前記推定圧力値を出力し、
前記推定圧力値に基づいて異常状態であるか判定する
情報処理方法。
【請求項9】
半導体製造装置内に供給されるガスの種類及び流量、チャンバ内圧力、または自動圧力制御装置のバルブ開度のうち少なくとも二つを含むプロセスデータを取得するプロセスデータ取得部と、
前記プロセスデータを入力した場合に前記半導体製造装置内の推定圧力値を出力するように学習された学習モデルに、前記プロセスデータを入力して前記推定圧力値を出力する推定圧力値出力部と、
前記推定圧力値に基づいて異常状態であるか判定する異常判定部と
を備える情報処理装置。
【請求項10】
半導体製造装置における真空計の圧力値を取得し、
前記半導体製造装置に供給されるガスの種類及び流量、チャンバ内圧力、または自動圧力制御装置のバルブ開度のうち少なくとも二つを含むプロセスデータと、取得した前記圧力値とを含む訓練データを取得し、
取得した訓練データに基づき、前記半導体製造装置に供給されるガスの種類及び流量、チャンバ内圧力または自動圧力制御装置のバルブ開度のうち少なくとも二つを含むプロセスデータを入力した場合に、推定圧力値を出力する学習モデルを生成する
モデルの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、半導体製造装置の処理に係るプログラム、情報処理方法、情報処理装置及びモデルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置の異常を検知するための監視方法が提案されている。例えば、特許文献1に記載の監視方法は、半導体製造装置の真空ポンプ部分のガス温度に基づいて異常を判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のプログラムは、ガス温度のみに基づいて排気系統の異常を判定するため、排気系統の異常を判定する精度が低い。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、高い精度で半導体製造装置の排気系統の異常を判定するプログラム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係るプログラムは、半導体製造装置内に供給されるガスの種類及び流量、チャンバ内圧力、または自動圧力制御装置のバルブ開度のうち少なくとも二つを含むプロセスデータを取得し、前記プロセスデータを入力した場合に前記半導体製造装置内の推定圧力値を出力するように学習された学習モデルに、前記プロセスデータを入力して前記推定圧力値を出力し、前記推定圧力値に基づいて異常状態であるか判定する処理をコンピュータに実行させる。
【0007】
本開示の一実施形態に係るプログラムは、前記半導体製造装置内の真空計によって測定された実測圧力値を取得し、前記推定圧力値と前記実測圧力値とに基づいて異常状態であるか判定する。
【0008】
本開示の一実施形態に係るプログラムは、半導体装置内にガスを供給する製造プロセスを開始する前の装置アイドル状態において、プロセスデータを取得する。
【0009】
本開示の一実施形態に係るプログラムは、前記プロセスデータは、排気ポンプの稼働状態を含む。
【0010】
本開示の一実施形態に係るプログラムは、前記推定圧力値と、前記実測圧力値との差分が所定値以上である場合、異常状態であると判定する。
【0011】
本開示の一実施形態に係るプログラムは、前記推定圧力値と、前記実測圧力値との差分を連続的に取得し、前記差分と時間を対応させた時系列データを作成し、前記時系列データを表示部に表示する。
【0012】
本開示の一実施形態に係るプログラムは、前記時系列データに基づいて、前記差分が所定値以上になる時間を予測する。
【0013】
本開示の一実施形態に係る情報処理方法は、半導体製造装置内に供給されるガスの種類及び流量、チャンバ内圧力、または自動圧力制御装置のバルブ開度のうち少なくとも二つを含むプロセスデータを取得し、前記プロセスデータを入力した場合に前記半導体製造装置内の推定圧力値を出力するように学習された学習モデルに、前記プロセスデータを入力して前記推定圧力値を出力し、前記推定圧力値に基づいて異常状態であるか判定する。
【0014】
本開示の一実施形態に係る情報処理装置は、半導体製造装置内に供給されるガスの種類及び流量、チャンバ内圧力、または自動圧力制御装置のバルブ開度のうち少なくとも二つを含むプロセスデータを取得するプロセスデータ取得部と、前記プロセスデータを入力した場合に前記半導体製造装置内の推定圧力値を出力するように学習された学習モデルに、前記プロセスデータを入力して前記推定圧力値を出力する推定圧力値出力部と、前記推定圧力値に基づいて異常状態であるか判定する異常判定部とを備える。
【0015】
本開示の一実施形態に係るモデル生成方法は、半導体製造装置における真空計の圧力値を取得し、前記半導体製造装置に供給されるガスの種類及び流量、チャンバ内圧力、または自動圧力制御装置のバルブ開度のうち少なくとも二つを含むプロセスデータと、取得した前記圧力値とを含む訓練データを取得し、取得した訓練データに基づき、前記半導体製造装置に供給されるガスの種類及び流量、チャンバ内圧力または自動圧力制御装置のバルブ開度のうち少なくとも二つを含むプロセスデータを入力した場合に、推定圧力値を出力する学習モデルを生成する。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一実施形態に係るプログラムにあっては、高い精度で半導体製造装置が異常状態であるか判定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】半導体製造装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】情報処理装置が表示する画面の一例を示す模式図である。
【
図7】学習モデル生成の手順を示すフローチャートである。
【
図8】情報処理装置が行う処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態2に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図10】実施形態2に係る情報処理装置が表示する画面の一例を示す模式図である。
【
図11】実施形態2に係る情報処理装置が行う処理の手順を示すフローチャートである。
【
図12】第二半導体製造装置の概略構成を示す模式図である。
【
図13】第二学習モデル生成の手順を示すフローチャートである。
【
図14】装置立上げ中状態、装置アイドル状態、製造プロセス状態におけるプロセスデータ及び機器の状態を比較するテーブルである。
【
図15】チャンバ内圧力及びAPC開度の変動例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
以下本実施形態1に係るプログラム及び情報処理装置等の具体例を、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は半導体製造装置の概略構成を示す模式図である。本実施形態に係る半導体製造装置1は、半導体(MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を含む)の基板に対してプラズマ処理を施すことによりエッチング処理又は成膜処理等を行う装置である。半導体製造装置1は情報処理装置30を備え、情報処理装置30はサーバ装置5とデータ及び学習モデルの授受を行う。
【0020】
半導体製造装置1は、チャンバ11,試料台13、ガス供給源(ガスNo.1~No.6)、MFC(Mass Flow Controller)71、ガスバルブ71a、真空計72、APC(Automatic Pressure Controller、自動圧力制御装置)73、第一ポンプ74、第二ポンプ75、真空計76、排気管77、圧力・流量計78、及び温度計79を備える。
【0021】
ガスバルブ71aは、ガスの種類(ガスNo.1~No.6種類)がひも付けされたガス供給源からチャンバ11までの各流路に設けられる。MFC71は、ガス供給源とガスバルブ71aとの間の各流路に設けられ、各ガスの流量(ガスNo.1~No.6流量)を制御する。
【0022】
チャンバ11内に設けられる試料台13には、基板Sが載置される。基板Sが試料台13に設けられた静電チャック(図示略)に静電吸着した状態で、ガス供給源からチャンバ内にガスを供給し、図示しないプラズマ源によって基板Sにエッチング処理又は成膜処理等のプラズマ処理が施される。真空計72は、チャンバ11内の圧力(チャンバ内圧力)を測定する。
【0023】
半導体製造装置1は、チャンバ11内の壁面を加熱するヒータ(図示略)によって加熱を行う。また、試料台13に載置される基板Sの裏面にHeガスを供給して冷却を行う。圧力・流量計78は、基板Sの裏面に供給されるHeガスの圧力制御及び流量測定を行う。温度計79は、ヒータ温度を測定する。
【0024】
APC73は、自身が備えるバルブの開度(APC開度)を調節することによって、真空計72が測定するチャンバ11内の圧力(チャンバ内圧力)が設定圧力になるように制御する。第一ポンプ74は反応生成物を排気するためのポンプであり、例えばターボ分子ポンプである。第二ポンプ75は例えばドライポンプであり、第一ポンプ74を補助するためのポンプである。第一ポンプ74及び第二ポンプ75を稼働させることにより、チャンバ11内の反応生成物を排気するとともに、チャンバ11内を減圧する。以下、第一ポンプ74、第二ポンプ75及び排気管77を総じて排気系統とも称する。
半導体製造装置1は、基板Sへの処理が終了すると、APCが備えるバルブを全開してチャンバ内残留ガス及びHeガスを排出する。
【0025】
このように、半導体製造装置1は様々な機器及び測定器を備えており、情報処理装置30は、これら機器及び測定器から製造プロセスに関する様々なプロセスデータを取得することができる。図示の例では、情報処理装置30は、ガス供給源からガスNo.1~No.6種類、MFC71からガスNo.1~No.6流量、真空計72からチャンバ内圧力、APC73からAPC開度、第一ポンプ74から第一ポンプ74のモータ回転数(第一ポンプ回転数)、第二ポンプ75から第二ポンプ75のモータ回転数(第二ポンプ回転数)、圧力・流量計78からHeガス圧力・流量、及び温度計79からヒータ温度を取得し、プロセスデータに含めることが可能である。なお本実施形態において、第一ポンプ74及び第二ポンプ75の稼働状態は、第一ポンプ回転数及び第二ポンプ回転数である。第一ポンプ回転数及び第二ポンプ回転数は一定回転数になるように制御される。
【0026】
真空計76は、第一ポンプ74及び第二ポンプ75の間の排気管77の圧力値(実測圧力値)を測定する。情報処理装置30は、真空計76から実測圧力値を取得することが可能である。
【0027】
図2は、情報処理装置の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る情報処理装置30は、処理部31、記憶部32、通信部33、表示部34、操作部35及びカードスロット36などを備えて構成されている。なお本実施形態において情報処理装置30は1つの装置として構成されるものとするが、複数の装置が分散処理を行うことによって情報処理装置30としての機能を実現する構成であってもよい。また、情報処理装置30が半導体製造装置1内に組み込まれた構成であってもよい。
【0028】
情報処理装置30は、半導体製造装置1が異常状態であるか否かを判定する。半導体製造装置1は、チャンバ11内にガスを供給し、基板処理をおこなう。半導体製造装置1が半導体の製造を続けると、チャンバ11内に供給したガスの反応生成物(デポ物)が配管に詰まる、あるいは第一ポンプ74または第二ポンプ75の劣化によって排気能力が低下し、基板処理(プラズマ処理)の再現性が損なわれる。情報処理装置30は、排気系統が全て正常であると仮定した場合の、真空計76が示すべき、排気系統の圧力値(推定圧力値)を学習モデル32bによって出力する。半導体製造装置1が異常状態である場合、排気系統の排気能力が低下しているので、真空計76が測定する実測圧力値は推定圧力値よりも高くなる。情報処理装置30は、実測圧力値と推定圧力値との差分に基づいて、半導体製造装置1が異常状態であるか判定し、異常状態であると判定した場合、半導体製造装置1の使用者に通知する。
なお、情報処理装置30は第一ポンプ回転数または第二ポンプ回転数に基づいて半導体製造装置1が異常状態であるか否かを判定してもよい。チャンバ11内に供給したガスの反応生成物(デポ物)が配管に詰まることによって、第一ポンプまたは第二ポンプは回転数を維持出来なくなり減速してしまうことがある。情報処理装置30は、第一ポンプ回転数または第二ポンプ回転数が所定回転数よりも小さくなった場合に半導体製造装置1が異常状態であると判定することが可能である。
【0029】
処理部31は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)またはGPU(Graphics Processing Unit)等の演算装置を用いて構成されている。処理部31は、記憶部32に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、種々の処理を行うことができる。本実施形態において処理部31は、記憶部32に記憶されたプログラム32a及び学習モデル32bを読み出して実行することにより、半導体製造装置1内の推定圧力値を出力する処理、並びに、半導体製造装置1が異常状態であるか否か判定する処理、及び時系列データを作成する処理等の種々の処理を行う。
【0030】
記憶部32は、例えばハードディスクまたはSSD(Solid State Drive)等の大容量の記憶装置を用いて構成される。記憶部32は、処理部31が実行する各種のプログラム、及び処理部31の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施形態において記憶部32は、処理部31が実行するプログラム32a、プログラム32aの実行により行われる処理に用いられる学習モデル32b及び処理部31から出力されるデータを記録するデータベース32cを記憶している。
【0031】
本実施形態においてプログラム32a(プログラム製品)は、メモリカード等の記録媒体99に記録された態様で提供され、情報処理装置30は記録媒体99からプログラム32aを読み出して記憶部32に記憶する。ただし、プログラム32aは、例えば情報処理装置30の製造段階において記憶部32に書き込まれてもよい。例えばプログラム32aは、記録媒体99に記録されたものを書き込み装置が読み出して情報処理装置30の記憶部32に書き込んでもよい。プログラム32aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよい。
【0032】
学習モデル32bは、半導体製造装置1から取得したプロセスデータに基づいて、推定圧力値を出力する学習モデルである。本実施形態において学習モデル32bは、半導体製造装置1の種々の測定器により測定された、ガスNo.1~No.6種類及びガスNo.1~No.6流量、チャンバ内圧力またはAPC開度のうち、少なくとも二つを含むプロセスデータが入力されると、推定圧力値を出力する。なお、プロセスデータは第一ポンプ回転数、または第二ポンプ回転数のうち少なくとも一つを含んでもよく、ヒータ温度、またはHeガス圧力・流量を含んでもよい。なお
図2については学習モデル32bを一つのみ図示しているが、複数の学習モデル32bが記憶部32に記憶されてもよい。また、学習モデル32bは外部サーバが備えるクラウド内に記憶されてもよい。学習モデル32bの詳細については後述する。
【0033】
データベース32cは、処理部31が作成した時系列データを記録する。時系列データの詳細は後述する。なお、データ記録部は、時系列データに加えて、プロセスデータ、実測圧力値及び推定圧力値を記録してもよい。
【0034】
通信部33は、通信ケーブル等を介して半導体製造装置1に接続され、この通信ケーブルを介して半導体製造装置1との間で種々のデータの送受信を行う。本実施形態において通信部33は、半導体製造装置1の各測定器が計測したプロセスデータを、通信ケーブルを介した通信により受信して取得する。なお通信部33は、半導体製造装置1との間で無線通信を行う構成であってもよい。
【0035】
表示部34は、液晶ディスプレイ等で構成されており、処理部31の処理に基づいて種々の画像及び文字などを表示する。操作部35は、使用者の操作を受け付け、受け付けた操作を処理部31へ通知する。例えば操作部35は、マウス及びキーボード等の入力デバイスであり、これらの入力デバイスは情報処理装置30に対して取り外すことが可能な構成であってもよい。またたとえば操作部35は、表示部34の表面に設けられたタッチパネル等の入力デバイスにより使用者の操作を受け付けてもよい。
【0036】
カードスロット36は、メモリカード等の記録媒体99が着脱可能であり、装着された記録媒体99に対するデータの読み出し及び書き込みを行う。カードスロット36は、記録媒体99に対するデータを読み出して処理部31に与えるとともに、処理部31から与えられたデータを記録媒体99に書き込む。本実施形態においては、予めサーバ装置5にて機械学習がなされた学習モデル32bは記録媒体99にて記録されて情報処理装置30に提供され、情報処理装置30は記録媒体99に記録された学習モデル32bをカードスロット36に読み出して記憶部32に記憶する。なお本実施形態においては、情報処理装置30及びサーバ装置5の間のデータの授受を記録媒体99にて行う構成とするが、これに限るものではなく、例えば情報処理装置30及びサーバ装置5がLAN(Local Area Network)又はインターネット等の通信によりデータの授受を行ってもよい。
【0037】
なお記憶部32は、情報処理装置30に接続された外部記憶装置であってもよい。また情報処理装置30は、複数のコンピュータを含んで構成されるマルチコンピュータであってもよく、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。また情報処理装置30は、表示部34及び操作部35等のユーザインタフェースを備えていなくてもよく、この場合には例えば別の装置を介して管理者が情報処理装置30の操作を行う構成としてもよい。
【0038】
本実施形態に係る情報処理装置30の処理部31には、記憶部32に記憶されたプログラム32aを処理部31が読み出して実行することにより、プロセスデータ取得部31a、実測圧力値取得部31b、推定圧力値出力部31c、異常判定部31d、表示処理部31e、時系列データ作成部31f及びデータ記録部31g等がソフトウェア的な機能部として実現される。また、処理部31は、半導体製造装置1が半導体の製造を開始した時点を起点としたカウンタ機能を備える。なお、カウンタ機能の代替として、実時刻を計測する時計機能を備えてもよい。
【0039】
プロセスデータ取得部31aは、通信部33にて半導体製造装置1との間で通信を行うことにより、半導体製造装置1からプロセスデータを取得する処理を行う。本実施形態においてプロセスデータは、前述の通り半導体製造装置1が備える種々の測定器が測定したデータが含まれる。
【0040】
実測圧力値取得部31bは、通信部33にて半導体製造装置1との間で通信を行うことにより半導体製造装置1が備える真空計76が測定した実測圧力値を取得する処理を行う。
【0041】
推定圧力値出力部31cは、記憶部32から学習モデル32bを読み出し、プロセスデータ取得部31aが取得したプロセスデータを学習モデル32bに入力し、推定圧力値を出力する。
【0042】
異常判定部31dは、実測圧力値取得部31bが取得した実測圧力値及び推定圧力値出力部31cが出力した推定圧力値に基づき、半導体製造装置1が異常状態であるか判定する。具体的には、実測圧力値と推定圧力値との差分を算出し、算出した該差分が予め設定した所定値(閾値)以上である場合、半導体製造装置1は異常状態であると判定する。なお、異常判定部31dは、差分が一定時間継続して閾値以上である場合、または一定回数以上、閾値以上である差分が算出された場合に異常状態であると判定してもよい。
【0043】
表示処理部31eは、種々の画像又は文字等を表示部34に表示する処理を行う。本実施形態において表示処理部31eは、例えば異常判定部31dの判定結果を表示する。また、表示処理部31eは、取得したプロセスデータ、実測圧力値、推定圧力値、又は後述する記憶部32のデータベース32cに記録された時系列データ等を表示してもよい。
【0044】
時系列データ作成部31fは、時系列データを作成する処理を行う。具体的には、実測圧力値と推定圧力値との差分を、半導体製造装置1が半導体の製造を開始した時点からの経過時間に対応させたものを時系列データとする。なお、時系列データに実測圧力値及び推定圧力値を含めてもよい。また、差分を実時刻と対応させてもよい。
【0045】
データ記録部31gは、時系列データ作成部が作成した時系列データを記憶部32のデータベース32cに記録する。データ記録部31gは、時系列データ作成部31fが時系列データを作成する毎に、データベース32cの時系列データテーブルに時系列データを登録する。時系列データテーブルの詳細については後述する。
【0046】
図3は、本実施の形態に係るサーバ装置5の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るサーバ装置5は、処理部51、記憶部52、通信部53及びカードスロット54等を備えて構成されている。なお本実施の形態においては、1つのサーバ装置5にて処理が行われるものとして説明を行うが、複数のサーバ装置5が分散して処理を行ってもよい。また、サーバ装置5が行う処理は情報処理装置30が行ってもよい。
【0047】
処理部51は、CPU、MPU又はGPU等の演算処理装置を用いて構成されている。処理部51は、記憶部52に記憶されたサーバプログラム52aを読み出して実行することにより、情報処理装置30が利用する学習モデル32bの学習処理等の種々の処理を行う。
【0048】
記憶部52は、例えばハードディスクまたはSSD等の大容量の記憶装置を用いて構成されている。記憶部52は、処理部51が実行する各種のプログラム、及び、処理部51の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部52は、処理部51が実行するサーバプログラム52aを記憶している。本実施の形態においてサーバプログラム52aは、メモリカード等の記録媒体99に記録された態様で提供され、サーバ装置5は記録媒体99からサーバプログラム52aを読み出して記憶部52に記憶する。ただし、サーバプログラム52aは、例えばサーバ装置5の製造段階において記憶部52に書き込まれてもよい。例えばサーバプログラム52aは、記録媒体99に記録されたものを書込装置が読み出してサーバ装置5の記憶部52に書き込んでもよい。サーバプログラム52aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよい。
【0049】
通信部53は、社内LAN、無線LAN及びインターネット等を含むネットワークNを介して、種々の装置との間で通信を行う。通信部53は、処理部51から与えられたデータを他の装置へ送信すると共に、他の装置から受信したデータを処理部51に与える。
【0050】
カードスロット54は、メモリカード等の記録媒体99が着脱可能であり、装着された記録媒体99に対するデータの読み出し及び書き込みを行う。カードスロット54は、記録媒体99に記録されたデータを読み出して処理部51に与えると共に、処理部51から与えられたデータを記録媒体99に書き込む。本実施形態においては、サーバ装置5が学習処理を行った学習モデル32bをカードスロット56にて記録媒体99に書き込み、サーバ装置5から半導体製造装置1の情報処理装置30への学習モデル32bの提供が行われる。また本実施形態においては、情報処理装置30にて記録された、半導体製造装置1の正常時の複数のプロセスデータと排気系統が正常である時に真空計76が測定した圧力値を含むログデータ52bが記録媒体99に書き込まれて提供され、サーバ装置5は、カードスロット54にて記録媒体99からログデータ52bを読み出して取得し、学習処理の訓練データとして用いる。
【0051】
なお記憶部52は、サーバ装置5に接続された外部記憶装置であってよい。またサーバ装置5は、複数のコンピュータを含んで構成されるマルチコンピュータであってよく、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。またサーバ装置5は、上記の構成に限定されず、例えば操作入力を受け付ける操作部、又は、画像を表示する表示部等を含んでもよい。
【0052】
また本実施の形態に係るサーバ装置5の処理部51には、記憶部52に記憶されたサーバプログラム52aを処理部51が読み出して実行することにより、学習処理部51a等がソフトウェア的な機能部として実現される。なおこれらの機能部は、学習モデル32bを生成する処理に関する機能部であり、これ以外の機能部については図示及び説明を省略する。
【0053】
学習処理部51aは、訓練データを機械学習させることによって学習モデル32bを生成する処理を行う。学習処理部51aは、学習モデル32bの最初の学習段階、即ち学習モデル32bを最初に生成する段階において、本システムの管理者又は開発者等が予め作成した訓練データを用いて学習処理を行う。このときに用いられる訓練データは、これまでの半導体製造装置の運用により蓄積されたデータを用いて作成され得る。
【0054】
図4は、学習モデルを示す説明図である。本実施形態に係る学習モデル32bは、例えばニューラルネットワークを用いた機械学習により生成されている。ただし機械学習はニューラルネットワーク以外の手法により行われてもよい。例えば、LSTM(Long Short Term Memory)、Transformer、SVM(Support Vector Machine)又はk近傍法等の種々の機械学習の方法が採用され得る。
【0055】
本実施形態に係る学習モデル32bに含まれる入力層は、各種のプロセスデータの入力を受け付ける複数のニューロンを有し、入力されたプロセスデータを中間層に受け渡す。中間層は、プロセスデータの特徴量を抽出する複数のニューロンを有し、抽出した特徴量を出力層に受け渡す。出力層は、推定圧力値を出力するニューロンを有し、中間層から出力された特徴量に基づいて、推定圧力値を出力する。
なお、学習モデル32bに入力するプロセスデータは、時系列のデータでもよい。
【0056】
本実施形態に係る学習モデル32bの機械学習では、正常時の、複数のプロセスデータを入力情報とし、排気系統が正常である時に真空計76が測定した圧力値を出力情報とした正常時の訓練データを用いることができる。正常時のプロセスデータを入力した場合、正常時に真空計76が測定した圧力値と同値を出力するよう、ニューラルネットワークを用いた機械学習を行う。正常時のプロセスデータ及び圧力値は、例えば、半導体製造装置1の設置後またはメンテナンス後の試運転の際のプロセスデータ及び圧力値である。多数のプロセスデータと圧力値を組み合わせた正常時の訓練データを用いて、学習モデル32bは学習される。
【0057】
学習モデル32bの機械学習は最初の一度に限られない。必要に応じて、新たな訓練データを用いて学習モデル32bの再学習を行ってもよく、これまでの訓練データに新たな訓練データを追加して再学習を行ってもよい。この場合、サーバ装置50は定期的に再学習した学習モデル32bを情報処理装置30に送信し、情報処理装置30の処理部31は再学習された学習モデル32bを読み出してもよい。
【0058】
本実施形態においては、学習モデル32bの学習処理はサーバ装置5(
図3参照)にて行われる。サーバ装置5は、予め用意された上述の訓練データを用いてニューラルネットワークにより機械学習を行うことによって、学習モデル32bを生成する。サーバ装置5が生成した学習モデル32bは、記録媒体99を介して情報処理装置30に与えられる。なお、学習モデル32bは、情報処理装置30において学習されてもよい。
【0059】
図5は、時系列データテーブルを示す説明図である。情報処理装置30の処理部31は、例えば、10秒ごとにプロセスデータ及び実測圧力値を取得し、推定圧力値を出力する。処理部31は、取得した実測圧力値と推定圧力値との差分を演算し、該差分を半導体製造開始時点からプロセスデータ及び実測圧力値の取得時までの経過時間と対応させて、記憶部32のデータベース32cに登録する。この処理を逐次的に行い、データベース32cに時系列データテーブルが作成される。なお、
図5に示すように、時系列データテーブルには、実測圧力値及び推定圧力値をさらに経過時間と対応させて登録してもよい。
【0060】
図6は、情報処理装置が表示する画面の一例を示す模式図である。情報処理装置30の表示部34には、時系列データテーブルが表示される。なお、情報処理装置30は、
図6に示すように時系列データテーブルに基づいたグラフを表示してもよい。表示部34に表示されるグラフは、例えば、縦軸を圧力値、横軸を経過時間として、実測圧力値、推定圧力値及び差分を示す。またグラフには、差分に対して異常の有無の判定基準となる閾値
(例えば、100Pa)が示されており、差分がこの閾値を超えたことで情報処理装置30が半導体製造装置1の異常状態を判定したことが確認できる。本実施形態においては、実測圧力値を点線、推定圧力値を破線、差分を実線で示している。
また表示部34には、処理部31が異常状態であると判定した場合に、異常状態であることを使用者に通知する警告メッセージを表示する。なお、情報処理装置30は、処理部31が異常状態であると判定した場合に、画面の背景色を変更する、ランプを点灯する、または音声出力を行うことによって異常状態であることを使用者に通知してもよい。
【0061】
図7は、学習モデル生成の手順を示すフローチャートである。情報処理装置30は、正常時の半導体製造装置1からプロセスデータを取得し(S1)、さらに半導体製造装置1の真空計76が測定した圧力値を取得する(S2)。情報処理装置30は、プロセスデータと圧力値を対応させ、訓練データを作成する(S3)。情報処理装置30は、作成した訓練データが学習モデル32bの生成に十分な一定数以上あるか判定し(S4)、訓練データの数が一定数未満である場合(S4:NO)、チャンバ11内に流入させるガスの種類、またはガスの流量などの条件を変更して(S5)、再度プロセスデータを取得する(S1)。訓練データの数が一定数以上である場合(S4:YES)、情報処理装置30は訓練データをサーバ装置5に送信し(S6)、サーバ装置5に学習モデル32bを生成させる(S7)。
【0062】
図8は、情報処理装置が行う処理の手順を示すフローチャートである。情報処理装置30は、半導体製造装置1に半導体の製造を開始させる(S11)。情報処理装置30は、半導体製造装置1からプロセスデータを取得し(S12)、さらに半導体製造装置1の真空計76から実測圧力値を取得する(S13)。情報処理装置30は、取得したプロセスデータを学習モデル32bに入力し(S14)、推定圧力値を出力する(S15)。情報処理装置30は、取得した実測圧力値と出力した推定圧力値との差分を算出し(S16)、算出した差分と時間を対応させて時系列データを作成する(S17)。情報処理装置30は、時系列データの差分が閾値以上であるか判定する(S18)。差分が閾値未満である場合(S18:NО)、情報処理装置30は、処理をS12に戻す。差分が閾値以上である場合(S18:YES)、情報処理装置30は、表示部34に警告メッセージを表示し(S19)、処理を終了するか判定する(S20)。情報処理装置30は、例えば、操作部35において処理を終了する指示が入力された場合(S20:YES)、処理を終了する。処理を終了しない場合(S20:NО)、情報処理装置30は処理をS12に戻し、再度プロセスデータを取得する。
【0063】
本実施形態によるプログラム及び情報処理装置30による処理によれば、高い精度で半導体製造装置1の異常を判定することが可能である。これにより、半導体製造装置1の使用者は、異常状態に対応することが可能である。また、実測圧力値と推定圧力値との差分の推移を可視化することにより、使用者が異常の要因を推測することも可能である。
【0064】
(実施形態2)
情報処理装置30は、実測圧力値と推定圧力値との差分が所定値(閾値)以上でない場合、該差分が所定値以上となる時間を予測してもよい。以下、実施形態2に係るプログラム及び情報処理装置等について図面を参照しつつ説明する。実施形態2に係る構成の内、実施形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0065】
図9は、実施形態2に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る情報処理装置30は、実施形態1に係る機能部に加え、予測部31hを備える。予測部31hは記憶部32のデータベース32cに記録された時系列データに基づき、実測圧力値と推定圧力値との差分が閾値以上になる時間を予測する。具体的には、例えば、時系列データの時間と差分の関連を表す近似関数を、最小二乗法や最尤法等によって求め、該近似関数に基づいてあと何秒で差分が閾値以上になり、半導体製造装置1が異常状態になるかを予測する。なお情報処理装置30は、seq2seq、LSTMまたはTransformerなどの学習モデルを用いて異常状態になる時間を予測してもよい。この場合、学習モデルを生成するための訓練データには複数の期間の時系列データが用いられる。
【0066】
図10は、実施形態2に係る情報処理装置が表示する画面の一例を示す模式図である。本実施形態に係る情報処理装置30は、半導体製造装置1が異常状態でないと判定した場合、実測圧力値と推定圧力値との差分が閾値以上になり、半導体製造装置1が異常状態になるまでの予測時間を表示する。また、
図10に示すように、差分を表すグラフの推移の予測を一点鎖線で表示してもよい。なお、情報処理装置30は、半導体製造装置1が異常状態であると判定した場合、実施形態1と同様に異常状態であることを使用者に通知する警告メッセージを表示する(
図6参照)。なお、差分及び差分推移の変化量が小さく、閾値以上になる時間が予測できない場合は、予測時間は表示されない。
【0067】
図11は、実施形態2に係る情報処理装置が行う処理の手順を示すフローチャートである。S21~S30は、実施形態1におけるS11~S20と同様の処理である。情報処理装置30は、実測圧力値と推定圧力値との差分が閾値未満である場合(S28:NО)、半導体製造装置1が異常状態になるまでの時間予測が可能であるか否か判定する(S31)。時間予測が可能である場合(S31:YES)、実測圧力値と推定圧力値との差分が閾値以上になり、半導体製造装置1が異常状態になるまでの時間を予測し(S32)、予測した時間を表示部34に表示して(S33)処理をS22に戻す。時間予測が不可である場合(S31:NО)、情報処理装置30は処理をS22に戻す。
【0068】
本実施形態によるプログラム及び情報処理装置30による処理によれば、半導体製造装置1が異常状態となる兆候がある場合、異常状態になる時間を予測可能である。これにより、半導体製造装置1の使用者は、異常状態に備える、または異常状態を回避することが可能になる。
【0069】
(実施形態3)
実施形態3に係るサーバ装置5は、半導体製造装置1(第一半導体製造装置)の真空計76から取得した圧力値(第一圧力値)を含む第一訓練データによって学習された学習モデル32b(第一学習モデル)をファインチューニングすることによって、第二学習モデルを生成する。半導体製造装置は使用場所に設置される際、使用場所に応じてポンプの種類、あるいは排気管のレイアウトまたは長さが変更される。本実施形態に係る情報処理装置は、第一学習モデルをファインチューニングして生成した第二学習モデルを用いることで、ポンプの種類、あるいは排気管のレイアウトまたは長さが変更された半導体製造装置の推定圧力値を出力する。
【0070】
図12は、第二半導体製造装置の概略構成を示す模式図である。第二学習モデルは、半導体製造装置1(第一半導体製造装置)とは異なる第二半導体製造装置1Bの推定圧力値を出力するのに用いられる。第二半導体製造装置1Bは、例えば、備えている第一ポンプ74及び第二ポンプ75の種類、あるいは
図12に示すように排気管77の配置レイアウトまたは長さが第一半導体製造装置1とは異なるため、学習モデル32bを用いては正しい推定圧力値を出力できない場合がある。サーバ装置5は、第二半導体製造装置1Bの、正常時の複数のプロセスデータを入力情報とし、排気系統が正常である時に第二半導体製造装置1Bの真空計76が測定した圧力値(第二圧力値)を出力情報とした第二訓練データに基づいて学習モデル32bをファインチューニングし、第二学習モデルを生成する。第二学習モデルを生成する際に用いられる第二訓練データは、学習モデル32bを生成する際に用いられる訓練データ(第一訓練データ)よりも数量が少ないが、第一訓練データの数量以上の第二訓練データを用いてもよい。
【0071】
図13は、第二学習モデル生成の手順を示すフローチャートである。第二半導体製造装置1Bの情報処理装置30B(
図12参照)は、第二半導体製造装置1Bからプロセスデータを取得し(S41)、さらに第二半導体製造装置1Bの真空計76から圧力値を取得する(S42)。情報処理装置30Bは、プロセスデータと圧力値を対応させて第二訓練データを作成する(S43)。情報処理装置30Bは、第二訓練データの数がファインチューニングに必要な一定数以上であるか判定し(S44)、第二訓練データの数が一定数未満である場合(S44:NO)、第二半導体製造装置1Bのチャンバ11内に流入させるガスの種類、またはガスの流量などの条件を変更して(S45)、再度プロセスデータを取得する(S41)。第二訓練データの数が一定数以上である場合(S44:YES)、情報処理装置30Bはサーバ装置5に第二訓練データを送信し(S46)、サーバ装置5に第一学習モデルを読み出させ(S47)、ファインチューニングによって第二学習モデルを生成させる(S48)。
【0072】
本実施形態に係るモデルの生成方法によれば、ポンプの種類、あるいは排気管のレイアウトまたは長さが異なる半導体製造装置の推定圧力値を出力する学習モデルを迅速に提供することが可能である。
【0073】
(変形例)
上述の各実施形態において、情報処理装置30の処理部31は、推定圧力値と実測圧力値とを比較することにより排気系統が異常状態であるかを判定したが、これに限られない。情報処理装置30の記憶部32には、排気系統が正常である場合に想定される排気系統の圧力値の範囲が記憶され、処理部31は、推定圧力値が記憶部32に記憶された圧力値の範囲外である場合、排気系統が異常状態であると判定してもよい。
【0074】
上述の各実施形態において、情報処理装置30の処理部31は、チャンバ内にガスが供給される製造プロセス状態(製造プロセス中)において、排気系統が異常状態であるかを判定したが、これに限られない。処理部31は、製造プロセスを開始する前の装置アイドル状態において、排気系統が異常状態であるかを判定してもよい。なお、この場合、プロセスデータは装置アイドル状態における種々の機器または測定器から取得したデータまたは測定値等が含まれる。
【0075】
(補足説明)
以下では、装置の各状態について説明を補足する。
図14は、装置立上げ中状態、装置アイドル状態、製造プロセス状態におけるプロセスデータ及び機器の状態を比較するテーブルである。装置立上げ中状態は、チャンバ内圧力を所定の基準圧力以下まで真空引きする際の状態であり、第一ポンプ74及び第二ポンプ75は起動し、チャンバ内圧力を大気圧から基準圧力以下まで真空引きを行う。ヒータは起動し、常温から予め設定された温度まで昇温する。基板Sの裏面を冷却するチラー(下部電極冷媒)は起動し、常温から予め設定された温度まで昇降温する。ガスバルブ71aは閉止される。APC開度は開度0%の閉止状態から開度100%の最大の開度まで変動する。チャンバ内圧力は、大気圧から基準圧力以下まで真空引きされ、変動する。プラズマ源は停止している。
【0076】
装置アイドル状態においては、第一ポンプ74及び第二ポンプ75は稼働しており、ヒータ及びチラーは、予め設定された温度の範囲内になるように制御されている。ガスバルブ71aは閉止され、APC開度は最大の開度(100%)に固定される。チャンバ内圧力は基準圧力以下の高真空状態であり、プラズマ源は停止している。
【0077】
製造プロセス状態において、第一ポンプ74及び第二ポンプ75は稼働しており、ヒータ及びチラーは、予め設定された温度の範囲内になるように制御されている。ガスバルブは開放される。なお、MFCはチャンバ内のガス流量が基板処理条件を示すプロセスレシピにおいて設定された流量になるように制御を行う。APC開度は、チャンバ内圧力がプロセスレシピにおいて設定された圧力になるように制御され、変動する。チャンバ内圧力は、プロセスレシピにおいて設定された圧力になる。プラズマ源は、プロセスレシピにおいて設定された高周波電力を印加する。
【0078】
図14に示すように、装置アイドル状態においてはプロセスデータの変動は少ない。このため、情報処理装置30の処理部31は、推定圧力値と記憶部32に記憶された圧力値の範囲内であるか否かを判定する方法によっても、高い精度で排気系統が異常状態であるか否かを判定することが可能である。なお、処理部31は、製造プロセス状態においても、推定圧力値が記憶部32に記憶された圧力値の範囲外である場合、排気系統が異常状態であると判定してもよい。
【0079】
以下では、APC開度について説明を補足する。
図15は、チャンバ内圧力及びAPC開度の変動例を示すグラフである。半導体製造装置1は、装置立上げ中状態においてチャンバ内圧力を低下させる真空引きを実行した後に、チャンバ内圧力が所定の基準圧力値以下になった場合、装置アイドル状態となる。その後、半導体製造装置1は、半導体製造プロセスを開始する指示が入力され、APC開度を変化させてチャンバ内圧力をプロセスレシピにおいて設定された圧力(設定圧力)に上昇させて製造プロセス状態となる。
【0080】
図15に示すグラフの横軸は、半導体製造プロセスを開始する指示が入力されてからの経過時間(秒)を示し、縦軸はAPC開度(%)またはチャンバ内圧力(Pa)を示す。
図15のグラフにおいては、チャンバ内圧力の推移を実線によって、APC開度の推移を破線によって示す。
【0081】
装置立上げ中状態においては、APC開度は開度0%から100%になるように制御され、これにより、チャンバ内圧力は大気圧から基準圧力以下に低下し、装置アイドル状態となる。装置アイドル状態から製造プロセス状態に移行する場合、半導体製造装置1は、
図15に示すようにAPC開度を例えば5%程度まで低下させ、チャンバ内圧力を設定圧力に保つ。
図15に示す例において、設定圧力は4Paである。また、
図15に示すグラフの10秒~11秒付近に示すように、チャンバ内圧力が設定圧力から変動する場合がある。チャンバ内圧力は、例えばプラズマ源が高周波電力の印加を開始した場合などに変動する。チャンバ内圧力が変動した場合、半導体製造装置1は、チャンバ内圧力が指定圧力となるようにAPCを制御し、APC開度を変動させる。従って、学習モデルに入力されるプロセスデータに含まれるAPC開度は、変数データである。
【0082】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、請求の範囲内での全ての変更及び請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。また、請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0083】
1 半導体製造装置 5 サーバ装置 11 チャンバ 13 試料台 30 情報処理装置 31 処理部 31a プロセスデータ取得部 31b 実測圧力値取得部 31c 推定圧力値出力部 31d 異常判定部 31e 表示処理部 31f 時系列データ作成部 31g データ記録部 31h 予測部 32 記憶部 32a プログラム 32b 学習モデル 32c データベース 33 通信部 34 表示部 35 操作部 36 カードスロット 51 処理部 51a 学習処理部 52 記憶部 53 通信部 54 カードスロット 71 MFC 71a ガスバルブ 72 真空計 73 APC 74 第一ポンプ 75 第二ポンプ 76 真空計 77 排気管 78 圧力・流量計 99 記録媒体