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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087628
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】手術器具及び手術システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
A61B17/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202558
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】501083643
【氏名又は名称】学校法人慈恵大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】牛久 智加良
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL24
4C160LL62
4C160LL70
(57)【要約】
【課題】骨の位置を簡易に矯正可能な手術器具を実現する。
【解決手段】本開示の一形態に係る手術器具(1)は、患者の椎骨又は骨盤を含む骨の位置を矯正する際に用いられる手術器具であって、骨に固定されたスクリュー(2)のスクリューヘッド部(2a)に外嵌されるシャフトヘッド部(3a)と、シャフトヘッド部(3a)から伸びるシャフト本体部(3b)と、を有するシャフト(3)と、シャフト(3)に固定されるハンドル(4)と、を備える。シャフト本体部(3b)の軸方向に延在する中心軸(AX1)は、シャフトヘッド部(3a)におけるスクリューヘッド部(2a)との嵌合方向に延在する中心軸(AX2)に対して傾いている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の椎骨又は骨盤を含む骨の位置を矯正する際に用いられる手術器具であって、
前記骨に固定されたスクリューのスクリューヘッド部に外嵌されるシャフトヘッド部と、前記シャフトヘッド部から伸びるシャフト本体部と、を有するシャフトと、
前記シャフトに固定されるハンドルと、
を備え、
前記シャフト本体部の軸方向に延在する中心軸は、前記シャフトヘッド部における前記スクリューヘッド部との嵌合方向に延在する中心軸に対して傾いている、手術器具。
【請求項2】
前記シャフトに対して前記ハンドルを着脱する着脱部を備える、請求項1に記載の手術器具。
【請求項3】
前記シャフトヘッド部の中心軸に対する前記シャフト本体部の中心軸の角度を変更する角度変更部を備える、請求項1又は2に記載の手術器具。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の手術器具と、
複数の前記手術器具を連結する連結機構と、
を備える、手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、手術器具及び手術システムに関し、例えば、患者の椎骨又は骨盤を含む骨の位置を矯正する際に用いられる手術器具及び手術システムに関する。
【背景技術】
【0002】
脊柱変形などを改善するための代表的な処置(手術)として、所定の位置からずれた骨の位置を矯正して固定するが、例えば、以下の流れで行われている。ここで、以下の流れは、椎骨の位置を矯正して固定する代表的な流れを説明する。
【0003】
なお、図10から図14は、図を簡略化して示している。また、図10から図14では、紙面に向かって、左側を患者の前側(即ち、患者の腹側)とし、右側を患者の後側(即ち、患者の背中側)とし、上側を患者の頭側とし、下側を患者の尾側としている。
【0004】
先ず、図10に示すように、第1の椎骨V1に第1のスクリュー101を固定し、第1の椎骨V1に対して上側に配置された第2の椎骨V2に第2のスクリュー102を固定する。そして、第1のスクリュー101のスクリューヘッド部101aの溝部にロッド103を通して固定する。
【0005】
次に、図11の白抜き矢印で示すように、ロッド103を介して第1のスクリュー101及び第1の椎骨V1を回転させる。これにより、図12に示すように、第1の椎骨V1と第2の椎骨V2との椎間間隔の所謂引っかかりを解消する。
【0006】
次に、図13の白抜き矢印で示すように、第2のスクリュー102を介して第2の椎骨V2を患者の後側に引っ張り上げて、第2の椎骨V2を所定の位置に矯正する。そして、図14に示すように、ロッド103を第2のスクリュー102のスクリューヘッド部102aの溝部に通して固定する。これにより、第2の椎骨V2を所定の位置に矯正した状態で固定する。
【0007】
ところで、特許文献1では、第1の椎骨の位置を矯正し、第1の椎骨に固定した上部ゲージと、第1の椎骨に対して下側に配置された第2の椎骨に固定した下部ゲージと、を係止プレートで連結することで、第1の椎骨を矯正した位置に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-190074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的な手術は、ロッド103を介して第1のスクリュー101及び第1の椎骨V1を回転させる際に、例えば、図11に示すように、ロッド103をバイスグリップのような特殊な把持手段104によって把持した状態で当該把持手段104を介してロッド103を回転させる。そのため、手術に必要な手術器具が多く、手術が煩雑になる課題を有する。
【0010】
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、椎骨又は骨盤を含む骨の位置を簡易に矯正可能な手術器具及び手術システムを実現する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様に係る手術器具は、患者の椎骨又は骨盤を含む骨の位置を矯正する際に用いられる手術器具であって、
前記骨に固定されたスクリューのスクリューヘッド部に外嵌されるシャフトヘッド部と、前記シャフトヘッド部から伸びるシャフト本体部と、を有するシャフトと、
前記シャフトに固定されるハンドルと、
を備え、
前記シャフト本体部の軸方向に延在する中心軸は、前記シャフトヘッド部における前記スクリューヘッド部との嵌合方向に延在する中心軸に対して傾いている。
【0012】
上述の手術器具は、前記シャフトに対して前記ハンドルを着脱する着脱部を備えることが好ましい。
【0013】
上述の手術器具は、前記シャフトヘッド部の中心軸に対する前記シャフト本体部の中心軸の角度を変更する角度変更部を備えることが好ましい。
【0014】
本開示の一態様に係る手術システムは、
上述の手術器具と、
複数の前記手術器具を連結する連結機構と、
を備える。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、椎骨又は骨盤を含む骨の位置を簡易に矯正可能な手術器具及び手術システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1の手術器具の使用形態を示す斜視図である。
図2】一般的なスクリューを示す斜視図である。
図3】実施の形態1の手術器具を示す斜視図である。
図4】実施の形態1の手術器具を示す異なる斜視図である。
図5】実施の形態1の手術器具を用いて椎骨の位置を矯正して固定する流れを説明するための図である。
図6】実施の形態1の手術器具を用いて椎骨の位置を矯正して固定する流れを説明するための図である。
図7】実施の形態1の手術器具を用いて椎骨の位置を矯正して固定する流れを説明するための図である。
図8】実施の形態2の手術器具の角度変更部の構成を説明するための図である。
図9】実施の形態3の手術システムで用いられるフレキシブルアームを示す図である。
図10】一般的な椎骨の位置を矯正して固定する流れを説明するための図である。
図11】一般的な椎骨の位置を矯正して固定する流れを説明するための図である。
図12】一般的な椎骨の位置を矯正して固定する流れを説明するための図である。
図13】一般的な椎骨の位置を矯正して固定する流れを説明するための図である。
図14】一般的な椎骨の位置を矯正して固定する流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0018】
<実施の形態1>
先ず、本実施の形態の手術器具の構成を説明する。なお、以下の手術器具などの構成の説明では、説明を明確にするため、三次元(XYZ)座標系を用いて説明する場合がある。図1は、本実施の形態の手術器具の使用形態を示す斜視図である。図2は、一般的なスクリューを示す斜視図である。
【0019】
手術器具1は、詳細は後述するが、図1に示すように、患者の椎骨や骨盤を含む骨に固定されたスクリュー2を介して当該骨を回転させ、骨の位置を矯正するために用いることができる。
【0020】
ここで、スクリュー2は、図2に示すように、スクリューヘッド部2a及びスクリュー本体部2bを備えている。スクリューヘッド部2aは、Z軸-側が閉塞された略有底円筒形状であり、スクリューヘッド部2aの内周面に雌ねじ部2cが形成されている。
【0021】
スクリューヘッド部2aには、図2に示すように、Z軸+側が開放された溝部2dが形成されている。溝部2dは、X軸方向に延在している。そのため、スクリューヘッド部2aは、X軸方向から見て略U字形状である。
【0022】
スクリュー本体部2bは、図2に示すように、Z軸方向に延在しており、スクリュー本体部2bの周面に雄ねじ部2eが形成されている。スクリュー本体部2bのZ軸+側の端部は、スクリューヘッド部2aのZ軸-側の端部に固定されている。このとき、スクリュー本体部2bに対してスクリューヘッド部2aが首振り可能に、スクリューヘッド部2aとスクリュー本体部2bとが接続されているとよい。
【0023】
図3は、本実施の形態の手術器具を示す斜視図である。図4は、本実施の形態の手術器具を示す異なる斜視図である。手術器具1は、図3及び図4に示すように、シャフト3、ハンドル4及び着脱部5を備えている。シャフト3は、シャフトヘッド部3a及びシャフト本体部3bを備えている。
【0024】
シャフトヘッド部3aは、図3及び図4に示すように、Z軸方向に延在する略円筒形状であり、シャフトヘッド部3aのZ軸方向の高さがスクリュー2のスクリューヘッド部2aのZ軸方向の高さ以上である。シャフトヘッド部3aは、シャフトヘッド部3aをZ軸方向に貫通する貫通部3cを備えている。貫通部3cの少なくともZ軸-側の端部の内周形状は、スクリュー2のスクリューヘッド部2aの外周形状と略等しい。
【0025】
シャフトヘッド部3aには、図3及び図4に示すように、Z軸-側が開放された溝部3dが形成されている。溝部3dは、シャフトヘッド部3aをY軸方向に延在している。そのため、シャフトヘッド部3aは、Y軸方向から見て略逆U字形状である。このとき、溝部3dのX軸方向の幅寸法は、ロッド6(図1を参照)の直径と略等しく、溝部3dのZ軸方向の深さは、ロッド6の直径以上である。
【0026】
シャフト本体部3bは、図3及び図4に示すように、シャフトヘッド部3aから角度を付けて伸びている。つまり、シャフト本体部3bの軸方向に延在する中心軸AX1は、シャフトヘッド部3aの貫通部3cの中心を通り、且つZ軸方向に延在する中心軸AX2に対して傾いて配置されている。例えば、X軸+側から見て、シャフト本体部3bの中心軸AX1は、シャフトヘッド部3aの中心軸AX2に対して時計回りに傾いている。
【0027】
シャフト本体部3bは、例えば、図3及び図4に示すように、略円柱形状であり、シャフト本体部3bにおけるシャフトヘッド部3aの側に対して逆側の部分の周面にローレット加工部3eが形成されているとよい。そして、シャフト本体部3bにおけるシャフトヘッド部3aの側に対して逆側の部分には、当該シャフト本体部3bの周方向に溝部3fが形成されている。
【0028】
ハンドル4は、図3及び図4に示すように、シャフト3のシャフト本体部3bに固定されている。ハンドル4は、例えば、シャフト3におけるシャフト本体部3bの溝部3fに固定されているとよい。ハンドル4は、例えば、略円柱形状であり、ハンドル4の周面にローレット加工部が形成されているとよい。
【0029】
着脱部5は、シャフト3に対してハンドル4を着脱するための着脱機構である。着脱部5は、例えば、図3及び図4に示すように、ハンドル4の先端部に設けられたクランプ機構を備えている。
【0030】
詳細には、着脱部5は、例えば、図3及び図4に示すように、リング部5aをハンドル4におけるシャフト3の側に対して逆側に摺動させることで、クランプ部5bを開くことが可能であり、リング部5aをハンドル4におけるシャフト3の側に摺動させることで、クランプ部5bを閉じた状態に固定可能な構成とされている。
【0031】
これにより、クランプ部5bを開閉させることで、シャフト3に対してハンドル4を着脱可能である。但し、着脱部5は、シャフト3に対してハンドル4を着脱可能な構成であればよい。このとき、ハンドル4が固定される方向は、図3などの例に限定されず、適宜、変更することができる。
【0032】
次に、本実施の形態の手術器具1を用いて椎骨を所定の位置に矯正して固定する流れを説明する。図5から図7は、本実施の形態の手術器具を用いて椎骨を所定の位置に矯正して固定する流れを説明するための図である。
【0033】
なお、図5から図7は、図を簡略化して示している。また、図5から図7では、紙面に向かって、左側を患者の前側とし、右側を患者の後側とし、上側を患者の頭側とし、下側を患者の尾側としている。
【0034】
先ず、図5に示すように、手術者が患者の矯正対象の椎骨である第1の椎骨V1の左右の椎弓根に第1のスクリュー2(なお、以下の説明では、第1のスクリューに符号21を付して説明する場合がある。)のスクリュー本体部2bをねじ込んで固定する。
【0035】
それと共に、手術者が第1の椎骨V1に対して上側の第2の椎骨V2の左右の椎弓根に第2のスクリュー2(なお、以下の説明では、第2のスクリューに符号22を付して説明する場合がある。)のスクリュー本体部2bをねじ込んで固定する。
【0036】
このとき、一般的に椎骨を矯正する場合と同様に、第1のスクリュー21の雌ねじ部2cに第1のドライバー(図示を省略)の先端部をねじ込んだ状態で、手術者が第1のドライバーを回転させつつ、第1のスクリュー21を第1の椎骨V1の左右の椎弓根にねじ込むことで、第1のスクリュー21を第1の椎骨V1に固定することができる。また、第2のスクリュー22も同様に第2の椎骨V2に固定することができる。
【0037】
次に、図5に示すように、手術者が第1のスクリュー21のスクリューヘッド部2aの溝部2dにロッド6の下部を通し、第1のスクリュー21のスクリューヘッド部2aの雌ねじ部2cに止めネジ7(図1を参照)をねじ込んで、ロッド6の下部を第1のスクリュー21の溝部2dの底部と止めネジ7とで挟み込んで固定する工程を左右の第1のスクリュー21で実施する。
【0038】
このとき、手術者が第2のドライバー8の先端部を止めネジ7に形成された六角穴に嵌め入れ、第2のドライバー8を回転させて止めネジ7をねじ込むことで、ロッド6の下部を第1のスクリュー21に固定することができる。
【0039】
次に、手術者が手術器具1におけるシャフト3のシャフトヘッド部3aの貫通部3cに第1のスクリュー21のスクリューヘッド部2aを嵌め入れ(即ち、外嵌)つつ、当該シャフトヘッド部3aの溝部3dにロッド6の下部を嵌め入れる工程を左右の第1のスクリュー21で実施する。
【0040】
次に、図6の白抜き矢印で示すように、手術者が左右の手術器具1のハンドル4を介して第1の椎骨V1を患者の前側に押し込みつつ、第1の椎骨V1の前端部を下側に向かって回転させ、第1の椎骨V1を所定の位置に矯正する。それと共に、図7に示すように、補助者がロッド6の上部を第2のスクリュー22のスクリューヘッド部2aの溝部2dに通す。
【0041】
このとき、手術器具1のシャフト3のシャフトヘッド部3aの貫通部3cと第1のスクリュー21のスクリューヘッド部2aとが密接に嵌合されているため、手術器具1と第1のスクリュー21との嵌合部ががたつくことなく、第1の椎骨V1を良好に回転させることができる。
【0042】
ここで、一般的に第1の椎骨V1を回転させる場合、上述したように、ロッド103を介して第1の椎骨V1を回転させるため、第1のスクリュー101と第1の椎骨V1との結合部に大きな回転モーメントが作用する。また、一般的に第2の椎骨V2を引き上げる場合、第2のスクリュー102と第2の椎骨V2との結合部に後側(即ち、第2のスクリュー102の引き抜き方向)へ大きな力が作用する。
【0043】
そのため、一般的に第1の椎骨V1を回転させたり、第2の椎骨V2を引き上げたり、する際に、第1の椎骨V1や第2の椎骨V2への物理的な負担が大きく、しかも、例えば、第1の椎骨V1や第2の椎骨V2が骨粗鬆症などで脆い場合、第1のスクリュー101や第2のスクリュー102が弛む可能性がある。
【0044】
それに対して、本実施の形態では、第1のスクリュー21のスクリュー本体部2bが延在する方向から見て、一般的に第1の椎骨V1を回転させる場合に比べて、作用点と支点との距離が短いため、第1のスクリュー21と第1の椎骨V1との結合部に大きな回転モーメントが作用しない。
【0045】
また、本実施の形態では、第1の椎骨V1を前側に押し込みつつ回転させるため、一般的に第2の椎骨V2を引き上げる場合に比べて、第1のスクリュー21と第1の椎骨V1との結合部に後側への大きな力が作用しない。
【0046】
そのため、本実施の形態では、一般的に第1の椎骨V1を回転させたり、第2の椎骨V2を引き上げたり、する場合に比べて、第1の椎骨V1や第2の椎骨V2への物理的な負担が小さく、しかも、第1のスクリュー21の弛みを抑制することができ、その結果、第1の椎骨V1を良好に回転させることができる。
【0047】
このように第1の椎骨V1が所定の位置に矯正された状態を維持するように、手術者が左右の手術器具1を固定した状態で、補助者が第2のスクリュー22のスクリューヘッド部2aの雌ねじ部2cに止めネジ7をねじ込んで、ロッド6の上部を第2のスクリュー22の溝部2dの底部と止めネジ7とで挟み込んで固定する工程を左右の第2のスクリュー22で実施すると、第1の椎骨V1を所定の位置に固定することができる。
【0048】
このとき、図1に示すように、補助者が第2のドライバー8の先端部を止めネジ7に形成された六角穴に嵌め入れ、第2のドライバー8を回転させて止めネジ7をねじ込むことで、ロッド6の上部を第2のスクリュー22に固定することができる。
【0049】
ちなみに、ロッド6の第1のスクリュー21と第2のスクリュー22との間隔を調整する場合、例えば、補助者が第2のドライバー8を手術器具1のシャフト3のシャフトヘッド部3aの貫通部3cに通して、第1のスクリュー21にねじ込まれた止めネジ7を一度、緩め、ロッド6の第1のスクリュー21と第2のスクリュー22との間隔を調整した後に、再度、止めネジ7をねじ込むとよい。
【0050】
ここで、シャフト3のシャフト本体部3bの中心軸AX1がシャフトヘッド部3aの中心軸AX2に対して傾いて配置されている。そのため、第1の椎骨V1の位置を矯正する際などに、他の手術器具1との干渉を抑制することができる。これにより、第1の椎骨V1の位置を簡易に矯正することができる。
【0051】
また、手術器具1は、ハンドル4がシャフト3に対して着脱可能な構成である。そのため、第1の椎骨V1の位置を矯正する際などに他の手術器具1と干渉する場合、他の手術器具1のハンドル4をシャフト3から取り外すことができる。これにより、他の手術器具1との干渉を抑制することができ、第1の椎骨V1の位置を簡易に矯正することができる。
【0052】
このように本実施の形態の手術器具1は、第1の椎骨V1を所定の位置に矯正することができる構成である。つまり、本実施の形態の手術器具1は、第1の椎骨V1を所定の位置に矯正するために、一般的な手術に用いられるバイスグリップのような特殊な把持手段104を用いる必要がない。そのため、本実施の形態の手術器具1は、第1の椎骨V1の位置を簡易に矯正可能である。
【0053】
<実施の形態2>
図8は、本実施の形態の手術器具の角度変更部の構成を説明するための図である。本実施の形態の手術器具11は、実施の形態1の手術器具1と略等しい構成とされているため、重複する説明は省略するが、図8に示すように、シャフト3のシャフトヘッド部3aがシャフト本体部3bに対して取り替え可能な構成とされている。
【0054】
例えば、シャフト本体部3bは、シャフトヘッド部3aの側の第1の部分3gと、第1の部分3gに対して他の第2の部分3hと、に分割されている。そして、シャフト本体部3bは、第1の部分3gに形成された雄ねじ部3iを第2の部分3hに形成された雌ねじ部にねじ込んで締結することで、第1の部分3gと第2の部分3hとを連結でき、第1の部分3gの雄ねじ部3iと第2の部分3hの雌ねじ部との締結状態を解除することで、第1の部分3gと第2の部分3hとを分離することができる構成とされている。
【0055】
このとき、シャフト3のシャフト本体部3bの中心軸AX1がシャフトヘッド部3aの中心軸AX2に対して傾く角度が異なる複数種類のシャフトヘッド部3aを用意しておくことで、シャフトヘッド部3aに対するシャフト本体部3bの傾きを、適宜、変化させることができる。
【0056】
つまり、第1の部分3gの雄ねじ部3i及び第2の部分3hの雌ねじ部は、シャフトヘッド部3aの中心軸AX2に対するシャフト本体部3bの中心軸AX1の角度を変更する角度変更部9として機能させることができる。これにより、シャフトヘッド部3aの中心軸AX2に対するシャフト本体部3bの中心軸AX1の角度を、適宜、変更して、第1の椎骨V1の位置を矯正することができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、第1の部分3gの雄ねじ部3i及び第2の部分3hの雌ねじ部を角度変更部9として機能させているが、第1の部分3gに雌ねじ部が形成され、第2の部分3hに雄ねじ部が形成されてもよい。但し、角度変更部は、シャフトヘッド部3aの中心軸AX2に対するシャフト本体部3bの中心軸AX1の角度を変更可能な構成であればよく、例えば、ギヤ機構であってもよい。
【0058】
<実施の形態3>
ここで、例えば、複数の椎骨の位置を矯正する際などに他の手術器具1、11を固定しておく必要があるが、その際に、図9に示すようなフレキシブルアーム10を用いて他の手術器具1、11を固定するとよい。
【0059】
フレキシブルアーム10は、一般的に手術で用いられるフレキシブルアームで構成することができ、手術器具1、11とフレキシブルアーム10とで手術システムを構成する。フレキシブルアーム10は、例えば、図9に示すように、ベッドなどに固定される本体アーム部10aに対して第1のアーム部10b及び第2のアーム部10cが関節部によって自在に折れ曲がり可能な構成とされている。このとき、各関節部は、固定ネジ10dによって折れ曲がり角度を固定可能な構成とされている。
【0060】
そして、フレキシブルアーム10は、第1のアーム部10bの先端に設けられた第1の把持部10e及び第2のアーム部10cの先端に設けられた第2の把持部10fで手術器具1、11を把持可能な構成とされている。これにより、複数の椎骨の位置を簡易に矯正することができる。
【0061】
但し、本実施の形態の手術システムは、複数の手術器具1、11を連結するためにフレキシブルアーム10を備えているが、複数の手術器具1、11を連結できる連結機構を備えていればよく、例えば、連結機構は、左右の手術器具1、11を挟み込んで連結するクリップなどであってもよい。
【0062】
本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態では、手術器具1、11が椎骨の位置を矯正するために用いられているが、骨盤などの骨であっても略同様に用いることができる。
【0063】
上述した実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
患者の椎骨又は骨盤を含む骨の位置を矯正する際に用いられる手術器具であって、
前記骨に固定されたスクリューのスクリューヘッド部に外嵌されるシャフトヘッド部と、前記シャフトヘッド部から伸びるシャフト本体部と、を有するシャフトと、
前記シャフトに固定されるハンドルと、
を備え、
前記シャフト本体部の軸方向に延在する中心軸は、前記シャフトヘッド部における前記スクリューヘッド部との嵌合方向に延在する中心軸に対して傾いている、手術器具。
【0064】
(付記2)
前記シャフトに対して前記ハンドルを着脱する着脱部を備える、付記1に記載の手術器具。
【0065】
(付記3)
前記シャフトヘッド部の中心軸に対する前記シャフト本体部の中心軸の角度を変更する角度変更部を備える、付記1又は2に記載の手術器具。
【0066】
(付記4)
付記1又は2に記載の手術器具と、
複数の前記手術器具を連結する連結機構と、
を備える、手術システム。
【0067】
(付記5)
付記1又は2に記載の手術器具を用いて椎骨又は骨盤を含む骨の位置を矯正する方法であって、
前記患者における矯正対象の第1の骨に第1のスクリューを固定する工程と、
前記第1の骨に対して上側に配置された第2の骨に第2のスクリューを固定する工程と、
前記第1のスクリューにおけるスクリューヘッド部の溝部にロッドを通した状態で固定する工程と、
前記手術器具のシャフトヘッド部を前記第1のスクリューのスクリューヘッド部に外嵌し、前記手術器具のハンドルを介して当該手術器具を前記患者の前側に向かって押し込みつつ回転させることで、前記第1の骨を前記患者の前側に向かって押し込みつつ回転させて当該第1の骨の位置を矯正する工程と、
前記ロッドを前記第2のスクリューにおけるスクリューヘッド部の溝部に通す工程と、
前記ロッドを前記第2のスクリューのスクリューヘッド部に固定する工程と、
を備える、矯正方法。
【符号の説明】
【0068】
1、11 手術器具
2 スクリュー、2a スクリューヘッド部、2b スクリュー本体部、2c 雌ねじ部、2d 溝部、2e 雄ねじ部
21 第1のスクリュー
22 第2のスクリュー
3 シャフト、3a シャフトヘッド部、3b シャフト本体部、3c 貫通部、3d 溝部、3e ローレット加工部、3f 溝部、3g 第1の部分、3h 第2の部分、3i 雄ねじ部
4 ハンドル
5 着脱部、5a リング部、5b クランプ部
6 ロッド
7 止めネジ
8 第2のドライバー
9 角度変更部
10 フレキシブルアーム、10a 本体アーム部、10b 第1のアーム部、10c 第2のアーム部、10d 固定ネジ、10e 第1の把持部、10f 第2の把持部
101 第1のスクリュー、101a スクリューヘッド部
102 第2のスクリュー、102a スクリューヘッド部
103 ロッド
104 把持手段
AX1 シャフト本体部の軸方向に延在する中心軸
AX2 シャフトヘッド部におけるスクリューヘッド部との嵌合方向に延在する中心軸
V1 第1の椎骨
V2 第2の椎骨
図1
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