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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087735
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】トマトの栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20240624BHJP
   A01G 22/05 20180101ALI20240624BHJP
【FI】
A01G31/00 601A
A01G22/05 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202690
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】516271068
【氏名又は名称】株式会社プラントライフシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100124017
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 晃秀
(72)【発明者】
【氏名】谷水 俊之
【テーマコード(参考)】
2B022
2B314
【Fターム(参考)】
2B022AB15
2B022BA01
2B314PB18
2B314PC19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】トマト栽培の熟練者でなくても容易にトマトを栽培することができるトマトの栽培方法を提供する。
【解決手段】トマトの栽培方法は、培地に養液を循環供給してトマトを栽培するトマトの栽培方法であって、培地は、上から養液が供給されたときに、30秒以内に養液の80パーセント以上の養液が抜ける構成を有し、トマトの栽培方法は、定植段階から5段以内で完了するものであり、養液が培地にはじめて投入されるときの養液の濃度は、定植段階から栽培期間中、1.9ds/m以上、2.1ds/m以内に設定され、時期によって予め養液の灌水回数が決められており、灌水1回当たりの養液の供給量は、式1を満たす
(式1)
培地量(リットル)×0.49+X≦養液の量(リットル)≦培地量(リットル)×0.5+Y
0≦X≦1
0≦Y≦5
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地に養液を循環供給してトマトを栽培するトマトの栽培方法であって、
前記培地は、上から養液が供給されたときに、30秒以内に前記養液の80パーセント以上の養液が抜ける構成を有し、
前記トマトの栽培方法は、定植段階から5段以内で完了するものであり、
前記養液が前記培地にはじめて投入されるときの前記養液の濃度は、前記定植段階から栽培期間中、1.9ds/m以上、2.1ds/m以内に設定され、
時期によって予め養液の灌水回数が決められており、
灌水1回当たりの前記養液の供給量は、式1を満たす、トマトの栽培方法。
(式1)
培地量(リットル)×0.49+X≦養液の量(リットル)≦培地量(リットル)×0.5+Y
0≦X≦1
0≦Y≦5
【請求項2】
培地に養液を循環供給してトマトを栽培するトマトの栽培方法であって、
前記培地は、上から養液が供給されたときに、30秒以内に前記養液の80パーセント以上の養液が抜ける構成を有し、
前記トマトの栽培方法は、定植段階から5段以内で完了するものであり、
前記養液が前記培地にはじめて投入されるときの前記養液の濃度は、前記定植段階から栽培期間中、1.9ds/m以上、2.1ds/m以内に設定され、
時期によって予め養液の灌水回数が決められているトマトの栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養液を利用したトマトの栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
培地に栽培植物を植え付け、培養液を給液して栽培する技術が提案されている。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-103857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、トマト栽培の熟練者でなくても容易にトマトを栽培することができるトマトの栽培方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のトマトの栽培方法は、
培地に養液を循環供給してトマトを栽培するトマトの栽培方法であって、
前記培地は、上から養液が供給されたときに、30秒以内に前記養液の80パーセント以上の養液が抜ける構成を有し、
前記トマトの栽培方法は、定植段階から5段以内で完了するものであり、
前記養液が前記培地にはじめて投入されるときの前記養液の濃度は、前記定植段階から栽培期間中、1.9ds/m以上、2.1ds/m以内に設定され、
時期によって予め養液の灌水回数が決められており、
灌水1回当たりの前記養液の供給量は、式1を満たすことができる。
(式1)
培地量(リットル)×0.49+X≦養液の量(リットル)≦培地量(リットル)×0.5+Y
0≦X≦1
0≦Y≦5
【0006】
本発明のトマトの栽培方法は、
培地に養液を循環供給してトマトを栽培するトマトの栽培方法であって、
前記培地は、上から養液が供給されたときに、30秒以内に前記養液の80パーセント以上の養液が抜ける構成を有し、
前記トマトの栽培方法は、定植段階から5段以内で完了するものであり、
前記養液が前記培地にはじめて投入されるときの前記養液の濃度は、前記定植段階から栽培期間中、1.9ds/m以上、2.1ds/m以内に設定され、
時期によって予め養液の灌水回数が決められていることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のトマトの栽培方法によれば、トマト栽培の熟練者でなくても容易にトマトを栽培することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0009】
1.トマトの栽培方法
トマトの栽培方法は、培地に養液を循環供給してトマトを栽培するものである。前記培地は、上から養液が供給されたときに、30秒以内に養液の80パーセント以上の養液が抜ける構成を有するものである。トマトの栽培方法は、定植段階から5段以内で完了するものであり、養液が前記培地にはじめて投入されるときの前記養液の濃度は、前記定植段階から栽培期間中、1.9ds/m以上、2.1ds/m以内に設定されていることができる。時期によって予め養液の灌水回数が決められている。灌水1回当たりの前記養液の供給量は、式1を満たすことができる。
(式1)
培地量(リットル)×0.49+X≦養液の量(リットル)≦培地量(リットル)×0.5+Y
0≦X≦1
0≦Y≦5
【0010】
2.養液
培地は、たとえば無機質培地とすることができ、かつ、固形培地または非固形培地(たとえば液状)であることができる。培地はアルカリ性培地であることが好適である。培地は、多孔質素材であることにより、灌水の間隔を長くすることができる。
【0011】
無機質培地には、サンゴ砂や貝殻(たとえば牡蠣殻、ホタテ貝殻)を含むことができ、サンゴ砂礫からなる培地が好適である。サンゴ砂礫からなる培地にすることにより、抗菌作用による根系の病害減少、その抗菌作用により培養液の殺菌設備が不要か又は簡素化が可能であり、さらには、入れ替えや廃棄を極力抑えることができる。サンゴ砂礫の粒径は、たとえば、0.1~5cm、好ましくは0.2~5cm、より好ましくは0.4~4cmとすることができる。
【0012】
養液は、水と、硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の少なくとも一つと、リン酸と、酸化カリウムと、酸化カルシウムとを含む。硝酸態窒素の具体例としては、たとえば、硝酸イオンを挙げることができる。アンモニア態窒素の具体例としては、たとえば、アンモニウムイオンを挙げることができる。
【0013】
リン酸の含有量は、硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の総和を100重量部としたときに、48~70重量部である。
【0014】
酸化カリウムの含有量は、硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の総和を100重量部としたときに、160~180重量部である。
【0015】
酸化カルシウムの含有量は、硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の総和を100重量部としたときに、30~85重量部、好ましくは50~85重量部、さらに好ましくは60~85重量部である。
【0016】
リン酸の含有量に対する酸化カルシウムの含有量の比(酸化カルシウムの含有量/リン酸の含有量)は、1.2~1.6であることが好ましい。
【0017】
養液における硝酸態窒素およびアンモニア態窒素の総和の濃度は、たとえば80~550mg/L、好ましくは200~440mg/L、さらに好ましくは250~380ml/Lである。
【0018】
アンモニア態窒素の含有量に対する硝酸態窒素の比(硝酸態窒素の含有量/アンモニア態窒素の含有量)は、5~10であることが好ましく、さらに好ましくは7~10である。アンモニア態窒素の含有量に対する硝酸態窒素の比がこの範囲にあると、特に培地がアルカリ培地の場合、植物が他の養液の微量成分をより適度に吸収することができる。
【0019】
酸化カルシウムの含有量に対する酸化カリウムの含有量の比(酸化カリウムの含有量/酸化カルシウムの含有量)は、2.0~2.6であることが好ましい。
【0020】
養液は、硫黄酸化物、特に硫酸イオンが含まれていないことが好ましい。養液は、MgO、MnO、B、Fe、Cu、ZnおよびMoからなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことができる。
【0021】
養液の成分の一例を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
3.灌水回数
灌水回数の基準例を表1~表3に示す。なお、所定期間、たとえば1週間程度ずれても、栽培にほとんど影響はないものと考えられる。
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
4.鉢の構成
鉢の大きさは、培地の量との関係で決めることができる。また、培地を通過した養液を鉢の下に貯留したい場合には、培地と養液貯留部との関係で鉢の大きさを決めることができる。鉢の大きさは、たとえば、5号以上の鉢を適用することができる。
養液が鉢の下に抜けて、別個に設けた養液貯留部に貯めてもよい。また、鉢の下部に養液を受ける養液貯留部を設けてもよい。培地と鉢の底との間に空間が生じるように、網などの養液通過体を鉢の深さ方向で途中に設け、その養液通過体の上に培地を設けてもよい。
【0028】
4.実験例
式1は、次の培地の透水試験により導出した。礫は大きさ0.5~3センチメートルの化石サンゴとした。
(1)培地の容量1リットル深さ10センチメートルに対して1リットルの養液を供給し30秒間に抜ける水量を測定した。
培地が乾燥した状態では、養液投入後30秒で0.8リットルの養液が抜け、0.2リットルが培地に保持された。
培地が養液で湿っている状態では、養液投入後30秒で1リットルの養液(全量)が抜けた。
(2)培地の容量2リットル深さ10センチメートルに対して2リットルの養液を供給し30秒間に抜ける水量を測定した。
培地が乾燥した状態では、養液投入後30秒で1.6リットルの養液が抜け、0.4リットルが培地に保持された。
培地が養液で湿っている状態では、養液投入後30秒で2リットルの養液(全量)が抜けた。
【0029】
5.作用効果
簡易な栽培方法で、農業に携わったことがない者でもトマト栽培の実施が容易となる。
また、栽培しているトマトを頻繁に確認ができない者であっても、本実施の形態の方法であれば、簡素化されたトマトの栽培方法であるため、トマト栽培の実施が容易となる。さらに、栽培方法を時期によって平準化することができるため、スケジュールが立てやすい。
【実施例0030】
本葉5枚程度が展開したミニトマトを培地に定植し、1本仕立てで、第5花房まで栽培収穫した。栽培期間中EC1.9ds/m以上、2.1ds/mの養液を毎日3~5回与えた。栽培期間中の気温が5℃以上、40℃以下を維持可能な施設を利用し太陽光下で栽培した。栽培実施期間は2022年4月13日から7月5日、場所は神奈川県相模原市緑区大島280-1である。
【0031】
果実の結果は、1果実の平均重量が14.9グラム、平均糖度が8.5%、1株の平均収量が915グラム(5段)であった。
【0032】
本実施の形態は、本発明の範囲内において種々の変形が可能である。