IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 上田日本無線株式会社の特許一覧

特開2024-8768対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラム
<>
  • 特開-対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラム 図1
  • 特開-対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラム 図2
  • 特開-対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラム 図3
  • 特開-対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラム 図4
  • 特開-対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラム 図5
  • 特開-対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラム 図6
  • 特開-対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラム 図7
  • 特開-対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラム 図8
  • 特開-対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラム 図9
  • 特開-対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラム 図10
  • 特開-対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラム 図11
  • 特開-対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラム 図12
  • 特開-対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラム 図13
  • 特開-対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラム 図14
  • 特開-対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008768
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20240112BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20240112BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B21/02
A61B5/00 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155153
(22)【出願日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2022110852
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000189486
【氏名又は名称】上田日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】西沢 昇
(72)【発明者】
【氏名】芝田 宏靖
(72)【発明者】
【氏名】高橋 修一
【テーマコード(参考)】
4C117
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
4C117XB04
4C117XE30
4C117XE42
4C117XE52
4C117XE62
4C117XJ42
4C117XJ45
5C086AA22
5C086AA51
5C086AA52
5C086BA01
5C086CA06
5C086CA12
5C086CA21
5C086CA22
5C086CA23
5C086CA25
5C086CB16
5C086DA04
5C086EA13
5C086FA06
5C086FA17
5C087AA02
5C087AA10
5C087AA37
5C087BB11
5C087BB20
5C087BB74
5C087DD03
5C087DD24
5C087EE10
5C087FF01
5C087FF03
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG31
5C087GG35
5C087GG36
5C087GG51
5C087GG70
(57)【要約】
【課題】低コストに且つ高精度に在宅中の対象者の身体状況を監視しつつ、異常の発生を見守り者に通報可能な対象者見守りシステム等を提供する。
【解決手段】対象者宅MHの出入口EE近傍に設置したFMCW方式の電波式センサ送信機10により対象者の外出及び帰宅を検知して、対象者が在宅状態にあるか否かを管理して、在宅状態の時に対象者に異常が検知された場合に通報受信装置30に緊急通報メッセージを送信する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体状況の見守り対象となる対象者に発生した異常を検知するとともに、異常を検知した場合に、見守り者に通報する対象者見守りシステムであって、
前記対象者の住居内に設置され、所定の電磁波を送信しつつ、前記電磁波の照射範囲内に所在する物体からの反射波を受信することにより、当該照射範囲内に所在する前記対象者までの(1)距離、(2)角度及び(3)距離の微少変位の少なくとも1を検知して、当該対象者の身体状況を示す対象者データを生成する電波式センサ送信機と、
前記電波式センサ送信機にて生成された対象者データ及び自機の生成した前記対象者データの少なくとも一方に基づき、当該対象者に発生した異常を検知して、前記見守り者に対する通報を行う対象者見守り装置と、
を有し、
前記対象者見守り装置が、
前記対象者住居の出入口近傍に設置された第1電波式センサ送信機から当該出入口を介した対象者の外出及び帰宅の状況を示す第1対象者データを少なくとも取得する取得手段と、
前記取得した第1対象者データに基づき、当該対象者が、在宅状態にあるか外出状態にあるかを特定しつつ、管理する管理手段と、
自機の設置された居室であって、対象者が日常的に利用する居室内に電磁波を送信するとともに、当該電磁波の当該居室内に存在する物体からの反射波を受信することにより、当該居室内に所在する対象者までの(1)距離、(2)角度、(3)当該対象者までの距離の微少変位、及び、(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の少なくとも1を検知し、当該検知された(1)距離、(2)角度、(3)距離の微少変位、及び、(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の少なくとも1に基づき、当該対象者の身体状況を示す第2対象者データを生成する生成手段と、
(a1)前記対象者住居内において対象者が日常的に利用する居室に設置された電波式センサ送信機であって、前記第1電波式センサ送信機とは異なる第2電波式センサ送信機にて生成され、該当する居室内に所在する対象者の身体状況を示す第3対象者データ及び(a2)前記生成した第2対象者データの少なくとも一方と、(b1)予め設定され、又は、(b2)所定期間における(1)距離、(2)角度、(3)距離の微少変位及び(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の検知結果の履歴に基づき定められるパラメータと、に基づき、前記対象者に異常が発生したか否かを判定する判定手段と、
前記管理手段により当該対象者が在宅しているものと特定されている状態にて当該対象者に異常が発生したものと判定された場合に、前記見守り者の所持する通報受信装置に通報を行う通報手段と、
を備える対象者見守りシステム。
【請求項2】
前記第2電波式センサ送信機及び対象者見守り装置の少なくとも一方が、
(a)第1の時間間隔にて前記電磁波の送受信を繰り返しつつ、検知された前記対象者までの距離及び角度の少なくとも一方の変化量に従い、当該対象者の動作及び姿勢変化の少なくとも一方に基づく体動を、前記第1の時間間隔にて検知する存在確認モードと、(b)前記存在確認モードにて対象者の存在が確認された後の状態において前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔にて前記電磁波の送受信を繰り返しつつ、検知された前記距離の微少変位に従い、当該対象者の生体微動を前記第2の時間間隔にて検知する微動検知モードと、を切り換えつつ動作し、(1)前記存在確認モードによる動作中に検知される前記対象者の体動が、予め定められた期間以上、所定の閾値未満の状態に維持された場合に、前記微動検知モードによる動作に移行する一方、(2)前記微動検知モードによる動作中に検知される前記対象者の体動が、前記閾値以上となった場合に、前記存在確認モードによる動作に移行する、請求項1に記載の対象者見守りシステム。
【請求項3】
前記第2電波式センサ送信機及び対象者見守り装置の少なくとも一方が、
自機に発生した振動を検知する振動検知手段をさらに有し、
前記微動検知モードによる動作中に所定値以上の振動が検知された場合に、当該振動の検知されている期間中に検知された前記距離の微少変位の検知結果を除外しつつ、前記生体微動を検知する、請求項2に記載の対象者見守りシステム。
【請求項4】
前記第1及び第2電波式センサ送信機が、
前記対象者の発する赤外線を検知する赤外線検知手段をさらに有し、
(1)前記赤外線検知手段によって対象者の存在が検知されている期間中にのみ前記電磁波の送受信及び前記対象者データの生成を行う一方、(2)前記赤外線検知手段によって対象者の存在が検知されていない期間に関しては前記電磁波の送受信及び前記対象者データの生成を停止する請求項1~3のいずれか1項に記載の対象者見守りシステム。
【請求項5】
前記第1電波式センサ送信機が、
前記出入口近傍のエリアに複数の検知エリアを設定しつつ、少なくとも当該エリア内に所在する対象者までの角度を検知することにより、当該対象者が前記複数の検知エリアのいずれに所在するのかを特定するとともに、当該対象者の移動方向を特定し、当該特定した移動方向に基づき、当該出入口を介した対象者の外出及び帰宅を検知する、請求項1~3のいずれか1項に記載の対象者見守りシステム。
【請求項6】
前記第1電波式センサ送信機が、
前記出入口近傍のエリアに複数の検知エリアを設定しつつ、少なくとも当該エリア内に所在する対象者までの角度を検知することにより、当該対象者が前記複数の検知エリアのいずれに所在するのかを特定するとともに、当該対象者の移動方向を特定し、当該特定した移動方向に基づき、当該出入口を介した対象者の外出及び帰宅を検知する、請求項4に記載の対象者見守りシステム。
【請求項7】
前記第1電波式センサ送信機が、
前記出入口近傍の天井部又は通路と平行になる壁部に設置されるとともに、床面から予め定められた距離範囲内に存在する前記物体からの反射波に基づく検知結果を除外しつつ、前記対象者がいずれの検知エリア内に所在するのかを特定する、請求項5に記載の対象者見守りシステム。
【請求項8】
前記第1電波式センサ送信機が、
前記出入口近傍の天井部又は通路と平行になる壁部に設置されるとともに、床面から予め定められた距離範囲内に存在する前記物体からの反射波に基づく検知結果を除外しつつ、前記対象者がいずれの検知エリア内に所在するのかを特定する、請求項6に記載の対象者見守りシステム。
【請求項9】
前記第2電波式センサ送信機及び対象者見守り装置の少なくとも一方が、
前記検知された距離、角度及び距離の微少変位に基づき、前記パラメータを設定する設定手段をさらに有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の対象者見守りシステム。
【請求項10】
前記第2電波式センサ送信機及び対象者見守り装置の少なくとも一方が、
(1)前記生成手段及び前記第2電波式センサ送信機の少なくとも一方によって検知された距離、角度及び距離の微少変位の少なくとも1に基づき、前記パラメータを設定する設定手段をさらに有する、請求項4に記載の対象者見守りシステム。
【請求項11】
前記第2電波式センサ送信機及び対象者見守り装置の少なくとも一方が、
(1)前記生成手段及び前記第2電波式センサ送信機の少なくとも一方によって検知された距離、角度及び距離の微少変位の少なくとも1に基づき、前記パラメータを設定する設定手段をさらに有する、請求項5に記載の対象者見守りシステム。
【請求項12】
前記設定手段が、
所定の期間中に検知された(1)前記対象者まで距離の検知履歴に基づき、距離に関する前記パラメータを設定するとともに、(2)距離、角度及び距離の微少変位の検知履歴に基づき、前記滞在時間数又は不在時間数に関するパラメータを設定する、請求項9に記載の対象者見守りシステム。
【請求項13】
前記設定手段が、
所定の期間中に検知された(1)前記対象者まで距離の検知履歴に基づき、距離に関する前記パラメータを設定するとともに、(2)距離、角度及び距離の微少変位の検知履歴に基づき、前記滞在時間数又は不在時間数に関するパラメータを設定する、請求項10又は11に記載の対象者見守りシステム。
【請求項14】
前記設定手段が、
前記生成手段及び前記第2電波式センサ送信機の少なくとも一方にて前記所定の期間内に検知された前記対象者までの(1)距離、(2)角度及び(3)当該対象者までの距離の微少変位の少なくとも1の検知履歴に基づき、当該対象者の1日の行動パターンを特定しつつ前記パラメータの値を設定する、請求項12に記載の対象者見守りシステム。
【請求項15】
前記設定手段が、
前記生成手段及び前記第2電波式センサ送信機の少なくとも一方にて前記所定の期間内に検知された前記対象者までの(1)距離、(2)角度及び(3)当該対象者までの距離の微少変位の少なくとも1の検知履歴に基づき、当該対象者の1日の行動パターンを特定しつつ前記パラメータの値を設定する、請求項13に記載の対象者見守りシステム。
【請求項16】
身体状況の見守り対象となる対象者に発生した異常を検知するとともに、異常を検知した場合に、見守り者に通報する対象者見守り装置であって、
前記対象者の住居出入口近傍に設置され、当該出入口近傍のエリアに電磁波を送信するとともに、当該電磁波の当該出入口近傍に存在する物体からの反射波を受信して、少なくとも当該エリア内に所在する対象者までの角度を検知することにより、当該出入口を介した対象者の外出及び帰宅を検知する第1電波式センサ送信機から当該対象者の外出及び帰宅の状況を示す第1対象者データを少なくとも取得する取得手段と、
前記取得した第1対象者データに基づき、当該対象者が、在宅状態にあるか外出状態にあるかを特定しつつ、管理する管理手段と、
自機の設置された居室であって、対象者が日常的に利用する居室内に電磁波を送信するとともに、当該電磁波の当該居室内に存在する物体からの反射波を受信することにより、当該居室内に所在する対象者までの(1)距離、(2)角度、(3)当該対象者までの距離の微少変位、及び、(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の少なくとも1を検知し、当該検知された(1)距離、(2)角度、(3)距離の微少変位、及び、(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の少なくとも1に基づき、当該対象者の身体状況を示す第2対象者データを生成する生成手段と、
(a1)前記対象者住居内において対象者が日常的に利用する居室に設置された電波式センサ送信機であって、前記第1電波式センサ送信機とは異なる第2電波式センサ送信機にて生成され、該当する居室内に所在する対象者の身体状況を示す第3対象者データ及び(a2)前記生成した第2対象者データの少なくとも一方と、(b1)予め設定され、又は、(b2)所定期間における(1)距離、(2)角度、(3)距離の微少変位及び(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の検知結果の履歴に基づき定められるパラメータと、に基づき、前記対象者に異常が発生したか否かを判定する判定手段と、
前記管理手段により当該対象者が在宅しているものと特定されている状態にて当該対象者に異常が発生したものと判定された場合に、前記見守り者の所持する通報受信装置に通報を行う通報手段と、
を備える対象者見守り装置。
【請求項17】
身体状況の見守り対象となる対象者に発生した異常を検知するとともに、異常を検知した場合に、見守り者に通報する対象者見守り装置として機能するコンピュータを、
前記対象者の住居出入口近傍に設置され、当該出入口近傍のエリアに電磁波を送信するとともに、当該電磁波の当出入口近傍に存在する物体からの反射波を受信して、少なくとも当該エリア内に所在する対象者までの角度を検知することにより、当該出入口を介した対象者の外出及び帰宅を検知する第1電波式センサ送信機から対象者の外出及び帰宅の状況を示す第1対象者データを少なくとも取得する取得手段、
前記取得した第1対象者データに基づき、当該対象者が、在宅状態にあるか外出状態にあるかを特定しつつ、管理する管理手段、
自機の設置された居室であって、前記対象者が日常的に利用する居室内に所在する対象者までの(1)距離、(2)角度、(3)当該対象者までの距離の微少変位、及び、(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の少なくとも1に基づき、当該対象者の状態を示す第2対象者データを生成する生成手段、
(a1)前記対象者住居内において対象者が日常的に利用する居室に設置された電波式センサ送信機であって、前記第1電波式センサ送信機とは異なる第2電波式センサ送信機にて生成され、該当する居室内に所在する対象者の身体状況を示す第3対象者データ及び(a2)前記生成した第2対象者データの少なくとも一方と、(b1)予め設定され、又は、(b2)所定期間における(1)距離、(2)角度、(3)距離の微少変位及び(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の検知結果の履歴に基づき定められるパラメータと、に基づき、前記対象者に異常が発生したか否かを判定する判定手段、
前記管理手段により当該対象者が在宅しているものと特定されている状態にて当該対象者に異常が発生したものと判定された場合に、前記見守り者の所持する通報受信装置に通報を行う通報手段、
として機能させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者を含む見守り対象者の身体状況を監視する対象者見守りシステム等に関し、特に、非接触にて対象者の身体状況を監視する対象者見守りシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化社会においては、高齢者の単身世帯が急速に増加しており、これら単身高齢者の身体状況を見守ることの社会的重要性が高まっている。このため、最近では、高齢者宅のトイレや寝室等の居室に電波式のセンサを設置して、当該居室内に所在する単身高齢者等の見守り対象者(以下、「対象者」という。)の身体状況を監視する各種の装置が提案されている(例えば、特許文献1及び2)。この種の監視装置は、無変調CW(Continuous Wave)方式(ドップラー方式ともいう)やFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式の電波式センサを搭載し、電波式センサにより対象者の動きや心拍、呼吸等を検知して、自機の設置された居室内に所在する対象者の身体状況を把握する構成になっている。また、最近では無変調CW方式のセンサとFMCW方式のセンサの双方を備え、当該センサにおける検出信号をPC等の情報処理装置に送信して、検出信号が所定の条件を満たした場合に、別居親族や自治体、警備会社等の民間事業者を含む見守り責任者(以下、「見守り者」という。)の所持するスマートフォン等の情報出力装置に通報を行う生体監視システムも提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-134795号公報
【特許文献2】WO2019/224999
【特許文献3】特開2017-153850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献3に記載のシステムは、家屋内に設置された複数の環境センサにより常時対象者の存在を検知し続け、対象者の在宅又は外出の状態を検知しつつ対象者の身体状況を監視する構成になっているので、対象者が実際に外出中か否かを高精度に判別することが難しいだけではなく、家屋内の全ての部屋にセンサを設置しなければ、在宅状態にあるか否かを検知することができず、システム構築時のコストを削減することが難しい。
【0005】
本発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低コストに且つ高精度に在宅中の対象者の身体状況を監視しつつ、異常の発生を見守り者に通報可能な対象者見守りシステム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上述した課題を解決するため、本発明の請求項1に係る対象者見守りシステムは、身体状況の見守り対象となる対象者に発生した異常を検知するとともに、異常を検知した場合に、見守り者に通報する対象者見守りシステムであって、前記対象者の住居内に設置され、所定の電磁波を送信しつつ、前記電磁波の照射範囲内に所在する物体からの反射波を受信することにより、当該照射範囲内に所在する前記対象者までの(1)距離、(2)角度及び(3)距離の微少変位の少なくとも1を検知して、当該対象者の身体状況を示す対象者データを生成する電波式センサ送信機と、前記電波式センサ送信機にて生成された対象者データ及び自機の生成した前記対象者データの少なくとも一方に基づき、当該対象者に発生した異常を検知して、前記見守り者に対する通報を行う対象者見守り装置と、を有し、前記対象者見守り装置が、前記対象者住居の出入口近傍に設置された第1電波式センサ送信機から当該出入口を介した対象者の外出及び帰宅の状況を示す第1対象者データを少なくとも取得する取得手段と、前記取得した第1対象者データに基づき、当該対象者が、在宅状態にあるか外出状態にあるかを特定しつつ、管理する管理手段と、自機の設置された居室であって、対象者が日常的に利用する居室内に電磁波を送信するとともに、当該電磁波の当該居室内に存在する物体からの反射波を受信することにより、当該居室内に所在する対象者までの(1)距離、(2)角度、(3)当該対象者までの距離の微少変位、及び、(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の少なくとも1を検知し、当該検知された(1)距離、(2)角度、(3)距離の微少変位、及び、(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の少なくとも1に基づき、当該対象者の身体状況を示す第2対象者データを生成する生成手段と、(a1)前記対象者住居内において対象者が日常的に利用する居室に設置された電波式センサ送信機であって、前記第1電波式センサ送信機とは異なる第2電波式センサ送信機にて生成され、該当する居室内に所在する対象者の身体状況を示す第3対象者データ及び(a2)前記生成した第2対象者データの少なくとも一方と、(b1)予め設定され、又は、(b2)所定期間における(1)距離、(2)角度、(3)距離の微少変位及び(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の検知結果の履歴に基づき定められるパラメータと、に基づき、前記対象者に異常が発生したか否かを判定する判定手段と、前記管理手段により当該対象者が在宅しているものと特定されている状態にて当該対象者に異常が発生したものと判定された場合に、前記見守り者の所持する通報受信装置に通報を行う通報手段と、を有している。
【0007】
この構成により、本発明の対象者見守りシステムは、対象者住居の出入口近傍に設置された第1電波式センサ送信機により例えば、FMCW方式の電磁波(以下、「レーダ波」ともいう。)を、当該出入口近傍のエリアに送信しつつ、当該エリア内に所在する物体(例えば対象者)による反射波に基づき、少なくとも当該対象者までの角度を検知し、当該検知結果に基づき出入口を介した対象者の外出及び帰宅の検知結果を示す第1対象者データを生成することができる。また、本発明の対象者見守りシステムにおいて対象者見守り装置は、少なくとも第1対象者データを第1電波式センサ送信機から取得するとともに、当該取得した第1対象者データに基づき、対象者の外出及び帰宅を検知して、対象者が在宅状態にあるのか外出状態にあるのかを正確に特定及び管理できる。さらに、本発明の対象者見守りシステムは、対象者が在宅状態である場合に、(a1)対象者住居内において対象者が日常的に利用する居室に設置された電波式センサ送信機であって、第1電波式センサ送信機とは異なる第2電波式センサ送信機にて生成され、該当する居室内に所在する対象者の身体状況を示す第3対象者データ及び(a2)自機にて生成した第2対象者データの少なくとも一方と、(b1)予め設定され、又は、(b2)所定期間における(1)距離、(2)角度、(3)距離の微少変位及び(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の検知結果の履歴に基づき定められるパラメータと、に基づき、対象者に異常が発生したか否かを対象者見守り装置により判定し、対象者に異常が発生したと判定された場合に、見守り者の所持する通報受信装置に通報を行うことができる。この結果、本発明によれば、対象者の住居内の全ての部屋にセンサを設置しなくても、対象者が日常的に利用する少なくとも1の居室内に対象者見守り装置又は第2電波式センサ送信機を設置して、当該居室における対象者の状況や滞在時間数、不在時間数等を検知することにより在宅中の対象者に発生した異常を確実に検知することができ、システム構築時のコストを削減することができる。なお、出入口近傍に設置された電波式センサ送信機により対象者の外出及び帰宅を検知する際の具体的な原理及び各居室にて対象者に発生した異常を検知する手法に関しては、後に詳述する。
【0008】
この結果、本発明の対象者見守り装置によれば、低コストに且つ高精度に在宅中の対象者の身体状況を的確に監視しつつ、異常の発生を見守り者に通報することができる。
【0009】
(2)また、請求項2に記載の対象者見守りシステムは、請求項1に記載の構成において、前記第2電波式センサ送信機及び対象者見守り装置の少なくとも一方が、(a)第1の時間間隔にて前記電磁波の送受信を行いつつ、検知された前記対象者までの距離及び角度の少なくとも一方の変化量に従い、当該対象者の動作及び姿勢変化の少なくとも一方に基づく体動を、前記第1の時間間隔にて検知する存在確認モードと、(b)前記存在確認モードにて対象者の存在が確認された後の状態において前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔にて前記電磁波の送受信を繰り返しつつ、検知された前記距離の微少変位に従い、当該対象者の生体微動を前記第2の時間間隔にて検知する微動検知モードと、を切り換えつつ動作し、(1)前記存在確認モードによる動作中に検知される前記対象者の体動が、予め定められた期間以上、所定の閾値未満の状態に維持された場合に、前記微動検知モードによる動作に移行する一方、(2)前記微動検知モードによる動作中に検知される前記対象者の体動が、前記閾値以上となった場合に、前記存在確認モードによる動作に移行する構成を有している。
【0010】
本構成により、本発明の対象者見守りシステムは、第2電波式センサ送信機及び対象者見守り装置の少なくとも一方を例えば、1秒程度の間欠動作間隔にてFMCW方式のレーダ波を送受信しつつ対象者の動作(例えば、歩行、立ち座り等の動作)及び姿勢変化に基づく体動を検知する存在確認モードと、例えば、100msec(ミリ秒)程度の間欠動作間隔にてレーダ波を送受信しつつ、対象者の呼吸や心拍等の生体微動を検知する微動検知モードと、を検知された対象者の体動の大きさに基づいて随時切り換えつつ、動作させることができる。一般に、対象者の動作や姿勢変化に伴う大きな体動は、1秒程度の時間間隔で変化状態を検知すれば、正確な動きを十分に特定できる一方、対象者の呼吸や心拍といった生体微動は、100msec程度の短い時間間隔で変化を検知しなければ、正確な変化を検知することが難しい。
【0011】
ここで、FMCW方式等のレーダ波を送受信して対象者の体動や生体微動を検知する電波式のセンサは、レーダ波の送受信及びこれに伴う距離等の演算により大きく電力を消費することになる。このため、大きな体動が検知されている期間に関しては、存在確認モードにて1秒程度の間欠動作間隔にてレーダ波を送受信しつつ大きな体動を検知する一方、存在確認モードにて対象者の存在が確認された後、体動が閾値未満の状態にある期間に関しては、微動検知モードにて、100msec程度の短い間欠動作間隔にてレーダ波を送受信しつつ対象者の生体微動を検知する本構成によれば、レーダ波の送受信及び演算の回数を検知される対象者の体動の大きさに応じて適切に制御して、第2電波式センサ送信機及び対象者見守り装置の少なくとも一方の消費電力を削減することが可能となる。
【0012】
(3)また、請求項2に記載の対象者見守りシステムは、請求項2に記載の構成において、前記第2電波式センサ送信機及び対象者見守り装置の少なくとも一方が、自機に発生した振動を検知する振動検知手段をさらに有し、前記微動検知モードによる動作中に所定値以上の振動が検知された場合に、当該振動の検知されている期間中に検知された前記距離の微少変位の検知結果を除外しつつ、前記生体微動を検知する構成を有している。
【0013】
ここで、第2電波式センサ送信機や対象者見守り装置を微動検知モードにて動作させる場合、対象者の呼吸や心拍等の生体微動(1mm程度の微少な体動)を検知することが必要となるので、生体微動の検知中に対象者見守り装置に振動が発生すると、生体微動を正確に検知することが難しくなる。例えば、対象者の住居近傍の道路を大型トラックが走行した場合には、対象者住居にて振動が発生して、対象者の生体微動を正確に検知することが難しくなる。また、例えば、対象者の住居がアパートやマンション等の集合住宅である場合には、上階等の近隣区画にて大きく人が動いたり、大音量にて音楽を鳴らしたりすると、対象者の住居に振動が伝わって対象者見守り装置にて生体微動を正確に検知することが難しくなる。従って、本構成により、振動が検知されている期間中に検知された生体微動に関してはキャンセルしつつ、対象者データを生成することにより、高精度な第2及び第3対象者データを生成できるとともに、これら振動に基づくエラーの発生を確実に防止することができる。
【0014】
(4)また、請求項4に記載の対象者見守りシステムは、請求項1~3のいずれか1項に記載の構成において、前記第1及び第2電波式センサ送信機が、前記対象者の発する赤外線を検知する赤外線検知手段をさらに有し、(1)前記赤外線検知手段によって対象者の存在が検知されている期間中にのみ前記電磁波の送受信及び前記対象者データの生成を行う一方、(2)前記赤外線検知手段によって対象者の存在が検知されていない期間に関しては前記電磁波の送受信及び前記対象者データの生成を停止する構成を有している。
【0015】
一般にレーダ波を送受信しつつ、物体までの距離等を演算する電波式センサは、対象者の発する赤外線を感知するタイプのセンサ(後述の焦電センサ118)と比較して消費電力量が大きくなる。従って、本構成により、対象者が近傍に存在するか否かを焦電センサ等の赤外線検知手段により検知して、対象者が近傍に存在する期間のみレーダ波の送受信及び対象者データの生成を行う一方、対象者が近傍に存在しない期間に関しては、レーダ波の送受信及び対象者データの生成を停止することにより、電波式センサ送信機の消費電力を大幅に削減することができる。
【0016】
(5)また、請求項5に記載の対象者見守りシステムは、請求項1~3のいずれか1項に記載の構成において、前記第1電波式センサ送信機が、前記出入口近傍のエリアに複数の検知エリアを設定しつつ、少なくとも当該エリア内に所在する対象者までの角度を検知することにより、当該対象者が前記複数の検知エリアのいずれに所在するのかを特定するとともに、当該対象者の移動方向を特定し、当該特定した移動方向に基づき、当該出入口を介した対象者の外出及び帰宅を検知する構成を有している。
【0017】
本構成により、出入口に近傍に複数の検知エリアを設定しつつ、各検知エリア間の移動状況に基づき、対象者の外出及び帰宅を検知できるので、外出及び帰宅の検知精度を向上させることができる。
【0018】
(6)また、請求項6に記載の対象者見守りシステムは、請求項4に記載の構成において前記第1電波式センサ送信機が、前記出入口近傍のエリアに複数の検知エリアを設定しつつ、少なくとも当該エリア内に所在する対象者までの角度を検知することにより、当該対象者が前記複数の検知エリアのいずれに所在するのかを特定するとともに、当該対象者の移動方向を特定し、当該特定した移動方向に基づき、当該出入口を介した対象者の外出及び帰宅を検知する、構成を有している。
【0019】
本構成により、請求項5と同様の機能を実現できる。
【0020】
(7)また、請求項7に記載の対象者見守りシステムは、請求項5に記載の構成において前記第1電波式センサ送信機が、前記出入口近傍の天井部又は通路と平行になる壁部に設置されるとともに、床面から予め定められた距離範囲内に存在する前記物体からの反射波に基づく検知結果を除外しつつ、前記対象者がいずれの検知エリア内に所在するのかを特定する構成を有している。
【0021】
住居内において対象者が犬や猫等のペットを飼育しているケースも想定されるが、本構成により床面から所定の高さ(例えば、ペットの体高を除外でき、身長の低い対象者は除外せずに済む70cm程度の高さ)までの範囲内に存在する物体からの反射波に基づく検知結果を除外できる。この結果、本構成によれば、各検知エリアに対するペットの侵入により、誤検出が発生する可能性を排除できる。
【0022】
(8)また、請求項8に記載の対象者見守りシステムは、請求項6に記載の構成において前記第1電波式センサ送信機が、前記出入口近傍の天井部又は通路と平行になる壁部に設置されるとともに、床面から予め定められた距離範囲内に存在する前記物体からの反射波に基づく検知結果を除外しつつ、前記対象者がいずれの検知エリア内に所在するのかを特定する構成を有している。
【0023】
本構成により、請求項7と同様の機能を実現できる。
【0024】
(9)また、請求項9に記載の対象者見守りシステムは、請求項1~3のいずれか1項に記載の構成において、前記第2電波式センサ送信機及び対象者見守り装置の少なくとも一方が、前記検知された距離、角度及び距離の微少変位の少なくとも1に基づき、前記パラメータを設定する設定手段をさらに有する構成を有している。
【0025】
本構成により、居室内に対象者が所在する状態にて対象者見守り装置及び第2電波式センサ送信機の少なくとも一方において実際に検知された距離等に基づき異常発生の判定に用いる閾値を含むパラメータを設定することができるので、実際の利用環境に応じて適切なパラメータ値を設定することが可能となる。
【0026】
(10)また、請求項10に記載の対象者見守りシステムは、請求項4に記載の構成において、前記第2電波式センサ送信機及び対象者見守り装置の少なくとも一方が、前記検知された距離、角度及び距離の微少変位の少なくとも1に基づき、前記パラメータを設定する設定手段をさらに有している。
【0027】
本構成により、請求項9と同様の機能を実現できる。
【0028】
(11)また、請求項11に記載の対象者見守りシステムは、請求項5に記載の構成において、前記第2電波式センサ送信機及び対象者見守り装置の少なくとも一方が、前記検知された距離、角度及び距離の微少変位の少なくとも1に基づき、前記パラメータを設定する設定手段をさらに有している。
【0029】
本構成により、請求項9と同様の機能を実現できる。
【0030】
(12)また、請求項12に記載の対象者見守りシステムは、請求項9に記載の構成において前記設定手段が、所定の期間中に検知された(1)前記対象者まで距離の検知履歴に基づき、距離に関する前記パラメータを設定するとともに、(2)距離、角度及び距離の微少変位の検知履歴に基づき、前記滞在時間数又は不在時間数に関するパラメータを設定する構成を有している。
【0031】
本構成により、所定期間(例えば一週間等)における距離等の実際の検知履歴に基づき異常発生の判定に用いる閾値を含むパラメータを適切に設定することができ、より高精度な異常判定を実現することが可能となる。
【0032】
(13)また、請求項13に記載の対象者見守りシステムは、請求項10又は11に記載の構成において、前記設定手段が、所定の期間中に検知された(1)前記対象者まで距離の検知履歴に基づき、距離に関する前記パラメータを設定するとともに、(2)距離、角度及び距離の微少変位の検知履歴に基づき、前記滞在時間数又は不在時間数に関するパラメータを設定する構成を有している。
【0033】
本構成により、請求項12と同様の機能を実現できる。
【0034】
(14)また、請求項14に記載の対象者見守りシステムは、請求項12に記載の構成において、前記設定手段が、前記対象者見守り装置の生成手段及び前記第2電波式センサ送信機の少なくとも一方にて前記所定の期間内に検知された前記対象者までの(1)距離、(2)角度及び(3)当該対象者までの距離の微少変位の少なくとも1の検知履歴に基づき、当該対象者の1日の行動パターンを特定しつつ前記パラメータの値を設定する構成を有している。
【0035】
本構成により、対象者見守り装置本体又は第2電波式センサ送信機による検知履歴に基づき対象者の1日の行動パターンを特定しつつ、当該特定した行動パターンに基づき、異常発生の判定に用いる閾値を含むパラメータを適切に設定することができ、より高精度な異常判定を実現することが可能となる。
【0036】
(15)また、請求項15に記載の対象者見守りシステムは、請求項13に記載の構成において、前記設定手段が、前記対象者見守り装置の生成手段及び前記第2電波式センサ送信機の少なくとも一方にて前記所定の期間内に検知された前記対象者までの(1)距離、(2)角度及び(3)当該対象者までの距離の微少変位の少なくとも1の検知履歴に基づき、当該対象者の1日の行動パターンを特定しつつ前記パラメータの値を設定する構成を有している。
【0037】
本構成により、請求項14と同様の機能を実現できる。
【0038】
(16)また、本発明の対象者見守り装置は、身体状況の見守り対象となる対象者に発生した異常を検知するとともに、異常を検知した場合に、見守り者に通報する対象者見守り装置であって、前記対象者の住居出入口近傍に設置され、当該出入口近傍のエリアに電磁波を送信するとともに、当該電磁波の当該出入口近傍に存在する物体からの反射波を受信して、少なくとも当該エリア内に所在する対象者までの角度を検知することにより、当該出入口を介した対象者の外出及び帰宅を検知する第1電波式センサ送信機から当該対象者の外出及び帰宅の状況を示す第1対象者データを少なくとも取得する取得手段と、前記取得した第1対象者データに基づき、当該対象者が、在宅状態にあるか外出状態にあるかを特定しつつ、管理する管理手段と、自機の設置された居室であって、対象者が日常的に利用する居室内に電磁波を送信するとともに、当該電磁波の当該居室内に存在する物体からの反射波を受信することにより、当該居室内に所在する対象者までの(1)距離、(2)角度、(3)当該対象者までの距離の微少変位、及び、(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の少なくとも1を検知し、当該検知された(1)距離、(2)角度、(3)距離の微少変位、及び、(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の少なくとも1に基づき、当該対象者の身体状況を示す第2対象者データを生成する生成手段と、(a1)前記対象者住居内において対象者が日常的に利用する居室に設置された電波式センサ送信機であって、前記第1電波式センサ送信機とは異なる第2電波式センサ送信機にて生成され、該当する居室内に所在する対象者の身体状況を示す第3対象者データ及び(a2)前記生成した第2対象者データの少なくとも一方と、(b1)予め設定され、又は、(b2)所定期間における(1)距離、(2)角度、(3)距離の微少変位及び(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の検知結果の履歴に基づき定められるパラメータと、に基づき、前記対象者に異常が発生したか否かを判定する判定手段と、前記管理手段により当該対象者が在宅しているものと特定されている状態にて当該対象者に異常が発生したものと判定された場合に、前記見守り者の所持する通報受信装置に通報を行う通報手段と、を有している。
【0039】
この構成により、本発明の対象者見守り装置は、対象者住居の出入口近傍に設置された第1電波式センサ送信機により生成された第1対象者データを少なくとも取得しつつ当該第1対象者データに基づき、対象者の外出及び帰宅を検知して、対象者が在宅状態にあるのか外出状態にあるのかを正確に特定及び管理できる。また、本発明の対象者見守り装置は、対象者が在宅状態である場合に、(a1)対象者住居内において対象者が日常的に利用する居室に設置された第2電波式センサ送信機にて生成され、該当する居室内に所在する対象者の身体状況を示す第3対象者データ及び(a2)自機にて生成した第2対象者データの少なくとも一方と、(b1)予め設定され、又は、(b2)所定期間における(1)距離、(2)角度、(3)距離の微少変位及び(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の検知結果の履歴に基づき定められるパラメータと、に基づき、対象者に異常が発生したか否かを判定するとともに、対象者に異常が発生したと判定した場合に、見守り者の所持する通報受信装置に通報を行うことができる。この結果、本発明によれば、対象者住居において対象者が毎日必ず利用する居室に対象者見守り装置又は第2電波式センサ送信機を設置して、当該居室における対象者の状況や滞在時間数、不在時間数等を検知することにより、対象者に発生した異常を検知できるので、対象者住居内の全ての居室にセンサを設置しなくても在宅中の対象者に発生した異常を確実に検知することができ、システム構築時のコストを削減することができる。
【0040】
(17)また、本発明のプログラムは、身体状況の見守り対象となる対象者に発生した異常を検知するとともに、異常を検知した場合に、見守り者に通報する対象者見守り装置として機能するコンピュータを、前記対象者の住居出入口近傍に設置され、当該出入口近傍のエリアに電磁波を送信するとともに、当該電磁波の当出入口近傍に存在する物体からの反射波を受信して、少なくとも当該エリア内に所在する対象者までの角度を検知することにより、当該出入口を介した対象者の外出及び帰宅を検知する電波式センサ送信機から対象者の外出及び帰宅の状況を示す第1対象者データを少なくとも取得する取得手段、当該出入口近傍のエリアに電磁波を送信するとともに、当該電磁波の当出入口近傍に存在する物体からの反射波を受信して、少なくとも当該エリア内に所在する対象者までの角度を検知することにより、当該出入口を介した対象者の外出及び帰宅を検知する第1電波式センサ送信機から対象者の外出及び帰宅の状況を示す第1対象者データを少なくとも取得する取得手段、前記取得した第1対象者データに基づき、当該対象者が、在宅状態にあるか外出状態にあるかを特定しつつ、管理する管理手段、自機の設置された居室であって、前記対象者が日常的に利用する居室内に所在する対象者までの(1)距離、(2)角度、(3)当該対象者までの距離の微少変位、及び、(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の少なくとも1に基づき、当該対象者の状態を示す第2対象者データを生成する生成手段、(a1)前記対象者住居内において対象者が日常的に利用する居室に設置された電波式センサ送信機であって、前記第1電波式センサ送信機とは異なる第2電波式センサ送信機にて生成され、該当する居室内に所在する対象者の身体状況を示す第3対象者データ及び(a2)前記生成した第2対象者データの少なくとも一方と、(b1)予め設定され、又は、(b2)所定期間における(1)距離、(2)角度、(3)距離の微少変位及び(4)当該対象者の当該居室における滞在時間数又は不在時間数の検知結果の履歴に基づき定められるパラメータと、に基づき、前記対象者に異常が発生したか否かを判定する判定手段、前記管理手段により当該対象者が在宅しているものと特定されている状態にて当該対象者に異常が発生したものと判定された場合に、前記見守り者の所持する通報受信装置に通報を行う通報手段、として機能させる構成を有する。
【発明の効果】
【0041】
本発明の対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラムは、低コストに且つ高精度に在宅中の対象者の身体状況を監視しつつ、異常の発生を見守り者に通報可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明に係る対象者見守りシステムの一実施形態における構成例を示すシステム構成図である。
図2】一実施形態における電波式センサ送信機及び対象者見守り装置の設置例及び動作概要を示すイメージ図である。
図3】一実施形態における電波式センサ送信機の構成例を示すブロック図である。
図4】一実施形態における電波式センサ部の構成例を示すブロック図である。
図5】一実施形態の電波式センサ部によって送信されるFMCW方式のレーダ波を説明するための図であり、(A)には、レーダ波として送信されるチャープ信号(TXChirp)の周波数-時間特性を示し、(B)の上側には、ミリ波センサの送信用アンテナから送信したTXChirpと、対象物(ユーザ)により反射され、受信用アンテナにより受信したチャープ信号(RXChirp)の関係、(B)の下側には、TXChirp及びRXChirpとミキサから出力されるIF(中間周波数)信号との関係、(C)には、センサと対象物の角度算出手法を示している。
図6】一実施形態における対象者見守り装置の構成例を示すブロック図である。
図7】一実施形態において対象者宅の出入口(玄関天井)近傍に設置された電波式センサ送信機により、対象者の外出及び帰宅を検知する際の原理を説明する図である。
図8】一実施形態において対象者宅のトイレに設置された電波式センサ送信機を用いて対象者の異常を検知する際の原理を説明する図であり、(A)~(D)には、電波式センサ送信機と対象者の位置関係を示し、(E)には、異常判定する場合の判定条件の一例を示している。
図9】一実施形態において対象者宅の居間に設置された対象者見守り装置により、対象者の異常を検知する際の原理を説明する図である。
図10】一実施形態において対象者宅の寝室に設置された電波式センサ送信機を用いて対象者の異常を検知する際の原理を説明する図である。
図11】一実施形態の電波式センサ送信機及び対象者見守り装置にて設定されるパラメータの具体的な設定項目を示す一覧表である。
図12】一実施形態の電波式センサ送信機において制御部が実行するメイン処理を示すフローチャートである。
図13】一実施形態の電波式センサ送信機及び対象者見守り装置における存在確認モードと微動検知モードの関係を説明する図である。
図14】一実施形態の対象者見守り装置において制御部が実行するメイン処理を示すフローチャートである。
図15】本発明の変形例1において対象者宅の出入口(玄関壁)近傍に設置された電波式センサ送信機により対象者の外出及び帰宅を検知する際の原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、実空間上に存在する対象者宅(住居)にて、単身高齢者等の対象者の身体状況をモニタリング(監視)する機能を実現するためのシステムに対し、本発明に係る対象者見守りシステム、対象者見守り装置及びプログラムを適用した場合の実施形態である。但し、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0044】
[1]対象者見守りシステム1の構成及び概要
まず、図1及び2を用いて、本発明の一実施形態における対象者見守りシステム1の構成及び概要について説明する。なお、図1は、本実施形態の対象者見守りシステム1の構成例を示すシステム構成図、図2は、本実施形態の対象者見守りシステム1において見守り対象となる単身高齢者等の対象者宅MHに対象者見守りシステム1の各装置を設置する際の装置設置例及び対象者見守りシステム1の動作概要を示すイメージ図である。また、図1及び2においては、図面が煩雑になることを防止するため、対象者見守りシステム1を構成する電波式センサ送信機10の一部のみを表示するとともに、対象者宅MHに存在する1の出入口EE(玄関)のみを表示している。すなわち、対象者見守りシステム1には、図示するよりも多くの電波式センサ送信機10を設けることができるとともに、対象者宅MHには図示するよりも多くの出入口EE(例えば、勝手口等)が存在してもよい。さらに、出入口EEに設ける電波式センサ送信機10の台数については任意であるが、電波式センサ送信機10の設置台数を増やした場合、システム構築時のコストが増大するとともに、同一監視エリア(玄関)に複数の電波式センサからレーダ波RWを照射するとレーダ波RWが干渉し誤検知する可能性を排除できないため、本実施形態においては、出入口EEに1台の電波式センサ送信機10を設けるものとして説明を行う。
【0045】
図1及び2に示すように、本実施形態の対象者見守りシステム1は、(1)対象者宅MHの出入口EE近傍及びトイレや寝室、脱衣所等の各居室に設置され、FMCW方式の電波式センサを搭載するとともに、自機の設置された居室内にレーダ波RWを照射しつつ、当該レーダ波RWの物体による反射波に基づき、対象者の身体状況を示すデータ(以下、「対象者データ」ともいう。)を生成する複数の電波式センサ送信機10と、(b)各電波式センサ送信機10にて生成された対象者データを取得して当該対象者データ基づき、対象者に発生した異常を検知するための処理を実行する対象者見守り装置20と、(c)見守り者の所持するスマートフォン等の通報受信装置30と、を有し、対象者見守り装置20において対象者の異常が検知された場合に、対象者見守り装置20が通報受信装置30に対して対象者の身体状況に異常が発生したことを通報するためのものである。係る機能を実現するため、本実施形態の対象者見守り装置20は、ネットワークNを介して通報受信装置30と通信接続されており、このネットワークNを介して通報受信装置30に通報を行う構成になっている。
【0046】
ここで、利用者(すなわち、対象者本人、又は、その親族等)が加入している通信サービスとしては、(1)固定電話サービス、(2)光IP(Internet protocol)通信サービス、(3)LoRa(登録商標)等の公衆LPWA(low Power Wide Area)通信サービス、(4)デジタル防災行政無線サービス、(5)移動体通信サービスの5種類が想定され、各通信サービスについても運営事業者が利用者毎に異なるケースが多い。対象者見守りシステム1の運用にあたって、専用の通信サービスへの加入を義務付ける方法も想定できるが、システム運用時のコスト増大に繋がるため、必ずしも好ましい施策とはいえない。そこで、本実施形態の対象者見守りシステム1においては、利用者が既に加入済の通信サービスを利用しつつ、通報受信装置30に対する通報を可能とするため、上記5種類全ての通信サービスに対応可能とする機能を対象者見守り装置20に搭載するとともに、端末設備TE、又は、利用者のスマートフォンUSを介して、或いは、対象となる通信サービスのGW(ゲートウェイ)/基地局を介して対象者見守り装置20を上記各種の通信サービスを提供するためのネットワークNに通信接続して、各通信サービスを用いた通報形態1~5を実現する方法を採用することとした。なお、本実施形態において端末設備TEは、(1)通報に固定電話サービスを用いる場合には、非常ボタン付通報装置や電話機、宅内配線設備を含むものであり、(2)通報に光IP通信サービスを用いる場合には、アクセスポイントやルータ、ONU(Optical Network Unit)及び宅内配線設備を含むものであるが、この点は従来の通信サービスと同様であるため、詳細を省略する。また、対象者見守り装置20にFMCW方式の電波式センサを搭載するか否かは任意であるが、本実施形態においては対象者見守り装置20にも電波式センサを搭載して、対象者見守り装置20自体により対象者データを取得(生成)する構成を採用する。この構成により対象者宅MH内に設置する電波式センサ送信機10の台数を削減し、システム構築時のコストを低減することができる。さらに、対象者宅MHにおいて電波式センサ送信機10を設置する場所に関しては任意であり、少なくとも、1台の電波式センサ送信機10を出入口EE(玄関)に設置して、出入口EEを介した対象者の外出及び帰宅を検知するとともに、対象者が毎日必ず利用する居間等の居室内に対象者見守り装置20を設置して、対象者が在宅の状態において対象者に発生した異常を検知する構成としてもよい。但し、本実施形態においては、対象者に発生した異常を正確に検知するため、(1)出入口EEとしての玄関と、(2)トイレと、(3)主寝室と、(4)脱衣所(風呂)と、に電波式センサ送信機10を設置するとともに、(5)居間にFMCW方式の電波式センサを搭載した対象者見守り装置20を設置するものとして説明を行う(図2参照)。なお、本発明における「対象者が日常的に利用する居室」は、この毎日必ず利用する居室に相当する。
【0047】
そして、本実施形態の対象者見守りシステム1においては、概略以下の機能を実現する。
<機能1>出入口EE近傍に設置された電波式センサ送信機10により対象者の移動方向を検知しつつ対象者の外出及び帰宅を管理する機能、
<機能2>対象者が在宅中であると検知されている状態において、トイレ内に設置された電波式センサ送信機10によりトイレ内における対象者の体動を検知しつつ、トイレ内にて発生した対象者の異常を検知する機能、
<機能3>対象者が在宅中であると検知されている状態において、主寝室内に設置された電波式センサ送信機10により主寝室内における対象者の体動を検知しつつ、対象者の就寝中若しくは休憩中に発生した異常を検知する機能、
<機能4>対象者が在宅中であると検知されている状態において、居間に設置された対象者見守り装置20により居間内に所在する対象者の体動を検知しつつ、居間その他の場所にて発生した対象者の異常を検知する機能、
<機能5>対象者が在宅中であると検知されている状態において、脱衣所内に設置された電波式センサ送信機10により対象者の移動方向を検知しつつ、風呂場への入退室を管理して、浴室滞在時間数から対象者の入浴中に発生した異常を検知する機能、
なお、対象者の体動に基づき各機能を実現する具体的な手法は、対象となる居室毎に異なるので、各機能の実現手法については後に詳述する。
【0048】
そして、以上の機能により、対象者の身体状況に異常が検知された場合に、本実施形態の対象者見守り装置20は、通報受信装置30に対して対象者の身体状況に異常が発生したことを通報する。このとき、対象者見守り装置20は、利用者の加入している通信サービスに応じて、上記1~5のいずれかの通報形態を選択しつつ、適切な形態にて見守り者に対する通報を行う。なお、通報形態に応じて、通報時の手順を変更する必要があるので、対象者見守り装置20は、選択された通報形態に応じて、適切な手順に則って、通報を行う構成になっている。(1)例えば、通報形態1が選択された場合、対象者見守り装置20は、端末設備TEとしての非常ボタン付通報装置及び電話機を用いて通報受信装置30に割り当てられた電話番号に発呼し、固定電話網を介して、音声、又は、緊急通報を意味するトーン信号により、対象者に異常が生じたことを通報受信装置30に通報する。この結果、通報受信装置30においては、例えば、「対象者に何らかの異常が発生しました」等の緊急通報メッセージが音声及び文字列の少なくとも一方により見守り者に報知される。(2)また、例えば、通報形態2が選択された場合、対象者見守り装置20は、例えば、電子メール等の電文形式にて緊急通報メッセージを生成して、端末設備TEとしてのルータ、ONU等を用いつつ、光IP通信網を介して通報受信装置30に通報用の電文を送信する。(3)さらに、例えば、通報形態3及び4が選択された場合、対象者見守り装置20は、電文形式の緊急通報メッセージを生成して、対応する通信サービスを提供するネットワークNに通信接続されたGW/基地局を介して通報受信装置30に緊急通報メッセージを送信する。(4)また、例えば、通報形態5が選択された場合、対象者見守り装置20は、利用者スマートフォンUSに対して所定のプッシュ通知を行って。利用者スマートフォンUSから移動通信網を介して通報受信装置30に緊急通報メッセージを送信させる。なお、この場合、例えば、利用者スマートフォンUSに予め緊急通報用のアプリケーションプログラムをインストールしておき、対象者見守り装置20から例えば、Bluetooth:登録商標)等の通信プロトコルに従った所定の通報要求を受信した場合に、利用者スマートフォンUSが自動的に緊急通報メッセージを生成して通報受信装置30に送信する構成とすることが好ましい。なお、通報形態2~5が選択された場合にも、電文形式ではなく音声にて緊急通報メッセージを送信することももちろん可能である。
【0049】
ここで、従来の生体監視システム(例えば、特許文献3)は、対象者が在宅の状態を検知するため、対象者宅MH内の全ての居室に環境センサを設置して、対象者が在宅の状態にて対象者に発生した異常を検知する構成になっていたため、システム構築時のコストを削減することが難しかった。
【0050】
これに対して、本実施形態の対象者見守りシステム1は、上記機能1により対象者の外出及び帰宅を検知して対象者が在宅状態のときに、各電波式センサ送信機10及び対象者見守り装置20に搭載された電波式センサを用いつつ上記機能2~5により在宅中の対象者の体動を検知して、当該検知結果に基づき対象者に発生した異常を検知する構成を採用しているため、全ての居室内に電波式センサ送信機10を設置する必要性がなくなり、システム構築時のコストを大幅に削減することが可能となる。
【0051】
一方、このように電波式センサによって対象者の体動を検知する構成を採用する場合、常時電波式センサを用いてレーダ波RWを送信しつつ体動を検知しようとすると電波式センサ送信機10及び対象者見守り装置20における消費電力が大きくなってしまう。特に、対象者宅MH内において商用電源を確保できない場所に電波式センサ送信機10を設置しようとする場合には、電波式センサ送信機10をバッテリ駆動する必要性が生じるため、消費電力を削減することが重要になる。
【0052】
そこで、本実施形態においては、電波式センサ送信機10に電波式センサのみならず、後述する焦電センサ118(図3参照)を搭載して、この焦電センサ118によって対象者が近傍に所在することが検知されている期間にのみ電波式センサを稼働させ、レーダ波RWの送受信を行わせる一方、焦電センサ118にて対象者の存在が検知されない期間に関しては、電波式センサをOFF(すなわち、レーダ波RWの送受信を停止)にして、スリープモードに維持する間欠動作を実現する機能を搭載することした。この構成により本実施形態の対象者見守りシステム1は、商用電源を確保できない場所に電波式センサ送信機10を設置する場合においてもバッテリによる駆動時間数を向上させることができる。
【0053】
以上説明した構成により、本実施形態の対象者見守りシステム1は、低コストに且つ低消費電力にて高精度に在宅中の対象者の身体状況を監視し、対象者に発生した異常を確実に検知しつつ、見守り者に異常の発生を通報することができる。
【0054】
[2]対象者見守りシステム1の概略構成
電波式センサ送信機10は、後述する電波式センサ部110(図3参照)を有し、自機の設置された居室内にFMCW方式のレーダ波RWを照射(送信)するとともに、当該居室内に所在する物体によって反射されたレーダ波RWの反射波を受信し、送信信号(すなわち、レーダ波RW)と反射波に基づき、自機から物体(対象者を含む)までの距離や角度を算出するとともに、距離や角度の変位量に基づき物体の動き(体動)を検知する。そして、電波式センサ送信機10は、当該検知結果に基づき、対象者データを生成して対象者見守り装置20に供給する。なお、電波式センサ部110の構成及び電波式センサ部110において距離等を検知する際の原理については後に詳述する。
【0055】
また、電波式センサ送信機10は、対象者に発生した異常を検知するために必要な各種のパラメータを設定するための設定モードが設けられており、この設定モード下において図示せぬPC(パーソナルコンピュータ)等の情報処理端末装置と連動しつつ、外出及び帰宅検知に必要なパラメータや異常検知に必要な各種のパラメータを設定及び記憶して、異常検知に利用する構成になっている。なお、設定モードにて設定される各種パラメータに関しては、後に詳述する。
【0056】
さらに、電波式センサ送信機10は、設定モードにて設定されたパラメータを用いつつ、(a)対象者の体動から当該対象者の外出及び帰宅を検知する外出・帰宅検知モードと、(b)対象者の体動から当該対象者がレーダ波RWの到達範囲内に所在するか否かを検知する存在確認モードと、(c)レーダ波RWの到達範囲内に対象者が所在することが検知された後の状態において当該対象者の呼吸や心拍等の生体微動を検知する微動検知モードと、を切り換えつつ動作する構成になっており、焦電センサ118にて対象者が検知されている期間中、スリープモードからウェイクアップ(復帰)して、いずれかの動作モードにて動作し、対応する対象者データを生成する一方、焦電センサ118にて対象者の存在が検知されない期間においては、スリープモードを維持する構成を有している。この結果、本実施形態の電波式センサ送信機10は、対象者が近くにいる期間中のみウェイクアップしてレーダ波RWを送受信しつつ対象者データを生成する間欠動作を行い、低消費電力化を実現することができる。なお、各動作モードにてレーダ波RWに基づき体動や生体微動を検知しつつ対象者データを生成する時間間隔及び対象者見守り装置20への送信間隔に関しては任意であり、存在確認モードにて動作する場合には、対象者の比較的大きな体動(歩行や寝返り、立ち座り等の動作や姿勢の変化に伴う体動)に基づき対象者の存在を検知できれば足りる。従って、存在確認モードにて動作する場合、1秒程度の比較的長い間欠動作間隔にてレーダ波RWを送受信しつつ、対象者までの距離や角度の変化量を検知し、当該変化量に基づき対象者データを生成して、所定の時間間隔(例えば、30秒間隔)にて生成した対象者データを対象者見守り装置20に送信すれば足りる。一方、微動検知モードにおいては、呼吸や心拍等、微少な距離の変化量(後述する「Δd1」)から対象者の生体微動を検知する必要性があるため、100msec程度の短い間欠動作間隔にてレーダ波RWを送受信しつつ対象者までの微少な距離の変化量「Δd1」を検知し、対象者データを生成して対象者見守り装置20に送信することが必要になる。また、外出・帰宅検知モードにおいては、対象者の移動に追随して角度や距離を検知しつつ移動方向を特定して対象者の外出及び帰宅を検知する必要があるため、微動検知モードと同様に100msec程度の短い間欠動作間隔にて、レーダ波RWを送受信しつつ対象者までの角度や距離を検知し、対象者データを生成することが必要となる。このため、本実施形態において電波式センサ送信機10は、微動検知モード及び外出・帰宅検知モードでの動作時に関しては、100msec程度の短い間欠動作間隔にてレーダ波RWを送受信しつつ対象者データを生成する一方、存在確認モードにおいては1秒程度の長い間欠動作間隔にてレーダ波RWを送受信しつつ対象者データを生成する構成を採用することとした。
【0057】
ここで、電波式センサ送信機10に搭載された電波式センサ部110(図3参照)により、レーダ波RWを送受信しつつ対象者までの距離等を検知する場合、レーダ波RWの送受信や距離等の演算より電力を大きく消費するため、レーダ波RWの送受信及び演算の間隔が短いほど消費電力が大きくなる。このため、本実施形態の電波式センサ送信機10においては、自機にて検知される対象者の体動を所定の閾値(例えば、数cm)と比較しつつ、体動の大きさに応じて存在確認モードと微動検知モードを切り換えながら動作することにより省電力化を実現する構成になっているが、この点については、動作の項にて詳述する。
【0058】
また、電波式センサ送信機10を微動検知モードにて動作させる場合、対象者の呼吸や心拍等の生体微動を検知することが必要となるので、生体微動の検知中に対象者宅MHに振動が発生すると、生体微動を正確に検知することが難しくなる。例えば、対象者宅MH近傍の道路を大型トラックが走行した場合には、対象者宅MHにて振動が発生して、対象者の生体微動を正確に検知することが難しくなる。また、例えば、対象者宅MHがアパートやマンション等の集合住宅である場合には、上階等の近隣区画にて大きく人が動いたり、大音量にて音楽を鳴らしたりすると、対象者宅MHに振動が伝わって生体微動を正確に検知することが難しくなる。このため、本実施形態においては電波式センサ送信機10に後述する振動検知部119(図3参照)を設け、微動検知モードでの動作中に予め定められた閾値以上の振動(例えば、数mm以上)の振動が検知された場合には、当該振動の検知されている期間中に検知された生体微動に関してはキャンセルしつつ、対象者データを生成する構成を採用することとした。
【0059】
対象者見守り装置20は、電波式センサ送信機10と同様に後述する電波式センサ部210や振動検知部212を有し(図6参照)、自機の設置された居室内にレーダ波RWを送信して、当該レーダ波RWの反射波に基づき、対象者の大きな体動や生体微動を検知しつつ、対象者データを生成する機能を有している。また、本実施形態の対象者見守り装置20にて設定可能な動作モードは、基本的に電波式センサ送信機10と同様であるが、出入口EE近傍には電波式センサ送信機10を設置し、対象者見守り装置20は、居間等の居室内に設置する構成となるため、対象者見守り装置20には外出・帰宅検知モードが設けられておらず、設定モード、存在確認モード及び微動検知モードの3モードでのみ動作する構成になっている。そして、対象者見守り装置20は、電波式センサ送信機10と同様に検知された対象者の体動の大きさに応じて存在確認モードと微動検知モードを切り換えつつ対応する間欠動作間隔にて間欠動作するとともに、微動検知モードにおいては振動検知部212における振動の検知結果に基づき振動検知期間に検知された生体微動に関しては、キャンセルしつつ対象者データを生成する構成になっているが、各機能については、電波式センサ送信機10と同様であるため、詳細を省略する。
【0060】
また、本実施形態の対象者見守り装置20は、対象者宅MH内に設置された各電波式センサ送信機10にて生成された対象者データを取得するとともに、当該取得した対象者データ及び自機の生成した対象者データと設定モードにて設定されたパラメータに基づき、対象者に「異常」が発生したか否かを検知して、「異常」発生の検知時に、通報受信装置30に対する通報を行う機能を有している。このとき、対象者見守り装置20は、利用者が加入済の通信サービスに応じて、適切な通報形態を選択しつつ通報を行う構成になっている。なお、利用者が複数の通信サービスに加入しているケースも想定されるが、この場合には、通報に利用する1つの通信サービスを契約状況に応じて予め選択しておくようにすればよい。
【0061】
さらに、本実施形態の対象者見守り装置20は、出入口EE近傍に設置された電波式センサ送信機10により検知される対象者の外出及び帰宅の検知結果に基づき、対象者が在宅中であるか否かを特定しつつ管理し、対象者が在宅中の場合のみ、通報受信装置30に対象者の異常発生を通報する構成になっている。基本的に対象者が外出している場合、対象者の身体状況を対象者宅MH内に設置された電波式センサ送信機10及び対象者見守り装置20にて対象者の異常の発生を検知することは不可能なため、外出中に関しては、例えば1日に1回から数回程度外出中であることを通報受信装置30に定期報告する機能を有している。本機能により、見守り者は、対象者の旅行の予定等と無関係に対象者が何日間も帰宅しない等、おおよその外出時間を確認できるので、対象者が戸外にて徘徊して帰宅しないようなケースや外出中に倒れて帰宅できないようなケースの発生を推測可能になる。
【0062】
通報受信装置30は、例えば見守り者としての別居親族が所持するスマートフォンや自治体、消防等の行政庁、警備会社等の民間事業者が管理運営する異常通報用の通信端末装置であり、図示せぬ表示部やスピーカ、操作部等を有し、ネットワークNを介して対象者見守り装置20から緊急通報メッセージを受信すると、音声、文字及び画像の少なくとも1を用いて対象者に異常が発生したことを見守り者に報知する機能を有している。なお、見守り者に対する報知方法については任意であり、例えば、通報形態2~5を用いて電文形式の緊急通報メッセージを受信した場合には、文字列及び画像にて緊急の発生を図示せぬ表示部上に表示させるとともに、スピーカによりアラーム音を発生させる構成としてもよく、通報形態1を採用する場合には、音声にて対象者に異常が発生した旨を見守り者に報知する構成としてもよい。
【0063】
[3]電波式センサ送信機10の全体構成
次いで、図3を用いて本実施形態の電波式センサ送信機10の全体構成について説明する。なお、図3は、本実施形態の電波式センサ送信機10の構成例を示すブロック図である。
【0064】
図3に示すように、本実施形態の電波式センサ送信機10は、(1)電波式センサ部110と、(2)USB(Universal Serial Bus)インターフェース111と、(3)商用電源、又は、バッテリ電源に接続される電源部112と、(4)リセット回路113と、(5)現在日時を特定するためのリアルタイムクロック114と、(6)電波式センサ送信機10の動作モードとして、(i)設定モード、(ii)外出・帰宅検知モード、及び(iii)電波式センサ部110により検知される距離や角度の変位量(すなわち、対象者の体動の大きさ)に応じて存在確認モード及び微動検知モードのいずれか一方のモードを選択しつつ当該選択された動作モードにて動作する存在確認・微動検知モードを選択するためのスイッチ115と、(7)表示パターンを変えつつ、各種動作状態を発光表示するためのLED(Light Emitting Diode)116と、(8)無線部117と、(9)焦電センサ118と、(10)振動検知部119と、(11)低消費電流で駆動可能な、例えば、圧電型電子式発音体等により構成される発音体120と、(11)制御部121と、を備え、各部には電源部112から駆動に必要な電力が供給される構成になっている。
【0065】
電波式センサ部110は、FMCW方式のレーダ波RWを送信するとともに、送信したレーダ波RWと、当該レーダ波RWの物体における反射波に基づき、電波式センサ送信機10から物体までの距離や角度等を検知しつつ、対象者の動作や姿勢変化に伴う体動を検知するとともに、対象者の生体微動を検知して対応するデータを生成して制御部121に供給する。なお、電波式センサ部110の具体的構成及び距離等を検知する原理については次述する。
【0066】
無線部117は、消費電力が少なく且つ宅内各部屋間の通信が可能で免許が不要な、サブGHz帯(920MHz帯、400MHz帯等)の特定小電力無線、長距離通信が可能なBluetooth 5.0以降(Bluetooth SIG規格)のBluetooth Long Range、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11規格の無線LAN(Local Area Network)等の規格に準拠した通信チップやアンテナ等を含む無線通信インターフェースであり、対象者見守り装置20と無線にて通信接続され、自機の生成した対象者データを対象者見守り装置20に送信する。
【0067】
振動検知部119は、振動センサや加速度センサ等のセンサによって構成され、電波式センサ送信機10に発生した振動を検知し、検知結果を示すセンサ信号を制御部121に供給する。
【0068】
制御部121は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の図示せぬメモリを組み合わせて構成され、メモリ内に予めに記憶されたプログラムを実行することにより、以下の各機能を実現する。
【0069】
<機能A>
本機能は、スイッチ115により設定モードが選択された状態において、USBインターフェース111に接続されたPC等の情報処理装置と連動しつつ、外出・帰宅検知モードにて外出及び帰宅を検知するために必要なパラメータや存在確認・微動検知モードにて自機の設置された居室(トイレ、寝室等)における声かけや移動方向の検知に必要な各種のパラメータを設定するための処理を実行して、当該設定されたパラメータ値を制御部121内の図示せぬメモリに記憶させる機能である。
【0070】
<機能B>
本機能は、スイッチ115により外出・帰宅検知モードが選択された状態において実現される機能であり、設定モードにてメモリに記憶されたパラメータを用いつつ、対象者の外出及び帰宅を検知するための処理を実行して、対象者の外出及び帰宅の検知結果を対象者データとして対象者見守り装置20に送信する処理を実行する機能である。なお、例えば本機能により生成される対象者データは、本発明の「第1対象者データ」に相当する。
【0071】
<機能C>
本機能は、スイッチ115により存在検確認・微動検知モードが選択された状態において実現される機能であり、設定モードにて設定され、メモリ内に記憶されたパラメータを用いつつ、(a)存在確認モードにおいては、対象者までの距離や角度の変化量に基づき対象者の行動や姿勢変化に伴う大きな体動から対象者の存在を検知するとともに、(b)微動検知モードにおいては、対象者の生体微動を検知しつつ、対応する対象者データを生成し、無線部117を介して当該生成した対象者データを対象者見守り装置20に送信する機能である。なお、本機能により制御部121が生成する対象者データは、例えば、本発明の「第3対象者データ」に相当する。また、制御部121は、本機能により自機の設置された居室に対する対象者の入室及び退室を検知するとともに、当該居室に対する対象者の滞在時間数や不在時間数等の時間数をリアルタイムクロック114により特定し、当該特定した時間数を対象者データの一部として、又は、当該特定した時間数を示すデータを対象者データとともに対象者見守り装置20に送信する構成になっている。ここで、対象者宅MHの各居室内には各種の家具が設置され、これら家具や壁等によっても反射波が発生することとなる。このため、本機能により対象者の大きな体動や生体微動を検知しつつ対象者データを生成する場合、これら固定物による反射波をキャンセルしなければ、対象者の正確な体動や生体微動を検知できなくなる。そこで、本実施形態においては、後述するデジタル信号処理部1107(図4参照)にてこれら固定物からの反射波をキャンセルしつつ動きのある物体からの反射波のみに基づき対象者データを生成する構成になっている。
【0072】
<機能D>
本機能は、スイッチ115により存在確認・微動検知モードが選択され、微動検知モードにて動作している状態において、振動検知部119から供給されるセンサ信号を監視して、当該センサ信号により示される振動値がメモリ内のパラメータにより設定された閾値以上になっている期間中に検知された生体微動に関しては、信頼性を担保できないものとして、対象者データの生成対象から除外する機能である。本機能により、所定値以上の振動が検知されている期間中に検知された生体微動に関しては対象者データの生成対象から除外できるので、対象者データの精度を向上させることができる。
【0073】
<機能E>
本機能は、スイッチ115により存在確認・微動検知モード又は外出・帰宅検知モードが選択された状態において、焦電センサ118における赤外線の検知結果を取得しつつ、電波式センサ送信機10の近傍に対象者が所在するか否かを判定し、(a)対象者が所在しない期間に関しては電波式センサ部110の電源をOFFにして、スリープモードに移行する一方、(b)対象者が近傍に所在する場合には、電波式センサ部110の電源をONにしつつウェイクアップして、レーダ波RWの送受信と対象者データの生成を実行する電波式センサ部110のON/OFF制御機能である。本機能により、電波式センサ送信機10の間欠動作を実現して消費電力を大幅に削減できる。なお、制御部121は、上記のようにCPUを用いた構成の他、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のプログラミング可能な回路により各機能を実現するためのプログラムを予めプログラミングして実現する構成としてもよい。
【0074】
[3.1]電波式センサ部110の詳細構成及び距離、角度、生体微動等の検知原理
次いで、図4及び5を用いて、電波式センサ部110の具体的な構成及びレーダ波RWを用いた距離等の検知原理について説明する。なお、図4は、電波式センサ部110の構成例を示すブロック図、図5は、電波式センサ部110によって送信されるレーダ波RWを説明するための図である。また、図5において(A)には、レーダ波RWとして送信するチャープ信号(以下、「TXChirp」という。)の周波数-時間特性を示し、(B)の上側には、電波式センサ部110の送信用アンテナTXAから送信したTXChirpと、物体により反射され、受信用アンテナRXAにより受信したチャープ信号(以下、「RXChirp」という。)の関係を示すとともに、(B)の下側には、TXChirp及びRXChirpと、ミキサ25-1及び25-2から出力されるIF(中間周波数)信号と、の関係を示し、(C)には、電波式センサ送信機10と物体間の角度の算出原理を示している。
【0075】
図4に示すように、本実施形態の電波式センサ部110は、制御部121に接続され、デジタル信号処理部1107の生成したデータを制御部121に供給する外部インターフェース部1101と、(2)TXChirpを生成するチャープ発振部1102と、(3)チャープ発振部1102の生成したTXChirpを増幅した後、送信用アンテナTXAから送信する送信部1103と、(4)各受信用アンテナRXA1及び2(以下、各受信用アンテナを特に特定する必要がない場合には、「受信用アンテナRXA」という。)により受信されたRXChirpを増幅して、各々対応するミキサ1105-1及び1105-2に出力する第1受信部1104-1及び第2受信部1104-2(以下、各受信部を特に特定する必要がない場合には、「受信部1104」という)と、(5)各受信用アンテナRXA1及び2に対応するミキサ1105-1及び1105-2(以下、各ミキサを特に特定する必要がない場合には、「ミキサ1105」という。)と、を有し、各ミキサ1105-1及び1105-2には、各々対応する受信用アンテナRXAにて受信されたRXChirpが入力されるとともに、チャープ発振部1102の生成したTXChirpが入力される構成になっている。そして、ミキサ1105は、自回路に対応する受信部1104から供給されるRXChirpとTXChirpを混合してIF信号を生成する。
【0076】
また、本実施形態の電波式センサ部110は、(6)各ミキサ1105からの出力信号(すなわち、IF信号)にA/D(アナログ/デジタル)変換を施す、ADC(A/D Converter)1106-1及び1106-2(以下、各ADCを特に特定する必要がない場合には「ADC1106」という。)と、(7)ADC1106から出力される信号に対して信号処理を施すデジタル信号処理部1107と、を有している。
【0077】
チャープ発振部1102は、図5(A)に示すように、周波数を時間連続で直線的に変化させる変調方式(すなわち、FMCW方式)にてTXChirpを生成し、当該生成したTXChirpを送信部1103と、各ミキサ1105-1及び1105-2に出力する。例えば、図5(A)には、開始周波数fc=60GHzから64GHzまで、チャープ帯域幅B=4GHz、持続時間Tc=100μ秒、チャープスロープ(傾き)S=40MHz/μ秒でアップチャープしてTXChirpを生成する場合の例を示している。なお、図5(A)は、チャープ発振部1102の生成するTXChirpの一例であり、利用するTXChirpは、これに限定されるものではない。また、チャープ発振部1102は、外部インターフェース部1101を介して制御部121から供給される制御コマンドに従ってTXChirpの生成を開始し、又は、TXChirpの生成を終了する構成としてもよく、電波式センサ送信機10の電源がONとなったタイミングでTXChirpの生成を開始し、電源がOFFとなった時点で生成を終了するようにしてもよい。但し、本実施形態においては、上記機能5により焦電センサ118の検知結果に基づき、電波式センサ部110のON/OFF制御を行うことで間欠動作を実現して低消費電力化を実現する構成になっているとともに、上述のように動作モードに応じて異なる間欠動作間隔にてレーダ波RWの送受信を行う構成になっている。このため、本実施形態においてチャープ発振部1102は制御部121からの制御コマンドに従い動作中のモードに対応する時間間隔(例えば、存在確認モードであれば1秒間隔、微動検知モードや外出・帰宅検知モードであれば100msec間隔等)にてレーダ波RWを繰り返し送信するための処理を行うものとして説明を行う。
【0078】
送信部1103は、図示せぬパワーアンプ等の回路を有し、チャープ発振部1102から供給されるTXChirpを増幅して送信用アンテナTXAに供給することにより、送信用アンテナTXAからレーダ波RWを送信させる。また、送信用アンテナTXAは、レーダ波RWの照射エリアが自機の設置された居室等の場所に応じて適切に調整されるように、視野角の調整されたアンテナにより構成される。なお、送信用アンテナTXAの具体的な構成に関しては任意であり、例えば、パッチアレイアンテナ等の指向性を制御可能なアンテナを利用してもよく、ホーンアンテナを用いてもよい。
【0079】
このようにして、送信用アンテナTXAからレーダ波RWとして発射されたTXChirpは、自機の設置場所に対して適切に照射されるとともに、各受信用アンテナRXA1及び2が照射エリア内に存在する対象物(例えば、対象者)による反射波(すなわち、RXChirp)を受信して対応する受信部1104に供給する。
【0080】
2つの受信用アンテナRXAは、アンテナ中心間の間隔が「l」(エル)となるように位置を調整して電波式センサ部110に設けられており、各々がRXChirpを受信して対応する受信部1104に供給する。
【0081】
受信部1104は、ローノイズアンプ等の回路を有し、対応する受信用アンテナRXAが受信したRXChirpを増幅しつつ、ミキサ1105に供給する。
【0082】
ミキサ1105は、自回路に対応する受信部1104から供給されるRXChirpとチャープ発振部1102から供給されるTXChirpを混合することにより、自回路に対応する受信用アンテナRXAにて受信されたRXChirpに対応するIF信号を生成して、ADC1106に出力する。
【0083】
デジタル信号処理部1107は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)やCPU(Central Processing Unit)等の演算装置により構成され、ADC1106から供給される信号(すなわち、IF信号をA/D変換した信号)に基づき自機から対象物までの距離と角度を検知するとともに、対象者の生体微動を検知して、検知結果に対応するデータ(すなわち、距離データ、角度データ及び生体微動データ)を、外部インターフェース部1101を介して制御部121に供給する。このとき、デジタル信号処理部1107は、フィルタリング処理や後述するFFT(Fast Fourier Transform)の前処理としてのウィンドウ処理、FFTの後処理としてのピーク検出、検知した点群のクラスリング(グループ化)、トラッキング(追跡)を含む処理を実行しつつ、自機から対象物までの距離及び角度を算出するとともに、対象者の生体微動に伴う距離の微少変位を検知して、対応する生体微動データを生成し、外部インターフェース部1101を介して制御部121に供給する。なお、デジタル信号処理部1107は、図示せぬRAM(Random Access Memory)を有し、このRAMをワークエリアとして用いつつ、距離等の算出処理を実行する構成になっている。
【0084】
(1)電波式センサ部110と対象物間の距離及び生体微動の検出原理について
次いで、図5を用いて、TXChirpとRXChirp及びIF信号の関係性を踏まえつつ距離及び生体微動の検出原理について説明する。
【0085】
図5(B)に例示するように、まず、タイミングt0において送信用アンテナTXAからTXChirpの照射が開始され、タイミングt0から時間Tc後のタイミングt2まで図5(B)上側のようにTXChirpの照射状態が継続された場合、タイミングt0から遅延時間τ経過後のタイミングt1において各受信用アンテナRXA1及び2によるRXChirpの受信が開始され、タイミングt2までRXChirpの受信状態が継続する。このとき、遅延時間τは、電波式センサ部110から対象物までの距離「d」の往復の距離「2d」を電波の速度(光速c=3×108m/秒)で除算した時間を示し、τ=2d/c・・・(式1)、にて表される。従って、この式1に基づき、対象物までの距離「d」を算出できる。またこのとき、電波式センサ部110から対象物までの距離「d」が変化しない場合(すなわち、対象物が移動しない場合)、遅延時間τは変化しない。このため、図5(B)上側のTXChirpの照射とRXChirpの受信が重なっているタイミングt1からt2までの期間中(すなわち、Tc-τの時間中)、ミキサ25で変換されるIF信号は、図5(B)下側に示すように周波数がSτで一定の正弦波(トーン)となる。従って、IF信号は一般的な正弦波の式である式2によって表現できる。
【0086】
f(t)=Asin(2πf0t+φ0)・・・(式2)
【0087】
ここで、式2において「A」は、IF信号の振幅、「φ0」は、IF信号の出力開始タイミング(すなわち、タイミングt1)におけるTXChirpとRXChirpの位相差を示している。また、図5(B)に示すように、IF信号の周波数「f0」は、f0=Sτとなることから、f0=2Sd/cとなり、電波式センサ部110と対象物との距離「d」は、d=cf0/2S・・・(式3)、の関係式により算出可能となる。
【0088】
本実施形態のデジタル信号処理部1107は、以上の関係に基づき、ADC1106から供給されるA/D変換後のIF信号に対して、距離算出用のFFT(Fast Fourier Transform)(以下、「距離FFT」ともいう。)処理を施すことにより周波数スペクトル解析を行ってIF信号のピーク周波数(すなわち、f0)を算出し、当該算出したf0を式3に代入して電波式センサ部110から対象物までの距離「d」を算出する。なお、これらの式においては、対象物の速度に対するIF信号の周波数の依存性を無視しているが、人間が歩く程度の低速の移動は、高速FMCWセンサである電波式センサ部110の算出結果に及ぼす影響が小さいので無視できる。なお、距離FFT処理に関しては従来と同様であるため、詳細を省略する。
【0089】
また、式2における位相「φ0」の位相差(すなわち、位相変位量)「Δφ」と、電波式センサ部110から対象物までの距離の微少変位量「Δd1」の関係式Δφ=4πΔd1/λより、Δd1=Δφλ/4π・・・(式4)、が得られ、対象者の生体微動は、この距離の微少変位量「Δd1」に関する式4に基づき算出可能となる。例えば、TXChirpの周波数が、60GHzの場合、波長「λ」は、「5mm」となるが、このときIF信号の位相が「180°」変化した場合、検知される距離の微少変位量「Δd1」は、「1.25mm」になる。一方、IF信号の位相が、「90°」変化した場合、検知される距離の微少変位量「Δd1」は、その半分の「0.625mm」になる。本実施形態においてデジタル信号処理部1107は、以上の関係に基づき、電波式センサ部110から対象物までの距離「d」を算出するとともに、対象者の心拍や呼吸を含む生体微動に伴う検知距離の微少変位量「Δd1」を、位相変位量「Δφ」に基づき算出し、当該算出した距離「d」及び距離の微少変位「Δd1」の算出結果対応する距離データ及び生体微動データを制御部121に供給する構成になっている。
【0090】
(2)角度の検出原理
本実施形態において角度の算出は、対象物との間の距離に関する小さな変化が、距離FFTのピークでベクトルの変化をもたらすという関係に基づいて行われる。具体的には、本実施形態の電波式センサ部110においてデジタル信号処理部1107は、受信用アンテナRXA1及び受信用アンテナRXA2の各受信系統毎にFFT処理を施すため、受信処理毎のFFT処理結果に対して、さらに角度FFTと呼ばれるFFT処理を実施することで角度を算出する。なお、角度FFT処理に関しては従来と同様であるため、詳細を省略する。
【0091】
例えば、図5(C)のように、受信用アンテナRXA1と受信用アンテナRXA2を間隔「l」で配置し、対象物から角度「θ」でRXChirp(反射波)が到来した場合を想定する。この場合、対象物から各受信用アンテナRXAまでの距離は、受信用アンテナRXA1側で「d」とすると、受信用アンテナRXA2側では距離差「Δd2」を加えた距離d+Δd2となる。なお、「θ」が0°の場合、「Δd2」はゼロとなり、「θ」が90°の場合、Δd2=lとなる。また、受信用アンテナRXA間の間隔「l」は、ミリメートル単位であるのに対して、距離「d」はメートル単位となり、アンテナ間隔「l」が距離「d」と比較して十分小さくなるため、対象物からの反射波は共に角度「θ」で平行して到来すると考えてよい。
【0092】
このとき、距離差「Δd2」は、図5(C)に示すように、Δd2=lsinθ・・・(式5)、で示されるとともに、受信用アンテナRXA1と受信用アンテナRXA2で受信するRXChirpに対応するIF信号の位相差「Δφ」に相当する。ここで、距離差「Δd2」に基づく位相差「Δφ」は、数学的にΔφ=2πΔd2/λ・・・(式6)、と定義されることから、角度θ=sin-1(λΔφ/2πl)・・・(式7)、となり、位相情報より角度を算出でき、デジタル信号処理部1107は、この式7の関係に基づき、対象物までの角度「θ」を算出して、対応する角度データを制御部121に供給する構成になっている。
【0093】
[4]対象者見守り装置20の構成
次いで、図6を用いて本実施形態の対象者見守り装置20の構成について説明する。なお、図6は、本実施形態の対象者見守り装置20の構成例を示すブロック図である。
【0094】
図6に示すように、本実施形態の対象者見守り装置20は、(1)図4と同じ構成を有し、生成した距離、角度及び生体微動の各データを制御部222に供給する電波式センサ部210と、(2)無線部211と、(3)振動検知部119と同様の構成を有し、自機に発生した振動の検知結果を制御部222に供給する振動検知部212と、(4)低消費電流で駆動可能な、例えば、圧電型電子式発音体等により構成される発音体213と、(5)対象者見守り装置20の動作モードとして、設定モード及び存在確認・微動検知モードのいずれかを選択するためのスイッチ214と、(6)各種動作状態を発光表示するためのLED215と、(7)商用電源に接続される電源部216と、(8)リセット回路217と、(9)上記通報形態2~5を実現するための各通信サービスによる通信を行うための無線通信部218と、(10)通報形態1を実現するため、端末設備TEとしての非常ボタン付通報装置に接続されるリレー出力部219と、(11)USBインターフェース220と、(12)現在日時を特定するためのリアルタイムクロック221と、(13)制御部222と、を有し、各部には電源部216から駆動に必要な電力が供給される構成になっている。
【0095】
無線部211は、電波式センサ送信機10の無線部117と同一の通信プロトコルに従って通信を行う無線通信インターフェースであり、電波式センサ送信機10により送信された対象者データを受信して、制御部222に供給する。
【0096】
無線通信部218は、上記通報形態2~5を実現するため、LoRa(登録商標)トランシーバ2181と無線LAN/BLEトランシーバ2182を備えている。LoRa(登録商標)トランシーバ2181は、通報形態3及び4を実現するため、対応するプロトコルにて公衆LPWAシステムを構成するGW/基地局やデジタル防災行政無線システムを構成するGW/基地局と無線にて通信を行い、無線LAN/BLEトランシーバ2182は、通報形態2を実現するため、端末設備TEとしてのアクセスポイントや無線ルータと通信を行い、或いは、通報形態5を実現するため、利用者スマートフォンUSと通信を行う。
【0097】
制御部222は、例えば、CPUと、EEPROMやRAM等の図示せぬメモリを組み合わせて構成され、メモリ内に予めに記憶されたプログラムを実行することにより、以下の各機能を実現する。
【0098】
<機能a>
本機能は、電波式センサ送信機10の機能Aと同様にスイッチ214により設定モードが選択された状態において、USBインターフェース220に接続されたPC等の情報処理装置と連動しつつ、各種のパラメータを設定するための処理を実行して、当該設定されたパラメータ値をメモリ内に記憶させる機能である。なお、対象者見守り装置20は電波式センサ送信機10と異なり、居室内に設置され出入口EE近傍に設置されるものではないことから、スイッチ214により設定可能な動作モードに外出・帰宅検知モードは設けられておらず、設定モード及び存在確認・微動検知モードのみが設定可能な構成になっている。なお、例えば本発明の「設定手段」は、制御部222の本機能により実現される。
【0099】
<機能b>
本機能は、出入口EE近傍に設置された電波式センサ送信機10により生成され、送信された対象者データを取得するとともに当該対象者データに基づき、対象者が外出状態にあるのか在宅状態にあるのかを特定して管理する機能である。なお、例えば、本発明の「取得手段」及び「管理手段」は、制御部222の本機能により実現されるとともに、「第1電波式センサ送信機」は、出入口EE近傍に設置された電波式センサ送信機10に相当する。
【0100】
<機能c>
制御部222は、自機の設置された居室(図2に例示する場合には居間)に対して、自機に搭載された電波式センサ部210によりレーダ波RWを送受信させ、対象者見守り装置20から居間内の対象者までの距離や角度をデジタル信号処理部1107に算出させるとともに、当該対象者の生体微動を検知させつつ、自機に対応する対象者データ(すなわち、居間内に所在する対象者の対象者データ)を生成する。なお、例えば、本発明の「第2対象者データ」は、本機能により対象者見守り装置20にて生成される対象者データに相当するとともに、「生成手段」は、制御部222の本機能により実現される。また、対象者見守り装置20にて対象者データを生成する手法は、電波式センサ送信機10において対象者データを生成する手法と同様であるため、詳細を省略する。さらに、本実施形態において制御部222は、本機能により自機の設置された居室(居間)に対する対象者の入室検知日時及び退出検知日時をリアルタイムクロック221により特定して、当該特定した日時に基づき当該居室に対する滞在時間数や不在時間数等の時間数を示すデータを含む対象者データを生成しつつメモリに記憶させ、「異常」の判定に利用可能な状態に維持する構成になっている。そして、本機能により、対象者見守り装置20は、電波式センサ送信機10と同様の機能を実現できるので、対象者宅MH内に設置する電波式センサ送信機10の台数を削減して、システム構築時のコストを削減できる。また、本機能により、居間内の対象者の身体状況を監視する場合、制御部222は、電波式センサ送信機10における「機能D」と同様に、振動検知部212にて検知される振動を監視し、微動検知モードでの動作状態にて振動値がメモリ内のパラメータにより設定された閾値以上になっている期間内に検知された生体微動に関しては、信頼性を担保できないものとして、キャンセルして、対象者データの生成対象から除外する構成になっている。なお、振動検知部212と連動した制御部222の本機能により、本発明の「振動検知手段」が実現される。また、本実施形態において制御部222は、電波式センサ送信機10の制御部121と同様に電波式センサ部210により検知される対象者の体動の大きさに応じて、存在確認モードと微動検知モードを切り換える構成になっており、電波式センサ部210は、設定された動作モードに対応する間欠動作間隔にてレーダ波RWを送受信しつつ自機の設置された居室内の対象者に対応する対象者データを生成する構成になっているが、この点は電波式センサ送信機10と同様である。
【0101】
<機能d>
制御部222は、出入口EE近傍以外の居室に設置された各電波式センサ送信機10から無線部211を介して対象者データを取得するとともに、(a1)当該対象者データと及び(a2)上記機能cにより自機の生成した対象者データの少なくとも一方と、(b)設定モードにて設定された各種パラメータを比較しつつ、対象者に「異常」が発生しているか否かを判定する機能を実現する。なお、例えば、本発明の「第2電波式センサ送信機」は、出入口EE近傍以外の居室に設置された電波式センサ送信機10に対応するとともに「第3対象者データ」は、当該電波式センサ送信機10にて生成され、取得される対象者データに相当する。またこのとき、制御部222は、上記「機能b」により、対象者が在宅状態にあるか否かを判定し、対象者が在宅状態のときに「異常」を検知すると、緊急通報メッセージを生成し、当該生成した緊急通報メッセージを無線通信部218又はリレー出力部219と連動しつつ、通報受信装置30に送信する処理を実行する。このとき、制御部222は、利用者の加入している通信サービスに応じて、通報形態1~5のいずれか1つを選択し、当該通報形態にて通報受信装置30に緊急通報メッセージを送信する。なお、例えば本発明の「判定手段」及び「通報手段」は、制御部222の本機能により実現される。
【0102】
[5]出入口EEにおける外出及び帰宅判定と各居室における異常判定の原理
次いで、図7~10を用いて、本実施形態の対象者見守りシステム1において出入口EE近傍に設置された電波式センサ送信機10により対象者の外出及び帰宅を検知する原理及び各居室に設置された電波式センサ送信機10及び対象者見守り装置20により生成される対象者データから対象者に異常が発生したか否かを判定する原理について説明する。
【0103】
[5.1]出入口EE近傍で対象者の外出及び帰宅を検知する際の原理
まず、図7を用いつつ、本実施形態の対象者見守りシステム1において出入口EE(玄関)近傍に設置された電波式センサ送信機10により対象者の外出及び帰宅を検知する際の原理について説明する。なお、図7は本実施形態の対象者見守りシステム1において対象者宅MHの出入口EE(玄関)近傍に設置された電波式センサ送信機10により対象者の外出及び帰宅を検知する際の原理を説明する図である。また、図7においては、説明を具体化するため、出入口EEの近傍の天井部に電波式センサ送信機10を設置して対象者の外出及び帰宅を検知する場合の例を示すが、出入口EE近傍の通路と並行になる壁部に電波式センサ送信機10を設置して外出及び帰宅を検知する構成を採用してもよい。この場合、検知手法が一部変化することになるが、この点については、変形例の項にて説明する。また、出入口EE近傍に設置した電波式センサ送信機10により、対象者の外出及び帰宅を検知する場合、電波式センサ送信機10の動作モードを外出・帰宅検知モードに設定する必要があるため、対応する電波式センサ送信機10のスイッチ115を予め外出・帰宅検知モードに設定した状態になっているものとする。
【0104】
図7に示すように、本実施形態の対象者見守りシステム1においては、電波式センサ送信機10の設置位置における鉛直線上を「0°」として、室内方向を「+」の角度、戸外方向は「-」の角度に設定する。また、出入口EE近傍にエリアA~Cを設定し、各々、(A)対象者が出入口EE近傍の屋内側にいる状態で、鉛直角度「θ」が「+」方向に「X°」よりも大きいエリアをエリアA、(B)対象者が出入口EE近傍の屋内側にいる状態で、鉛直角度「θ」が、「+X°~-X°」となるエリアをエリアB、(C)出入口EEの玄関ドアを開けた状態で、鉛直角度「θ」が、「-」方向に「X°」より大きいエリアであって、玄関ドアが閉まった状態では、角度検知しないエリアをエリアCに設定する。なお、各エリアA~Cを規定する「X°」の具体的な設定方法に関しては任意であり、例えば、予め「X°」に対応する角度値を定めておくとともに、当該角度値を規定するパラメータを設定モードにて設定し、当該パラメータに基づき各エリア内に侵入した対象者を、電波式センサ送信機10にて検知される角度に基づき検知する方法を採用してもよい。但し、本実施形態においては、説明を具体化するため、電波式センサ送信機10の設置高さ(すなわち、天井高さ)「LS」と対象者の身長(すなわち、立位の高さ)「H」に基づき、以下の方法にて角度「X°」を設定する方法を採用するものとして説明を行う。
【0105】
まず、電波式センサ送信機10に搭載された電波式センサ部110の視野角が、「±45°」である場合を想定すると、対象者が視野角外である「1」の位置よりも図面右側の室内側に所在する場合、電波式センサ送信機10においては対象者の存在が検知されず、電波式センサ送信機10における検知結果は、「不検知」の状態に維持されることとなる。この状態(すなわち、対象者が在宅状態であり、且つ、「不検知」の状態)において、対象者が移動して、視野角内に侵入した時点で対象者の存在が電波式センサ送信機10により検知されることとなる。例えば、対象者が視野角外の「1」の位置から「6」の位置に向かって移動した場合に、「2」、「3」、「4」、「5」、「6」の各位置に対象者が存在する状態で電波式センサ送信機10が検知する対象者までの鉛直角度「θ1~5」が、各々、「θ1=+40°」、「θ2=+30°」、「θ3=+20°」、「θ4=-20°」、「θ5=-40°」となるケースを想定する。対象者がこの区間に存在する間、電波式センサ送信機10にて対象者の存在が検知され、「6」の位置(すなわち、戸外)にて、対象者が出入口EEのドアを閉めると、再度「不検知」の状態に移行することとなる。
【0106】
このとき、図7のように、電波式センサ送信機10の設置位置直下の「0m」の位置から「±0.5m」の範囲をエリアBと設定すると、エリアBは、「-X°~+X°」までの「2X°」にて規定されるため、電波式センサ送信機10は、以下の式8に基づき、各エリアを規定する「X°」を算出する。
【0107】
X°=tan-1[W/(LS-H)]・・・(式8)
【0108】
なお、式8おいて「W」は、エリアBに設定される「-0.5m」~「+0.5m」の「1m」の範囲を半分にした「0.5m」となる。ここで、例えば、センサ高「LS」を標準的な家屋の天井高さ「2.5m」とし、対象者の身長「H」を「1.7m」とすると、「X°」は、X°=tan-1[0.5/(2.5/1.7)]より「32°」と算出される。この結果、本例の場合、(A)視野角の「+」方向の上限である「+45°」から「X°=+32°」までの鉛直角度「θ」により規定される「+1.5m」~「+0.5m」の範囲がエリアA、(2)「X°=-32°~+32°」までの鉛直角度「θ」により規定される「+0.5m」~「-0.5m」の範囲がエリアB、(C)「X°=-32°」から視野角の「-」方向の上限である「-45°」までの鉛直角度「θ」により規定される「-0.5m」~「-1.5m」の範囲がエリアCに設定されることになる。
【0109】
ここで、対象者が対象者宅MH内において犬や猫等のペットを飼育しているケースも想定される。このような場合に電波式センサ送信機10による検知対象距離を天井から床面までにしてしまうと、各エリアに対するペット等の侵入により、誤検出が発生する可能性を排除できない。このため、本実施形態においては、電波式センサ送信機10による検知対象距離を「LS-D」の範囲に絞り込み、床面から高さ「D」(例えば、ペットの体高を除外でき、身長の低い対象者は除外せずに済む70cm程度の高さ)までの範囲を検知対象エリアから除外する方法を採用することとした。本構成により、ペット等の動きに基づく誤検出を防止して、高精度に対象者の外出及び帰宅を検知することができる。なお、ペット等を飼育していない対象者宅MHに関しては、本方法を採用する必要がないので本機能は必須のものではない。
【0110】
そして、本実施形態において電波式センサ送信機10は、(1)対象者が在宅状態において対象者が室内の角度検知エリア外からエリアAに入り、その後エリアA、B、Cでうろついた場合であっても、対象者が「エリアA」→「エリアB」→「エリアC」と移動したことを検知した後、ドアが閉められることにより、対象者が「不検知」となった時点で、対象者が外出したものと判定する。一方、(2)対象者が外出中の状態において、ドアが開いた後、エリアC、B、Aでうろついた場合であっても、「エリアC」→「エリアB」→「エリアA」と移動したことを検知した後、「不検知」となった場合に、電波式センサ送信機10は、対象者が帰宅したものと判定する構成になっている。
【0111】
そして、電波式センサ送信機10の制御部121は、以上の手法により対象者の外出及び帰宅を検知して、その検知結果(すなわち、外出又は帰宅の判定結果)を示す対象者データを生成しつつ、対象者見守り装置20に送信する。この結果、対象者見守り装置20においては、電波式センサ送信機10から受信した対象者データに基づき、対象者が在宅しているのか、外出しているのかが特定されるとともに管理され、対象者が在宅中の状態にて各電波式センサ送信機10及び自機(すなわち、対象者見守り装置20)にて生成された対象者データに基づく異常判定がなされることになる。
【0112】
[5.2]対象者宅MH宅内のトイレで対象者を監視する際の原理
次いで、図8を用いて、トイレの天井部に設置した電波式センサ送信機10によりトイレ内の対象者を監視する際の原理について説明する。なお、図8は、本実施形態の対象者見守りシステム1において対象者宅MHのトイレに設置された電波式センサ送信機10によりトイレ内に所在する対象者を監視する際の原理を説明する図であり、(A)~(D)には、各々、電波式センサ送信機10と対象者の位置関係を示し、(E)には、異常判定する場合の判定条件の一例を示している。また、本実施形態の電波式センサ送信機10によりトイレ内の対象者を監視する場合、電波式センサ送信機10の動作モードを存在確認・微動検知モードに設定しておく必要があるので、予めスイッチ115により存在確認・微動検知モードを選択した状態になっているものとして説明を行う。さらに、電波式センサ送信機10は、自機の動作モードに応じた間欠動作間隔)にてレーダ波RWを送受信しつつ、トイレ内の対象者までの距離や角度を算出することにより、対象者の生体微動を含む体動を検知するとともに、当該検知結果に対応する対象者データを生成し、予め定められた時間間隔にて対象者見守り装置20に送信しているものとする。また、電波式センサ送信機10の電波式センサ部110により送信されたレーダ波RWは、トイレ内の対象者のみならず、壁や便器等の固定物によっても反射され、当該固定物までの距離や角度も検知されることになるが、これら固定物は対象者と無関係であるため、本実施形態において電波式センサ部110のデジタル信号処理部1107は、動きのある物体からの反射波により検知される距離等以外は、キャンセルして、対象者のみを確実に検知する構成になっている。
【0113】
ここで、本実施形態において対象者見守りシステム1は、トイレ内では普段と相違する対象者の状態、例えば、臥位(倒れた状態)や座位状態の継続時間及び生体微動の監視を行う。
【0114】
図8(A)及び(B)に示すように、トイレ内に対象者が「不在」の状態(図8(A))からトイレに対象者が入室すると(図8(B))、電波式センサ送信機10においては、対象者の生体微動を含む体動が検知され、対象者の存在(入室)が検知されることとなる。このとき、電波式センサ送信機10により検知される距離「L」は、対象者が立位を保持している間「L1」となる。その後、図8(C)に示すように、対象者が便座に腰掛けた状態になると、検知距離「L」は、「L1」から「L2」に変化する。このとき、対象者が便座に腰掛け、正常な状態を維持している場合、検知距離「L」は、「L2」に維持される。一方、対象者に何らかの異常が発生して、検知距離「L」が「L2」よりも大きくなった場合、例えば、対象者が転倒して臥位状態になった場合には、検知距離「L」が、「L4」に変化する一方、便座に腰掛けている状態を維持していても、(a)腰掛けたまま居眠りした場合や(b)気分が悪くなり蹲った状態になると、検知距離「L」は、「L2」から「L3」に変化する。
【0115】
このため、本実施形態において対象者見守り装置20は、当該電波式センサ送信機10から取得した対象者データにより示される検知距離「L」が、「L3」以上の値に設定された閾値を超えた場合に、何らかの異常が発生したものと判定する方法を採用することとした。但し、検知距離「L」が閾値を超えた場合であっても、直ぐに対象者が動き、再度検知距離が「L2」又は「L1」に戻るケースも想定される。例えば、対象者が転倒した場合であっても、直ぐに立ち上がった場合や、座位状態で短時間居眠りしてしまった後、直ぐに覚醒したようなケースがこれに該当する。そこで、本実施形態においてトイレ設置の電波式センサ送信機10は、検知距離「L」の変化状態を監視し、検知距離「L」が「L3」以上の値に設定された座位高さの閾値を超えた場合に、当該超えている時間数をリアルタイムクロック114により計時して、検知距離「L」が閾値を超えた状態が所定時間(例えば、5分間)以上継続すると、制御部121が発音体120を用いて、「大丈夫ですか?大丈夫であれば起き上がって下さい」等の声かけを行う構成を採用することとした。
【0116】
そして、対象者が声かけに反応して動き、当該電波式センサ送信機10から取得される対象者データにより示される検知距離「L」が、再度「L2」又は「L1」に戻った場合、対象者見守り装置20は、「正常」と判定する一方、声かけ後も、対象者データにより示される検知距離「L」が「L2」又は「L1」に戻らないまま、滞在時間数が閾値を超えた場合に対象者見守り装置20は、「異常」と判定する。また、対象者データにより示される検知距離「L」が閾値以内の場合であっても、滞在時間数が所定の閾値(例えば、5時間等)を超える場合、対象者見守り装置20は、座ったまま、動けなくなっている可能性があるものとして、「異常」と判定する。また、本実施形態において対象者見守り装置20は、対象者が在宅状態の時に、所定の閾値を超える期間(例えば、24時間)トイレが「空室状態」のまま維持された場合にも、トイレ以外の場所で動けなくなっている可能性があるものとして「異常」と判定する。
【0117】
ここで、「L1」、「L2」、「L3」、「L4」の値及び滞在時間数の閾値や声かけまでの時間数の閾値に関しては、対象者の身長や体質等によって変化するので、各パラメータ値は、予め設定モードにて設定しておき、対応するパラメータ値を電波式センサ送信機10の制御部121、又は、対象者見守り装置20の制御部222のメモリ内に記憶しておき、当該設定パラメータと検知結果を比較して、「正常」及び「異常」の判定を行う構成とすればよい。なお、各種パラメータの設定手法については、後に詳述する。
【0118】
[5.3]対象者宅MH宅内の居間で対象者を監視する際の原理
次いで、図9を参照しつつ、居間の天井部又は壁部に設置した電波式センサ送信機10又は対象者見守り装置20を用いて居間内の対象者を監視する際の原理について説明する。なお、図9は、本実施形態の対象者見守りシステム1において対象者宅MHの居間に設置された電波式センサ送信機10又は対象者見守り装置20により、居間内に所在する対象者を監視する際の原理を説明する図であり、(A)には、居間内における電波式センサ送信機10又は対象者見守り装置20の設置例を示し、(B)には、図9(A)に示す、位置に電波式センサ送信機10又は対象者見守り装置20を設置した場合に、レーダ波RWの到達する範囲を示す図である。また、居間には電波式センサ送信機10及び対象者見守り装置20のいずれを設置してもよいが本実施形態においては、システム構築時のコストを削減するため電波式センサ部210を搭載した対象者見守り装置20を居間内に設置しているものとして説明を行う。さらに、本実施形態の対象者見守り装置20により居間内の対象者を監視する場合、対象者見守り装置20の動作モードを存在確認・微動検知モードに設定しておく必要があるので、予めスイッチ214により存在確認・微動検知モードを選択した状態になっているものとして説明を行う。
【0119】
図9(A)に示すように、天井付近の壁面より下向きに約45°傾けて、部屋の隅に対象者見守り装置20を設置することにより、電波式センサ部210の検知エリアを可能な限り広く設定することができる。電波式センサ部210は、60GHz帯10mW以下の特定小電力無線局(免許不要)を用いることで、アンテナ利得を含めて確実に検知する距離は5m程度となる。また視野角は、部屋全体をカバーできるように±45°程度に広くすることで、図9(B)に例示するように1台の対象者見守り装置20で8畳間(約3.6m×3.6m)程度の広さは十分にカバーできる。なお、住宅の天井高さは標準で約2.5mであるため、設置高さ「LS」は「2.5m」と仮定している。この位置に設置した電波式センサ部210からレーダ波RWを送信した場合、当該レーダ波RWは、壁や固定物(例えば、テレビ、ソファ等)によっても反射され、反射波が発生して、電波式センサ部210にて受信されることになるが、この種の反射波に基づきエラーが生じることを防止するため、本実施形態において対象者見守り装置20は、静止物体からの反射波に関してはキャンセルして、動きの検知される物体からの反射波のみに基づき、距離や角度を算出するとともに、生体微動を検知する構成となっている。なお、固定物からの反射波をキャンセルする手法は、電波式センサ送信機10と同様である。
【0120】
このように動く物体のみを検知対象とした場合であっても、扇風機や空調機の風向き変更機構等の可動物体は電波式センサ部210に反応する可能性を排除できない一方、この種の可動物体は対象者の監視と無関係であるため、可動物体は部屋の隅に置くとともに、電波式センサ部210の送信用アンテナTXAの指向性を調整して検知エリアを絞り込んだり、対象者見守り装置20の設置角度を調整することで対象者のみを検知するようにすることが望ましい。この場合、例えば、ホーンアンテナを利用してもよい。本構成により、居間内のほぼ全てのエリア1台の対象者見守り装置20でカバーしつつ、対象者のみを監視対象とすることが可能となる。なお、この点は、トイレに設置する電波式センサ送信機10に関しても同様であり、壁や便器等の固定物による反射波はキャンセルして、対象者のみを検知する構成となっている。
【0121】
そして、本実施形態において対象者見守り装置20は、主に大きな体動に基づく存在検知により対象者の活動状態を監視し、(1)対象者が居間内に所在するにも関わらず所定の閾値(例えば、24時間)以上大きく動かない場合(すなわち、生体微動が検知されているにも関わらず、大きな体動が検知されない場合)や、(2)対象者が在宅中の状態であるにも関わらず、所定の閾値(例えば、24時間)以上、対象者の存在が居間内で検知されない場合に、「異常」が発生したものと判定して、通報受信装置30に対して緊急通報メッセージを送信する。このとき、制御部222は、居間に対する入室検知日時や退出検知日時をリアルタイムクロック221により特定して居間への滞在時間数や不在時間数を特定するとともに、大きな体動の検知されない時間数をリアルタイムクロック221により計時して、これら時間数を含む対象者データを生成しつつ、当該対象者データに基づき対象者に「異常」が発生したか否かを判定する。
【0122】
[5.4]寝室で対象者を監視する際の原理
次いで、図10を用いつつ、寝室の天井部に設置した電波式センサ送信機10により寝室内の対象者を監視する際の原理について説明する。なお、図10は、本実施形態の対象者見守りシステム1において対象者宅MHの寝室に設置された電波式センサ送信機10により、寝室内に所在する対象者を監視する際の原理を説明する図である。また、図10においては、支持台を持つ寝台を寝床とする場合の例を示しているが、床面に寝具を直に敷く寝床の場合であっても同様の手法が採用できる。さらに、本実施形態の電波式センサ送信機10により寝室内の対象者を監視する場合、電波式センサ送信機10の動作モードを存在確認・微動検知モードに設定しておく必要があるので、予めスイッチ115により存在確認・微動検知モードを選択した状態になっているものとして説明を行う。
【0123】
本実施形態において寝室に設置する電波式センサ送信機10は、寝床上の臥位対象者の胸部又は腹部上方向の天井面に設置し、就寝中又は寝床にて臥位体勢を取る対象者までの距離「L」を検知するとともに、寝床にいる対象者の生体微動を含む体動を検知して就寝中の対象者を監視する。なお、居間の場合と同様に固定物に基づく反射波はキャンセルする構成にするとともに、扇風機等の可動物体は電波式センサ部110に反応する可能性があるため、可動物体は部屋の隅に置き、電波式センサ部110の送信用アンテナTXAの指向性を狭くすることが望ましい。例えば、ホーンアンテナを利用してもよい。
【0124】
そして、電波式センサ送信機10は、大きな体動が検知されず、微動検知モードに移行した時点を睡眠開始とし、閾値を超える体動を検知した場合は睡眠中断と判断する。また睡眠中断時間が継続し、寝室から一定時間(例えば、10分)以上不在となった場合に起床と判断する。睡眠時間は、微動検知モードの継続時間より短い中断を除いた合計時間とすることで、対象者のおおよその睡眠時間数を推定できる。なお、睡眠時間数の算出は電波式センサ送信機10のリアルタイムクロック114により、微動検知モード継続時間数を計時して計測し、対象者データの一部として対象者見守り装置20に送信する構成としてもよく、対象者見守り装置20側において、電波式センサ送信機10から取得される対象者データにより示される体動を所定の閾値と比較しつつ、対象者の大きな体動を示す対象者データが取得されず生体微動のみを示す対象者データの取得が継続している時間数をリアルタイムクロック221により計時して計測してもよい。
【0125】
また、寝室に関しては、所定時間以上(例えば、12時間以上)大きな体動が検知されることなく臥位状態が維持されている場合、対象者が動けない状態にあるのか、単に寝ているのかを対象者データのみに基づき対象者見守り装置20にて判別することは難しい。このため、本実施形態において寝室設置の電波式センサ送信機10は、大きな体動が検知されず、生体微動のみが検知されている時間数(すなわち、微動検知モードの維持時間数)をリアルタイムクロック114により計時しつつ、継続時間が所定の閾値(例えば、12時間)以上となった場合、声かけを実施する構成になっている。
【0126】
一方、対象者見守り装置20は、寝室設置の電波式センサ送信機10から取得される対象者データを監視して、当該対象者データが臥位状態にあることを示し、且つ、大きな体動が検知されず生体微動のみが検知されていることを示す対象者データの取得が継続している時間数をリアルタイムクロック221により計時し、当該状態の継続時間数を睡眠時間に関する閾値(例えば、12時間)と比較し、当該状態が閾値以上継続すると、「異常」と判定する。また、対象者見守り装置20は、対象者が在宅中の状態において所定の閾値(例えば、24時間)以上、寝室にて対象者の存在が検知されない場合についても「異常」と判定する。そして、「異常」と判定された場合に対象者見守り装置20は、通報受信装置30に緊急通報メッセージを送信する。
【0127】
以上の方法を採用することにより、本実施形態の対象者見守りシステム1は、対象者が寝室に所在する状態において対象者に発生した「異常」を確実に検知して、緊急通報メッセージを送信できるとともに、寝室への未入室時間数(不在時間数)に基づき緊急通報メッセージを送信できる。
【0128】
[5.5]脱衣所(風呂)で対象者を監視する際の原理
本実施形態においては、脱衣所に設置した電波式センサ送信機10により検知される対象者までの角度に基づき、入浴中の対象者に発生した異常の発生を検知する。このとき、対象者見守り装置20は、当該電波式センサ送信機10から取得した対象者データに基づき入浴中の対象者に「異常」が発生したか否かを判定し、「異常」が発生したものと判定すると、通報受信装置30に緊急通報メッセージを送信する構成になっている。但し、浴室内に電波式センサ送信機10を設置した場合、水蒸気によって装置故障が発生する可能性があるので、脱衣所内に電波式センサ送信機10を設置して、当該電波式センサ送信機10により脱衣所内における対象者の移動方向を検知することにより、浴室への入退室を検知する。なお、脱衣所における移動方向及び入退室の検知手法は、出入口EE設置の電波式センサ送信機10の場合と同様であるため、詳細を省略する。一方、対象者見守り装置20は、浴室への入退室日時から入浴時間数を計測して、例えば、浴室への入室検知を示す対象者データの取得後、所定時間以上(例えば、1時間以上)退室検知を示す対象者データが取得されない場合に「異常」が発生したものと判定して、通報受信装置30に緊急通報メッセージを送信する方法を採用する。
【0129】
[6]設定モードにて設定する各種パラメータについて
次いで、図11を用いつつ、本実施形態の電波式センサ送信機10及び対象者見守り装置20において設定モードにて設定される各種パラメータについて説明する。なお、図11は、本実施形態の電波式センサ送信機10及び対象者見守り装置20にて設定されるパラメータの具体的な設定項目の一例を示す一覧表である。
【0130】
図11に示すように、本実施形態の対象者見守りシステム1において、対象者の見守りを行う場合、システムの運用開始前の時点で設定モードを利用して電波式センサ送信機10及び対象者見守り装置20の設置場所に応じて、例えば以下のようにパラメータを設定することが必要となる。
【0131】
[6.1]玄関等の出入口EE近傍に設置する電波式センサ送信機10の設定パラメータ
同電波式センサ送信機10に関しては、(a1)設置場所に関連に関するパラメータとして、電波式センサ送信機10の設置位置の高さ「LS」及び(a2)エリアA~Cを適切に設定するため、設定するエリアBの大きさに応じて「0cm」の位置からの幅に関するパラメータ(すなわち、式8の「W=0.5m」)を設定するとともに、(b)対象者の身体に関するパラメータとして、対象者の身長「H」を設定することが必要となる。これらの設定パラメータは、設定モードにおける設定時、制御部121の図示せぬメモリに記憶され、制御部121が利用可能な状態に維持される。そして、制御部121は、これらパラメータと上記式8に基づき、「X°」の値を決定するとともに、検知角度に応じて対象者の各エリアに対する対象者の侵入及び移動方向を検知しつつ外出及び帰宅を検知する。制御部121は、このようにして検知された対象者の外出及び帰宅の検知結果を示す対象者データを生成して対象者見守り装置20に送信する。なおこのとき、ペット等を検知対象から除外する構成を採用する場合、検知除外高さに関するパラメータ「D」を設定するようにすることが好ましい。一方、対象者見守り装置20は、出入口EE近傍に設置された電波式センサ送信機10から取得した対象者データに基づき、対象者が外出状態にあるか在宅状態にあるかを特定しつつ管理する。そして、対象者見守り装置20は、対象者が在宅の状態において、他の居室に設置された各電波式センサ送信機10及び自機(すなわち、対象者見守り装置20)において生成される対象者データの少なくとも一方に基づき、対象者に「異常」が発生したか否かを判定し、「異常」の発生を検知した場合に、通報受信装置30に緊急通報メッセージを送信する。
【0132】
[6.2]トイレに設置する電波式センサ送信機10に関連する設定パラメータについて
トイレに設置された電波式センサ送信機10に関連する設定パラメータについては、(a)設置場所に関連に関するパラメータとして、(a1)電波式センサ送信機10の設置位置の高さ「LS」及び(a2)便座の高さを設定して、便座により発生する反射波を確実にキャンセルできるようにするとともに、(b)対象者の身体に関するパラメータとして、(b1)対象者の身長「H」と、(b2)対象者の座位高さのパラメータ「L2」を設定することが必要となる。また、トイレ設置の電波式センサ送信機10に関しては、存在確認モードと微動検知モードの切り替え判定の基準となる閾値(例えば
、10秒等)のパラメータや声かけの基準となる時間数(例えば、5分等)を設定する必要がある。また、トイレ設置の電波式センサ送信機10に関しては、声かけの判定基準として用い、又は、異常判定を行うため、電波式センサ送信機10及び対象者見守り装置20の双方にて座位高さの閾値パラメータ(座位高さに関する「L3」以上の値)を設定する必要がある。なお、座位高さのパラメータ「L2」及び座位高さの閾値パラメータの具体的な設定方法は任意であり、例えば以下のような方法を採用することができる。
【0133】
(方法a)本方法は、(状態1)対象者が便座に腰掛けた状態及び(状態2)対象者が便座に腰掛けて、頭を下げた状態や腹部を押さえて蹲った状態の各状態にて電波式センサ送信機10によりレーダ波RWを実際に送受信して、距離(すなわち、「L2」及び「L3」)を計測するとともに、状態1における計測値をそのまま座位高さのパラメータ「L2」に設定するとともに、状態2における計測値を座位高さの閾値パラメータとして対象者見守り装置20にて設定する方法である。
【0134】
(方法b)本方法は、上記状態1及び2の各状態における電波式センサ送信機10から対象者までの距離を巻き尺等で実際に計測し、状態1における計測値を座位の高さパラメータ「L2」、状態2における計測値を座位高さの閾値パラメータとして設定する方法である。
【0135】
(方法c)本方法は、所定の期間内(例えば、一週間)におけるトイレの使用履歴から、座位高さのパラメータ「L2」及び座位高さの閾値パラメータを設定する方法である。本方法を採用する場合、該期間中における座位状態(すなわち、状態1)の距離計測値を検知(計測)履歴として、電波式センサ送信機10又は対象者見守り装置20にて蓄積し、当該計測値の平均値を座位の高さのパラメータ「L2」として設定するとともに、座位高さのパラメータ「L2」に対して、「α1(例えば、30cm)」加算した「L2+α1」を、電波式センサ送信機10及び対象者見守り装置20にて座位高さの閾値パラメータに設定するようにすればよい。本方法を採用することにより対象者が日常的にトイレを利用する際の座位高さに基づき座位高さのパラメータ「L2」や座位高さの閾値パラメータを適切に設定して、トイレ内の対象者に発生した異常を精度良く検知することが可能となる。
【0136】
また、トイレに関しては、異常検知のため、対象者見守り装置20にて滞在時間数及び空室維持時間数の管理が必要となる。このため、上記距離関連のパラメータに加えて、(c)時間関連の閾値パラメータとして、トイレの滞在時間数(座位時間数)や空室維持時間数の閾値パラメータを対象者見守り装置20にて設定することが必要になる。なお、各時間数の閾値パラメータの設定方法は任意であり、滞在時間の上限(滞在時間閾値)を、例えば数時間等と予め定めるとともに、空室維持時間数の上限(未入室時間閾値)を例えば20時間等と予め定めておき、当該時間数を各時間の閾値パラメータに設定するようにしてもよく、所定の期間内(例えば、一週間)におけるトイレの使用履歴から滞在時間数及び空室維持時間数の閾値パラメータを対象者見守り装置20にて学習しつつ各時間数の閾値パラメータを設定するようにしてもよい。後者の方法を採用する場合には、(i)当該期間中における座位状態継続時間の平均値を対象者見守り装置20又は電波式センサ送信機10にて算出し、当該平均値に「+α2(例えば、30分)」した値を滞在時間数の閾値パラメータとして対象者見守り装置20にて設定してもよく、(ii)当該期間中における滞在時間数の最大値に「+α3(例えば、15分)」した値を滞在時間数の閾値パラメータとして対象者見守り装置20にて設定するようにしてもよい。いずれの方法を採用した場合であっても、対象者が日常的にトイレ内に滞在する時間数に基づき、適切に滞在時間数の閾値パラメータを設定して、トイレ内の対象者に発生した異常を精度良く検知することが可能となる。また、空室維持時間数に関しても、当該期間中の空室維持時間数の平均値や最大値をそのまま空室維持時間数の閾値パラメータとして対象者見守り装置20にて設定してもよく、当該平均値等に所定の幅を持たせつつ空室維持時間数の閾値パラメータを設定するようにしてもよい。
【0137】
[6.3]寝室に設置する電波式センサ送信機10に関連する設定パラメータについて
寝室設置の電波式センサ送信機10に関連する設定パラメータに関しては、(a)設置場所に関連に関するパラメータとして、(a1)電波式センサ送信機10の設置位置の高さ「LS」及び(a2)寝台の高さを設定する必要があるとともに、(b)存在確認モードと微動検知モードの切り替え判定の基準となる閾値のパラメータを設定することが必要になる。また、寝室に関しては、(c)対象者の身体に関するパラメータとして、(b1)対象者の身長「H」と、(b2)対象者の臥位の高さを設定することが必要となる。ここで、対象者が寝台に横たわった状態にて電波式センサ送信機10により検知される距離「L」は、「L=LS-(寝台高さ+臥位高さ)」・・・(式9)、となるので、これらの距離関連パラメータを設定することにより、対象者が立っているのか、寝台に横たわっているのかを検知できる。なお、臥位の高さに関しては、臥位状態の対象者の高さを巻き尺等で計測して設定するようにしてもよく、対象者が寝台に横たわっている状態において、電波式センサ送信機10により、対象者までの距離「L」を計測し、この計測値を式9に代入して「LS-(L+寝台高さ)」により求めるようにしてもよい。後者の方法を採用する場合には、所定の期間(例えば、一週間)における臥位状態の距離計測値平均をこの式9に代入することにより、より高精度に臥位の高さを設定することが可能となる。また、本実施形態において寝室設置の電波式センサ送信機10は、対象者までの距離の検知結果に基づき、対象者の体勢を特定し、対象者が就寝している期間中、生体微動を含む対象者の体動を検知しつつ、検知結果を示す対象者データを生成し、定期的に対象者見守り装置20に送信するようになっており、対象者見守り装置20は、このようにして送信された対象者データに基づき対象者に発生した「異常」を検知して、必要に応じて通報受信装置30に緊急通報メッセージを送信する。
【0138】
さらに、寝室に関しては、所定時間以上(例えば、12時間以上)大きな体動が検知されることなく臥位状態が維持されている場合、体調不良等異常が発生しているのか単に就寝しているのかを対象者見守り装置20にて特定できないので、声かけの基準となる時間的な閾値パラメータ(例えば12時間等)を電波式センサ送信機10にて設定する必要があるとともに、睡眠時間数の閾値パラメータを対象者見守り装置20にて設定する必要がある。なお、睡眠時間数の閾値パラメータの設定手法は任意であり、予め、12時間等と閾値を定めるようにしてもよく、上記の手法により推定した睡眠時間より、所定期間中(例えば一週間等)の睡眠時間平均値を求め、「平均睡眠時間+α4(例えば、10時間等)」を睡眠時間の閾値パラメータとして設定するようにしてもよい。そして、本実施形態において対象者見守り装置20は、寝室設置の電波式センサ送信機10から取得される対象者データが臥位状態にあることを示し、且つ、大きな体動が検知されず生体微動のみが検知されていることを示す対象者データの取得が継続している時間数が、睡眠時間数の閾値パラメータにより示される時間以上継続する等、上記の異常検知条件が満たされた場合に、「異常」が発生したものと判定して、通報受信装置30に緊急通報メッセージを送信する。また、寝室に関しては、他の居室にて倒れている等の理由により例えば24時間以上対象者が寝室に入室しないようなケースも想定されるので、未入室時間数の閾値パラメータに関しても同様に設定することが必要となるが、未入室時間数の閾値パラメータの設定手法は睡眠時間数の閾値パラメータと同様に予め時間数を定めて設定してもよく、所定期間における未入室時間数の履歴から平均や最大値を特定しつつ設定してもよい。
【0139】
[6.4]居間に設置する対象者見守り装置20に関連する設定パラメータについて
居間設置の対象者見守り装置20に関連する設定パラメータに関しては、(a)設置場所に関連に関するパラメータとして、(a)対象者見守り装置20の設置位置の高さ「LS」を設定する必要があるとともに、(b)存在確認モードと微動検知モードの切り替え判定の基準となる閾値のパラメータを設定することが必要になる。また、居間に関しては、(b)対象者の身体に関するパラメータとして、対象者の身長「H」を設定することが必要となる。そして、本実施形態において居間設置の対象者見守り装置20は、居間内の対象者までの距離の検知結果と体動の検知結果に基づき、居間内に対象者が所在するか否かを検知して、対象者に異常が発生したか否かを検知する。対象者が在宅中の場合、通常であれば、所定の時間内(例えば、24時間以内)に一度は、居間に入室すると想定されるため、在宅状態であるにも関わらず、予め定められた時間パラメータの閾値(例えば、24時間)以上、不在状態が継続すると、対象者見守り装置20は、対象者に「異常」が発生したものと判定して緊急通報メッセージを通報受信装置30に送信する。また、本実施形態において対象者見守り装置20は、対象者が居間内に所在するにも関わらず所定の閾値以上(例えば、数時間以上)大きく動かない場合(すなわち、生体微動が検知されているにも関わらず、大きな体動が検知されない場合)にも「異常」が発生したものと判定して、通報受信装置30に緊急通報メッセージを送信する構成になっている。このため、本実施形態においては、対象者見守り装置20にて当該微動のみが検知されている時間数や不在時間数に関する閾値パラメータを設定して、当該閾値パラメータと、自機の検知結果に応じて、対象者に発生した異常を検知する。なお、不在時間数の閾値パラメータは、予め所定の時間数(例えば、24時間等)を設定してもよく、所定期間(例えば、一週間等)における不在時間数の平均値又は最大値を算出して、当該算出値そのもの、又は、これに所定の幅を持たせた時間数を閾値パラメータに設定するようにしてもよい。
【0140】
[6.5]脱衣所に設置する電波式センサ送信機10に関連する設定パラメータについて
脱衣所設置の電波式センサ送信機10に関連する設定パラメータに関しては、(a)設置場所に関連に関するパラメータとして、(a)対象者見守り装置20の設置位置の高さ「LS」を設定する必要がある。また、脱衣所に関しては、(b)対象者の身体に関するパラメータとして、対象者の身長「H」を設定することが必要となる。
【0141】
さらに、脱衣所に関しては、対象者の入浴時間数を監視する必要があるため、対象者見守り装置20にて時間関連のパラメータとして入浴時間数の閾値パラメータを設定することが必要となる。なお、入浴時間数の閾値パラメータの設定方法は任意であり、予め1時間等の閾値を定めて、当該時間数を閾値パラメータに設定してもよく、所定期間中(例えば、一週間等)の入浴時間の履歴を蓄積し、当該履歴から平均値を求め、「平均入浴時間+α5(例えば、1時間等)」を入浴時間数数の閾値パラメータに設定するようにしてもよい。そして、本実施形態において対象者見守り装置20は、脱衣所の電波式センサ送信機10から供給される対象者データを監視し、入浴時間数(すなわち、浴室への入室検知を示す対象者データの取得タイミングから浴室からの退室検知を示す対象者データの取得タイミングまでの経過時間をリアルタイムクロック221により計時して、当該計時時間数が入浴時間数に関する閾値パラメータにより示される時間数を超えた場合に、「異常」が発生したものと判定して通報受信装置30に緊急通報メッセージを送信する。なお、本実施形態において、上記α1~5は、予め値を定めておく方法の他、所定期間中の計測値の標準偏差から求める方法や最大値と平均値の差分より求める方法等を採用することができる。
【0142】
[7]対象者見守りシステム1の動作
次いで、図12~14を用いて本実施形態の対象者見守りシステム1の動作について説明するが、以下においては、まず、電波式センサ送信機10の動作について説明した後、対象者見守り装置20の動作について説明する。
【0143】
[7.1]電波式センサ送信機10の動作
まず、図12及び13を用いて、本実施形態の電波式センサ送信機10の動作について説明する。なお、図12は、本実施形態の電波式センサ送信機10において制御部121が実行するメイン処理を示すフローチャートであり、図13は、本実施形態の電波式センサ送信機10における存在確認モードと微動検知モードの経時切り換えの関係を説明する図である。
【0144】
図12に示すように、本実施形態の電波式センサ送信機10においては、まず、電源がONにされると、制御部121は、電源投入時の初期化処理を実行し(ステップSa1)、スイッチ115により設定されているモードが、(a)「設定モード」であるか、(b)「外出・帰宅検知モード」であるか、(c)「存在確認・微動検知モード」であるかを判定し(ステップSa2)、当該判定結果に応じて以下の処理を実行する。
【0145】
(1)設定モードが選択されている場合の動作
上記判定において、「設定モード」が設定されているものと判定すると、制御部121は、LED116により、設定モード動作中であることを表示させ(ステップSa3)、USBインターフェース111に接続された情報処理装置と連動しつつ、情報処理装置を用いて設定された各種パラメータの設定値を読み込み、メモリ上に記憶させる(ステップSa4)。なお、情報処理装置を用いた各種パラメータの具体的な設定方法は任意であり、情報処理装置にてパラメータ設定用のGUI(Graphical User Interface)を表示させ、このGUIに従ってパラメータ設定値を装置取付業者や利用者、見守り者を含む各種パラメータ設定者に入力させるようにしてもよく、単に文字列等を設定者に入力させるようにしてもよい。
【0146】
この状態にてパラメータ設定者が、上述した各種パラメータ(すなわち、センサの設置関連パラメータや対象者の身体関連パラメータ、モード切り替えや声かけの基準となる時間の閾値パラメータ)を入力すると、制御部121はUSBインターフェース111を介して、情報処理装置にて入力されたパラメータ設定値を読み込んで、メモリ上に記憶させ(ステップSa4)、読込が完了するのを待機し(ステップSa5「No」)、読込が完了した時点で、読み込んだパラメータに基づき各パラメータを設定して(ステップSa6)、設定モード中のLED116における表示パターンを変化させて設定終了表示を行った後(ステップSa7)、電源OFFとなるのを待機し(ステップSa8)、電源OFFになった時点で処理を終了する。このようにして、設定モードにて設定された各パラメータは、次に電源がONにされたタイミングの初期化処理(ステップSa1)により利用可能な状態にセットされる。なお、電波式センサ送信機10により実際に計測した実測値から座位高さパラメータや臥位高さのパラメータ等を設定する構成を採用する場合、これらのパラメータに関しては、情報処理装置を接続した状態で実際に座位高さ等を計測して、ステップSa6において当該計測値を座位高さのパラメータ「L2」や座位高さの閾値パラメータ等に設定するようにすればよく、所定期間における計測値からこれらのパラメータを設定する構成を採用する場合には、当該期間中における計測値の履歴データを電波式センサ送信機10又は対象者見守り装置20にて蓄積し、当該蓄積された履歴データに基づき、これらのパラメータを設定するようにすればよい。また、異常判定に用いる時間関連の閾値パラメータは、対象者見守り装置20にて設定することになるので後に詳述する。
【0147】
(2)外出・帰宅検知モードが選択されている場合の動作
本モードは、基本的に出入口EE近傍に設置された電波式センサ送信機10において設定されるモードであり、本モード設定時に関しては、事前に上記ステップSa3~7の処理により、対象者の外出及び帰宅検知に必要な各パラメータ(図7及び11参照)が、設定モードにて設定され、制御部121のメモリ上にセットされていることが必要になる。このため、設定モードによるパラメータ設定後、一度電源をOFFにして、スイッチ115により外出・帰宅検知モードを選択して、電源を再投入することが必要となる。このとき、制御部121は、ステップSa1の初期化処理において、設定モードにて設定されたパラメータの内、出入口EEに対応するパラメータ(天井高さ「LS」及び対象者の身長「H」、エリアBを規定するパラメータ「W」)及び不検知距離「D」を必要なパラメータとしてセットした後、まず、焦電センサ118により、対象者が検知されるまで(ステップSa8「No」)、電波式センサ部110をOFFにして(ステップSa9)、電波式センサ部110によるレーダ波RWの送受信を停止させ、スリープモードに移行する(ステップSa10)。
【0148】
この状態において対象者が焦電センサ118の検知エリア内に侵入して、焦電センサ118が対象者の発する赤外線を検知すると、制御部121は、ステップSa8において「Yes」と判定し、電波式センサ部110の電源をON状態に復帰させ(ステップSa11)、例えば、100msec程度の間欠動作間隔でレーダ波RWを送受信させつつ、対象者までの角度及び距離を検知させて対応する角度データ及び距離データを取得する(ステップSa10)。このとき、電波式センサ部110においては、上記原理により、対象者までの鉛直角度「θ」及び距離が、デジタル信号処理部1107によって算出され、当該算出結果に対応する角度と距離のデータを含むデータが制御部121に供給されることとなる(ステップSa12)。
【0149】
次いで、制御部121は、電波式センサ部110から取得したデータに基づき、図7に示す原理によって対象者の所在するエリアを特定しつつ対象者の移動方向を判定し、当該判定結果に基づき、対象者の外出及び帰宅を判定する(ステップSa13)。このとき、制御部121は、ステップSa1にて設定された天井高さ「LS」及び対象者の身長「H」の各パラメータと式8に基づき、各エリアを規定するための鉛直角度「X°」を算出しつつ、図7の原理により、対象者の所在するエリアを角度に基づき特定する。またこのとき、制御部121は、ペット等を不検知とするため、不検知距離を規定するパラメータ「D」に基づき、床面から距離「D」までの高さを検知対象から除外しつつ、対象者の所在エリア及び移動状態を特定し、当該特定した移動状態に基づき、対象者の外出及び帰宅を判定する。
【0150】
次いで、制御部121は、以上の処理による外出及び帰宅の判定結果を対象者見守り装置20に送信した後(ステップSa14)、処理をステップSa8にリターンさせ、再度ステップSa8以降の処理を繰り返す。ここで、ステップSa8の判定タイミングにおいて、対象者が焦電センサ118の検知エリア外に所在する場合、制御部121は、ステップSa8において「No」と判定し、処理をステップSa9に移行させつつ電波式センサ部110をOFFにして、スリープモードに移行し(ステップSa10)、電波式センサ部110によるレーダ波RWの送受信を停止させる。この結果、焦電センサ118の検知エリア内に対象者が所在しない期間中に関しては、スリープモードに維持され、レーダ波RWの送受信が停止される。上述のように電波式センサ部110は、レーダ波RWの送受信によって、レーダ波RWの照射エリア(すなわち、検知エリア)内に存在する物体(対象者等)の存在と、当該物体までの距離や角度を算出するとともに生体微動等の体動を検知する構成のため、赤外線受信の有無のみで対象者の存在を検知する焦電センサ118と比較すると、消費電力が非常に大きくなる。一方、本実施形態の構成によれば、電波式センサ部110の電源及びレーダ波RWの送受信のON/OFFを焦電センサ118における検知結果に基づき切り換えつつ、対象者の検知中のみウェイクアップして、レーダ波RWを送受信する機能を実現できるので電波式センサ送信機10の消費電力を大幅に削減することができる。
【0151】
そして、制御部121は、電波式センサ送信機10の電源がOFFにされるまで、ステップSa9~14のループを繰り返し実行して、電源がOFFにされた時点で強制的に処理が終了する。
【0152】
この結果、電波式センサ送信機10の電源がONの状態においては、出入口EE近傍における対象者の移動状況に基づき、順次、対象者の外出及び帰宅が検知されるとともに、当該検知結果に対応する対象者データが生成されて対象者見守り装置20に送信されることとなる。一方、対象者見守り装置20の制御部222は、無線部211を介して出入口EEに設置された電波式センサ送信機10から取得した対象者データに基づき、対象者が在宅中なのか外出中なのかを特定しつつ、在宅及び外出の別を管理する。
【0153】
(2)存在確認・微動検知モードが選択されている場合の動作
本モードは、出入口EE以外の居室(トイレ、寝室、居間等)に設置された電波式センサ送信機10にて設定されるモードであり、本モードによる動作に先立ち、設定モードにてステップSa3~7の処理を実行して、自機の設置された居室にて対象者の異常を検知するために必要な各種パラメータ(図8~11参照)を設定することが必要となる。このため、これらの居室に設置する電波式センサ送信機10に関しては事前に設定モードにて必要なパラメータ(例えば、トイレであれば、天井高さ「LS」や便器高さ、身長「H」、座位高さ「L2」等のパラメータ及び座位高さの閾値パラメータや声かけ時間の閾値パラメータ等)の設定後、一度電源をOFFにして、スイッチ115により外出・帰宅検知モードを選択し、電源を再投入することが必要となる。なお、座位高さパラメータ「L2」や座位高さの閾値パラメータ、臥位高さパラメータ等に関しては、上述ように設定モードにて予め設定してもよく、所定期間における座位高さ等の計測履歴に基づいて設定する構成してもよい。
【0154】
そして、制御部121は、電源が再投入時された際の初期化処理(ステップSa1)において、設定モードにて設定されたパラメータを利用可能にセットした後、まず、焦電センサ118により、対象者が検知されるまで(ステップSa15「No」)、電波式センサ部110の電源をOFFにして(ステップSa16)、スリープモードに移行する(ステップSa17)。
【0155】
この状態において対象者が焦電センサ118の検知エリア内に侵入して、焦電センサ118が対象者の発する赤外線を検知すると、制御部121は、ステップSa15において「Yes」と判定し、電波式センサ部110の電源をONにさせた後(ステップSa18、存在確認モードに移行して(ステップSa19)、例えば、1秒程度の間欠動作間隔にて電波式センサ部110にレーダ波RWを送受信させつつ対象者までの距離や角度を検知させ、監視対象居室内に所在する対象者までの距離や角度の変化量に基づき、対象者の大きな体動を検知する状態に移行する(ステップSa19)。なお、この存在確認モードにおいて、制御部121は、電波式センサ部110から供給される距離データ及び角度データに基づき、監視対象となる居室内に所在する対象者の体動を検知しつつ生成した対象者データを、例えば30秒程度の間隔にて対象者見守り装置20に送信する。
【0156】
次いで、制御部121は、検知された体動を設定モードにて設定されたモード切り換えの判定基準となる閾値(例えば、数cm)と比較し、検知される体動が当該閾値未満の状態がN回連続したか否かを判定し(ステップSa20)、「No」と判定すると、存在確認モードを維持する。一方、ステップSa20において「Yes」と判定すると、制御部121は、微動検知モードに移行し、例えば100msec程度の間欠動作間隔でレーダ波RWの送受信を行わせつつ、監視対象居室内に所在する対象者の生体微動を電波式センサ部110に検知させる状態に移行する(ステップSa21)。なお、回数「N」の具体的な値は任意であり、例えば、存在確認モードにて1秒間隔で間欠動作を行い、対象者の体動を検知しつつ対象者データの生成を行う構成を採用し、当該閾値以上の体動が10秒間検知されない場合に微動検知モードに移行する構成を採用する場合には、「N=10」と設定すればよい。また、微動検知モードにおいてデジタル信号処理部1107は、上述のようにIF信号の位相成分の変位量「Δφ」に基づき、100msec程度の間隔にて、「1mm」前後の微少変位量「Δd1」を検知しつつ生体微動データを生成する。そして、制御部121は、デジタル信号処理部1107から供給される生体微動データに基づき、対象者の生体微動の状態を示す対象者データを生成して、対象者見守り装置20に送信する構成になっている。このとき、制御部121は、振動検知部119における振動の検知結果を監視して、所定の閾値以上の振動が検知されている期間に生成された生体微動データに関してはキャンセルしつつ対象者データを生成し、当該生成した対象者データを所定の時間間隔にて対象者見守り装置20に送信する。なお、このとき、(a)寝室設置の電波式センサ送信機10の場合、上述のように制御部121が微動検知モードに維持されている時間数から対象者の睡眠時間を上記手法により推定するとともに、微動検知モードの維持時間数と声かけまでの時間の閾値に基づいて声かけを実施する構成になっている。そして、制御部121は、検知した生体微動の検知結果を示す対象者データを、対象者見守り装置20に送信する。一方、対象者見守り装置20は、生体微動のみを示す対象者データの取得継続時間数をリアルタイムクロック221により計時しつつ、睡眠時間数の閾値パラメータと比較して、当該状態の維持時間数が閾値パラメータにより示される時間数を超えると、「異常」と判定する構成になっている。また、(b)トイレ設置の電波式センサ送信機10の場合、この微動検知モードにおいて、制御部121が、電波式センサ部110により検知される検知距離「L」を座位高さの閾値パラメータと比較し、検知距離「L」が閾値を超えた状態の維持時間数をリアルタイムクロック114により計時しつつ、声かけ時間の閾値を超えた時点で、上述の手法にて声かけを実施しつつ、生体微動の対象者データを対象者見守り装置20に送信するようになっている。一方、対象者見守り装置20は、トイレ設置の電波式センサ送信機10から取得される対象者データに基づき、対象者の入室タイミングから退室タイミングまでの時間数をリアルタイムクロック221により計時して、滞在時間数が閾値パラメータを超えた時点で、「異常」と判定することとなる。
【0157】
そして、制御部121は、微動検知モードにおいて電波式センサ部110から供給される距離、角度及び生体微動の各データに基づき、対象者の体動が設定モードにて設定されたモード切り替えの判定基準となる閾値以上であるか否かを判定する状態に移行し(ステップSa22)、検知される体動が当該閾値以上である場合に、制御部121は、処理をステップSa19にリターンさせて、再度存在確認モードに移行する一方、検知される体動が当該閾値未満の場合、電波式センサ部110により対象者が不在になったものと検知されたか否かを判定して(ステップSa23)、「No」と判定すると、処理をステップSa22にリターンさせ、微動検知モードを維持する。一方、ステップSa23において対象者が不在であると検知した場合、処理をステップSa15にリターンさせ、焦電センサ118によって、対象者の存在が検知されなければ(ステップSa15「No」)、電波式センサ部110の電源をOFFにした後(ステップSa16)スリープモードに移行して(ステップSa17)、電波式センサ部110によるレーダ波RWの送受信を停止させるのに対して、対象者の存在が焦電センサ118により検知されると(ステップSa15「Yes」)、ステップSa16以降の処理を実行する。以降、電波式センサ送信機10の電源がOFFにされるまで、ステップSa15~23の処理を繰り返し、存在確認モードにおいては、検知された対象者の距離及び角度に基づく大きな体動の検知結果に対応する対象者データを生成して、対象者見守り装置20に送信する一方、微動検知モードにおいては、検知された対象者の生体微動に対応する対象者データを生成して、対象者見守り装置20に送信する(ステップSa19及びSa21)。
【0158】
この結果、本実施形態の電波式センサ送信機10においては、図13に示すように、焦電センサ118の検知エリア内に対象者が所在しない期間(未入室又は退室後の期間)に関しては、スリープモードに維持され、省電力化が実現される。
【0159】
また、対象者が監視対象居室に入室して焦電センサ118により対象者の存在が検知された場合、(a)閾値以上の大きな体動が検知されている期間に関しては、存在確認モードにて1秒程度の間欠動作間隔でレーダ波RWを送受信して、対象者の体動を検知する間欠動作を行う一方、(b)対象者の存在確認後、体動が閾値未満の状態が所定期間(N回体動を検知する期間)継続すると、微動検知モードに移行し、100msec程度の間欠動作間隔でレーダ波RWの送受信を繰り返して、生体微動を検知し、その後、また、閾値以上の体動が検知された時点で、再び存在確認モードに移行し、対象者が退室して焦電センサ118により存在が検知されなくなった時点でスリープモードに移行させることができるので消費電力を大幅に削減することができる。なお、例えば、本発明の「第1及び第2の時間間隔」は、本実施形態の「1秒及び100msec」に相当する。また、例えば、滞在時間数や睡眠時間数等の時間数を電波式センサ送信機10側で検知する構成を採用する場合、制御部121は、各モードにて動作している時間数をリアルタイムクロック114により計時して、各時間数に対応するデータを対象者データの一部として生成し、又は、対象者データとともに対象者見守り装置20に送信するようにすればよい。
【0160】
[7.2]対象者見守り装置20の動作
次いで、図14を用いて、本実施形態の対象者見守り装置20の動作について説明する。なお、図14は、本実施形態の対象者見守り装置20において制御部222が実行するメイン処理を示すフローチャートである。
【0161】
図14に示すように、本実施形態の電波式センサ送信機10においては、まず、電源がONにされると、制御部222は、電源投入時の初期化処理を実行し(ステップSb1)、スイッチ214により設定されているモードが、(a)「設定モード」であるか、(c)存在確認・微動検知モードであるかを判定する(ステップSb2)。なお、本実施形態において対象者見守り装置20は居間に設置されるものであり、外出及び帰宅の検知に利用されることはないので、設定可能な動作モードに外出・帰宅検知モードは設けられていない。そして、ステップSb2の判定において設定モードが選択されているものと判定すると、制御部222は、ステップSb3~6の処理を実行し、パラメータの設定を行った後、電源OFFを待機して(ステップSb7)、電源OFFにより処理が強制終了される。なお、ステップSb3~7の処理は、電波式センサ送信機10の制御部121が実行するステップSa3~7の処理と基本的に同様であるが、対象者見守り装置20において設定されるパラメータには、異常検知のための閾値パラメータ(例えば、座位高さの閾値パラメータや滞在時間数や不在時間数等の時間関連の閾値パラメータ)が含まれるので、ステップSb6においては、これら閾値パラメータも上記の手法により設定することが必要となる。このため制御部222は、これら閾値パラメータに関してもステップSb6において設定することになる。
【0162】
一方、スイッチ214により、存在確認・微動検知モードが選択されている場合、制御部222は、対象者宅MH内の各居室及び出入口EE近傍に設置された電波式センサ送信機10から当該電波式センサ送信機10にて生成された対象者データを取得して、メモリ内に記憶させつつ異常判定に利用可能な状態に維持させる(ステップSb8)。このとき、制御部222は、出入口EE近傍に設置された電波式センサ送信機10から取得した対象者の外出及び帰宅の判定結果を示す対象者データに基づき、対象者が、在宅状態か外出状態かを特定して、在宅中及び外出中の別をメモリ内に記憶して管理する構成になっている。
【0163】
次いで、制御部222は、自機に搭載された電波式センサ部210によりレーダ波RWを送受信させつつ、自機の設置された居室(本実施形態においては居間)内に所在する対象者の対象者データを生成する(ステップSb9)。このとき、制御部222は、基本的に電波式センサ送信機10にて存在確認・微動検知モードが選択されている場合に実行される処理(すなわち、図12のステップSa15~23と同様の処理)を実行する。但し、上述のように対象者見守り装置20は、基本的に商用電源により運用することが前提となり、焦電センサの検知結果に応じて電波式センサ部210をON/OFFする機能は設けられていない。このため、ステップSb9において制御部222は、ステップSa15~18の処理は行わず、ステップSa19~23と同様の処理を実行しつつ、自機に対応する対象者データを生成する構成になっている。このとき、制御部222は、図9の手法にて対象者データを生成しつつ、生成した対象者データをメモリ内にバッファリングさせて、異常判定に利用可能な状態に維持させる。また、このとき、制御部222は、存在確認モードにおいては、電波式センサ送信機10の場合と同様に、1秒程度の間欠動作時間間隔にてレーダ波RWの送受信を繰り返して居間内の対象者の大きな体動を検知し、対象者データを生成する一方、微動検知モードにおいては、電波式センサ送信機10の場合と同様に、100msec程度の間欠動作間隔にてレーダ波RWの送受信を繰り返し、居間内の対象者の生体微動を検知して対象者データを生成し、メモリ内に異常判定に利用可能に記憶させる構成になっている。この構成により、本実施形態の対象者見守り装置20は、電波式センサ部210における消費電力量を削減することが可能となる。
【0164】
このようにして、各電波式センサ送信機10及び自機の生成した対象者データがメモリ内にバッファリングされた状態になると、制御部222は、当該対象者データとメモリ内に記憶された閾値パラメータに基づき上記手法(図8~10参照)により、対象者に異常が発生したか否かを判定し(ステップSb10)、「No」(すなわち、異常なし)と判定すると、処理をステップSb8にリターンさせ、再度ステップSb8以降の処理を実行する一方、「Yes」(すなわち、異常あり)と判定すると、対象者が在宅状態にあるか否かを判定する(ステップSb11)。そして、ステップSb11において「Yes」(すなわち、在宅状態)と判定すると、通報形態を選択し(ステップSb12)、選択された通報形態が「通報形態1」である場合、リレー出力部219を駆動して、接点出力を行うことにより端末設備TEを介して、通報受信装置30発呼しつつ、緊急通報メッセージを送信して(ステップSb13)、処理をステップSb8にリターンさせる。
【0165】
一方、ステップSb12において選択された通報形態が「通報形態2~5」である場合、制御部222は、対応する通信サービスに応じた手順に従い、電文形式にて緊急通報メッセージを生成し、当該緊急通報メッセージを通報受信装置30に送信した後(ステップSb14)、処理をステップSb8にリターンさせる。この結果、通報受信装置30においては、音声及び画像の少なくとも一方を用いて見守り者に緊急通報メッセージが通知されることとなる。
【0166】
その後、制御部222は、対象者見守り装置20の電源がOFFにされるまで、ステップSb8~14の処理をループさせることにより、常時出入口EEの電波式センサ送信機10から取得した対象者データに基づき外出及び在宅の状態を更新しつつ、各居室に設置された電波式センサ送信機10にて生成された対象者データ又は自機の生成した対象者データの少なくとも一方に基づき、随時、対象者に異常が発生したか否かを判定し(ステップSb10)、在宅状態の時に異常と判定すると、通報を行う(ステップSb13及び14)。
【0167】
以上説明したように、本実施形態の対象者見守りシステム1は、出入口EE近傍に設置した電波式センサ送信機10により対象者の外出及び帰宅を検知して、対象者が在宅状態にあるか否かを管理するとともに、在宅状態の時に、対象者が毎日利用する居室に設置された他の電波式センサ送信機10及び対象者見守り装置20の少なくとも一方にて生成された対象者データと設定モードにて設定された各種パラメータに基づき対象者に発生した異常を検知し、異常検知時に通報受信装置30に緊急通報メッセージを送信する構成になっている。この結果、本実施形態の対象者見守りシステム1は、対象者宅MH内の全ての居室に電波式センサ送信機10を設けなくても、在宅中の対象者に発生した異常を確実に検知して、見守り者に通報でき、システム構築時のコストを削減しつつ、低コストに且つ高精度に在宅中の対象者の身体状況を監視しつつ、異常の発生を見守り者に通報することができる。
【0168】
また、本実施形態の電波式センサ送信機10は、焦電センサ118によって、対象者の存在が検知されている場合にのみスリープモードからウェイクアップして、レーダ波RWを送受信しつつ対象者データを生成するので、電波式センサ送信機10の消費電力を削減し、電波式センサ送信機10をバッテリ駆動する場合であっても、長い駆動時間数を確保することができる。
【0169】
[8]変形例
[8.1]変形例1
上記実施形態においては、出入口EE近傍の天井部に電波式センサ送信機10を設置する場合を例に説明を行ったが、電波式センサ送信機10は、出入口EE近傍の通路と並行になる壁部に設置する構成にしてもよい。この場合、上記図7に示す外出及び帰宅の判定手法とは異なる手法にて対象者の外出及び帰宅を判定することが必要となるので、図15を用いつつ、電波式センサ送信機10を出入口EE近傍の壁部に設置した場合の外出及び帰宅の判定原理について説明する。なお、図15は、対象者宅MHの出入口EE(玄関)近傍の壁部に設置された電波式センサ送信機10により対象者の外出及び帰宅を検知する際の原理を説明する図である。
【0170】
図15に示すように、出入口EE近傍の壁部に電波式センサ送信機10を設置する場合、電波式センサ送信機10の設置された壁に対して直角水平直線を「0°」として、室内方向を「+」の角度、戸外方向は「-」の角度に設定する。また、上記実施形態と同様に出入口EE近傍にエリアA~Cを設定し、各々、(A)対象者が室内の出入口EE近傍の屋内側にいる状態で、鉛直角度θが、「+」方向に「X°」より大きいエリアをエリアA、(B)対象者が出入口EE近傍の屋内側にいる状態で、鉛直角度「θ」が、「+X°」~「-X°」のエリアをエリアB、(C)玄関ドアを開けた状態で、鉛直角度θが、「-」方向に「X°」より大きいエリアであって玄関ドアが閉まった状態においては、角度検知しないエリアをエリアCに設定する。なお、この場合、「X°」は、対象者が通路幅のどの場所を通過するかと事前に特定することができないため、そのままでは値を設定することが難しくなる。このため、本変形例においては、通路幅の中央部分を対象者が通過するケースを想定して「X°」の値を決定する方法を採用する。また、電波式センサ送信機10は、出入口EE近傍の壁部に「1~1.2m」程度の高さで設置するものとする。
【0171】
このとき、電波式センサ送信機10に搭載された電波式センサ部110の視野角が、「±45°」である場合を想定すると、対象者が視野角外である「1」の位置よりも図面右側の室内側に所在する場合、電波式センサ送信機10においては対象者の存在が検知されず、検知結果は、「不検知」の状態に維持されることとなる。この状態(すなわち、対象者が在宅状態であり、且つ、「不検知」の状態)において、対象者が移動して、視野角内に侵入した時点で対象者の存在が電波式センサ送信機10により検知されることとなる。例えば、対象者が視野角外の「1」の位置から「6」の位置に向かって移動した場合、「2」、「3」、「4」、「5」、「6」の各位置に対象者が存在する状態で電波式センサ送信機10が検知する対象者までの鉛直角度は、「θ1」→「θ2」→「θ3」→「θ4」→「θ5」と変化することになる。
【0172】
このとき、(1)図15のように、電波式センサ送信機10の設置位置水平直線と通路反対側の壁の交点(すなわち、「0m」の点)から「±0.5m」の範囲をエリアBに設定すると、エリアBは、「-X°~+X°」までの「2X°」にて規定できる。このため、本変形例において電波式センサ送信機10は、以下の式10に基づき、各エリアを規定する「X°」を算出する。
【0173】
X°=tan-1[(2W/L)]・・・(式10)
【0174】
ここで、「L」は、電波式センサ送信機10の設置場所の通路幅を示し、(例1)例えば、通路幅「L=1.5m」、「W=0.5m」の場合、「X°=tan-1[W/(1/1.5)]=33.7°」と算出される一方、(例2)通路幅「L=3m」、「W=0.5mの場合、「X°=tan-1[(0.5×2/3)]=18.4°」と算出される。
【0175】
この結果、上記例1の場合、(A)視野角の「+」方向の上限である「+45°」から「X°=+33.7°」までの鉛直角度「θ」により規定される「+1.5m」~「+0.5m」の範囲がエリアA、(2)「X°=-33.7°~+33.7°」までの鉛直角度「θ」により規定される「+0.5m」~「-0.5m」の範囲がエリアB、(C)「X°=-33.7°」から視野角の「-」方向の上限である「-45°」までの鉛直角度「θ」により規定される「-0.5m」~「-1.5m」の範囲がエリアCに設定されることになる。また、上記例2の場合、(A)視野角の「+」方向の上限である「+45°」から「X°=+18.4°」までの鉛直角度「θ」により規定される「+1.5m」~「+0.5m」の範囲がエリアA、(2)「X°=-18.4°~+18.4°」までの鉛直角度「θ」により規定される「+0.5m」~「-0.5m」の範囲がエリアB、(C)「X°=-18.4°」から視野角の「-」方向の上限である「-45°」までの鉛直角度「θ」により規定される「-0.5m」~「-1.5m」の範囲がエリアCに設定されることになる。なお、本変形例においてもホーンアンテナでビームを狭くする等、レーダ波RWを照射する方向を工夫することにより、床面近傍のペット等を不検知にすることが可能である。
【0176】
そして、本本変形例において電波式センサ送信機10は、(1)対象者が在宅状態において対象者が室内の角度検知エリア外からエリアAに入り、その後エリアA、B、Cでうろついた場合であっても、対象者が「エリアA」→「エリアB」→「エリアC」と移動したことを検知した後、ドアが閉められ、対象者が不検知となった時点で、対象者が外出したものと判定する。一方、(2)対象者が外出中の状態において、ドアが開いた後、エリアC、B、Aでうろついた場合であっても、「エリアC」→「エリアB」→「エリアA」と移動したことを検知した後、「不検知」となった場合に、電波式センサ送信機10は、対象者が帰宅したものと判定する構成になっている。
【0177】
そして、本変形例においても電波式センサ送信機10の制御部121は、以上の手法により対象者の外出及び帰宅を検知して、その検知結果(すなわち、外出又は帰宅の判定結果)を示す対象者データを生成しつつ、対象者見守り装置20に送信する。この結果、対象者見守り装置20においては、電波式センサ送信機10から受信した対象者データに基づき、対象者が在宅しているのか、外出しているのかが特定及び管理され、対象者が在宅中の状態で各電波式センサ送信機10及び自機にて生成された対象者データに基づく異常判定がなされることになる。なお、他の点は、上記実施形態と同様である。
【0178】
[8.2]変形例2
上記実施形態においては、通報形態として、通報形態1~5を採用する場合を例に説明を行ったが、他の通報形態を採用する構成としてもよい。また、対象者見守り装置20に3G、4G、5Gの移動体通信サービスを利用するための通信機能を無線通信部218に追加して、利用者スマートフォンUSを介することなく、直接移動体通信サービスの通信システムを構成するGW/基地局と通信可能とする構成を採用してもよい。この場合、利用者スマートフォンUSは利用する必要性がなくなる。
【0179】
[8.3]変形例3
上記実施形態においては、説明の理解を容易にするため、1×2のSIMO(Single Input Multi Output)方式の電波式センサ部110及び210を利用する場合(図4)を例に説明したが、受信用アンテナRXAの数を増やして、距離等の検知能力を向上させ、或いは、MIMO(Multi-Input Multi-Output)方式の電波式センサ部110及び210を利用する構成を採用することも可能である。なお、この場合における電波式センサ部の構成及び距離等の検知手法は従来と同様であるため、詳細を省略する。
【0180】
[8.4]変形例4
上記実施形態においては、存在確認モードと微動検知モードを体動の検知結果に応じて切り換える構成を採用したが、モード切り換えを行わない構成を採用することも可能である。
【0181】
[8.5]変形例5
上記実施形態においては、対象者見守り装置20に電波式センサ部210を設け、対象者宅MH内に設置する電波式センサ送信機10を1台削減して、低コスト化を実現する構成としたが、対象者見守り装置20に電波式センサ部210を搭載することは、必須ではない。この場合、対象者見守り装置20の制御部222は、ステップSb9の処理を省略して、ステップSb8において各電波式センサ送信機10から取得した対象者データのみに基づき、に対象者に異常が発生したか否かを判定する(ステップSb10)構成にすればよい。この場合、電波式センサ送信機10の設置する居室の数を1部屋減らしてもよく、1台電波式センサ送信機10を追加して同じ数の居室を監視するようにしてもよい。さらに、図2に示す他の居室(例えば、キッチンや洋室、シューズインクローゼット)内に追加の電波式センサ送信機10を設置して、各居室において対象者を監視する構成を採用してもよい。本構成により、各部屋で見守りすることができるので、対象者の生活パターンを時系列で掌握でき、普段と違う場合の異常判定が容易になる。
【0182】
[8.6]変形例6
上記実施形態においては、各電波式センサ送信機10及び対象者見守り装置20にて生成された対象者データに基づき、対象者に異常が発生したか否かを判定し、異常判定した場合に通報受信装置30に緊急通報メッセージを送信する構成を採用していたが、各電波式センサ送信機10から取得した対象者データに基づき対象者がどの居室に何分間所在しているのかを特定しつつ、対象者見守り装置20にて対象者のライフログを生成及び蓄積するとともに、対象者の1日の行動パターンを特定して、対象者が当該特定された行動パターンと異なる行動を行った場合に、異常が発生したものと判定する構成としてもよい。また、この場合、対象者データを図示せぬクラウド上のサーバ装置に順次アップロードし、当該対象者データに基づき、サーバ装置にて、対象者のライフログを蓄積していき、ライフログに基づく機械学習を行い、学習によって得られた学習モデルをサーバ装置から対象者見守り装置20に配信して、対象者見守り装置20が当該学習モデルを用いて異常の発生を検知する構成としてもよい。本構成により、対象者の実際の行動に基づき、異常の発生を検知できるので、高精度に対象者の見守りを実現できる。
【符号の説明】
【0183】
1…対象者見守りシステム、10…電波式センサ送信機、110…電波式センサ部、111…USBインターフェース、112…電源部、113…リセット回路、114…リアルタイムクロック、115…スイッチ、116…LED、117…無線部、118…焦電センサ、119…振動検知部、120…発音体、121…制御部、1101…外部インターフェース部、1102…チャープ発振部、1103…送信部、1104-1、2…受信部、1105-1、2…ミキサ、1106-1、2…ADC、1107…デジタル信号処理部、TXA…送信用アンテナ、RXA1、2…受信用アンテナ、20…対象者見守り装置、210…電波式センサ部、211…無線部、212…振動検知部、213…発音体、214…スイッチ、215…LED、216…電源部、217…リセット回路、218…無線通信部、2181…LoRa(登録商標)トランシーバ、2182…無線LAN/BLEトランシーバ、219…リレー出力部、220…USBインターフェース、212…リアルタイムクロック、222…制御部、RW…レーダ波、EE…出入口


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15