(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087621
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】内面螺旋溝付伝熱管とその設計方法および熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/40 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
F28F1/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202548
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】522160125
【氏名又は名称】MAアルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】福増 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】中本 将之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智典
(57)【要約】
【課題】本発明は内面螺旋溝付伝熱管を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の内面螺旋溝付伝熱管は、管本体の内面に長さ方向に沿う螺旋フィンが周方向に間隔をあけて複数形成されたアルミニウム製の内面螺旋溝付伝熱管であって、前記複数の螺旋フィンが個々に前記管本体の長さ方向に所定のねじり角θを有して前記管本体の内面に延在され、前記螺旋フィンが前記管本体の内面に接続する2つの側壁と前記2つの側壁の先端側を接続する先端壁を有する横断面視凸型に形成されるとともに、前記管本体の横断面に描かれる前記各螺旋フィンの凸型の横断面において、前記2つの側壁が前記管本体の内面に接する位置の中央を通過して前記管本体の半径を描く線分に対し、前記管本体の横断面に描かれる前記凸型の全ての螺旋フィンの中心軸が、前記管本体の周方向一側あるいは周方向他側に向いて全て揃って傾斜されたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管本体の内面に長さ方向に沿う螺旋フィンが周方向に間隔をあけて複数形成されたアルミニウム製の内面螺旋溝付伝熱管であって、
前記複数の螺旋フィンが個々に前記管本体の長さ方向に所定のねじり角θを有して前記管本体の内面に延在され、
前記螺旋フィンが前記管本体の内面に接続する2つの側壁と前記2つの側壁の先端側を接続する先端壁を有する横断面視凸型に形成されるとともに、
前記管本体の横断面に描かれる前記各螺旋フィンの凸型の横断面において、前記2つの側壁が前記管本体の内面に接する位置の中央を通過して前記管本体の半径を描く線分に対し、
前記管本体の横断面に描かれる前記凸型の全ての螺旋フィンの中心軸が、前記管本体の周方向一側あるいは周方向他側に向いて揃って傾斜された内面螺旋溝付伝熱管。
【請求項2】
前記2つの側壁が前記管本体の内面に接する位置の中央を通過して前記管本体の半径を描く線分に対し、前記管本体の横断面に描かれる前記凸型の全ての螺旋フィンの中心軸が傾斜されている角度をψ1と定義し、前記螺旋フィンのねじり角をθと定義すると、以下の(1)式を満足することを特徴とする請求項1に記載の内面螺旋溝付伝熱管。
0.35×θ-2.1≦ψ1≦0.45×θ …(1)式
【請求項3】
拡管後において前記螺旋フィンの傾斜された角度である傾斜角度ψ2の値が、-5゜以上、+5゜以下であることを特徴とする請求項1に記載の内面螺旋溝付伝熱管。
【請求項4】
管本体の内面に長さ方向に沿う螺旋フィンが周方向に間隔をあけて複数形成されたアルミニウム製の内面螺旋溝付伝熱管の設計方法であり、
前記複数の螺旋フィンが個々に前記管本体の長さ方向に所定のねじり角θを有して前記管本体の内面に延在され、前記螺旋フィンが前記管本体の内面に接続する2つの側壁と前記2つの側壁の先端側を接続する先端壁を有する横断面視凸型に形成されるとともに、
前記管本体の横断面に描かれる前記各螺旋フィンの凸型の横断面において、前記2つの側壁が前記管本体の内面に接する位置の中央を通過して前記管本体の半径を描く線分に対し、前記管本体の横断面に描かれる前記凸型の全ての螺旋フィンの中心軸が、前記管本体の周方向一側あるいは周方向他側に向いて全て揃って所定の傾斜角度だけ傾斜され、拡管工程により拡管される内面螺旋溝付伝熱管の設計方法であって、
前記拡管工程前の前記螺旋フィンの傾斜角度と、前記拡管工程後の前記螺旋フィンの傾斜角度の関係を予め予測し、前記拡管後の傾斜角度が小さくなるように前記拡管前の傾斜角度を設定することを特徴とする内面螺旋溝付伝熱管の設計方法。
【請求項5】
前記2つの側壁が前記管本体の内面に接する位置の中央を通過して前記管本体の半径を描く線分に対し、前記管本体の横断面に描かれる前記凸型の全ての螺旋フィンの中心軸が傾斜されている角度をψ1と定義し、前記螺旋フィンのねじり角をθと定義すると、以下の(1)式を満足させることを特徴とする請求項4に記載の内面螺旋溝付伝熱管の設計方法。
0.35×θ-2.1≦ψ1≦0.45×θ …(1)式
【請求項6】
請求項4に記載の内面螺旋溝付伝熱管の設計方法において、拡管後の傾斜角度ψ2が-5゜以上+5゜以下となるように前記拡管前の傾斜角度ψ1を設定することを特徴とする請求項4に記載の内面螺旋溝付伝熱管の設計方法。
【請求項7】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付伝熱管を備えた熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内面螺旋溝付伝熱管とその設計方法および熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
内面螺旋溝付伝熱管の製造方法として、以下の特許文献1、2に記載の製造方法が知られている。
これらの製造方法は、アルミニウム製内面螺旋溝付管の製造方法として好適であり、押出加工により製造されたアルミニウム製直線溝付管を素管として用い、この素管を引抜きダイスにて縮径すると同時に捻りを付与することにより、内面螺旋溝付伝熱管を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6169538号公報
【特許文献2】特許第6439222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内面螺旋溝付管からなる伝熱管の伝熱性能を向上させるためには、内面フィンを細く高くすること、および螺旋状に形成した内面フィンのねじり角を大きくすることが有効である。また、伝熱管を用いて熱交換器を構成する場合、整列配置した複数の板状の放熱フィンを貫通するように伝熱管を設け、それら伝熱管の内部に拡管プラグを押し込んで伝熱管を拡径することにより、伝熱管と放熱フィンを機械的に接合する拡管工程が行われている。
しかしながら、内面フィンを細く高く形成する、あるいは、内面フィンのねじり角を大きくすると、拡管工程において管内面に拡管プラグを挿通する際、拡管プラグの摩擦力によって内面フィンが倒れてしまう、いわゆる「フィン倒れ」が顕著となる問題がある。
【0005】
拡管工程においてフィン倒れが顕著になると、伝熱管内面において複数のフィン間に形成されている溝の面積が小さくなるとともに、フィン高さが低くなることにより、伝熱性能が大きく低下する問題がある。また、伝熱管の外径の拡大が不十分となり、放熱フィンと伝熱管の一体化における両者の接合が不十分となり、放熱フィンのずれが生じ易くなり、また伝熱管から放熱フィンへの伝熱性能が低下し、熱交換器の性能低下を生じるという課題があった。
【0006】
本発明は、内部に拡管プラグを押し込んで拡管したとして、内面の螺旋フィンが倒れるおそれが少なく、内面の螺旋溝の面積が小さくなることの少ない内面螺旋溝付伝熱管およびそれを備えた熱交換器を提供することを目的とする。
また、本発明は、拡管しても内面の螺旋フィンが倒れることなく、内面の螺旋溝の面積が小さくなることのない内面螺旋溝付伝熱管の設計方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本形態の内面螺旋溝付伝熱管は、管本体の内面に長さ方向に沿う螺旋フィンが周方向に間隔をあけて複数形成されたアルミニウム製の内面螺旋溝付伝熱管であって、前記複数の螺旋フィンが個々に前記管本体の長さ方向に所定のねじり角θを有して前記管本体の内面に延在され、前記螺旋フィンが前記管本体の内面に接続する2つの側壁と前記2つの側壁の先端側を接続する先端壁を有する横断面視凸型に形成されるとともに、前記管本体の横断面に描かれる前記各螺旋フィンの凸型の横断面において、前記2つの側壁が前記管本体の内面に接する位置の中央を通過して前記管本体の半径を描く線分に対し、前記管本体の横断面に描かれる前記凸型の全ての螺旋フィンの中心軸が、前記管本体の周方向一側あるいは周方向他側に向いて揃って傾斜されたことを特徴とする。
【0008】
(2)本形態の内面螺旋溝付伝熱管において、前記2つの側壁が前記管本体の内面に接する位置の中央を通過して前記管本体の半径を描く線分に対し、前記管本体の横断面に描かれる前記凸型の全ての螺旋フィンの中心軸が傾斜されている角度をψ1と定義し、前記螺旋フィンのねじり角をθと定義すると、以下の(1)式を満足することが好ましい。
0.35×θ-2.1≦ψ1≦0.45×θ …(1)式
(3)本形態の内面螺旋溝付伝熱管は、拡管後において前記螺旋フィンの傾斜された角度である傾斜角度ψ2の値が、-5゜以上、+5゜以下であることが好ましい。
【0009】
(4)本形態の内面螺旋溝付伝熱管の設計方法は、管本体の内面に長さ方向に沿う螺旋フィンが周方向に間隔をあけて複数形成されたアルミニウム製の内面螺旋溝付伝熱管の設計方法であり、前記複数の螺旋フィンが個々に前記管本体の長さ方向に所定のねじり角θを有して前記管本体の内面に延在され、前記螺旋フィンが前記管本体の内面に接続する2つの側壁と前記2つの側壁の先端側を接続する先端壁を有する横断面視凸型に形成されるとともに、前記管本体の横断面に描かれる前記各螺旋フィンの凸型の横断面において、前記2つの側壁が前記管本体の内面に接する位置の中央を通過して前記管本体の半径を描く線分に対し、前記管本体の横断面に描かれる前記凸型の全ての螺旋フィンの中心軸が、前記管本体の周方向一側あるいは周方向他側に向いて全て揃って所定の傾斜角度だけ傾斜され、拡管工程により拡管される内面螺旋溝付伝熱管の設計方法であって、前記拡管工程前の前記螺旋フィンの傾斜角度と、前記拡管工程後の前記螺旋フィンの傾斜角度の関係を予め予測し、前記拡管後の傾斜角度が小さくなるように前記拡管前の傾斜角度を設定することを特徴とする。
【0010】
(5)本形態の(4)に記載の内面螺旋溝付伝熱管の設計方法において、前記2つの側壁が前記管本体の内面に接する位置の中央を通過して前記管本体の半径を描く線分に対し、前記管本体の横断面に描かれる前記凸型の全ての螺旋フィンの中心軸が傾斜されている角度をψ1と定義し、前記螺旋フィンのねじり角をθと定義すると、以下の(1)式を満足させることが好ましい。
0.35×θ-2.1≦ψ1≦0.45×θ …(1)式
(6)本形態の(4)に記載の内面螺旋溝付伝熱管の設計方法において、拡管後の傾斜角度ψ2が-5゜以上+5゜以下となるように前記拡管前の傾斜角度ψ1を設定することが好ましい。
(7)本形態の熱交換器は、(1)~(3)の何れかに記載の内面螺旋溝付伝熱管を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本形態によれば、拡径工程において内部に拡管プラグを押し込んで拡管したとして、内面の螺旋フィンが倒れることなく、内面螺旋溝の面積が小さくなることのない内面螺旋溝付伝熱管を提供することができる。また、拡管工程を経ても熱交換特性に優れた内面螺旋溝付伝熱管を備えた熱交換器を提供できる。
また、本形態によれば、拡管しても内面の螺旋フィンが倒れることなく、内面螺旋溝の面積が小さくなることのない内面螺旋溝付伝熱管を設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の内面螺旋溝付伝熱管を示す横断面図。
【
図2】同第1実施形態に係る内面螺旋溝付伝熱管を示す縦断面図。
【
図3】同第1実施形態に係る内面螺旋溝付伝熱管の螺旋フィンを示す部分拡大図。
【
図4】(a)は同内面螺旋溝付伝熱管に設けられる左回り旋回の螺旋フィンの一部を示す略図、(b)は同内面螺旋溝付伝熱管に設けられる右周り旋回の螺旋フィンの一部を示す略図。
【
図5】本発明に係る第1実施形態の内面螺旋溝付伝熱管を製造するために用いる直線溝付管を示す斜視図。
【
図7】従来構造の螺旋フィンの一例を示す部分拡大図。
【
図8】第1実施形態の螺旋フィンにおいて拡管後の形状を示す部分拡大断面図。
【
図9】内面螺旋溝付伝熱管を拡管している状態を示す部分断面図。
【
図10】(a)は内面螺旋溝付伝熱管を用いて構成された熱交換器の一例を示す図、(b)は同熱交換器の一例を示す斜視図。
【
図11】内面螺旋溝付伝熱管の拡管シミュレーションに適用した螺旋溝付伝熱管の形状を示す説明図。
【
図12】実施例と比較例に関し、ねじり角θと傾斜角度ψ1の関係を求めた結果を示すグラフ。
【
図13】実施例と比較例に関し、ねじり角θと傾斜角度ψ2の関係を求めた結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、便宜上特徴となる部分を拡大して強調表示している場合がある。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
【0014】
図1は第1実施形態の内面螺旋溝付伝熱管1を示す横断面図であり、
図2は内面螺旋溝付伝熱管1の縦断面図、
図3は螺旋フィンの部分拡大図である。
内面螺旋溝付伝熱管1は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成することができる。内面螺旋溝付伝熱管1にアルミニウム合金を用いる場合は、そのアルミニウム合金に特に制限はなく、JISで規定される1050、1100、1200等の純アルミニウム系、あるいは、これらにMnを添加した3003に代表される3000系のアルミニウム合金等を適用できる。また、これら以外にJISに規定されている5000系~7000系のアルミニウム合金のいずれかを用いて内面螺旋溝付伝熱管1を構成しても良く、JISに規定されていないアルミニウム合金を用いても良いのは勿論である。なお、本明細書において「アルミニウム製」とは、アルミニウム合金および純アルミニウムからなるものを包含する概念とする。
【0015】
内面螺旋溝付伝熱管1は、横断面の外形状が円形の管本体1Aからなる。管本体1Aの外周面1aの直径は、例えば小型の熱交換器対応の場合、4mm以上15mm以下程度である。管本体1Aの内周面1bには、長さ方向に沿って形成された複数の螺旋フィン3が形成されている。管本体1Aの内面において、隣接する螺旋フィン3、3の間には、螺旋フィン3の先端と比較して内径が大きく形成された螺旋溝4が形成されている。
本実施形態において、螺旋フィン3は、例えば管本体1Aの内周方向に30個~60個程度間欠的に延在されている。螺旋フィン3の高さ(すなわち半径方向の寸法)は、例えば0.1mm以上0.4mm以下である。また、管本体1Aの底肉厚c(すなわち、螺旋溝4の底部に対応する管本体1Aの厚さ)は、例えば0.2mm以上0.8mm以下である。螺旋フィン3の頂角(フィン3の側面同士のなす角)は、例えば10°~30°である。螺旋フィン3の捻り角θ1(捻り角)は、例えば5°以上45°以下である。なお、捻り角θ1は一定である必然性はなく、内面螺旋溝付伝熱管10の長さ方向に周期的に異なる捻り角を有する構成でも良い。
【0016】
本実施形態において、内周面1bに螺旋フィン3を形成することにより、内面螺旋溝付伝熱管1とその内部を流れる冷媒液との熱交換効率を高めることができる。螺旋フィン3を備えた内面螺旋溝付伝熱管1は、押出加工により長さ方向に直線状に延びる内面フィンを形成した素管に捻りを付与することにより製造できる。
【0017】
図3は、内面螺旋溝付伝熱管1の内面に形成されている1つの螺旋フィン3の拡大図である。
図3は管本体1Aの横断面を見た場合の1つの螺旋フィン3を示している。
図3に示す螺旋フィン3の先端側は基端側よりも若干先細り形状に形成されている。
図3に示す螺旋フィン3は、
図1に示す内面螺旋溝付伝熱管1の横断面視凸型のフィンであり、左右の螺旋溝4から立ち上がる側壁3A、3Bと、2つの側壁3A、3Bの先端側に形成されて、これらに連続する先端壁3Cを有している。螺旋フィン3は先細り形状であるため、側壁3A、3Bは傾斜されている。
【0018】
図1、
図2では詳細に表示できていないが、
図3に詳細に示すように螺旋フィン3は若干一側(
図3では左側)に傾くように傾斜されている。螺旋フィン3の底壁は管本体1Aと一体化されている。
図3における螺旋フィン3の底壁の幅方向(左右方向)中央位置であって、螺旋フィン3の左右の側壁3A、3Bが螺旋溝4に接続する位置の中央位置でもある中点Aから、螺旋フィン3の先端壁3Cの幅方向中央位置を通過する線分を螺旋フィン3の中心軸aと定義する。これに対し、管本体1Aの横断面が描く円の中心を通る半径を示す線分bであって、前述の中点Aを通過する線分bを
図3に示すように描くことができる。
【0019】
図3に示すように螺旋フィン3の中心軸aは、線分bに対しψ1の傾斜角度を有して若干左向きに傾斜されている。換言すると、
図3に示すように螺旋フィン3の中心軸aは、線分bに対しψ1の傾斜角度を有し管本体1Aの周方向一側向きに(
図3では左側向きに)傾斜されている。さらに換言すると、
図3に示すように螺旋フィン3は線分bに対し管本体1Aの周方向一側向き(
図3では左側向き)に傾斜されている。従って、
図3に示すように螺旋フィン3の横断面において左側の側壁3Aが描く輪郭より、右側の側壁3Bが描く輪郭の方が長く形成されている。
【0020】
図3は管本体1Aの内面に形成されている複数の螺旋フィン3のうち、1つの螺旋フィン3のみを示した図であるので、以下に管本体1Aに形成されている複数の螺旋フィン3のぞれぞれの傾斜方向について説明する。
螺旋フィン3は管本体1Aの長さ方向に螺旋状に形成されているが、管本体1Aの長さ方向に沿って右回り旋回型に螺旋を描く螺旋フィン3が形成されている場合と、左回り旋回型に螺旋を描く螺旋フィン3が形成されている場合に、それぞれ螺旋フィン3に設ける傾斜角度ψ1の方向が異なる。
後述する拡管プラグを管本体1Aの一端側から奥側向きに押し込み、管本体1Aの他端部側に向けて順次拡管する場合を想定する。
この場合、側壁3Bを管本体1Aの奥側寄りに向けるように、側壁3Aを管本体1Aの手前側よりに向けるように配置する。より具体的には
図4に示す以下の例のように配置する。
【0021】
図4(a)は内面螺旋溝付伝熱管1の横断面の概形と左回り旋回(反時計方向旋回)型に設けた螺旋フィン3の位置関係を示し、
図4(b)は内面螺旋溝付伝熱管1の横断面の概形と右周り旋回(時計方向旋回)型に設けた螺旋フィン3の位置関係を示す。
図面の簡略化のために、
図4では内面螺旋溝付伝熱管1(管本体1A)の横断面の概形を1つの円で示し、内面螺旋溝付伝熱管1の一端を紙面表側(手前側)に、内面螺旋溝付伝熱管1の奥側を紙面裏側に配置したと見立てて、その場合の内面螺旋溝付伝熱管1の開口部において、上側と下側にのみ存在する螺旋フィン3の旋回状態の概要を示す。なお、
図4(a)、(b)に示す各内面螺旋溝付伝熱管1において、上側の螺旋フィン3と下側の螺旋フィン3に隣接するように内面螺旋溝付伝熱管1の内周回りに複数の螺旋フィン3が存在するが、
図4では記載を略している。
【0022】
図4(a)に示すように左回り旋回型、かつ上側の螺旋フィン3においては、左側面側に側壁3Aが配置され、右側面側に側壁3Bが配置される。
図4(a)に示すように左回り旋回型、かつ下側の螺旋フィン3においては、右側面側に側壁3Aが配置され、左側面側に側壁3Bが配置される。
図4(a)の上側の螺旋フィン3の配置例は、
図3に示す構成と同じである。
図4(b)に示すように右回り旋回型、かつ上側の螺旋フィン3においては、右側面側に側壁3Aが配置され、左側面側に側壁3Bが配置される。
図4(b)に示すように右回り旋回型、かつ下側の螺旋フィン3においては、左側面側に側壁3Aが配置され、右側面側に側壁3Bが配置される。
【0023】
図4(a)、(b)において、それぞれの図の上側に配置した螺旋フィン3であっても、それぞれの図の下側に配置した螺旋フィン3であっても、側壁3Bを管本体1Aの奥側寄りに向くように、側壁3Aを管本体1Aの表側より(手前側より)に向くように配置している点は共通である。
換言すると、管本体1Aの横断面に描かれる凸型の全ての螺旋フィン3の中心軸aが、管本体1Aの周方向一側あるいは周方向他側に向いて揃って傾斜されている。
図4(a)に示す左回り旋回型の螺旋フィン3の場合、管本体1Aの横断面に示す各螺旋フィン3において、管本体1Aの周方向に沿って反時計方向に傾斜されている。
図4(b)に示す右回り旋回型の螺旋フィン3の場合、管本体1Aの横断面に示す各螺旋フィン3において、管本体1Aの周方向に沿って時計方向に傾斜されている。
【0024】
図4(a)、(b)に示すように、左回り旋回型の螺旋フィン3と右周り旋回型の螺旋フィン3において、各螺旋フィン3の傾斜方向が異なるのは以下に説明する理由からである。
図4(a)、(b)に示す紙面表側から紙面裏側に向けて拡管プラグを押し込んで内面螺旋溝付伝熱管1を拡管する場合、拡管プラグは各螺旋フィン3を内面螺旋溝付伝熱管1の奥側に向けて押し倒すように力を付加しながら拡管する。
従って、
図4(a)と
図4(b)に示す何れの構成であっても、内面螺旋溝付伝熱管1の奥側に向いて側壁3Bが配置されるように、内面螺旋溝付伝熱管1の手前側に向いて側壁3Aが配置されるように螺旋フィン3を配置する。
換言すると、
図4(a)と
図4(b)に示す何れの構成であっても、内面螺旋溝付伝熱管1の奥側から手前側に向けて螺旋フィン3を傾斜させるように、各螺旋フィン3が傾斜されている。
【0025】
内面螺旋溝付伝熱管1の奥側に向いて側壁3Bが配置されていることは、
図3に示すように螺旋フィン3に傾斜角度ψ1が付与されているとすると、
図4(a)、(b)に示す各螺旋フィン3はいずれも内面螺旋溝付伝熱管1の手前側に向いて若干傾斜されていることとなる。これにより、各螺旋フィン3はいずれも、拡管プラグの進行方向に対し反対方向に傾斜されていることとなる。
従って、内面螺旋溝付伝熱管1を拡管プラグにより拡管した場合、各螺旋フィン3はいずれもフィン倒れを生じ難いように、拡管プラグの進行方向の反対側に向くように予め傾斜されていることとなる。このため、
図4(a)、(b)に示すように全ての螺旋フィン3の方向を揃えることで拡管時にフィン倒れを生じ難くすることができる。
【0026】
なお、
図4(a)、(b)においては、上側と下側の螺旋フィン3のみ示し、管本体1Aの内周方向に存在する他の螺旋フィン3は記載を略している。しかし、螺旋フィン3は
図1、
図2に示すように管本体1Aの内周に間欠的に複数形成されているので、記載を略した他の螺旋フィン3についても
図4(a)、(b)に示した螺旋フィン3と同じ向きに配置されている。
例えば、
図4(a)に示す左回り旋回型の他の螺旋フィン3については、
図4(a)に示すように横断面視した場合、各螺旋フィン3の右回り側に位置する側面に側壁3Bが位置し、各螺旋フィン3の左回り側に位置する側面に側壁3Aが位置するように各螺旋フィン3が配置される。
例えば、
図4(b)に示す右回り旋回型の他の螺旋フィン3については、
図4(b)に示すように横断面視した場合、各螺旋フィン3の左回り側に位置する側面に側壁3Bが位置し、各螺旋フィン3の右回り側に位置する側面に側壁3Aが位置するように各螺旋フィン3が配置される。
【0027】
図5および
図6は、内面螺旋溝付伝熱管1の製造に用いる内面直線溝付押出素管14を示すもので、この内面直線溝付押出素管14の内面には、管の長さ方向に沿う直線溝12が内周方向に所定の間隔をおいて複数形成され、管の内周方向に隣接する直線溝12、12間に内部フィン13が形成されている。
【0028】
図5、
図6に示す内面直線溝付押出素管14は、横断面の外形状が円形の管本体14Aからなる。
管本体14Aの外径(管本体14Aの外周面14aが描く円の直径)は、例えば、3mm以上15mm以下である。管本体14Aの内周面14bには、管本体14Aの長さ方向に沿って直線状に形成された内部フィン13が管本体14Aの内周方向に所定の間隔をあけて30~60個(30~60条)程度形成されている。また、管本体14Aの内周方向に隣接する直線状の内部フィン13、13の間には、所定幅、例えば一定幅の直線溝12が形成されている。
内部フィン13の横断面形状は
図3に示す形状の螺旋フィン3の横断面形状と同等であるが、管本体14Aの長さ方向に螺旋状ではなく直線状に形成されている。
直線状の内部フィン13を有する内面直線溝付押出素管14を捻り引抜加工することにより、
図1~
図4に示す螺旋フィン3と螺旋溝4を備えた内面螺旋溝付伝熱管1を得ることができる。
【0029】
内面螺旋溝付伝熱管10は、先に説明した特許文献1(特許第6169538号公報)あるいは特許文献2(特許第6439222号公報)に記載されている如く、内面直線溝付押出素管14に対し引抜加工と捻り加工を同時に施す捻り引抜加工を施すことで製造される。
従って、内面螺旋溝付伝熱管1に形成されている螺旋フィン3と螺旋溝4の横断面形状は、内面直線溝付押出素管14に形成されている内部フィン13と直線溝12の横断面形状と同等の形状である。ただし、螺旋フィン3と螺旋溝4が管の長手方向に螺旋状に形成されているのに対し、内部フィン13と直線溝12は管の長手方向に直線状に形成されている点が異なる。
【0030】
特許文献1(特許第6169538号公報)の
図1に記載されている内面螺旋溝付管の製造装置あるいは特許文献2(特許第6439222号公報)の
図1に記載されている内面螺旋溝付管の製造装置を用い、本願明細書に添付の
図5、
図6に示す内面直線溝付押出素管14に捻り引抜加工を施すことで、
図1~
図4に示す内面螺旋溝付伝熱管1を得ることができる。
図4(a)に示す左回り旋回型の螺旋フィン3を製造する方法と、
図4(b)に示す右回り旋回型の螺旋フィン3を製造する方法は、特許文献1、2に記載されている製造装置を用いて捻り引抜加工を施す場合、捻る方向を左回りとするか右回りとするかの使い分けにより何れも製造可能となる。
【0031】
図7は、
図3に示す傾斜角度ψ1を有する螺旋フィン3に対し、傾斜角度を0゜とした場合の螺旋フィン3’の一例を示す。
図7は管本体の横断面における螺旋フィン3’の形状を示す。
図7に示す螺旋フィン3’において、底壁の幅方向(左右方向)中央位置であって、螺旋フィン3’の左右の側壁3A、3Aが螺旋溝4に接続する位置の中央位置でもある中点Aから、螺旋フィン3’の先端壁3Cの幅方向中央位置を通過する線分を螺旋フィン3’の中心軸aと定義できる。これに対し、管本体1Aの横断面が描く円の中心を通る半径を示す線分bであって前述の中点Aを通過する線分bを
図7に描くと、中心軸aと一致する線分となる。螺旋フィン3’においては、傾斜角度ψ1が0であるため、左右の側壁3Aは対称形状を有する。
図7に示す螺旋フィン3’の場合、拡管プラグによる拡管工程を経ると螺旋フィン3’にフィン倒れを起こし易い課題がある。
【0032】
これに対し、
図8は、
図1~
図4に示す傾斜角度ψ1を有する螺旋フィン3を拡管プラグにより拡管した後の螺旋フィン30の一例を示す。
図8は、管本体1Aの横断面における螺旋フィン30の形状を示している。
拡管プラグにより押圧されることで
図3に示す螺旋フィン30はその高さを減少するように変形されるとともに、
図3の左側に位置する側壁30Aが若干膨らんで押し潰されるように変形して
図8に示す左側の側壁30Aを形成する。拡管により、
図3の右側に位置する側壁30Bが側壁30A側より多めに押し潰されるように変形し、さらに螺旋フィン30の押し潰された側の肉が側壁30B側の領域に移動する結果、螺旋フィン30においては、側壁30B側の部分の肉厚が増加する。
【0033】
図8に示す拡管後の螺旋フィン30において、螺旋フィン30の左右の側壁30A、30Bが螺旋溝4に接続する位置の中央である中点Aから、螺旋フィン30の先端壁30Cの幅方向中央位置を通過する線分を螺旋フィン30の中心軸a’と定義することができる。これに対し、管本体1Aの横断面が描く円の中心を通る半径を示す線分bであって前述の中点Aを通過する線分bを
図8に示すように描くことができる。
【0034】
図8に示すように拡管後の螺旋フィン30において、中心軸a’と線分bがなす角度を螺旋フィン30の傾斜角度ψ2と定義することができる。
図3に示す螺旋フィン3の中心軸aおよび線分bと、
図8に示す螺旋フィン30の中心軸a’および線分bを対比すると以下のように説明できる。
図3に示す螺旋フィン3の線分bよりも左側に位置していた螺旋フィン3の中心軸aは、拡管後、
図8に示す螺旋フィン30のように線分bよりも右側に位置する中心軸a’となる。即ち、
図3の左向きに傾斜していた螺旋フィン3が、拡管により変形して
図8に示す螺旋フィン30となった場合、
図3に示す傾斜角度ψ1が、
図8に示す傾斜角度ψ2となるように螺旋フィン3が変形したこととなる。
図8に示すように変形した場合、螺旋フィン30にフィン倒れを生じることなく、螺旋フィン3が倒れないように拡管できたこととなる。
拡管後の傾斜角度ψ2については、-5゜以上、+5°以下の範囲が好ましく、-2゜以上、+2°以下の範囲がより好ましい。
【0035】
図9は、内面螺旋溝付伝熱管1を拡管プラグ5により拡管している状態の一例を示す。
図9に示す拡管プラグ5は軸部5Aの先端に膨出型のヘッド部5Bを備えている。
内面螺旋溝付伝熱管1の内径がβである場合、ヘッド部5Bの最大外径を内径βより若干大きく設計しておくと、内面螺旋溝付伝熱管1を拡管することができる。
拡管プラグ5の先端5aを内面螺旋溝付伝熱管1の一端から挿入すると、ヘッド部5Bにより内面螺旋溝付伝熱管1を拡管することができ、内面螺旋溝付伝熱管1の外径α
1を外径α
2に拡げることができる。
拡管前に板状の放熱フィンを複数整列配置し、これら放熱フィンに形成した透孔を貫通するように内面螺旋溝付伝熱管1を配置した後、
図9に示すように拡管すると、外径α
1を外径α
2に拡げることができるので、放熱フィンと内面螺旋溝付伝熱管1を機械的に接合することができる。
【0036】
拡管の場合、
図7に示す構成の螺旋フィン3’であると螺旋フィン3’が倒れるおそれが高い。しかし、
図3に示す傾斜角度ψ1を有する螺旋フィン3であれば、拡管後、
図8に示す螺旋フィン30の形状に変形できるので、螺旋フィン30においてフィン倒れ発生のおそれをなくすることができる。また、螺旋溝4について拡管後も溝幅を十分に確保できるので、熱交換性能が低下しない内面螺旋溝付伝熱管1を提供できる。
傾斜角度ψ1、ψ2の具体的な設定例については、後に記載の実施例において詳細に説明する。
【0037】
図10は、内面螺旋溝付伝熱管1を備えた熱交換器15の一例を示す概略図であり、冷媒を通過させるチューブとして内面螺旋溝付伝熱管1を蛇行させて設け、この内面螺旋溝付伝熱管1の周囲に複数のアルミニウム合金製の板状の放熱フィン(外部フィン)16を平行に配設した構造である。内面螺旋溝付伝熱管1は、
図10(a)に示すように平行に配設した放熱フィン16に設けた複数の透孔を貫通するように設けられている。
図10(a)に示す熱交換器15において内面螺旋溝付伝熱管1は、放熱フィン16を直線状に貫通する複数のU字状の主管10Aと、隣接する主管10Aの隣り合う端部開口どうしをU字形のエルボ管10Bを
図10(a)、(b)に示すように接続して構成される。また、放熱フィン16を貫通している内面螺旋溝付伝熱管1の一方の端部側に冷媒の入口部17を形成し、内面螺旋溝付伝熱管1の他方の端部側に冷媒の出口部18を形成することで
図10(a)に示す熱交換器15が構成されている。
【0038】
熱交換器15を製造するには、まず、内面螺旋溝付伝熱管1をヘアピン加工して主管10Aとエルボ管10Bを形成する。次に、並列させた複数の放熱フィン16に形成した透孔を貫通するように主管10Aを設け、主管10Aの内部に拡管プラグを挿入して主管10Aを拡管し、放熱フィン16と主管10Aとの機械的接合力を確保し、この後に主管10Aの端部同士をエルボ管10Bで接合することにより熱交換器15を製造できる。
【0039】
熱交換器15を構成する内面螺旋溝付伝熱管1では、螺旋フィン3に傾斜角度ψ1を設定しているので、拡管後においてフィン倒れを起こしていない伝熱管となる。
よって熱交換効率の良好な内面螺旋溝付伝熱管1からなる主管10Aとエルボ管10Bを備えた熱交換効率の良好な熱交換器15を提供できる。
拡管後の熱交換器15において、主管10Aの螺旋フィンに付与される傾斜角度ψ2については、-5゜以上、+5°以下の範囲が好ましい。拡管後の螺旋フィンに付与される傾斜角度ψ2が-2゜以上、+2°以下の範囲がより好ましい。
【実施例0040】
有限要素法に基づき、螺旋フィンの変形解析モデルを策定するため、
図11に示す断面モデルを構築し、解析を実施した。
図11において、符号20で示す部分は、内面螺旋溝付伝熱管の管本体を周方向に部分的にカットした横断面解析モデルを示し、この管本体の内周側に傾斜角度ψ1を0゜とした螺旋フィンが1個形成されている解析モデルを用いた。
【0041】
図11に示す解析モデルにおいて、管本体の外径:5mm、内径:3.2mm、螺旋フィン高さ:0.25mm、底肉厚:0.65mm、フィン先端壁の幅:0.1mm、フィン根元R:0.05mm、頂角:30゜、ねじり角:15゜、条数:40に設定した。
図11に示す解析モデルを用いてねじり角を12゜、15゜、20゜、30゜、40゜に設定し、螺旋フィンを幅方向一側に向けて倒すように外径4.08mmの拡管プラグを挿通し、管本体を拡管した場合のシミュレーション解析を実施した。
前述のように拡管し、螺旋フィンの傾斜角度ψ1を種々の値に設定した場合、加圧後の傾斜角度ψ2の関係を求めるシミュレーション解析としている。この解析において、管本体の変形抵抗はA3003-O材相当の値を用い、拡管プラグは解析的剛体とした。管本体と拡管プラグの間の摩擦係数は、管本体と拡管プラグの間の摩擦はクーロン摩擦とし、摩擦係数は0.25とした。
解析結果を以下の表1に示す。
【0042】
【0043】
表1に示す解析結果について、ねじり角θ(゜)と傾斜角度ψ1(゜)の関係を
図12に示し、ねじり角(゜)と傾斜角度ψ2(゜)の関係を
図13に示す。
傾斜角度ψ1を一定値に設定しても、螺旋フィンのねじり角に応じて螺旋フィンが受ける圧力の向きが異なるため、ψ2の値は変化することとなる。
図12に示す結果から、ねじり角θと傾斜角度ψ1の関係に関し、ψ1=0.45θの式で示す線分の上方に比較例2、4、10が分布し、前記線分の下方に実施例1~6が分布した。よって、ψ1≦0.45θの式で示す関係であることが望ましいことが判る。
また、ψ1=0.35θ-2.1の式で示す線分の上方に実施例1~6が分布し、前記線分の下方に比較例1、3、5、7、8が分布した。よって、ψ1≧0.35θ-2.1の式で示す関係であることが望ましいことが判る。
以上の関係から、傾斜角度ψ1(゜)とねじり角θ(゜)の関係は、以下の(1)式を満足する用に設計し、内面螺旋溝付伝熱管を製造することが望ましいと判明した。
0.35×θ-2.1≦ψ1≦0.45×θ …(1)式
【0044】
図13に示すように、ねじり角(゜)と傾斜角度ψ2(゜)の関係に関し、実施例1~6と比較例1~10が分布した。
図13に示す結果から、螺旋フィンのねじり角が10゜~40゜の範囲において、ψ2=-5゜~+5゜の範囲に実施例1~6が分布した。このことから、実施例1~6であれば、拡管後の傾斜角度ψ2を-5゜~+5゜の範囲に制御できることが判った。
よって、拡管工程を実施して熱交換器を製造する場合、螺旋フィンのねじり角に合わせて(1)式を満足するように傾斜角度ψ1を設計することにより、フィン倒れを起こさない熱交換器を製造できる。以上の説明のように、有限要素法を用いた予測結果に基づき、螺旋フィンの傾斜角度ψ1を決定する設計方法により、フィン倒れを生じない内面螺旋溝付伝熱管を設計し、製造し、提供できる。
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