(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087729
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】オイルクーラ固定構造
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20240624BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20240624BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20240624BHJP
B60K 1/02 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B60K11/04 Z
B60K6/46 ZHV
B60K6/40
B60K1/02
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202679
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】今井 恒夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慧輔
(72)【発明者】
【氏名】日下部 慧
【テーマコード(参考)】
3D038
3D202
3D235
【Fターム(参考)】
3D038AA10
3D038AB01
3D038AC01
3D038AC11
3D038AC13
3D038AC20
3D038AC23
3D202AA07
3D202EE23
3D235AA01
3D235BB03
3D235BB45
3D235CC12
3D235DD11
3D235FF32
3D235FF43
3D235FF47
3D235HH02
3D235HH05
3D235HH16
3D235HH21
(57)【要約】
【課題】トランスアクスルの外装をなすケース体に対してオイルクーラを固定しつつ、オイルクーラにおける熱交換効率を向上可能なオイルクーラ固定構造の提供を目的とした。
【解決手段】オイルクーラ固定構造10は、トランスアクスル1の外装をなすトランスアクスルハウジング40に対してオイルクーラ70を固定したものである。オイルクーラ70は、トランスアクスルハウジング40の外部において、支持部90を介してトランスアクスルハウジング40に対して締結されている。また、オイルクーラ70とトランスアクスルハウジング40との間には、隙間80が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスアクスルの外装をなすケース体に対してオイルクーラを固定したオイルクーラ固定構造であって、
前記オイルクーラが、前記ケース体の外部において、支持部を介して前記ケース体に対して締結されており、
前記オイルクーラと前記ケース体との間に隙間が設けられていること、を特徴とするオイルクーラ固定構造。
【請求項2】
前記オイルクーラが、
前記ケース体に対向するケース対向領域と、
冷却対象となるオイルが流れるオイル配管が接続されるオイル配管接続部と、
前記オイルを冷却するための冷媒が流れる冷媒配管に対して接続される冷媒配管接続部と、
を有するものであり、
前記オイル配管接続部、及び前記冷媒配管接続部が、前記オイルクーラにおいて前記ケース対向領域を除く領域に設けられていること、を特徴とする請求項1に記載のオイルクーラ固定構造。
【請求項3】
前記オイル配管接続部、及び前記冷媒配管接続部が、前記オイルクーラにおいて前記ケース対向領域とは反対側に設けられた領域に設けられていること、を特徴とする請求項2に記載のオイルクーラ固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスアクスルの外装をなすケース体に対してオイルクーラを固定したオイルクーラ固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、トランスアクスルの外装をなすケース体に対して固定されたオイルクーラを用いて構成された油路構造を備えたトランスアクスルが提供されている。特許文献1に開示されているトランスアクスルが備える油路構造は、電動機が収容されるトランスアクスルハウジングと、電動機を冷却するオイルの流路となる油路と、トランスアクスルハウジングの側部に配置されるオイルクーラと、を有し、油路の少なくとも一部が電動機の下方から上方に延び、上方に延びる油路の一部を、オイルクーラが兼ねたものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に開示されているように、トランスアクスルの外装をなすケース体に対してオイルクーラを固定したオイルクーラ固定構造を採用した場合、ケース体の外側に配されるパイプなどの部材を最小限に抑制できるという利点を有する。その一方で、特許文献1に開示されているようにオイルクーラをケース体に対して締結した構成とする場合において、オイルクーラにおける熱交換効率をより一層向上させたいといった要望がある。
【0005】
そこで本発明は、トランスアクスルの外装をなすケース体に対してオイルクーラを固定しつつ、オイルクーラにおける熱交換効率を従来技術のものに比べて向上させることが可能なオイルクーラ固定構造の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のオイルクーラ固定構造は、トランスアクスルの外装をなすケース体に対してオイルクーラを固定したものであって、前記オイルクーラが、前記ケース体の外部において、支持部を介して前記ケース体に対して締結されており、前記オイルクーラと前記ケース体との間に隙間が設けられていること、を特徴とするものである。
【0007】
本発明のオイルクーラ固定構造は、オイルクーラとケース体との間に隙間が設けられているため、当該隙間を介して空気が流れる等することにより、オイルクーラにおける熱交換効率を高めることができる。また、本発明のオイルクーラ固定構造は、上記(1)のような構成とすることにより、トランスアクスルが搭載された車両が衝突する等して、オイルクーラが締結された側からトランスアクスルに対して外部から衝撃が加わった場合に、トランスアクスルに対して直ちに衝撃が加わるのを抑制できる。
【0008】
(2)本発明のオイルクーラ固定構造は、前記オイルクーラが、前記ケース体に対向するケース対向領域と、冷却対象となるオイルが流れるオイル配管が接続されるオイル配管接続部と、前記オイルを冷却するための冷媒が流れる冷媒配管に対して接続される冷媒配管接続部と、を有するものであり、前記オイル配管接続部、及び前記冷媒配管接続部が、前記オイルクーラにおいて前記ケース対向領域を除く領域に設けられていること、を特徴とするものであると良い。
【0009】
本発明のオイルクーラ固定構造は、上記(2)のような構成とすることにより、オイル配管を接続するためのオイル配管接続部や、冷媒配管を接続するための冷媒配管接続部によってオイルクーラとケース体との間に形成された隙間における通気性が低下するのを抑制できる。これにより、本発明のオイルクーラ固定構造は、オイルクーラにおける熱交換効率をより一層高めることができる。
【0010】
(3)本発明のオイルクーラ固定構造は、前記オイル配管接続部、及び前記冷媒配管接続部が、前記オイルクーラにおいて前記ケース対向領域とは反対側に設けられた領域に設けられていること、を特徴とするものであると良い。
【0011】
本発明のオイルクーラ固定構造は、上記(3)のような構成とすることにより、オイル配管を接続するためのオイル配管接続部や、冷媒配管を接続するための冷媒配管接続部によってオイルクーラとケース体との間に形成された隙間における通気性が低下するのを抑制できる。これにより、本発明のオイルクーラ固定構造は、オイルクーラにおける熱交換効率をより一層高めることができる。また、本発明のオイルクーラ固定構造は、上記(3)のような構成とすることにより、トランスアクスルが搭載された車両が衝突する等して、オイルクーラが締結された側からトランスアクスルに対して外部から衝撃が加わった場合に、オイル配管接続部や冷媒配管接続部、これらの接続部に接続されたオイル配管や冷媒配管において先ずは衝撃が受け止められる。これにより、本発明のオイルクーラ固定構造は、トランスアクスルに対して直ちに衝撃が加わるのを抑制できる。
【0012】
(4)本発明のオイルクーラ固定構造は、前記トランスアクスルを車両に搭載した状態において、前記車両の前方側となる位置において、前記オイルクーラが前記ケース体に対して締結されていること、を特徴とするものであると良い。
【0013】
本発明のオイルクーラ固定構造は、上記(4)のような構成とすることにより、車両が前方側において衝突等した際に、衝突等による衝撃を先ずはオイルクーラにおいて受け止めることができる。これにより、本発明のオイルクーラ固定構造は、トランスアクスルに対して直ちに衝撃が加わるのを抑制できる。
【0014】
(5)本発明のオイルクーラ固定構造は、前記トランスアクスルを車両に搭載した状態において、前記車両の前方側となる位置において、前記オイルクーラが前記ケース体に対して締結されており、前記オイルクーラが、冷却対象となるオイルの流れるオイル配管、及び前記オイルを冷却するための冷媒が流れる冷媒配管に対して接続されるものであり、
前記オイル配管、及び前記冷媒配管の少なくとも一方が、前記オイルクーラの近傍において屈曲した屈曲部を有するものであり、前記屈曲部が前記トランスアクスルよりも前記車両の前方側となる位置に到来するように前記オイルクーラが配されること、を特徴とするものであると良い。
【0015】
本発明のオイルクーラ固定構造は、上記(5)のような構成とすることにより、車両が前方側において衝突等した際に、衝突等による衝撃を先ずはオイル配管接続部や冷媒配管接続部、トランスアクスルよりも車両の前方側において屈曲部をなすように配されたオイル配管や冷媒配管において受け止めることができる。これにより、本発明のオイルクーラ固定構造は、トランスアクスルに対して直ちに衝撃が加わるのを抑制できる。
【0016】
(6)本発明のオイルクーラ固定構造は、前記オイルクーラが、少なくとも一点において前記ケース体に接続されていること、を特徴とするものであると良い。
【0017】
本発明のオイルクーラ固定構造は、上記(6)のような構成とすることにより、前記ケース体に対して十分な強度でオイルクーラを固定することができる。
【0018】
(7)本発明のオイルクーラ固定構造は、前記ケース体をなす側面のうち、前記オイルクーラの取り付け側をなす側面が、所定の境界部を介して一方側の領域に対して、他方側の領域が傾斜し、境界部から他方側に離れるに連れて前記オイルクーラの取り付け側から離れるように形成された傾斜部を有し、前記傾斜部の下方側に位置する側面視において三角形状の空間に、前記オイルクーラが配されているものであると良い。
【0019】
本発明のオイルクーラ固定構造は、上記(7)のような構成とすることにより、傾斜部の下方に形成された三角形状の空間をオイルクーラの設置スペースとして有効利用できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上述した本発明に係る課題を解決したオイルクーラ固定構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係るオイルクーラ固定構造を備えるトランスアクスルを示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るオイルクーラ固定構造を備えるトランスアクスルを示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るオイルクーラ固定構造を備えるトランスアクスルを示す側面図である。
【
図4】変形例に係るオイルクーラ固定構造を備えるトランスアクスルを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係るオイルクーラ固定構造10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、オイルクーラ固定構造10の詳細についての説明に先立って、オイルクーラ70の取付対象となるトランスアクスル1の概略構成について説明する。
【0023】
≪トランスアクスル1について≫
トランスアクスル1は、
図1に示す車両Vに設けられている。車両Vには、エンジン(図示を省略)及び図示を省略したバッテリが設けられている。車両Vは、エンジンを動力源として後述する第一電動機20を駆動させ、第一電動機20の駆動により後述する第二電動機30を駆動させて走行可能とされているとともに、エンジンを停止させてバッテリを動力源として駆動させて第二電動機30を駆動させて走行(EV走行)することができる、いわゆるシリーズ式ハイブリッド車とされている。
【0024】
図1に示すとおり、トランスアクスル1は、トランスアクスルハウジング40、第一電動機20(電動機)、第二電動機30(電動機)、デファレンシャル機構32を備えている。
【0025】
第一電動機20(MG1)は、モータジェネレータからなる。第一電動機20には、インバータなどを内蔵する発電機コントローラが接続されている。なお、図示を省略するが、発電機コントローラは、トランスアクスル1の上部に搭載されている。第一電動機20から出力される交流電力は、発電機コントローラにより直流電力に変換されて、その直流電力が電池に供給されることにより、電池が充電される。第一電動機20は、エンジン(図示を省略)の駆動により回転動力が伝達されて駆動する。
【0026】
第二電動機30(MG2)は、モータジェネレータからなる。第二電動機30には、インバータなどを内蔵するモータコントローラが接続されている。なお、図示を省略するが、発電機コントローラは、トランスアクスル1の上部に搭載されている。モータコントローラには、電池が接続されている。電池から出力される直流電力がモータコントローラに供給され、その直流電力がモータコントローラにより交流電力に変換されて、交流電力が第二電動機30に供給されることにより、第二電動機30が駆動される。なお、以下の説明では、第一電動機20(MG1)及び第二電動機30(MG2)を総称して、単に「電動機18」と記載して説明する場合がある。
【0027】
デファレンシャル機構32は、左右の駆動輪を駆動する左右一対のドライブシャフト(図示を省略)の間の差動を許容するとともに、これら左右一対のドライブシャフトに回転動力を伝達するように構成されている。
図1に示すとおり、デファレンシャル機構32には、デフリングギア32a、デファレンシャルギア32bを含む複数のギアにより構成されている。
【0028】
第二電動機30の動力は、複数のギアを介して、デファレンシャル機構32のデフリングギア32aに伝達され、デファレンシャル機構32から駆動輪2に伝達される。これにより、駆動輪2が回転し、車両Vが走行する。
【0029】
トランスアクスルハウジング40(ケース体)は、第一電動機20や第二電動機30等を収容するための収容体である。
図1に示すとおり、トランスアクスルハウジング40(ケース体)は、三つの構成部材によりひとつの収容体をなしている。より具体的に説明すると、トランスアクスルハウジング40は、第一構成体40a、第二構成体40b、及び第三構成体40cにより構成されている。
【0030】
図1に示すとおり、第一構成体40aは、トランスアクスルハウジング40において幅方向Wの中間部分を形成している。
図1に示すとおり、第一構成体40aには、区画壁43が形成されており、区画壁43によりモータ室41となる空間と、ギア室42となる空間とが仕切られている。また、第二構成体40bは、第一構成体40aのモータ室41側に取り付けられている。さらに、第三構成体40cは、ギア室42側に取り付けられている。
【0031】
以下の説明では、第一構成体40a、第二構成体40b、及び第三構成体40cを総称して、トランスアクスルハウジング40と記載して説明する場合がある。
【0032】
上述のとおり、トランスアクスルハウジング40の内部空間は、区画壁43によりモータ室41とギア室42とに仕切られている。
図1に示すとおり、モータ室41には、第一電動機20及び第二電動機30が収容されている。ギア室42には、デファレンシャル機構32が収容されている。
【0033】
また、トランスアクスルハウジング40の内部にはオイルが収容されており、後述するオイルポンプ60によりオイルが圧送され、第一電動機20や第二電動機30が冷却されている。
【0034】
なお、本実施形態のトランスアクスルハウジング40は、上述のとおり、三つの構成部材により構成されるものであるが、本発明におけるケース体は本実施形態に限定されず、単一の構成体によって構成されるものや、二つあるいは四つ以上の構成体により形成されるものとしても良い。
【0035】
オイルクーラ70は、オイルと水との間で熱交換を行う熱交換器である(水冷式クーラ)。
図2に示すとおり、オイルクーラ70は、前方Fr側から側面視した状態において、略四角の外観を備えている。
図2や
図3に示すとおり、オイルクーラ70には、オイルの入口となるオイル導入部76aと、オイルの出口となるオイル排出部76bとが設けられている。また、オイルクーラ70には、オイルを冷却するための冷媒(本実施形態では冷却水)の出入口となる冷媒導入部78a及び冷媒排出部78bが設けられている。
【0036】
≪オイルクーラ固定構造10について≫
続いて、オイルクーラ固定構造10について説明する。
図2や
図3に示すように、オイルクーラ固定構造10は、トランスアクスル1の外装をなすトランスアクスルハウジング40に対してオイルクーラ70を固定した固定構造である。オイルクーラ固定構造10は、オイルクーラ70をトランスアクスルハウジング40の外部において、トランスアクスルハウジング40に対して締結したものである。
【0037】
ここで、トランスアクスルハウジング40は、オイルクーラ70が取り付けられる側の領域において、所定の境界部を介して一方側(本実施形態では上方側)の領域に対して、他方側(本実施形態では下方側)の領域が傾斜し、境界部から他方側に離れるに連れてオイルクーラ70の取り付け側から離れるように形成された部分を有する。本実施形態では、トランスアクスルハウジング40において車両Vに搭載した状態において前方側となる部分が、このような形状に形成されている。具体的には、トランスアクスルハウジング40は、車両Vに搭載した状態において前方側となる部分(前方領域40F)において、上下方向中間部に位置する境界部を介して上方側に位置する上方側領域40Uに対して、下方側の領域(下方側領域40D)が傾斜し、境界部から下方側に離れるに連れて車両Vに搭載した状態において前方側となる部分から離れるように形成された部分(傾斜部40X)とされている。これにより、
図3に示すように、トランスアクスルハウジング40を側面視すると、三角形状の空間40Zが形成されている。空間40Zは、トランスアクスルハウジング40を上方から平面視した状態(
図3における上方からトランスアクスル40を見た状態)において、トランスアクスルハウジング40に隠れて見えない位置に存在している。
【0038】
オイルクーラ70は、トランスアクスル1を車両Vに搭載した状態において、車両Vの前方側となる前方領域40Fであって、上方側領域40Uとなる位置において、トランスアクスルハウジング40に対して締結されている。具体的には、オイルクーラ70は、上端側において、トランスアクスルハウジング40の上方側領域40Uに対して略隙間なく、ボルト等の締結具を用いて締結されている。一方、オイルクーラ70は、下端側において、支持部90を介してトランスアクスルハウジング40に対して隙間を空けて締結されている。具体的には、支持部90は、筒状のボスやカラーによって形成されている。オイルクーラ70の下端側は、筒状の支持部90に対して挿通されたボルト等の締結具によって、トランスアクスルハウジング40の下方側領域40Dをなす傾斜部40Xに対して締結されている。これにより、オイルクーラ70とトランスアクスルハウジング40との間に隙間80が設けられている。また、オイルクーラ70は、傾斜部40Xの下方側に設けられた三角形状の空間40Zに配されている。これにより、空間40Zは、オイルクーラ70の設置スペースとして有効活用されている。そのため、オイルクーラ固定構造10においては、オイルクーラ70が、トランスアクスルハウジング40に対して前後方向(本実施形態の配置では前方側)や、上下方向(本実施形態の配置では下方側)に向けてはみ出すことなく配置されている。
【0039】
オイルクーラ70は、ケース対向領域72、及び反対側領域74を有する。ケース対向領域72は、トランスアクスルハウジング40に対して取り付けた状態において、トランスアクスルハウジング40(前方領域40F)に対向する領域である。オイルクーラ70は、トランスアクスルハウジング40の下方側に設けられた三角形状の空間40Zにおいて、ケース対向領域72とトランスアクスルハウジング40との間に空隙をなすように設置されている。これにより、ケース対向領域72において空気が自由に出入りできるとともに、当該空隙を介して側方から工具等を差し入れ、トランスアクスルハウジング40に対してアクセス可能とされている。これにより、オイルクーラ固定構造10においては、オイルクーラ70を設置した状態において、オイルクーラ70の背後に設けられた空隙を介してトランスアクスルハウジング40に対する作業を行うことができる。具体的には、本実施形態のオイルクーラ固定構造10においては、トランスアクスルハウジング40に設けられたボルト40Yを着脱する等の作業を行うことができる。
【0040】
また、反対側領域74は、オイルクーラ70においてケース対向領域72とは反対側の領域をなす部分である。反対側領域74には、オイル配管接続部76、及び冷媒配管接続部78が設けられている。
【0041】
オイル配管接続部76は、オイルクーラ70における冷却対象となるオイルが流れるオイル配管100が接続されるものである。具体的には、オイルクーラ70は、オイル配管接続部76として、オイルクーラ70へのオイルの入口となるオイル導入部76aと、オイルクーラ70からオイルを排出するためのオイル排出部76bとを有する。また、オイル配管100として、トランスアクスルハウジング40から取り出されたオイルをオイルクーラ70に向けて導入するオイル導入配管102と、オイルクーラ70からオイルを排出してトランスアクスルハウジング40に戻すためのオイル排出配管104とが設けられている。オイル導入部76aには、オイル導入配管102が接続される。また、オイル排出部76bには、オイル排出配管104が接続される。これにより、オイルクーラ70は、トランスアクスルハウジング40との間でオイルを往き来させることが可能なように配管接続されている。
【0042】
冷媒配管接続部78は、オイルクーラ70に対して冷媒(本実施形態では冷却水)を導入及び排出するための冷媒配管110が接続されるものである。具体的には、オイルクーラ70は、冷媒配管接続部78として、オイルクーラ70への冷媒の入口となる冷媒導入部78aと、オイルクーラ70から冷媒を排出するための冷媒排出部78bとを有する。また、冷媒配管110として、図示しない冷媒の供給源から供給された冷媒をオイルクーラ70に向けて導入する冷媒導入配管112と、オイルクーラ70から冷媒の供給源に向けて冷媒を排出するための冷媒排出配管114とが設けられている。冷媒導入部78aには、冷媒導入配管112が接続される。また、冷媒排出部78bには、冷媒排出配管114が接続される。これにより、オイルクーラ70は、冷媒の供給源との間で冷媒を往き来させることが可能なように配管接続されている。
【0043】
上述したオイル配管接続部76及び冷媒配管接続部78は、それぞれオイルクーラ70においてケース対向領域72を除く領域に設けられている。本実施形態では、オイル配管接続部76及び冷媒配管接続部78は、反対側領域74に設けられている。そのため、オイル配管接続部76及び冷媒配管接続部78は、隙間80の外側に設けられている。そのため、オイル配管100をなすオイル導入配管102及びオイル排出配管104や、冷媒配管110をなす冷媒導入配管112や冷媒排出配管114についても、隙間80の外側に配されている。
【0044】
また、オイル配管100をなすオイル導入配管102及びオイル排出配管104は、それぞれオイルクーラ70の近傍において屈曲した屈曲部102a,104aを有する。オイル導入配管102及びオイル排出配管104は、屈曲部102a,104aがオイルクーラ70に対して車両Vの前方側に到来するように配索されている。また、冷媒配管110をなす冷媒導入配管112及び冷媒排出配管114は、それぞれオイルクーラ70の近傍において屈曲した屈曲部112a,114aを有する。冷媒導入配管112及び冷媒排出配管114は、屈曲部112a,114aがオイルクーラ70に対して車両Vの前方側に到来するように配索されている。
【0045】
上述した本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、以下の(a)~(e)のような特徴的構成を備えている。これにより、オイルクーラ固定構造10は、以下に記載のような特有の効果を奏することができる。
【0046】
(a)本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、トランスアクスル1の外装をなすトランスアクスルハウジング40に対してオイルクーラ70を固定したものであって、オイルクーラ70が、トランスアクスルハウジング40の外部において、支持部90を介してトランスアクスルハウジング40に対して締結されており、オイルクーラ70とトランスアクスルハウジング40との間に隙間80が設けられていること、を特徴とするものである。
【0047】
本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、オイルクーラ70とトランスアクスルハウジング40との間に隙間80が設けられているため、この隙間80を介して空気が流れる等することにより、オイルクーラ70における熱交換効率を高めることができる。また、本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、上記(a)のような構成とすることにより、トランスアクスル1が搭載された車両Vが衝突する等して、オイルクーラ70が締結された側からトランスアクスル1に対して外部から衝撃が加わった場合に、トランスアクスル1に対して直ちに衝撃が加わるのを抑制できる。
【0048】
(b)本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、オイルクーラ70が、トランスアクスルハウジング40に対向するケース対向領域72と、冷却対象となるオイルが流れるオイル配管100が接続されるオイル配管接続部76と、オイルを冷却するための冷媒が流れる冷媒配管110に対して接続される冷媒配管接続部78と、を有するものであり、オイル配管接続部76、及び冷媒配管接続部78が、オイルクーラ70においてケース対向領域72を除く領域に設けられたものである。
【0049】
本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、上記(b)のような構成とすることにより、オイル配管100を接続するためのオイル配管接続部76や、冷媒配管110を接続するための冷媒配管接続部78によってオイルクーラ70とトランスアクスルハウジング40との間に形成された隙間80における通気性が低下するのを抑制できる。これにより、本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、オイルクーラ70における熱交換効率をより一層高めることができる。
【0050】
(c)本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、オイル配管接続部76、及び冷媒配管接続部78が、オイルクーラ70においてケース対向領域72とは反対側に設けられた反対側領域74に設けられたものである。
【0051】
本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、上記(c)のような構成とすることにより、オイル配管100を接続するためのオイル配管接続部76や、冷媒配管110を接続するための冷媒配管接続部78によってオイルクーラ70とトランスアクスルハウジング40との間に形成された隙間80における通気性が低下するのを抑制できる。これにより、本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、オイルクーラ70における熱交換効率をより一層高めることができる。また、本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、上記(c)のような構成とすることにより、トランスアクスル1が搭載された車両Vが衝突する等して、オイルクーラ70が締結された側からトランスアクスル1に対して外部から衝撃が加わった場合に、オイル配管接続部76や冷媒配管接続部78、これらの接続部に接続されたオイル配管100や冷媒配管110において先ずは衝撃が受け止められる。これにより、本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、トランスアクスル1に対して直ちに衝撃が加わるのを抑制できる。
【0052】
(d)本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、トランスアクスル1を車両Vに搭載した状態において、車両Vの前方側となる位置において、オイルクーラ70がトランスアクスルハウジング40に対して締結されたものである。
【0053】
本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、上記(d)のような構成とすることにより、車両Vが前方側において衝突等した際に、衝突等による衝撃を先ずはオイルクーラ70において受け止めることができる。これにより、本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、トランスアクスル1に対して直ちに衝撃が加わるのを抑制できる。
【0054】
(e)本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、トランスアクスル1を車両Vに搭載した状態において、車両Vの前方側となる位置において、オイルクーラ70がトランスアクスルハウジング40に対して締結されており、オイルクーラ70が、冷却対象となるオイルの流れるオイル配管100、及びオイルを冷却するための冷媒が流れる冷媒配管110に対して接続されるものであり、オイル配管100、及び冷媒配管110の少なくとも一方が、オイルクーラ70の近傍において屈曲した屈曲部102a,104a,112a,114aを有するものであり、屈曲部102a,104a,112a,114aがトランスアクスル1よりも車両Vの前方側となる位置に到来するようにオイルクーラ70が配されたものである。
【0055】
本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、上記(e)のような構成とすることにより、車両Vが前方側において衝突等した際に、衝突等による衝撃を先ずはオイル配管接続部76や冷媒配管接続部78、トランスアクスル1よりも車両Vの前方側において屈曲部102a,104a,112a,114aをなすように配されたオイル配管100や冷媒配管110において受け止めることができる。これにより、本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、トランスアクスル1に対して直ちに衝撃が加わるのを抑制できる。
【0056】
(f)本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、オイルクーラ70が、少なくとも一点においてトランスアクスルハウジング40に接続されている。
【0057】
本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、上記(f)のような構成とすることにより、トランスアクスルハウジング40に対して十分な強度でオイルクーラ70を固定することができる。
【0058】
(g)本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、トランスアクスルハウジング40をなす側面のうち、オイルクーラ70の取り付け側をなす側面が、所定の境界部を介して一方側の領域(上方側領域40U)に対して、他方側の領域(下方側領域40D)が傾斜し、境界部から他方側に離れるに連れてオイルクーラ70の取り付け側から離れるように形成された傾斜部40Xを有し、傾斜部40の下方側に位置する側面視において三角形状の空間40Zに、オイルクーラ70が配されているものである。
【0059】
本実施形態のオイルクーラ固定構造10は、上記(g)のような構成とすることにより、傾斜部40Xの下方に形成された三角形状の空間40Zをオイルクーラ70の設置スペースとして有効利用できる。
【0060】
本実施形態において例示したオイルクーラ固定構造10は、上述した(a)~(g)に係る構成をはじめとする様々な特徴的構成を備えたものであるが、本発明はこれに限定されない。オイルクーラ固定構造10は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、上述した(a)~(g)に含まれる構成のいずれかを省略した構成としたり、(a)~(g)に含まれる構成に加えて、あるいは(a)~(g)に含まれる構成に代えて他の構成を備えたものとしたりしても良い。
【0061】
具体的には、オイルクーラ固定構造10は、上記(a)のようにオイルクーラ70とトランスアクスルハウジング40との間に隙間80が設けられているものであればよく、支持部90を設けない構成としたり、支持部90として上述したものとは異なるものを設けたりすることが可能である。例えば、上述した筒状の支持部90に代わる支持部190として、
図4に示すようなブラケットを設けたものとすると良い。
【0062】
上述したオイルクーラ固定構造10は、必ずしも上記(b)のようにオイル配管接続部76及び冷媒配管接続部78が、オイルクーラ70においてケース対向領域72を除く領域に設けられたものである必要はなく、オイル配管接続部76及び冷媒配管接続部78のいずれか一方又は双方がケース対向領域72に設けられたものであっても良い。なお、このような構成とする場合についても、隙間80における通気性を十分に確保する等して、オイルクーラ70が熱交換効率を十分に発揮できるようにすると良い。
【0063】
上述したオイルクーラ固定構造10は、上記(c)のように、オイル配管接続部76及び冷媒配管接続部78が、オイルクーラ70においてケース対向領域72とは反対側に設けられた反対側領域74に設けられたものであるが、本発明はこれに限定されない。例えば、オイル配管接続部76及び冷媒配管接続部78のいずれか一方又は双方は、オイルクーラ70の周部など、ケース対向領域72や反対側領域74を除く領域に設けられたものとすることも可能である。
【0064】
上述したオイルクーラ固定構造10は、上記(d)のように、車両Vの前方側となる位置において、オイルクーラ70がトランスアクスルハウジング40に対して締結されたものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、オイルクーラ固定構造10は、車両Vの後方側となる位置や、側方側となる位置においてオイルクーラ70がトランスアクスルハウジング40に対して締結されたものとしても良い。
【0065】
上述したオイルクーラ固定構造10は、上記(e)のように、オイル配管100及び冷媒配管110の双方が、オイルクーラ70の近傍において屈曲した屈曲部102a,104a,112a,114aを有するものであり、屈曲部102a,104a,112a,114aがトランスアクスル1よりも車両Vの前方側となる位置に到来するようにオイルクーラ70を配したものであるが、本発明はこれに限定されない。例えば、オイル配管100及び冷媒配管110のいずれか一方又は双方が、屈曲部102a,104a,112a,114aを備えていないものとしたり、屈曲部102a,104a,112a,114aの一部又は全部がトランスアクスル1よりも車両Vの前方側ではなく、後方側や側方側となる位置に到来するようにオイルクーラ70が配されたものとしたりすることが可能である。
【0066】
上述したオイルクーラ固定構造10は、上記(f)のように、オイルクーラ70が、少なくとも一点(上記実施形態ではオイルクーラ70の上方側の部分)において直接的にトランスアクスルハウジング40に接続されたものであるが、本発明はこれに限定されない。例えば、オイルクーラ固定構造10は、オイルクーラ70の上方側の部分についても、支持部90と同等のもの等を介して、間接的にトランスアクスルハウジング40に対して固定されたものとすることができる。また、上記実施形態においては、オイルクーラ70の上方側の部分をトランスアクスルハウジング40に対して直接的に固定し、下方側の部分を支持部90を介して間接的に固定した例を示したが、本発明はこれに限定されず、上方側において間接的にトランスアクスルハウジング40に接続し、下方側において直接的にトランスアクスルハウジング40に接続した構成としても良い。さらに、オイルクーラ70は、上下の固定箇所に加えて、あるいは上下の固定箇所に変えて左右に固定箇所を設けても良い。
【0067】
上述したオイルクーラ固定構造10は、上記(g)のように、トランスアクスルハウジング40が傾斜部40Xを有するものであり、この傾斜部40の下方側に位置する空間40Zにオイルクーラ70を配した例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、トランスアクスルハウジング40が傾斜部40Xを有さず、空間40Zに相当するものが存在しない場合には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した空間40Zのような箇所ではなく他の箇所にオイルクーラ70を配した構成としても良い。また、空間40Zに相当するものが存在している場合においても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、空間40Zに相当するスペースを外れた場所にオイルクーラ70を配した構成としても良い。
【0068】
また、本実施形態では、オイルクーラ固定構造10を、シリーズ式ハイブリッド車である車両Vのトランスアクスル1に設けられるものとして例示したが、本発明はこれに限定されず、内燃機関において発生する動力により駆動する車両や、パラレル式ハイブリッド車、AT車、電気自動車などの車両においても、トランスアクスルに対してオイルクーラを固定するための構造として好適に採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のオイルクーラ固定構造は、トランスアクスルに対してオイルクーラを固定するための構造として、好適に利用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 :トランスアクスル
10 :オイルクーラ固定構造
40 :トランスアクスルハウジング(ケース体)
70 :オイルクーラ
72 :ケース対向領域
74 :反対側領域
76 :オイル配管接続部
78 :冷媒配管接続部
80 :隙間
90 :支持部
100 :オイル配管
102a :屈曲部
104a :屈曲部
110 :冷媒配管
112a :屈曲部
114a :屈曲部
V :車両