IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人千葉工業大学の特許一覧

<>
  • 特開-交番磁気力顕微鏡用試料台 図1
  • 特開-交番磁気力顕微鏡用試料台 図2
  • 特開-交番磁気力顕微鏡用試料台 図3
  • 特開-交番磁気力顕微鏡用試料台 図4
  • 特開-交番磁気力顕微鏡用試料台 図5
  • 特開-交番磁気力顕微鏡用試料台 図6
  • 特開-交番磁気力顕微鏡用試料台 図7
  • 特開-交番磁気力顕微鏡用試料台 図8
  • 特開-交番磁気力顕微鏡用試料台 図9
  • 特開-交番磁気力顕微鏡用試料台 図10
  • 特開-交番磁気力顕微鏡用試料台 図11
  • 特開-交番磁気力顕微鏡用試料台 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087627
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】交番磁気力顕微鏡用試料台
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/72 20060101AFI20240624BHJP
   G01Q 60/08 20100101ALI20240624BHJP
   G01Q 60/50 20100101ALI20240624BHJP
【FI】
G01N27/72
G01Q60/08
G01Q60/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202557
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】598163064
【氏名又は名称】学校法人千葉工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】角 真輝
(72)【発明者】
【氏名】大山 祐生
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA30
2G053AB15
2G053BA02
2G053BC02
2G053DA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、交番磁気力顕微鏡に用いた場合に、その探針近傍に、高い磁場強度であり、かつ、垂直性に優れた磁場を発生することができる交番磁気力顕微鏡用試料台を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る交番磁気力顕微鏡用試料台は、筒部、筒部の一端に配された第1フランジ部、前記一端と逆側に配された第2フランジ部、を有する筐体と、前記筒部に導線が巻回されて構成されたコイルと、を備え、前記第1フランジ部の外面が平坦である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部、筒部の一端に配された第1フランジ部、前記一端と逆側に配された第2フランジ部、を有する筐体と、
前記筒部に導線が巻回されて構成されたコイルと、を備え、
前記第1フランジ部の外面が平坦である、交番磁気力顕微鏡用試料台。
【請求項2】
前記筒部の内部に収容された磁性コアをさらに備える、請求項1に記載の交番磁気力顕微鏡用試料台。
【請求項3】
前記第1フランジ部及び前記導線の外周に配され、磁性体で構成されたリング状のカバーをさらに備える、請求項1又は2に記載の交番磁気力顕微鏡用試料台。
【請求項4】
前記筐体が、主としてアルミニウムを含有する金属で構成されている、請求項1又は2に記載の交番磁気力顕微鏡用試料台。
【請求項5】
前記筐体が、ポリアセタール樹脂で構成されている、請求項1又は2に記載の交番磁気力顕微鏡用試料台。
【請求項6】
前記第2フランジ部が、前記交番磁気力顕微鏡用試料台を固定する固定部を備える、請求項1又は2に記載の交番磁気力顕微鏡用試料台。
【請求項7】
直径が25mm以上、37mm以下である、請求項1又は2に記載の交番磁気力顕微鏡用試料台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交番磁気力顕微鏡用試料台に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型プローブ顕微鏡法の一つである交番磁気力顕微鏡(Alternating Magnetic Force Microscopy;A-MFM)は、試料下部から試料の上方に配置された磁性探針に対して交番磁場を発生させることで、従来の磁気力顕微鏡では測定が困難であった表面磁場の極性及び零検出を可能とする(非特許文献1参照)。
【0003】
交番磁気力顕微鏡では、測定感度を高めるために、交流電磁石から発生する交番磁場の強度を高めることが望ましい。特許文献1には、強い交番磁場を低電圧かつ低発熱で発生させるために、所定の形状を有する交流電磁石が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-108023号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】齊藤 準、「交番磁気力顕微鏡:空間分解能5nmと高機能性の実現」、先端計測分析技術・機器開発プログラム 新技術説明会、2016年3月15日、URL https://shingi.jst.go.jp/list/list_2015/2015_sentan.html#20160315X-002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載の技術では、交番磁場源となる交流電磁石と、交番磁場を印加する対象である探針との間に大きな間隙が存在する。そのため、特許文献1に記載されているような交流電磁石を非特許文献1に適用して強力な交番磁場を発生したとしても、大きな間隙により交番磁場の強度が減衰する。また、電磁石からの距離が大きくなるにつれて磁場が広がるため、探針近傍の磁場垂直性が低く、十分な空間分解能が得られない可能性がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、交番磁気力顕微鏡に用いた場合に、その探針近傍に、高い磁場強度であり、かつ、垂直性に優れた磁場を発生することができる交番磁気力顕微鏡用試料台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、交番磁気力顕微鏡において、交番磁場発生源と探針との距離を短くすることで、探針近傍の磁場を高め、かつ、磁場の垂直性を均一にすることに着想し、交番磁場発生源を試料台とすることに想到した。
【0009】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1] 本発明の一態様に係る交番磁気力顕微鏡用試料台は、筒部、筒部の一端に配された第1フランジ部、上記一端と逆側に配された第2フランジ部、を有する筐体と、
上記筒部に導線が巻回されて構成されたコイルと、を備え、
上記第1フランジ部の外面が平坦である。
[2]上記[1]に記載の交番磁気力顕微鏡用試料台は、上記筒部の内部に収容された磁性コアをさらに備えていてもよい。
[3]上記[1]又は[2]に記載の交番磁気力顕微鏡用試料台は、上記第1フランジ部及び上記導線の外周に配され、磁性体で構成されたリング状のカバーをさらに備えていてもよい。
[4]上記[1]~[3]のいずれかに記載の交番磁気力顕微鏡用試料台では、上記筐体が、主としてアルミニウムを含有する金属で構成されていてもよい。
[5]上記[1]~[3]のいずれかに記載の交番磁気力顕微鏡用試料台では、上記筐体が、ポリアセタール樹脂で構成されていてもよい。
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載の交番磁気力顕微鏡用試料台では、上記第2フランジ部が、上記交番磁気力顕微鏡用試料台を固定する固定部を備えていてもよい。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の交番磁気力顕微鏡用試料台は、直径が25mm以上、37mm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
上記態様に係る交番磁気力顕微鏡用試料台によれば、交番磁気力顕微鏡に用いた場合に、その探針近傍に、高い磁場強度であり、かつ、垂直性に優れた磁場を発生することができるが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係る交番磁気力顕微鏡用試料台の斜視図である。
図2】同実施形態における筐体の斜視図である。
図3図1におけるIII-III断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る交番磁気力顕微鏡用試料台の斜視図である。
図5図4におけるIV-IV断面図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る交番磁気力顕微鏡用試料台の断面図である。
図7】本発明の第4の実施形態に係る交番磁気力顕微鏡用試料台の側面図である。
図8】交番磁気力顕微鏡用試料台の変形例を示す側面図である。
図9】交番磁気力顕微鏡用試料台の変形例を示す側面図である。
図10】実施例における磁束密度を測定するためのシステムの概略構成図である。
図11】実施例における各交番磁気力顕微鏡用試料台のラインプロファイルの結果を示すグラフである。
図12】実施例における各交番磁気力顕微鏡用試料台の周波数特性のグラフを示す。である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る交番磁気力顕微鏡用試料台について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る交番磁気力顕微鏡用試料台1の斜視図である。図2は、本実施形態における筐体10の斜視図である。図3は、図1におけるIII-III断面図である。なお、図中の各構成要素の寸法、比率は、実際の各構成要素の寸法、比率を表すものではない。
【0013】
<第1の実施形態>
本実施形態に係る交番磁気力顕微鏡用試料台1は、図1に示すように、筐体10と、コイル20と、を備える。
【0014】
筐体10は、図2に示すように、筒部11、筒部11の軸方向の一端に配された第1フランジ部12、及び、一端と逆側に配された第2フランジ部13を有する。
【0015】
筒部11は、図3に示すように中空であり、筒部11の軸方向に垂直な断面の形状は円形となっている。筒部11の外周面には導線が巻かれ、コイル20が形成される。
【0016】
筒部11の軸方向の一端には第1フランジ部12が配されている。第1フランジ部12の外面121は平坦となっている。外面121は、第1フランジ部12における筒部11と接続された面とは逆側の面である。外面121は平坦であるため、交番磁気力顕微鏡により観察される試料を配することができる。また、外面121が平坦であるため、交番磁気力顕微鏡の探針と試料との間の距離が一定になり、優れた分析精度が得られる。第1フランジ部12の厚さ(軸方向長さ)は、例えば2mm以下である。
【0017】
図2に示すように、筒部11における軸方向の第1フランジ部12が配された一端とは逆側には第2フランジ部13が配されている。第2フランジ部13は、交番磁気力顕微鏡のステージと接して配されて用いられる。そのため、本実施形態における第2フランジ部13において、第2フランジ部13における筒部11と接続された面とは逆側の面である外面131は平坦である。また、第2フランジ部13は、図2に示すように、コイル20を構成する導線の両端を引き出すための切り欠き132を有していてもよい。
【0018】
筐体10は、非磁性体で構成される。筐体10を構成する非磁性体としては、例えば、純アルミニウム、アルミニウム合金、ポリアセタール樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等が挙げられる。筐体10は、主としてアルミニウムを含有する金属(純アルミニウム、アルミニウム合金)で構成されていると、軽量かつ高強度となる。したがって、筐体10には、主としてアルミニウムを含有する金属が用いられることが好ましい。また、ポリアセタール樹脂は絶縁性に優れるため、交番磁場が発生したときの渦電流の発生が抑制される。そのため、高周波の電流をコイル20に通電した場合に、探針付近の磁場の強さをより大きくすることができる。更に、ポリアセタール樹脂であれば、磁場強度を維持しつつ、軽量化することができる。したがって、筐体10には、ポリアセタール樹脂が用いられることがより好ましい。
【0019】
コイル20は、導線が筒部11に巻かれて構成される。導線には、公知のものが用いられてよく、例えば、エナメル線が用いられてよい。また、コイル20の巻き数は、要求される磁場の強度に応じて定められてよく、例えば、250~500とすることができる。
【0020】
交番磁気力顕微鏡用試料台1は、公知の交番磁気力顕微鏡のステージに配置されて使用される。そのため、交番磁場の発生源から交番磁気力顕微鏡の探針までの距離を短くすることができる。したがって、交番磁場の強度の減衰を従来よりも抑制することができ、また、探針近傍の磁場垂直性を向上させることができる。その結果、交番磁気力顕微鏡の空間分解能を向上させることができる。
【0021】
また、交番磁気力顕微鏡用試料台1は、公知の交番磁気力顕微鏡のステージに配置されて使用されるため、交番磁気力顕微鏡用試料台1は、公知の交番磁気力顕微鏡のステージに配置できるサイズであり、例えば、その直径は25mm以上37mm以下であり、高さ(軸方向長さ)は15mm以上22mm以下である。交番磁気力顕微鏡用試料台1によれば、上述したとおり、交番磁場の発生源から交番磁気力顕微鏡の探針までの距離を短くすることで、探針近傍の磁場強度を向上させることができる。そのため、従来の交番磁場の発生源と比較して小さな電流で観察に求められる磁場強度が得られることから、交番磁場を発生する交番磁気力顕微鏡用試料台1のサイズを、従来の交番磁場の発生源よりも小型化することができる。例えば、非特許文献1に記載された低磁場用の交番磁場発生源は、直径40mm、高さ28mmであるが、この交番磁場発生源による磁場強度と同程度の磁場強度を得るためには、交番磁気力顕微鏡用試料台1は、直径37mm、高さ22mm程度であればよい。
【0022】
また、交番磁気力顕微鏡用試料台1では、上述したとおり、交番磁気力顕微鏡用試料台1は交番磁場の発生源から交番磁気力顕微鏡の探針までの距離を短くすることができるため、小さな電流でも、交番磁気力顕微鏡の探針付近における磁場の強度を大きくすることができる。したがって、本実施形態に係る交番磁気力顕微鏡用試料台1によれば、電流の大きさを変更することで磁場強度を制御することができる。
【0023】
<第2の実施形態>
続いて、図4、5を参照して、本発明の第2の実施形態に係る交番磁気力顕微鏡用試料台1Aを説明する。図4は、本発明の第2の実施形態に係る交番磁気力顕微鏡用試料台の斜視図である。図5は、図4におけるIV-IV断面図である。
【0024】
本実施形態に係る交番磁気力顕微鏡用試料台1Aは、図4、5に示すように、筐体10と、コイル20と、カバー30と、を備える。交番磁気力顕微鏡用試料台1Aは、カバー30を備える点で交番磁気力顕微鏡用試料台1と異なり、筐体10及びコイル20は、第1の実施形態と同様であるため、ここでのこれらの説明は省略する。以下ではカバー30について説明する。
【0025】
カバー30は、電磁鋼板が軸方向に積層されて形成されたリング状のカバーである。カバー30は、図5に示すように、第1フランジ部12及びコイル20の外周に配されている。カバー30により、漏れ磁束が低減し、磁束密度を高めることができる。また、カバー30が電磁鋼板の積層体であるため、カバー30に生じる渦電流が減少し、渦電流損を抑制することができる。
【0026】
カバー30を構成する電磁鋼板は、特段制限されず、公知のものであればよい。また、電磁鋼板の積層数も、コイル20に流れる電流の大きさに応じて定められればよい。
【0027】
<第3の実施形態>
続いて、図6を参照して、本発明の第3の実施形態に係る交番磁気力顕微鏡用試料台1Bを説明する。図6は、本実施形態に係る交番磁気力顕微鏡用試料台1Bの中心軸を含む断面の断面図である。
【0028】
本実施形態に係る交番磁気力顕微鏡用試料台1Bは、図6に示すように、筐体10と、コイル20と、磁性コア40と、を備える。交番磁気力顕微鏡用試料台1Bは、磁性コア40を備える点で交番磁気力顕微鏡用試料台1と異なり、筐体10及びコイル20は、第1の実施形態と同様であるため、ここでのこれらの説明は省略する。以下では磁性コア40について説明する。
【0029】
磁性コア40は、図6に示すように、筒部11の内部に収容されている。磁性コア40には、透磁率が高い材料が用いられ、例えば、純鉄、鉄系合金、又は酸化鉄を主成分とするフェライト、パーマロイ等が用いられる。また、磁性コア40は、電磁鋼板が積層した積層コアであってもよいし、アモルファスコアであってもよい。磁性コア40により、磁束密度を高めることができ、また、磁場垂直性が向上する。
【0030】
<第4の実施形態>
続いて、図7を参照して、本発明の第4の実施形態に係る交番磁気力顕微鏡用試料台1Cを説明する。図7は、本実施形態に係る交番磁気力顕微鏡用試料台1Cの側面図である。
【0031】
本実施形態に係る交番磁気力顕微鏡用試料台1Cは、図7に示すように、筐体10と、コイル20と、固定部50と、を備える。交番磁気力顕微鏡用試料台1Cは、固定部50を備える点で交番磁気力顕微鏡用試料台1と異なり、筐体10及びコイル20は、第1の実施形態と同様であるため、ここでのこれらの説明は省略する。以下では固定部50について説明する。
【0032】
固定部50は、図7に示すように、筐体10における第2フランジ部13の外面131から延びたねじ切りされた部分である。交番磁気力顕微鏡のステージにねじ穴が設けられている場合に、固定部50が当該ねじ穴と嵌め合わされて、交番磁気力顕微鏡用試料台1Cが交番磁気力顕微鏡のステージに固定される。これにより、交番磁気力顕微鏡用試料台1Cをステージにより強固に固定することができる。
【0033】
ここまで、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限られるものではない。例えば、上述した実施形態の構成が組み合わされてもよい。詳細には、本発明に係る交番磁気力顕微鏡用試料台は、カバー30、磁性コア40、及び固定部50のうちの2つ以上の構成を備えていてもよい。より大きな磁場強度及びより均一な磁場垂直性を実現するという観点から、交番磁気力顕微鏡用試料台は、カバー30及び磁性コア40を備えていることが好ましい。
【0034】
また、第1フランジ部12は、例えば図8に示すように、筒部11と連通する孔を有しており、蓋122が当該孔に嵌合されていてもよい。この場合、第1フランジ部12の外面121と蓋122の外面とが平坦になるように構成される。筒部11と連通する孔を通じて、筒部11の内部に磁性コア40を装入し、及び、取り出すことができる。
【0035】
また、上述した第1の実施形態等では、筒部11の軸方向に垂直な断面の形状は円形であったが、当該形状は、円形に限られず、矩形等種々の形状であってよい。均一な磁場垂直性を実現するという観点からは、導線が軸方向に垂直な断面において均一に巻き付けられたコイル20とするために、筒部11の軸方向に垂直な断面の形状は円形であることが好ましい。
【0036】
また、筒部11の内部の空間は、第1フランジ部12又は第2フランジ部13のいずれか一方に延びていてもよい。換言すると、第1フランジ部12又は第2フランジ部13の少なくともいずれかは、筒部11の内部の空間に接続される凹部を有していてもよい。例えば、図9に示す交番磁気力顕微鏡用試料台1Eでは、第1フランジ部12には筒部11の内部の空間に接続される凹部123が設けられており、第2フランジ部13には筒部11の内部の空間に接続される凹部133が設けられている。これにより、コイル20の高さ(軸方向長さ)よりも長尺の磁性コア40をコイル20の内側に配することができるため、磁場垂直性をより向上させることができる。
【0037】
また、上述した第1の実施形態等では、筒部11は中空であったが、筒部11は中実であってもよい。筒部11が中実であれば、筐体10をより容易に製造することができる。
【実施例0038】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0039】
<実施例1>
交番磁気力顕微鏡用試料台(本発明例1~4)を作製した。本発明例1は、図3に示す、筐体と、コイルと、を備える交番磁気力顕微鏡用試料台とした。具体的には、筒部の直径が10mmであり、交番磁気力顕微鏡用試料台の高さは22mmであるとした。本発明例2は、本発明例1の筐体における筒部の内部に直径8mm、高さ20mmであり、JFEフェライト株式会社製の磁性コア(品番 I-93K)を装入した。本発明例3は、本発明例1の交番磁気力顕微鏡用試料台における第1フランジ部及びコイルの外周にカバーを設けた。カバーには、板厚0.3mmの電磁鋼板(電機資材株式会社製、品番30ZH105)を66枚積層したものを用いた。カバーの外径を37mmとし、肉厚mmとした。本発明例4は、本発明例3の交番磁気力顕微鏡用試料台における筒部の内部に、本発明例2の磁性コアと同様の磁性コアを装入した。本発明例1~4の筐体は、アルミニウム製とした。本発明例1~4において、導線には直径0.6mmのエナメル線を使用し、筒部に485回巻きつけてコイルとした。
【0040】
本発明例1~4の各交番磁気力顕微鏡用試料台について、図10に示す磁場測定システムを用いて、磁場均一性の評価を行った。図10は、実施例における磁場測定システムの概略構成図である。交番磁気力顕微鏡用試料台の第1フランジ部の外面からホールセンサまでの距離を2mmとした。この距離は、交番磁気力顕微鏡において取り得る、試料が配されたステージの上面から探針までの距離に相当する。コイルに流す電流は、信号源としてファンクションジェネレータ(WF1974、エヌエフ回路設計ブロック社製)から、高速バイポーラ電源(BA4850、エヌエフ回路設計ブロック社製)に接続して増幅された。導通電流の大きさを0.8AP-Pに設定し、ホールセンサで磁場を検出してロックインアンプにて位相を検波した。ロックインアンプは、ホールセンサが検出した磁場に関する信号を出力し、PC2は当該信号に基づいてラインプロファイルを取得した。なお、測定中は、交番磁気力顕微鏡用試料台と電源間の電流量、及び、オフセットが一定になるように、電流-電圧変換回路及びシステム開発ソフトウェア(LabVIEW、National Instruments社製)を用いて制御した。
【0041】
ラインプロファイルは、変調周波数を90Hzに設定し、交番磁気力顕微鏡用試料台の中心から±40mm(0~80mm)の範囲でホールセンサを走査して取得した。
【0042】
取得された各実施例にラインプロファイルを図11に示す。図11に示すように、本発明例1~4のいずれの例でも高い強度の磁場が得られた。また、交番磁気力顕微鏡における観測範囲は約0.1mm角であり、磁場の強度は、空間に対して連続的に減衰することから、図11に示すように、交番磁気力顕微鏡を用いた観測範囲において、良好な磁場垂直性が得られた。
【0043】
<実施例2>
本発明例5として、ポリアセタール樹脂製の筐体を準備し、その他を本発明例4と同様の交番磁気力顕微鏡用試料台を作製した。図10に示す磁場測定システムを用いて、本発明例4及び本発明例5の交番磁気力顕微鏡用試料台の周波数特性を評価した。周波数特性は、ホールセンサを交番磁気力顕微鏡用試料台の中心軸の直上に固定し、10Hzから1500Hzまでをスイープ測定し、ロックインアンプが出力した信号に基づいて取得された。
【0044】
図12に各交番磁気力顕微鏡用試料台の周波数特性のグラフを示す。図12に示すように、ポリアセタール樹脂製の筐体を有する交番磁気力顕微鏡用試料台の例である本発明例5は、本発明例4と比較して高周波数領域でも大きな磁束密度が維持されていることが分かった。これは、アルミニウム製の筐体を有する交番磁気力顕微鏡用試料台の例である本発明例4と比較して渦電流が抑制されたためであると考えられる。
【符号の説明】
【0045】
1、1A、1B、1C、1D、1E 交番磁気力顕微鏡用試料台
10 筐体
11 筒部
12 第1フランジ部
13 第2フランジ部
20 コイル
30 カバー
40 磁性コア
121 第1フランジ部の外面
122 蓋
123 凹部
131 第2フランジ部の外面
132 切り欠き
133 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12