IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 井関農機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電動散布機 図1
  • 特開-電動散布機 図2
  • 特開-電動散布機 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087568
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】電動散布機
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20240624BHJP
   B60K 17/12 20060101ALI20240624BHJP
   B60K 17/28 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
A01M7/00 D
B60K17/12
B60K17/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202463
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】松家 伸一
【テーマコード(参考)】
2B121
3D042
3D043
【Fターム(参考)】
2B121CB25
2B121CB42
2B121CB47
2B121CB61
2B121EA21
3D042AA06
3D042AB11
3D042BE01
3D043AA06
3D043AB11
3D043BA06
3D043BE01
(57)【要約】
【課題】本発明は、機体の全長を長くしないで、電動モータやバッテリーのメンテナンスが行い易い電動散布機とすることを課題とする。
【解決手段】走行車体1前部のフロントケース31に操縦ハンドル32を立設し、走行車体1の前後中央にトランスミッション4を搭載してその上部に電動モータ2とバッテリー3装着した原動部5を構成し、この原動部5を覆う原動カバー6上に操縦席7を設け、原動カバー6の後側に薬剤タンク8を搭載して、前記操縦席7と原動カバー6を取り外して原動部5を解放可能にしたことを特徴とする電動散布機とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)前部のフロントケース(31)に操縦ハンドル(32)を立設し、走行車体(1)の前後中央にトランスミッション(4)を搭載してその上部に電動モータ(2)とバッテリー(3)装着した原動部(5)を構成し、この原動部(5)を覆う原動カバー(6)上に操縦席(7)を設け、原動カバー(6)の後側に薬剤タンク(8)を搭載して、前記操縦席(7)と原動カバー(6)を取り外して原動部(5)を解放可能にしたことを特徴とする電動散布機。
【請求項2】
原動カバー(6)から薬剤タンク(8)上にレール(13)を設け、操縦席(7)を原動カバー(6)と共にレール(13)に沿って薬剤タンク(8)上に移動して原動部(5)を解放することを特徴とする請求項1に記載の電動散布機。
【請求項3】
トランスミッション(4)の前側で電動モータ(2)から伝動ケース(28)を介して上から下に動力を伝動し、トランスミッション(4)から走行車体(1)下部の前後車輪(9,10)に動力を伝動し、トランスミッション(4)の後方に突出するPTO軸(11)で走行車体(1)の後部に搭載する防除ポンプ(12)に動力を伝動する請求項1に記載の電動散布機。
【請求項4】
走行車体(1)の前部に設けるリフター(14)で散布ブーム(15)を昇降する請求項1に記載の電動散布機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータの動力で走行して圃場の作物に農薬を散布する散布作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場で農作業を行う農作業機をエンジンの代わりに電動モータで駆動する電動作業機として特開2017-24710号公報や特開2021-957号公報に記載されたトラクタがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-24710号公報
【特許文献2】特開2021-957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の電動作業機は、圃場を走行して作業を行うトラクタであるが、その構造は、従来のエンジンを搭載した車体前部ボンネット内にエンジンに代えて電動モータとバッテリーを搭載した構成で、機体の全長が従来よりも長くなり、狭い圃場での小回作業が難しい。
【0005】
本発明は、機体の全長を長くしないで、電動モータやバッテリーのメンテナンスが行い易い散布作業機とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0007】
請求項1の発明は、走行車体1前部のフロントケース31に操縦ハンドル32を立設し、走行車体1の前後中央にトランスミッション4を搭載してその上部に電動モータ2とバッテリー3装着した原動部5を構成し、この原動部5を覆う原動カバー6上に操縦席7を設け、原動カバー6の後側に薬剤タンク8を搭載して、前記操縦席7と原動カバー6を取り外して原動部5を解放可能にしたことを特徴とする散布作業機とする。
【0008】
請求項2の発明は、原動カバー6から薬剤タンク8上にレール13を設け、操縦席7を原動カバー6と共にレール13に沿って薬剤タンク8上に移動して原動部5を解放することを特徴とする請求項1に記載の散布作業機とする。
【0009】
請求項3の発明は、トランスミッション4の前側で電動モータ2から伝動ケース9を介して動力を伝動し、トランスミッション4から走行車体1下部の前後車輪9,10に動力を伝動し、トランスミッション4の後方に突出するPTO軸11で走行車体1の後部に搭載する防除ポンプ12に動力を伝動する請求項1に記載の散布作業機とする。
【0010】
請求項4の発明は、走行車体1の前部に設けるリフター14で散布ブーム15を昇降する請求項1に記載の散布作業機とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明で、電動散布機は走行車体1の前部に操縦操作機構を内装するフロントケース31を設けその後部に原動部5を設け、さらにその後部に薬剤タンク8を搭載しているが、フロントケース31は操縦機構を内装しているのみで前後に長くなることは無く、走行車体1の前後中央に搭載したトランスミッション4の上部に電動モータ2とバッテリー3を搭載して原動カバー6で覆って原動部5を構成し、原動カバー6上に操縦席7を設けているので作業車の搭乗操縦空間を比較的に狭くし、その後部に薬剤タンク8を搭載しているので、散布作業機の全長をあまり長くしない。また、操縦席7と原動カバー6を取り外して原動部5を解放することで、上部から電動モータ2とバッテリー3のメンテナンスが容易に行える。
【0012】
請求項2の発明で、薬剤タンク8に設けたレール13に沿って操縦席7と原動カバー6を薬剤タンク8上に移動する簡単な操作で原動部5を解放できる。
【0013】
請求項3の発明で、上部の電動モータ2から下方のトランスミッション4に伝動ケース9で上から下に動力を伝動しトランスミッション4から前後車輪9,10に伝動し、PTO軸11で防除ポンプ12に伝動しているので、動力伝動機構が走行車体1の狭い範囲に納まって機体が大きくならなく、狭い圃場で操縦操作性が良い。
【0014】
請求項4の発明で、散布ブーム15の昇降が走行車体1の前部に設けるリフター14で行われ、薬剤タンク8との前後重量バランスが良く、走行が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明の実施形態に係る散布作業機の構成例を示す右側断面図である。
図2図2は散布作業機に被爆ガードを設けた斜視図である。
図3図3は散布作業機の機体前部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0018】
図1は本発明の実施形態に係る薬剤散布車両の構成例を示す右側断面図である。
【0019】
本実施形態に係る作業車両の一例としての薬剤散布車両Aは、作業員等のオペレータが走行車体1に搭乗して運転操作をしながら薬剤を圃場に散布する作業車両である。薬剤散布車両Aは、図1図2に示すように、走行車体1と、薬剤タンク8と、薬剤タンク8から供給される薬剤を圃場に散布するための散布装置Bであるフロントブーム19やサイドブーム20等から構成されている。
【0020】
なお、本実施形態において、薬剤散布車両Aの進行方向は、走行車体1の前後方向に沿った方向であり、薬剤散布車両Aの直進時に操縦席7から操縦ハンドル32に向かう方向である。
【0021】
また、走行車体1の車幅方向あるいは左右方向は、上記進行方向に対して水平に直交する方向である。また、走行車体1の上下方向は、上記進行方向に対して鉛直に直交する方向である。
【0022】
走行車体1は、操縦席7と操縦ハンドル32と、車輪の一例としての前輪9と後輪9とを含む構成である。
【0023】
走行車体1の前側にはフロントケース31があり、フロントケース31より後方に操縦席7を備える。操縦席7は、オペレータが薬剤散布車両Aの運転操作をする際に着座するための座席である。
【0024】
操縦席7の周囲の適切な位置には、散布装置の開閉や薬剤の散布等の動作を制御するための操作部が配置されている。
【0025】
操縦ハンドル23は、オペレータによる回動操作によって、少なくとも左右の前輪9、または後輪10を操舵することで、薬剤散布車両Aの進行方向を変更する。前輪9は、少なくとも操縦ハンドル32の回動操作により操舵される操舵輪である。
【0026】
フロントブーム19は、薬剤散布車両Aの前側に薬剤を散布するものである。図1から図4に示すように、フロントブーム19は、走行車体1の前側に設けられており、車幅方向に水平に延在している。
【0027】
散布装置Bは、リフト台30とリフター14によって走行車体1の前方で昇降可能に支持される。このリフト台30とリフター14は、散布装置Bを支持するとともに昇降動作、ローリング動作を可能とし、また、展開動作、収納動作、上下動作の各動作に係る駆動力を提供する機能を果たす。
【0028】
上記の構成によって、散布装置Bは、完全展開姿勢と完全収納姿勢とを切り替え可能に構成されている。完全展開姿勢時は、薬剤散布車両Aの前方及び左右側方の広範囲に薬剤を散布することができる。収納姿勢時は、サイドブーム20が外部の障害物と接触する事態を回避できる。
【0029】
また、走行車体1の左右それぞれの側方には、収納したサイドブーム20を受けるブーム受け23が設けられている。
【0030】
サイドブーム20は、走行車体1の車幅方向に延びる散布姿勢と、走行車体1の左右両側に沿う収納姿勢とに切り替え可能に、センターブーム19の左右両側に取り付けられている。
【0031】
サイドブーム20は、収納姿勢時に、走行車体1の後側の左右両側に配置されたブーム受け23で支持される。サイドブーム20には、薬剤を霧状に散布する散布ノズルが間隔をおいて複数配設されている。
【0032】
なお、この薬剤散布車両Aは、サイドブーム20が伸縮するスライドブームであり、作業時にはサイドブーム20の長さを延長し、広範囲の薬剤散布を行える車両である。
【0033】
図1図2に示すように、走行車体1は、前輪9と後輪9を前支脚16と後支脚17でそれぞれ支持し、車体の前後中央に取り付けたトランスミッション4で前支脚16と後支脚17それぞれに内装する動力伝動機構で前輪9と後輪10を駆動して走行する。
【0034】
トランスミッション4は走行車体1の上部機枠に装着した電動モータ2から前に設ける伝動ケース28で動力を受け、変速して出力し、電動モータ2の後側に搭載するバッテリー3で電動モータ2に電力を供給する。
【0035】
トランスミッション4は走行車体1に取り付け、この上側の機枠に電動モータ2とバッテリー3を装着して、トランスミッション4の前側に設ける伝動ケース28で電動モータ2からトランスミッション4に動力を伝動する原動部5を形成している。
【0036】
この原動部5は上部と周囲を原動カバー6で覆い、原動カバー6上に操縦席7を取り付けている。
【0037】
原動部5の後で走行車体1に薬剤タンク8を搭載し、この薬剤タンク8の操縦席7側にはレール13を設け、操縦席7を原動カバー6と共にレール13に沿って薬剤タンク8上にスライドして上昇させて操縦席7を枢支軸7aで反転回動させて原動部5上方を広く開放できるようにしている。従って、原動部5から電動モータ2とバッテリー3を上に引き抜くことが可能になる。
【0038】
原動部5の前には操縦機構を内装するフロントケース31を設け、操縦ハンドル32を設けている。
【0039】
また、トランスミッション4には後方にPTO軸11を設け、走行車体1の後端に装着した防除ポンプ12を駆動する。防除ポンプ12の上にはキャリア34を設けている。
【0040】
走行車体1の前側にはリフター14を設け、昇降するリフト台30に肥料を散布するブロキャス21と薬液を噴霧するフロントブーム19とサイドブーム20を設け昇降可能にしている。リフター14は左右のスライド支柱35,35間でスライドするスライダー38を油圧シリンダ40で昇降させ、スライダー38の滑車36に巻き掛けたワイヤ35にリフト台30を取り付けている。
【0041】
図2は、操縦席7の周囲を囲う被爆ガードを設けた構成で、操縦席7の後ろにロブス22を立設し、このロブス22と前支柱24,25で操縦席7上部を覆うルーフ26を設けている。このルーフ26は前に引き出し可能にし、ルーフ26の左右を前側に透明なビニールシートを吊り下げて、操縦席7に座る作業者が被爆しないようにする。ビニールシートはルーフ26に巻き上げて収納できるようにする。
【0042】
また、ロブス22の左右にはサイドブーム20を受けるブーム受23を設け、ウインカーを取り付けている。ロブス22は防除ポンプ12よりも幅広く、後方へ倒して固定することも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 走行車体
2 電動モータ
3 バッテリー
4 トランスミッション
5 原動部
6 原動カバー
7 操縦席
8 薬剤タンク
9 前車輪
10 前後車輪
11 PTO軸
12 防除ポンプ
14 リフター
15 散布ブーム
28 伝動ケース
図1
図2
図3