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特開2024-8764ポリビニルアルコールフィルム及びこれから製造された光学フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008764
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ポリビニルアルコールフィルム及びこれから製造された光学フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
C08J5/18 CEX
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137302
(22)【出願日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】111125547
(32)【優先日】2022-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】591057290
【氏名又は名称】長春石油化學股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ウェン、シャンニー
【テーマコード(参考)】
4F071
【Fターム(参考)】
4F071AA29
4F071AH16
4F071AH19
4F071BB02
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC10
4F071BC12
4F071BC17
(57)【要約】
【課題】ポリビニルアルコールフィルムを提供する。
【解決手段】本発明は、ポリビニルアルコールフィルム及びこれから製造された光学フィルムに関する。前記ポリビニルアルコールフィルムは、ケン化度が95mole%を超えるポリビニルアルコール樹脂を含み、25℃、発振周波数1~100ラジアン/秒(rad/s)の範囲で貯蔵剪断弾性率(shear storage modulus、G’)が測定され、得られた貯蔵剪断弾性率及びこれに対応する発振周波数を底が10の対数値(log)を取った後、前記発振周波数の対数値に対する前記貯蔵剪断弾性率の対数値のスロープ値は0.035~0.086パスカル秒/ラジアン(Pa・s/rad)である。本発明のポリビニルアルコールフィルムは、同時にフィルム面が変形しにくく、延伸性が良い特性を有することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケン化度が95mole%を超えるポリビニルアルコール樹脂を含み、25℃、発振周波数1~100ラジアン/秒(rad/s)の範囲で貯蔵剪断弾性率(shear storage modulus、G’)が測定され、得られた貯蔵剪断弾性率及びこれに対応する発振周波数を底が10の対数値(log)を取った後、前記発振周波数の対数値に対する前記貯蔵剪断弾性率の対数値のスロープ値は0.035~0.086パスカル秒/ラジアン(Pa・s/rad)であるポリビニルアルコールフィルム。
【請求項2】
25℃、発振周波数1~100rad/s範囲で測定された貯蔵剪断弾性率は、7500~15000パスカル(Pa)である、請求項1に記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項3】
41.7~48.5%の膨潤度を有する、請求項1に記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項4】
前記発振周波数の対数値に対する前記貯蔵剪断弾性率の対数値のスロープ値と膨潤度との積は、1.46~4.17である、請求項3に記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項5】
前記発振周波数の対数値に対する前記貯蔵剪断弾性率の対数値のスロープ値と膨潤度との積は、1.46~4.11である、請求項4に記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項6】
前記ポリビニルアルコール樹脂のケン化度は、98mole%を超える、請求項5に記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項7】
前記ポリビニルアルコール樹脂の重合度は、1300~5200である、請求項6に記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項8】
前記ポリビニルアルコールフィルムの厚さは、55~80μmである、請求項7に記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリビニルアルコールフィルムから製造された光学フィルム。
【請求項10】
偏光膜である請求項9に記載の光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムに関し、特に、偏光膜の製造に使用されることができるポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコールフィルムは、優れた透明性、機械的強度、水溶性、加工適性などの特性を有する親水性ポリマーであるため、包装材料又は電子機器の光学フィルム、特に偏光膜に広く応用されてきた。
【0003】
ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光膜の製造に関して、通常、フィルム状に製膜されたポリビニルアルコール系樹脂の単層体に染色処理及び延伸処理を施すことにより、該ポリビニルアルコール系樹脂内のポリビニルアルコール系樹脂層に二色性物質が配向状態で吸着されることで、偏光膜を形成する。
【0004】
先行技術では、偏光膜の製造過程の延伸工程中にポリビニルアルコールフィルムがシワになりやすく、フィルムが互いに粘着してしまうという問題を改良してきた。例えば特許文献1では、パルスNMRを使用して温度80℃にて固体エコー法で測定し、1Hスピン-スピン緩和の自由誘導減衰曲線を緩和時間の短いものから長いものの順に波形分子してA成分、B成分、及びC成分という3つの成分に由来する3つ曲線に分け、これにより測定されたA成分の緩和時間は0.0083ミリ秒以上0.0093ミリ秒以下で、A成分の成分比が10%以上35%以下であるポリビニルアルコールフィルムが開示されている。特許文献1において、A成分の緩和時間及び成分比を上記所定の範囲内にさせることで、ポリビニルアルコールフィルムから製造された偏光膜に優れた偏光性能を持たせることができ、同時に偏光膜の製造時にフィルムにシワの発生及び粘着を防ぐことができる。
【0005】
また、ポリビニルアルコールフィルムを延伸する際に必要な高延伸性、及び加工後の変形等の問題となる残留応力を低減する方法について、特許文献2などの先行技術でも開示されている。特許文献2は、ポリビニルアルコール(A)と親水性基を有する変性共役ジエン系ポリマー(B)を使用して形成されたポリビニルアルコールフィルムであり、延伸加工性及び生産性に優れているため、該ポリビニルアルコールフィルムを加工して成形性に優れた延伸フィルム及び偏光膜が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許公開第111936899A号
【特許文献2】中国特許公開第114051513A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記ポリビニルアルコールフィルムの延伸性に劣る等の既知の問題以外にも、本発明者らは、製造されたポリビニルアルコールフィルムを外力なしで長時間放置すると、シワ又は曇り等の形態変化(本明細書では「変異」或いは「フィルム面の変異」ということにする。)が自発的に発生することを見出した。これにより、如何にしてポリビニルアルコールフィルムの変異問題を解決すると同時に、優れた延伸性を持たせるかが、本発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に基づいて、本発明は、以下の技術的手段を提示する。すなわち、本発明の主な目的の一つは、ケン化度が95mole%を超えるポリビニルアルコール樹脂を含み、25℃、発振周波数1~100ラジアン/秒(rad/s)の範囲で貯蔵剪断弾性率が測定され、得られた貯蔵剪断弾性率及びこれに対応する発振周波数を底が10の対数値(log)を取った後、前記発振周波数の対数値に対する前記貯蔵剪断弾性率の対数値のスロープ値は0.035~0.086パスカル秒/ラジアン(Pa・s/rad)であるポリビニルアルコールフィルムを提供することである。
【0009】
1つ又は複数の実施形態において、前記ポリビニルアルコールフィルムが25℃、発振周波数1~100rad/s範囲で測定された貯蔵剪断弾性率は、7500~15000パスカル(Pa)である。
【0010】
1つ又は複数の実施形態において、前記ポリビニルアルコールフィルムは、41.7~48.5%の膨潤度を有する。
【0011】
1つ又は複数の実施形態において、前記発振周波数の対数値に対する前記貯蔵剪断弾性率の対数値のスロープ値と膨潤度との積は、1.46~4.17である。
【0012】
1つ又は複数の実施形態において、前記発振周波数の対数値に対する前記貯蔵剪断弾性率の対数値のスロープ値と膨潤度との積は、1.46~4.11である。
【0013】
1つ又は複数の実施形態において、前記ポリビニルアルコール樹脂のケン化度は、98mole%を超える。
【0014】
1つ又は複数の実施形態において、前記ポリビニルアルコール樹脂の重合度は、1300~5200である。
【0015】
1つ又は複数の実施形態において、前記ポリビニルアルコールフィルムの厚さは、55~80μmである。
【0016】
本発明の別の目的は、前記ポリビニルアルコールフィルムから製造された光学フィルムを提供することである。
【0017】
1つ又は複数の実施形態において、前記光学フィルムは、偏光膜である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の技術的手段により、フィルム面の変異を生じにくく、延伸性に優れたポリビニルアルコールフィルムを得ることができる。したがって、本発明のポリビニルアルコールフィルムは、様々な用途に適し、特に、偏光膜などの光学フィルムに適している。
【0019】
本発明により開示される上記及び他の実施例を説明する。以下は、本発明の詳細な説明及び好ましい実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の実施形態は、本発明を過度に限定すると見なされるべきではない。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、本明細書で論じられる実施例を修正及び変化することができ、かかる修正や変化も本発明の範囲に網羅される。
【0021】
本発明の目的の一つは、ケン化度が95mole%を超えるポリビニルアルコール樹脂を含み、ポリビニルアルコールフィルムは25℃、発振周波数1~100ラジアン/秒(rad/s)の範囲で貯蔵剪断弾性率(G’)が測定され、得られた貯蔵剪断弾性率及びこれに対応する発振周波数を底が10の対数値を取った後、前記発振周波数の対数値に対する前記貯蔵剪断弾性率の対数値のスロープ値は0.035~0.086パスカル秒/ラジアンであるポリビニルアルコールフィルムを提供することである。
【0022】
本明細書で述べる「ケン化度」とは、JIS K 6726(1994)規格に記載される試験方法で得られた測定値を意味する。少なくとも1つの実施形態によれば、前記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、より良い光学特性を得るため、95mole%超であることが好ましく、例えば95mole%超、96mole%超、97mole%超、98mole%超又は99mole%超で、98mole%超であることがより好ましく、99mole%超が好適である。95mole%を超える場合、PVAの強度が増加し、その後の偏光膜工程での染色、固定処理の時、PVAフィルムが溶けにくく、偏光性能の高い偏光膜が容易に得られる。
【0023】
貯蔵剪断弾性率(G’)は、振動せん断力が加えられる過程で材料に貯蔵されるエネルギーの尺度であり、外部振動が終了した後、このエネルギーが変形回復に利用されることができる。G’の測定は、主に材料にせん断力を加え、一定の周波数で振動して加えられた力の方向を変更して、材料応答の変形振幅を測定する。さらに、本明細書で述べる「貯蔵剪断弾性率(G’)」とは、25℃、発振周波数1~100rad/sの範囲で測定された値を意味し、ここで25℃はレオメータの治具の温度を指す。本出願発明者らは、ポリビニルアルコールフィルムがスイープ発振モードにおいて、低周波数から高周波数の間で測定されたG’値の変化量は、ポリビニルアルコールフィルムの変異と関係している可能性があることを見出した。本出願発明者らは、測定された貯蔵剪断弾性率及びこれに対応する発振周波数を底が10の対数値(log)を取った後、前記発振周波数の対数値に対する前記貯蔵剪断弾性率の対数値のスロープ値(本明細書では「対数スロープ値」と呼ばれる)がフィルム面の変異及び伸び率に関係していることをさらに見出した。対数スロープ値が小さいほど、フィルムの変異は少なくなるが、対数スロープ値が小さすぎると、フィルムの伸び率が低下する。本明細書で述べる「対数スロープ値」とは、ポリビニルアルコールフィルムが上記のスイープ発振を経た後、少なくとも1rad/sと100rad/sの周波数を含むがこれらに限定されない2ポイントを取り、次にポイントを取った周波数の対数及び対応して測定されたG’値の対数を取った後、前記貯蔵剪断弾性率の対数値を縦軸、発振周波数の対数を横軸とし、グラフを作成した後、線形回帰によって計算されたスロープ値である。本出願の好ましい実施例において、1~100rad/sの周波数範囲内で、設定値は10rad/s、100.2rad/s、100.4rad/s、100.6rad/s、100.8rad/s、10rad/s、101.2rad/s、101.4rad/s、101.6rad/s、101.8rad/s及び10rad/sの計11ポイント(100.2を間隔として)の周波数を含むが、これらに限定されなく取って上記方法で対数スロープ値を計算した。線形回帰によるスロープ値の計算は、例えばMicrosoft Office Excel 2007、Microsoft Office Excel 2013、Microsoft Office Excel 2013であるが、これらに限定されない一般的な商用ソフトウェアを使用しても計算できる。
【0024】
少なくとも1つの実施形態によれば、前記ポリビニルアルコールフィルムが25℃、発振周波数1~100rad/sの範囲で測定された対数値のスロープ値は、下記値のうち任意の2つの間の範囲内の値、例えば0.035パスカル秒/ラジアン、0.038パスカル秒/ラジアン、0.041パスカル秒/ラジアン、0.044パスカル秒/ラジアン、0.047パスカル秒/ラジアン、0.05パスカル秒/ラジアン、0.053パスカル秒/ラジアン、0.056パスカル秒/ラジアン、0.059パスカル秒/ラジアン、0.062パスカル秒/ラジアン、0.065パスカル秒/ラジアン、0.068パスカル秒/ラジアン、0.071パスカル秒/ラジアン、0.074パスカル秒/ラジアン、0.077パスカル秒/ラジアン、0.08パスカル秒/ラジアン、0.083パスカル秒/ラジアン又は0.086パスカル秒/ラジアンで、0.035~0.086パスカル秒/ラジアンの範囲であることが好ましい。
【0025】
少なくとも1つの実施形態によれば、前記ポリビニルアルコールフィルムが25℃、発振周波数1~100rad/sの範囲で測定された貯蔵剪断弾性率は、下記値のうち任意の2つの間の範囲内の値、例えば7500パスカル、8000パスカル、8500パスカル、9000パスカル、9500パスカル、10000パスカル、10500パスカル、11000パスカル、11500パスカル、12000パスカル、12500パスカル、13000パスカル、13500パスカル、14000パスカル、14500パスカル又は15000パスカルで、7500~15000パスカルの範囲であることが好ましい。少なくとも1つの実施形態によれば、前記ポリビニルアルコールフィルムが25℃、発振周波数1rad/sの範囲で測定された貯蔵剪断弾性率は、下記値のうち任意の2つの間の範囲内の値、例えば7500パスカル、8000パスカル、8500パスカル、9000パスカル、9500パスカル、10000パスカル、10500パスカル、11000パスカル、11500パスカル、12000パスカルで、7500~12000パスカルの範囲であることが好ましい。少なくとも1つの実施形態によれば、前記ポリビニルアルコールフィルムが25℃、発振周波数100rad/sの範囲で測定された貯蔵剪断弾性率は、下記値のうち任意の2つの間の範囲内の値、例えば9500パスカル、10000パスカル、10500パスカル、11000パスカル、11500パスカル、12000パスカル、12500パスカル、13000パスカル、13500パスカル、14000パスカル、14500パスカル或いは15000パスカルで、9500~15000パスカルの範囲であることが好ましい。
【0026】
本明細書で述べる「フィルム面の変異」とは、ポリビニルアルコールフィルムを外力なしで長時間放置すると、シワ又は曇り等の形態変化が自発的に発生することを意味する。いかなる理論にも拘束されないが、おそらくフィルム面の変異は、フィルム内の分子の再配列、一部の成分の凝集による局所的な組成の不均一性で引き起こされる。おそらくフィルム製造工程でキャストドラム及び加熱ローラが加えるせん断力の一部は、フィルムに吸収されて蓄積されるため、フィルムを外力なしで長期間放置すると、応力は徐々に解放される。対数値のスロープが小さいほど、貯蔵剪断弾性率(G’)の変化が小さく、フィルム内の分子間構造が安定しており、応力を解放してフィルム内の分子の再配列を促進することは容易ではなく、フィルムは変異しにくい。
【0027】
本明細書で述べる「伸び率」とは、常温下、一定の間隔の治具でポリビニルアルコールフィルムを固定し、一定の引張速度で前記ポリビニルアルコールフィルムを引っ張り、(前記ポリビニルアルコールフィルムの破断時の引張伸度/治具固定の間隔)×100%が伸び率である。特定の理論に拘束されることなく、ポリビニルアルコールフィルムの分子間相互作用が強いほど、延伸が困難になり、すなわち、伸び率が低下する。おそらく対数値のスロープが小さいと、分子間絡み合いによるフィルム内の分子間の相互作用が強くなり、構造が安定し、伸び率を低下させる。
【0028】
本明細書で述べる「フィルム切れ」とは、一定の長さのポリビニルアルコールフィルムに必要な加工工程(例えば偏光膜の製造が、これに限定されない)を実施し、加工工程中の一定の長さのポリビニルアルコールフィルムにフィルム切れの状況の有無を観察することを意味する。特定の理論に拘束されることなく、分子間の相互作用が強いとフィルムは伸びにくく、加工過程でフィルム切れの現象が発生しやすい。これとは対照的に、分子間の相互作用が弱すぎると、フィルムの延伸性が良くなるが、加工過程でフィルムの機械的強度が低く、フィルムの端部又は欠陥部から切れやすいため、フィルム切れの現象が容易に発生してしまう。したがって、フィルム内の分子間の相互作用が大きすぎるとき或いは小さすぎるとき、フィルム切れの発生を招いてしまう。
【0029】
本発明において、前記ポリビニルアルコールフィルムは、下記値のうち任意の2つの間の範囲内の値、例えば41.7%、42.0%、42.5%、43%、43.5%、44%、44.5%、45.0%、45.5%、46.0%、46.5%、47.0%、47.5%、48.0%又は48.5%で、41.7~48.5%の膨潤度を有する。「膨潤」とは、溶媒分子が高分子の非結晶領域の内部に拡散することで、材料の体積を膨脹させる現象をいう。本明細書で述べる「膨潤度」とは、フィルムの吸水率を測定し、すなわち、ポリビニルアルコールフィルムを30℃の蒸留水に20分間浸した後、前記ポリビニルアルコールフィルムを測定した重量をW1とし、次に浸漬したポリビニルアルコールフィルムを120℃で2時間乾燥させた後、測定した重量をW2とし、(W1-W2)/W1を計算して得られた値のパーセンテージを意味する。膨潤度は、ポリビニルアルコールフィルム全体に占め高分子の非結晶領域の割合の指標を表し、膨潤度の値が大きいほど、非結晶領域の割合が大きいことを示し、材料の引張応力を低下させ、延伸性を向上させることができる。
【0030】
上記の内容をまとめると、対数スロープ値と膨潤度の両方は、フィルムの延伸性に影響を及ぼす要因であることが分かり、したがって2つの値を乗算すると、柔軟性指数(すなわち、柔軟性指標=対数スロープ値×膨潤度)が得られる。この柔軟性指標が特定の値の範囲内に維持された場合、前記ポリビニルアルコールフィルムが理想的な伸び率を有し、かつフィルム切れが起きないことを見出した。少なくとも1つの実施形態によれば、前記対数スロープ値と膨潤度との積は、下記値のうち任意の2つの間の範囲内の値、例えば1.41、1.47、1.53、1.59、1.65、1.71、1.77、1.83、1.89、1.95、2.01、2.07、2.13、2.19、2.25、2.31、2.37、2.43、2.49、2.55、2.61、2.67、2.73、2.79、2.85、2.91、2.97、3.03、3.09、3.15、3.21、3.27、3.33、3.39、3.45、3.51、3.57、3.63、3.69、3.75、3.81、3.87、3.93、3.99、4.05又は4.17で、1.41~4.17であることが好ましく、1.46~4.11であることがより好ましい。
【0031】
一方、前記ポリビニルアルコールフィルムの製造方法は、(a)ポリビニルアルコール系樹脂を加熱溶解し、前記ポリビニルアルコール系樹脂の濃度を調整して、ポリビニルアルコール流延溶液を形成する溶解工程、(b)前記ポリビニルアルコール流延溶液をキャストドラムに流延し、前記キャストドラムから剥離した後、予備ポリビニルアルコールフィルムを得る流延工程、(c)予備ポリビニルアルコールフィルムを複数の加熱ローラ及びオーブンで乾燥した後、ポリビニルアルコールフィルムを得る乾燥工程、及び(d)ポリビニルアルコールフィルムを温湿度調節器に入れて、温度と湿度を調整する温湿度調整工程を含む。
【0032】
[溶解工程について]
少なくとも1つの実施形態によれば、溶解工程で使用されるポリビニルアルコール樹脂は、ビニルエステル系樹脂モノマーによって重合され、ポリビニルエステル系樹脂が形成されてからケン化反応を行って、好ましくは95mole%を超えるケン化度を有するポリビニルアルコール樹脂を得る。前記ビニルエステル系樹脂モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル又はオクト酸ビニル等のビニルエステル類、或いはこれらの組み合わせが挙げられ、本発明はこれらに限定されない。また、オレフィン類化合物又はアクリレート誘導体と前記ビニルエステル系樹脂モノマーとの共重合によって形成されるコポリマーも使用でき、ここで、前記オレフィン類化合物としては、エチレン、プロピレン又はブテンなどが挙げられ、本発明はこれらに限定されない。前記オレフィン類化合物の添加量は、2~4mol%、例えば2mol%、2.5mol%、3mol%、3.5mol%又は4mol%などであり得るが、これらに限定されない。前記アクリレート誘導体としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル又はアクリル酸n-ブチルなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。本明細書で述べる「重合度」とは、JIS K 6726(1994)に記載される試験方法で得られた測定値を意味する。少なくとも1つの実施形態によれば、前記ポリビニルアルコール樹脂の重合度は、下記値のうち任意の2つの間の範囲内の値、例えば1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500、4600、4700、4800、4900、5000、5100又は5200で、1300~5200の範囲であることが好ましく、2000~3000の範囲であることがより好ましい。
【0033】
少なくとも1つの実施形態によれば、溶解工程は、ポリビニルアルコール系樹脂、溶媒及び可塑剤を攪拌しながら温度を少なくとも130℃に上げ、均一に溶解した後、樹脂濃度を20~50%に調整して、ポリビニルアルコール流延溶液を得る。少なくとも1つの実施形態によれば、前記ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を溶解するための温度は、少なくとも130℃であることが好ましく、具体的には例えば少なくとも130℃、少なくとも140℃又は少なくとも150℃などである。少なくとも1つの実施形態によれば、前記ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の濃度は、20~50%であることが好ましく、具体的には例えば20%、25%、30%、35%、40%、45%又は50%である。樹脂濃度が低すぎるとフィルムの乾燥負荷が高くなり、逆に樹脂濃度が高すぎると粘度が高くなり製膜が困難になる。
【0034】
本発明の上記溶解工程で使用される溶媒は、ポリビニルアルコール樹脂を溶解できるものでよい、特に限定されない。溶媒として、例えば水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどが挙げられるが、これらに限定されなく、上記の溶媒は、1種を単独で使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。環境及び経済的側面を考慮すると、溶媒として水を使用することが好ましい。
【0035】
本発明のポリビニルアルコールフィルムの調製中、前記ポリビニルアルコール流延溶液は好ましくは可塑剤を含み、可塑剤に関しては、多価アルコールであることが好ましく、例えばエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセロール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどであるがこれらに限定されない。これらの中で、グリセリンであることが好ましく、上記可塑剤のうちの1種又は2種以上を使用することができる。
【0036】
[流延工程について]
少なくとも1つの実施形態によれば、流延工程は、前記ポリビニルアルコール流延溶液を脱泡(静置脱泡法又はベントホールを有する多軸押出機を使用して脱泡でき、例えばダブルスクリュー押出機で脱泡することがこれに限定されない)した後、溶液温度を少なくとも95℃に制御してからTダイリップから吐出し、キャストドラム(流延ドラムとも呼ばれる)、エンドレスベルトなどの支持体としてのキャストドラムに流延して製膜して、予備ポリビニルアルコールフィルムを得る。少なくとも1つの実施形態によれば、前記ポリビニルアルコール流延溶液の温度は、少なくとも80℃であることが好ましく、例えば少なくとも80℃、少なくとも85℃、少なくとも90℃、少なくとも95℃又は少なくとも99℃である。少なくとも1つの実施形態によれば、前記キャストドラムの温度は、下記値のうち任意の2つの間の範囲内の値、例えば85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃又は95℃で、85~95℃の範囲であることが好ましい。
【0037】
[乾燥工程について]
少なくとも1つの実施形態によれば、乾燥工程は、前記予備ポリビニルアルコールフィルムをキャストドラムから剥離した後、予備ポリビニルアルコールフィルムの上面と下面を複数の加熱ローラで接触乾燥させた後、次に前記予備ポリビニルアルコールフィルムの上面と下面をオーブンで熱風乾燥させた後、ポリビニルアルコールフィルムを得る。少なくとも1つの実施形態によれば、前記複数の加熱ローラは、2~30本であり得、例えば2、5、10、15、20、25又は30本であるがこれらに限定されず、15本であることが好ましい。
【0038】
前記乾燥工程中、複数の加熱ローラの温度は、高いものから低いものへと徐々に逓減し、最初の加熱ローラが全ての加熱ローラの中で温度が最も高いローラであり、最後の加熱ローラの温度が全ての加熱ローラの中で最も低い。少なくとも1つの実施形態によれば、前記最初の加熱ローラの温度は、下記値のうち任意の2つの間の範囲内の値、例えば80℃、85℃、90℃、95℃又は100℃で、80~100℃の範囲であることが好ましい。少なくとも1つの実施形態によれば、前記最後の加熱ローラの温度は、下記値のうち任意の2つの間の範囲内の値、例えば30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃又は60℃で、30℃~60℃の範囲であることが好ましい。
【0039】
少なくとも1つの実施形態によれば、前記オーブンは、好ましくはフローティングオーブンを用い、温度は40℃~120℃の範囲に制御され、前記オーブンの全体的な平均温度は下記値のうち任意の2つの間の範囲内の値、例えば70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃又は80℃で、70℃~80℃の範囲であることが好ましい。
【0040】
[温湿度調整工程について]
本出願の好ましい実施態様によれば、前記ポリビニルアルコールフィルムは、上記乾燥工程を経た後、さらに温湿度調節器に入れて温度と湿度を調整する。少なくとも1つの実施形態によれば、前記温湿度調節器の温度は、下記値のうち任意の2つの間の範囲内の値、例えば30℃、35℃、40℃又は45℃で、30~45℃の範囲であることが好ましい。少なくとも1つの実施形態によれば、前記温湿度調節器の相対湿度は、下記値のうち任意の2つの間の範囲内の値、例えば50%、55%、60%、65%、70%又は75%で、50~75%の範囲であることが好ましい。少なくとも1つの実施形態によれば、前記ポリビニルアルコールフィルムを前記温湿度調節器に静置する時間は、下記値のうち任意の2つの間の範囲内の値、例えば5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分又は40分で、5~40分の範囲であることが好ましい。
【0041】
少なくとも1つの実施形態によれば、得られたポリビニルアルコールフィルムの厚さは、下記値のうち任意の2つの間の範囲内の値、例えば55μm、60μm、65μm、70μm、75μm又は80μmで、55~80μmの範囲であることが好ましい。上記の値は単なる例であり、限定するものではない。また、薄型偏光膜を製造する場合、ポリビニルアルコールフィルムの厚さは50μm以下であり得、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは25μm以下である。
【0042】
他の態様において、本発明のポリビニルアルコールフィルムは、光学フィルムとして製造することができる。本明細書で述べる「光学フィルム」は、偏光膜、位相差フィルム、視野角拡大フィルム或いは輝度上昇フィルムなどであり得、偏光膜であることが好ましい。
【実施例0043】
以下では、実施例を参照しつつ本発明を詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は、本発明の理解を助けることを意図し、本発明の範囲を如何ようにも限定することを意図しないことを理解されたい。
【0044】
ポリビニルアルコールフィルムの製造:まず、ポリビニルアルコール系樹脂を溶解バレルで加熱溶融してポリビニルアルコール流延溶液を形成し、次に前記ポリビニルアルコール流延溶液をTダイリップ及びキャストドラムによって押し出して成形し、予備ポリビニルアルコールフィルムを形成し、さらに複数の加熱ローラ及びオーブンを通じて乾燥させて、ポリビニルアルコールフィルムを得る。
【0045】
本実施例および比較例におけるポリビニルアルコールフィルムを製造する工程は、1つ又は複数の工程中のパラメータに差があり、下記表1に詳細に示され、主に以下の工程を含む。すなわち、
1.まず、溶解バレルにケン化度>99.9mole%、重合度2000~3000の範囲内のポリビニルアルコール樹脂1800kg、水4000kg、可塑剤グリセリン180kgをそれぞれ加え、攪拌しながら温度を130℃に上げ、ミキサーで均一に溶解した後、水を加えて樹脂濃度を30.0%に調整して、製膜原液を得る工程、
2.前記製膜原液をダブルスクリュー押出機で脱泡した後、Tダイリップから吐出し、回転するキャストドラムに流延して、乾燥させて製膜する工程、
3.初期成形されたフィルムをキャストドラムから剥離した後、フィルムの上面と下面を15本の加熱ローラで接触乾燥させる工程(1本目の加熱ローラは、全ての加熱ローラの中で最も温度が高いローラで、後続の加熱ローラの温度が徐々に引き下げ、15本目の加熱ローラの温度が最も低くなる。)、
4.次に、フィルムの上面と下面を乾燥温度40~120℃の範囲のフローティングオーブンで熱風乾燥させる工程、及び、
5.最後に、乾燥したフィルムを温湿度調節器に入れて処理して、ポリビニルアルコールフィルム成形品を得る工程。



















【0046】
【表1】
【0047】
上記実施例1~11及び比較例1~5で得られたポリビニルアルコールフィルムは、以下の分析試験を実施し、使用した分析試験の方法を以下に詳細に説明する。
【0048】
<発振周波数の対数値に対する貯蔵剪断弾性率の対数値のスロープ値分析>
機器:TA機器のDHR HR-20レオメータ
サンプルの作製:ポリビニルアルコールフィルムを直径2.5cmの円形に切断した後、温度30℃、相対湿度70%の環境中に5分間静置する。
【0049】
試験方法:スイープ発振モードで測定し、治具によって検出されたトルク及び角変位、及び応力とひずみ情報を記録する。ここでスイープ発振は、モータがゼロ点で時計回り/反時計回りに回転する。
【0050】
試験条件:
モード:スイープ発振
周波数範囲:0.01~400rad/s
ひずみ:1%、
治具:フラットクランプ(直径2.5cm)、固定垂直力1N
治具温度:25℃
周囲湿度:相対湿度55~65%。
【0051】
データ変換:レオメータ0.01~400rad/sのスイープ結果で、1~100rad/sの周波数から得られたデータを取って計算する。詳しく言えば、周波数1~100rad/sの範囲で100.2を間隔として、設定値は10rad/s、100.2rad/s、100.4rad/s、100.6rad/s、100.8rad/s、10rad/s、101.2rad/s、101.4rad/s、101.6rad/s、101.8rad/s以及び10rad/sの計11ポイントの周波数を取ってから各ポイントを取った周波数と対応するG’値の対数を取った後、次に前記G’の対数値を縦軸、前記発振周波数の対数値を横軸にグラフを作成した後、線形回帰を行ってスロープ値を計算する。
【0052】
<膨潤度分析>
サンプルの作製:ポリビニルアルコールフィルムを直径2.5cmの円形フィルムサンプルに切断する。
【0053】
試験方法:
i.切断されたフィルムサンプルを30℃、500mLの水中に入れて20分間浸し、膨潤させ、
ii.膨潤したフィルムサンプルをニッケルで取り出し、前記フィルムサンプルの両面をそれぞれ4枚の実験室用無塵紙(アメリカクリーンホース社製GBFA-00000000001)で軽く拭き、2回繰り返し、
iii.ステップiiのフィルムサンプルを1枚の実験室用無塵紙に平らにし、前記フィルムサンプルの上を1枚の無塵紙で覆い、次に、4つの積み重ねられたステンレス鋼のサンプルパン(1つ当たり30.5±1.5g程度)で前記フィルムサンプルを押し、無塵紙に前記フィルムサンプル表面の水分を30秒間吸収させ、
iv.ステップiiiで吸湿したフィルムサンプルを取り出し、裏返して別の新しいきれいな無塵紙の上に置き、前記フィルムサンプルの上を別の新しい無塵紙で覆い、4つの積み重ねられたステンレス鋼のサンプルパン(1つ当たり30.5±1.5g程度)で前記フィルムサンプルを押し、無塵紙に前記フィルムサンプル表面の水分を30秒間吸収させ、表面の水分を除去し、
v.ステップivで表面の水分が除去されたフィルムサンプルを取り出し、計量して重量(W1)を得、
vi.ステップvで計量したフィルムサンプルを120℃のオーブンに入れて2時間乾燥させた後、乾燥したフィルムサンプルを取り出し、デシケーターに5分間静置して室温に戻らせ、次に前記フィルムサンプルを計量して、重量(W2)を得る。
【0054】
膨潤度の計算:前記フィルムサンプルの膨潤重量(W1)、乾燥重量(W2)を次の式で計算した結果は、フィルムサンプルの膨潤度である。
【0055】
膨潤度(%)=(W1-W2)/W1×100
【0056】
<柔軟性指標>
次の式により計算された結果は、フィルムサンプルの柔軟性指標である。
【0057】
柔軟性指標=膨潤度×対数スロープ値
【0058】
<フィルム面の評価>
サンプルの作製:ポリビニルアルコールフィルムを流れ方向40cm±5%程度、横方向2.8m±5%のサイズのフィルムサンプルに切断する。
【0059】
試験条件:フィルムサンプルをアルミホイルバッグに入れて密封してから前記アルミホイルバッグを常温キャビネット(23~27℃)に入れて1ヶ月以上保管する。
【0060】
評価基準:フィルムサンプルのフィルム面にシワ及び/又は面積が1cm×1cmを超える曇りがないか確認する。フィルムサンプルのフィルム面にシワ及び曇りがない場合、「O」と評価され、フィルムサンプルのフィルム面にシワ又は曇りというフィルム面の変異がある場合、「X」と評価される。
【0061】
<伸び率>
機器:引張試験機HT-9102
サンプルの作製:ポリビニルアルコールフィルムを150mm(MD方向)×50mm(TD方向)のサイズに切断した後、20℃、相対湿度60%の環境に静置し、6時間平衡化させる。
【0062】
試験条件:温度23~27℃、相対湿度53~57%の環境で試験する。治具で10cmの間隔を置いてフィルムサンプルを固定してから1m/minの引張速度で引っ張る。
【0063】
データ処理:フィルムサンプルの厚さ、長さ、幅の情報をコンピューターに入力し、システムはフィルムサンプルの破断伸度を自動的に換算し、次の式によりフィルムサンプルの伸び率を計算する。
【0064】
伸び率(%)=破断伸び(cm)/10cm×100%
【0065】
<フィルム切れの評価>
試験条件:ポリビニルアルコールフィルムサンプルを5000m連続で引っ張って偏光膜を製造する。偏光膜の調製方法は、次の通りである。すなわち、
i.ポリビニルアルコールフィルムを30℃の純水で満たされた膨潤タンクに浸し、フィルム面を水洗して膨潤させ、機械方向(MD)に沿ってフィルムを元の長さの1.2倍に延伸し、
ii.予備延伸フィルムを、温度30℃、0.37g/Lのヨウ素と18.5g/Lのヨウ化カリウムを含む水溶液の染色タンクに浸して染色すると共に前記フィルムを機械方向に元の長さの3.4倍に延伸し、
iii.2回延伸及び染色後のフィルムを温度55°C、55g/Lのホウ酸とヨウ化カリウムを含む水溶液の延伸タンクに浸し、次に前記フィルムを機械方向に沿って元の長さの6倍に延伸し、
iv.3回延伸したフィルムを55g/Lのヨウ化カリウムを含む水溶液に浸して、フィルム面に残留しているヨウ素溶液とホウ酸で洗浄し、
v.洗浄したフィルムを60℃のオーブンで5分間乾燥させてから、偏光膜を完成させた。
【0066】
評価基準:調製プロセスでフィルムサンプルにフィルム切れの状況があるかどうかを観察する。工程中にフィルムが切れていない場合、「O」と評価され、工程中にフィルムが切れている場合、「X」と評価される。
【0067】
実施例1~11及び比較例1~5のポリビニルアルコールフィルムについて、上記分析試験を実施した後に得られた結果を下表2に整理した。
【0068】
【表2】
【0069】
表3から分かるように、実施例1~11のフィルムは、前記発振周波数の対数値に対する貯蔵剪断弾性率の対数値のスロープ値は、0.035~0.086Pa×s/radの範囲にあるため、これらの等フィルムが優れたフィルム面の評価(すなわち、フィルム面に変異がない)及び500%を超える伸び率を同時に有することができる。特に実施例7~9の伸び率は、520%を超えている。対照的に、比較例1~5のフィルムの対数スロープ値は、0.035~0.086Pa×s/radの範囲外で、これらのフィルムが良好なフィルム面の評価及び500%を超える伸び率を同時に有することができない。詳しく言えば、比較例1及び比較例5のフィルム面にシワ及び曇り現象があり、比較例2~4のフィルムの伸び率は500%未満であった。また、偏光板工程で破損して不良のフィルム切れ評価が与えられた比較例1~5と比較して、本出願の実施例1~11は優れたフィルム切れの評価を有していたことが分かる。
【0070】
上記をまとめ、本発明の技術的手段により、ポリビニルアルコールフィルムは25℃、発振周波数1~100rad/sの範囲でG’値が測定され、得られた貯蔵剪断弾性率及びこれに対応する発振周波数を底が10の対数値(log)を取った後、前記発振周波数の対数値に対する前記貯蔵剪断弾性率の対数値のスロープ値は0.035~0.086Pa・s/radで、同時に変形しにくく、延伸性が良いポリビニルアルコールフィルムを得ることができる。
【0071】
本明細書において提供される全ての範囲は、所定の範囲内の各特定の範囲、及び所定の範囲間のサブ範囲の組み合わせを含むことが意図されている。また、本明細書に明確に記載されるあらゆる範囲は、特に明示されていない限り、その終点を含む。したがって、1~5の範囲には、特に1、2、3、4、および5と、2~5、3~5、2~3、2~4、1~4などのサブ範囲が含まれる。
【0072】
本明細書で引用される全ての刊行物および特許出願は、参照により本明細書に組み込まれ、ありとあらゆる目的のために、個々の刊行物又は特許出願は、参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されている。本明細書と、参照により本明細書に組み込まれている刊行物または特許出願との間に矛盾がある場合、本明細書が優先される。
【0073】
本明細書で使用される「備える」、「有する」及び「含む」という用語は、オープンエンドで非限定的な意味を有する。「1つの」および「該」という用語は、文脈上明らかに単数形であることが示されない限り、複数形も同様に含むことを意図する場合がある。「1つ以上」という用語は、「少なくとも1つ」を意味し、したがって単一の特徴または混合物/組み合わせを含むことができる。
【0074】
明細書記載の実施例以外で、又は特に明記されていない限り、成分の量及び/又は反応条件を表す全ての数値は、全ての場合に「約」という用語で修飾できる。これは、示された数値の±5%以内を意味する。本明細書で使用する場合、「基本的に含まない」又は「実質的に含まない」という用語は、特定の特徴が約2%未満であることを意味する。本明細書に明確に記載されている全ての要素又は特徴は、特許請求の範囲から否定的に除外することができる。