(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087590
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20240624BHJP
B60Q 3/283 20170101ALI20240624BHJP
B60Q 3/64 20170101ALI20240624BHJP
B60Q 3/72 20170101ALI20240624BHJP
F21V 8/00 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B62D1/06
B60Q3/283
B60Q3/64
B60Q3/72
F21V8/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202488
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】宮田 早也果
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】小島 史泰
【テーマコード(参考)】
3D030
3K040
3K244
【Fターム(参考)】
3D030DA25
3D030DA55
3D030DA69
3D030DB13
3D030DB16
3K040AA02
3K040CA05
3K040DB01
3K040EA05
3K040EB03
3K040GA04
3K040GB07
3K040GC11
3K244AA09
3K244BA03
3K244BA08
3K244BA14
3K244BA31
3K244BA48
3K244BA50
3K244CA02
3K244DA01
3K244EA01
3K244EA06
3K244EA08
3K244EA10
3K244EA16
3K244GA02
3K244LA04
(57)【要約】
【課題】操舵部の内部の光源から出射された光が太陽光の影響によって運転者に認識されにくくなることを抑制することができるステアリングホイールを提供する。
【解決手段】ステアリングホイール10は、車両70のステアリングシャフト75に連結されるボス部2と、運転者に把持され、ステアリングシャフト75を中心に回転操舵される操舵部1と、操舵部1の内部に設けられたLED54と、操舵部1の少なくとも一部に設けられ、LED54から出射された光を透過させることによって操舵部1の後面から光を出射させる光出射部50aと、を備え、光出射部50aの表面には、透光性を有し、且つ、艶消し用の微粒子56w2が含有された艶消し層56wが設けられている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵中心軸に連結されるボス部と、
運転者に把持され、前記操舵中心軸を中心に回転操舵される操舵部と、
前記操舵部の内部に設けられた光源と、
前記操舵部の少なくとも一部に設けられ、前記光源から出射された光を透過させることによって前記操舵部の後面から光を出射させる光出射部と、
を備え、
前記光出射部の表面には、透光性を有し、且つ、艶消し用の微粒子が含有された艶消し層が設けられていることを特徴とするステアリングホイール。
【請求項2】
前記光源を覆い、前記光出射部が設けられたカバー部材を備え、
前記カバー部材は、
透光性を有する基部と、
前記基部の後面に塗料が塗布されることによって形成され、前記基部より透光性が低い光低減層であって、前記光出射部を形成するための開口部が形成された光低減層と、
前記光低減層の後面、及び前記基部における前記開口部に対応する部分に塗料が塗布されることによって形成された前記艶消し層と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項3】
前記光低減層の前記開口部は、レーザーカットによって形成されていることを特徴とする請求項2に記載のステアリングホイール。
【請求項4】
前記光源を実装する回路基板であって、前記光源を該回路基板の前面に配置された実装面で実装する回路基板と、
前記光源から出射された光を前記回路基板の前面側から後面側に導光するガイド部材と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載のステアリングホイール。
【請求項5】
前記ガイド部材の後端部には白色の光拡散用のシートが貼り付けられており、
前記基部の全光透過率は10%以上、30%以下の範囲に設定されていることを特徴とする請求項4に記載のステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ステアリングホイールにおいては、運転者に把持されて回転操舵される操舵部の内部に光源を設け、操舵部の後面(運転者側の面)から光を出射させることによって運転者に所定の情報を伝える構成が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように操舵部の後面から光を出射させるステアリングホイールにおいては、昼間の運転時に操舵部の表面で反射する太陽光の影響により、光源から出射された光が運転者に認識されにくくなるおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、操舵部の内部の光源から出射された光が太陽光の影響によって運転者に認識されにくくなることを抑制することができるステアリングホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明に係るステアリングホイールの代表的な構成は、車両の操舵中心軸に連結されるボス部と、運転者に把持され、前記操舵中心軸を中心に回転操舵される操舵部と、前記操舵部の内部に設けられた光源と、前記操舵部の少なくとも一部に設けられ、前記光源から出射された光を透過させることによって前記操舵部の後面から光を出射させる光出射部と、を備え、前記光出射部の表面には、透光性を有し、且つ、艶消し用の微粒子が含有された艶消し層が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ステアリングホイールにおいて、操舵部の内部の光源から出射された光が太陽光の影響によって運転者に認識されにくくなることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るステアリングホイールを搭載した車両の運転席の周囲を左側から見た図である。
【
図3】ステアリングホイールの操舵部の断面図である。
【
図4】操舵部の点灯ユニットのリアカバーを取り外した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るステアリングホイール10について説明する。なお、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、相対配置は、特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0010】
図1は、本実施形態に係るステアリングホイール10を搭載した車両70の運転席79の周囲を左側から見た図である。
図2は、ステアリングホイール10の正面図であり、便宜上、パッド3xを透明化して外形線のみを二点鎖線で示している。
図3は、ステアリングホイール10の操舵部1を
図2に示すA1-A1断面で切断した断面図である。
【0011】
以下の説明において、ステアリングホイール10に関して記載する各方向は、
図1に示す車両70にステアリングホイール10が搭載された状態の方向を意味する。つまり左右方向は、ステアリングホイール10を搭載した車両70の左方向と右方向、具体的には運転者Mから見た左方向と右方向を意味する。前後方向は、車両70の前方向と後方向、具体的には運転者Mから見た前方向と後方向を意味する。上下方向は、鉛直方向の上方向と下方向を意味する。
【0012】
図1に示す様に、ステアリングホイール10は、操舵軸としてのステアリングシャフト75に連結されることにより車両70に搭載されている。車両70は、ステアリングシャフト75の外周部を部分的に覆ってステアリングシャフト75を支持するコラムチューブ76aと、ステアリングシャフト75におけるインストルメントパネル77から後方に突出した部分を覆うコラムカバー76bから構成されるステアリングコラム76を備える。ステアリングホイール10は、インストルメントパネル77から後方に突出したステアリングシャフト75の先端に取り付けられる。
【0013】
図2、
図3に示す様に、ステアリングホイール10は、車両70の運転者Mによって把持される操舵部1と、操舵部1の内側に配置され、ステアリングシャフト75に連結されるボス部2と、操舵部1とボス部2とを連結するスポーク部3を備える。また、ステアリングホイール10は、その前面側にフロントカバー9(
図1)を備える。
【0014】
操舵部1は、運転者Mに把持され、回転操舵される円環状の部材である。操舵部1の上部(スポーク部3a、3bの間の領域)には、操舵部1の一部を構成し、点灯することによって運転者Mに所定の情報を伝える点灯ユニット50が設けられている。点灯ユニット50は、内部に光源を有し、点灯ユニット50の後面に設けられた光出射部50aから運転者Mに向かって光を出射する。ここでいう点灯ユニット50の後面は、点灯ユニット50が操舵部1の一部を構成しているため、操舵部1の後面(運転者M側の面)とも言える。点灯ユニット50の詳しい構成については後述する。
【0015】
また、操舵部1における点灯ユニット50以外の部分は、断面形状が略逆U字状の金属製の芯材1aに対し、中間層1bと表皮層1cが順に積層されて形成されている。中間層1bは、発泡ポリウレタンなどのクッション性を有する材料で形成されている。表皮層1cは、天然皮革や合成皮革などの皮革で形成されている。
【0016】
ボス部2は、操舵部1の中心に配置され、ステアリングシャフト75に連結される金属製の部材である。ボス部2は、ステアリングシャフト75が挿通される軸穴2aを有し、軸穴2aにステアリングシャフト75の先端部が挿通されて嵌合した状態で、ステアリングシャフト75の先端部がナット止めされることにより、ボス部2とステアリングシャフト75とが連結される。また、ボス部2は、金属製の芯材2bと一体成型されている。
【0017】
なお、本実施形態では、操舵部1の芯材1a、ボス部2の芯材2b、及び、後述するスポーク部3の芯材3a1、3b1、3c1はダイキャスト加工により一体成型されており、これにより操舵部1、ボス部2、及びスポーク部3が連結されている。しかし、操舵部1の芯材1a、ボス部2の芯材2b、及び、スポーク部3の芯材3a1、3b1、3c1を別々に形成し、これらを溶接等によって連結させる構成としてもよい。
【0018】
スポーク部3は、ボス部2から左右両側にそれぞれ延びるスポーク部3a、3bと、ボス部2から後側に延びるスポーク部3cで構成されている。スポーク部3a、3bは、操舵部1の芯材1aとボス部2の芯材2bとを繋ぐように左右両側にそれぞれ延びる金属製の芯材3a1、3b1を有する。スポーク部3cは、ボス部2の芯材2bから後側に延び、左右に分岐しつつ操舵部1の芯材1aに繋がる金属製の芯材3c1を有する。また、スポーク部3a、3b、3cは、芯材3a1、3b1、3c1を覆う樹脂製のパッド3xを有する。
【0019】
運転者Mは、操舵部1を両手で把持し、ステアリングシャフト75を中心として操舵部1を回転操舵することにより、ステアリングシャフト75を介して車両70のタイヤを機械的に転舵させて車両70の進行方向を変更する。なお、ステアリングホイール10に操舵部1の回転角度を検出する不図示のセンサを設け、このセンサの検出結果に応じて車両70がタイヤを転舵させるステア・バイ・ワイヤ・システムを採用してもよい。
【0020】
また、点灯ユニット50は、車両70の連続の運転時間が所定以上となった場合、運転者Mに注意喚起するために点灯する。なお、点灯ユニット50の点灯タイミングはこれに限定されず、例えば車両70が自動運転に対応している場合、通常運転モードと自動運転モードとの切り替え時に点灯ユニット50を点灯させる構成としてもよい。
【0021】
次に、点灯ユニット50の詳しい構成について説明する。
図4は、点灯ユニット50においてリアカバー56を取り外した状態の斜視図である。
図5は、点灯ユニット50の分解斜視図である。
図6は、リアカバー56を裏面側から見た斜視図である。
図7Aは、点灯ユニット50を
図2に示すA2-A2断面で切断した断面図である。
図7Bは、
図7Aに示す領域Sの拡大断面図である。
【0022】
図4、
図5、
図6、
図7Aに示す様に、点灯ユニット50は、基材51、ケース52、回路基板53、回路基板53に実装されたLED54(光源)、LED54から出射された光を導光する光ガイド55(ガイド部材)、及びリアカバー56(カバー部材)から構成されている。
【0023】
基材51は、点灯ユニット50の前面側を構成する部材であり、前後方向から見て操舵部1の湾曲形状に沿って湾曲した形状を成している。基材51は、操舵部1における点灯ユニット50以外の部分に設けられた芯材1aとダイキャスト加工によって一体成型された金属製の芯材51aと、芯材51aを覆い、操舵部1における点灯ユニット50以外の部分に設けられた中間層1bと一体成型されたクッション性を有する中間層51bと、操舵部1の前面の一部を構成するフロントカバー51cから構成されている。芯材51aの断面形状は、芯材1aと同様に略逆U字状であるものの、点灯ユニット50の他の部材を配置するために後方の厚みが薄く、且つ、平坦となっている。
【0024】
ケース52は、前後方向から見て操舵部1の湾曲形状に沿って湾曲し、後側が開口した断面略コ字状の金属製の部材である。ケース52は、操舵部1の湾曲形状に沿って湾曲した板状の底壁部52aと、底壁部52aの外縁部から後方に延びる側壁部52bを有する。ケース52の底壁部52aと側壁部52bに囲われた空間には、回路基板53、LED54、及び光ガイド55が収納される。ケース52は、その底壁部52aが基材51の芯材51a上に配置され、芯材51aに形成されたネジ穴51a1と底壁部52aに形成されたネジ穴52a1にネジ91が挿通されて締結されることによって基材51に取り付けられる。
【0025】
回路基板53は、前後方向から見て操舵部1の湾曲形状に沿って湾曲し、ケース52の長手方向の長さと同等の長さを有する部材であり、ケース52の内部に収納されている。回路基板53におけるLED54を実装する実装面53aは、回路基板53の前面に設けられており、この実装面53aとケース52の底壁部52aとが略平行となるように回路基板53が配置されている。回路基板53は、後述する光ガイド55の入射部55a上に載置され、回路基板53に形成されたネジ穴53bとケース52の底壁部52aに形成されたネジ穴52a2にネジ92が挿通されて締結されることによってケース52に取り付けられる。また、回路基板53は、車両70に設けられた不図示の制御装置と不図示のケーブルによって電気的に接続されており、回路基板53に実装されたLED54は制御装置によって制御される。
【0026】
LED54は、回路基板53の前面に配置された実装面53aにおいて、操舵部1の周方向(回転方向)に沿って等間隔に並んで複数実装されている。本実施形態では、赤色光、緑色光、及び青色光を発光するLED54がそれぞれ二つずつ、合計で六つのLED54が実装されている。これらのLED54は、不図示の制御装置の制御に応じて発光する。なお、LED54の個数は要求される光量に応じて任意に変更可能であり、発光色は全て同色としてもよい。また、本実施形態では、光源としてLED54を用いるものの、可視光を出射する電子部品であれば、他の種類の光源を用いる構成としてもよい。
【0027】
光ガイド55は、LED54から出射された光を透過させ、光を内部で拡散しつつ回路基板53の前面側から後面側に導光するアクリル樹脂などの合成樹脂製の透明の断面略L字状の部材である。光ガイド55は、前後方向から見て操舵部1の湾曲形状に沿って湾曲した形状を成しており、長手方向の長さはケース52の同方向の長さより若干短く構成されている。光ガイド55は、回路基板53の実装面53aの前方で実装面53aやLED54と対向して配置され、鉛直方向に沿って延びる入射部55aと、入射部55aから略垂直に屈曲し、リアカバー56に向かって後方に延びる出射部55bを有する。光ガイド55の入射部55aから出射部55bへ移行する屈曲部分には、入射部55aに入射した光を後方に偏向させる偏向面55cが設けられている。また、出射部55bの後端部には、光を拡散するための白色の拡散シート55d(光拡散用のシート)が貼り付けられている。光ガイド55は、その入射部55aがケース52の底壁部52aに形成された凸部52a3上に載置されるとともに前後方向において底壁部52aと回路基板53とに挟持されることによって前後方向の位置が決められる。LED54から出射された光は、光ガイド55の入射部55aに入射し、偏向面55cで偏向されて出射部55bに入射し、拡散シート55dによって拡散されつつ出射部55bから後方に向かって出射される。
【0028】
リアカバー56は、操舵部1の後面の一部を構成する部材であって、前後方向から見て操舵部1の湾曲形状に沿って湾曲した形状を成している。リアカバー56は、透光性を有する黒色透明の合成樹脂で形成されており、後述する遮光層56vと艶消し層56wが設けられている部分以外の部位の光の透過率は、全光線透過率で10%~30%に設定されている。本実施形態において、リアカバー56はイソソルバイドを主原料としたバイオエンジニアリングプラスチック製となっており、光の透過率は顔料の含有量を調整することによって設定している。
【0029】
リアカバー56は、前後方向から見て操舵部1の湾曲形状に沿って湾曲し、基材51、ケース52、回路基板53、LED54、及び光ガイド55を後方から覆い、操舵部1の後面の一部を構成する基部56aと、基部56aの前面から前方に突出する二本のリブ56b1、56b2を有する。また、リアカバー56は、前後方向においてリブ56b1、56b2の間に配置され、基部56aの前面から前方に突出する位置決め突起56cと、基部56aの長手方向の両端部に設けられ、基部56aの前面から前方に突出する爪部56dを有する。
【0030】
リブ56b1、56b2は、基部56aの強度を確保するために設けられており、前後方向において並列して配置され、互いに略平行に延びている。また、リブ56b1は、前後方向において光ガイド55の出射部55bと隣接して配置され、出射部55bと略平行に延びている。位置決め突起56cは、前後方向において光ガイド55の出射部55bと隣接して配置され、出射部55bやリブ56b1、56b2と略平行に延びている。つまり光ガイド55の出射部55bは、前後方向においてリブ56b1と位置決め突起56cに挟まれており、これによって前後方向の位置が決められている。また、リブ56b1や位置決め突起56cの光の透過率は光ガイド55より低いことから、出射部55bが両者に挟まれることによって出射部55bを通過する光が外部に漏れることが抑制されている。
【0031】
爪部56dは、二本の突起56d1、56d2から形成されており、リアカバー56を基材51に装着するために基材51の嵌合穴51dに挿入される。爪部56dの突起56d1、56d2は、嵌合穴51dの内周部に接触することによって両者の距離が近接するように弾性変形した状態で嵌合穴51dに挿入され、復元力によって両者の距離が元に戻ることによって嵌合穴51dから抜け止めされる。
【0032】
図7Bに示す様に、リアカバー56の基部56aの後面(表面、外周面)には、遮光層56v(光低減層)と艶消し層56wが積層されて設けられている。遮光層56vは、基部56aの後面に黒色の塗料を塗布することによって形成されており、基部56aよりも光の透過率が低く構成されている。本実施形態では、遮光層56vの全光線透過率は0%に設定されている。また、遮光層56vは、レーザーカットによって部分的に除去されており、これによりLED54から出射された光を通過させるための開口部56v1が形成されている。本実施形態において、開口部56v1は、遮光層56vにおける操舵部1の幅方向の略中央部で、且つ、操舵部1の周方向の端部以外の領域に形成されている。リアカバー56は、LED54から出射された光を基部56a及び開口部56v1に充填された艶消し層56wで透過させて運転者M側に出射させる。つまり
図1に示す点灯ユニット50の光出射部50aは、リアカバー56における遮光層56vの開口部56v1が形成された部位である。なお、遮光層56vに開口部56v1を形成するための方法はレーザーカットに限られず、例えば塗料を塗布する際に開口部56v1を形成する部分にマスキングテープを貼り付けてもよい。但し、マスキングテープを用いる場合、マスキングテープの端面にバリができやすいことから、外観を良好にするためにレーザーカットの方が好ましい。
【0033】
艶消し層56wは、リアカバー56の後端面(最表面)に配置され、透明の樹脂に艶消し用の微粒子56w2が含有された塗料を遮光層56vの後面、及び基部56aの後面における遮光層56vの開口部56v1に対応する部分に塗布することによって形成されている。つまり
図1に示す点灯ユニット50の光出射部50aの表面には、艶消し層56wが設けられている。艶消し用の微粒子56w2は、艶消し層56wに入射した光を乱反射させて艶消し効果を生じさせるものである。本実施形態では、微粒子56w2としてシリカを使用するものの、他の物質を用いてもよい。また、艶消し層56wは、遮光層56vを含む基部56aの表面側をコーティングすることによって基部56aを保護している。なお、本実施形態において、艶消し層56wの全光線透過率は70%~90%程度に設定されている。
【0034】
次に、点灯ユニット50の点灯動作や太陽光の影響について説明する。まず車両70の連続の運転時間が所定以上となった場合、不図示の制御装置の制御信号に基づいてLED54が発光(点灯)する。LED54から出射された光は、光ガイド55の入射部55aに入射し、偏向面55cで偏向されて出射部55bに入射し、拡散シート55dによって拡散されつつ出射部55bから後方に向かって出射される。出射部55bから出射された光は、リアカバー56に入射する。そしてリアカバー56の基部56a、遮光層56vの開口部56v1、及び艶消し層56wを通過し、艶消し層56wの微粒子56w2で乱反射されつつ、艶消し層56wの後面から後方に向かって出射される。
【0035】
また、昼間の運転時にリアカバー56に太陽光が入射した場合、太陽光はリアカバー56の表面(後面)の艶消し層56wの微粒子56w2によって乱反射される。これによりリアカバー56の表面で正反射して運転者Mの目に届く太陽光の光量が低減され、LED54から出射された光が運転者Mに認識されやすくなる。このように本実施形態の構成によれば、リアカバー56の表面に艶消し層56wが設けられているため、操舵部1の内部のLED54から出射された光が太陽光の影響によって運転者Mに認識されにくくなることを抑制することができる。また、リアカバー56から後方に出射される光が艶消し層56wの微粒子56w2に乱反射されて拡散されるため、リアカバー56から光を均一的に出射させることができる。
【0036】
また、LED54は回路基板53の前面に実装されており、LED54から出射された光は光ガイド55によって拡散されつつ、回路基板53の前面側から後面側に導光される。このため、LED54を回路基板53の表面に実装する構成と比較して光ガイド55内の光路長を長くできることから、光を光ガイド55内で拡散させやすくなり、リアカバー56から光を均一的に出射させやすくなる。また、本実施形態のように発光色が異なるLED54を設けて混色させる場合、光ガイド55内で光を混色させやすくなるため、色ムラの発生を抑制することができる。
【0037】
また、光ガイド55の後端部に貼り付けられた拡散シート55dは白色であるため、リアカバー56を通過した太陽光が拡散シート55dの表面(後面)で反射しやすく、太陽光が運転者Mの目に届いてLED54から出射された光が運転者Mに認識されにくくなるおそれがある。これに対して本実施形態では、リアカバー56の基部56aの全光透過率を10%以上、30%以下の範囲に設定している。このため、拡散シート55dに入射する太陽光、及び拡散シート55dで反射された太陽光の光量が基部56aで低減されてリアカバー56から運転者M側に出射されにくくなり、運転者Mの目に届きにくくなることから、LED54から出射された光が太陽光の影響によって運転者Mに認識されにくくなることをさらに抑制することができる。加えて、リアカバー56の基部56aの全光透過率が低く設定されていることから、LED54の非点灯時にリアカバー56内の部材が運転者Mに視認されにくく、ステアリングホイール10の意匠性を高めることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、操舵部1における左右のスポーク部3a、3bの間の領域に点灯ユニット50を設ける構成について説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。即ち、点灯ユニット50を操舵部1の他の位置に配置する構成や、操舵部1の全域に配置する構成としても、上記同様の効果を得ることができる。
【0039】
また、本実施形態では、円環状の操舵部1を備えるステアリングホイール10について説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。即ち、例えば四角環状や棒状などの他の形状の操舵部1に点灯ユニット50を設ける構成としても、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1…操舵部、2…ボス部、10…ステアリングホイール、50…点灯ユニット、50a…光出射部、53…回路基板、54…LED(光源)、55…光ガイド(ガイド部材)、55d…拡散シート(光拡散用のシート)、56…リアカバー(カバー部材)、56a…基部、56v…遮光層(光低減層)、56v1…開口部、56w…艶消し層、56w2…微粒子(艶消し用の微粒子)、70…車両、75…ステアリングシャフト(操舵中心軸)、M…運転者