(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087594
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】ドーナツ用ミックス及びドーナツ
(51)【国際特許分類】
A21D 2/36 20060101AFI20240624BHJP
A21D 2/34 20060101ALI20240624BHJP
A21D 2/26 20060101ALI20240624BHJP
A21D 13/60 20170101ALI20240624BHJP
【FI】
A21D2/36
A21D2/34
A21D2/26
A21D13/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202494
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】312015185
【氏名又は名称】日清製粉プレミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中畑 大悟
(72)【発明者】
【氏名】安楽城 功
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩一
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB24
4B032DG08
4B032DK21
4B032DK22
4B032DK33
4B032DK48
4B032DK49
4B032DL20
(57)【要約】
【課題】米粉を使用して、サクサクした食感を有し、ボリュームがあり外観が良好なドーナツを製造することができる技術を提供すること。
【解決手段】本発明のドーナツ用ミックスは、米粉と、米粉100質量部に対し、0.5質量部以上6質量部以下の小麦グルテンとを含有し、更に、卵白粉、乳タンパク質粉末及び大豆粉から選ばれる少なくとも一種を含有する。卵白粉及び乳タンパク質粉末から選ばれる少なくとも一種を含有する場合、その量が、米粉100質量部に対し、0.5質量部以上30質量部以下であることが好ましい。大豆粉を含有する場合、その量が、米粉100質量部に対し、0.01質量部以上30質量部未満であることも好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粉と、
米粉100質量部に対し、0.5質量部以上6質量部以下の小麦グルテンとを含有し、
更に、卵白粉、乳タンパク質粉末及び大豆粉から選ばれる少なくとも一種を含有する、ドーナツ用ミックス。
【請求項2】
前記ドーナツ用ミックスが卵白粉及び乳タンパク質粉末から選ばれる少なくとも一種を含有し、その量が、合計で、米粉100質量部に対し、0.5質量部以上30質量部以下である、請求項1に記載のドーナツ用ミックス。
【請求項3】
前記ドーナツ用ミックスが大豆粉を含有し、その量が、米粉100質量部に対し、0.01質量部以上30質量部未満である、請求項1又は2に記載のドーナツ用ミックス。
【請求項4】
卵白粉及び卵黄粉を含有し、卵白粉と卵黄粉との質量比である卵白粉/卵黄粉が0.1以上1.0以下である、請求項1又は2に記載のドーナツ用ミックス。
【請求項5】
卵白粉及び乳タンパク質粉末から選ばれる少なくとも一種と、大豆粉とを含有する、請求項1又は2に記載のドーナツ用ミックス。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のドーナツ用ミックスを用いて製造された、ドーナツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粉を含有するドーナツ用ミックス及びそれを用いて得られたドーナツに関する。
【背景技術】
【0002】
ドーナツは、小麦粉、砂糖などを原料にして生地を調製し、調製した生地を油ちょうすることにより製造される揚げ菓子の一種であり、一般的には、過度の粘り(くちゃつき)がなくてサクサクとして歯切れがよく、口どけのよい食感のドーナツが好まれる。
更に、ドーナツは十分な膨らみ、見た目の大きさ(ボリューム)を感じさせることも重要である。
また、ドーナツは食感のみならず外観も重要であり、例えば、オールドファッション、チュロスなどは、表面に割れ目(クラック)が形成された独特の外観を持つことで特徴付けられ、食感、ボリュームが良好であることに加えてさらにそのような独特の外観を持つことが要求される。
【0003】
米粉を用いたドーナツに関しては、近年その食感等について検討がなされている(特許文献1及び2)。
また米粉を用いた洋菓子用ミックスにグルテンを添加することも従来なされている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-081423号公報
【特許文献2】特開2018-117616号公報
【特許文献3】特開2012-183007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、特許文献1及び2に記載のような米粉を用いたドーナツは、もちもちした食感を有しやすい一方で、サクサクした食感を得る点について改善の余地があった。更に、小麦粉を主要な穀粉として用いる場合に比して、ボリュームや外観における品質も十分でなかった。特許文献3に記載のように、米粉の改質として従来グルテンを添加する方法が知られているが、本発明者は、特許文献3に記載のように米粉にグルテンを添加したのみでは、ドーナツの食感やボリューム、外観の改善効果は十分ではないことを知見した。結果として、米粉を使用して、サクサクした食感を有し、ボリュームがあり外観が良好なドーナツを製造することができる技術は未だ提供されていない。
【0006】
本発明の課題は、米粉を用いて、サクサクした食感を有しボリュームがあり外観に優れるドーナツを製造し得る技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前回課題を解決し得る技術について種々検討した結果、米粉に対して小麦グルテンを所定量添加し、更に所定のタンパク素材を用いることで、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、米粉と、米粉100質量部に対し、0.5質量部以上6質量部以下の小麦グルテンとを含有し、更に、卵白粉、乳タンパク質粉末及び大豆粉から選ばれる少なくとも一種を含有する、ドーナツ用ミックスを提供するものである。
【0009】
また本発明は、前記知見に基づきなされたもので、前記の本発明のドーナツ用ミックスを用いて製造された、ドーナツを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、米粉を使用して、サクサクした食感を有し、ボリュームがあり外観が良好なドーナツを製造することができるドーナツ用ミックスが提供される。また本発明によれば、米粉を使用して、サクサクした食感を有し、ボリュームがあり外観が良好なドーナツが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のドーナツ用ミックス(以下、単に「ミックス」とも言う。)は、米粉と、米粉100質量部に対し、0.5質量部以上6質量部以下の小麦グルテンとを含有し、更に、卵白粉、乳タンパク質粉末及び大豆粉から選ばれる少なくとも一種を含有する。
【0012】
<米粉>
米粉としては、原料米の種類や産地に制限されるものではなく、例えばうるち米粉、もち米粉、およびそれらの混合粉を用いることができる。サクサクした食感、ボリューム、良好な外観が得やすい等の観点からは、うるち米粉が好ましい。該米粉は、精白米粉、玄米粉、またはそれらの混合粉であってもよいが、好ましくは精白米粉である。
【0013】
本発明のミックスでは、米粉以外の穀粉や澱粉を用いることができる。米粉以外の穀粉としては、小麦粉、小麦全粒粉、ライ麦粉、コーンフラワー等が挙げられる。また、澱粉としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉などの未加工澱粉、およびそれらを加工(例えば、架橋化、リン酸化、アセチル化、エーテル化、酸化、α化など)した加工澱粉が挙げられる。本明細書において、穀粉及び澱粉を合わせて「穀粉類」と称することがある。本発明のミックスでは、穀粉類の合計量中、米粉が主成分であることが好ましい。主成分とは穀粉類の合計量中50質量%以上を占めることをいう。穀粉類の合計量中、米粉の割合は60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であってもよい。なお、大豆粉の含有量はここでいう穀粉類の合計量に含めないものとする。
【0014】
更に限定するものではないが、本発明のミックスにおける米粉の割合は例えば35質量%以上であることが、米粉を対象とする本発明の効果をより明確としやすいため好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。また、本発明のミックスにおける米粉の割合は例えば90質量%以下であることが、他の成分を含有して液体と混合しただけで使用しやすいものとする点やミックスの混合均一性の点で好ましく、80質量%以下であることが特に好ましい。
ミックスは米粉100重量部と白糠粉1~300重量部を含有するミックスを除くものであってもよい。
【0015】
<小麦グルテン>
小麦グルテンとしては、生グルテンを使用しても、粉末グルテン(活性グルテン)を使用してもよいが、他の成分を含有して液体と混合しただけで使用しやすいものとする点から粉末グルテンが好ましい。市販されるグルテンとしては、例えば、「エマソフトM-1000」、「エマソフトEX-100」(いずれも理研ビタミン社製)、「スーパーグル」、「スーパーグル75H」(いずれも日本コロイド社製)、「AグルSS」、「A-グルK」(いずれもグリコ栄養食品株式会社製)等が挙げられるが、これに限定されない。
【0016】
本発明は、米粉100質量部に対し、小麦グルテンを0.5質量部以上6質量部以下含有することを一つの特徴とし、当該特徴を所定のタンパク素材と組み合わせることで食感、ボリューム及び外観に優れたドーナツを得るものである。米粉100質量部に対し、小麦グルテンの量が6質量部超であると、所望のドーナツ外観が得難い。米粉100質量部に対し、小麦グルテンの量が0.5質量部未満であると、ボリュームが小さく、この場合も外観に劣る。この観点から、米粉100質量部に対し、小麦グルテンを0.5質量部以上6.0質量部以下含有することがより好ましく、0.8質量部以上5.5質量部以下含有することが特に好ましい。なお、生グルテンを用いる場合は、乾燥質量が上記範囲とする。
【0017】
<卵白粉、乳タンパク質粉末及び大豆粉>
本発明者は米粉でドーナツを製造する際にサクサクした食感と良好な外観、ボリュームを有させる方法について鋭意検討した。その結果、ドーナツにおいては、小麦グルテン量を上記の特定量としながら、特定のタンパク素材を用いることで、上記の課題を解決できることを見出した。具体的には、本発明では、卵白粉、乳タンパク質粉末及び大豆粉から選ばれる少なくとも一種を用いる。これらに含まれるタンパク質は、小麦グルテンとは異なり、起泡性や熱凝固性といった特性や必要以上のグルテンネットワーク形成を阻害する特性を有するために、小麦グルテンと組み合わせることで膨化力の増大や、ドーナツの吸油量を調整する効果が得られ、これにより得られる米粉を用いたドーナツの食感、ボリューム及び外観を良好なものとできると考えられる。
【0018】
卵白粉とは、卵白液を常法により乾燥して得られるもので、「乾燥卵白」又は「粉末乾燥卵白」と呼ばれることもある。乾燥の手段としては噴霧乾燥(スプレードライ)、静置乾燥(バンドライ)、真空凍結乾燥(フリーズドライ)等のいずれの方法を採用しても差し支えない。卵白液としては、殻付生卵を割卵分離して得られるもののほか、凍結卵白を解凍したもの、卵白液を熱変性を生じさせない程度に常法により加熱殺菌処理をしたものや、保存中の褐変を防止するため液卵白を常法により脱糖処理を経たもの等を適宜用いることができる。
【0019】
乳タンパク質粉末としては、ホエー、脱塩ホエー、ホエーパウダー(脱塩ホエーパウダーを含む)、ホエータンパク質濃縮物(WPC)、ホエータンパク質分離物(WPI)、全脂粉乳、脱脂粉乳、全脂濃縮乳、脱脂濃縮乳、高純度乳タンパク質(TMP)、乳タンパク質濃縮物(MPC)、乳タンパク質分離物(MPI)等が挙げられる。
【0020】
大豆粉は、当技術分野で通常使用されるものを特に制限されることなく使用でき、例えば、脱脂大豆粉及び/又は全脂大豆粉などが挙げられる。
【0021】
ミックスが卵白粉及び乳タンパク質粉末から選ばれる少なくとも一種を含有する場合、その量が、合計で、米粉100質量部に対し、0.5質量部以上30質量部以下であることが好適である。米粉100質量部に対し、卵白粉及び乳タンパク質粉末から選ばれる少なくとも一種の量が0.5質量部以上であることで、サクサクした食感、ボリューム、良好な外観が得やすくなる。また、30質量部以下であることで、食感改善効果を得やすくなり、良好なボリュームを得つつ、安定した形状を保つ利点がある。これらの点から、卵白粉及び乳タンパク質粉末から選ばれる少なくとも一種を含有する場合、その量が、合計で、米粉100質量部に対し、0.6質量部以上25質量部以下がより好ましい。
【0022】
本発明では、特に好ましい形態として、卵白粉を、米粉100質量部に対し、0.5質量部以上3.0質量部以下含有することが好ましい。これにより、サクサクした食感、ボリューム及び外観向上の効果が顕著なものとなるためである。また、当該量とすることでくちゃつきがない食感及び口溶けのよい食感にも優れるためである。これらの観点から、とりわけ、卵白粉を、米粉100質量部に対し、0.6質量部以上3.0質量部以下含有することが好ましい。
【0023】
更に、本発明の効果を一層顕著なものとする観点から、卵白粉は、小麦グルテン100質量部に対し10~80質量部となるように含有されることが好ましく、15~75質量部となるように含有されることがより好ましい。
【0024】
ミックスが大豆粉を含有する場合、大豆粉を小麦グルテンと組み合わせることによるサクサクした食感、ボリューム及び外観の改善効果を良好とする点から、大豆粉の量が、米粉100質量部に対し、0.01質量部以上30質量部未満であることが好ましく、0.5質量部以上25質量部以下がより好ましい。この量であることで、本発明のミックスを用いたドーナツは、くちゃつきがない食感、及び、口溶けのよい食感にも優れるものとなる。
【0025】
大豆粉を含有する場合、その効果を一層高める観点から、大豆粉が小麦グルテン100質量部に対し50~700質量部となるように含有されることが好ましく、80~650質量部となるように含有されることがより好ましい。
【0026】
米粉を用いた場合における、サクサクした食感、ボリューム及び外観の改善効果を得るための本発明の特に好ましい形態としては卵白粉及び乳タンパク質粉末から選ばれる少なくとも一種と、大豆粉とを含有することが好適であり、卵白粉及び大豆粉を併用することがとりわけ好ましく、卵白粉と、卵黄粉と大豆粉を全て用いることが最も好ましい。
【0027】
本発明のミックスの別の好ましい形態としては、卵黄粉を含有する形態が挙げられる。卵黄粉とは「乾燥卵黄」又は「粉末乾燥卵黄」と呼ばれることもある。卵黄粉としては、殻付生卵を割卵分離して得られる卵黄のほか、それをプロテアーゼ等の蛋白分解酵素やホスホリパーゼ等の脂質分解酵素で処理した酵素処理卵黄、酵母、グルコースオキシダーゼ等で処理した脱糖卵黄等の各種卵黄液を任意の乾燥方法、例えば、噴霧乾燥(スプレードライ)、凍結乾燥(フリーズドライ)、真空乾燥、マイクロ波乾燥等が乾燥させたものが挙げられる。卵黄粉を用いることでサクサクした食感、ボリューム及び外観の改善を一層効果的なものとすることができる。
【0028】
特に卵白粉に対し、卵黄粉を含有する形態が好ましい。その場合、とりわけ、卵白粉と卵黄粉との質量比である卵白粉/卵黄粉が0.1以上1.0以下である形態が好ましい。
卵白粉と卵黄粉を当該比率で含有することでサクサクした食感、ボリューム及び外観の改善効果が特に優れたものとなる。また、本発明のミックスを用いたドーナツは、くちゃつきがない食感、及び、口溶けのよい食感にも優れるものとなる。卵白粉/卵黄粉の質量比をコントロールすることで上記の効果が得られる理由は定かでないが、米粉の存在下において、卵白粉と卵黄粉を上記比率で組み合わせると、卵白粉による機能と、卵黄粉の機能がそれぞれ効果的に働くものと考えている。これらの観点から、卵白粉及び卵黄粉の質量比(卵白粉/卵黄粉)は0.20以上0.80以下であることがより好ましく、0.23以上0.68以下が最も好ましい。
【0029】
なお、卵白粉と併用する場合もしない場合も、卵黄粉を用いる上記の効果を得る点から、用いる場合には、米粉100質量部に対し、卵黄粉が0.5~5.0質量部であることが好ましく、1.0~4.0質量部であることがより好ましい。
【0030】
本発明のミックスには、甘味や風味付け、あるいは口どけのさらなる向上等の観点から、穀粉類に加えてさらに、糖類を含有させることができる。糖類としては、広く食用に用いられる糖類を特に制限なく用いることができ、例えば、砂糖、ぶどう糖、オリゴ糖、麦芽糖、トレハロース、果糖が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のミックスにおける糖類の含有量は、該ミックス中の米粉100質量部に対して、好ましくは20~150質量部、より好ましくは25~100質量部である。
【0031】
本発明のミックスは、米粉、米粉以外の穀粉類、卵白粉、乳タンパク質粉末、大豆粉、卵黄粉及び糖類以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、動物油脂、植物油脂等の油脂類;食塩、粉末醤油、果実由来の発酵物等の発酵物、粉末味噌、アミノ酸その他の調味料;炭酸水素ナトリウム(重曹)、ベーキングパウダー、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム等の膨張剤又はイースト;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、有機酸モノグリセリド、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム等の乳化剤;大豆タンパク質、ゼラチン等のタンパク素材;増粘多糖類;乳タンパク質粉末以外の乳原料;香料;酵素;色素等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて適宜の量で用いることができる。
【0032】
本発明のミックスは米粉、小麦グルテンをはじめとする前述の成分を混合することによって得られる。本発明のミックスの常温常圧下での形態は、典型的には、粉末状、顆粒状などの粉体である。
【0033】
本発明のミックスはドーナツの製造に使用することができる。本発明において「ドーナツ」とは、米粉を含む生地を油ちょうすることにより製造される食品を指し、ドーナツと呼ばれる食品の他、チュロス等も含まれる。本発明のミックスは、イーストの発酵力によって生地を膨らませるイーストドーナツの製造にも使用できるし、膨張剤を用いて生地を膨らませるケーキドーナツの製造にも使用できる。
【0034】
本発明は、本発明のミックスを用いて得られたドーナツを提供するものである。本発明のドーナツは、特定の組成のミックスを用いることで米粉を用いるにもかかわらず、サクサクした食感を有しボリュームがあり外観に優れるという優れた効果を奏するものである。米粉ドーナツの食感、外観等の機械的な評価方法は十分に確立されておらず、本発明のドーナツのサクサク、口溶け、くちゃつきのなさ等の食感、ボリューム、外観について、物性や形状を特定することには、比較的商品サイクルの短く早期出願が求められる本技術分野において不可能又は非実際的な事情がある。
【0035】
次に、本発明のドーナツの製造方法について説明する。
本発明のドーナツの製造方法は、前述の本発明のミックスを用いて調製した生地を、加熱した油中に投入して油ちょうする工程を有する。
本発明のドーナツの製造方法は、典型的には、本発明のミックスを用いて生地を調製する工程(生地調製工程)と、該生地を所定形状に成形して成形生地を得る工程(成形工程)と、該成形生地を加熱した油中に投入して油ちょうしてドーナツを得る工程(油ちょう工程)とを有する。また、製造するドーナツがイーストドーナツの場合は、前記生地調製工程の後で前記成形工程の前に、生地を発酵させる工程を有する場合がある。前記の各工程は、基本的に常法に従って実施することができる。
【0036】
前記生地調製工程は、典型的には、ミックスに液体を添加して混合物を得、該混合物をミキサーによって攪拌(ミキシング)することで実施される。調製する生地は、液体の含有量が比較的少ない粘土状の生地(いわゆるドウ)でもよく、液体の含有量が比較的多いペースト状の生地(いわゆるバッター)でもよく、製造するドーナツの種類等に応じて適宜選択できる。ミックスに添加する液体としては、水、油、調味料、卵液(全卵、卵白、卵黄)、牛乳等を含んだ水性液体を例示できる。また、ミックスに対する液体の添加量は特に制限されないが、一般的にはミックス100質量部に対して、好ましくは15~60質量部、より好ましくは20~55質量部である。なお、生地に対する液体の添加量を計算する場合、該液体として使用する全卵の含水率は76質量%、該液体として使用する牛乳の含水率は88質量%とする。本発明において卵液は使用しても使用しなくてもよく、使用する場合はミックス100質量部に対して1~70質量部が好ましく、5~60質量部がより好ましい。
【0037】
前記成形生地の形状は特に制限されず、すなわち製造するドーナツの形状は特に制限されず、リング状など、任意の形状を選択し得る。また、ドーナツ1個当たりの生地の重量、すなわち前記油ちょう工程で油中に投入する成形生地の重量は特に制限されないが、一般的には、好ましくは20~80g、より好ましくは20~70gである。
【0038】
前記油ちょう工程において、生地(成形生地)を油ちょうする際の油温は、製造するドーナツの種類等に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、好ましくは150~220℃、より好ましくは165~200℃である。
【実施例0039】
〔実施例及び比較例〕
下記表1及び表2の「配合(質量部)」の欄に記載の配合で原材料を混合して、ドーナツ用ミックスを製造した。使用した原材料の詳細は下記のとおりである。
・米粉:日清製粉株式会社、商品名「ふわり」(精白粉、うるち米粉)
・小麦グルテン:日本コロイド株会社、商品名「スーパーグル」
・卵白粉:キューピータマゴ株式会社、商品名「乾燥卵白Kタイプ」
・卵黄粉:キューピータマゴ株式会社、商品名「乾燥卵黄No.1」
・大豆粉:株式会社J-オイルミルズ、商品名「JOYLミルキーS」
・糖類:グラニュ糖、三井製糖株式会社製、商品名「スプーン印 グラニュ糖」
・油脂:ショートニング、ミヨシ油脂株式会社製、商品名「クローネショートニング」
・膨張剤:ベーキングパウダー、オリエンタル酵母工業株式会社製、商品名「ベーキングパウダーM#1」
【0040】
〔製造例:オールドファッションドーナツの製造〕
各実施例及び比較例のミックスを用いて、ケーキドーナツの一種であるオールドファッションドーナツを製造した。具体的には、市販のミキサーに、ミックス100質量部と、水20質量部、及び全卵15質量部と、サラダ油10質量部とを投入し、低速で180秒攪拌した後、ミキサーの攪拌翼に付着した生地をかき落としてから高速で60秒攪拌して生地を調製した(生地調製工程)。水の量は生地の硬さに合せて調整した。前記生地を品温25℃で10分間静置した後、ドーナツ1個当たり50gに分割し、その分割生地をリング状に成形して成形生地を得た(成形工程)。前記成形生地を油温180℃の油中に投入し、1分油ちょうした後、該成形生地を上下反転させて反対側の面を1分油ちょうし、オールドファッションドーナツを製造した。オールドファッションドーナツは、表面(上面)側のみにクラックと呼ばれる割れ目が形成され、裏面(下面)側にはクラックが形成されないことが望ましいとされている。
【0041】
〔評価試験〕
製造したオールドファッションドーナツについて、油ちょう後に粗熱をとった後、その食感(サクサクした食感(サクミ)、くちゃつきのなさ、口どけの良さ)、外観(クラック)、見た目のボリュームを下記評価基準(5点満点)に従って評価した。評価は10名の専門パネラーが実施した。10名の専門パネラーの評価点の算術平均値を表1又は表2に示す。
【0042】
<サクサクした食感(サクミ)の評価基準>
5点:非常にサクサクしていて、歯もろく、極めて良好。
4点:サクサクしており、良好。
3点:サクミが不足している。
2点:サクミがほとんどなく、しなり気味であり、不良。
1点:サクミが全くなく、しなっており、極めて不良。
【0043】
<くちゃつきのなさの評価基準>
5点:くちゃつきが全くなく、極めて良好。
4点:くちゃつきがほとんどなく、良好。
3点:わずかにくちゃつきがある。
2点:くちゃつきがあり、不良。
1点:非常にクチャクチャし、極めて不良。
【0044】
<口どけの良さの評価基準>
5点:極めて良好。
4点:良好。
3点:やや劣る。
2点:劣る。
1点:口の中でだんごになり、非常に劣る。
【0045】
<外観(クラック)の評価基準>
5点:表面側のクラックが非常に大きく、色付きのコントラストが極めて明瞭である。
4点:表面側のクラックが大きく、色付きのコントラストが明瞭である。
3点:表面側のクラックがやや小さい。
2点:表面側のクラックが小さく、表面側の一部にクラックが非形成の部分が存在する。あるいは表面側のクラックが大きく、ドーナツの形状が安定しない。
1点:表面側にクラックがない。あるいはクラックが表面側及び裏面側の双方に形成され、ドーナツの形状が崩壊しやすい。
【0046】
<ボリュームの評価基準>
5点:非常に大きい。
4点:やや大きい。
3点:普通。
2点:やや小さい。
1点:非常に小さい。
【0047】
【0048】
【0049】
表1及び表2の通り、米粉に対し、小麦グルテンに加えて所定のタンパク素材を添加する各実施例では、サクサクした食感(サクミ)及びボリュームの評価結果が良好で、表面のクラック形状に係る良好な外観が得られている。これに対し、所定のタンパク素材を有しない比較例1はボリュームに劣る。また、小麦グルテンを含有しない比較例2はサクサクした食感、ボリューム及び外観のいずれにおいても劣る。またグルテン量が多い比較例3も外観や食感に劣る結果となった。