(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087734
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】輪荷重推定装置、車両、プログラム及び輪荷重推定方法
(51)【国際特許分類】
B60W 40/13 20120101AFI20240624BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B60W40/13
B66F9/24 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202689
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕之
(72)【発明者】
【氏名】天野 真輝
(72)【発明者】
【氏名】服部 達哉
【テーマコード(参考)】
3D241
3F333
【Fターム(参考)】
3D241BA49
3D241BB21
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB09Z
3D241DB10Z
3D241DB12Z
3D241DB13Z
3D241DB15Z
3D241DB16Z
3D241DB46Z
3D241DB48Z
3F333AA02
3F333AB13
3F333FA09
(57)【要約】
【課題】傾斜路走行時における輪荷重を推定可能な輪荷重推定装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、輪荷重推定装置が提供される。この輪荷重推定装置は、取得部と、算出部と、推定部とを備える。取得部は、車両の姿勢に関するパラメータを取得する。算出部は、パラメータと、車両の質量とに基づいて、車両に作用するモーメントを算出する。推定部は、モーメントと、所定の推定式とに基づいて、車両が具備する各車輪にかかる輪荷重を推定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪荷重推定装置であって、
取得部と、算出部と、推定部とを備え、
前記取得部は、車両の姿勢に関するパラメータを取得し、
前記算出部は、前記パラメータと、前記車両の質量とに基づいて、前記車両に作用するモーメントを算出し、
前記推定部は、前記モーメントと、所定の推定式とに基づいて、前記車両が具備する各車輪にかかる輪荷重を推定する、
輪荷重推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の輪荷重推定装置において、
前記モーメントは、前記車両に生じる慣性力及び重力、に関するモーメントを含む、
輪荷重推定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の輪荷重推定装置において、
前記算出部は、前記車両の重心位置を算出し、
前記算出部は、前記重心位置と、前記質量とに基づいて、前記重心位置における慣性に関する慣性値を算出し、
前記推定部は、前記慣性値と、前記モーメントと、前記推定式とに基づいて、前記輪荷重を推定する、
輪荷重推定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の輪荷重推定装置において、
前記取得部は、前記車両の3軸周りの角速度及び角加速度の少なくとも一方を取得し、
前記推定部は、前記角速度及び前記角加速度の少なくとも一方と、前記モーメントと、前記推定式とに基づいて、前記輪荷重を推定する、
輪荷重推定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の輪荷重推定装置において、
前記取得部は、前記車両の加速度である第1加速度を取得し、
前記算出部は、前記第1加速度と、前記パラメータとに基づいて、前記第1加速度を補正した第2加速度を算出し、
前記算出部は、前記第2加速度と、前記質量とに基づいて、前記モーメントを算出する、
輪荷重推定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の輪荷重推定装置において、
前記第1加速度は、前記車両の3軸における加速度である、
輪荷重推定装置。
【請求項7】
請求項5に記載の輪荷重推定装置において、
前記第2加速度は、前記パラメータから算出される前記車両の傾斜方向と、重力加速度とに基づいた成分に関する方向成分を前記第1加速度に適用して、前記第1加速度を補正したものである、
輪荷重推定装置。
【請求項8】
請求項1に記載の輪荷重推定装置において、
前記取得部は、前記パラメータを連続的に取得し、
前記算出部は、連続的に取得された前記パラメータと、前記車両の質量とに基づいて、前記モーメントを連続的に算出し、
前記推定部は、連続的に算出された前記モーメントと、前記推定式とに基づいて、前記輪荷重を時系列で連続的に推定する、
輪荷重推定装置。
【請求項9】
車両であって、
検出部と、請求項1から8までの何れか1項に記載の輪荷重推定装置とを備え、
前記検出部は、前記車両の運動に関する情報を検出し、
前記輪荷重推定装置は、検出された前記情報を受信する、
車両。
【請求項10】
プログラムであって、
請求項1から8までの何れか1項に記載の輪荷重推定装置の各部としてコンピュータを機能させる、
プログラム。
【請求項11】
輪荷重推定方法であって、
請求項1から8までの何れか1項に記載の輪荷重推定装置の各部により実行される処理を、各工程として備える、
輪荷重推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輪荷重推定装置、車両、プログラム及び輪荷重推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、輪荷重推定装置が開示されている。
【0003】
この輪荷重推定装置は、重心慣性値算出部が、積載物を含む車両の重心に関する情報を算出すると共に、車両の重心周りの慣性モーメント係数及び慣性乗積を含む慣性テンソルを算出し、輪荷重変動推定部が、慣性テンソル、積載物を含む車両の3軸周りの角速度、角加速度、車両の前後及び横加速度、積載物を含む車両の重量、及び積載物を含む車両の重心に関する情報に基づいて、輪荷重の変動分を推定し、輪荷重算出部が、輪荷重の変動分と静荷重とに基づいて、輪荷重を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された輪荷重推定装置では、傾斜路走行時における輪荷重を推定することが困難であった。
【0006】
本発明では上記事情を鑑み、傾斜路走行時における輪荷重を推定可能な輪荷重推定装置を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、輪荷重推定装置が提供される。この輪荷重推定装置は、取得部と、算出部と、推定部とを備える。取得部は、車両の姿勢に関するパラメータを取得する。算出部は、パラメータと、車両の質量とに基づいて、車両に作用するモーメントを算出する。推定部は、モーメントと、所定の推定式とに基づいて、車両が具備する各車輪にかかる輪荷重を推定する。
【0008】
このような態様によれば、傾斜路走行時における輪荷重を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】車両600のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】輪荷重推定装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】輪荷重推定装置100(制御部110)によって実現される機能を示すブロック図である。
【
図5】地上座標系に対する車両座標系を示す図である。
【
図6】積載物602のリフト高さの違いによる慣性主軸の違いを概略的に示したイメージ図である。
【
図7】傾斜角Θの傾斜路を登坂中の車両600を示す図である。
【
図8】傾斜角Θの傾斜路を横切って走行中の車両600を示す図である。
【
図9】輪荷重推定装置100によって実行される情報処理の流れを示すアクティビティ図である。
【
図10】第1実施形態の変形例に係る輪荷重推定装置100の機能ブロック図を示す。
【
図11】第2実施形態に係る輪荷重推定装置100(制御部110)によって実現される機能を示すブロック図である。
【
図12】輪荷重推定装置100によって実行される情報処理の流れを示すアクティビティ図である。
【
図13】3輪の車両600を用いて、傾斜路を走行させて前進左旋回を行わせた状態を示す図である。
【
図14】
図13の車両600の挙動を表すシミュレーションデータ図である。
【
図15】
図14のデータを(26)式に適用した輪荷重推定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の第1実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。なお、第1実施形態と第2実施形態とを合わせて、本実施形態という場合がある。
【0011】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0012】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0013】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0014】
1.ハードウェア構成
第1節では、第1実施形態のハードウェア構成について説明する。
【0015】
1-1.車両600
図1は、車両600の構成を示す概略図である。車両600は、車体601、積載物602、フォーク603、アウターマスト604、インナーマスト605及びIMU200を備えるものとする。ここでは、IMU200は、極めて軽量であるため、車両600の重心に影響を与えないものとして考える。
図1では、各構成部位の重心位置に、重心位置を示すマークを示し、各構成部位の符号の末尾に「A」を付加した符号で示している。なお、重心位置を示す円の大きさは、各構成部位の重量の大小を概略的に表している。なお、以下において、積載物602を含む車両600を「車両全体600」ともいう。
【0016】
第1実施形態では、重心に変動を与える要素を含む車両600の一例として、上下に稼働可能なフォーク603に積載物602を積載して走行する、前後左右4つの車輪を備えたフォークリフトについて、各輪荷重を推定する場合について説明する。また、第1実施形態では、車両600の前後加速度、横加速度、ロール角速度、ピッチ角速度、ヨー角速度、姿勢角を含む車両挙動が計測されることを前提とする。また、第1実施形態では、積載物602の質量、リフト高さ、フォーク603に対する積載物602の積載位置が検知できることを前提条件とする。
【0017】
図2は、車両600のハードウェア構成を示すブロック図である。車両600は、輪荷重推定装置100と、検出部とを備える。検出部は、IMU200と、圧力センサ300と、エンコーダ400と、操作量センサ500とが該当しうる。輪荷重推定装置100には、IMU200と、圧力センサ300と、エンコーダ400と、操作量センサ500とが接続されている。
【0018】
各検出部は、車両600の運動に関する情報を検出する。輪荷重推定装置100は、各検出部で検出された情報を受信する。車両600は、積載物602を様々な状態で積載して走行する車両、例えば、フォークリフト、トラック、トレーラ、バス等が該当しうる。本実施形態では、車両600をフォークリフトとして説明する。ここでは、IMU200、圧力センサ300、エンコーダ400及び操作量センサ500についてさらに説明する。
【0019】
IMU200は、Inertial Measurement Unitの略であり、上述したように、車両600の任意の位置に配置され、車両座標系の3軸の各軸周りの角速度、及び各軸方向の加速度を検出し、検出値を出力する。
【0020】
圧力センサ300は、積載物602が積載されるフォーク603の積載面全面に設けられる。圧力センサ300は、例えばシート状のセンサであり、積載面の各位置にかかった圧力を検出し、検出値を出力する。
【0021】
エンコーダ400は、インナーマスト605を上下させるための荷揚げ油圧モータの回転角を検出し、検出値を出力する。
【0022】
操作量センサ500は、アクセルペダル踏み込み量、ブレーキペダル踏み込み量、及び操舵角の各々を検出し、検出値を出力する。
【0023】
1-2.輪荷重推定装置100
図3は、輪荷重推定装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。輪荷重推定装置100は、制御部110と、記憶部120と、表示部130と、入力部140と、通信部150とを有し、これらの構成要素が輪荷重推定装置100の内部において通信バス160を介して電気的に接続されている。各構成要素についてさらに説明する。
【0024】
制御部110は、輪荷重推定装置100に関連する全体動作の処理・制御を行う。制御部110は、例えば、不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部110は、記憶部120に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、輪荷重推定装置100に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶部120に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例である制御部110によって具体的に実現されることで、制御部110に含まれる各機能部として実行されうる。これらについては、第2節においてさらに詳述する。なお、制御部110は単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部110を有するように実施してもよい。またそれらの組み合わせであってもよい。
【0025】
記憶部120は、輪荷重推定装置100の情報処理に必要な様々な情報を記憶する。これは、例えば、制御部110によって実行される輪荷重推定装置100に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。また、これらの組み合わせであってもよい。
【0026】
表示部130は、輪荷重推定装置100の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。表示部130は、ユーザが操作可能なグラフィカルユーザインターフェース(Graphical User Interface:GUI)の画面を表示する。これは例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイ等が該当しうる。
【0027】
入力部140は、輪荷重推定装置100の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。例えば、入力部140は、表示部130と一体となってタッチパネルとして実施されてもよい。タッチパネルであれば、ユーザは、タップ操作、スワイプ操作等を入力することができる。もちろん、タッチパネルに代えて、スイッチボタン、マウス、QWERTキーボード等を採用してもよい。すなわち、入力部140は、ユーザによってなされた操作入力を受け付ける。当該入力は、命令信号として、通信バス160を介して制御部110に転送される。そして、制御部110は、必要に応じて所定の制御や演算を実行しうる。
【0028】
通信部150は、USB、IEEE1394、Thunderbolt(登録商標)、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、5G/LTE/3G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。すなわち、輪荷重推定装置100は、通信部150を介して、各構成要素と種々の情報を通信する。
【0029】
2.機能構成
第2節では、第1実施形態の機能構成について説明する。前述の通り、記憶部120に記憶されているソフトウェアによる情報処理がハードウェアの一例である制御部110によって具体的に実現されることで、制御部110に含まれる各機能部として実行されうる。
【0030】
図4は、輪荷重推定装置100(制御部110)によって実現される機能を示すブロック図である。具体的には、輪荷重推定装置100(制御部110)は、前後横加速度取得部10と、3軸角速度取得部12と、姿勢角取得部14と、積載荷重取得部16と、リフト高取得部18と、積載位置取得部20と、タイヤ前後力取得部22と、タイヤ横力取得部24と、角加速度算出部26と、重心慣性値算出部30と、ヨーモーメント算出部32と、輪荷重変動推定部34と、輪荷重算出部36とを備える。車両諸元DB28は、リードオンリーメモリ(Read Only Memory:ROM)として、記憶部120とは別の記憶部として輪荷重推定装置100に備えられる。
【0031】
換言すると、輪荷重推定装置100(制御部110)は、取得部(前後横加速度取得部10、3軸角速度取得部12、姿勢角取得部14、積載荷重取得部16、リフト高取得部18、積載位置取得部20、タイヤ前後力取得部22、及びタイヤ横力取得部24)と、算出部(角加速度算出部26、重心慣性値算出部30、及びヨーモーメント算出部32)と、推定部(輪荷重変動推定部34)とを備える。さらに、輪荷重推定装置100は、記憶部として車両諸元DB28を備え、輪荷重推定装置100の制御部110は、輪荷重算出部36を備える。
【0032】
図5は、地上座標系に対する車両座標系を示す図である。車両座標系において、車両600の前後方向(走行方向)がx軸方向、車両600の横方向(幅方向)がy軸方向、車両600の鉛直方向がz軸方向である。
【0033】
前後横加速度取得部10は、IMU200から出力された検出値を受け取り、検出値に含まれるx軸方向の加速度Gxを、車両600の重心CGallにおける前後加速度GxCGとして取得する。前後横加速度取得部10は、IMU200から出力された検出値を受け取り、検出値に含まれるy方向の加速度Gyを、車両600の重心CGallにおける横加速度GyCGとして取得する。
【0034】
3軸角速度取得部12は、IMU200から出力された検出値を受け取り、検出値に含まれるx軸周りの角速度を、ロール角速度Pとして取得する。3軸角速度取得部12は、IMU200から出力された検出値を受け取り、検出値に含まれるy軸周りの角速度を、ピッチ角速度Qとして取得する。3軸角速度取得部12は、IMU200から出力された検出値を受け取り、検出値に含まれるz軸周りの角速度を、ヨー角速度Rとして取得する。
【0035】
姿勢角取得部14は、IMU200から出力された検出値を受け取り、検出値に含まれる車両600の姿勢角を、車両ロール角φ及び車両ピッチ角θとして取得する。車両ロール角φは、地上座標系に対する車両座標系のx軸周りのなす角度を表す。車両ピッチ角θは、地上座標系に対する車両座標系のy軸周りのなす角度を表す。
【0036】
積載荷重取得部16は、圧力センサ300から出力された検出値を受け取り、圧力を示す検出値を質量に換算することにより、フォーク603に積載された積載物602の質量Mαを取得する。
【0037】
リフト高取得部18は、エンコーダ400から出力された検出値を受け取り、検出値が示す荷揚げ油圧モータの回転角から、基準位置(例えば最下部)に対するフォーク603の高さを算出し、この高さをリフト高として取得する。
【0038】
積載位置取得部20は、圧力センサ300から出力された検出値を受け取り、フォーク603の積載面上で最も大きい検出値が検出されている位置を、フォーク603に積載された積載物602の位置として取得する。
【0039】
タイヤ前後力取得部22は、操作量センサ500から出力された検出値を受け取り、当該検出値が示すアクセルペダル踏み込み量、ブレーキペダル踏み込み量に基づく制駆動力、及び操舵角の各々を、予め定義されたタイヤ特性モデルに入力することにより、車両座標系におけるタイヤ前後力FLFx、FRFx、RLFx、RRFxを取得する。
【0040】
タイヤ横力取得部24は、操作量センサ500から出力された検出値を受け取り、当該検出値が示すアクセルペダル踏み込み量、ブレーキペダル踏み込み量に基づく制駆動力、操舵角、車速、ヨーレート等を、予め定義されたタイヤ特性モデルに入力することにより、車両座標系におけるタイヤ横力FLFy、FRFy、RLFy、RRFyを取得する。
【0041】
角加速度算出部26は、3軸角速度取得部12においてサンプリング毎に取得されたロール角速度P、ピッチ角速度Q、及びヨー角速度Rの各々を近似微分等することにより、ロール角加速度P・(数式内では「P」の上に「・(ドット)」、以下のQ及びRも同様)、ピッチ角加速度Q・、及びヨー角加速度R・の各々を算出する。
【0042】
車両諸元DB28には、車両600に関する各種データが記憶されている。具体的には、ロールセンタhR、質量Mβ、各輪の静荷重FLz0、FRz0、RLz0、RRz0、各構成部位の形状、質量mjを含む構造、各輪の配置を含む情報が記憶されている。
【0043】
重心慣性値算出部30は、積載荷重取得部16で取得された積載物602の質量Mαと、車両諸元DB28に記憶された車両600の質量Mβとを合算して、積載物602を含む車両600全体の質量Mallを算出する。また、重心慣性値算出部56は、積載荷重取得部16、リフト高取得部18、及び積載位置取得部20の各々で取得された情報に基づいて、積載物602の重心の位置602Aを算出する。積載物602の重心の位置602Aの算出方法としては、例えば、特開2020-93741号公報に記載の方法を採用することができる。
【0044】
さらに、重心慣性値算出部30は、積載物602の重心の位置602A、及び車両諸元DB28に記憶された各構成部位の構造に基づいて、車両全体600の重心CGallの位置600Aと、構成部位jの重心の位置601A、603A、604A、605Aとを算出する。そして、重心慣性値算出部30は、車両全体600の重心CGallの位置600Aと、構成部位jの重心の位置601A、602A、603A、604A、605Aとの各軸方向の差分(Δxj、Δyj、及びΔzj)を算出する。また、重心慣性値算出部30は、算出したΔxj、Δyj、及びΔzjと、車両諸元DB28に記憶された構成部位jの質量mjとを用いて、慣性テンソルJallを算出する。
【0045】
さらに、重心慣性値算出部30は、算出した車両全体600の重心CGallの位置600Aのうち、z軸方向の位置をhCGとする。
【0046】
ヨーモーメント算出部32は、重心慣性値算出部30で算出された車両全体600の重心CGallの位置600Aと、車両諸元DB28に記憶された各輪の配置の情報とに基づいて、CGallに対する左右各輪のy軸方向の距離tl及びtrと、CGallに対する前後各輪のx軸方向の距離lf及びlrとを算出する。そして、ヨーモーメント算出部32は、算出したtl、tr、lf、lrと、タイヤ前後力取得部22及びタイヤ横力取得部24で取得されたタイヤ前後力FLFx、FRFx、RLFx、RRFx及びタイヤ横力FLFy、FRFy、RLFy、RRFyとを用いて、ヨーモーメントNvを算出する。
【0047】
輪荷重変動推定部34は、重心慣性値算出部30で算出されたhCGと、車両諸元DB28に記憶されたロールセンタの位置hRとから、CGallとロールセンタhR間のz軸方向の距離(hCG-hR)を算出する。そして、輪荷重変動推定部34は、前後横加速度取得部10で取得された、前後加速度GxCG及び横加速度GyCGと、3軸角速度取得部12で取得された、ロール角速度P、ピッチ角速度Q、及びヨー角速度Rと、姿勢角取得部14で取得された、車両600の姿勢角(車両ロール角φ及び車両ピッチ角θ)と、角加速度算出部26で算出されたロール角加速度P・、ピッチ角加速度Q・、ヨー角加速度R・と、重心慣性値算出部30で算出された車両全体600の質量Mall、慣性テンソルJall、CGallのz軸方向の位置hCGと、算出したCGallとロールセンタhR間のz軸方向の距離(hCG-hR)と、ヨーモーメント算出部32で算出されたヨーモーメントNv、CGallに対する各輪のx及びy軸方向の距離tl、tr、lf、lrとを用いて、各輪荷重の変動分ΔFLz、ΔFRz、ΔRLz、及びΔRRzを推定する。
【0048】
輪荷重算出部36は、輪荷重変動推定部34により推定された各輪荷重の変動分ΔFLz、ΔFRz、ΔRLz、及びΔRRzと、車両諸元DB28に記憶された各輪の静荷重FLz0、FRz0、RLz0、及びRRz0との和により、各輪荷重FLz、FRz、RLz、及びRRzを算出し、推定結果として出力する。
【0049】
3.原理
第3節では、第1実施形態の原理について説明する。
【0050】
フォークリフトは乗用車とは異なり、質量の大きな積載物を様々なリフト高さで持ち上げた状態で走行する。また、積載物の積載位置が、フォークリフトの重心位置に対してy方向(フォークリフトの横方向)にずれる場合もある。このような積載物の積載状態によって、ロール、ピッチ、及びヨーの各回転軸に対して、慣性主軸が変化する。そこで、第1実施形態では、慣性モーメント係数及び慣性乗積を、積載物の積載状態に応じて設定する。
図6は、積載物602のリフト高さの違いによる慣性主軸の違いを概略的に示したイメージ図である。
図6(A)のように、積載物を積載したリフトの高さが低い場合と、
図6(B)のように、リフトの高さが高い場合とでは、慣性主軸が変化する。
【0051】
図6に示すような積載物の積載状態の違いに対応するため、
図5、及び下記(1)~(3)式に示す車両の6自由度モデルを用いて、車両運動を記述する。なお、(1)式は車両600の回転運動、(2)式は車両600の並進運動、(3)式は地上座標系(
図5中のxe、ye、zeの座標系)に対する車両座標系(
図5中のx、y、zの座標系)の姿勢の更新を表した式である。
【0052】
【0053】
(1)~(3)式において、P、Q、及びRはロール、ピッチ、及びヨーの各角速度[rad/s]、Lv、Mv、及びNvはロール、ピッチ、及びヨーの各モーメント[Nm]である。また、U、V、及びWは車両座標系におけるx、y、及びz軸の各方向の速度[m/s]、φ、θ、及びψは地上座標系に対する車両座標系の姿勢角[rad]である。また、Xv、Yv、及びZvは車両600に作用する前後力、横力、及び上下力[N]である。また、Jallはx、y、及びz軸の各方向の慣性モーメント係数及び慣性乗積から成る慣性テンソル[kg・m2]、Mallは積載物及び車両質量を合わせた総質量[kg]である。なお、慣性テンソルは、請求項の「慣性値」に相当する。
【0054】
図7は、傾斜角Θの傾斜路を登坂中の車両600を示す図である。
図8は、傾斜角Θの傾斜路を横切って走行中の車両600を示す図である。
図7及び
図8に、(1)式のロールモーメントL
v、ピッチモーメントM
v、及びヨーモーメントN
vの各々に関わる作用力を示す。
図7のA点はピッチ回転中心であり、静止時の車両全体600の重心を通る鉛直線と地上面とが交わる点としている。
図8のB点はロール回転中心であり、静止時の車両全体600の重心を通る鉛直線とロール軸とが交わる点としている。
【0055】
CGallは車両全体600の重心、GxCG及びGyCGは車両全体600の重心CGallにおける前後加速度及び横加速度[m/s2]、gは重力加速度[m/s2]である。また、ΔFLz、ΔFRz、ΔRLz、及びΔRRzは前後左右各輪の輪荷重の変動分[N]、FLFx、FRFx、RLFx、及びRRFxは各輪のタイヤ前後力[N]、FLFy、FRFy、RLFy、及びRRFyは各輪のタイヤ横力[N]である。また、hCGは地上面とCGallとのz軸方向の距離(重心高)[m]、hRは地上面とA点とのz軸方向の距離(ロールセンタ)[m]、tl及びtrはCGallに対する左右各輪のy軸方向の距離[m]、lf及びlrはCGallに対する前後各輪のx軸方向の距離[m]である。
【0056】
第1実施形態では、(1)式の車両の回転運動に関わる部分を利用する。(1)式の慣性テンソルJallの設定について説明する。
【0057】
下記(4)式に慣性テンソルJallの構成を示す。(4)式右辺において、対角項が慣性モーメント係数、非対角項が慣性乗積である。
【0058】
【0059】
(4)式において、添え字jは各構成部位を特定する変数であり、Nは構成部位の総数、mjは構成部位jの質量である。車両全体600の重心CGallの位置(xCG,yCG,zCG)は、積載物602の質量、リフト高さ、フォーク603に対する積載物602の積載位置を用いて算出することができる。(4)式において、Δxj、Δyj、及びΔzjは車両全体600の重心CGallの位置600Aと、構成部位jの重心の位置(xj,yj,zj)601A、602A、603A、604A、605Aの各々との各軸方向の差分であり、下記(5)式により算出される。
【0060】
【0061】
(4)式中のJ
A及びJ
Bは
図7及び
図8のA点及びB点の各々からみた慣性の補正値であり、下記(6)式及び(7)式で表す。
【0062】
【0063】
図7では、地上座標系、及び車両座標系は右手系とし、地上座標系に対して車両ピッチ角θが負方向についた様子を表している。傾斜路での前後横加速度取得部10の検出値は、駆動力F
xによる前後加速度に対して、車両ピッチ角θの重力加速度成分が差し引かれて示される。
図7の車両ピッチ角θが負値であるため、前後横加速度取得部10では、次の(8)式の前後加速度G
xCG'が検出される。ここでG
xCG'の「'」は、重力加速度の姿勢角成分を持つセンサ値であることを表す。換言すると、取得部は、車両600の加速度である第1加速度を取得する。
【0064】
【0065】
ただし、Fxは各輪のタイヤ前後力の和であり、Mallは積載物を含む車両全体600の質量である。また、(8)右辺第2項におけるg・sinθは車両ロール角φ、車両ピッチ角θ、車両ヨー角ψの姿勢角行列とベクトル[0 0 g]T(Tは転置)より得られる車両座標系x軸方向の重力加速度成分である。前後加速度を用いて前後駆動力Fxを算出するためには、GxCG'をg・sinθで補正する必要がある。車両ピッチ角θの重力加速度成分が車両600を後進させる方向に作用することから、作用力は次の(9)式及び(10)式となる。
【0066】
【0067】
前後駆動力の負値が前後慣性力となるため、
図7のA点周りの慣性力、重力項によるモーメントMは次の(11)式となる。
【0068】
【0069】
(1)式におけるピッチモーメントM
vは、
図7に基づき、車両600に作用するモーメントMと、タイヤばね(上下ばね)反力による輪荷重変動のモーメントとの和として、(11)式を用いて次の(12)式で表される。
【0070】
【0071】
また、
図8に示すように、車両600が傾斜路を横切り、車両ロール角φ、車両ピッチ角θを生じた場合、前後横加速度取得部10の検出値は、横力F
yによる横加速度に対して、車両ロール角φ、車両ピッチ角θの重力加速度成分が差し引かれる。
図8の車両ロール角φは正値であるため、次の(13)式の横加速度G
yCG'が検出される。
【0072】
【0073】
ただし、Fyは各輪の横力の和であり、(13)式右辺第2項におけるg・sinφ・cosθは車両ロール角φ、車両ピッチ角θ、車両ヨー角ψの姿勢角行列とベクトル[0 0 g]T(Tは転置)より得られる車両座標系のy軸方向の重力加速度成分である。横加速度を用いて横力Fyを算出するためには、GyCG'をg・sinφ・cosθで補正する必要がある。また、車両ロール角φ、車両ピッチ角θの各重力加速度成分が車両座標系yvの負方向に作用することから、作用力は次の(14)式及び(15)式となる。
【0074】
【0075】
続いて、横力F
yの負値が横方向の慣性力となるため、
図8のB点周りの慣性力、重力項によるモーメントLは次の(16)式となる。
【0076】
【0077】
ただし、式(16)のモーメントLは車両ロール角φを拡大する方向に作用する。したがって、モーメントLは符号反転して次の(17)式となる。
【0078】
【0079】
(1)式におけるロールモーメントL
vは、
図8に基づき、車両600に作用するモーメントLと、タイヤばね(上下ばね)反力による輪荷重変動のモーメントとの和として、(18)式で表される。
【0080】
【0081】
(8)式~(18)式による算出処理は、次のように換言可能である。算出部は、車両600の姿勢に関するパラメータと、車両600の質量とに基づいて、車両600に作用するモーメントを算出する。ここで、車両600に作用するモーメントは、車両600に生じる慣性力及び重力、に関するモーメントを含む。算出部は、第1加速度と、車両600の姿勢に関するパラメータとに基づいて、第1加速度を補正した第2加速度を算出する。第1加速度は、車両600の3軸における加速度である。第2加速度は、車両600の姿勢に関するパラメータから算出される車両600の傾斜方向と、重力加速度とに基づいた成分に関する方向成分を第1加速度に適用して、第1加速度を補正したものである。算出部は、第2加速度と、車両600の質量とに基づいて、車両600に作用するモーメントを算出する。
【0082】
(12)式及び(18)式は、各輪のタイヤ前後力の和及び横力の和を、重心CG
allの前後加速度G
xCG及び横加速度G
yCGと質量M
allとを用いて表している。
図1に示すように、IMU200が車体601の任意の位置に取り付けられている場合、IMU200の加速度G
x及びG
yは、車両全体600の重心CG
allの位置の加速度に変換されるものとする。ヨーモーメントN
vは、タイヤ前後力FL
Fx、FR
Fx、RL
Fx、RR
Fx及び各輪のタイヤ横力FL
Fy、FR
Fy、RL
Fy、RR
Fyによるモーメントの和として、下記(19)式で表される。
【0083】
【0084】
IMU200によりロール、ピッチ、及びヨーの各角速度(P、Q、及びR)と、車両全体600の重心CGallにおける前後加速度及び横加速度が計測でき、タイヤ前後力FLFx、FRFx、RLFx、RRFx及びタイヤ横力FLFy、FRFy、RLFy、RRFyの検出によりヨーモーメントNvが得られるものとする。また、(1)式のP・、Q・、及びR・は、サンプリング毎に計測されたP、Q、及びRの近似微分等で算出するものとする。この場合、(1)式は輪荷重変動のみが未知パラメータとなる。(4)式~(19)式を用いて(1)式を表し、未知パラメータである各輪荷重の変動分を求めると、下記(20)式が成り立つ。
【0085】
【0086】
ここで(20)式において、右辺第1項の右肩の「+」は疑似逆行列を表し、左辺の輪荷重の変動は近似値として得られる。そのため、(20)式の左辺と右辺との関係は「≒」として表している。以後、疑似逆行列の使用時は、左辺と右辺との関係は全て「≒」として表すこととする。添え字iはサンプリング刻みを表す。右辺第1項の第3行目の要素が0である理由は、上下方向の各輪荷重の変動はヨー回転運動に寄与しないためである。これに関して、Jall、R・
(i)、Nv(i)は、各輪荷重の変動に影響しないことから、任意の値でよいことになる。各輪荷重は、静荷重と、(20)式により推定される輪荷重の変動分との和により算出される。
【0087】
4.情報処理方法
第4節では、前述した輪荷重推定装置100の情報処理方法について説明する。この情報処理方法は、具体的には輪荷重推定方法として実行される。この輪荷重推定方法は、輪荷重推定装置100の各部により実行される処理を、各工程として備える。すなわち、この輪荷重推定方法は、取得工程と、算出工程と、推定工程とを備える。取得工程では、車両600の姿勢に関するパラメータを取得する。算出工程では、当該パラメータと、車両600の質量とに基づいて、車両600に作用するモーメントを算出する。推定工程では、算出されたモーメントと、所定の推定式とに基づいて、車両600が具備する各車輪にかかる輪荷重を推定する。
【0088】
図9は、輪荷重推定装置100によって実行される情報処理の流れを示すアクティビティ図である。以下、このアクティビティ図の各アクティビティに沿って、説明するものとする。ここで、車両600は、傾斜路を登坂中であるものとする。
【0089】
制御部110は、ロールセンタhR、質量Mβ、各輪の静荷重FLz0、FRz0、RLz0、RRz0、各構成部位の形状、質量mjを含む構造、及び各輪の配置を含む情報を車両諸元DB28から取得する(アクティビティA110)。アクティビティA110では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、車両諸元DB28に記憶された各情報を読み出す。(2)制御部110は、当該各情報を記憶部120に記憶(保持)させる。
【0090】
続いて、制御部110は、フォーク603に積載された積載物602の質量Mα及び積載物602の積載位置を取得すると共に、リフト高を取得する(アクティビティA120)。アクティビティA120では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、圧力センサ300及びエンコーダ400の検出値から、積載物602の質量Mα、積載物602の積載位置、及びリフト高を取得する。(2)制御部110は、積載物602の質量Mα、積載物602の積載位置、及びリフト高の各情報を記憶部120に記憶させる。
【0091】
続いて、制御部110は、車両全体600の質量Mall及び重心CGallの位置600Aと、構成部位jの重心の位置601A、602A、603A、604A、605Aとを算出し、さらに慣性テンソルJallを算出する(アクティビティA130)。アクティビティA130では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、アクティビティA110及びA120で取得された各情報を記憶部120から読み出す。(2)制御部110は、算出処理を実行し、車両全体600の質量Mall及び重心CGallの位置600Aと、構成部位jの重心の位置601A、602A、603A、604A、605Aと、慣性テンソルJallとを算出する。(3)制御部110は、算出された各情報を記憶部120に記憶させる。換言すると、算出部は、車両600の重心位置を算出する。算出部は、車両600の重心位置600Aと、車両600の質量Mallとに基づいて、重心位置600Aにおける慣性に関する慣性値を算出する。
【0092】
続いて、制御部110は、タイヤ前後力FLFx、FRFx、RLFx、RRFxと、タイヤ横力FLFy、FRFy、RLFy、RRFyとを取得する(アクティビティA140)。アクティビティA140では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された、操作量センサ500の検出値と、予め定義されたタイヤ特性モデルとを読み出す。(2)制御部110は、当該検出値と、当該タイヤ特性モデルとに基づいて、タイヤ前後力FLFx、FRFx、RLFx、RRFxと、タイヤ横力FLFy、FRFy、RLFy、RRFyとを取得する。(3)制御部110は、タイヤ前後力FLFx、FRFx、RLFx、RRFxと、タイヤ横力FLFy、FRFy、RLFy、RRFyとの各情報を、記憶部120に記憶させる。
【0093】
続いて、制御部110は、前後加速度GxCG、横加速度GyCG、ロール角速度P、ピッチ角速度Q、及びヨー角速度Rを取得する(アクティビティA150)。アクティビティA150では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、IMU200の検出値から、前後加速度GxCG、横加速度GyCG、ロール角速度P、ピッチ角速度Q、及びヨー角速度Rを取得する。(2)制御部110は、取得された各情報を記憶部120に記憶させる。
【0094】
続いて、制御部110は、ロール角加速度P・、ピッチ角加速度Q・、及びヨー角加速度R・の各々を算出する(アクティビティA160)。アクティビティA160では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された、ロール角速度P、ピッチ角速度Q、及びヨー角速度Rの各情報を読み出す。(2)制御部110は、算出処理を実行し、ロール角加速度P・、ピッチ角加速度Q・、及びヨー角加速度R・を算出する。(3)制御部110は、算出された各情報を記憶部120に記憶させる。
【0095】
続いて、制御部110は、ヨーモーメントNvを算出する(アクティビティA170)。アクティビティA170では、例えば、次の4段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、算出処理を実行し、CGallに対する左右各輪のy軸方向の距離tl及びtrと、CGallに対する前後各輪のx軸方向の距離lf及びlrとを算出する。(2)制御部110は、記憶部120に記憶された、タイヤ前後力FLFx、FRFx、RLFx、RRFxと、タイヤ横力FLFy、FRFy、RLFy、RRFyとの各情報を読み出す。(3)制御部110は、(1)で算出した各情報と、(2)で読み出した各情報とに基づいて、ヨーモーメントNvを算出する。(4)制御部110は、算出されたヨーモーメントNvを記憶部120に記憶させる。
【0096】
続いて、制御部110は、車両600の車両ロール角φ及び車両ピッチ角θを取得する(アクティビティA180)。車両600の車両ロール角φ及び車両ピッチ角θは、請求項のパラメータに相当する。アクティビティA180では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)通信部150は、IMU200から出力された検出値を受け取る。(2)制御部110は、当該検出値から、車両600の車両ロール角φ及び車両ピッチ角θを取得する。(3)制御部110は、取得された車両ロール角φ及び車両ピッチ角θを記憶部120に記憶させる。換言すると、取得部は、車両600の姿勢に関するパラメータを取得する。
【0097】
続いて、制御部110は、各輪荷重の変動分ΔFLz、ΔFRz、ΔRLz、及びΔRRzを推定する(アクティビティA190)。アクティビティA190では、例えば、次の4段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、算出処理を実行し、CGallとロールセンタhR間のz軸方向の距離(hCG-hR)を算出する。(2)制御部110は、記憶部120に記憶された、GxCG、GyCG、P、Q、R、P・、Q・、R・、Mall、Jall、hCG、Nv、tl、tr、lf、lr、φ、及びθを読み出す。(3)制御部110は、(1)で算出した情報と、(2)で読み出した各情報とに基づいて、各輪荷重の変動分ΔFLz、ΔFRz、ΔRLz、及びΔRRzを推定する。(4)制御部110は、各輪荷重の変動分ΔFLz、ΔFRz、ΔRLz、及びΔRRzを記憶部120に記憶させる。換言すると、推定部は、車両600の重心位置における慣性に関する慣性値と、車両600の3軸周りの角速度及び角加速度の少なくとも一方と、車両600に作用するモーメントと、所定の推定式とに基づいて、車両600が具備する各車輪にかかる輪荷重を推定する。
【0098】
続いて、制御部110は、各輪荷重を算出し、各輪荷重の推定結果として出力する(アクティビティA200)。アクティビティA200では、例えば、次の4段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された、各輪荷重の変動分ΔFLz、ΔFRz、ΔRLz、及びΔRRzを読み出す。(2)制御部110は、記憶部120に記憶された、各輪の静荷重FLz0、FRz0、RLz0、RRz0を読み出す。(3)制御部110は、算出処理を実行し、各輪荷重を算出する。(4)制御部110は、算出された各輪荷重を出力する。
【0099】
続いて、制御部110は、アクティビティA120の処理に移行する。すなわち、車両600が走行している間、制御部110は、アクティビティA120からアクティビティA200の処理を繰り返し実行する。出力された輪荷重の推定結果は、車両600の転倒防止等の制御に利用される。換言すると、取得部は、車両600の姿勢に関するパラメータを連続的に取得する。算出部は、連続的に取得されたパラメータと、車両600の質量とに基づいて、車両600に作用するモーメントを連続的に算出する。推定部は、連続的に算出されたモーメントと、所定の推定式とに基づいて、車両600が具備する各車輪にかかる輪荷重を時系列で連続的に推定する。
【0100】
5.第1実施形態の変形例
第5節では、第1実施形態の変形例について説明する。
【0101】
第1実施形態に係る輪荷重推定装置100の輪荷重変動推定部34において、各輪荷重の変動分及びヨーモーメントを推定してもよい。
図10は、第1実施形態の変形例に係る輪荷重推定装置100の機能ブロック図を示す。前後横加速度取得部40、3軸角速度取得部42、姿勢角取得部44、積載荷重取得部46、リフト高取得部48、積載位置取得部50、角加速度算出部52及び車両諸元DB54の説明は、第1実施形態に係る、前後横加速度取得部10、3軸角速度取得部12、姿勢角取得部14、積載荷重取得部16、リフト高取得部18、積載位置取得部20、角加速度算出部26及び車両諸元DB28と略同様のため省略する。
【0102】
輪荷重推定装置100では、第1実施形態に係るタイヤ前後力取得部22、タイヤ横力取得部24、及びヨーモーメント算出部32が省略されている。
【0103】
重心慣性値算出部56は、重心慣性値算出部30と同様に、積載物602を含む車両全体600の質量Mall、慣性テンソルJall、及び車両全体600の重心CGallのz軸方向の位置hCGを算出する。さらに、重心慣性値算出部56は、車両全体600の重心CGallの位置600Aと、車両諸元DB54に記憶された各輪の配置の情報とに基づいて、CGallに対する前方左右各輪のy軸方向の距離tl及びtrと、CGallに対する前後各輪のx軸方向の距離lf及びlrとを算出する。
【0104】
輪荷重変動推定部58は、輪荷重変動推定部34と同様に、CGallとロールセンタhR間のz軸方向の距離(hCG-hR)を算出する。そして、輪荷重変動推定部58は、前後加速度GxCGと、横加速度GyCGと、ロール角速度Pと、ピッチ角速度Qと、ヨー角速度Rと、ロール角加速度P・と、ピッチ角加速度Q・と、ヨー角加速度R・と、車両全体600の質量Mallと、慣性テンソルJallと、CGallのz軸方向の位置hCGと、算出した(hCG-hR)と、CGallに対する各輪のx及びy軸方向の距離tl、tr、lf、lrと、前後輪のロール剛性配分af、arとを用いて、各輪荷重の変動分ΔFLz、ΔFRz、ΔRLz、及びΔRRzと、ヨーモーメントNvとを推定する。
【0105】
ここで、第1実施形態の変形例の原理について説明する。(20)式の変形として、各輪荷重の変動分とヨーモーメントとを未知パラメータとして推定することも可能である。この場合、(20)式は下記(21)式に示すように変形される。
【0106】
【0107】
また、各輪荷重の変動分は、車両600の重心CGallにおける上下加速度GzCGのセンサ値GzCG'を重力加速度成分で補正した上下加速度と、質量Mallとの積に等しくなる。これにより、次の(22)式が成り立つ。ただし、上下加速度センサ値GzCG'は、車両ロール角φ、車両ピッチ角θが共に0で静止時に、0m/s2を出力するよう調整する。
【0108】
【0109】
また、前後輪の上下剛性kf、krを用い、前後輪のロール剛性配分をaf(=kf/(kf+kr))、ar(=kr/(kf+kr))として表すと、各輪荷重の変動分とロール剛性配分との間に(23)式が成り立つ。
【0110】
【0111】
(22)式及び(23)式の関係を(21)式に追加すると、下記(24)式が成り立ち、(24)式を用いて、各輪荷重の変動分及びヨーモーメントを推定することが可能である。なお、(24)式の右辺第1項の右肩の'-1'は逆行列を表す。
【0112】
【0113】
ただし、(24)式において、Jall
*は、(4)式を変形した下記(25)式となる。
【0114】
【0115】
第1実施形態によれば、傾斜路走行時における4輪車両の輪荷重を推定することができる。したがって、傾斜路走行時においても4輪車両の転倒防止制御を実行することができる。
【0116】
6.第2実施形態
第6節では、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、前輪2つ、後輪1つの3輪のフォークリフト(車両600)の各輪荷重及びヨーモーメントを推定する場合について説明する。また、前提条件は第1実施形態と同様である。
【0117】
第2実施形態に係る輪荷重推定装置100のハードウェア構成は、
図2に示す、第1実施形態に係る輪荷重推定装置100のハードウェア構成と略同様であるため、説明を省略する。
【0118】
図11は、第2実施形態に係る輪荷重推定装置100(制御部110)によって実現される機能を示すブロック図である。具体的には、輪荷重推定装置100(制御部110)は、3軸方向加速度取得部70と、3軸角速度取得部72と、姿勢角取得部74と、積載荷重取得部76と、リフト高取得部78と、積載位置取得部80と、角加速度算出部82と、車両諸元DB84と、重心慣性値算出部86と、輪荷重変動推定部88と、輪荷重算出部90とを備える。3軸角速度取得部72、姿勢角取得部74、積載荷重取得部76、リフト高取得部78、積載位置取得部80、角加速度算出部82、及び車両諸元DB84の説明は、第1実施形態に係る、3軸角速度取得部12と、姿勢角取得部14と、積載荷重取得部16と、リフト高取得部18と、積載位置取得部20と、タイヤ前後力取得部22と、タイヤ横力取得部24と、角加速度算出部26と、車両諸元DB28と略同様のため、省略する。
【0119】
3軸方向加速度取得部70は、IMU200から出力された検出値を受け取り、当該検出値に含まれるx軸方向の加速度Gxを、車両600の重心CGallにおける前後加速度GxCGとして取得する。3軸方向加速度取得部70は、IMU200から出力された検出値を受け取り、当該検出値に含まれるy方向の加速度Gyを、車両600の重心CGallにおける横加速度GyCGとして取得する。3軸方向加速度取得部70は、IMU200から出力された検出値を受け取り、当該検出値に含まれるz軸方向の加速度Gzを、車両600の重心CGallにおける上下加速度GzCGとして取得する。
【0120】
重心慣性値算出部86は、第1実施形態における重心慣性値算出部30と同様に、積載物602を含む車両全体600の質量Mall、慣性テンソルJall、及び車両全体600の重心CGallのz軸方向の位置hCGを算出する。さらに、重心慣性値算出部86は、車両全体600の重心CGallの位置600Aと、車両諸元DB84に記憶された各輪の配置の情報に基づいて、CGallに対する前方左右各輪のy軸方向の距離tl及びtrと、CGallに対する前後各輪のx軸方向の距離lf及びlrとを算出する。
【0121】
輪荷重変動推定部88は、第1実施形態における輪荷重変動推定部34と同様に、CGallとロールセンタhR間のz軸方向の距離(hCG-hR)を算出する。そして、輪荷重変動推定部88は、前後加速度GxCGと、横加速度GyCGと、ロール角速度Pと、ピッチ角速度Qと、ヨー角速度Rと、ロール角加速度P・と、ピッチ角加速度Q・と、ヨー角加速度R・と、車両全体600の質量Mallと、慣性テンソルJallと、CGallのz軸方向の位置hCGと、算出した(hCG-hR)と、CGallに対する各輪のx及びy軸方向の距離tl、tr、lf、lrとを用いて、各輪荷重の変動分ΔFLz、ΔFRz、及びΔRzと、ヨーモーメントNvとを推定する。
【0122】
輪荷重算出部90は、輪荷重変動推定部88により推定された各輪荷重の変動分ΔFLz、ΔFRz、及びΔRzと、車両諸元DB84に記憶された各輪の静荷重FLz0、FRz0、及びRz0との和により、各輪荷重FLz、FRz、及びRzを算出する。そして、輪荷重算出部90は、算出した各輪荷重と、輪荷重変動推定部88により推定されたヨーモーメントNvとを推定結果として出力する。
【0123】
次に、第2実施形態の原理について説明する。
【0124】
3輪フォークリフトの場合、後輪は後軸中央に配置されるため、ロール挙動に寄与せずピッチ挙動のみに寄与することを考慮し、第1実施形態の変形における(24)式を書き換えると、下記(26)式となる。ただし、(24)式の後輪荷重の変動分ΔRLz、ΔRRzに関する記述をΔRz(=ΔRLz+ΔRRz)に置きなおしている。なお、(26)式のJall
*は、(25)式と同様の手順で求めた4
×4の慣性テンソルである。
【0125】
【0126】
上記のように、3輪のフォークリフトの場合も、第1実施形態で説明した4輪のフォークリフトの場合と同様に、各輪荷重及びヨーモーメントを推定することができる。
【0127】
次に、第2実施形態に係る輪荷重推定装置100の情報処理について説明する。
図12は、輪荷重推定装置100によって実行される情報処理の流れを示すアクティビティ図である。車両600が走行を開始すると、輪荷重推定装置100において、
図12に示す情報処理が実行される。なお、第2実施形態における情報処理において、第1実施形態の変形例における情報処理と同様の処理については、詳細な説明を省略する。
【0128】
アクティビティA210及びA220を経て、制御部110は、積載物602を含む車両全体600の質量Mall、慣性テンソルJall、車両全体600の重心CGallのz軸方向の位置hCG、CGallに対する前方左右各輪のy軸方向の距離tl及びtr、並びに、CGallに対する前後各輪のx軸方向の距離lf及びlrを算出する(アクティビティA230)。
【0129】
続いて、制御部110は、IMU200の検出値から、前後加速度GxCG、横加速度GyCG、上下加速度GzCG、ロール角速度P、ピッチ角速度Q、及びヨー角速度Rを取得する(アクティビティA240)。
【0130】
続いて、アクティビティA250及びA260を経て、制御部110は、CGallとロールセンタhR間のz軸方向の距離(hCG-hR)を算出する。そして、制御部110は、上記各アクティビティで取得又は算出されたGxCG、GyCG、GzCG、P、Q、R、P・、Q・、R・、Mall、Jall、hCG、tl、tr、lf、lr、φ、及びθと、算出した(hCG-hR)とを用いて、各輪荷重の変動分ΔFLz、ΔFRz、及びΔRzと、ヨーモーメントNvとを推定する(アクティビティA270)。
【0131】
続いて、制御部110は、上記アクティビティA270で推定された各輪荷重の変動分ΔFLz、ΔFRz、及びΔRzと、静荷重FLz0、FRz0、及びRz0との和により、各輪荷重を算出し、上記アクティビティA270で推定されたヨーモーメントNvと共に、推定結果として出力する(アクティビティA280)。
【0132】
そして、処理はアクティビティA220に戻り、車両600が走行している間、アクティビティA220からA280の処理が繰り返し実行される。出力された輪荷重の推定結果は、第1実施形態と同様に、車両600の転倒防止等の制御に利用され、出力されたヨーモーメントは、トルクベクタリング等の制御に利用される。
【0133】
第2実施形態によれば、傾斜路走行時における3輪車両の輪荷重を推定することができる。したがって、傾斜路走行時においても3輪車両の転倒防止制御を実行することができる。
【0134】
7.実験例
図13は、3輪の車両600を用いて、傾斜路を走行させて前進左旋回を行わせた状態を示す図である。ここで、
図13に示す車両600の具体的な挙動を、以下の(1)~(5)に沿って説明する。
【0135】
(1)車両600の制御部は、平坦路において駆動輪にトルクを与えた。車両600は、傾斜路(上り坂)に向かって発進し、徐々に車速が上昇した。(2)車両600は、上り坂に直進進入した。このとき、車両600の車両ピッチ角θは略Θとなり、車速の上昇が止まった。(3)車両600は、操舵により前進左旋回を開始した。このとき、車両600の車両ロール角φが増加し、車両ピッチ角θが減少した。(4)車両600は、傾斜路の斜面に対して横向きになり、車両ヨー角が90度、車両ロール角がΘ、車両ピッチ角が0度となった。(5)車両600は、操舵により傾斜路を下る方向まで旋回した。このとき、車両600の車速が増加し、左旋回が維持されてFL輪荷重が抜けた。
【0136】
図14は、
図13の車両600の挙動を表すシミュレーションデータ図である。
図14では、公知のシミュレータを使用して、
図13における車両600の挙動に合わせて、車両600の各情報(トルク、上下変位、舵角、車速、車両姿勢角、ヨー姿勢角、FL輪荷重、FR輪荷重、及び後輪荷重)をシミュレーションした。
【0137】
図15は、
図14のデータを(26)式に適用した結果を示す図である。すなわち、
図15では、(26)式により各輪荷重を推定した推定値と、輪荷重を実際に計測(シミュレーション)した計測値とを比較している。
図15に示すように、輪荷重の推定値と計測値とが略一致しており、精度良く輪荷重を推定することができた。
【0138】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0139】
8.その他
本実施形態の態様は、プログラムであってもよい。このプログラムは、輪荷重推定装置100の各部としてコンピュータを機能させる。
【0140】
制御部110は、各種データ及び各種情報について記憶部120に書き出し処理(記憶処理)及び読み出し処理をしているが、これに限られず、例えば、制御部110内のレジスタやキャッシュメモリ等を使用して、各アクティビティの情報処理を実行してもよい。
【0141】
アクティビティA150及びA160では、車両600の3軸周りの角速度及び角加速度の双方を取得しているが、これに限られず、取得部は、車両600の3軸周りの角速度及び角加速度の少なくとも一方を取得すればよい。
【0142】
アクティビティA190では、前記重心位置における慣性に関する慣性値と、角速度及び角加速度の少なくとも一方と、車両600に作用するモーメントと、所定の推定式とに基づいて、輪荷重を推定しているが、これに限られず、推定部は、少なくとも、車両600に作用するモーメントと、所定の推定式とに基づいて、車両600が具備する各車輪にかかる輪荷重を推定すればよい。
【0143】
本実施形態では、エンコーダ400で検出した荷揚げ油圧モータの回転角からリフト高を取得する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、フォーク603にワイヤを設け、荷揚げ時のワイヤの長さの変化を計測することにより、リフト高を取得するようにしてもよい。また、各取得部により取得される他の値も、上記各実施形態の方法で取得される場合に限定されず、他の方法により取得されてもよい。
【0144】
本実施形態では、輪荷重推定装置100を車両600に搭載する場合について説明したが、これに限定されず、外部装置として構成してもよい。この場合、車両600に、IMU200、圧力センサ300、エンコーダ400、及び操作量センサ500の各々の検出値を輪荷重推定装置100へ送信する通信部を設け、外部装置として構成された輪荷重推定装置100は、車両600の通信部から送信された各種情報を取得して、上記各実施形態と同様の処理により輪荷重を推定してもよい。
【0145】
次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0146】
(1)輪荷重推定装置であって、取得部と、算出部と、推定部とを備え、前記取得部は、車両の姿勢に関するパラメータを取得し、前記算出部は、前記パラメータと、前記車両の質量とに基づいて、前記車両に作用するモーメントを算出し、前記推定部は、前記モーメントと、所定の推定式とに基づいて、前記車両が具備する各車輪にかかる輪荷重を推定する、輪荷重推定装置。
【0147】
このような態様によれば、傾斜路走行時における車両の輪荷重を推定することができる。したがって、傾斜路走行時においても車両の転倒防止制御を実行することができる。
【0148】
(2)上記(1)に記載の輪荷重推定装置において、前記モーメントは、前記車両に生じる慣性力及び重力、に関するモーメントを含む、輪荷重推定装置。
【0149】
このような態様によれば、傾斜路走行時に特有なモーメントに関する情報を用いることで、傾斜路走行時における輪荷重をより精度良く推定することができる。
【0150】
(3)上記(1)又は(2)に記載の輪荷重推定装置において、前記算出部は、前記車両の重心位置を算出し、前記算出部は、前記重心位置と、前記質量とに基づいて、前記重心位置における慣性に関する慣性値を算出し、前記推定部は、前記慣性値と、前記モーメントと、前記推定式とに基づいて、前記輪荷重を推定する、輪荷重推定装置。
【0151】
このような態様によれば、車両の慣性テンソルに関する情報を用いることで、傾斜路走行時における輪荷重をより精度良く推定することができる。
【0152】
(4)上記(1)から(3)までの何れか1つに記載の輪荷重推定装置において、前記取得部は、前記車両の3軸周りの角速度及び角加速度の少なくとも一方を取得し、前記推定部は、前記角速度及び前記角加速度の少なくとも一方と、前記モーメントと、前記推定式とに基づいて、前記輪荷重を推定する、輪荷重推定装置。
【0153】
このような態様によれば、車両の3軸周りの角速度及び角加速度の少なくとも一方に関する情報を用いることで、傾斜路走行時における輪荷重をより精度良く推定することができる。
【0154】
(5)上記(1)から(4)までの何れか1つに記載の輪荷重推定装置において、前記取得部は、前記車両の加速度である第1加速度を取得し、前記算出部は、前記第1加速度と、前記パラメータとに基づいて、前記第1加速度を補正した第2加速度を算出し、前記算出部は、前記第2加速度と、前記質量とに基づいて、前記モーメントを算出する、輪荷重推定装置。
【0155】
このような態様によれば、傾斜路走行時に特有な補正処理を実行することで、傾斜路走行時における輪荷重をより精度良く推定することができる。
【0156】
(6)上記(5)に記載の輪荷重推定装置において、前記第1加速度は、前記車両の3軸における加速度である、輪荷重推定装置。
【0157】
このような態様によれば、車両の3軸における加速度を用いることで、傾斜路走行時における輪荷重をより精度良く推定することができる。
【0158】
(7)上記(5)又は(6)に記載の輪荷重推定装置において、前記第2加速度は、前記パラメータから算出される前記車両の傾斜方向と、重力加速度とに基づいた成分に関する方向成分を前記第1加速度に適用して、前記第1加速度を補正したものである、輪荷重推定装置。
【0159】
このような態様によれば、傾斜路走行時に特有な補正処理を、車両の3軸における加速度に適用することで、傾斜路走行時における輪荷重をより精度良く推定することができる。
【0160】
(8)上記(1)から(7)までの何れか1つに記載の輪荷重推定装置において、前記取得部は、前記パラメータを連続的に取得し、前記算出部は、連続的に取得された前記パラメータと、前記車両の質量とに基づいて、前記モーメントを連続的に算出し、前記推定部は、連続的に算出された前記モーメントと、前記推定式とに基づいて、前記輪荷重を時系列で連続的に推定する、輪荷重推定装置。
【0161】
このような態様によれば、傾斜路走行時における輪荷重を時系列で連続的に推定することができる。
【0162】
(9)車両であって、検出部と、上記(1)から(8)までの何れか1つに記載の輪荷重推定装置とを備え、前記検出部は、前記車両の運動に関する情報を検出し、前記輪荷重推定装置は、検出された前記情報を受信する、車両。
【0163】
このような態様によれば、輪荷重推定装置を車両に好適に実装することができる。
【0164】
(10)プログラムであって、上記(1)から(8)までの何れか1つに記載の輪荷重推定装置の各部としてコンピュータを機能させる、プログラム。
【0165】
このような態様によれば、傾斜路走行時における輪荷重を推定することができる。したがって、傾斜路走行時においても車両の転倒防止制御を実行することができる。
【0166】
(11)輪荷重推定方法であって、上記(1)から(8)までの何れか1つに記載の輪荷重推定装置の各部により実行される処理を、各工程として備える、輪荷重推定方法。
【0167】
このような態様によれば、傾斜路走行時における輪荷重を推定することができる。したがって、傾斜路走行時においても車両の転倒防止制御を実行することができる。
もちろん、この限りではない。
【符号の説明】
【0168】
10 :前後横加速度取得部
12 :3軸角速度取得部
14 :姿勢角取得部
16 :積載荷重取得部
18 :リフト高取得部
20 :積載位置取得部
22 :タイヤ前後力取得部
24 :タイヤ横力取得部
26 :角加速度算出部
30 :重心慣性値算出部
32 :ヨーモーメント算出部
34 :輪荷重変動推定部
36 :輪荷重算出部
40 :前後横加速度取得部
42 :3軸角速度取得部
44 :姿勢角取得部
46 :積載荷重取得部
48 :リフト高取得部
50 :積載位置取得部
52 :角加速度算出部
56 :重心慣性値算出部
58 :輪荷重変動推定部
70 :3軸方向加速度取得部
72 :3軸角速度取得部
74 :姿勢角取得部
76 :積載荷重取得部
78 :リフト高取得部
80 :積載位置取得部
82 :角加速度算出部
86 :重心慣性値算出部
88 :輪荷重変動推定部
90 :輪荷重算出部
100 :輪荷重推定装置
110 :制御部
120 :記憶部
130 :表示部
140 :入力部
150 :通信部
160 :通信バス
300 :圧力センサ
400 :エンコーダ
500 :操作量センサ
600 :車両
600A :重心位置
601 :車体
602 :積載物
603 :フォーク
604 :アウターマスト
605 :インナーマスト