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特開2024-87591光学用材料の評価方法、プログラム、および光学用材料の評価装置
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  • 特開-光学用材料の評価方法、プログラム、および光学用材料の評価装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087591
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】光学用材料の評価方法、プログラム、および光学用材料の評価装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240624BHJP
   G01N 21/49 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
G01N21/49 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202490
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100143236
【弁理士】
【氏名又は名称】間中 恵子
(72)【発明者】
【氏名】守田 佳史
(72)【発明者】
【氏名】永谷 勇人
(72)【発明者】
【氏名】森光 大樹
【テーマコード(参考)】
2G051
2G059
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB06
2G051BB01
2G051CA04
2G051CA06
2G051CB05
2G051EC01
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB08
2G059CC20
2G059EE02
2G059FF01
2G059GG02
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM12
(57)【要約】
【課題】光学部品の品質を効果的に管理することが可能な、光学用材料の評価方法を提供する。
【解決手段】本発明の光学用材料の評価方法は、(A)前記光学用材料に対して透過性を有する波長の光を、前記光学用材料に対して一方の方向から照射することと、(B)前記光が照射されている前記光学用材料を、前記光の進行方向と交差する方向から撮影して、前記光が照射されている状態の前記光学用材料の画像データを得ることと、(C)前記画像データに基づいて、前記光学用材料内の異物を検出して、前記光学用材料の特性を評価することと、を含む。前記(C)において、前記画像データから輝点情報を取得し、前記輝点情報に基づき前記光学用材料内の異物を検出し、かつ前記輝点情報に基づき評価基準情報を用いて前記光学用材料の特性を評価する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学用材料内の異物を検出して光学用材料を評価する方法であって、
前記方法は、
(A)前記光学用材料に対して透過性を有する波長の光を、前記光学用材料に対して一方の方向から照射することと、
(B)前記光が照射されている前記光学用材料を、前記光の進行方向と交差する方向から撮影して、前記光が照射されている状態の前記光学用材料の画像データを得ることと、
(C)前記画像データに基づいて前記光学用材料内の異物を検出して、前記光学用材料の特性を評価することと、
を含み、
前記(C)において、前記画像データから輝点情報を取得し、前記輝点情報に基づき前記光学用材料内の異物を検出し、かつ前記輝点情報に基づき評価基準情報を用いて前記光学用材料の特性を評価する、
光学用材料の評価方法。
【請求項2】
前記輝点情報は、輝点の有無及び輝点の最小直径からなる群より選択される少なくとも1つの情報を含む、
請求項1に記載の光学用材料の評価方法。
【請求項3】
前記評価基準情報は、検出領域における前記輝点の個数、前記輝点の面積割合、及び前記輝点の最小直径からなる群より選択される少なくとも1つである、
請求項1に記載の光学用材料の評価方法。
ここで、前記輝点の面積割合は、(前記輝点の総面積)/(前記検出領域の面積)で求められる値である。
【請求項4】
前記光学用材料は、液体又は固体である、
請求項1に記載の光学用材料の評価方法。
【請求項5】
前記光学用材料は、液体である、
請求項4に記載の光学用材料の評価方法。
【請求項6】
前記評価基準情報は、検出領域における前記輝点の個数および前記輝点の最小直径である、
請求項5に記載の光学用材料の評価方法。
【請求項7】
前記光学用材料は、固体であって、
前記評価基準情報は、前記輝点の面積割合である、
請求項1に記載の光学用材料の評価方法。
ここで、前記輝点の面積割合は、(前記輝点の総面積)/(前記検出領域の面積)で求められる値である。
【請求項8】
前記光学用材料は、プラスチック光ファイバ用の材料である、
請求項1に記載の光学用材料の評価方法。
【請求項9】
前記評価基準情報は、前記輝点情報と、プラスチック光ファイバの損失との関係に基づいて決定された情報である、
請求項8に記載の光学用材料の評価方法。
【請求項10】
前記評価基準情報は、検出領域における前記輝点の個数、前記輝点の面積割合及び前記輝点の最小直径からなる群より選択される少なくとも1つと、前記プラスチック光ファイバの損失との関係に基づいて決定された情報である、
請求項9に記載の光学用材料の評価方法。
ここで、前記輝点の面積割合は、(前記輝点の総面積)/(前記検出領域の面積)で求められる値である。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の光学用材料の評価方法を実行するためのプログラム。
【請求項12】
評価対象である光学用材料に対して光を照射する光照射器と、
前記光が照射されている前記光学用材料を、前記光の進行方向と交差する方向から撮影する撮像装置と、
請求項11に記載のプログラムが格納された制御器と、
を備えた、
光学用材料の評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用材料の評価方法、プログラム、および光学用材料の評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ等の光学部品においては、光学部品内部に含まれる異物によってその品質が低下してしまう場合がある。したがって、光学部品は、異物を含まないことが望まれる。例えば特許文献1には、プラスチック光ファイバ素線についての欠陥検出方法が提案されている。このように、光ファイバ素線内の異物を特定する方法は、従来知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4018071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のとおり、従来の異物を特定する方法では、光ファイバ素線の状態、すなわち光学部品として成形された状態のものに対して異物の検出が行われていた。したがって、異物が多く検出された光学部品については、材料として再利用が難しい場合は破棄しなければならない等、従来の方法は問題を有していた。例えば光ファイバの場合、光ファイバ素線の状態で異物が多く検出されると、製造された光ファイバ素線の一部分のみを切断して使用することができず、全部が使用できなくなる。そのため、従来の方法には、製造効率の低下及び製造コストの上昇等の問題があった。
【0005】
製造効率及び製造コスト等の製造上のメリットを考慮すると、材料の段階で異物が検出されることが望ましい。しかし、材料の段階で異物の検出を行い、その検出結果をそのまま光学部品に対する異物検出の結果として単に適用しても、光学部品の異物による品質低下を効果的に防ぐことは難しかった。そこで、材料の段階で実施する異物の検出によって、光学部品の品質を管理できる技術が求められている。
【0006】
本発明は、光学部品の品質を効果的に管理することが可能な、光学用材料の評価方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、その光学用材料の評価方法を実行するためのプログラムおよびその光学用材料の評価方法を実施することができる光学用材料の評価装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る光学用材料の評価方法は、光学用材料内の異物を検出して光学用材料を評価する方法であって、
前記方法は、
(A)前記光学用材料に対して透過性を有する波長の光を、前記光学用材料に対して一方の方向から照射することと、
(B)前記光が照射されている前記光学用材料を、前記光の進行方向と交差する方向から撮影して、前記光が照射されている状態の前記光学用材料の画像データを得ることと、
(C)前記画像データに基づいて、前記光学用材料内の異物を検出して、前記光学用材料の特性を評価することと、
を含み、
前記(C)において、前記画像データから輝点情報を取得し、前記輝点情報に基づき前記光学用材料内の異物を検出し、かつ前記輝点情報に基づき評価基準情報を用いて前記光学用材料の特性を評価する。
【0008】
本発明の第2態様に係るプログラムは、本発明の第1態様に係る光学用材料の評価方法を実行するためのプログラムである。
【0009】
本発明の第3態様に係る光学用材料の評価装置は、
評価対象である光学用材料に対して光を照射する光照射器と、
前記光が照射されている前記光学用材料を、前記光の進行方向と交差する方向から撮影する撮像装置と、
本発明の第2態様に係るプログラムが格納された制御器と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光学部品の品質を効果的に管理することが可能な、光学用材料の評価方法を提供することができる。さらに、本発明は、その光学用材料の評価方法を実行するためのプログラムおよびその光学用材料の評価方法を実施することができる光学用材料の評価装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態の光学用材料の評価方法を示すフローチャートである。
図2図2は、本実施形態の光学用材料の評価装置の一例を示す模式図である。
図3図3は、本実施形態の光学用材料の評価方法において取得される、光が照射されている光学用材料の画像の一例である。
図4図4は、プラスチック光ファイバの断面構造の一例を示す。
図5図5は、異物の大きさについての検量線を示すグラフである。
図6図6は、輝点個数と標準粒子溶液の粒子個数濃度との関係を示すグラフである。
図7図7は、輝点の最小直径(μm)と損失(dB/km)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(用語の定義)
本明細書において、材料とは、成形される前のものを意味する。材料は、液体であってもよいし、固体であってもよい。例えば、プラスチックを成形する前のロッドである。
本明細書において、光学部品とは、成形品のことを意味する。
本明細書において、異物とは、原料に由来する不純物(例えば、繊維状の樹脂異物)や製造工程において混入した金属片等のことである。
【0013】
(本発明の実施形態)
本発明の光学用材料の評価方法および光学用材料の評価装置の実施形態について説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の光学用材料の評価方法は、
(A)光学用材料に対して透過性を有する波長の光を、光学用材料に対して一方の方向から照射すること(S1)と、
(B)光が照射されている光学用材料を、光の進行方向と交差する方向から撮影して、光が照射されている状態の光学用材料の画像データを得ること(S2)と、
(C)上記画像データに基づいて、光学用材料内の異物を検出して、光学用材料の特性を評価すること(S3)と、
を含む。
【0015】
本実施形態の光学用材料の評価方法では、上記(C)において、上記(B)で得られた上記画像データから輝点情報を取得し、前記輝点情報に基づき光学用材料内の異物を検出し、かつ前記輝点情報に基づき評価基準情報を用いて前記光学用材料の特性を評価する。本実施形態の光学用材料の評価方法は、換言すると、光学用材料内の異物を検出する異物検出方法ということができる。
【0016】
図2は、本実施形態の光学用材料の評価方法を実施しうる本実施形態の光学用材料の評価装置の一例を示す模式図である。本実施形態の光学用材料の評価装置は、換言すると、光学用材料内の異物を検出する異物検出装置ということができる。図2に示されているように、本実施形態の評価装置100は、例えば、評価対象である光学用材料1に光を照射する光照射器2と、光が照射されている光学用材料1を撮像する撮像装置3と、制御器4を備えている。制御器4は、本実施形態の光学用材料の評価方法を実行する。制御器4は、例えば、図2に示すように撮像装置3を制御する。制御器4は、光照射器2を制御してもよい。本実施形態の評価装置100は、出力装置5をさらに備えていてもよい。出力装置5は、例えばモニターであり、例えば取得された画像データを表示する。
【0017】
光照射器2は、光学用材料1に対して透過性を有する波長の光を光学用材料1の一方の方向から照射できる装置であればよく、特に限定されない。例えば、光学用材料1に対して透過性を有する波長のレーザ光を発振可能なレーザ装置(例えば、半導体レーザ装置)が用いられうる。また、発光ダイオード(LED)装置も用いられうる。光照射器2は、光学用材料1の一方の方向から光学用材料1に対して光を照射できる位置に設置される。使用される光の波長(すなわち、光学用材料1に対して透過性を有する波長)は、特には限定されないが、例えば380~780nmの波長範囲内であってもよい。
【0018】
撮像装置3は、光が照射されている状態の光学用材料1の画像データを取得することができる装置であればよく、特には限定されない。撮像装置3として、例えばマイクロスコープや画像を撮影できる顕微鏡が用いられうる。撮像装置3は、光学用材料に照射されている光の進行方向と交差する方向(例えば、直交する方向)から撮影できる位置に設置される。
【0019】
本実施形態の光学用材料の評価方法によれば、光学用材料内の異物を、光が照射されている光学用材料の画像データの輝点情報を利用して検出することができる。さらに、輝点情報に基づき、評価基準情報を用いて、光学用材料の特性が評価される。ここで、評価基準情報は、例えば、評価対象の光学用材料が用いられる光学部品の品質と、材料の状態で検出される異物との関係に基づいて、予め決定される情報である。本実施形態の光学用材料の評価方法では、このような評価基準情報に基づいて光学用材料の特性が評価されるので、光学部品の状態で良好な品質を実現できない程度に異物が混入している光学用材料であるか否かを、材料の状態で判定することができる。したがって、本実施形態の光学用材料の評価方法によれば、未だ光学部品として形成されていない材料の状態で、光学部品の品質を効果的に管理することが可能である。さらに、本実施形態の光学用材料の評価方法によれば、材料の状態で良否が判断されるので、異物の混入が多く不良であると判定された場合でも、例えば異物を除去するための精製処理(例えば、ろ過処理による異物の除去)を実施することによって、光学部品の材料としての利用が可能となる。したがって、本実施形態の光学用材料の評価方法が実施されることにより、光学部品の製造効率を向上させることができ、製造コストも抑えることができる。
【0020】
なお、光学用材料1は、液体であってもよいし、固体であってもよい。光学用材料1が液体である場合は、所定の容器内に液体の光学用材料1を入れたものを測定サンプルとして用いることができる。ここで、所定の容器とは、例えば、胴径×高さ×内径(mm):φ35×78×φ20のサンプル瓶である。なお、光学用材料1が固体である場合は、所定のサイズに切り出したものを測定サンプルとして用いればよい。ここで、所定のサイズとは、例えば、10mm×10mm×20mm程度の直方体である。
【0021】
本実施形態の光学用材料の評価方法を用いて評価される光学用材料が、光学部品の製造プロセスにおいて例えば液体(溶液)が固化されて固体となるプロセスを経る場合、液体の状態で評価が行われることが望ましい。液体の状態で異物の混入が多く不良であると判定された場合、ろ過等の簡単な方法によってその材料から異物を除去した後、光学用材料として光学部品の製造プロセスに戻すことができるので、製造コストをさらに抑えることができる等の効果が得られる。
【0022】
画像データから取得される輝点情報は、明度情報を用いて取得することができる。ここでは、明度が100以上255以下である領域を輝点と認定する。例えば、図3に示された画像の例では、より明るく認識できる点が輝点である。ここで、明度とは、VHX-8000(キーエンス社製マイクロスコープ)を用いてシャッタースピード 100ms、ゲイン 18dBの条件のもと暗室にてサンプルを撮影した画像に基づいて求められる。
【0023】
本実施形態の光学用材料の評価方法では、上記(C)の異物の検出において、輝点情報を用いて光学用材料内の異物を検出する。輝点情報は、例えば、輝点の有無及び輝点の最小直径からなる群より選択される少なくとも1つの情報を含む。光学用材料の特性の評価に用いられる評価基準情報は、検出領域における輝点の個数、輝点の面積割合、及び輝点の最小直径からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。より具体的には、検出領域における輝点の個数、輝点の面積割合、及び/又は輝点の最小直径と、評価対象の光学用材料が適用される光学部品の品質との関係に基づいて、予め検出領域における輝点の個数、輝点の面積割合、及び/又は輝点の最小直径の閾値を評価基準情報として設定することができる。それらの閾値と、実際に異物として検出された輝点の個数、輝点の面積割合、及び/又は輝点の最小直径とを比較することによって、光学部品の作製に用いられた場合に良好な品質を実現できない程度に異物が混入した光学用材料であるか否かを判定することができる。ここで、輝点の面積割合は、(輝点の総面積)/(検出領域の面積)で求められる値である。
【0024】
なお、上記の例では、光学用材料の評価が輝点情報を用いて行われる場合について説明したが、光学用材料の評価は、輝点情報に基づいて行われればよい。例えば、光学用材料の評価は、輝点情報に基づいて検出された異物の情報を用いて行われてもよい。この場合、輝点の個数と異物の個数との関係について、予め標準溶液を用いて検量線を求めておき、その検量線を用いて輝点の個数の検出結果から異物の個数を求めることができる。同様の方法によって、輝点の面積割合や輝点の最小直径から、異物の面積割合や異物の最小直径を求めることができる。そのようにして決定された異物自体の情報と評価基準情報とを用いて評価が行われてもよい。なお、この場合は、検出領域における異物の個数、異物の面積割合、及び/又は異物の最小直径と、評価対象の光学用材料が適用される光学部品の品質との関係に基づいて、予め検出領域における異物の個数、異物の面積割合、及び/又は異物の最小直径の閾値を評価基準情報として設定することができる。
【0025】
また、光学用材料が液体である場合、評価基準情報は、検出領域における輝点の個数および輝点の最小直径であってもよい。光学用材料が液体の場合、検出中に異物が移動することがあるため、画像データから取得される輝点が細長い形状となる傾向がある。そのため、光学用材料が液体の場合、細長い輝点が生じうる。そのような輝点の最大直径を計測すると、異物を大きく検知しうる。したがって、光学用材料が液体の場合、輝点の最小直径を参照することが望ましい。さらに、検出領域における輝点の個数を参照することで、より精度の高い評価基準情報となる。
【0026】
また、光学用材料は、固体であってもよい。この場合、評価基準情報は、輝点の面積割合であってもよい。上述のとおり、輝点の面積割合は、(輝点の総面積)/(検出領域の面積)で求められる値である。光学用材料が固体の場合、異物は固定されており、輝点が細長くなるようなことはない。したがって、輝点の総面積を用いて求められる輝点の面積割合を参照することで、適切な評価基準情報が得られる。
【0027】
本実施形態の光学用材料の評価方法の評価対象の光学用材料は、プラスチック光ファイバ(以下、「POF」と記載する)用の材料であってもよい。すなわち、本実施形態の光学用材料の評価方法は、POFの製造において、POFの品質を管理するための検査として適用されることが好ましい。図3は、POFの断面構造の一例を示す。図3に示されているように、POF10は、コア11と、コア11の外周に配置されたクラッド12と、を備えている。なお、クラッド12よりも外側に、オーバークラッドや被覆層等がさらに設けられていてもよい。
【0028】
POFの製造方法は、例えば、POFのコア及びクラッドの作製に用いられる樹脂材料の溶液を調製し、調製された樹脂材料の溶液をろ過して当該溶液から異物を取り除き、得られた樹脂材料の溶液に必要に応じて添加剤等を添加して混合し、得られた材料を固化してロッド状のコア材料(プリフォーム)及びクラッド材料(プリフォーム)を得る。次に、ロッド状のコア材料及びクラッド材料を溶融させてファイバ状に押出成形し、これを紡糸することによって、POFが製造される。このようなPOFの製造プロセスにおいて、例えば、樹脂材料の溶液をろ過した後であって、添加剤が添加されるよりも前に、溶液の一部をサンプリングして、これに対して本実施形態の光学用材料の評価方法を適用することが好ましい。この場合、溶液の状態であって、かつ樹脂材料に添加剤等を添加する前に、POFの良好な品質を実現できる材料であるか否かを判断できるので、たとえ使用不可と判断された場合でも再度ろ過処理を行うことによってPOFの材料としての使用が可能となる。したがって、製造効率及び製造コスト等の製造上のメリットが大きい。また、本実施形態の光学用材料の評価方法を、ロッド状のコア材料及びロッド状のクラッド材料に対して実施することもできる。この場合、必要な添加剤等が添加され、コア及びクラッドに成形される材料そのものに対して異物の検出及び材料の良否の判断ができるので、POFのより高度な品質管理が可能となる。
【0029】
本実施形態の光学用材料の評価方法が、POF用の材料に適用される場合、評価基準情報は、輝点情報とPOFの損失との関係に基づいて決定された情報であってもよい。例えば、上記(C)において、評価基準情報は、検出領域における輝点の個数、輝点の面積割合、及び輝点の最小直径からなる群より選択される少なくとも1つと、POFの損失との関係に基づいて決定された情報であってもよい。例えば、輝点の大きさを異物の大きさとみなして、輝点の大きさを用いて理論式に基づいて損失を推算してもよい。この場合、評価される光学用材料の特性は、POFの損失値となる。例えば、POFの損失値の閾値が設定され、POFの損失値がその閾値を超える場合の輝点の大きさ(すなわち、異物の大きさ)が閾値として決定される。その輝点の大きさの閾値が評価基準情報として用いられて、光学用材料の特性が評価される。
【0030】
以上のような方法によれば、POFが作製される前の材料の段階で、その材料を用いて作製されたPOFの損失を管理することが可能となる。したがって、本実施形態の光学用材料の評価方法がPOFの製造に適用されることにより、製造効率を大きく低下させたり、製造コストを大きく上昇させたりすることなく、低損失の高品質なPOFを製造することができる。
【0031】
上述の光学用材料の評価方法は、プログラムによって実施されてもよい。すなわち、本実施形態のプログラムは、上述の本実施形態の光学用材料の評価方法を実行するためのプログラムであってもよい。本実施形態のプログラムは、コンピュータによって実行可能なプログラムである。当該プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。また、当該プログラムは、インターネット等の手段を介して提供されてもよい。また、当該プログラムは、例えば、撮像装置に内蔵されているプログラムを利用するものであってもよい。当該プログラムの一例として、例えば、画像内の明度分布を数値化できるプログラムが挙げられる。具体例として、例えばImageJが挙げられる。本実施形態のプログラムは、例えば、数値化された画像内の明度分布に対し、設定した閾値を用いて、輝点の個数、面積割合、及び最小半径等を抽出できる機能を備えていてもよい。
【0032】
本実施形態の光学用材料の評価装置100の制御器4は、上記プログラムを格納し、当該プログラムを実施する。
【実施例0033】
(異物の大きさについての検量線の作成)
異物の大きさが異なる各種標準粒子溶液(商品名:CLINTEX、製造元:JSRライフサイエンス株式会社製)を準備した。この各種標準粒子溶液50mLを胴径×高さ×内径(mm):φ35×78×φ20のサンプル瓶(アズワン製、SCCスクリュー管瓶白NO7 50mL)にいれて、測定サンプルを準備した。暗室にて、半導体レーザ装置(THORLABS製PL201、波長:520nm)を用い、測定サンプルに対して、一方の方向からレーザ光を照射した。なお、レーザ光の強度は、860mW±15%以内に調整された。このようにレーザ光が照射されている測定サンプルを、VHX-8000(キーエンス社製マイクロスコープ)を用いて、光の進行方向と交差する方向から、シャッタースピード 100ms、ゲイン 18dBの条件のもと暗室にて撮影し、画像データを取得した。ついで、画像データを用いて輝点となるところの異物の大きさ(最小直径)が測定された。このようにして、検量線を作成した。図5は、この過程において作成された検量線を示す。なお、縦軸は、各種標準粒子溶液の異物の大きさ(つまり直径、単位:μm)を示す。横軸は輝点の大きさ(単位:μm)を示す。この結果から、検出される輝点の大きさ(すなわち、異物の大きさ)と、実際の異物の大きさとの関係がわかる。すなわち、この検量線を用いることによって、測定された輝点の大きさから、実際の異物の大きさを求めることができる。
【0034】
(評価体積の推定)
各種標準粒子溶液(商品名:CLINTEX、製造元:JSRライフサイエンス株式会社製)を、粒子個数濃度が1035、270、104、および7(個/mL)となるように水で希釈して調整した。この各種標準粒子溶液50mLを、胴径×高さ×内径(mm):φ35×78×φ20のサンプル瓶(アズワン製、SCCスクリュー管瓶白NO7 50mL)にいれて、測定サンプルを準備した。暗室にて、半導体レーザ装置(THORLABS製PL201、波長:520nm)を用い、測定サンプルに対して、一方の方向からレーザ光を照射した。なお、レーザ光の強度は、860mW±15%以内に調整された。このようにレーザ光が照射されている測定サンプルを、VHX-8000(キーエンス社製マイクロスコープ)を用いて、光の進行方向と交差する方向から、シャッタースピード 100ms、ゲイン 18dBの条件のもと暗室にて撮影し、画像データを取得した。取得された画像データを用いて、各測定サンプルの輝点個数を求めて、輝点個数と標準粒子溶液の粒子個数濃度との関係を示す関係式を求めた。その結果は、図6に示す通りである。この結果から、1視野での評価体積が0.4mLであると推定される。これは、例えばPOFのコアおよびクラッド長さ0.5m分に相当する。
【0035】
(損失の推定)
下記の関係式(1)を用いて、50視野分(例えば、POF25m相当)に輝点が1個存在する場合の損失を理論的に算出した。
【数1】
(ただし、rb:輝点の半径(μm)、R0:POFの半径(μm)、n:単位長さ当たりの輝点個数(個/m)、α:散乱効率=2)
【0036】
図7は、輝点の最小直径(μm)と損失(dB/km)との関係を示す。
【0037】
(損失の推定と実際の損失との関係)
伝送損失が221dB/kmであるPOFを準備した。なお、準備したPOFは、クラッドが2層構造(第1クラッド層および第2クラッド層)であるダブルクラッド構造を有し、かつクラッドの外側にオーバークラッドが設けられた構成を有していた。すなわち、コア、第1クラッド層、第2クラッド層、およびオーバークラッドを備えたPOFであった。各種溶媒を用いることで、オーバークラッドと、ダブルクラッドにおける第2クラッド層とを溶出させた。さらに別の溶媒を用いて、コアと、ダブルクラッドにおける第1クラッド層とを溶出させた。コアとダブルクラッドにおける第1クラッド層とを溶媒に溶出させることによって得られた溶液を、50mLを、胴径×高さ×内径(mm):φ35×78×φ20のサンプル瓶(アズワン製、SCCスクリュー管瓶白NO7 50mL)にいれて、測定サンプルを準備した。暗室にて、半導体レーザ装置(THORLABS製PL201、波長:520nm)を用い、測定サンプルに対して、一方の方向からレーザ光を照射した。なお、レーザ光の強度は、860mW±15%以内に調整された。このようにレーザ光が照射されている測定サンプルを、VHX-8000(キーエンス社製マイクロスコープ)を用いて、光の進行方向と交差する方向から、シャッタースピード 100ms、ゲイン 18dBの条件のもと暗室にて撮影し、画像データを取得した。取得された画像データを用いて、輝点個数と輝点の大きさ(輝点の最小直径)とを求めた。図5図6、および図7の検量線等を用いることで、損失推算値を求めた。その結果得られたPOFの損失推算値は、実測値の221dB/kmとほぼ同じ値であった。
【0038】
[付記]
以上をまとめると、本開示の発明の一形態は、下記である。
【0039】
(1)
光学用材料内の異物を検出して光学用材料を評価する方法であって、
前記方法は、
(A)前記光学用材料に対して透過性を有する波長の光を、前記光学用材料に対して一方の方向から照射することと、
(B)前記光が照射されている前記光学用材料を、前記光の進行方向と交差する方向から撮影して、前記光が照射されている状態の前記光学用材料の画像データを得ることと、
(C)前記画像データに基づいて、前記光学用材料内の異物を検出して、前記光学用材料の特性を評価することと、
を含み、
前記(C)において、前記画像データから輝点情報を取得し、前記輝点情報に基づき前記光学用材料内の異物を検出し、かつ前記輝点情報に基づき評価基準情報を用いて前記光学用材料の特性を評価する、
光学用材料の評価方法。
【0040】
(2)
前記輝点情報は、輝点の有無及び輝点の最小直径からなる群より選択される少なくとも1つの情報を含む、
上記(1)に記載の光学用材料の評価方法。
【0041】
(3)
前記評価基準情報は、検出領域における前記輝点の個数、前記輝点の面積割合、及び前記輝点の最小直径からなる群より選択される少なくとも1つである、
上記(1)または(2)に記載の光学用材料の評価方法。
ここで、前記輝点の面積割合は、(前記輝点の総面積)/(前記検出領域の面積)で求められる値である。
【0042】
(4)
前記光学用材料は、液体又は固体である、
上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の光学用材料の評価方法。
【0043】
(5)
前記光学用材料は、液体である、
上記(4)に記載の光学用材料の評価方法。
【0044】
(6)
前記評価基準情報は、検出領域における前記輝点の個数および前記輝点の最小直径である、
上記(5)に記載の光学用材料の評価方法。
【0045】
(7)
前記光学用材料は、固体であって、
前記評価基準情報は、前記輝点の面積割合である、
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の光学用材料の評価方法。
ここで、前記輝点の面積割合は、(前記輝点の総面積)/(前記検出領域の面積)で求められる値である。
【0046】
(8)
前記光学用材料は、プラスチック光ファイバ用の材料である、
上記(1)から(7)のいずれか1つに記載の光学用材料の評価方法。
【0047】
(9)
前記評価基準情報は、前記輝点情報と、プラスチック光ファイバの損失との関係に基づいて決定された情報である、
上記(8)に記載の光学用材料の評価方法。
【0048】
(10)
前記評価基準情報は、検出領域における前記輝点の個数、前記輝点面積割合、及び前記輝点の最小直径からなる群より選択される少なくとも1つと、前記プラスチック光ファイバの損失との関係に基づいて決定された情報である、
上記(9)に記載の光学用材料の評価方法。
ここで、前記輝点の面積割合は、(前記輝点の総面積)/(前記検出領域の面積)で求められる値である。
【0049】
(11)
上記(1)から(10)のいずれか1つに記載の光学用材料の評価方法を実行するためのプログラム。
【0050】
(12)
評価対象である光学用材料に対して光を照射する光照射器と、
前記光が照射されている前記光学用材料を、前記光の進行方向と交差する方向から撮影する撮像装置と、
上記(11)に記載のプログラムが格納された制御器と、
を備えた、
光学用材料の評価装置。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の光学用材料の評価方法は、例えばPOFの異物の検査に適している。
【符号の説明】
【0052】
1 光学用材料
2 光照射器
3 撮像装置
4 制御器
5 出力装置
10 POF
11 コア
12 クラッド
100 光学用材料の評価装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7