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特開2024-87731藻類培養袋、藻類培養装置および藻類培養方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087731
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】藻類培養袋、藻類培養装置および藻類培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240624BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20240624BHJP
   C12N 1/12 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12N1/00 B
C12N1/12 A
C12N1/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202683
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【弁理士】
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】正岡 諭
(72)【発明者】
【氏名】亀田 克巳
(72)【発明者】
【氏名】堀 浩子
(72)【発明者】
【氏名】大和 洋平
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 文彦
(72)【発明者】
【氏名】河野 真一朗
(72)【発明者】
【氏名】寳藏 雄一
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B029GA08
4B029GB04
4B029GB05
4B029GB09
4B065AA83X
4B065AA84X
4B065BC01
4B065CA41
4B065CA54
(57)【要約】
【課題】 藻類の回収性、使用後の洗浄性を高めることが可能な藻類培養袋、藻類培養装置および藻類培養方法を提供する。
【解決手段】 複数枚のフィルム1a、2aを重ね合わせて、フィルム1a、2aが一体となるように、フィルム1a、2aの周縁部をシールされてなる藻類培養袋であって、フィルムのうち少なくとも最外にあるフィルムが光透過性を有する外側光透過性フィルムであり、袋の一縁部または一縁部付近に注出口部20を有し、袋の他縁部または他縁部付近に開口部15aを有する、藻類培養袋。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のフィルムを重ね合わせて、前記フィルムが一体となるように、前記フィルムの周縁部にシール部を有する袋であって、
前記フィルムのうち少なくとも最外にあるフィルムが光透過性を有する外側光透過性フィルムであり、
前記袋は開口部と注出口部を有する、
藻類培養袋。
【請求項2】
前記フィルムが3枚であり、袋内部が2つの空間に区分されている、請求項1に記載の藻類培養袋。
【請求項3】
前記フィルムのうち、内側のフィルムが光反射性を有する内側光反射性フィルムである、請求項2に記載の藻類培養袋。
【請求項4】
前記外側光透過性フィルムには貫通孔が設けられており、前記注出口部は、前記外側光透過性フィルムに設けられた前記貫通孔に取り付けられており、前記外側光透過性フィルムと前記内側光反射性フィルムで区切られた袋内部の空間と、袋外部とを連通させている、請求項3に記載の藻類培養袋。
【請求項5】
前記内側光反射性フィルムには貫通孔が設けられており、前記注出口部は、前記内側光反射性フィルムに設けられた前記貫通孔に取り付けられており、前記外側光透過性フィルムと前記内側光反射性フィルムで区分された袋内部の空間と、袋外部とを連通させている、請求項3に記載の藻類培養袋。
【請求項6】
前記注出口部は、前記内側光反射性フィルムと前記外側光透過性フィルムの間に取り付けられている、請求項3に記載の藻類培養袋。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の藻類培養袋において、
前記外側光透過性フィルム側の空間に、前記開口部から藻類を含む培養液を充填し、もう一方の空間に前記開口部から水溶液を充填し、前記藻類培養袋の前記外側光透過性フィルムに光を照射して藻類を培養し、培養した藻類を前記注出口部から回収する、藻類培養方法。
【請求項8】
前記フィルムが4枚以上であり、袋内部が3つ以上の空間に区分されている、請求項1に記載の藻類培養袋。
【請求項9】
前記フィルムのうち、内側にあるフィルムの少なくとも一枚が光反射性を有する内側光反射性フィルムであり、前記外側光透過性フィルムと前記内側光反射性フィルムの間にさらに光透過性を有する内側光透過性フィルムがある、請求項8に記載の藻類培養袋。
【請求項10】
前記内側光透過性フィルムには貫通孔があり、前記貫通孔に前記注出口部が取り付けられている、請求項9に記載の藻類培養袋。
【請求項11】
前記内側光反射性フィルムには貫通孔があり、前記貫通孔に前記注出口部が取り付けられている、請求項9に記載の藻類培養袋。
【請求項12】
前記注出口部は、前記内側光反射性フィルムと前記内側光透過性フィルムとの間に取り付けられている、請求項9に記載の藻類培養袋。
【請求項13】
請求項10から請求項12のいずれか一項に記載の藻類培養袋において、
前記内側光反射性フィルムと前記内側光透過性フィルムの間の空間に、前記開口部から藻類を含む培養液を充填し、前記内側光反射性フィルムをはさんだ他方の空間に、前記開口部から水溶液を充填し、前記外側光透過性フィルム側から光を照射し、藻類を培養し、前記注出口部から藻類を回収する、藻類培養方法。
【請求項14】
前記注出口部は、前記フィルムに接合された取付部と、取付部に連続する筒状部を有し、前記筒状部は、前記取付部と反対側の端部寄りに外径が大きくなる凸状部を有している
、請求項1から請求項6、請求項8から請求項12のいずれか一項に記載の藻類培養袋。
【請求項15】
前記フィルムに接合された取付部と、取付部に連続する筒状部を有し、前記筒状部は、前記取付部と反対側の端部寄りに外径が大きくなる凸状部を有する注入口部を、さらに備える、請求項14に記載の藻類培養袋。
【請求項16】
請求項14に記載の藻類培養袋の前記注出口部に開閉栓が接続されており、前記開閉栓には藻類回収用管が接続されている、藻類培養装置。
【請求項17】
前記開閉栓はバタフライ弁またはコックである、請求項16に記載の藻類培養装置。
【請求項18】
前記注出口部と前記開閉栓は、ヘルールにて接続されている、請求項16に記載の藻類培養装置。
【請求項19】
請求項14に記載の藻類培養袋の前記注出口部に三方管の一端が接続されており、
前記三方管の注出口部が接続されていない端のうちの一端には、液体開閉栓が接続されており、
前記三方管の注出口部が接続されていない端のうちの他端側の三方管の内部には、複数の貫通孔を有する微細化フィルターを有し、前記他端には逆止弁の出口側が接続され、前記逆止弁の入口側には気体開閉栓が接続されている、藻類培養装置。
【請求項20】
前記貫通孔は、前記藻類培養袋側の径が、逆止弁側の径よりも大きい、請求項19に記載の藻類培養装置。
【請求項21】
請求項15に記載の藻類培養袋の前記注出口部には、注出管の一端が接続されており、
前記注出管の他端には液体開閉栓が接続されており、前記注入口部には、注入管の一端が接続されていて、前記注入管の他端には、逆止弁の出口側が接続され、前記逆止弁の入口側には気体開閉栓が接続されている、藻類培養装置。
【請求項22】
請求項19に記載された藻類培養装置を用いて、前記気体開閉栓から二酸化炭素を含む気体を藻類培養袋に注入し、藻類を培養させ、培養した藻類を前記液体開閉栓から排出させて回収する、藻類培養方法。
【請求項23】
請求項21に記載された藻類培養装置を用いて、前記気体開閉栓から二酸化炭素を含む気体を藻類培養袋に注入し、藻類を培養させ、培養した藻類を前記液体開閉栓から排出させて回収する、藻類培養方法。
【請求項24】
前記外側光透過性フィルムは、少なくとも最内層に、ポリオレフィンとポリアルキルシロキサンの共重合体を含み、前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種類を含み、前記ポリアルキルシロキサンは、下記式(1)で表される、請求項1から6のいずれか一項に記載の藻類培養袋。
―Si(R)(R)-O- (1)
(ただし、R1、R2はアルキル基であり、同一でもよく、異なっていても良い)
【請求項25】
前記最内層にはさらにポリエチレンを含み、前記ポリオレフィンはポリエチレンを含み、前記注出口部はポリエチレンを含む、請求項24に記載の藻類培養袋。
【請求項26】
前記内側光透過性フィルムは、少なくとも最内層に、ポリオレフィンとポリアルキルシロキサンの共重合体を含み、前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種類を含み、前記ポリアルキルシロキサンは、下記式(1)で表される、請求項9から12のいずれか一項に記載の藻類培養袋。
―Si(R)(R)-O- (1)
(ただし、R1、R2はアルキル基であり、同一でもよく、異なっていても良い)
【請求項27】
前記最内層にはさらにポリエチレンを含み、前記ポリオレフィンはポリエチレンを含み、前記注出口部はポリエチレンを含む、請求項26に記載の藻類培養袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、藻類培養袋、藻類培養装置および藻類培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食料問題や環境問題に対応するため、藻類の培養の研究が行われている。藻類を培養する装置や方法も数多く提案されており、大量培養、光合成効率、取扱い性の向上を目指した装置等も開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-132643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、培養装置では、内側袋体と外側袋体という別体の構造を扱うため、培養した藻類の回収性や、藻類回収後の内側袋体と外側袋体の洗浄性が十分でなかった。
【0005】
そこで、本開示は、藻類の培養効率、藻類の回収性、及び、藻類の回収後の培養袋の洗浄性を高めることが可能な藻類培養袋、藻類培養装置および藻類培養方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示では、
複数枚のフィルムを重ね合わせて、前記フィルムが一体となるように、前記フィルムの周縁部にシール部を有する袋であって、
前記フィルムのうち少なくとも最外にあるフィルムが光透過性を有する外側光透過性フィルムであり、
前記袋は開口部と注出口部を有する、
藻類培養袋を提供する。
【0007】
本開示に係る藻類培養袋は、
前記フィルムが3枚であり、袋内部が2つの空間に区分されていてもよい。
【0008】
本開示に係る藻類培養袋は、
前記フィルムのうち、内側のフィルムが光反射性を有する内側光反射性フィルムであっててもよい。
【0009】
本開示に係る藻類培養袋は、
前記外側光透過性フィルムには貫通孔が設けられており、前記注出口部は、前記外側光透過性フィルムに設けられた前記貫通孔に取り付けられており、前記外側光透過性フィルムと前記内側光反射性フィルムで区切られた袋内部の空間と、袋外部とを連通させていてもよい。
【0010】
本開示に係る藻類培養袋は、
前記内側光反射性フィルムには貫通孔が設けられており、前記注出口部は、前記内側光反射性フィルムに設けられた前記貫通孔に取り付けられており、前記外側光透過性フィルムと前記内側光反射性フィルムで区分された袋内部の空間と、袋外部とを連通させていてもよい。
【0011】
本開示に係る藻類培養袋において、
前記注出口部は、前記内側光反射性フィルムと前記外側光透過性フィルムの間に取り付けられていてもよい。
【0012】
本開示は、前記藻類培養袋において、
前記外側光透過性フィルム側の空間に、前記開口部から藻類を含む培養液を充填し、もう一方の空間に前記開口部から水溶液を充填し、前記藻類培養袋の前記外側光透過性フィルムに光を照射して藻類を培養し、培養した藻類を前記注出口部から回収する、藻類培養方法を提供する。
【0013】
本開示に係る藻類培養袋において、
前記フィルムが4枚以上であり、袋内部が3つ以上の空間に区分されていてもよい。
【0014】
本開示に係る藻類培養袋において、
前記フィルムのうち、内側にあるフィルムの少なくとも一枚が光反射性を有する内側光反射性フィルムであり、前記外側光透過性フィルムと前記内側光反射性フィルムの間にさらに光透過性を有する内側光透過性フィルムがあってもよい。
【0015】
本開示に係る藻類培養袋において、
前記内側光透過性フィルムには貫通孔があり、前記貫通孔に前記注出口部が取り付けられていてもよい。
【0016】
本開示に係る藻類培養袋において、
前記内側光反射性フィルムには貫通孔があり、前記貫通孔に前記注出口部が取り付けられていてもよい。
【0017】
本開示に係る藻類培養袋において、
前記注出口部は、前記内側光反射性フィルムと前記内側光透過性フィルムとの間に取り付けられていてもよい。
【0018】
また、本開示は、
前記藻類培養袋において、
前記内側光反射性フィルムと前記内側光透過性フィルムの間の空間に、前記開口部から藻類を含む培養液を充填し、前記内側光反射性フィルムをはさんだ他方の空間に、前記開口部から水溶液を充填し、前記外側光透過性フィルム側から光を照射し、藻類を培養し、前記注出口部から藻類を回収する、藻類培養方法を提供する。
【0019】
本開示に係る藻類培養袋において、
前記注出口部は、前記フィルムに接合された取付部と、取付部に連続する筒状部を有し、前記筒状部は、前記取付部と反対側の端部寄りに外径が大きくなる凸状部を有していてもよい。
【0020】
本開示に係る藻類培養袋は、
前記フィルムに接合された取付部と、取付部に連続する筒状部を有し、前記筒状部は、前記取付部と反対側の端部寄りに外径が大きくなる凸状部を有する注入口部を、さらに備えていてもよい。
【0021】
また、本開示は、
前記藻類培養袋の前記注出口部に開閉栓が接続されており、前記開閉栓には藻類回収用管が接続されている、藻類培養装置を提供する。
【0022】
本開示に係る藻類培養袋において、
前記開閉栓はバタフライ弁またはコックであってもよい。
【0023】
本開示に係る藻類培養袋において、
前記注出口部と前記開閉栓は、ヘルールにて接続されていてもよい。
【0024】
また、本開示は、
前記藻類培養袋の前記注出口部に三方管の一端が接続されており、
前記三方管の注出口部が接続されていない端のうちの一端には、液体開閉栓が接続されており、
前記三方管の注出口部が接続されていない端のうちの他端側の三方管の内部には、複数の貫通孔を有する微細化フィルターを有し、前記他端には逆止弁の出口側が接続され、前記逆止弁の入口側には気体開閉栓が接続されている、藻類培養装置を提供する。
【0025】
本開示に係る藻類培養装置において、
前記微細化フィルターの前記貫通孔は、前記藻類培養袋側の径が、逆止弁側の径よりも大きくてもよい。
【0026】
また、本開示は、
前記藻類培養袋の前記注出口部には、注出管の一端が接続されており、
前記注出管の他端には液体開閉栓が接続されており、前記注入口部には、注入管の一端が接続されていて、前記注入管の他端には、逆止弁の出口側が接続され、前記逆止弁の入口側には気体開閉栓が接続されている、藻類培養装置を提供する。
【0027】
また、本開示は、
前記注出口部に三方管の一端が接続されており、前記三方管の注出口部が接続されていない端のうちの一端には、液体開閉栓が接続されており、前記三方管の注出口部が接続されていない端のうちの他端側の三方管の内部には、複数の貫通孔を有する微細化フィルターを有し、前記他端には逆止弁の出口側が接続され、前記逆止弁の入口側には気体開閉栓が接続されている、藻類培養装置を用いて、
前記気体開閉栓から二酸化炭素を含む気体を藻類培養袋に注入し、藻類を培養させ、培養した藻類を前記液体開閉栓から排出させて回収する、藻類培養方法を提供する。
【0028】
また、本開示は、
前記藻類培養袋の前記注出口部には、注出管の一端が接続されており、前記注出管の他端には液体開閉栓が接続されており、前記注入口部には、注入管の一端が接続されていて、前記注入管の他端には、逆止弁の出口側が接続され、前記逆止弁の入口側には気体開閉栓が接続されている、藻類培養装置を用いて、
前記気体開閉栓から二酸化炭素を含む気体を藻類培養袋に注入し、藻類を培養させ、培養した藻類を前記液体開閉栓から排出させて回収する、藻類培養方法を提供する。
【0029】
本開示に係る藻類培養袋において、
前記外側光透過性フィルムは、少なくとも最内層に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種類を含むポリオレフィンと、下記式(1)で表されるポリアルキルシロキサンと、の共重合体を含んでもよい。
―Si(R)(R)-O- (1)
(ただし、R1、R2はアルキル基であり、同一でもよく、異なっていても良い)
【0030】
本開示に係る藻類培養袋において、
前記最内層にはさらにポリエチレンを含み、前記ポリオレフィンはポリエチレンを含み、前記注出口部はポリエチレンを含んでもよい。
【0031】
本開示に係る藻類培養袋において、
前記内側光透過性フィルムは、最内層に、ポリオレフィンとポリシロキサンの共重合体を含んでもよい。
【0032】
本開示に係る藻類培養袋において、
前記最内層にはさらにポリエチレンを含み、前記ポリオレフィンはポリエチレンを含み、前記注出口部はポリエチレンを含んでもよい。
【発明の効果】
【0033】
本開示によれば、藻類の培養効率、藻類の回収性、及び使用後の洗浄性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本開示の第1実施形態に係る藻類培養袋の正面図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る藻類培養袋の断面図である。
図3】本開示の第2実施形態に係る藻類培養袋の正面図である。
図4】本開示の第2実施形態に係る藻類培養袋の断面図である。
図5】本開示の第3実施形態に係る藻類培養袋の正面図である。
図6】本開示の第3実施形態に係る藻類培養袋の断面図である。
図7】本開示の第4実施形態に係る藻類培養袋の正面図である。
図8】本開示の第4実施形態に係る藻類培養袋の断面図である。
図9】本開示の第5実施形態に係る藻類培養袋の正面図である。
図10】本開示の第5実施形態に係る藻類培養袋の断面図である。
図11】第4実施形態に示した4枚構造の藻類培養袋に、特定の構造の注出口部22を取り付けた例を示す正面図である。
図12】第4実施形態に示した4枚構造の藻類培養袋に、特定の構造の注出口部22を取り付けた例を示す断面図である。
図13】藻類培養袋と藻類回収用管の接続前における藻類培養装置を示す側面図である。
図14】藻類培養袋と藻類回収用管の接続時における藻類培養装置を示す側面図である。
図15】藻類培養装置の他の実施形態を示す正面図である。
図16】藻類培養装置の他の実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本開示の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0036】
以下、本開示の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本開示の第1実施形態に係る藻類培養袋を示す正面図である。図2は、図1におけるA-A線断面図である。背面図については、注出口部の有無を除けば、図1に示す正面図と基本的には同一であるので、省略している。
【0037】
本実施形態の藻類培養袋は、プラスチック成形体である注出口部20と、フィルムで一体化して構成される本体部10Aを含む。注出口部20は、本体部10Aを構成するフィルム1aに形成された貫通孔に取り付けられている。本実施形態では、図1に示すように、本体部10Aの平面形状は、長方形状である。本体部10Aの平面形状は、長方形状から4隅の角部を曲線状にしたものであってもよい。注出口部20は、筒状部20aと取付部20bを備えており、取付部20bを介して本体部10Aに取り付けられる。図示は省略しているが、筒状部20aの外側面にはネジ山またはネジ溝が形成されており、図示しないキャップと螺合するようになっている。注出口部20は、本体部10Aとは別体でプラスチック成形されている。注出口部20は、例えば、射出成形等により製造することができる。注出口部20は、本体部10Aを構成するフィルム1aの内面に取付部20bが接合されることにより取り付けられる。
【0038】
本体部10Aは、藻類を収容する収容部19aを形成する部分である。第1実施形態では、本体部10Aは、2枚のフィルム1a、2aにより構成される。第1実施形態では、藻類培養袋は2枚のフィルムで構成されているため、いずれのフィルムも外側に位置する。したがって、フィルム1a、2aは、外側フィルムということもできる。フィルム1a、2aの少なくとも一方は光透過性フィルムである。収容部19aに収容された藻類を培養するためには、光合成のための光を必要とする。そのため、収容部19aまで光が届くように、フィルム1a、2aの少なくとも一方は光透過性フィルムとしている。図1に示すように、本体部10Aは、正面視で略四角形状であり、上縁部16と、上縁部16と対向する下縁部17と、上縁部16と下縁部17を結ぶ方向に延びる2つの側縁部18、18を有している。上縁部16、下縁部17は説明の便宜上、上下の区別をしているが、実際には、特に方向に限定はない。したがって、上縁部16を一縁部とし下縁部17を他縁部としてもよい。逆に下縁部17を一縁部とし上縁部16を他縁部としてもよい。略四角形状とは、4つの隅がいずれも角張った四角形だけでなく、各隅が面取りされて、外に凸の円弧状となったものも含む概念である。
【0039】
図1に示すように、本体部10Aは2枚のフィルムを重ね合わせて、フィルム1a、2aが一体となるように、フィルム1a、2aの周縁部をシールされてなる袋である。図1図2の例では、周縁部のうち、全周縁部ではなく、三方の周縁部をシールしている。本体部10Aは、フィルム1aの下縁部17と2つの側縁部18、18の三方をヒートシールして接合することにより形成されている。図1では、ヒートシールされたシール部を網掛けして示している。下縁部17には、底部シール部17aが形成されている。2つの側縁部18、18には、側縁部シール部18a、18aが形成されている。上縁部16側は、未シールの状態であり、開口部15aを形成している。すなわち、袋の上縁部16に開口部を有する。開口部15aを介して藻類培養袋の収容部19aに藻類を含む培養液が収容される。収容部19aは培養室としての機能を果たし、藻類の収容後、藻類の培養が行われる。
【0040】
本実施形態の藻類培養袋は、四角形状の2枚のフィルム1a、2aと、注出口部20を有する。注出口部20としては、公知のものを用いることができる。また、公知の手法により、フィルム1aに取り付けることができる。例えば、第1実施形態では、フィルム1aに、筒状部の外径より大きく取付部20bの外径より小さい径の貫通孔を形成し、この貫通孔に筒状部20aを通して、取付部20bとフィルム1aの内面側をヒートシールする。これにより、注出口部20は本体部10Aの下縁部17付近に取り付けられる。
【0041】
図2に示すように、収容部19aは、2枚のフィルム1a、2aに挟まれた位置に形成される。図2の例では、フィルム1a、2aともに光透過性フィルムである。藻類の培養時には、図2に示すように、上縁部16を上方、下縁部17を下方に向けて配置する。図2において、矢印Lは、太陽光や照明光等の光を示している。本実施形態の藻類培養袋に、開口部15aから藻類を含む培養液を収容すると、フィルム1aもしくは2a、またはそれらの両方から光が透過して、収容部19aに届く。これにより、収容部19aに収容された藻類は光合成を行うことができ、培養が促進される。促進されて培養された藻類は、キャップ(図示省略)を外した注出口部20から、藻類培養袋の外に注出され、回収される。
【0042】
フィルム1a、2aは、単層フィルムまたは積層フィルムにより構成することができる。単層フィルムとしては、ポリエチレン(PE)を用いることができる。積層フィルムは、少なくとも、基材層とシーラント層を含む。シーラント層は、収容部19aに面する内面を構成する層である。基材層は、プラスチックフィルムであり、1軸延伸または2軸延伸されていることが好ましい。基材層を構成する材料としては、例えば、ナイロン(ON)などのポリアミドや、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルや、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等を用いることができる。フィルム1a、2aの少なくとも一方は、光透過性フィルムである。
【0043】
基材層の厚みは、用いられる材料に応じて適宜設定される。例えば、基材層を構成する材料としてナイロンが用いられる場合、基材層の厚みは15μm以上25μm以下の範囲内であることが好ましい。また、基材層を構成する材料としてポリエチレンテレフタレートが用いられる場合、基材層の厚みは12μm以上25μm以下の範囲内であることが好ましい。なお、積層フィルムは、複数の基材層を備えていてもよい。例えば、積層フィルムは、第1基材層であるナイロンフィルムと、第2基材層であるポリエチレンテレフタレートフィルムを備えていてもよい。
【0044】
次にシーラント層について説明する。シーラント層は、フィルム1aとフィルム2aをシールするためのシーラントとなる層であり、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などを用いることができる。ここでポリエチレンは、エチレンの単独重合体だけでなく、エチレンとα-オレフィン単量体との共重合体など、一般にポリエチレンとして認識される共重合体も含むものである。また、シーラント層において用いられるポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などを好適に用いることができる。なお、積層フィルムは、複数のシーラント層を備えていてもよい。シーラント層の厚みは、用いられる材料に応じて適宜設定される。例えば、シーラント層の厚みは、40μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。フィルム1a、2aが単層フィルムの場合、単層フィルムの厚みは、40μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。単層フィルムがポリエチレンである場合、ポリエチレンとしてはLDPE、LLDPEなどを用いることができる。
【0045】
積層フィルムは、機能層をさらに含んでいてもよい。機能層としては、例えば、気体や液体に対する積層フィルムのバリア性を高めるためのバリア層が挙げられる。バリア層の具体的な構成は特には限定されないが、例えば、蒸着によって形成されるアルミニウムなどの無機物や酸化アルミニウムや酸化珪素などの無機酸化物を含む蒸着層や、アルミニウム(AL)などの金属箔層や、コーティングによって形成されるエチレン-ビニルアルコール共重合体層、具体的にはエバール(EVOH)などを挙げることができる。機能層は、基材層の外側に積層されていてもよいし、基材層とシーラント層の間に積層されていてもよい。
【0046】
金属箔や金属の蒸着層を用いることにより、光反射層が形成される。この光反射層を備えることにより、光反射性フィルムとなる。上記のようなフィルムの層構成において、光透過性フィルムは、光反射層を有していない。ここで、光透過性フィルムとしては、主に可視光線を透過する程度の光透過性を有していればよい。光反射性フィルムとしては、主に可視光線を反射する程度の反射性を有していればよい。
【0047】
基材層、シーラント層、光反射層等の機能層を積層させるための方法が特に限られることはなく、公知の積層方法が適宜用いられる。例えば、接着剤を用いて貼り合わせる、いわゆるドライラミネート法が用いられてもよいし、押出しラミネート法が用いられてもよい。
【0048】
光透過性フィルムとしては、例えば以下のような層構成のフィルムを用いることができる。以下において()内の数字は各層の厚みを表し、単位はμmである。
・PE(40~200)
・ON(15~25)/PE(40~200)
・PE(40~200)/EVOH(3~15)/PE(40~200)
・PE(40~200)/シリカ蒸着ON(15~25)/PE(40~200)
【0049】
光反射性フィルムとしては、例えば以下のような層構成のフィルムを用いることができる。以下において()内の数字は各層の厚みを表し、単位はμmである。
・ON(15~25)/AL(6~15)/PE(40~200)
・PE(40~200)/AL(6~15)/PE(40~200)
・PE(40~200)/ON(15~25)/AL(6~15)/PE(40~200)
・PE(40~200)/ON(15~25)/AL(6~15)/ON(15~25)/PE(40~200)
【0050】
注出口部20はプラスチック成形体であり、例えば、射出成形法を用いて成形することができる。注出口部20は、中空状の筒状部20aと内部に貫通孔を有する円板状の取付部20bを備えている。筒状部20aと取付部20bは一体成形されており、注出口となる内部の貫通孔は筒状部20aから取付部20bに渡って連続している。筒状部20a、取付部20bの内部が流路となって収容部19aと外部を連通している。これにより、収容部19aから藻類の回収が可能となっている。
【0051】
フィルム1a、2aの両方が光透過性フィルムである場合、注出口部20は、フィルム1a、2aのどちらに装着されていてもよい。フィルム1a、2aの一方が光反射性フィルムである場合、注出口部20は、光透過性フィルムに装着されていても、光反射性フィルムに装着されていてもよい。例えば、太陽光など、光源が鉛直方向に対して上方にある場合、開口部15aから培養液が零れない範囲で、光反射性フィルムを下(光透過性フィルムを上)に向けて培養を行うことが好ましい。光反射性フィルムを下に向けることにより、上方からの光は光反射性フィルムで反射されて、収容部19a内の藻類に、より多くの光を照射することができ、光合成が促進される。これにより、藻類の培養効率を高めることができる。このとき、注出口部20が光反射性フィルムに装着されていると、そのまま、開栓して下方に培養液を流せばよいため、回収作業が容易である。
【0052】
注出口部20には、通常光反射性はない。このため、光反射性フィルムを下(光透過性フィルムを上)に向けて培養を行う際、注出口部20が光透過性フィルムに装着されていると、反射効率が良くなり、培養効率が上がる。
【0053】
図1図2の例では、開口部15aを、2枚のフィルム1a、2aが未シールであることにより形成した。開口部は、これ以外の態様で形成してもよい。例えば、図1、2の例では、注出口部20を、フィルム1aの下縁部17側に1つだけ設けたが、注出口部20を、上縁部16側と下縁部17側に1つずつ設けるようにしてもよい。この場合、上縁部16側もヒートシールして、培養時は封止することができる。このような構成であっても、上縁部16側の注出口部20のキャップを外すことにより、藻類培養袋の一縁部または他縁部に開口部が形成されることになる。
【0054】
図1図2に示した藻類培養袋は、2枚のフィルムを単純に貼り合わせて、1つの収容部を形成するようにした。このような形態に限定されず、2枚のフィルムの間に、折り込んだ側面フィルムを1枚または2枚挟んだガセット袋の形状としてもよい。
【0055】
<第2実施形態>
図3は、本開示の第2実施形態に係る藻類培養袋を示す正面図である。図4は、図3におけるB-B線断面図である。背面図については、注出口部の有無を除けば、図3に示す正面図と基本的には同一であるので、省略している。第2実施形態において、第1実施形態と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
第1実施形態の藻類培養袋がフィルム2枚(ガセット袋の場合は4枚)で1つの収容部を有する構成であるのに対して、第2実施形態の藻類培養袋は、フィルム3枚で2つの収容部を有する構成である点が異なる。第2実施形態の藻類培養袋は、プラスチック成形体である注出口部20と、フィルムで一体化して構成される本体部10Bを含む。注出口部20は、本体部10Bを構成する外側フィルム1bに形成された貫通孔に取り付けられている。注出口部20の形態および接合態様は、第1実施形態と同様である。本実施形態では、図3に示すように、本体部10Bの平面形状は、長方形状である。本体部10Bの平面形状は、長方形状から4隅の角部を曲線状にしたものであってもよい。
【0057】
本体部10Bは、藻類を収容する収容部19b、19cを形成する部分である。第2実施形態では、本体部10Bは、2枚の外側フィルム1b、2bと、1枚の内側フィルム3bの計3枚のフィルムにより構成される。フィルム3枚の場合、2つの空間である収容部19b、19cに対応した2つの開口部15b、15cがある。
【0058】
図3に示すように、本体部10Bは、正面視で略四角形状であり、上縁部16と、上縁部16と対向する下縁部17と、上縁部16と下縁部17を結ぶ方向に延びる2つの側縁部18、18を有している。略四角形状とは、4つの隅がいずれも角張った四角形だけでなく、各隅が面取りされて、外に凸の円弧状となったものも含む概念である。
【0059】
図3に示すように、本体部10Bは、外側フィルム1b、2b、内側フィルム3bの下縁部17と2つの側縁部18、18の三方をヒートシールして接合することにより形成されている。シール部が形成される位置は、第1実施形態と同様であるが、第2実施形態では、底部シール部17a、2つの側縁部シール部18a、18aは、外側フィルム1b、2b、内側フィルム3bの3枚のフィルムを接合している。
【0060】
本実施形態の藻類培養袋は、外側フィルム1b、2b、内側フィルム3bの3枚の四角形状のフィルムと、注出口部20を有する。注出口部20は、取付部20bと外側フィルム1bの内面側をヒートシールすることにより、本体部10Bに取り付けられる。
【0061】
第2実施形態の藻類培養袋は、2つの収容部19b、19cを有する。図4に示すように、収容部19bは、外側フィルム1bと内側フィルム3bに挟まれた位置に形成される。外側フィルム1bには、注出口部20が取り付けられており、収容部19bと外部を連通可能となっている。収容部19cは、外側フィルム2bと内側フィルム3bに挟まれた位置に形成される。
【0062】
第2実施形態では、外側フィルム1b、2bは光透過性フィルムであり、内側フィルム3bは光反射性フィルムである。培養時には、図4に示すように、上縁部16を上方、下縁部17を下方に向けて配置する。図4において、矢印Lは、太陽光や照明光等の光を示している。外側光透過性フィルムである外側フィルム1bには貫通孔が設けられていて、注出口部20は、外側フィルム1bに設けられた貫通孔に取り付けられている。これにより、外側フィルム1bと内側光反射性フィルムである内側フィルム3bで区切られた袋内部の空間である収容部19bと、袋外部とを連通させている。
【0063】
第2実施形態の藻類培養袋に、開口部15bから藻類を含む培養液を収容すると、外側フィルム1b側から光が透過して、収容部19bに届く。また、藻類の密度が低い培養の初期段階では、外側フィルム1b側からの光が、収容部19b内の培養液を透過して、光反射性フィルムである内側フィルム3bで反射される。反射された光は、内側フィルム3bから収容部19b内に照射されて、藻類の光合成が一層促進される。特に、培養液内の藻類の密度が低い初期に光合成が促進され、培養効率を高めることができる。促進されて培養された藻類は、キャップを外した注出口部20から、藻類培養袋の外に注出され、回収される。
【0064】
藻類を培養していない他の収容部19cには、開口部15cから水溶液を充填してもよい。水溶液としては、収容部の温度変化を小さくできる液体であればなんでも良いが、雑菌の繁殖を抑える観点から、過酸化水素水溶液、塩素水溶液、塩化ベンザルコニウム水溶液、エタノール水溶液、等が好ましい。収容部19bに水溶液を充填しておくことにより、培養室となる収容部19bの温度変化を抑制することが可能となる。
【0065】
第2実施形態の変形例1として、外側フィルム1bを光透過フィルムとし、外側フィルム2bおよび内側フィルム3bを光反射性フィルムとしてもよい。上述のように、培養室である収容部19bでは、内側フィルム3bから収容部19b内に照射されて、藻類の光合成が一層促進される。また、収容部19cには、水溶液を充填してもよい。ともに光反射性フィルムである外側フィルム2bと内側フィルム3bの間に水溶液を充填した場合、外側フィルム2b、内側フィルム3bを介して照射される光が低減されるため、収容部19c内の水溶液の温度変化が少ない。このため、隣接する収容部19bの培養液の温度変化を抑えることができる。
【0066】
第2実施形態の変形例2として、内側フィルム3bを光透過性フィルムとしてもよい。この場合、外側フィルム1b側と、外側フィルム2bおよび内側フィルム3b側の両方から光が透過して、収容部19bに届く。これにより、収容部19bに収容された藻類は光合成を行うことができ、培養が促進される。
【0067】
第2実施形態の変形例3として、光反射性である内側フィルム3b、外側フィルム2bに貫通孔を設けて注出口部20を取り付けた形態としてもよい。変形例3では、外側フィルム2bは、光反射性でも光透過性でも良い。このとき、内側光反射性フィルムである内側フィルム3bには貫通孔が設けられていて、注出口部20は、内側光反射性フィルムに設けられた貫通孔に取り付けられていて、外側光透過性フィルムである外側フィルム1bと内側光反射性フィルムである内側フィルム3bで区切られた袋内部の空間(収容部19b)と、袋外部とを連通させている。この場合、収容部19b内の藻類を含む培養液は、外側フィルム2b側から注出される。
【0068】
外側フィルム1b、2b、内側フィルム3bとしては、第1実施形態と同様の単層フィルムまたは積層フィルムにより構成することができる。上述のように、光反射層を備えることにより光反射性フィルムを実現でき、光反射層を備えないことにより光透過性フィルムとすることができる。
【0069】
<第3実施形態>
図5は、本開示の第3実施形態に係る藻類培養袋を示す正面図である。図6は、図5におけるC-C線断面図である。背面図については、図5に示す正面図と基本的には同一であるので、省略している。第3実施形態において、第1、第2実施形態と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
第3実施形態の藻類培養袋は、第2実施形態の藻類培養袋と注出口部の形態および取付位置が異なる形態となっている。第3実施形態の藻類培養袋は、プラスチック成形体である注出口部21と、フィルムで一体化して構成される本体部10Cを含む。図5図6に示す第3実施形態では、図3、4に示した第2実施形態と異なり、注出口部21が外側フィルム1bと内側フィルム3bの間に取り付けられている。具体的には、注出口部21が備える取付部21bが外側フィルム1b、内側フィルム3bの内面と接合されている。注出口部21が備える取付部21bは、底部シール部17aと重なる位置において接合される。
【0071】
第3実施形態の藻類培養袋で用いられる注出口部21は、第1、第2実施形態の注出口部20と同様プラスチック成形体であり、例えば、射出成形法を用いて成形することができる。注出口部21は、中空状の筒状部21aと筒状部21aから連続する空洞を備えた取付部21bを備えている。取付部21bは、取付部20bと異なり、筒状の部分と、筒状の部分の外部に筒状の部分の外方へ延びるように連続した板状の部分と、を含む。この板状の部分が存在することにより、取付部21bは、外側フィルム1bと内側フィルム3bの間に挟み込み易くなっている。筒状部21aと取付部21bは一体成形されており、内部の孔は連続している。筒状部21a、取付部21bの内部が流路となって収容部19bと外部を連通している。これにより、収容部19bから藻類を含む培養液の回収が可能となっている。
【0072】
図6に示すように、収容部19bは、外側フィルム1bと内側フィルム3bに挟まれた位置に形成される。外側フィルム1bと内側フィルム3bの間には、注出口部21が取り付けられており、収容部19bと外部を連通可能となっている。図6の例では、外側フィルム1b、2bは光透過性フィルムであり、内側フィルム3bは光反射性フィルムである。培養時には、図5図6に示すように、上縁部16を上方、下縁部17を下方に向けて配置する。図6において、矢印Lは、太陽光や照明光等の光を示している。この藻類培養袋に、開口部15bから藻類を含む培養液を収容すると、外側フィルム1b側からのみ光が透過して、収容部19bに届く。また、藻類の密度が低い段階では、外側フィルム1b側からの光が、収容部19b内の培養液を透過して、光反射性フィルムである内側フィルム3bで反射される。反射された光は、内側フィルム3bから収容部19b内に照射されて、藻類の光合成が一層促進される。促進されて培養された藻類を含む培養液は、キャップを外した注出口部21から、藻類培養袋の外に注出され、回収される。
【0073】
なお、図5、6に示した第3実施形態の変形例として、内側フィルム3bを光透過性フィルムとしてもよい。この場合、外側フィルム1b側と、外側フィルム2bおよび内側フィルム3b側の両方から光が透過して、収容部19bに届く。これにより、収容部19bに収容された藻類は光合成を行うことができ、光合成が促進され、培養効率を高めることができる。第3実施形態のように、注出口部がシール部に取り付けられていると、収容部から藻類を含む培養液を回収する際に、袋内に藻類が残りにくい。このため、藻類の回収効率が高まる。
【0074】
第2、第3の実施形態に係る藻類培養袋は、いずれも3枚のフィルムで2つの空間(収容部19b、19c)に分けられている。このような藻類培養袋を用いた藻類培養方法について説明する。まず、藻類培養袋の、外側光透過性フィルム側の空間である収容部19bに、開口部15bから藻類を含む培養液を充填する。そして、もう一方の空間である収容部19cに、開口部15cから水溶液を充填する。さらに、藻類培養袋の外側光透過性フィルムである外側フィルム1bに光を照射して藻類を培養する。そして、注出口部20または注出口部21のキャップを外して、培養した藻類を含む培養液を注出口部20または注出口部21から注出して回収する。
【0075】
<第4実施形態>
図7は、本開示の第4実施形態に係る藻類培養袋を示す正面図である。図8は、図7におけるD-D線断面図である。背面図については、注出口部の有無を除けば、図7に示す正面図と基本的には同一であるので、省略している。第4実施形態において、第1~第3実施形態と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0076】
第1実施形態の藻類培養袋がフィルム2枚、第2実施形態の藻類培養袋がフィルム3枚の構成であるのに対して、第4実施形態の藻類培養袋は、フィルム4枚の構成である点が異なる。フィルムが4枚あることにより、培養液や水溶液の重量が大きくなっても、培養液や水溶液の保持が可能である。第4実施形態の藻類培養袋は、4枚のフィルムが重ね合わされており、3つの空間に区分されている。3つの空間は収容部19d、19e、19fとして用いることができる。収容部19d、19e、19fにはそれぞれに対応した開口部15d、15e、15fがある。第4実施形態の藻類培養袋は、プラスチック成形体である注出口部20と、フィルムで一体化して構成される本体部10Dを含む。注出口部20は、本体部10Dを構成する外側フィルム1c、内側フィルム3cに形成された貫通孔に取り付けられている。注出口部20の形態および接合手法は、第1、第2実施形態と同様である。第4実施形態では、図7に示すように、本体部10Dの平面形状は、長方形状である。本体部10Dの平面形状は、長方形状から4隅の角部を曲線状にしたものであってもよい。
【0077】
本体部10Dは、藻類を収容する収容部19dを形成する部分である。第4実施形態では、本体部10Dは、2枚の外側フィルム1c、2cと、2枚の内側フィルム3c、4cの計4枚のフィルムにより構成される。
【0078】
図7に示すように、本体部10Dは、正面視で略四角形状であり、上縁部16と、上縁部16と対向する下縁部17と、上縁部16と下縁部17を結ぶ方向に延びる2つの側縁部18、18を有している。略四角形状とは、4つの隅がいずれも角張った四角形だけでなく、各隅が面取りされて、外に凸の円弧状となったものも含む概念である。
【0079】
図7に示すように、本体部10Dは、フィルム1c~4cの下縁部17と2つの側縁部18、18の三方をヒートシールして接合することにより形成されている。シール部が形成される位置は、第1~第3実施形態と同様であるが、第4実施形態では、底部シール部17a、2つの側縁部シール部18a、18aは、外側フィルム1c、2c、内側フィルム3c、4cの4枚のフィルムを接合している。
【0080】
本実施形態の藻類培養袋は、外側フィルム1c、2c、内側フィルム3c、4cの4枚の四角形状のフィルムと、注出口部20を有する。注出口部20は、取付部20bと内側フィルム3cの内面側をヒートシールすることにより、本体部10Dに取り付けられる。
【0081】
図8に示すように、収容部19dは、内側フィルム3cと内側フィルム4cに挟まれた位置に形成される。内側光透過性フィルムである内側フィルム3cには貫通孔が形成されており、この貫通孔に注出口部20が取り付けられている。収容部19dと外部を連通可能となっている。外側フィルム1cには、注出口部20の筒状部20aを通すための貫通孔が形成されており、注出口部20の取付部20bと重なる部分においては、外側フィルム1cと内側フィルム3cが接合されている。
【0082】
第4実施形態では、外側フィルム1c、2c、内側フィルム3cは光透過性フィルムであり、内側フィルム4cは光反射性フィルムである。すなわち、内側フィルムの少なくとも一枚である内側フィルム4cが光反射性を有する内側光反射性フィルムであり、外側光透過性フィルムである外側フィルム1cと内側光反射性フィルムである内側フィルム4cの間にさらに光透過性を有する内側光透過性フィルムである内側フィルム3cがある。
【0083】
培養時には、図8に示すように、上縁部16を上方、下縁部17を下方に向けて配置する。図8において、矢印Lは、太陽光や照明光等の光を示している。第4実施形態の藻類培養袋に、開口部15dから藻類を含む培養液を収容すると、外側フィルム1c、内側フィルム3c側からのみ光が透過して、収容部19dに届く。また、藻類の密度が低い培養初期の段階では、外側フィルム1c、内側フィルム3c側からの光が、収容部19d内の培養液を透過して、光反射性フィルムである内側フィルム4cで反射される。反射された光は、内側フィルム4cから収容部19d内に照射されて、藻類の光合成が一層促進される。促進されて培養された藻類は、キャップを外した注出口部20から、藻類培養袋の外に注出され、回収される。
【0084】
第4実施形態の変形例1として、外側フィルム1c、内側フィルム3cを光透過フィルムとして、外側フィルム2cおよび内側フィルム4cを光反射性フィルムとしてもよい。上述のように、収容部19dでは、内側フィルム3cから収容部19d内に照射されて、藻類の光合成が一層促進される。また、収容部19eには、水溶液を充填してもよい。ともに光反射フィルムである外側フィルム2cと内側フィルム4cの間に水溶液を充填した場合、外側フィルム2c、内側フィルム4cを介して照射される光が低減されるため、収容部19e内の水溶液の温度変化が少ない。このため、隣接する収容部19dの培養液の温度変化を抑えることができる。
【0085】
なお、第4実施形態の変形例2として、内側フィルム4cを光透過性フィルムとしてもよい。この場合、外側フィルム1c、内側フィルム3c側と、外側フィルム2c、内側フィルム4c側の両方から光が透過して、収容部19dに届く。これにより、収容部19dに収容された藻類は光合成を行うことができ、光合成が促進され、培養効率を高めることができる。
【0086】
第4実施形態の変形例3として、光反射性である内側フィルム4c、外側フィルム2cに貫通孔を設けて注出口部20を取り付けた形態としてもよい。このとき、内側光反射性フィルムである内側フィルム4cには貫通孔が設けられていて、注出口部20は、内側光反射性フィルムに設けられた貫通孔に取り付けられている。これにより、外側光透過性フィルムである外側フィルム2cと内側光反射性フィルムである内側フィルム4cで区切られた袋内部の空間(収容部19e)と、袋外部とを連通させている、この場合、収容部19d内の藻類を含む培養液は、外側フィルム2c側から注出される。
【0087】
外側フィルム1c、2c、内側フィルム3c、4cとしては、第1~第3実施形態と同様の単層フィルムまたは積層フィルムにより構成することができる。上述のように、光反射層を備えることにより光反射性フィルムを実現でき、光反射層を備えないことにより光透過性フィルムとすることができる。
【0088】
<第5実施形態>
図9は、本開示の第5実施形態に係る藻類培養袋を示す正面図である。図10は、図9におけるE-E線断面図である。背面図については、図9に示す正面図と基本的には同一であるので、省略している。第5実施形態において、第1~第4実施形態と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0089】
第5実施形態の藻類培養袋は、第4実施形態の藻類培養袋と注出口部の形態および取付位置が異なる形態となっている。第5実施形態の藻類培養袋は、プラスチック成形体である注出口部21と、フィルムで一体化して構成される本体部10Eを含む。図9図10に示す第5実施形態では、図7図8に示した第4実施形態と異なり、注出口部21が内側フィルム3cと内側フィルム4cの間に取り付けられている。具体的には、注出口部21が備える取付部21bが内側フィルム3c、内側フィルム4cの内面と接合されている。注出口部21が備える取付部21bは、底部シール部17aと重なる位置において接合される。注出口部21は、図5図6に示した第3実施形態で用いた注出口部21と同様のものである。
【0090】
図10に示すように、収容部19dは、内側フィルム3cと内側フィルム4cに挟まれた位置に形成される。内側フィルム3cと内側フィルム4cの間には、注出口部21が取り付けられており、収容部19dと外部を連通可能となっている。図9図10の例では、外側フィルム1c、2c、内側フィルム3cは光透過性フィルムであり、内側フィルム4cは光反射性フィルムである。すなわち、注出口部21が内側光反射性フィルムである内側フィルム4cと内側光透過性フィルムである内側フィルム3cとの間に取り付けられている。
【0091】
培養時には、図10に示すように、上縁部16を上方、下縁部17を下方に向けて配置する。図10において、矢印Lは、太陽光や照明光等の光を示している。この藻類培養袋に、開口部15dから藻類を含む培養液を収容すると、外側フィルム1c、内側フィルム3c側から光が透過して、収容部19dに届く。また、藻類の密度が低い段階では、外側フィルム1c、内側フィルム3c側からの光が、収容部19d内の培養液を透過して、光反射性フィルムである内側フィルム4cで反射される。反射された光は、内側フィルム4cから収容部19d内に照射されて、藻類の光合成が一層促進される。促進されて培養された藻類を含む培養液は、キャップを外した注出口部21から、藻類培養袋の外に注出され、回収される。
【0092】
また、底部シール部17aや内側フィルムに設けた貫通孔に注出口部がある形態を示したが、本開示はこれに限定されず、例えば注出口部は、側縁部シール部18aに取り付けられていても良い。なお、図9、10に示した第5の実施形態の変形例として、内側フィルム4cを光透過性フィルムとしてもよい。この場合、外側フィルム1c、内側フィルム3c側と、外側フィルム2cおよび内側フィルム4c側の両方から光が透過して、収容部19dに届く。これにより、収容部19dに収容された藻類は光合成を行うことができ、光合成が促進され、培養効率を高めることができる。
【0093】
第4、第5の実施形態に係る藻類培養袋は、いずれも4枚のフィルムで3つの空間(収容部19d、19e、19f)に分けられている。このような第4、第5の実施形態に係る藻類培養袋を用いた藻類培養方法について説明する。まず、藻類培養袋の、内側光反射性フィルムである内側フィルム4cと内側光透過性フィルムである内側フィルム3cの間の空間である収容部19dに、開口部15dから藻類を含む培養液を充填する。そして、内側光反射性フィルムである内側フィルム4cを挟んだ、収容部19dとは異なる空間である収容部19eに、開口部15eから水溶液を充填する。さらに、藻類培養袋の外側光透過性フィルムである外側フィルム1c側から光を照射して藻類を培養する。そして、注出口部20または注出口部21のキャップを外して、培養した藻類を含む培養液を注出口部20または注出口部21から注出して回収する。
【0094】
第4、第5の実施形態に係る藻類培養袋は、4枚のフィルムが重ね合わされており、3つの空間に区分された構造となっている。これに限定されず、さらに多くの枚数のフィルムを重ね合わせてより多くに空間に区分された藻類培養袋を構成してもよい。すなわち、5枚以上のフィルムを重ね合わせてより4つ以上の空間に区分された藻類培養袋を構成してもよい。この場合、第4、第5の実施形態で示した2枚の外側フィルムの間により多くの内側フィルムを挟んだ構成となる。この際、藻類を収容する収容部の少なくとも一方の側は、全て光透過性のフィルムとなる。
【0095】
<注出口部の応用>
注出口部は、他の器具と接続し易くするために、特殊な構造をしていてもよい。この注出口部は、上記の全ての実施形態の藻類培養袋に適用可能であるが、ここでは、第4実施形態に適用した場合について説明する。図11図12は、第4実施形態に示した4枚構造の藻類培養袋に、特定の構造の注出口部22を取り付けた例を示す図である。注出口部22は、筒状部22aに特徴がある。注出口部22の筒状部22aは、取付部22bと反対側の端部寄りに外径が大きくなる凸状部22cを有している。この凸状部22cを用いることにより、後述する藻類回収用管40や、気体供給管41との接続を容易にすることができる。このような注出口部22は、円板状の取付部20bを有する形態としても、板状の取付部21bを有する形態としてもよい。また、第1実施形態から第5実施形態のいずれの藻類培養袋にも適用することが可能である。
【0096】
<藻類培養装置>
次に、本開示の一実施形態に係る藻類培養装置について説明する。藻類培養装置は、上記のように説明した藻類培養袋を含んでいる。
図13図14は、一実施形態に係る藻類培養装置を示す図である。図13は、藻類培養袋と藻類回収用管の接続前の状態を示しており、図14は、藻類培養袋と藻類回収用管の接続時の状態を示している。図13に示すように、藻類培養袋100は、開閉栓30を介して藻類回収用管40に接続可能となっている。開閉栓30としては、特に限定されず、液体の流出入を制御することができれば、公知の様々なものを用いることができる。図13の例では、開閉栓30としてバタフライ弁を用いている。
バタフライ弁とは、レバーを回して中のディスクを回転(好ましくは90度)させて、液体や気体等の流体を通したり止めたりする弁である。また、開閉栓30としてコックを用いてもよい。コックすなわちコックバルブとは、円錐形のプラグに楕円形の孔を有し、ハンドルの回転(好ましくは90度)により流体の流れを制御するバルブである。開閉栓30としては、バタフライ弁、コックバルブ、またはその他のものであっても、公知の構造を採用することができる。
開閉栓30、藻類回収用管40は、その端部に外径が大きい凸状部分を有し、いわゆるヘルールで接続される。ヘルールとは、簡単に組立や洗浄が可能な継手であり、接続部に溝があり、ガスケットを間に挟んでクランプハンドで締め付けて固定する継手である。
【0097】
図13に示すように、開閉栓30を、藻類培養袋100の注出口部22と藻類回収用管40の間に配置して、ヘルール接続を用いて、クランプハンド50により固定する。この結果、図14に示すように、注出口部22は開閉栓30を介して藻類回収用管40と接続される。すなわち、注出口部22は開閉栓30が接続されていて、開閉栓30には藻類回収用管40が接続されている。この状態で、開閉栓30の弁の位置まで培養液が達している。そして、開閉栓30を開栓すると、開閉栓30の弁の位置で止まっていた培養液が藻類回収用管40に流れ込み、藻類を含む培養液を回収することができる。
【0098】
図15は、藻類培養装置の他の実施形態を示す図である。図15に示した藻類培養装置では、藻類培養袋100の注出口部22と、3つの端を有する三方管60の一端を接続している。三方管とは三方に開口を有する管であり、3つの端を有する。三方管60の他の二端のうちの一端には、図13に示した構造と同様にして、液体開閉栓31を介して藻類回収用管40が接続される。三方管60の残る一端には、気体開閉栓32を介して気体供給管41が接続される。図15の例では、説明の便宜上、三方管60と、藻類回収用管40、気体供給管41を接続していない状態で示しているが、これらの接続が行われた状態で、藻類の培養が行われる。図15の下方には、三方管60の内部のG部分の拡大図を示している。三方管60の内部において、気体供給管41側の一端付近には、端に近い側から順に、逆止弁51と微細化フィルター52が設置されている。逆止弁51と微細化フィルター52の位置は逆にすることも可能であるが、逆止弁51は気体供給管41側に配置することが好ましい。
【0099】
微細化フィルター52は、板状の部材であり、厚み方向に貫通孔が複数形成されている。この貫通孔を通過する際に、藻類培養袋に送る気体の気泡が微細化され、培養液中の溶存ガス濃度を高めることができる。後述のように気体が二酸化炭素を含む場合は、培養液中の二酸化炭素濃度を高めることができ、培養効率を高めることができる。微細化フィルター52は、その板状の面の法線方向が管の延伸方向に沿った方向になるように、設置されている。貫通孔の孔径は、0.1mm以上10mm以下であることが好ましく、0.5mm以上5mm以下であることがより好ましい。貫通孔の孔径が0.1mm未満であると、藻類が詰まる可能性が高まる。また、貫通孔の孔径が1.0mmを超えると、気泡を十分に微細化できない。
【0100】
微細化フィルター52の貫通孔の孔径は、板状の部材の一方の面から他方の面まで同一であってもよいし、板状の部材の厚み方向に応じて変化してもよい。微細化フィルター52の貫通孔の孔径は、気体供給管41側よりも藻類培養袋100側が大きい方が好ましい。微細化フィルター52の貫通孔の孔径が、気体供給管41側よりも藻類培養袋100側が大きいことで、藻類が貫通孔に詰まるのを抑制することができる。
【0101】
逆止弁51は、藻類培養袋100からの培養液が気体供給管41側に逆流しないようにするための弁である。逆止弁51としては、公知の構造の逆止弁を用いることができる。
【0102】
<藻類培養方法1>
図15に示した藻類培養装置を用いた藻類培養方法について説明する。まず、図15に示した状態から、液体開閉栓31により藻類回収用管40と三方管60を接続し、気体開閉栓32により気体供給管41と三方管60を接続する。そして、三方管60の残りの一端を注出口部22に接続する。そして、藻類培養袋100の開口部から藻類を含む培養液を注入する。培養液の注入後、気体開閉栓32を開栓する。そして、気体開閉栓32、三方管60、注出口部22を介して、二酸化炭素を含む気体を藻類培養袋100に注入する。注出口部22は開口されて、三方管60と接続されているため、培養液は、三方管60の中も満たす。しかし、液体開閉栓31は閉栓されているため、藻類回収用管40には培養液は流れない。また、気体供給管41側には、逆止弁が設けられているため、気体供給管41にも培養液は流れない。この状態では、注出口部22から気体が藻類培養袋100に注入されている。このため、光合成に必要な二酸化炭素が培養液に十分供給され、藻類の培養が促進される。
【0103】
培養液において藻類が十分に培養された後、液体開閉栓31を開栓する。これにより、培養した藻類を含む培養液を液体開閉栓31を介して、藻類回収用管40に流し込み、排出する。これにより、培養した藻類の回収が可能となる。
【0104】
<注出口部と注入口部>
図16は、藻類培養装置の他の実施形態を示す図である。図16に示した藻類培養装置では、注入口部23、注出口部24を有する藻類培養袋100Aを用いている。注入口部23と注出口部24は同一形態であってもよい。同一形態の場合、どちらを注入口とし、どちらを注出口としてもよい。ここでは、注入口部23、注出口部24は、上記注出口部22と同一形態である。すなわち、ヘルール構造で接続可能となっている。注出口部24は、開閉栓30を介して注出管62に接続可能となっている。注入口部23は、開閉栓30を介して注入管61に接続可能となっている。さらに、注出管62は、開閉栓30を介して藻類回収用管40に接続可能となっている。また、注入管61は、開閉栓30を介して気体供給管41に接続可能となっている。
【0105】
図16の下方には、注入管61の内部のH部分の拡大図を示している。注入管61の内部において、気体供給管41側の一端付近には、端に近い側から順に、図15に示した形態と同様に、逆止弁51と微細化フィルター52が設置されている。逆止弁51と微細化フィルター52の位置は逆にすることも可能であるが、逆止弁51は気体供給管41側に配置することが好ましい。微細化フィルター52、逆止弁51の詳細は、図15に示したものと同様である。
【0106】
<藻類培養方法2>
図16に示した藻類培養装置を用いた藻類培養方法について説明する。まず、図16に示した状態から、液体開閉栓31により藻類回収用管40と注出管62を接続し、気体開閉栓32により気体供給管41と注入管61を接続する。そして、注出管62、注入管61の他端を注出口部24、注入口部23にそれぞれ接続する。そして、藻類培養袋100Aの開口部から藻類を含む培養液を注入する。培養液の注入後、気体開閉栓32を開栓する。そして、気体開閉栓32、注入管61、注入口部23を介して、二酸化炭素を含む気体を藻類培養袋に注入する。注出口部24、注入口部23は開口されており、それぞれ注入管61、注出管62と接続されているため、培養液は、注入管61、注出管62の中も満たす。しかし、液体開閉栓31は閉栓されているため、藻類回収用管には培養液は流れない。また、注入管61の気体供給管41側には、逆止弁51が設けられているため、気体供給管41にも培養液は流れない。この状態では、注入口部23から気体が藻類培養袋に注入されている。このため、光合成に必要な二酸化炭素が培養液に十分供給され、藻類の培養が促進される。
【0107】
培養液において藻類が十分に培養された後、液体開閉栓31を開栓する。これにより、培養した藻類を注出管から液体開閉栓31を介して、藻類回収用管40に流し込み、排出する。これにより、培養した藻類の回収が可能となる。藻類の培養方法については、上記に限られず、例えば、開口部から二酸化炭素を含む気体を藻類培養液に供給しても良い。例えば、開口部から、二酸化炭素を含む気体供給可能なガス供給管等を挿入し、二酸化炭素を含む気体を藻類培養液に供給しても良い。
【0108】
<実施例A(フィルムの鏡面光沢度)>
第4実施形態に示した藻類培養袋において、光を照射する側とは反対側の2枚のフィルムとして、光透過性フィルムと光反射性フィルムを用い、鏡面光沢度の測定を行った。具体的には、装置「GROSSCHECKER IG―320」(HORIBA製)を用いて、鏡面光沢度(単位%)の測定を行った。鏡面光沢度は、グロス値とも呼ばれることがある。外側フィルム1c、内側フィルム3c、内側フィルム4c、外側フィルム2cをこの順に重ね、外側フィルム1c側から光を入射し、鏡面光沢度を測定した。外側フィルム1cと内側フィルム3cは40μmの厚みのポリエチレンフィルムを用いた。測定の際の入射角はGs(60°)とした。測定結果を以下の表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
表1中、各層に付された数字は厚みを表し、単位はμmである。また、各層の略号は次の通りである。PEF:ポリエチレンフィルム、ALM:アルミフィルム、ONY:二軸延伸ナイロンフィルム。各層同士は、ドライラミネート法にて貼り合わせた。表1に示すように、実施例A1~A6のように外側フィルム2c、内側フィルム4cのいずれか一方に光反射性フィルムを用いた場合、比較例A1のように光反射性フィルムを用いなかった場合に比べて大きな鏡面光沢度を示した。また、内側フィルム4cを光反射性フィルムとした実施例A1~A3は、外側フィルム2cを光反射性フィルムとした実施例A4~A6に比べて、大きな鏡面光沢度を示した。鏡面光沢度が大きい程、初期光合成を高めることが考えられるため、内側フィルム4cを光反射性フィルムとすることが好ましい。
【0111】
<外光の波長変換>
上記各実施形態の藻類培養袋の内側光透過性フィルムまたは外側光透過性フィルムに特殊蛍光剤を塗布あるいは練り込んで、光源からの光を波長変換し、光合成を促進してもよい。
【0112】
特殊蛍光剤としては、例えば、ペリレン系、クマリン系、ピリジン系、イミダゾール系、オキサジアゾール系、オキサジン系、ローダミン系の有機蛍光色素や無機蛍光剤を挙げることができる。このような特殊蛍光剤は、透明樹脂に高分散しやすく、LED等の光源が放つ短波長の光を吸収し、吸収した短波長の光をそれよりも長波長の光に効率的に波長変換する。そのため、光合成を促進し、培養効率を高めることが可能となる。上記特殊蛍光剤のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
<フィルム内面の特性>
上記各実施形態の藻類培養袋において、培養室に接する光透過性フィルムの内面側を、藻類が付着し難い構成としてもよい。以下、光透過性フィルムの内面に藻類が付着し難い構成について説明する。このような構成とするため、外側光透過性フィルムまたは内側光透過性フィルムの最内層に、ポリオレフィンとポリアルキルシロキサンの共重合体を含んでいてもよい。最内層に、ポリオレフィンとポリアルキルシロキサンの共重合体を含むことにより、藻類の培養中に、フィルム内側表面に藻類が付着するのが抑制される。これにより、付着した藻類が光源からの光を遮蔽し、藻類培養袋の内部まで光が届きにくくなることを抑制することができる。また、藻類が付着し難いため、培養室となった収容部の内面側の洗浄作業の負荷も軽減される。
【0114】
ポリオレフィンとポリアルキルシロキサンの共重合体に含まれるポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種類を含んでいてもよい。ポリアルキルシロキサンは下記式(1)で表される。
―Si(R)(R)-O- (1)
(ただし、R1、R2はアルキル基であり、同一でもよく、異なっていても良い)
【0115】
光透過性フィルムの最内層にはさらにポリエチレンを含んでもよい。また、最内層におけるポリオレフィンはポリエチレンを含み、注出口部はポリエチレンを含んでいてもよい。最内層にさらにポリエチレンを含むことで、外側光透過性フィルムまたは内側光透過性フィルムにポリエチレンを含む注出口部をヒートシール等にて接着する場合、接着強度を高めることができる。
【0116】
また、外側光透過性フィルムでも内側光透過性フィルムでもないフィルム、例えば内側光反射性フィルムに注出口部をヒートシール等にて接着する場合は、内側光反射性フィルムの最内層と注出口部がヒートシールされ、内側光反射性フィルムと外側光透過性フィルムまたは内側光透過性フィルムもヒートシールされる。そのため、注出口部がポリエチレンを含み、内側光反射性フィルムの最内層がポリエチレンを含み、外側光透過性フィルムまたは内側光透過性フィルムの最内層がポリエチレンと、ポリエチレンとポリアルキルシロキサンの共重合体を含むことで、それぞれの接着強度を高めることができる。
【0117】
最内層に含むポリエチレンの割合は、70質量%以上97質量以下でもよく、75質量%以上95質量%以下でもよい。ポリエチレンの割合を向上させると、内側光透過性フィルムに、ポリエチレンを含む注出口部をヒートシール等にて接着する場合、接着強度をより高めることができる。
【0118】
最内層に含むポリオレフィンとポリアルキルシロキサンの共重合体の割合は、3質量%以上30質量%以下でもよい。ポリオレフィンとポリアルキルシロキサンの共重合体の割合を多く含むほど、藻類の付着を防止する効果が高まることが期待できる。
【0119】
R1、Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基等の直鎖状または分岐状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0120】
ポリオレフィンとポリアルキルシロキサンの共重合体は、ポリオレフィン鎖-ポリアルキルシロキサン鎖-ポリオレフィン鎖のブロック共重合体の構造をとっていてもよい。ポリオレフィンとポリアルキルシロキサンの共重合体としては、例えば、イクスフォーラ(登録商標、 三井化学(株)製)、GENIOPLAST(登録商標、旭化成ワッカーシリコン(株)製)、クリンベル(登録商標、富士ケミカル(株)製)等が挙げられる。
【0121】
<実施例B(フィルム内面の特性)>
最外層:ポリエチレン10μm/中間層:ポリエチレン30μm/最内層:ポリエチレンと、ポリエチレンとポリアルキルシロキサンの共重合体を混合させたもの10μmとなるように、インフレーション法にて製膜した。最内層において、ポリエチレンが97質量部、ポリエチレンとポリアルキルシロキサンの共重合体が3質量部のものを実施例B1とし、ポリエチレンが94質量部、ポリエチレンとポリアルキルシロキサンの共重合体が6質量部のものを実施例B2とし、ポリエチレンが100質量部のみのものを比較例B1とした。ポリエチレンとポリアルキルシロキサンの共重合体を含むものとして、イクスフォーラPE3027(三井化学(株)製)を使用した。イクスフォーラPE3027は、ポリエチレン70質量部とポリエチレンとポリアルキルシロキサンの共重合体30質量部が混合されたものである。ポリアルキルシロキサンは、R1、R2がともにメチル基である、ポリジメチルシロキサンである。また、ポリエチレン鎖-ポリジメチルシロキサン鎖-ポリエチレン鎖のブロック共重合体の構造である。
【0122】
得られたフィルムを、最内層が培養液に接するように、ポリスチレン製培養フラスコに貼りつけ、藻類を培養した。培養した藻類は、Chlorella vulgaris NIES-227, Oscillatoria tenuis NIES-33, Nostoc commune NIES-24, Anabaena cylindrica NIES-19の4株である。この4株を混合してMDM液体培地に接種した。MDM液体培地の成分組成は、以下の表2に示す通りであった。培養操作として、インキュベーターに培養フラスコを入れ、115rpmで往復振とう培養し、1000LxのLED光を照射した。なお、12時間毎にLED光照射と振とうのON-OFFを繰り返し、23日間培養した。インキュベーターの設定温度は、24℃とした。
【0123】
【表2】
【0124】
培養を23日間行った結果は、以下の通りであった。
(実施例B1)培養液と接した最内層のポリエチレンとポリアルキルシロキサンの共重合体の割合が3質量部の場合:藻類があまり付着しなかった。
(実施例B2)培養液と接した最内層のポリエチレンとポリアルキルシロキサンの共重合体の割合が6質量部の場合:藻類がほとんど付着しなかった。
(比較例B1)培養液と接した最内層のポリエチレンとポリアルキルシロキサンの共重合体の割合が0質量部の場合:藻類の付着が多く見られた。
具体的な培養結果を表3に示す。
【0125】
【表3】
【0126】
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、藻類培養袋については、第1実施形態から第5実施形態、およびその変形例の内容を、技術的に適用が困難な場合を除き、任意に組み合わせ、上記実施形態として明示していない藻類培養袋を構成することが可能である。
【0127】
また、第1実施形態から第5実施形態の各藻類培養袋について、注出口部を変形したり、注入口部を追加したりしてもよい。また、各藻類培養袋に、三方管、藻類回収用管、気体供給管、開閉栓、気体開閉栓、液体開閉栓等を組み合わせる態様についても、技術的に困難な場合を除き、任意に行うことができる。
【符号の説明】
【0128】
1a、2a・・・フィルム(外側フィルム)
1b、1c、2b、2c・・・外側フィルム
3b、3c、4c・・・内側フィルム
10A、10B、10C、10D、10E・・・本体部
15a~15f・・・開口部
16・・・上縁部
17・・・下縁部
17a・・・底部シール部
18・・・側縁部
18a・・・側縁部シール部
19a~19f・・・収容部
20a、21a、22a・・・筒状部
20b、21b、22b・・・取付部
20、21、22、24・・・注出口部
23・・・注入口部
30・・・開閉栓
31・・・液体開閉栓
32・・・気体開閉栓
40・・・藻類回収用管
41・・・気体供給管
50・・・クランプハンド
51・・・逆止弁
52・・・微細化フィルター
60・・・三方管
61・・・注入管
62・・・注出管
100、100A・・・藻類培養袋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16