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特開2024-87725電源システム及び電源システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087725
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】電源システム及び電源システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20240624BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H02J9/06 110
H02J3/38 180
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202670
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】柏原 弘典
(72)【発明者】
【氏名】河▲崎▼ 吉則
【テーマコード(参考)】
5G015
5G066
【Fターム(参考)】
5G015GA06
5G015JA01
5G015JA21
5G015JA52
5G066HB04
5G066HB09
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】系統電圧が変化して機械式スイッチを投入した場合、電力変換器からの短絡電流が発生することによって電力変換器が破損することを防ぐ。
【解決手段】電源系統10から負荷20に給電するための電力線L1に設けられ、電力線L1を開閉する機械式スイッチ3と、電力線L1に設けられ、直流電力を交流電力に変換して負荷20に給電する電力変換器5と、機械式スイッチ3に流れる電流であるスイッチ電流ISWを測定するスイッチ電流測定部81と、機械式スイッチ3及び電力変換器5を制御する制御部9とを備え、制御部9は、電源系統10の異常が発生した場合に、機械式スイッチ3を開放し、電力変換器5が負荷20の電圧を補償する補償制御を行い、電源系統10が復電して機械式スイッチ3を投入した後に、スイッチ電流ISWの目標値であるスイッチ電流目標値Iref1及びスイッチ電流ISWに基づいて、電力変換器5が出力する電流である変換器電流IInvを制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源系統から負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、
前記電力線に設けられ、直流電力を交流電力に変換して前記負荷に給電する電力変換器と、
前記機械式スイッチに流れる電流であるスイッチ電流を測定するスイッチ電流測定部と、
前記機械式スイッチ及び前記電力変換器を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記電源系統の異常が発生した場合に、前記機械式スイッチを開放し、前記電力変換器が前記負荷の電圧を補償する補償制御を行い、
前記電源系統が復電して前記機械式スイッチを投入した後に、前記スイッチ電流の目標値であるスイッチ電流目標値及び前記スイッチ電流に基づいて、前記電力変換器が出力する電流である変換器電流を制御する、電源システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記機械式スイッチの投入が完了した時点から、前記スイッチ電流目標値を0から前記負荷の電流へと徐々に移行させる、請求項1記載の電源システム。
【請求項3】
前記変換器電流を測定する変換器電流測定部をさらに備え、
前記制御部は、前記機械式スイッチの投入が完了した時点から、前記変換器電流に基づいて、前記変換器電流の目標値である変換器電流目標値を0に移行させる、請求項1記載の電源システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記電源系統が復電した場合で前記機械式スイッチの投入が完了する前に、前記電力変換器が前記機械式スイッチに補償する電圧を0とするように前記電力変換器を制御し、前記機械式スイッチの投入が完了した後に、前記スイッチ電流目標値及び前記スイッチ電流に基づいて、前記変換器電流を制御する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の電源システム。
【請求項5】
電源系統の正常時に当該電源系統から負荷に給電し、前記電源系統の異常時に前記電源系統から前記負荷への給電を遮断して前記負荷の電圧を補償し、その後前記電源系統の復電を行う電源システムの制御方法であって、
前記電源システムは、
前記電源系統から前記負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、
前記機械式スイッチに流れる電流であるスイッチ電流を測定するスイッチ電流測定部と、
前記電力線に設けられ、直流電力を交流電力に変換して前記負荷に給電する電力変換器とを備えるものであり、
前記電源系統の異常が発生した場合に、前記機械式スイッチを開放するとともに、前記電力変換器が前記負荷の電圧を補償し、
前記電源系統が復電して前記機械式スイッチを投入した後に、前記スイッチ電流の目標値であるスイッチ電流目標値及び前記スイッチ電流に基づいて、前記電力変換器が出力する電流である変換器電流を制御する、電源システムの制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システム及び電源システムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電源システムでは、例えば特許文献1に示すように、正常時において、電源系統から負荷へと電力線を介して給電している。また異常時において、電力線に設けられた遮断器が開放されることによって、電源系統から負荷への給電が遮断されるとともに、インバータが負荷へと給電することによって、負荷の電圧を補償している。その後、電源系統の電圧である系統電圧が復電されると、遮断器を投入して、再び電源系統から負荷へと給電を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-140781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記の電源システムでは、負荷への電圧供給を継続させるために、インバータは、負荷の電圧が定格電圧となるように負荷に給電している。すなわち、インバータは、系統電圧の低下分を補償している。したがって、系統電圧が低下して遮断器を投入した場合、インバータはその系統電圧の低下分を補償するので、遮断器に電位差が生じてしまう。その結果、遮断器が設けられた電力線において、インバータからの短絡電流が発生するので、インバータの破損を生じる恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、系統電圧が変化して遮断器を投入した場合、インバータからの短絡電流が発生することによってインバータが破損することを防ぐことを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る電源システムは、電源系統から負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、前記電力線に設けられ、直流電力を交流電力に変換して前記負荷に給電する電力変換器と、前記機械式スイッチに流れる電流であるスイッチ電流を測定するスイッチ電流測定部と、前記機械式スイッチ及び前記電力変換器を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記電源系統の異常が発生した場合に、前記機械式スイッチを開放し、前記電力変換器が前記負荷の電圧を補償する補償制御を行い、前記電源系統が復電して前記機械式スイッチを投入した後に、前記スイッチ電流の目標値であるスイッチ電流目標値及び前記スイッチ電流に基づいて、前記電力変換器が出力する電流である変換器電流を制御することを特徴とする。
また、本発明に係る電源システムの制御方法は、電源系統の正常時に当該電源系統から負荷に給電し、前記電源系統の異常時に前記電源系統から前記負荷への給電を遮断して前記負荷の電圧を補償し、その後前記電源系統の復電を行う電源システムの制御方法であって、前記電源システムは、前記電源系統から前記負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、前記機械式スイッチに流れる電流であるスイッチ電流を測定するスイッチ電流測定部と、前記電力線に設けられ、直流電力を交流電力に変換して前記負荷に給電する電力変換器とを備えるものであり、前記電源系統の異常が発生した場合に、前記機械式スイッチを開放するとともに、前記電力変換器が前記負荷の電圧を補償し、前記電源系統が復電して前記機械式スイッチを投入した後に、前記スイッチ電流の目標値であるスイッチ電流目標値及び前記スイッチ電流に基づいて、前記電力変換器が出力する電流である変換器電流を制御することを特徴とする。
【0007】
このような構成であれば、スイッチ電流測定部が機械式スイッチに流れる電流を測定するとともに、電源系統が復電して機械式スイッチが投入された後に、制御部がスイッチ電流目標値及びスイッチ電流に基づいて変換器電流を制御するので、電力変換器から機械式スイッチへと供給される電流が制御されることとなる。したがって、系統電圧が変化して例えば定格電圧といった電圧指令値と系統電圧との間に電位差が生じた場合であっても、変換器電流を制御することによって電力変換器からの短絡電流が発生しないように制御して、電力変換器の破損を防ぐことができる。
【0008】
前記制御部は、前記機械式スイッチの投入が完了した時点から、前記スイッチ電流目標値を0から前記負荷の電流へと徐々に移行させることが好ましい。
【0009】
このような構成であれば、機械式スイッチの投入が完了した時点から、制御部は、スイッチ電流目標値を0から負荷の電流へと移行させ、そのスイッチ電流目標値及びスイッチ電流に基づいて変換器電流を制御するので、スイッチ電流は負荷の電流と同等に制御される。したがって、系統電圧が変化した場合であっても、スイッチ電流と負荷の電流とが同等に制御されるので、機械式スイッチの投入が完了した場合、電力変換器及び機械式スイッチにより構成される回路に流れる電流は0となる。その結果、電源系統からの電流は、機械式スイッチを通って負荷へと流れ、系統電圧が変化しても電源系統と負荷との間に電位差は発生しないので、電力変換器からの短絡電流が発生することなく、電力変換器の破損を防ぐことができる。
また、制御部は、スイッチ電流目標値を負荷の電流へと徐々に移行させるので、負荷への給電を電力変換器から電源系統へと円滑に切り替えることができる。
【0010】
前記変換器電流を測定する変換器電流測定部をさらに備え、前記制御部は、前記機械式スイッチの投入が完了した時点から、前記変換器電流に基づいて、前記変換器電流の目標値である変換器電流目標値を0に移行させるものが挙げられる。
【0011】
このような構成であれば、制御部は、変換器電流に基づいて変換器電流目標値を算出し、その変換器電流目標値を0に移行させるので、電力変換器から機械式スイッチに供給される電流は0となり、スイッチ電流は負荷の電流と同等になる。したがって、制御部はスイッチ電流を測定せずとも変換器電流を制御することができ、制御を容易にすることができる。
【0012】
前記制御部は、前記電源系統が復電した場合で前記機械式スイッチの投入が完了する前に、前記電力変換器が前記機械式スイッチに補償する電圧を0とするように前記電力変換器を制御し、前記機械式スイッチの投入が完了した後に、前記スイッチ電流目標値及び前記スイッチ電流に基づいて、前記変換器電流を制御することが望ましい。
【0013】
このような構成であれば、機械式スイッチの投入が完了する前において、電力変換器が機械式スイッチに補償する電圧は0に制御される。その結果、系統電圧が変化して機械式スイッチの投入が完了する前であっても、電力変換器は、その変化分の系統電圧を機械式スイッチに補償しないので、機械式スイッチの電位差が発生することを防ぐことができ、機械式スイッチの過電流をより抑制することができる。
また、機械式スイッチの投入が完了した後において、制御部は、スイッチ電流目標値及びスイッチ電流に基づいて変換器電流を制御するので、系統電圧が変化して例えば定格電圧といった電圧指令値と系統電圧との間に電位差が生じた場合であっても、変換器電流を制御することによって電力変換器からの短絡電流が発生しないように制御して、電力変換器の破損を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
このように構成した本発明によれば、系統電圧が変化して機械式スイッチを投入した場合、電力変換器からの短絡電流が発生することによって電力変換器が破損することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態における電源システムの構成を示す模式図である。
図2】本実施形態における電源システムの制御部のブロック図である。
図3】本実施形態におけるスイッチ電流目標値の生成を示すブロック図である。
図4】本実施形態におけるスイッチ電流目標値の経時変化を示すグラフである。
図5】本実施形態における電源システムのシミュレーション結果を示す実験例である。
図6】従来例における電源システムのシミュレーション結果を示す実験例である。
図7】他の実施形態における電源システムの制御部のブロック図である。
図8】他の実施形態における変換器電流目標値の経時変化を示すグラフである。
図9】他の実施形態における電源システムのシミュレーション結果を示す実験例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る電源システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し、又は、誇張して模式的に描かれている場合がある。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0017】
<1.装置構成>
本実施形態における電源システム100は、図1に示すように、電源系統10と負荷20との間に設けられる。この電源システム100は、電源系統10の正常時に電源系統10から負荷20に給電する。また、電源系統10の短絡事故等により生じる電源系統10の異常時において、電源システム100は、電源系統10から負荷20への給電を遮断して、蓄電部4から負荷20に給電する。その後、電源系統10が復帰すると、電源システム100は電源系統10から負荷20への給電を再開する。なお、本実施形態における電源システム100は、一相であるが、三相であってもよく、相の数は特に限定されない。
【0018】
具体的に電源システム100は、電源系統10から負荷20への給電を開閉によって切り替える機械式スイッチ3と、直流電力を交流電力に変換して電力線L1に給電する電力変換器5と、電源系統10の電圧である系統電圧Vを測定する系統電圧測定部7と、電源システム100に流れる電流を測定する電流測定部8と、機械式スイッチ3及び電力変換器5を制御する制御部9とを備える。
【0019】
機械式スイッチ3は、電源系統10から負荷20に給電するための電力線L1に設けられ、機械的な動作で電力線L1の開閉を切り替えるものである。機械式スイッチ3は、電源系統10の異常が発生した場合に、電源系統10から負荷20への給電をより速く遮断するために、電源系統10よりも負荷20側に設けられることが好ましいが、これに限定されない。
【0020】
また、本実施形態において、機械式スイッチ3は、駆動回路(不図示)によって開閉される。駆動回路は、機械式スイッチ3の開放が完了した場合にスイッチ開放完了信号を制御部9に出力し、機械式スイッチ3の投入が完了した場合にスイッチ投入完了信号を制御部9に出力する。
【0021】
蓄電部4は、例えば、二次電池(蓄電池)などの電力貯蔵装置(蓄電デバイス)である。この蓄電部4は、直流電力を貯蔵しており、電源系統10の異常が検出された場合、蓄電部4に貯蔵された直流電力は、電力変換器5へと給電される。
【0022】
電力変換器5は、機械式スイッチ3と並列に電力線L1に接続されている。具体的に電力変換器5は、電力線L1と接続点A、B(接続点Aは接続点Bよりも電源系統10側に位置する。)で接続されている。その結果、機械式スイッチ3、電力変換器5、及び、接続点A、Bによる閉回路Cが形成されている。なお、電力変換器5は、注入トランスTを介して電力線L1に接続されており、蓄電部4の直流電力を交流電力に変換して電力線L1に給電する。
【0023】
また、電力変換器5と電力線L1との間には、電力変換器5の出力を安定させるインピーダンス素子6が設けられる。具体的にインピーダンス素子6は、電力変換器5に接続され、交流電流を安定にする連系リアクトル61と、連系リアクトル61に接続され、電圧を安定にするコンデンサ62とを備える。
【0024】
系統電圧測定部7は、系統電圧Vを測定して、系統電圧Vを制御部9に出力するものである。具体的に系統電圧測定部7は、接続点Aよりも電源系統10側に位置する。なお、系統電圧測定部7は、測定した系統電圧Vを測定値として制御部9に出力してもよく、信号として制御部9に出力してもよい。
【0025】
電流測定部8は、電源システム100に流れる電流を測定し、その測定された電流を制御部9に出力するものである。具体的に電流測定部8は、機械式スイッチ3に流れる電流であるスイッチ電流ISWを測定するスイッチ電流測定部81と、負荷20に流れる電流である負荷電流Iを測定する負荷電流測定部82と、電力変換器5に流れる電流である変換器電流IInvを測定する変換器電流測定部83とを備える。なお、電流測定部8は、測定した電流を測定値として制御部9に出力してもよく、信号として制御部9に出力してもよい。
【0026】
より詳細にはスイッチ電流測定部81は、閉回路Cに設けられており、本実施形態において、スイッチ電流測定部81は、接続点A、Bの間の電力線L1に設けられる。なお、スイッチ電流測定部81は、閉回路Cにおける機械式スイッチ3を流れる電流を測定できればよく、例えば、接続点A、Bと電力変換器5との間の閉回路C上に設けられていてもよい。
【0027】
さらに、負荷電流測定部82は、接続点Bよりも負荷20側の電力線L1に設けられる。変換器電流測定部83は、電力変換器5の出力側に設けられ、接続点A、Bと電力変換器5との間の閉回路C上に設けられる。
【0028】
そして、制御部9は、電源系統10の異常が発生した場合に、機械式スイッチ3及び電力変換器5を制御するものである。制御部9は、系統電圧Vが所定範囲外である場合に、電源系統10の異常と判断して、機械式スイッチ3及び電力変換器5の制御を開始する。ここで言う系統電圧Vの所定範囲外とは、系統電圧Vが例えば定格電圧の20%以下又は107%以上の場合を言う。なお、本実施形態において、制御部9は、電力変換器5のオンとオフを繰り返してスイッチングを行い、電力変換器5から出力される電圧を制御するPWM制御を行うものであるが、制御部9が電力変換器5に対して行う制御方法はPWM制御に限られない。以下、電源系統10の異常が発生した場合における制御部9の制御動作について、図2を参照しつつ説明する。
【0029】
電源系統10の異常が発生した場合、制御部9は、機械式スイッチ3を開放し、電力変換器5が負荷20を補償する補償制御を行う。具体的に制御部9は、機械式スイッチ3を開放するスイッチ開放信号を駆動回路に出力し、機械式スイッチ3を制御する。また、制御部9は、負荷電圧を定格電圧とする負荷電圧の目標値Vrefと系統電圧Vとの差に基づいて、負荷電圧を補償する補償電圧VSWを出力し、電力変換器5を制御する。さらに、制御部9は、変換器電流IInvに基づいて、インピーダンス素子6を介して低下する電圧である低下電圧Vを出力し、電力変換器5を制御する。
【0030】
系統電圧Vが復電した後、制御部9は、機械式スイッチ3を投入する。具体的に制御部9は、系統電圧測定部7により測定された系統電圧Vに基づいて、電源系統10の復電を判定する。制御部9が電源系統10の復電と判定した場合、制御部9は、機械式スイッチ3を投入するスイッチ投入信号を駆動回路に出力して、駆動回路は機械式スイッチ3を投入する。なお、ここで言う系統電圧Vの復電とは、系統電圧Vが定格電圧と同等である状態が一定時間継続することを言う。
【0031】
しかして、制御部9は、系統電圧Vが復電して機械式スイッチ3を投入した後に、スイッチ電流ISWの目標値であるスイッチ電流目標値Iref1及びスイッチ電流ISWに基づいて、電力変換器5が出力する電流である変換器電流IInvを制御する。具体的に制御部9は、スイッチ電流目標値Iref1、スイッチ電流ISW、及び、負荷電圧の目標値Vrefの位相に基づいて、スイッチ電流目標値Iref1及びスイッチ電流ISWのdq変換を行う。制御部9は、dq変換されたスイッチ電流目標値Iref1及びスイッチ電流ISWの差を変換器電流IInvとして、変換器電流IInvをPI制御する。制御部9は、負荷電圧の目標値Vrefの位相に基づいて、PI制御された変換器電流IInvを三相座標系に変換して、変換器電流IInvを制御する。なお、変換器電流IInvに対する制御はPI制御に限られず、PID制御等の他の制御であってもよい。
【0032】
本実施形態において、制御部9は、機械式スイッチ3の投入が完了した時点から、スイッチ電流目標値Iref1を0から負荷電流Iへと徐々に移行させる。具体的には、図3に示すように、制御部9は、機械式スイッチ3の投入が完了した時点において、スイッチ電流目標値Iref1を0から移行させる時点である電流移行トリガを出力する。制御部9は、電流移行トリガに基づいて、スイッチ電流目標値Iref1のランプ信号を出力する。そして、制御部9は、負荷電流I及びスイッチ電流目標値Iref1のランプ信号に基づいて、スイッチ電流目標値Iref1を0から負荷電流Iへと徐々に移行させるランプ関数を生成する。なお、図3に示すように、制御部9は、電流移行トリガ及びスイッチ投入完了信号に基づいて、ランプ信号を出力してもよい。
【0033】
制御部9は、このように生成されたランプ関数に基づいて、スイッチ電流目標値Iref1を出力する。具体的には、図4に示すように、制御部9は、系統電圧Vの復電と判定されて(時間t0)から電流移行トリガが出力される(時間t4)までの間、スイッチ電流目標値Iref1を0に制御する。制御部9は、時間t4から、スイッチ電流目標値Iref1を0から負荷電流Iへと徐々に移行させる。スイッチ電流目標値Iref1と負荷電流Iとが同等となった場合、スイッチ電流目標値Iref1とスイッチ電流ISWとの差が0となるので、変換器電流IInvは0となる。その後、系統電圧Vが復電し、かつ、機械式スイッチ3の投入が完了した場合、制御部9は、電力変換器5を停止させる。
【0034】
ここで、時間t4は、機械式スイッチ3の投入が完了したと判断できる時点であればいつでもよい。例えば図4に示すように、時間t4は、制御部9が系統電圧Vの復電を判定した時点(時間t0)、制御部9がスイッチ投入信号を出力した時点(時間t1)、スイッチ電流測定部81がスイッチ電流ISWを測定した時点(時間t2)、駆動回路がスイッチ投入完了信号を出力した時点(時間t3)のいずれかの時間から所定の時間が経過した時点であればよい。
【0035】
<2.実験例>
上述した制御を行う制御部9のシミュレーション結果を示す実験例、及び、従来の制御によるシミュレーション結果を示す実験例をそれぞれ図5及び図6に示す。なお、図5、6において、横軸は時間、縦軸は、系統電圧、系統電圧実効値、スイッチ電流、負荷電圧、負荷電流、変換器電圧、変換器電流である。
【0036】
図5に示すように、系統電圧Vの復電と判定され、例えば系統電圧Vが10%低下した後に、機械式スイッチ3が投入される(時間s1)。機械式スイッチ3の投入が完了し、電流移行トリガが出力されると(時間s2)、制御部9は、スイッチ電流目標値Iref1及びスイッチ電流ISWに基づいて、変換器電流IInvを制御する。これにより、時間s2以降では、スイッチ電流目標値Iref1が0から負荷電流Iに徐々に移行するので、スイッチ電流ISWは負荷電流Iに徐々に移行して、やがて負荷電流Iと同等になり、変換器電流IInvは0に収束する。その結果、スイッチ電流ISW及び負荷電流Iは発散しない。
【0037】
これに対し、図6に示すように、従来の制御では、系統電圧Vが低下した後に機械式スイッチ3を投入する(時間s1)と、電力変換器5が系統電圧Vの低下を補償するように出力するので、機械式スイッチ3に電位差が生じる。その結果、機械式スイッチ3及び電力変換器5に過電流が流れ、スイッチ電流ISW、負荷電流I、変換器電流IInvは発散し、機械式スイッチ3及び電力変換器5が破損する恐れがある。
【0038】
<3.本実施形態の効果>
本実施形態によれば、
スイッチ電流測定部81が機械式スイッチ3に流れる電流を測定するとともに、電源系統10が復電して機械式スイッチ3が投入された後に、制御部9がスイッチ電流目標値Iref1及びスイッチ電流ISWに基づいて変換器電流IInvを制御するので、電力変換器5から機械式スイッチ3へと供給される電流が制御されることとなる。したがって、系統電圧Vが変化して例えば定格電圧といった電圧指令値と系統電圧Vとの間に電位差が生じた場合であっても、変換器電流IInvを制御することによって電力変換器5からの短絡電流が発生しないように制御して、電力変換器5の破損を防ぐことができる。
【0039】
特に本実施形態によれば、機械式スイッチ3の投入が完了した時点から、制御部9は、スイッチ電流目標値Iref1を0から負荷電流Iへと移行させ、そのスイッチ電流目標値Iref1及びスイッチ電流ISWに基づいて変換器電流IInvを制御するので、スイッチ電流ISWは負荷電流Iと同等に制御される。したがって、系統電圧Vが変化した場合であっても、スイッチ電流ISWと負荷電流Iとが同等に制御されるので、機械式スイッチ3の投入が完了した場合、電力変換器5及び機械式スイッチ3により構成される回路に流れる電流は0となる。その結果、電源系統10からの電流は、機械式スイッチ3を通って負荷へと流れ、系統電圧Vが変化しても電源系統10と負荷20との間に電位差は発生しないので、電力変換器5からの短絡電流が発生することなく、電力変換器5の破損を防ぐことができる。
また、制御部9は、スイッチ電流目標値Iref1を負荷電流Iへと徐々に移行させるので、負荷20への給電を電力変換器5から電源系統10へと円滑に切り替えることができる。
【0040】
<4.その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0041】
前記実施形態において、制御部9は、機械式スイッチ3の投入が完了した時点から、スイッチ電流目標値Iref1を0から負荷電流Iへと徐々に移行させるものであったが、制御部9の構成はこれに限られない。例えば、図7及び図8に示すように、制御部9は、機械式スイッチ3の投入が完了した時点から、変換器電流IInvに基づいて、変換器電流IInvの目標値である変換器電流目標値Iref2を0に移行させるものであってもよい。
【0042】
制御部9が変換器電流目標値Iref2を0に移行させる場合のシミュレーション結果を図9に示す。制御部9が復電と判定して(時間s0)、機械式スイッチ3が投入された(時間s1)後に、制御部9が電流移行トリガを出力する(時間s2)。そして、時間s2以降では、制御部9が、変換器電流目標値Iref2を変換器電流IInvから徐々に0に移行するので、電力変換器5から機械式スイッチ3に供給される電流は0となり、スイッチ電流ISWは負荷電流Iと同等になる。したがって、制御部9が変換器電流目標値Iref2を0に移行させる場合、制御部9はスイッチ電流ISWを測定せずとも変換器電流IInvを制御することができ、制御を容易にすることができる。
【0043】
前記実施形態に加えて、電源系統10が復電した場合で機械式スイッチ3の投入が完了する前に、制御部9が、電力変換器5が電力線L1に補償する電圧を0とするように電力変換器5を制御し、機械式スイッチ3の投入が完了した後に、制御部9が、スイッチ電流目標値Iref1及びスイッチ電流ISWに基づいて、変換器電流IInvを制御してもよい。この場合、機械式スイッチ3の投入が完了する前において、電力変換器5が機械式スイッチ3に補償する電圧は0に制御される。その結果、系統電圧Vが変化して機械式スイッチ3の投入が完了する前であっても、電力変換器5は、その変化分の系統電圧Vを機械式スイッチ3に補償しないので、機械式スイッチ3の電位差が発生することを防ぐことができ、機械式スイッチ3の過電流をより抑制することができる。
【0044】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
100・・・電源システム
10 ・・・電源系統
20 ・・・負荷
3 ・・・機械式スイッチ
4 ・・・蓄電部
5 ・・・電力変換器
6 ・・・インピーダンス素子
7 ・・・系統電圧測定部
8 ・・・電流測定部
81 ・・・スイッチ電流測定部
82 ・・・負荷電流測定部
83 ・・・変換器電流測定部
9 ・・・制御部
L1 ・・・電力線

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9