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特開2024-87585積層体、積層体の製造方法、及びタイヤ
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  • 特開-積層体、積層体の製造方法、及びタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087585
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】積層体、積層体の製造方法、及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/16 20060101AFI20240624BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240624BHJP
   C08F 210/00 20060101ALI20240624BHJP
   C08F 212/02 20060101ALI20240624BHJP
   C08F 236/04 20060101ALI20240624BHJP
   B60C 11/02 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B32B25/16
C08L21/00
C08F210/00
C08F212/02
C08F236/04
B60C11/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202482
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 健
(72)【発明者】
【氏名】竹重 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】会田 昭二郎
(72)【発明者】
【氏名】加賀 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】浜谷 悟司
(72)【発明者】
【氏名】橋口 真
【テーマコード(参考)】
3D131
4F100
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB18
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(57)【要約】
【課題】層間の剥離強度が高く、生産性の高い積層体を提供する。
【解決手段】少なくとの二つのゴム層を含む積層体1であって、積層体1中の一つのゴム層(A)2と、該ゴム層(A)2に隣接するもう一つのゴム層(B)3とが、それぞれ、ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含み、前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3~40質量部であることを特徴とする、積層体1である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとの二つのゴム層を含む積層体であって、
積層体中の一つのゴム層(A)と、該ゴム層(A)に隣接するもう一つのゴム層(B)とが、それぞれ、ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含み、前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3~40質量部であることを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記共重合体は、融点が50~120℃である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が0mol%を超え50mol%以下であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が50mol%以上100mol%未満である、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記共重合体が、更に芳香族ビニル単位を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が1~50mol%であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が40~97mol%であり、前記芳香族ビニル単位の含有量が2~35mol%である、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記共重合体は、結晶化度が0.5~50%である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記ゴム層(A)に含まれる前記共重合体の融点と、前記ゴム層(B)に含まれる前記共重合体の融点との差が、30℃以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含み、前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3~40質量部である架橋済みの少なくとの二つのゴム層を積層し、加熱することを特徴とする、積層体の製造方法。
【請求項9】
ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含み、前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3~40質量部である架橋済みの少なくとの一つのゴム層と、ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含み、前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3~40質量部である未架橋の少なくとの一つのゴム層とを積層し、加熱することを特徴とする、積層体の製造方法。
【請求項10】
ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含み、前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3~40質量部である未架橋の少なくとの二つのゴム層を積層し、加熱することを特徴とする、積層体の製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の積層体を具えることを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、積層体の製造方法、及びタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、損傷したタイヤの損傷部に、未加硫ゴムからなるリペアパッチを貼り付け、高温で加熱することにより、損傷部に固着させて、タイヤを補修することが行われている。また、タイヤのトレッドゴムが摩耗した際には、摩耗したトレッドゴムを物理的に削って(所謂、バフ工程)、台タイヤを得た後、該台タイヤにプレキュアトレッド(予め加硫されたトレッドゴム部材)を接合させてタイヤをリトレッドすることが一般に行われている。このように、加硫ゴムと未加硫ゴムを接着させたり、加硫ゴム同士を接着させることが広く行われており、ゴム層とゴム層との間の接着性(剥離強度)を向上させる技術が求められている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、加硫ゴムと未加硫ゴムとの接着において、加硫ゴム側の接着部にプラズマ処理を施した後、該加硫ゴムと未加硫ゴムとを加硫接着させる、加硫ゴムと未加硫ゴムとの接着方法が開示されている。
また、下記特許文献2には、プレキュアトレッドの台タイヤへの接着面にバフ加工等の前処理を施すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-217559号公報
【特許文献2】特開平5-116235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来、ゴム層とゴム層との間の接着性(剥離強度)を向上させるために、様々な前処理が行われているが、前処理に時間を要するため、生産性の観点から改善が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、層間の剥離強度が高く、生産性の高い積層体を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかる積層体の製造方法、並びに、かかる積層体を具え、耐久性が高く、生産性の高いタイヤを提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の積層体、積層体の製造方法、及びタイヤの要旨構成は、以下の通りである。
【0008】
[1] 少なくとの二つのゴム層を含む積層体であって、
積層体中の一つのゴム層(A)と、該ゴム層(A)に隣接するもう一つのゴム層(B)とが、それぞれ、ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含み、前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3~40質量部であることを特徴とする、積層体。
上記[1]に記載の本発明の積層体は、層間の剥離強度が高く、生産性が高い。
【0009】
[2] 前記共重合体は、融点が50~120℃である、[1]に記載の積層体。
上記[2]に記載の積層体においては、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の耐亀裂性が高く、また、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の製造における作業性が向上する。
【0010】
[3] 前記共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が0mol%を超え50mol%以下であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が50mol%以上100mol%未満である、[1]又は[2]に記載の積層体。
上記[3]に記載の積層体によれば、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の高温での破壊特性を効果的に向上させることができる。
【0011】
[4] 前記共重合体が、更に芳香族ビニル単位を含む、[1]~[3]のいずれか一つに記載の積層体。
上記[4]に記載の積層体においては、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の耐亀裂性が向上している。
【0012】
[5] 前記共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が1~50mol%であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が40~97mol%であり、前記芳香族ビニル単位の含有量が2~35mol%である、[4]に記載の積層体。
上記[5]に記載の積層体によれば、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の柔軟性及び機械的強度を向上させつつ、ゴム層(A)とゴム層(B)との間の剥離強度を向上させることができる。
【0013】
[6] 前記共重合体は、結晶化度が0.5~50%である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の積層体。
上記[6]に記載の積層体によれば、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の機械的強度を向上させることができる。
【0014】
[7] 前記ゴム層(A)に含まれる前記共重合体の融点と、前記ゴム層(B)に含まれる前記共重合体の融点との差が、30℃以下である、[1]~[6]のいずれか一つに記載の積層体。
上記[7]に記載の積層体は、ゴム層(A)とゴム層(B)との間の剥離強度が更に向上している。
【0015】
[8] ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含み、前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3~40質量部である架橋済みの少なくとの二つのゴム層を積層し、加熱することを特徴とする、積層体の製造方法。
上記[8]に記載の積層体の製造方法によれば、高い生産性で、層間の剥離強度が高い積層体が得られる。
【0016】
[9] ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含み、前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3~40質量部である架橋済みの少なくとの一つのゴム層と、ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含み、前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3~40質量部である未架橋の少なくとの一つのゴム層とを積層し、加熱することを特徴とする、積層体の製造方法。
上記[9]に記載の積層体の製造方法によれば、高い生産性で、層間の剥離強度が高い積層体が得られる。
【0017】
[10] ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含み、前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3~40質量部である未架橋の少なくとの二つのゴム層を積層し、加熱することを特徴とする、積層体の製造方法。
上記[10]に記載の積層体の製造方法によれば、高い生産性で、層間の剥離強度が高い積層体が得られる。
【0018】
[11] [1]~[7]のいずれか一つに記載の積層体を具えることを特徴とする、タイヤ。
上記[11]に記載の本発明のタイヤは、耐久性が高く、また、生産性が高い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、層間の剥離強度が高く、生産性の高い積層体を提供することができる。
また、本発明によれば、かかる積層体の製造方法、並びに、かかる積層体を具え、耐久性が高く、生産性の高いタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態の積層体を模式的に示した、厚さ方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の積層体、積層体の製造方法、及びタイヤを、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0022】
<定義>
本明細書に記載されている化合物は、部分的に、又は全てが化石資源由来であってもよく、植物資源等の生物資源由来であってもよく、使用済タイヤ等の再生資源由来であってもよい。また、化石資源、生物資源、再生資源のいずれか2つ以上の混合物由来であってもよい。
【0023】
本明細書において、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体は、ゴム成分から区別され、即ち、「ゴム成分」からは、「共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体」を除くものとする。
【0024】
<積層体>
本実施形態の積層体は、少なくとの二つのゴム層を含む積層体である。そして、本実施形態の積層体においては、当該積層体中の一つのゴム層(A)と、該ゴム層(A)に隣接するもう一つのゴム層(B)とが、それぞれ、ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体(以下、単に「共重合体」と呼ぶことがある。)と、を含み、前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3~40質量部であることを特徴とする。
【0025】
本実施形態の積層体においては、隣接するゴム層(A)とゴム層(B)との両方が、それぞれ、ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分100質量部に対して、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体を3~40質量部含み、該共重合体は、例えば、加熱により溶融して、高い接着力で接合できるため、ゴム層(A)とゴム層(B)との間の剥離強度が高い。
また、前記共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体は、例えば、加熱により溶融するため、ゴム層(A)及び/又はゴム層(B)に前処理を施さなくても、ゴム層(A)とゴム層(B)とを積層して、加熱することにより、ゴム層(A)とゴム層(B)とを容易に接合することができる。
従って、本実施形態の積層体は、ゴム層(A)とゴム層(B)との間の剥離強度が高い上、生産性も高い。
【0026】
本実施形態の積層体は、少なくとの二つのゴム層を含むが、各ゴム層の厚さは、特に限定されず、例えば、1mm以上である。また、上限についても特に限定されず、例えば2000mm以下である。
本実施形態の積層体においては、一つのゴム層(A)と、該ゴム層(A)に隣接するもう一つのゴム層(B)とが、それぞれ、ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含む。なお、積層体中の、隣接するゴム層(A)及びゴム層(B)が、ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含めばよく、積層体が三層以上からなる場合、他の層の組成は、特に限定されず、ゴム層(A)及び/又はゴム層(B)の組成と同じでもよいし、異なってもよい。
【0027】
(ゴム成分)
前記ゴム層(A)及びゴム層(B)は、ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分を含む。上記の通り、該ゴム成分からは、前記共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体は除かれる。該ゴム成分は、ゴム層(A)及びゴム層(B)にゴム弾性をもたらす。
前記ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)と、合成ジエン系ゴムが挙げられる。また、合成ジエン系ゴムとして、具体的には、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル-ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。前記ジエン系ゴムは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記ジエン系ゴムは、変性されていてもよい。
前記ゴム成分は、ジエン系ゴムに加えて、非ジエン系ゴムを含んでいてもよい。ここで、前記ゴム成分中の前記ジエン系ゴムの割合は、50質量%以上であり、100質量%であってもよい。ゴム成分中のジエン系ゴムの割合が50質量%以上であることで、ゴム層(A)及びゴム層(B)が十分なゴム弾性を有することとなる。
【0028】
(共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体)
前記共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位との2つの単位からなる二元共重合体であってもよいし、更に、芳香族ビニル単位を含む3つの単位からなる三元共重合体であってもよいし、更に、他の単量体単位を含む多元共重合体であってもよい。
【0029】
前記ゴム層(A)及びゴム層(B)は、それぞれ、前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分(換言すると、前記共重合体を除くゴム成分)100質量部に対して3~40質量部であることを特徴とする。前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3質量部以上であれば、ゴム層(A)とゴム層(B)との間の剥離強度や、ゴム層(A)及びゴム層(B)の機械的強度が向上し、また、40質量部以下であれば、ゴム層(A)及びゴム層(B)の柔軟性が向上する。
【0030】
前記ゴム成分100質量部に対する、前記ゴム層(A)に含まれる共重合体の含有量と、前記ゴム層(B)に含まれる共重合体の含有量との差は、20質量部以下であることが好ましい。ゴム層(A)及びゴム層(B)中の共重合体の含有量の差が、20質量部以下であると、ゴム層(A)及びゴム層(B)の物性が近くなる傾向があるため、ゴム層(A)とゴム層(B)との間の剥離強度を向上させ易い。
また、ゴム層(A)とゴム層(B)との間の剥離強度の観点から、前記ゴム層(A)に含まれる共重合体の含有量と、前記ゴム層(B)に含まれる共重合体の含有量とは、等しいことが更に好ましい。
【0031】
-共役ジエン単位-
前記共役ジエン単位は、単量体としての共役ジエン化合物に由来する構成単位である。
ここで、共役ジエン化合物とは、共役系のジエン化合物を指す。共役ジエン化合物は、炭素数が4~8であることが好ましい。かかる共役ジエン化合物として、具体的には、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0032】
前記共重合体の単量体としての共役ジエン化合物は、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の機械的強度を向上させる観点から、1,3-ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、1,3-ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1つのみからなることがより好ましく、1,3-ブタジエンのみからなることが更に好ましい。
別の言い方をすると、前記共重合体における共役ジエン単位は、1,3-ブタジエン単位及びイソプレン単位からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、1,3-ブタジエン単位及びイソプレン単位からなる群より選択される少なくとも1つのみからなることがより好ましく、1,3-ブタジエン単位のみからなることが更に好ましい。
【0033】
前記共重合体が二元共重合体の場合、共役ジエン単位の含有量は、0mol%を超え50mol%以下であることが好ましい。この場合、伸び及び耐候性に優れる共重合体を得ることができる。同様の観点から、二元共重合体における共役ジエン単位の割合は、40mol%以下であることがより好ましい。
【0034】
二元共重合体において、共役ジエン単位の1,2付加体(3,4付加体を含む)の割合は、10mol%以下であることが好ましい。上記割合が10mol%以下であると、前記共重合体の耐熱性及び耐屈曲疲労性を向上させることができる。同様の観点から、二元共重合体における共役ジエン単位の1,2付加体(3,4付加体を含む)の割合は、8mol%以下がより好ましく、6mol%以下が更に好ましい。なお、前記共役ジエン単位の1,2付加体(3,4付加体を含む)の割合は、共役ジエン単位全体における割合であって、共重合体全体における割合ではない。また、前記割合は、共役ジエン単位がブタジエン単位である場合には、1,2-ビニル結合量と同じ意味である。
【0035】
前記共重合体が三元共重合体又は多元共重合体の場合、共役ジエン単位の含有量は、1mol%以上であることが好ましく、3mol%以上であることがより好ましく、5mol%以上であることが更に好ましく、また、50mol%以下であることが好ましく、40mol%以下であることがより好ましく、30mol%以下であることが更に好ましい。
共役ジエン単位の含有量が、共重合体全体の1~50mol%であることで、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の柔軟性及び機械的強度を向上させることができる。
前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の柔軟性及び機械的強度をより向上させる観点から、共役ジエン単位の含有量は、共重合体全体の1~50mol%の範囲が好ましく、3~40mol%の範囲がより好ましく、5~30mol%の範囲が更に好ましい。
【0036】
-非共役オレフィン単位-
前記非共役オレフィン単位は、単量体としての非共役オレフィン化合物に由来する構成単位である。
ここで、非共役オレフィン化合物とは、脂肪族不飽和炭化水素で、炭素-炭素二重結合を1個以上有する化合物を指す。非共役オレフィン化合物は、炭素数が2~10であることが好ましい。かかる非共役オレフィン化合物として、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィン、ピバリン酸ビニル、1-フェニルチオエテン、N-ビニルピロリドン等のヘテロ原子置換アルケン化合物等が挙げられる。非共役オレフィン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0037】
前記共重合体の単量体としての非共役オレフィン化合物は、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の機械的強度を向上させ、また、ゴム層(A)とゴム層(B)との間の剥離強度を向上させる観点から、非環状の非共役オレフィン化合物であることが好ましく、また、非環状の非共役オレフィン化合物は、α-オレフィンであることがより好ましく、エチレンを含むα-オレフィンであることが更に好ましく、エチレンのみからなることが特に好ましい。
別の言い方をすると、前記共重合体における非共役オレフィン単位は、非環状の非共役オレフィン単位であることが好ましく、また、当該非環状の非共役オレフィン単位は、α-オレフィン単位であることがより好ましく、エチレン単位を含むα-オレフィン単位であることが更に好ましく、エチレン単位のみからなることが特に好ましい。
【0038】
前記共重合体が二元共重合体の場合、非共役オレフィン単位の含有量は、50mol%以上100mol%未満であることが好ましい。この場合、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の高温での破壊特性を効果的に向上させることができる。同様の観点から、二元共重合体における非共役オレフィン単位の割合は、60mol%以上であることがより好ましい。
【0039】
前記共重合体が三元共重合体又は多元共重合体の場合、非共役オレフィン単位の含有量は、40mol%以上であることが好ましく、45mol%以上であることがよりに好ましく、55mol%以上であることが更に好ましく、60mol%以上であることが特に好ましく、また、97mol%以下であることが好ましく、95mol%以下であることがより好ましく、90mol%以下であることが更に好ましい。非共役オレフィン単位の含有量が、共重合体全体の40~97mol%であることで、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の機械的強度を向上させ、また、ゴム層(A)とゴム層(B)との間の剥離強度を向上させることができる。
前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の機械的強度をより向上させ、また、ゴム層(A)とゴム層(B)との間の剥離強度をより向上させる観点から、非共役オレフィン単位の含有量は、共重合体全体の40~97mol%の範囲が好ましく、45~95mol%の範囲がより好ましく、55~90mol%の範囲がより更に好ましく、60~90mol%の範囲が更に好ましい。
【0040】
-芳香族ビニル単位-
前記共重合体は、更に、芳香族ビニル単位を含むことが好ましい。
芳香族ビニル単位は、単量体としての芳香族ビニル化合物に由来する構成単位である。
前記共重合体が芳香族ビニル単位を含有することで、エチレン結晶成分のような結晶成分を切断し、非共役オレフィン単位由来の過度の結晶化が抑制され、共重合体の剛性を向上させつつも、弾性を損ね難く、高い耐亀裂性を得ることができ、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の耐亀裂性を向上させることができる。
ここで、芳香族ビニル化合物とは、少なくともビニル基で置換された芳香族化合物を指し、共役ジエン化合物には包含されないものとする。芳香族ビニル化合物は、炭素数が8~10であることが好ましい。かかる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等が挙げられる。芳香族ビニル化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0041】
前記共重合体の単量体としての芳香族ビニル化合物は、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の機械的強度を向上させる観点から、スチレンを含むことが好ましく、スチレンのみからなることがより好ましい。別の言い方をすると、前記共重合体における芳香族ビニル単位は、スチレン単位を含むことが好ましく、スチレン単位のみからなることがより好ましい。
なお、芳香族ビニル単位における芳香族環は、隣接する単位と結合しない限り、共重合体の主鎖には含まれない。
【0042】
前記共重合体が三元共重合体又は多元共重合体の場合、芳香族ビニル単位の含有量は、2mol%以上であることが好ましく、3mol%以上であることがより好ましく、また、35mol%以下であることが好ましく、30mol%以下であることがより好ましく、25mol%以下であることが更に好ましい。芳香族ビニル単位の含有量が、共重合体全体の2~35mol%であることで、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の機械的強度を向上させることができる。
前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の機械的強度をより向上させる観点から、芳香族ビニル単位の含有量は、共重合体全体の2~35mol%の範囲が好ましく、3~30mol%の範囲がより好ましく、3~25mol%の範囲が更に好ましい。
【0043】
共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位以外の、その他の構成単位の含有量は、本発明の所望の効果を得る観点から、共重合体全体の30mol%以下であることが好ましく、20mol%以下であることがより好ましく、10mol%以下であることが更に好ましく、含有しないこと、即ち、含有量が0mol%であることが特に好ましい。つまり、前記共重合体は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位との2つの単位からなる二元共重合体であるか、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位の3つの単位からなる三元共重合体であることが好ましい。
また、前記共重合体は、所望の効果を確実に得る観点から、ブチレン単位の含有量が0mol%であることが好ましい。
【0044】
前記共重合体は、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の機械的強度を向上させる観点から、単量体として、一種のみの共役ジエン化合物、一種のみの非共役オレフィン化合物、及び一種の芳香族ビニル化合物を少なくとも用いて重合してなる重合体であることが好ましい。
別の言い方をすると、前記共重合体は、一種のみの共役ジエン単位、一種のみの非共役オレフィン単位、及び一種のみの芳香族ビニル単位を含有する共重合体であることが好ましく、一種のみの共役ジエン単位、一種のみの非共役オレフィン単位、及び一種のみの芳香族ビニル単位のみからなる三元共重合体であることがより好ましく、1,3-ブタジエン単位、エチレン単位、及びスチレン単位のみからなる三元共重合体であることが更に好ましい。ここで、「一種のみの共役ジエン単位」には、異なる結合様式の共役ジエン単位が包含される。
【0045】
前記共重合体は、例えば、二元共重合体である場合、共役ジエン単位の含有量が0mol%を超え50mol%以下であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が50mol%以上100mol%未満であることが好ましい。この場合、伸び及び耐候性に優れる共重合体を得ることができ、また、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の高温での破壊特性を効果的に向上させることができる。
【0046】
また、前記共重合体は、例えば、三元共重合体である場合、共役ジエン単位の含有量が1~50mol%で、非共役オレフィン単位の含有量が40~97mol%で、且つ、芳香族ビニル単位の含有量が2~35mol%であることが好ましい。この場合、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の柔軟性及び機械的強度を向上させつつ、ゴム層(A)とゴム層(B)との間の剥離強度を向上させることができる。
【0047】
-共重合体の物性-
前記共重合体は、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が10,000~9,000,000(10~9,000kg/mol)であることが好ましく、100,000~8,000,000(100~8,000kg/mol)であることがより好ましい。前記共重合体のMnが10,000以上であることにより、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の機械的強度を十分に確保することができ、また、Mnが9,000,000以下であることにより、共重合体を含む組成物の作業性を損ね難い。
【0048】
前記共重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が10,000~10,000,000(10~10,000kg/mol)であることが好ましく、50,000~9,000,000(50~9,000kg/mol)であることがより好ましく、100,000~8,000,000(100~8,000kg/mol)であることが更に好ましい。前記共重合体のMwが10,000以上であることにより、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の機械的強度を十分に確保することができ、また、Mwが10,000,000以下であることにより、共重合体を含む組成物の作業性を損ね難い。
【0049】
前記共重合体は、分子量分布[Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)]が1.00~4.00であることが好ましく、1.00~3.50であることがより好ましく、1.80~3.00であることが更に好ましい。前記共重合体の分子量分布が4.00以下であれば、当該共重合体の物性に十分な均質性をもたらすことができる。
【0050】
なお、前記共重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準物質として求める。
【0051】
前記共重合体は、0~120℃における示差走査熱量計(DSC)で測定した吸熱ピークエネルギーが10~150J/gであることが好ましく、30~120J/gであることが更に好ましい。前記共重合体の吸熱ピークエネルギーが10J/g以上であれば、共重合体の結晶性が高くなり、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の耐亀裂性を向上させることができる。また、前記共重合体の吸熱ピークエネルギーが150J/g以下であれば、共重合体を含む組成物の作業性が向上する。
前記共重合体の吸熱ピークエネルギーは、示差走査熱量計を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、例えば、10℃/分の昇温速度で-150℃から150℃まで昇温して測定すればよい。
【0052】
前記共重合体は、融点が50~120℃であることが好ましく、50~110℃であることがより好ましい。前記共重合体の融点が50℃以上であれば、共重合体の結晶性が高くなり、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の耐亀裂性を向上させることができる。また、前記共重合体の融点が120℃以下であれば、共重合体を含む組成物の作業性が向上する。そして、前記共重合体の融点が50~120℃であれば、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の耐亀裂性が高く、また、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の製造における作業性が向上する。
前記共重合体の融点は、示差走査熱量計(DSC)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して測定すればよい。
【0053】
前記ゴム層(A)に含まれる前記共重合体の融点と、前記ゴム層(B)に含まれる前記共重合体の融点との差は、30℃以下であることが好ましい。共重合体の融点の差が30℃以下であると、ゴム層(A)に含まれる共重合体と、ゴム層(B)に含まれる共重合体とを加熱によって近い温度で溶融させつつ、冷却によって近い温度で固化させることができるため、ゴム層(A)とゴム層(B)との間の剥離強度を更に向上させることができる。ゴム層(A)とゴム層(B)との間の剥離強度を更に向上させる観点から、ゴム層(A)に含まれる共重合体と、ゴム層(B)に含まれる共重合体とは、融点が同じであることが特に好ましい。
【0054】
前記共重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)が0℃以下であることが好ましく、-100℃~-10℃であることが更に好ましい。前記共重合体のガラス転移温度が0℃以下であれば、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の機械的強度を更に向上させることができる。
前記共重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量計を用い、JIS K 7121-1987に準拠して測定すればよい。
【0055】
前記共重合体は、結晶化度が0.5~50%であることが好ましく、3~45%であることが更に好ましく、5~45%であることがより一層好ましい。前記共重合体の結晶化度が0.5%以上であれば、非共役オレフィン単位に起因する共重合体の結晶性を十分に確保して、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の機械的強度を更に向上させることができる。また、前記共重合体の結晶化度が50%以下であれば、共重合体を含む組成物の混練の際の作業性、及び押出加工性が向上する。
前記共重合体の結晶化度は、100%結晶成分のポリエチレンの結晶融解エネルギーと、当該共重合体の融解ピークエネルギーを測定し、ポリエチレンと共重合体とのエネルギー比率から、結晶化度を算出すればよい。また、融解ピークエネルギーは、示差走査熱量計で測定することができる。
【0056】
前記共重合体は、主鎖が非環状構造のみからなることが好ましい。これにより、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)の機械的強度を更に向上させることができる。
なお、前記共重合体の主鎖が環状構造を有するか否かの確認には、NMRが主要な測定手段として用いられる。具体的には、主鎖に存在する環状構造に由来するピーク(例えば、三員環~五員環については、10~24ppmに現れるピーク)が観測されない場合、その共重合体の主鎖は、非環状構造のみからなることを示す。
なお、本明細書において、重合体の主鎖とは、それ以外のすべての分子鎖(長分子鎖又は短分子鎖、或いはその両方)が、ペンダントのように連なる線状分子鎖を意味する[「Glossary of Basic Terms in Polymer Science IUPAC Recommendations 1996」, Pure Appl. Chem., 68, 2287-2311(1996)のセクション1.34参照]。
また、前記共重合体は、直鎖状構造又は分岐状構造のいずれであってもよいが、直鎖状構造であることが好ましい。
【0057】
前記共重合体は、機械的強度に優れ、具体的には、破断強度、踏み抜き強度、引張強度、耐摩耗性、耐亀裂性、耐衝撃性等に優れる。該共重合体は、低温での機械的強度にも優れる。
更に、前記共重合体は、カーボンブラック、シリカ等の充填剤に頼らずとも、機械的強度に優れることから、着色剤を用いて着色することができ、加飾性に優れる。一方、前記共重合体は、充填剤との相互作用が可能であるから、充填剤を用いて更に機械的強度を向上させることもできる。
前記共重合体は、共役ジエン単位を含むことから、架橋が可能である。前記共重合体は、共役ジエン単位を含むことから、弾性体として働き、伸縮可能である。前記共重合体は、射出成型することができ、延伸加工も可能であるため、フィルム状に加工することができる。前記共重合体は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を含有するため、樹脂(オレフィン樹脂)にもゴム(ジエン系ゴム)にも接着し易く、従って、樹脂とゴムとの接着剤として機能し得る。また、前記共重合体は、発泡することができる。前記共重合体は、上述の通り、融点が50~120℃であることが好ましく、80~100℃程度のお湯を掛けたり、お湯に浸漬する程度の加熱で、形状を修復することができる。また、前記共重合体は、形状記憶特性を有する。
【0058】
-共重合体の製法-
前記共重合体として、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位との2つの単位からなる二元共重合体を製造する場合、共役ジエン化合物及び非共役オレフィン化合物を単量体として用いる重合工程を経て、当該共重合体を製造することができる。
また、前記共重合体として、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位の3つの単位からなる三元共重合体を製造する場合、共役ジエン化合物と、非共役オレフィン化合物と、芳香族ビニル化合物とを単量体として用いる重合工程を経て、当該共重合体を製造することができる。
【0059】
前記共重合体の製造方法は、更に、必要に応じ、カップリング工程、洗浄工程、及びその他の工程を経てもよい。
以下、三元共重合体を製造する場合を代表して、共重合体の製造方法について説明する。
【0060】
共重合体の製造においては、重合触媒の存在下で、共役ジエン化合物を添加せずに非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物のみを添加し、これらをまず重合させることが好ましい。特に後述の触媒組成物を使用する場合には、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物より共役ジエン化合物の方が、反応性が高いことから、共役ジエン化合物の存在下で非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物のいずれか一方又は両方を重合させ難い。また、先に共役ジエン化合物を重合させ、後に非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物を付加的に重合させることも、触媒の特性上、困難となり易い。
【0061】
重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン等が挙げられる。
【0062】
重合工程は、一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよい。
一段階の重合工程とは、重合させる全ての種類の単量体、即ち、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、芳香族ビニル化合物、及びその他の単量体、好ましくは、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、及び芳香族ビニル化合物を一斉に反応させて重合させる工程である。
また、多段階の重合工程とは、1種類又は2種類の単量体の一部又は全部を最初に反応させて重合体を形成し(第1重合段階)、次いで、第1重合段階で添加しなかった種類の単量体、第1重合段階で添加した単量体の残部等を添加して重合させる1以上の段階(第2重合段階~最終重合段階)を行って重合させる工程である。特に、前記共重合体の製造では、重合工程を多段階で行うことが好ましい。
【0063】
重合工程において、重合反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスの雰囲気下で行われることが好ましい。重合反応の温度は、特に制限されないが、例えば、-100℃~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。また、上記重合反応の圧力は、共役ジエン化合物を十分に重合反応系中に取り込むため、0.1~10.0MPaの範囲が好ましい。
また、重合反応の反応時間も特に制限がなく、例えば、1秒~10日の範囲が好ましいが、重合触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。
また、共役ジエン化合物の重合工程においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合を停止させてもよい。
【0064】
重合工程は、多段階で行うことが好ましい。より好ましくは、少なくとも芳香族ビニル化合物を含む第1単量体原料と、重合触媒とを混合して重合混合物を得る第1工程と、前記重合混合物に対し、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む第2単量体原料を導入する第2工程とを実施することが好ましい。更に、第1単量体原料が共役ジエン化合物を含まず、且つ第2単量体原料が共役ジエン化合物を含むことがより好ましい。
【0065】
第1工程で用いる第1単量体原料は、芳香族ビニル化合物と共に、非共役オレフィン化合物を含有してもよい。また、第1単量体原料は、使用する芳香族ビニル化合物の全量を含有してもよく、一部のみを含有してもよい。また、非共役オレフィン化合物は、第1単量体原料及び第2単量体原料の少なくともいずれかに含有される。
【0066】
第1工程は、反応器内で、不活性ガス、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。第1工程における温度(反応温度)は、特に制限はないが、例えば、-100℃~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。また、第1工程における圧力は、特に制限はないが、芳香族ビニル化合物を十分に重合反応系中に取り込むため、0.1~10.0MPaの範囲が好ましい。また、第1工程に費やす時間(反応時間)は、重合触媒の種類、反応温度等の条件によって適宜選択することができるが、例えば、反応温度を25~80℃とした場合には、5分~500分の範囲が好ましい。
【0067】
第1工程において、重合混合物を得るための重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサノン、ノルマルヘキサン等が挙げられる。
【0068】
第2工程で用いる第2単量体原料は、共役ジエン化合物のみ、又は、共役ジエン化合物及び非共役オレフィン化合物、又は、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物、又は、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物であることが好ましい。
なお、第2単量体原料が、共役ジエン化合物以外に非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも1つを含む場合には、予めこれらの単量体原料を溶媒等と共に混合した後に重合混合物に導入してもよく、各単量体原料を単独の状態から導入してもよい。また、各単量体原料は、同時に添加してもよく、逐次添加してもよい。
第2工程において、重合混合物に対して第2単量体原料を導入する方法としては、特に制限はないが、各単量体原料の流量を制御して、重合混合物に対して連続的に添加すること(所謂、ミータリング)が好ましい。ここで、重合反応系の条件下で気体である単量体原料(例えば、室温、常圧の条件下における非共役オレフィン化合物としてのエチレン等)を用いる場合には、所定の圧力で重合反応系に導入することができる。
【0069】
第2工程は、反応器内で、不活性ガス、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。第2工程における温度(反応温度)は、特に制限はないが、例えば、-100℃~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、反応温度を上げると、共役ジエン単位におけるシス-1,4結合の選択性が低下することがある。また、第2工程における圧力は、特に制限はないが、共役ジエン化合物等の単量体を十分に重合反応系に取り込むため、0.1~10.0MPaの範囲が好ましい。また、第2工程に費やす時間(反応時間)は、重合触媒の種類、反応温度等の条件によって適宜選択することができるが、例えば、0.1時間~10日の範囲が好ましい。
また、第2工程においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合反応を停止させてもよい。
【0070】
ここで、上記の共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、芳香族ビニル化合物の重合工程は、触媒成分として、下記(a)~(f)成分の1種以上の存在下で、各種単量体を重合させる工程を含むことが好ましい。なお、重合工程には、下記(a)~(f)成分を1種以上用いることが好ましいが、下記(a)~(f)成分の2種以上を組み合わせて、触媒組成物として用いることが更に好ましい。
(a)成分:希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物
(b)成分:有機金属化合物
(c)成分:アルミノキサン
(d)成分:イオン性化合物
(e)成分:ハロゲン化合物
(f)成分:置換又は無置換のシクロペンタジエン(シクロペンタジエニル基を有する化合物)、置換又は無置換のインデン(インデニル基を有する化合物)、及び、置換又は無置換のフルオレン(フルオレニル基を有する化合物)から選択されるシクロペンタジエン骨格含有化合物
上記(a)~(f)成分については、例えば、国際公開第2018/092733号等を参照することによって、重合工程に用いることができる。
【0071】
カップリング工程は、重合工程において得られた共重合体の高分子鎖の少なくとも一部(例えば、末端)を変性する反応(カップリング反応)を行う工程である。
カップリング工程において、重合反応が100%に達した際にカップリング反応を行うことが好ましい。
カップリング反応に用いるカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)等のスズ含有化合物;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;グリシジルプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)が、反応効率と低ゲル生成の点で、好ましい。
なお、カップリング反応を行うことにより、共重合体の数平均分子量(Mn)を増加させることができる。
【0072】
洗浄工程は、重合工程において得られた共重合体を洗浄する工程である。
なお、洗浄に用いる媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられるが、重合触媒としてルイス酸由来の触媒を使用する際は、特にこれらの溶媒に対して酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸等)を加えて使用することができる。添加する酸の量は溶媒に対して15mol%以下が好ましい。添加量が15mol%以下であることで、酸が共重合体中に残存しにくく、組成物の混練及び加硫時の反応に悪影響を及ぼし難い。
この洗浄工程により、共重合体中の触媒残渣量を好適に低下させることができる。
【0073】
(その他の成分)
前記ゴム層(A)及びゴム層(B)は、上述のゴム成分、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体以外のポリマー成分や、各種配合剤を含有してもよい。配合剤としては、例えば、充填剤;強化繊維;老化防止剤;軟化剤;ステアリン酸、亜鉛華、架橋促進剤及び架橋剤を含む架橋パッケージ;樹脂;紫外線吸収剤;発泡剤;着色剤等の機能性成分が挙げられる。
【0074】
-充填剤-
前記ゴム層(A)及びゴム層(B)は、充填剤を含んでもよい。ゴム層(A)及びゴム層(B)が、充填剤を含むことで、ゴム層(A)及びゴム層(B)の機械的強度を向上させることができる。
前記充填剤としては、カーボンブラック及び無機充填剤が挙げられる。
前記カーボンブラックの種類は、特に制限されず、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等が挙げられ、HAF、ISAF、及びSAFが好ましい。
前記無機充填剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア等の金属酸化物が挙げられ、これらの中でも、シリカが好ましい。シリカの種類は、特に制限はなく、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、コロイダルシリカ等が挙げられる。また、充填剤としてシリカを含有する場合、前記ゴム層(A)及びゴム層(B)中でのシリカの分散性を向上させるために、ゴム層(A)及びゴム層(B)は、更に、シランカップリング剤を含んでもよい。
【0075】
-老化防止剤-
前記ゴム層(A)及びゴム層(B)は、老化防止剤を含んでもよい。老化防止剤としては、例えば、アミン-ケトン系化合物、イミダゾール系化合物、アミン系化合物、フェノール系化合物、硫黄系化合物及びリン系化合物等が挙げられる。
【0076】
-軟化剤-
前記ゴム層(A)及びゴム層(B)は、軟化剤を含んでもよい。軟化剤としては、プロセスオイル、潤滑油、ナフテンオイル、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤、蜜ロウ、カルナバロウ、ラノリン等のワックス類等が挙げられる。これら軟化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
-架橋剤-
前記ゴム層(A)及びゴム層(B)は、架橋剤を含んでもよい。架橋剤としては、特に制限はなく、通常、過酸化物、硫黄、オキシム、アミン、紫外線硬化剤等が挙げられる。
前記共重合体は、共役ジエン単位を含むことから、硫黄により架橋(加硫)することができる。硫黄としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等を挙げることができる。
【0078】
-架橋促進剤-
前記ゴム層(A)及びゴム層(B)は、架橋促進剤を含んでもよい。架橋促進剤(加硫促進剤)としては、例えば、グアジニン系、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、アルデヒドアミン系、チオカルバミン酸塩系等の架橋促進剤が挙げられる。
【0079】
(一実施態様)
次に、図1を参照しながら、本発明の一実施形態に係る積層体を説明する。
図1は、本実施形態の積層体を模式的に示した、厚さ方向の断面図である。図1に示す積層体1は、ゴム層(A)2と、ゴム層(B)3と、を具え、ゴム層(A)2とゴム層(B)3とが接合されている。なお、図1に示す積層体1は、ゴム層(A)2と、ゴム層(B)3と、の二層からなるが、本発明の積層体は、三層以上であってもよい。
【0080】
(積層体の用途)
本実施形態の積層体は、後述するタイヤの他、少なくとの二つのゴム層を含む種々のゴム製品に適用できる。
【0081】
<積層体の製造方法>
上述した本実施形態の積層体は、種々の方法で製造でき、例えば、(1)架橋済みの少なくとの二つのゴム層を積層して、加熱してもよいし、(2)架橋済みの少なくとの一つのゴム層と、未架橋の少なくとの一つのゴム層とを積層して、加熱してもよいし、(3)未架橋の少なくとの二つのゴム層を積層して、加熱してもよい。
【0082】
一実施形態の積層体の製造方法は、ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含み、前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3~40質量部である架橋済みの少なくとの二つのゴム層を積層し、加熱することを特徴とし、かかる積層体の製造方法によれば、高い生産性で、層間の剥離強度が高い積層体が得られる。
【0083】
また、他の実施形態の積層体の製造方法は、ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含み、前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3~40質量部である架橋済みの少なくとの一つのゴム層と、ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含み、前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3~40質量部である未架橋の少なくとの一つのゴム層とを積層し、加熱することを特徴とし、かかる積層体の製造方法によっても、高い生産性で、層間の剥離強度が高い積層体が得られる。ここで、加熱により、未架橋の少なくとの一つのゴム層は、架橋(加硫)されてもよい。未架橋のゴム層を加熱により架橋する場合は、未架橋のゴム層は、上述の架橋剤、架橋促進剤を含むことが好ましい。
【0084】
また、更に他の実施形態の積層体の製造方法は、ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含み、前記共重合体の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して3~40質量部である未架橋の少なくとの二つのゴム層を積層し、加熱(架橋)することを特徴とし、かかる積層体の製造方法によっても、高い生産性で、層間の剥離強度が高い積層体が得られる。ここで、加熱により、未架橋の少なくとの二つのゴム層は、架橋(加硫)されてもよい。未架橋のゴム層を加熱により架橋する場合は、未架橋のゴム層は、上述の架橋剤、架橋促進剤を含むことが好ましい。
【0085】
前記ゴム層(A)及びゴム層(B)は、前記ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、前記共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含むゴム組成物から形成することができる。該ゴム組成物には、前記ゴム成分、並びに、前記共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体に加えて、上述した充填剤、シランカップリング剤、老化防止剤、軟化剤、架橋剤、架橋促進剤等を配合することができる。
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分及び前記共重合体のみを混合して製造してもよいし、前記ゴム成分及び前記共重合体の他、任意の添加成分を混合して製造してもよい。
また、前記ゴム成分及び前記共重合体のみを、又は、他の任意の添加成分と共に、単軸押出混練機、2軸押出混練機、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練機を用いて混練して製造してもよい。
各成分の混練は、一段階で行ってもよいし、二段階以上に分けて行ってもよい。
【0086】
前記ゴム組成物の成分を押出混練機により溶融混練して、ゴム組成物を押出した場合、押し出されたゴム組成物は、直接切断してペレットにしてもよいし、ストランドを形成した後、ストランドをペレタイザーで切断してペレットにしてもよい。ペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得る。
【0087】
前記ゴム層(A)及びゴム層(B)は、前記ゴム組成物を、溶融混練した上で、押出して製造してもよいし、前記ゴム組成物を熱プレスすることにより製造してもよい。
熱プレス温度は、120~160℃であることが好ましく、130~150℃であることがより好ましい。
【0088】
<タイヤ>
本実施形態のタイヤは、上述した本実施形態の積層体を具えることを特徴とする。本実施形態のタイヤは、上述した、層間の剥離強度が高く、生産性の高い、本実施形態の積層体を具えるため、耐久性が高く、また、生産性も高い。
【0089】
本実施形態のタイヤにおいて、上述した積層体の内の一層は、例えば、タイヤのリペアパッチや、リトレッドタイヤのトレッドゴム部材等として使用できる。ここで、上述した積層体の内の一層がタイヤのリペアパッチに相当する場合、積層体の内のもう一層は、損傷したタイヤに相当する。また、上述した積層体の内の一層がリトレッドタイヤのトレッドゴム部材に相当する場合、積層体の内のもう一層は、タイヤから摩耗したトレッドゴムを除去して準備される台タイヤに相当する。
【0090】
前記タイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に未架橋ゴム組成物及び/又はコードからなるカーカス層、ベルト層、トレッドゴム等の通常タイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを架橋させることにより、所望のタイヤ(例えば、空気入りタイヤ)を製造することができる。
【0091】
また、タイヤが損傷した場合は、損傷したタイヤの損傷部をゴム層(B)とし、該ゴム層(B)にゴム層(A)を積層し、所望により加熱して、ゴム層(B)にゴム層(A)を固着させることで、タイヤを補修することができる。
【0092】
また、使用後のタイヤから、トレッドゴムを取り除いて、台タイヤを得、該台タイヤの最表層をゴム層(B)とし、一方、ゴム層(A)としてリトレッド用のトレッドゴム部材を準備し、ゴム層(B)にゴム層(A)を積層することで、リトレッドタイヤを製造することができる。
【実施例0093】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0094】
<共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体の合成>
(共重合体1の合成)
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器内に、スチレン75gと、トルエン675gと、を加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に、((1-ベンジルジメチルシリル-3-メチル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体{(1-BnMeSi-3-Me]CGd[N(SiHMe}0.075mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[MeNHPhB(C]0.083mmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド0.35mmolを加え、更にトルエン30gを加えて、触媒溶液とした。
得られた触媒溶液を、前記耐圧ステンレス反応器内に加えて、60℃に加温した。
次いで、エチレンを圧力1.5MPaで、前記耐圧ステンレス反応器に投入し、75℃で計3時間共重合を行った。その共重合の際、1,3-ブタジエン20gを含むトルエン溶液80gを0.4~0.6mL/分の速度で連続的に添加した。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを、前記耐圧ステンレス反応器内に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体1を得た。
【0095】
(共重合体2の合成)
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器内に、スチレン30gと、1,3-ブタジエン5gを含むトルエン溶液20gと、トルエン430gと、を加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に、モノ(1,3-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体{1,3-[(t-Bu)MeSi]Gd[N(SiHMe}0.075mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[MeNHPhB(C]0.075mmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド0.35mmolを加え、更にトルエン20mLを加えて、触媒溶液とした。
得られた触媒溶液を、前記耐圧ステンレス反応器内に加えて、60℃に加温した。
次いで、エチレンを圧力1.0MPaで、前記耐圧ステンレス反応器内に投入し、75℃で計3時間共重合を行った。その共重合の際、1,3-ブタジエン60gを含むトルエン溶液240gを2.5~2.8mL/分の速度で連続的に添加した。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを、前記耐圧ステンレス反応器内に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体2を得た。
【0096】
<共重合体の物性測定方法>
合成した共重合体について、以下の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0097】
(1)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー社製HLC-8121GPC/HT、カラム:東ソー社製GMHHR-H(S)HT×2本、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、共重合体のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、測定温度は40℃である。
【0098】
(2)ブタジエン単位、エチレン単位、スチレン単位の含有量
共重合体中のエチレン単位、ブタジエン単位、スチレン単位の含有量(mol%)を、H-NMRスペクトル(100℃、d-テトラクロロエタン標準:6ppm)の各ピークの積分比より求めた。
【0099】
(3)融点(Tm)
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、共重合体の融点(Tm)を測定した。
【0100】
(4)ブタジエン単位の1,4-結合の含有率
赤外法(モレロ法)により1,2-結合及び3,4-結合求め、100%から1,2-結合及び3,4-結合の合計量を算出することで1,4-結合の含有率を算出した。
【0101】
(5)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、共重合体のガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0102】
(6)吸熱ピークエネルギー
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、得られた共重合体を、-150℃~150℃まで、10℃/minで昇温した。そして、その時(1st run)の0℃以上100℃未満の範囲における吸熱ピークエネルギー(ΔH(J/g))と、100℃以上150℃以下の範囲における吸熱ピークエネルギー(ΔH(J/g))とを測定した。
【0103】
(7)結晶化度
100%結晶成分のポリエチレンの結晶融解エネルギーと、得られた共重合体の0~120℃の融解ピークエネルギーを測定し、ポリエチレンと共重合体とのエネルギー比率から、結晶化度を算出した。なお、融解ピークエネルギーは、示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)で測定した。
【0104】
(8)引張強度(Tb)及び破断伸び(Eb)
JIS K 6251(2017年)に基づくダンベル状3号形に成形し、試験片とした。
引張強度(Tb)は、JIS K 6251(2017年)に基づいて、引張試験装置(インストロン社製)を使用し、試験片を25℃で100%伸長し、試験片を破断させるのに要した最大の引張り力として測定した。
破断伸び(Eb)は、試験片を、25℃にて100mm/分の速度で引張り、試験片が破断したときの長さを測定し、引っ張る前の長さ(100%)に対する長さとして求めた。
【0105】
(9)主鎖構造の確認
合成した共重合体について、13C-NMRスペクトルを測定し、13C-NMRスペクトルチャートにおいて、10~24ppmにピークが観測されなかったことから、合成した共重合体は、主鎖が非環状構造のみからなることを確認した。
【0106】
【表1】
【0107】
<ゴム組成物の調製>
表2に示す配合処方に従って、各成分を配合し混練、加硫して、ゴム組成物を調製した。なお、配合した共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体の種類及び量は、表3に示す通りである。
【0108】
【表2】
【0109】
*1 NR: 天然ゴム
*2 BR: ブタジエンゴム、UBEエラストマー社製、商品名「UBEPOL BR150L」
*3 カーボンブラック: N134
*4 加硫系薬品: 加硫促進剤と硫黄を含む
*5 その他成分: ステアリン酸、亜鉛華を含む
【0110】
<積層体の作製及び評価>
上記のようにして作製したゴム組成物からゴム層(A)及びゴム層(B)を作製し、ゴム層(A)とゴム層(B)とを積層して140℃で2分間加熱して、ゴム層(A)とゴム層(B)とを接合させて、積層体を作製した。得られた積層体に対して、以下の方法で、剥離強度を測定した。
【0111】
(10)剥離強度の測定
積層体のゴム層(A)の部分から、ゴム層(B)の部分を引き剥がして剥離させ、剥離時抗力(N/10mm)を測定した。測定結果は、実施例1の積層体の剥離強度を100として指数表示した。指数値が大きい程、剥離強度が高いことを示す。また、以下の基準で、各例の剥離強度を分類した。
優: 指数値が150以上の場合
良: 指数値が150未満100以上の場合
可: 指数値が100未満50以上の場合
不可: 指数値が50未満の場合
結果を表3に示す。
【0112】
【表3】
【0113】
表3から、ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体とを含むゴム層(A)と、ジエン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分と、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体とを含むゴム層(B)とから作製した積層体は、ゴム層(A)とゴム層(B)との間の剥離強度が高いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本実施形態の積層体は、タイヤ等の種々のゴム製品に利用できる。
【0115】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本発明の一実施形態は、「No.7_エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」、「No.12_つくる責任、つかう責任」及び「No.13_気候変動に具体的な対策を」などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0116】
1:積層体、 2:ゴム層(A)、 3:ゴム層(B)
図1