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特開2024-877流体機器、及び、流体機器の凍結割れ防止機能付加方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000877
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】流体機器、及び、流体機器の凍結割れ防止機能付加方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/42 20060101AFI20231226BHJP
   F16K 17/04 20060101ALI20231226BHJP
   F16K 17/06 20060101ALI20231226BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20231226BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
F04D29/42 A
F16K17/04 C
F16K17/04 Z
F16K17/06 A
F16K17/06 B
F16K27/00 B
F16K51/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099848
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 瞬生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一輝
【テーマコード(参考)】
3H051
3H059
3H066
3H130
【Fターム(参考)】
3H051AA03
3H051BB02
3H051BB07
3H051CC04
3H051CC11
3H051CC14
3H051FF02
3H059AA12
3H059BB22
3H059BB26
3H059BB30
3H059CA28
3H059CD05
3H059CE01
3H059CE06
3H059EE01
3H059FF02
3H066AA04
3H066BA17
3H066BA35
3H066EA08
3H130AA03
3H130AB22
3H130AB42
3H130AC30
3H130BA37A
3H130CA21
3H130DG10X
(57)【要約】
【課題】機器を分解することなく排水開始の基準圧力を調整できるようにする。
【解決手段】流体機器(遠心ポンプ301)は、流体を流す流路(吸込流路305、渦巻流路309等)と、貫通孔(ドレン穴310、ゲージ穴311,312等)と、を有するケーシング(渦巻ケーシング302)と、貫通孔と接続しているとともに、流体が貫通孔を通じて流れこむコック101と、を備える。コックは、開口部(入口流路112)と、開口部を塞ぐとともに流体を堰き止める弁106と、流体を外部に排出する排出孔110と、を有する。コックは、流体の圧力増加に基づき弁が移動することで、開口部と排出孔とが連通する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流す流路と、貫通孔と、を有するケーシングと、
前記貫通孔と接続しているとともに、前記流体が前記貫通孔を通じて流れこむコックと、を備え、
前記コックは、
開口部と、当該開口部を塞ぐとともに前記流体を堰き止める弁と、流体を外部に排出する排出孔と、を有し、
前記流体の圧力増加に基づき前記弁が移動することで、前記開口部と前記排出孔とが連通する、流体機器。
【請求項2】
前記コックが接続される前記貫通孔は、ドレン穴である、請求項1に記載の流体機器。
【請求項3】
前記流体が吸い込まれる吸込口部または前記流体が吐き出される吐出口部にはフランジが形成されており、
前記コックが接続される前記貫通孔は、フランジ側のゲージ穴である、前記請求項1に記載の流体機器。
【請求項4】
前記弁は、前記流体に接する側と反対側の面に断熱部材が配置されている、請求項1に記載の流体機器。
【請求項5】
前記弁は、断熱材で構成されている、請求項1に記載の流体機器。
【請求項6】
前記コックは、前記弁と接続している弾性部と、前記弾性部のテンションを調整する調整部とをさらに有する、請求項1に記載の流体機器。
【請求項7】
前記弾性部のテンションは、前記流体の凍結時における圧力よりも小さい値に調整される、請求項6に記載の流体機器。
【請求項8】
前記弾性部は、ばねであり、
前記調整部は、ねじであり、ねじの締めこみ具合により流体の圧力を調整することで、ばね上部に位置する内板を動かし、ばねのテンションを制御し、弁にかかる力を調整する、請求項6に記載の流体機器。
【請求項9】
前記弾性部は、ばねであり、
前記調整部は、注入プラグに注入された流体であり、流体の注入具合により流体の圧力を調整することで、ばね上部に位置する内板を動かし、ばねのテンションを制御し、弁にかかる力を調整する、請求項6に記載の流体機器。
【請求項10】
前記コックは、前記ケーシングと一体化されている、請求項1に記載の流体機器。
【請求項11】
前記ケーシングは、前記コックの取付位置の周辺のみに部分的な断熱機能が設けられている、請求項1に記載の流体機器。
【請求項12】
流体を流す流路を有するケーシングと、
開口部と、当該開口部を塞ぐとともに流体を堰き止める弁と、流体を外部に排出する排出孔と、ドリル部と、を有するコックと、を備え、
前記ケーシングは、任意の場所に前記ドリル部で孔が形成されて前記コックが取り付けられている、流体機器。
【請求項13】
開口部と、当該開口部を塞ぐとともに流体を堰き止める弁と、流体を外部に排出する排出孔と、ドリル部と、を有するコックの前記ドリル部で、流体を流す流路を有する流体機器のケーシングの任意の場所に孔を形成して、前記コックを前記ケーシングに取り付けることで、凍結割れ防止機能が付加される、流体機器の凍結割れ防止機能付加方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機器、及び、流体機器の凍結割れ防止機能付加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用の送水設備・排水設備、ビル・マンションなどの飲料水の給水設備など、流体を扱う設備において、ポンプは、流体に関するシステムの要ともいえる必須の機器である。このポンプの異常や故障は、生活基盤の崩壊や工場ラインの停止などを招くため、避けるべき事象である。ポンプの異常や故障の要因は様々であるが、その1つとして凍結割れがある。凍結割れは、外気温の低下などにより、ポンプ内部の流体(水)が凍結して膨張することで、ケーシングに大きな圧力がかかり、ケーシングが破損する、という現象である。特に、ポンプは屋外に配置されることが多いため、凍結割れが発生し易い。ポンプの凍結割れの対策としては、インバータ制御による凍結防止運転や、不凍液の使用などがある。
【0003】
しかしながら、インバータ制御による凍結防止運転は、電力を消費する上、ポンプを屋外に設置する場合に耐候対策が必要となり、コストがかかってしまう。また、不凍液の使用は、基本的に循環用ポンプにのみ適用可能な点や、不凍液の外部漏出による環境汚染などのデメリットがあることが知られている。さらに、比較的温暖な地域では、流体の凍結があまり発生しないため、日常的に不凍液を使用すると、コストが大きくなってしまう。また、流体の凍結が発生するタイミングの予測も難しいため、効果的な凍結割れの対策を行うことが難しい状況である。このような観点から、凍結割れを防止する技術として、例えば、特許文献1に記載されたものが提案されている。特許文献1に記載された技術は、凍結により上昇した圧力分の水を、スプリングを用いて外部に排出することで、凍結割れの発生を低減するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-64224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術は、排水開始の基準圧力を調整するために機器を分解しなければならない。このような特許文献1に記載された従来技術は、調整に手間を要してしまうため、機器を分解することなく排水開始の基準圧力を調整できるようにすることが望まれている。
【0006】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、機器を分解することなく排水開始の基準圧力を調整できる流体機器、及び、流体機器の凍結割れ防止機能付加方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、流体機器であって、流体を流す流路と、貫通孔と、を有するケーシングと、前記貫通孔と接続しているとともに、前記流体が前記貫通孔を通じて流れこむコックと、を備え、前記コックは、開口部と、当該開口部を塞ぐとともに前記流体を堰き止める弁と、流体を外部に排出する排出孔と、を有し、前記流体の圧力増加に基づき前記弁が移動することで、前記開口部と前記排出孔とが連通する、構成とする。
【0008】
また、本発明は、流体機器の凍結割れ防止機能付加方法であって、開口部と、当該開口部を塞ぐとともに流体を堰き止める弁と、流体を外部に排出する排出孔と、ドリル部と、を有するコックの前記ドリル部で、流体を流す流路を有する流体機器のケーシングの任意の場所に孔を形成して、前記コックを前記ケーシングに取り付けることで、凍結割れ防止機能が付加される、方法とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機器を分解することなく排水開始の基準圧力を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】実施形態1に係る流体機器の一例としての遠心ポンプの正面図である。
図1B】実施形態1に係る流体機器の一例としての遠心ポンプの側面断面図である。
図2】実施形態1で用いるコックの拡大断面図である。
図3】実施形態1で用いるコックの変形例の拡大断面図である。
図4A】実施形態2に係る流体機器の一例としての遠心ポンプの正面図である。
図4B】実施形態2に係る流体機器の一例としての遠心ポンプの側面断面図である。
図5】実施形態2で用いるコックの拡大断面図である。
図6A】実施形態3に係る流体機器の一例としての遠心ポンプの正面図である。
図6B】実施形態3に係る流体機器の一例としての遠心ポンプの側面断面図である。
図7】実施形態4に係る流体機器の一例としての遠心ポンプの正面図である。
図8A】実施形態4で用いるコックの拡大断面図である。
図8B】遠心ポンプに設けられたプラグへのコックの取付説明図である。
図9A】三層構造主外郭を有するコックの概略構成図(1)である。
図9B】三層構造主外郭を有するコックの概略構成図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。なお、本実施形態では、流体機器の一例として、遠心ポンプである片吸込単段渦巻ポンプを例に挙げて説明する。ただし、本発明は、遠心ポンプに限らず流体機器全般に適用することが可能である。
【0012】
[実施形態1]
<遠心ポンプ(流体機器)の構成>
以下、図1A及び図1Bを参照して、本実施形態1に係る流体機器の構成について説明する。図1A及び図1Bは、それぞれ、本実施形態1に係る流体機器の一例としての遠心ポンプ301の正面図と側断面図である。図1Bは、図1Aに示す遠心ポンプ301をY1-Y1線に沿って切断して得られる切り口すなわち断面を、側面方向(矢印方向)から見たレイアウトを示している。本実施形態では、流体機械が遠心ポンプ301である片吸込単段渦巻ポンプとして構成されている場合を想定して説明する。
【0013】
図1A及び図1Bに示すように、遠心ポンプ301は、渦巻ケーシング302と、流体(水)の流れを封止するコック101と、を備えている。渦巻ケーシング302は、流体が吸い込まれる吸込口部313と、流体が吐き出される吐出口部314と、ドレン穴310、ゲージ穴311,312等の貫通孔と、を有する。ドレン穴310は、流体を排出する穴である。ゲージ穴311,312は、圧力測定用の穴である。ドレン穴310、ゲージ穴311,312は、プラグで封止されている。
【0014】
図1Bに示すように、遠心ポンプ301は、渦巻ケーシング302の内部に、渦巻ケーシング302を貫通するように配置された軸線Oを中心に延在する回転軸303と、回転軸303に一体に回転可能に固定された羽根車304を備えている。また、遠心ポンプ301は、吸込流路305と、回転軸303を支持する軸受306と、大気中と水路を隔絶する軸封部307と、軸封部307を支持するケーシングカバー308と、羽根車304を回転させるモータ(図示せず)と、を備えている。
【0015】
渦巻ケーシング302の内部には、吸込流路305、渦巻流路309等の、流体を流す流路が設けられている。流路は、渦巻ケーシング302とケーシングカバー308と軸封部307で作られる空間、及び、羽根車304の収容空間で構成される。水等の流体は、吸込流路305から羽根車304へ流れ込み、羽根車304の回転による遠心力で昇圧され、羽根車304の出口から放出される。渦巻ケーシング302は、羽根車304の収容空間の外周に略円形断面を呈する渦巻流路309を配置したものであり、羽根車304の出口から放出された流体を吐出口部314まで効率よく導く。なお、渦巻流路309の形状は、略楕円形、略台形、略逆三角形等であってもよい。ケーシングカバー308及び軸封部307は、羽根車304によって昇圧された流体の外部への漏出を防止する。
【0016】
<コックの構成>
本実施形態1では、コック101を遠心ポンプ301の任意の場所(図1A及び図1Bに示す例では、ドレン穴310)に取り付けることによって、凍結割れ防止機能を遠心ポンプ301に付加している。以下、図2を参照して、コック101の構成について説明する。図2は、コック101の拡大断面図である。
【0017】
図2に示すように、コック101は、ねじ102と、内板103と、ばね104と、弁106と、外蓋108と、主外郭109と、排出孔110と、ポンプ取付ねじ部111と、入口流路112と、を有している。
【0018】
ねじ102は、内板103の位置を調節し、ばね104の伸縮度合いを調整することで、弁106が流路をふさぐ力、すなわち排出開始の基準圧力を決める。このようなねじ102は、ばね104のテンションを調整する調整部として機能する。
内板103は、ばね104を介して弁106と対向するように配置された円板状の部材である。
ばね104は、弁106を入口流路112の方向に付勢する弾性部材である。
【0019】
弁106は、入口流路112(開口部)を塞ぐとともに流体を堰き止める部材である。弁106は、円柱状の弁本体部105の外周面に施された溝にゴムパッキン107をはめこんだ構成になっている。弁106は、入口流路112からコック101に入り込む流体の凍結による圧力(水圧)上昇に伴って内板103の方向に移動する。
外蓋108は、主外郭109の外側に取り付けられる部材である。
主外郭109は、内板103、ばね104、弁106を収容する円筒状の部材である。
【0020】
排出孔110は、流体を外部に排出する孔である。排出孔110は、主外郭109の側面に設けられている。排出孔110は、弁106が内板103の方向に移動した際に排水流路として機能する。
ポンプ取付ねじ部111は、コック101を遠心ポンプ301の本体に装着するためのねじ部である。
入口流路112は、遠心ポンプ301からコック101に流体が入り込む開口部である。
【0021】
コック101は、主外郭109に各部品を組み込んだ後に、外蓋108を主外郭109に締めこむことで製作される。コック101は、渦巻ケーシング302の任意の場所に設けられた貫通孔に取り付けられる。貫通孔としては、例えば、渦巻ケーシング302の下部に設けられたドレン穴310や、渦巻ケーシング302の吸込みフランジ側のゲージ穴311、渦巻ケーシング302の吐出しフランジ側のゲージ穴312などがある。コック101は、これらの貫通孔(本実施形態では、ドレン穴310)に、ポンプ取付ねじ部111を締めこむことで遠心ポンプ301に取り付けられる。
【0022】
コック101は、流体の圧力増加に基づきコック101の内部で弁106が移動することで、入口流路112と排出孔110とが連通する。これにより、コック101は、流体の圧力増加によりコック101の内部に入り込んだ流体を排出孔110から外部に排出することができる。
【0023】
外蓋108は、所望の強度を確保できれば、金属材又は樹脂材で構成することができる。また、主外郭109は、所望の強度を確保できれば、金属材又は樹脂材で構成することができるが、凍結し易い部位であるため、可能であれば樹脂材で構成するとよい。また、内板103は、所望の強度を確保できれば、金属材又は樹脂材で構成することができる。
【0024】
弁106の天面(内板103との対向面)には、断熱シール113(断熱部材)が取り付けられている。弁106の天面(内板103との対向面)は、流体に接する側と反対側の面である。コック101は、弁106の天面(内板103との対向面)に断熱シール113(断熱部材)を配することにより、ばね104等への熱の伝達を阻害することができる。これにより、ばね104のテンションが変化することを抑制できる。また、コック101は、ばね104等への熱の伝達を阻害すること以外にも、入口流路112から流入する流体(水)が、弁106・主外郭109・入口流路112からなる空間内で凍結するリスクを低減できる。この点について、仮に上記空間内で流体が凍結すると、入口流路112と排出孔110とをつなぐ流路が塞がれるため、流体の凍結によって圧力が上昇しても排水が行われず、凍結割れ防止機能が失われてしまう。コック101は、弁106の天面(内板103との対向面)に断熱シール113を配することにより、凍結割れ防止機能が失われることを低減できる。なお、弁106は、弁本体部105全体を断熱材で構成するようにしてもよい。
【0025】
また、弁106は、ゴムパッキン107を使用せず、弁本体部105自体を弾性体などで製作してもよい。また、弁本体部105は、断熱性を有することが好ましいため、弁本体部105を断熱材で製作したり、内板103に対向する面に断熱部材として機能する断熱シール113を貼り付けたりしてもよい。また、排出孔110は本体側外周上で、内板103から弁106の厚み以上に離れた位置、かつ弁106が閉じた状態のときに、弁106とかかっていない位置であれば、どこに空いていてもよい。排出孔110の形状についても、円形・楕円形・三角形・四角形など指定はなく、また、強度上問題のない範囲で大きさ・個数も増やしてもよい。
【0026】
ばね104は、ゴムや高密度のスポンジなどを代わりに使用して、基準圧力を決定してもよい。また、外郭部分はコック内部が凍結し排水の妨げになることを避けるため、ポンプ取付ねじ部111を除く、流体が通過する区間である入口流路112から排出孔110までの外郭部を断熱シートで覆ってもよい。断熱シートは、断熱塗料や樹脂などのコーティングであってもよいし、主外郭109の中に空気層やウレタンなどの断熱素材の層を作るなどして、コック101自体に断熱機能を持たせてもよい。
【0027】
コック101の各機構の動作は、以下の通りである。すなわち、遠心ポンプ301の運転前に、ねじ102により内板103の位置を変更して、ばね104にかかるテンションを決定し、排水の基準圧力を調整する。この後、任意の時点で遠心ポンプ301が運転を開始する。コック101は、遠心ポンプ301の運転時の入口流路112からの圧力では、弁106が動作せず、排水が行われないようになっている。この後、任意の時点で遠心ポンプ301が運転を停止する。遠心ポンプ301の運転停止時において、渦巻ケーシング302の内部の流体が凍結すると、流体の凍結につれて、内部の圧力とコック101にかかる圧力が徐々に上昇し、入口流路112を通じて、弁106にかかる圧力も同様になる。入口流路112からの圧力がねじ102で調整した基準圧力以下の場合に、弁106は動作せず、排水も行われない。一方、入口流路112からの圧力がねじ102で調整した基準圧力を超えると、排出孔110と入口流路112が解放される位置まで弁106が移動することで、排出孔110から排水が行われる。この排水によって圧力は低下し、弁106は入口流路112を塞ぐように元の位置に戻る。
【0028】
コック101は、入口流路112からの圧力が基準圧力を超える場合に、このような機構で流体を外部に排出する。これにより、渦巻ケーシング302に加わる圧力を抑制し、渦巻ケーシング302の凍結割れを防止する。
【0029】
一般に遠心ポンプは、屋外に配置されることが多いため、凍結割れが発生し易い環境に曝される。一方、本実施形態は、コック101を遠心ポンプ301に取り付けることにより、簡素な構成で安価に凍結割れ防止機能を付加できる。しかも、コック101は流体の圧力調節機能を有するため、本実施形態は、コック101を遠心ポンプ301に取り付けるだけで、簡易かつ安価に圧力調整機能も付加できる。
【0030】
なお、コック101は、ドレン穴310に限らず、ゲージ穴311,312等の任意の場所に取り付けることができる。コック101は、ドレン穴310に取り付けた場合に、一般にドレン穴310は全長が比較的短いため、ケーシング流路とコック101の距離が短くなり、入口流路112が凍結して排水不良になるリスクを低減できる。また、コック101は、ゲージ穴311,312に取り付けた場合に、一般にゲージ穴311,312は全長がドレン穴310よりも長いため、ドレン穴310に取り付けた場合よりも流体の凍結が発生し易くなるが、ゲージ穴311,312は穴径がドレン穴310よりも大きいため、チリや砂などの固形物のつまりを起こし難くすることができる。
【0031】
<変形例>
コック101は、例えば、図3に示すコック201のように、変形できる。変形例では、テンション調整機構であるねじ102の代わりに、液体・気体などの流体を用いる場合を想定して説明する。
【0032】
図3にテンション調整機構を変更したコック201を示す。図3に示すように、本変形例のコック201は、凍結時の圧力上昇を利用し、凍結割れを防止するものである。基本的な排水機構はコック101と同等である。相違点は、コック101はねじ102により内板103の位置を決定していたが、コック201では、ねじ102を廃止して、注入プラグ203を設け、注入プラグ203より流体202を注入し、その注入量により内板103の位置を決定することである。注入した流体202の圧力をポンプ運転時の圧力に合わせることで、基準圧力の調整を確実に実施できる。ねじの物理的破損に配慮しなくてよい点も利点である。
【0033】
注入プラグ203に注入した流体202は、図2に示すねじ102と同様に、内板103の位置を調節し、ばね104の伸縮度合いを調整することで、弁106が流路をふさぐ力、すなわち排出開始の基準圧力を決める。このような注入プラグ203に注入した流体202は、ばね104のテンションを調整する調整部として機能する。
【0034】
<遠心ポンプ(流体機器)の主な特徴>
(1)図1A図1B、及び図2に示すように、本実施形態に係る遠心ポンプ301(流体機器)は、渦巻ケーシング302と、コック101と、を備えている。渦巻ケーシング302は、流体を流す流路(吸込流路305、渦巻流路309等)と、貫通孔(ドレン穴310、ゲージ穴311,312等)と、を有する。流路(吸込流路305、渦巻流路309等)は、吸込口部313から流体を吸い込み、吐出口部314から流体を吐き出す構成になっている。コック101は、貫通孔(本実施形態ではドレン穴310)と接続しているとともに、流体が貫通孔を通じて流れこむ構成になっている。コック101は、入口流路112(開口部)と、入口流路112を塞ぐとともに流体を堰き止める弁106と、流体を外部に排出する排出孔110と、を有している。コック101は、流体の圧力増加に基づき弁106が移動することで、入口流路112と排出孔110とが連通する構成になっている。
【0035】
このような本実施形態に係る遠心ポンプ301は、入口流路112からの圧力が基準圧力を超える場合に、流体を外部に排出する。これにより、渦巻ケーシング302に加わる圧力を抑制し、渦巻ケーシング302の凍結割れを防止できる。
【0036】
(2)図1A及び図1Bに示すように、本実施形態に係る遠心ポンプ301において、コック101が接続される貫通孔は、ドレン穴310であってもよい。
【0037】
このような本実施形態に係る遠心ポンプ301は、ドレン穴310に接続されたコック101において入口流路112からの圧力が基準圧力を超える場合に、流体を外部に排出する。これにより、渦巻ケーシング302に加わる圧力を抑制し、渦巻ケーシング302の凍結割れを防止する。
【0038】
(3)本実施形態に係る遠心ポンプ301において、流体が吸い込まれる吸込口部313または流体が吐き出される吐出口部314にはフランジが形成されており、コック101が接続される貫通孔は、フランジ側のゲージ穴311,312であってもよい。
【0039】
このような本実施形態に係る遠心ポンプ301は、ゲージ穴311,312に接続されたコック101において入口流路112からの圧力が基準圧力を超える場合に、流体を外部に排出する。これにより、渦巻ケーシング302に加わる圧力を抑制し、渦巻ケーシング302の凍結割れを防止する。
【0040】
(4)図2に示すように、本実施形態に係る遠心ポンプ301において、弁106は、流体に接する側と反対側の面に断熱シール113(断熱部材)が配置されている構成にしてもよい。流体に接する側と反対側の面とは、弁106の天面(内板103との対向面)である。
【0041】
このような本実施形態に係る遠心ポンプ301は、弁106の天面(内板103との対向面)に断熱シール113を配することにより、ばね104等への熱の伝達を阻害することができる。これにより、ばね104のテンションが変化することを抑制できる。また、本実施形態に係る遠心ポンプ301は、ばね104等への熱の伝達を阻害すること以外にも、入口流路112から流入する流体(水)が、弁106・主外郭109・入口流路112からなる空間内で凍結するリスクを低減できる。この点について、仮に上記空間内で流体が凍結すると、入口流路112と排出孔110とをつなぐ流路が塞がれるため、流体の凍結によって圧力が上昇しても排水が行われず、凍結割れ防止機能が失われてしまう。本実施形態に係る遠心ポンプ301は、弁106の天面(内板103との対向面)に断熱シール113を配することにより、凍結割れ防止機能が失われることを低減することができる。
【0042】
(5)本実施形態に係る遠心ポンプ301において、弁106は、弁106の天面(内板103との対向面)に断熱シール113を配する代わりに、弁本体部105(図2)全体を断熱材で構成するようにしてもよい。
【0043】
このような本実施形態に係る遠心ポンプ301は、ばね104(図2)等への熱の伝達を阻害することができる。これにより、ばね104のテンションが変化することを抑制できる。
【0044】
(6)図2に示すように、本実施形態に係る遠心ポンプ301において、コック101は、弁106と接続している弾性部(ばね104)と、弾性部のテンションを調整する調整部(ねじ102)とをさらに有する構成にしてもよい。
【0045】
このような本実施形態に係る遠心ポンプ301は、弾性部(ばね104)のテンションを調整することができる。そして、本実施形態に係る遠心ポンプ301は、入口流路112からの圧力が基準圧力(弾性部(ばね104)のテンションの調整値)を超える場合に、流体を外部に排出する。これにより、渦巻ケーシング302に加わる圧力を抑制し、渦巻ケーシング302の凍結割れを防止する。
【0046】
(7)本実施形態に係る遠心ポンプ301において、弾性部(ばね104)のテンションは、流体の凍結時における圧力よりも小さい値に調整されるとよい。
【0047】
このような本実施形態に係る遠心ポンプ301は、弾性部(ばね104)のテンションが流体の凍結時における圧力よりも小さい値に設定されているため、入口流路112からの圧力が基準圧力(弾性部(ばね104)のテンションの調整値)を超える場合に、流体を外部に確実に排出することができる。
【0048】
(8)図2に示すように、本実施形態に係る遠心ポンプ301において、弾性部は、ばね104であり、調整部は、ねじ102であり、ねじ102の締めこみ具合によって、ばね104上部に位置する内板103を動かし、ばね104のテンションを制御し、弁106にかかる力を調整する構成であってもよい。
【0049】
このような本実施形態に係る遠心ポンプ301は、ねじ102の締めこみ具合により流体の圧力を調整することで、弾性部(ばね104)のテンションを制御し、弁106にかかる力を調整することで、入口流路112からの圧力が基準圧力(弾性部(ばね104)のテンションの調整値)を超える場合に、流体を外部に排出することができる。
【0050】
(9)図3に示すように、本実施形態に係る遠心ポンプ301において、弾性部は、ばね104であり、調整部は、注入プラグ203に注入された流体であり、流体の注入具合により流体の圧力を調整することで、ばね104上部に位置する内板103を動かし、ばね104のテンションを制御し、弁106にかかる力を調整する構成であってもよい。
【0051】
このような本実施形態に係る遠心ポンプ301は、流体の注入具合により流体の圧力を調整することで、弾性部(ばね104)のテンションを制御し、弁106にかかる力を調整することで、入口流路112からの圧力が基準圧力(弾性部(ばね104)のテンションの調整値)を超える場合に、流体を外部に排出することができる。
【0052】
以上の通り、本実施形態1に係る遠心ポンプ301(流体機器)によれば、機器を分解することなく排水開始の基準圧力を調整できる。
【0053】
[実施形態2]
以下、図4A及び図4Bを参照して、本実施形態2に係る遠心ポンプ301Aの構成について説明する。図4A及び図4Bは、それぞれ、本実施形態2に係る流体機器の一例としての遠心ポンプ301Aの正面図と側断面図である。図4Bは、図4Aに示す遠心ポンプ301AをY1-Y1線に沿って切断して得られる切り口すなわち断面を、側面方向(矢印方向)から見たレイアウトを示している。
【0054】
図4A及び図4Bに示すように、本実施形態2に係る遠心ポンプ301Aは、実施形態1の遠心ポンプ301(図1A及び図1B参照)と比較すると、渦巻ケーシング302の代わりに、渦巻ケーシング402を備えている点で相違する。渦巻ケーシング402は、ケーシングに一体化されたコック401(図5参照)を備えるものである。図5は、コック401の拡大断面図である。コック401の主外郭109は、遠心ポンプ301Aの渦巻ケーシング402と一体化されている。コック401は、弁106、ばね104、内板103を主外郭109の内部に挿入した後、外蓋108を組み付け、ねじ102を取り付けることで形成される。なお、コック401の入口流路112の径や全長は、好ましくは、排水機構動作の確実性が最も高くなるように決定されるとよい。
【0055】
コック401の各機構の動作は、以下の通り、実施形態1のコック101(図2参照)の各機構の動作と同様である。すなわち、遠心ポンプ301Aの運転前に、ねじ102により内板103の位置を変更して、ばね104にかかるテンションを決定し、排水の基準圧力を調整する。この後、任意の時点で遠心ポンプ301Aが運転を開始する。コック401は、遠心ポンプ301Aの運転時の入口流路112からの圧力では、弁106が動作せず、排水が行われないようになっている。この後、任意の時点で遠心ポンプ301Aが運転を停止する。遠心ポンプ301Aの運転停止時において、渦巻ケーシング302の内部の流体が凍結すると、流体の凍結につれて、内部の圧力とコック401にかかる圧力が徐々に上昇し、入口流路112を通じて、弁106にかかる圧力も同様になる。入口流路112からの圧力がねじ102で調整した基準圧力以下の場合に、弁106は動作せず、排水も行われない。一方、入口流路112からの圧力がねじ102で調整した基準圧力を超えると、排出孔110と入口流路112が解放される位置まで弁106が移動することで、排出孔110から排水が行われる。この排水によって圧力は低下し、弁106は入口流路112を塞ぐように元の位置に戻る。
【0056】
コック401は、入口流路112からの圧力が基準圧力を超える場合に、このような機構で流体を外部に排出する。これにより、渦巻ケーシング302に加わる圧力を抑制し、渦巻ケーシング302の凍結割れを防止する。
【0057】
図4A及び図4Bに示す例では、遠心ポンプ301Aは渦巻ケーシング402の一部に出っ張り部分が設けられており、その出っ張り部分にコック401が一体に設けられている。なお、遠心ポンプ301Aは、出っ張り部分に限らず、任意の場所にコック401を設けることができる。例えば、図4Bに示すように、遠心ポンプ301Aの渦巻ケーシング402の吸込口部313と吐出口部314にはフランジが形成されており、そのフランジの内部には、貫通孔としてのゲージ穴311,312が形成されている。遠心ポンプ301Aは、ゲージ穴311,312と一体にコック401を設けるようにしてもよい。また、遠心ポンプ301Aは、ドレン穴310と一体にコック401を設けるようにしてもよい。
【0058】
コック401の弁106や排出孔110の位置や形状は、実施形態1のコック101(図2参照)と同様にしてよい。また、コック401は、弁本体部105の対向面に、図2に示す断熱シール113を配置するようにしてもよい。コック401は、ドレン穴310に取り付けた場合に、実施形態1のコック101(図2参照)と同様に、入口流路112が凍結して排水不良になるリスクを低減できる。また、コック401は、ゲージ穴311,312に取り付けた場合に、実施形態1のコック101(図2参照)と同様に、チリや砂などの固形物のつまりを起こし難くすることができる。
【0059】
本実施形態に係る遠心ポンプ301Aは、渦巻ケーシング302と一体化されたコック401により、入口流路112からの圧力が基準圧力を超える場合に、流体を外部に排出する。これにより、渦巻ケーシング302に加わる圧力を抑制し、渦巻ケーシング302の凍結割れを防止できる。
【0060】
[実施形態3]
以下、図6A及び図6Bを参照して、本実施形態3に係る遠心ポンプ501の構成について説明する。図6A及び図6Bは、それぞれ、本実施形態3に係る流体機器の一例としての遠心ポンプ501の正面図と側断面図である。図6Bは、図6Aに示す遠心ポンプ501をY1-Y1線に沿って切断して得られる切り口すなわち断面を、側面方向(矢印方向)から見たレイアウトを示している。
【0061】
図6A及び図6Bに示すように、本実施形態3に係る遠心ポンプ501は、渦巻ケーシング302の任意の場所に断熱部材としての断熱シート502を貼り付けたものである。ただし、遠心ポンプ501は、断熱シート502の代わりに、断熱性を有する断熱塗料や樹脂などをコーティングするようにしてもよい。また、遠心ポンプ501は、渦巻流路309(図6B参照)の外壁の中に、空気層やウレタンなどの断熱素材の層を設けるなどして、渦巻ケーシング302自体に断熱機能を持たせるようにしてもよい。
【0062】
図6A及び図6Bに示すように、本実施形態3に係る遠心ポンプ501は、実施形態1に係る遠心ポンプ301(図1A及び図1B参照)と比較すると、コック101周辺に位置する渦巻ケーシング302の外周に断熱シート502を貼り付けている。このような遠心ポンプ501は、コック101の内部における入口流路112付近の流体の凍結を他部分の流体よりも遅らせることができる。これにより、遠心ポンプ501は、入口流路112が氷で詰まり、圧力が弁106へ伝わらず、排水が十分に行われないことを避けることができる。そのため、断熱シート502は、渦巻ケーシング302全体ではなく、コック101の取付位置周辺のみに取り付けるとよい。排水機構を万全に機能させるためには、本実施形態3に係る遠心ポンプ501のように、コック101の取付位置の周辺のみに部分的な断熱機能を設けるとよい。
【0063】
本実施形態に係る遠心ポンプ501は、コック101の取付位置の周辺のみに部分的な断熱機能が設けられていることにより、コック101の入口流路112が氷で詰まり、圧力が弁106へ伝わらず、排水が十分に行われないことを低減できる。
【0064】
[実施形態4]
以下、図7を参照して、本実施形態4に係る遠心ポンプ701の構成について説明するとともに、図8A及び図8Bを参照して、遠心ポンプ701に取り付けるコック601の構成について説明する。図7は、本実施形43に係る流体機器の一例としての遠心ポンプ701の正面図である。図8Aは、コック601の拡大断面図である。図8Bは、遠心ポンプ701に設けられたプラグ801へのコック601の取付説明図である。本実施形態では、既設の遠心ポンプ701のドレン穴310やゲージ穴311,312にコック101を取り付ける際の、渦巻ケーシング302からの水漏れ防止機構について説明する。
【0065】
図7は、ドレン穴310やゲージ穴311,312に、プラグ801が取りついた一般的な既設の遠心ポンプ701の正面構成を示している。プラグ801は、図8Bに示すように、直方体形状を呈する作用部802と、ねじ山部803と、を有する構成になっている。プラグ801は、ねじ山部803の先端をドレン穴310やゲージ穴311,312のねじ穴が噛み合うように押し当て、作用部802にレンチをかませて、時計回り方向に回転させ、ねじ山部803を締め付けることで、ドレン穴310やゲージ穴311,312に取り付けされる。これにより、プラグ801は、ドレン穴310やゲージ穴311,312を塞いでいる。
【0066】
図8Aに示すように、コック601は、実施形態1のコック101(図2参照)と比較すると、ポンプ取付ねじ部111の先端にドリル部602を設けるとともに、ドリル部602に先端流入口603が設けられている点で相違する。先端流入口603は、部分的な流体の流入口として機能する開口部である。
【0067】
コック601のドリル部602は、プラグ801よりも硬い材料で構成されている。図8Bに示すように、プラグ801へのコック601の取り付けは、プラグ801の作用部802の上面の中心にコック601のドリル部602の先端を垂直に押し当て、時計周りにコック601を回転させることで、プラグ801を削りとりながら行われる。
【0068】
他の実施形態のように、単純にドレン穴310やゲージ穴311,312からプラグ801を取り外して、ドレン穴310やゲージ穴311,312にコック101を取り付ける場合に、プラグ801を取り外してからコック101を取り付けるまでの間、ドレン穴310やゲージ穴311,312が解放される。そのため、他の実施形態では、渦巻ケーシング302から水漏れが発生してしまう。一方、本実施形態のように、ドレン穴310やゲージ穴311,312からプラグ801を取り付けたまま、コック601をプラグ801に取り付ける場合に、コック601を取り付けるまでの間、ドレン穴310やゲージ穴311,312が塞がれている。そのため、本実施形態では、渦巻ケーシング302から水漏れが発生することを防止できる。
【0069】
なお、コック601は、ドレン穴310やゲージ穴311,312に取り付けられると、先端流入口603から入口流路112を通って水が内部に流入する。これにより、渦巻ケーシング302の内部での流体の凍結により圧力が上昇する場合に、先端流入口603(図8A及び図8B参照)と入口流路112(図8A参照)とを通じて流体の圧力が弁106に伝わる。その結果、コック601は、実施形態1のコック101と同様に動作して、排水を行う。
【0070】
なお、図8A及び図8Bに示す例では、プラグ801の作用部802の端面にドリル部602で孔を開けてコック601を取り付けている。しかしながら、渦巻ケーシング302の任意の場所にドリル部602で孔を開けてコック601を取り付けるようにしてもよい。ただし、プラグ801の作用部802の端面にコック601を取り付ける場合は、渦巻ケーシング302の任意の場所にコック601を取り付ける場合に比べて、外部にコック601を突出させないようにできるため、コック601が邪魔にならない構成にできる。
【0071】
主外郭109は、好ましくは、強度の高い合成樹脂プラスチック材であるとよい。合成樹脂プラスチック材としては、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のエンジニアリングプラスチックがある。
【0072】
樹脂材は、鋳鉄とくらべ350倍程熱を通し難い。そのため、主外郭109は、樹脂材の採用により主外郭109内の水の凍結を予防できる。なお、上記の樹脂材の中では、ポリエチレンテレフタレートが最も断熱性が大きいため、主外郭109としては、ポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。
【0073】
ドリル部602は、好ましくは、一般的な切削工具に使用される材料であるとよい。一般的な切削工具に使用される材料としては、切削工具鋼(SKS材)、高速度工具鋼(ハイス:SKH材)、超硬合金、セラミック等がある。
【0074】
被切削物が金属製であるため、これらの中でも、ドリル部602としては一定以上の硬さと靭性を持つ超硬合金が特に好ましい。超硬合金は、硬さと靭性のバランスがよく、コック601を取り付ける際に、ドリル部602が欠ける等のアクシデントの発生を抑制できる。なお、硬さの低い切削工具鋼や高速度工具鋼では、そもそも切削ができない可能性がある。また、硬さのみが極端に高く靭性にかけるセラミックでは、切削途中に刃が欠ける等のアクシデントが発生する可能性がある。
【0075】
本実施形態に係る遠心ポンプ701は、すでに現場に設置された既設のポンプに、コック601を取り付けることで、渦巻ケーシング302に加わる圧力を抑制し、渦巻ケーシング302の凍結割れを防止できる。
【0076】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成を加えることも可能である。また、各構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0077】
前記した実施形態では、流体機器が遠心ポンプである場合を想定して説明したが、流体機器は、例えば缶ジュース等の自動販売機であってもよい。
【0078】
また、前記したコック101(図2参照)、コック201(図3参照)、コック401(図5参照)、コック601(図8A参照)は、主外郭109を、二層以上の、複数層を持つ構造にしてもよい。例えば、前記したコック101(図2参照)、コック201(図3参照)、コック401(図5参照)、コック601(図8A参照)は、主外郭109を、図9A及び図9Bに示すコック901の主外郭905のように、変形してもよい。図9A及び図9Bは、三層構造主外郭905を有するコック901の概略構成図である。図9Aは、コック901の全体構成を示している。図9Bは、コック901における三層構造主外郭905の構成を示している。
【0079】
図9Bに示すように、三層構造主外郭905は、外郭904の内側にグラスウールや発泡ポリスチレンなどの断絶材903を配置し、外郭904との間に断絶材903を挟み込むように内郭902を上から挿入して、製作される。図9Aに示すように、外郭904と内郭902は、外蓋108を締めこむことで固定される。また外郭904と内郭902の接触部は、ヘルメチックなどの接着剤で漏水を防止している。内郭902と外郭904は、強度の高い金属、合成樹脂材プラスチック材であればよい。金属ならば、SS材やSC材、合成樹脂プラスチック材ならば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のエンジニアリングプラスチックがあるが、強度も高く、錆にも強いステンレス鋼での製作が望ましい。三層構造主外郭905は、形状を維持するための強度を外郭904と内郭902で補っている。三層構造主外郭905は、断熱性能は高いが強度のない断熱材(グラスウールや発泡ポリスチレンなど)を使用することが可能であるため、合成樹脂プラスチック製の主外郭109よりも高い断熱性を期待できる。
【符号の説明】
【0080】
101 コック
102 ねじ(調整部)
103 内板
104 ばね(弾性部)
105 弁本体部
106 弁
107 ゴムパッキン
108 外蓋
109 主外郭
110 排出孔
111 ポンプ取付ねじ部
112 入口流路(開口部)
113 断熱シール(断熱部材)
201 コック
202 流体
203 注入プラグ
301,301A 遠心ポンプ(流体機器)
302 渦巻ケーシング(ケーシング)
303 回転軸
304 羽根車
305 吸込流路(流路)
306 軸受
307 軸封部
308 ケーシングカバー
309 渦巻流路(流路)
310 ドレン穴(貫通孔)
311 ゲージ穴(貫通孔)
312 ゲージ穴(貫通孔)
313 吸込口部
314 吐出口部
401 コック
402 渦巻ケーシング(ケーシング)
501 遠心ポンプ(流体機器)
502 断熱シート(断熱部材)
601 コック
602 ドリル部
603 先端流入口
701 遠心ポンプ(流体機器)
801 プラグ
802 作用部
803 ねじ山部
901 コック
902 内郭
903 断絶材
904 外郭
905 三層構造主外郭
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B