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特開2024-87752時刻同期ドメインの時刻同期方法と装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087752
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】時刻同期ドメインの時刻同期方法と装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/00 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
H04L7/00 990
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115150
(22)【出願日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】63/433,487
(32)【優先日】2022-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】112109593
(32)【優先日】2023-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】506080739
【氏名又は名称】四零四科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Moxa Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲啓▼全
(72)【発明者】
【氏名】林 俊余
(72)【発明者】
【氏名】▲頼▼ 建宇
(72)【発明者】
【氏名】林 柏宏
【テーマコード(参考)】
5K047
【Fターム(参考)】
5K047AA03
5K047AA18
(57)【要約】
【課題】複数の時刻同期ドメインに用いられる時刻同期方法を提供する。
【解決手段】前記時刻同期方法は、前記複数の時刻同期ドメインについて、対応する複数の精密時刻プロトコルインスタンスを構築するステップと、前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに対応する複数のローカル最適クロックを決定するステップと、前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに対応する前記複数のローカル最適クロックに基づいてマスタークロックを決定するステップと、前記マスタークロックに基づいて、前記複数の時刻同期ドメインの時間を同期させることを前記複数の時刻同期プロトコルインスタンスに通知するステップとを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の時刻同期ドメインに用いられる時刻同期方法であって、
前記複数の時刻同期ドメインについて、対応する複数の精密時刻プロトコルインスタンス(Precision Time Protocol Instance、PTP Instance)を構築するステップと、
全ドメイン最適マスタークロックを決定するステップと、
前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスが前記全ドメイン最適マスタークロックに基づいて、前記複数の時刻同期ドメインの時間を同期させるステップとを含む、時刻同期方法。
【請求項2】
前記全ドメイン最適マスタークロックを決定するステップは、
前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに対応する複数のローカル最適クロックを決定するステップと、
前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに対応する前記複数のローカル最適クロックに基づいて、前記全ドメイン最適マスタークロックを決定するステップとを含む、請求項1に記載の時刻同期方法。
【請求項3】
前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに対応する前記複数のローカル最適クロックを決定するステップは、最適マスタークロックアルゴリズム(Best Master Clock Algorithm、BMCA)に基づいて、前記複数の時刻同期ドメインの各時刻同期ドメインの最適クロックを決定して、前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに対応する複数のローカル最適クロックを判断する、請求項2に記載の時刻同期方法。
【請求項4】
前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに対応する前記複数のローカル最適クロックに基づいて前記全ドメイン最適マスタークロックを決定するステップは、前記複数のローカル最適クロックのうちの任意2つのローカル最適クロックを連続的に比較するステップであり、そのうちの1つのローカル最適クロックが最適であると判断された時、当該ローカル最適クロックを前記全ドメイン最適マスタークロックと決定する、請求項2に記載の時刻同期方法。
【請求項5】
前記複数のローカル最適クロックのうちの任意2つのローカル最適クロックを連続的に比較するステップは、前記複数のローカル最適クロックのうちの任意2つのローカル最適クロックを重複して比較しないことを含む、請求項4に記載の時刻同期方法。
【請求項6】
前記複数のローカル最適クロックのうちの任意2つのローカル最適クロックを連続的に比較するステップは、前記複数のローカル最適クロックのうちの任意2つのローカル最適クロックの優先度ベクトルを連続的に比較する、請求項4に記載の時刻同期方法。
【請求項7】
前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスの1つの精密時刻プロトコルインスタンスが、対応する時刻同期ドメインの第1のクロックのアナウンスメッセージ(Announce message)を受信した時、さらに、
前記第1のクロックと、前記精密時刻プロトコルインスタンスに対応するローカル最適クロックとを比較するステップと、
前記第1のクロックが前記精密時刻プロトコルインスタンスに対応する前記ローカル最適クロックより優れている場合、前記精密時刻プロトコルインスタンスに対応する前記ローカル最適クロックを前記第1のクロックに置き換えるステップと、
前記第1のクロックに更新された前記ローカル最適クロックと前記全ドメイン最適マスタークロックとを比較するステップと、
前記第1のクロックに更新された前記ローカル最適クロックが前記全ドメイン最適マスタークロックより優れている場合、前記全ドメイン最適マスタークロックを前記第1のクロックに更新された前記ローカル最適クロックに置き換えるステップと、
更新された前記全ドメイン最適マスタークロックに基づいて前記複数の時刻同期ドメインの時刻を同期させることを前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに通知するステップとを実行する、請求項2に記載の時刻同期方法。
【請求項8】
前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスの1つの精密時刻プロトコルインスタンスが、対応する時刻同期ドメインの第1のクロックのアナウンスメッセージ(Announce message)を受信した時、さらに、
前記第1のクロックと前記全ドメイン最適マスタークロックとを比較するステップと、
前記第1のクロックが前記全ドメイン最適マスタークロックより優れている場合、前記全ドメイン最適マスタークロックを前記第1のクロックに置き換えるステップと、
更新された前記全ドメイン最適マスタークロックに基づいて前記複数の時刻同期ドメインの時刻を同期させることを前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに通知するステップとを実行する、請求項1に記載の時刻同期方法。
【請求項9】
前記複数の時刻同期ドメインは異なるタイプの精密時刻プロトコルプロファイル(Precision Time Protocol Profile、PTP Profile)を使用する、請求項1に記載の時刻同期方法。
【請求項10】
複数の時刻同期ドメインに用いられる時刻同期装置であって、
プログラムコードを実行するための処理ユニットと、
前記処理ユニットにカップリングされて、前記プログラムコードを記憶し、前記処理ユニットに時刻同期方法の実行を指示するための記憶ユニットとを含み、
前記時刻同期方法は、
前記複数の時刻同期ドメインについて、対応する複数の精密時刻プロトコルインスタンス(Precision Time Protocol Instance、PTP Instance)を構築するステップと、
全ドメイン最適マスタークロックを決定するステップと、
前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスが前記全ドメイン最適マスタークロックに基づいて、前記複数の時刻同期ドメインの時刻を同期させるステップとを含む、時刻同期装置。
【請求項11】
前記全ドメイン最適マスタークロックを決定するステップは、
前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに対応する複数のローカル最適クロックを決定するステップと、
前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに対応する前記複数のローカル最適クロックに基づいて、前記全ドメイン最適マスタークロックを決定するステップとを含む、請求項10に記載の時刻同期装置。
【請求項12】
前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに対応する前記複数のローカル最適クロックを決定するステップは、最適マスタークロックアルゴリズム(Best Master Clock Algorithm、BMCA)に基づいて、前記複数の時刻同期ドメインの各時刻同期ドメインの最適クロックを決定して、前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに対応する複数のローカル最適クロックを判断する、請求項11に記載の時刻同期装置。
【請求項13】
前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに対応する前記複数のローカル最適クロックに基づいて前記全ドメイン最適マスタークロックを決定するステップは、前記複数のローカル最適クロックのうちの任意2つのローカル最適クロックを連続的に比較するステップであり、そのうちの1つのローカル最適クロックが最適であると判断された時、当該ローカル最適クロックを前記全ドメイン最適マスタークロックと決定する、請求項11に記載の時刻同期装置。
【請求項14】
前記複数のローカル最適クロックのうちの任意2つのローカル最適クロックを連続的に比較するステップは、前記複数のローカル最適クロックのうちの任意2つのローカル最適クロックを重複して比較しないことを含む、請求項13に記載の時刻同期装置。
【請求項15】
前記複数のローカル最適クロックのうちの任意2つのローカル最適クロックを連続的に比較するステップは、前記複数のローカル最適クロックのうちの任意2つのローカル最適クロックの優先度ベクトルを連続的に比較する、請求項13に記載の時刻同期装置。
【請求項16】
前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスの1つの精密時刻プロトコルインスタンスが、対応する時刻同期ドメインの第1のクロックのアナウンスメッセージ(Announce message)を受信した時、さらに、
前記第1のクロックと、前記精密時刻プロトコルインスタンスに対応するローカル最適クロックとを比較するステップと、
前記第1のクロックが前記精密時刻プロトコルインスタンスに対応する前記ローカル最適クロックより優れている場合、前記精密時刻プロトコルインスタンスに対応する前記ローカル最適クロックを前記第1のクロックに置き換えるステップと、
前記第1のクロックに更新された前記ローカル最適クロックと前記全ドメイン最適マスタークロックとを比較するステップと、
前記第1のクロックに更新された前記ローカル最適クロックが前記全ドメイン最適マスタークロックより優れている場合、前記全ドメイン最適マスタークロックを前記第1のクロックに更新された前記ローカル最適クロックに置き換えるステップと、
更新された前記全ドメイン最適マスタークロックに基づいて前記複数の時刻同期ドメインの時刻を同期させることを前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに通知するステップとを実行する、請求項11に記載の時刻同期装置。
【請求項17】
前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスの1つの精密時刻プロトコルインスタンスが、対応する時刻同期ドメインの第1のクロックのアナウンスメッセージ(Announce message)を受信した時、さらに、
前記第1のクロックと前記全ドメイン最適マスタークロックとを比較するステップと
前記第1のクロックが前記全ドメイン最適マスタークロックより優れている場合、前記全ドメイン最適マスタークロックを前記第1のクロックに置き換えるステップと、
更新された前記全ドメイン最適マスタークロックに基づいて前記複数の時刻同期ドメインの時刻を同期されることを前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに通知するステップとを実行する、請求項10に記載の時刻同期装置。
【請求項18】
前記複数の時刻同期ドメインは異なるタイプの精密時刻プロトコルプロファイル(Precision Time Protocol Profile、PTP Profile)を使用する、請求項10に記載の時刻同期装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は時刻同期方法および装置に関し、特に、複数の時刻同期ドメインにおいてマスタークロックを自動的に決定して時刻同期を行う時刻同期方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精密時刻プロトコル(Precision Time Protocol、PTP)は、IEEE 1588で規定された時刻同期の基礎標準であり、精密なクロック同期を実現するものである。しかし、市場の変化に伴い、様々な異なるネットワークのアプリケーションにそれぞれの異なるニーズがあり、そのため、従来技術は異なるアプリケーションに応じて数多くの異なるPTPプロファイル(Profile)を提案しており、例えば、電力ネットワーク用のPower Profile (IEEE Std C37.238)、電気通信ネットワーク用のTelecom Profile (ITU-T G.8265.1)、及び広義な精密時刻同期プロトコル(IEEE Std 802.1AS:Generalized Precision Time Protocol、gPTP)プロファイル等がある。プロファイルにより、異なるドメインのアプリケーションはそのニーズに合わせて異なる操作パラメータ、属性およびプリセット値などを設定れるため、それぞれ異なるプロファイルを用いるデバイスとネットワーク間で効率的に通信することができなかった。一般に、時刻同期を確保するためには、同じ環境における装置またはデバイスはすべて対応するプロファイルを使用する必要があり、領域を超えた(跨いだ)時刻整合は困難であった。
【0003】
従来技術は、時間ゲートにより複数の異なるタイプのPTPプロファイルを整合し、異なるタイプのPTPプロファイルを用いた異なる時刻同期ドメインまたはデバイスを指定されたマスター(Grandmaster、GM)クロックに基づいて同期させることができる。この方法において、マスタークロックは人為的に指定された特定のドメインにおける最適なクロックであり、この場合、マスタークロックが故障した時、マスタークロックに代わるクロックがないか、または、マスタークロックが予期した性能を満たせないクロックによって置き換えられる問題が発生し得る。
【0004】
したがって、従来技術の改良が必要であり、マスタークロックが故障した場合、直ちにマスタークロックに代わる最適なクロックを自動的に決定して時刻同期ができるようする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、本発明の主な目的は、従来技術の欠点を改善すべく、複数の時刻同期ドメインから最適マスタークロックを選択して時刻同期を行う方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施例は、複数の時刻同期ドメインに用いられる時刻同期方法を開示する。この時刻同期方法は、複数の時刻同期ドメインについて、対応する複数の精密(高精度)時刻プロトコルインスタンス(Precision Time Protocol Instance、PTP Instance)を構築するステップと、全ドメイン最適マスタークロックを決定するステップと、前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスは前記全ドメイン最適マスタークロックに基づいて前記複数の時刻同期ドメインの時間を同期させるステップとを含む。
【0007】
また、本発明の実施例は複数の時刻同期ドメインに用いられる時刻同期装置を開示する。前記時刻同期装置は処理ユニット及び記憶ユニットを含む。前記処理ユニットは、プログラムコードを実行するものである。前記記憶ユニットは、前記処理ユニットにカップリングされ、前記プログラムコードを記憶し、前記処理ユニットに時刻同期方法の実行を指示するものである。前記時刻同期方法は、前記複数の時刻同期ドメインについて、対応する複数の精密時刻プロトコルインスタンスを構築するステップと、前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに対応する複数のローカル最適クロックに基づいてマスタークロックを決定するステップと、前記マスタークロックに基づいて前記複数の時刻同期ドメインの時刻を同期させることを前記複数の精密時刻プロトコルインスタンスに通知するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例の複数の時刻同期ドメインを含む時刻同期ネットワークシステムの概略図である。
図2】本発明の実施例の時刻同期プロセスの概略図である。
図3】本発明の実施例の時刻同期装置の論理アーキテクチャの概略図である。
図4】本発明の実施例のプロセスの概略図である。
図5図5は、本発明の実施例の時刻同期装置の論理アーキテクチャの概略図である。
図6】本発明の実施例のプロセスの概略図である。
図7】本発明の実施例の時刻同期装置の論理アーキテクチャの概略図である。
図8】本発明の実施例の更新プロセスの概略図である。
図9A】本発明の実施例のマスタークロック選出方法の概略図である。
図9B】本発明の実施例のマスタークロック選出方法の概略図である。
図10】本発明の実施例のネットワーク装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
明細書および後述の特許請求の範囲において、特定の部材を示す一部用語が使用されている。当業者は、同じ部材でもハードウェアメーカーによって異なる名称にされることを理解できる。本明細書及び後述の特許請求の範囲では、名称の違いで部材を区別するのではなく、部材の機能上の違いを区別の基準とする。本明細書および後述の特許請求の範囲全体において言及される「含む」とは、オープンな用語であるため、「含むが、これに限定されない」と解すべきである。
【0010】
図1を参照すると、図1は本発明の実施例の時刻同期ネットワークシステム1の概略図である。時刻同期ネットワークシステム1は、時刻同期ドメイン(domain)12_1~12_4および時刻同期装置10を含む。時刻同期ドメイン12_1~12_4は異なるタイプの精密時刻プロトコルプロファイル(Precision Time Protocol Profile、PTP Profile)の規範に従って動作する時刻同期ドメインであり、各時刻同期ドメインは有線ネットワーク、無線ネットワーク、または両者によって構成されるドメインであり、複数の装置及び複数のネットワークスイッチなどの装置によって構成されるドメイン(複数のクロックをを含む)であっても、または単一な装置によって構成されるドメイン(クロックは1つのみ)であってもよい。時刻同期装置10は、時刻同期ドメインにおいて動作するゲートウェイ(gateway)、スイッチ(switch)、ルータ(router)およびブリッジ(bridge)等のネットワーク装置であってもよいが、これに限定されるものではなく、複数の接続ポート(図1には図示せず)を介してそれぞれの時刻同期ドメイン12_1~12_4に接続される。時刻同期ドメイン12_1~12_4は時刻同期方法に基づいて、時刻同期装置10によって時刻同期が行われ、これによって時刻同期ドメイン12_1~12_4中のすべてのデバイス、装置が同じマスター(GrandMaster、GM)クロックの時間を基に同期される。また、時刻同期ネットワークシステム1において、時刻同期ドメイン12_1~12_4の数は4であるが、これは説明のためであり、本発明の実施例の時刻同期装置10はこれに限定されず、任意の数の時刻同期ドメイン間の時刻同期に適用可能である。
【0011】
なお、時刻同期装置10がない場合、時刻同期ドメイン12_1~12_4は異なるPTPプロファイルに基づいて時刻同期機能を実行することになるため、ドメインを超えた(跨いだ)時刻同期の整合ができない。この場合、各時刻同期ドメインは、各時刻同期ドメインのマスタークロックとしての最適クロック(図1における最適クロック14_1~14_4)をそれぞれ有して、即ち、同じ時刻同期ドメインに属する装置はいずれもそれぞれが属するドメインのマスタークロックに基づいて各自に時刻同期を行う。ここで、最適クロックとは、時間源、時間精度、発振器の安定性などの要素に基づいて評価した(特定の時刻同期ドメインに適用される)最も理想なクロックを意味し、人為的に決定された最適(特定の時刻同期ドメインの)クロックであってもよい。本発明の実施例の時刻同期装置10は自動化された時刻同期方法を実行することで、異なる時刻同期ドメインの時間を整合し、時刻同期ネットワークシステム1におけるすべての装置を同じマスタークロック時間と同期させる。この時刻同期方法は、図2に示すプロセス2に纏めることができ、プロセス2は以下のステップを含む。
【0012】
ステップ200:開始。
【0013】
ステップ202:複数の時刻同期ドメインについて、対応する複数の精密時刻プロトコルインスタンス(Precision Time Protocol Instance、PTP Instance)を構築する。
【0014】
ステップ204:精密時刻プロトコルインスタンスに対応する複数のローカル最適クロックを決定する。
【0015】
ステップ206:精密時刻プロトコルインスタンスに対応するローカル最適クロックに基づいて、マスタークロックを決定する。
【0016】
ステップ208:前記マスタークロックに基づいて複数の時刻同期ドメインの時刻を同期させることを複数の精密時刻プロトコルインスタンスに通知する。
【0017】
ステップ210:終了。
【0018】
図3を同時に参照すると、図3は本発明の実施例の時刻同期装置10の論理アーキテクチャ図である。プロセス2によれば、時刻同期装置10は、まず、時刻同期ドメイン12_1~12_4のそれぞれについて、対応する精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4を構築し(ステップ202)、かつ、精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4に対応する最適クロック14_1~14_4を決定する(ステップ204)。次に、時刻同期装置10は、最適クロック14_1~14_4に基づいてマスタークロックを決定し(ステップ206)、このマスタークロックが時刻同期ドメイン12_1~12_4中のすべての装置の時刻同期の根拠となる。最後に、時刻同期装置10は、前記マスタークロックに基づいて時刻同期ドメイン12_1~12_4の時刻を同期させることを精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4に通知する(ステップ208)。これにより、時刻同期ドメイン12_1~12_4中のすべての装置が同じ時間ドメインにおいて動作することができる。
【0019】
詳しく言うと、時刻同期装置10がステップ202で構築した精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4は、接続された時刻同期ドメイン12_1~12_4に対応する同じタイプの精密時刻プロトコルプロファイルを使用するため、接続された時刻同期ドメインとPTPメッセージ(PTP message)を交換して、時刻同期装置10と時刻同期ドメイン12_1~12_4との間の交流媒体とすることができる。言い換えれば、時刻同期ドメイン12_1~12_4は、Telecom Profile、Power Profile、gPTP等に限定されない様々な異なるタイプの精密時刻プロトコルプロファイルに従って動作することができ、精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4は、時刻同期ドメイン12_1~12_4に対応する時刻プロトコルプロファイルに従って動作し、かつノードの1つとして動作する。
【0020】
ステップ204において、時刻同期ドメイン12_1~12_4中の各ドメインはそれぞれのローカル最適クロック(14_1~14_4)を有し、各ドメインが独立して動作する場合、ローカル最適クロック14_1~14_4は各ドメインの(ローカル)マスタークロックとして動作する。ローカル最適クロック14_1~14_4は、最適マスタークロックアルゴリズム(Best Master Clock Algorithm、BMCA)によって決定することができ、精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4は、対応する時刻同期ドメイン12_1~12_4とPTPメッセージを交換することによって、各ドメインのローカル最適クロック14_1~14_4の情報を取得することができる。これにより、時刻同期装置10は、時刻同期ドメイン12_1~12_4に関するローカル最適クロック14_1~14_4を取得し、かつローカル最適クロック14_1~14_4のクロック情報18_1~18_4を記憶することができる。
【0021】
ステップ206において、時刻同期装置10は、ローカル最適クロック14_1~14_4のクロック情報18_1~18_4に基づいてマスタークロックを決定し、当該マスタークロックは時刻同期ドメイン12_1~12_4中のすべての装置の時刻同期の根拠となる。一実施例において、時刻同期デバイス10はさらに、マスタークロックのクロック情報18_0を記憶するための全ドメインマスタークロック情報を備えてもよい。時刻同期ネットワークシステム1の初期化段階において、時刻同期装置10はまずマスタークロックの選出方法によって、ローカル最適クロック14_1~14_4の中から最適クロックを決定して時刻同期ネットワークシステム1のマスタークロックとし、かつそのクロック情報をクロック情報18_0中に記憶してもよい。時刻同期ネットワークシステム1の動作段階において、精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4はPTPメッセージを継続的監視し、時刻同期装置10はこれに基づいて時刻同期ネットワークシステム1のマスタークロックを更新するか否かを決定してもよい。説明の便宜上、精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4中のいずれか1つの精密時刻プロトコルインスタンス16_xの元クロック情報を18_xとし、時刻同期ドメイン12_xに対応するローカル最適クロックが14_xを記録するとする。また、クロック情報18_0中に既に記録されている最適クロックは、ローカル最適クロック14_1~14_4中のあるローカル最適クロック14_yであり、時刻同期ドメイン12_yに対応するとする。ここで、x、yは同じでも異なっていてもよい。精密時刻プロトコルインスタンス16_xは、対応する時刻同期ドメイン12_xの新しいクロックからのクロックアナウンスメッセージ(Announce message)を受信した時、前記クロックアナウンスメッセージは新しいクロック情報18_x_newを含み、時刻同期装置10はクロックアナウンスメッセージ中の新しいクロック情報18_x_newに基づいて、時刻同期ネットワークシステム1のマスタークロックを更新するか否かを決定する。時刻同期装置10が時刻同期ネットワークシステム1のマスタークロックを更新するか否かを決定する方法は、図4に示す更新プロセス4にまとめることができ、更新プロセス4は以下のステップを含む。
【0022】
ステップ400:開始。
【0023】
ステップ402:新しいクロック情報18_x_newとクロック情報18_xを比較する。
【0024】
ステップ404:新しいクロック情報18_x_newに対応する新しいクロックが、クロック情報18_xに対応するローカル最適クロック14_xよりも優れている(優れている)か否かを判断する。「はい」であれば、ステップ406を実行し、「いいえ」であれば、ステップ414を実行する。
【0025】
ステップ406:精密時刻プロトコルインスタンス16_xのローカル最適クロックのクロック情報18_xを新しいクロック情報18_x_newに更新して、引き続きステップ408を実行する。
【0026】
ステップ408:更新後のクロック情報18_xとマスタークロックのクロック情報18_0を比較して、引き続きステップ410を実行する。
【0027】
ステップ410:更新後のクロック情報18_xに対応する新しいクロックがマスタークロックよりも優れているか否かを判断する。「はい」であれば、ステップ412を実行し、「いいえ」であれば、ステップ414を実行する。
【0028】
ステップ412:マスタークロックのクロック情報18_0を更新後のクロック情報18_xに更新する。
【0029】
ステップ414:終了。
【0030】
簡単に言うと、いずれか1つの精密時刻プロトコルインスタンス16_xがクロックアナウンスメッセージを受信した時、時刻同期装置10は、クロックアナウンスメッセージに含まれるクロック情報に基づいて、新しいクロックが現行のマスタークロックよりも優れているか否かを判断する必要がある。まず、新しいクロックのクロック情報18_x_newを精密時刻プロトコルインスタンス16_xに対応するローカル最適クロックのクロック情報18_xと比較すくべきであり(ステップ402)、比較の結果から、新しいクロックが元の最適クロック14_xよりも優れているか否かを判断する(ステップ404)。「はい」であれば、新しいクロックが現在の時刻同期ドメイン12_x中の最適なクロックであることを意味するため、元の最適なクロックを新しいクロックに置き換えて、クロック情報18_xを更新する(ステップ406)。「いいえ」であれば、プロセスを終了する。次に、新しいクロックのクロック情報18_x_new(更新後のクロック情報18_x)をさらにマスタークロックのクロック情報18_0と比較すべきであり(ステップ408)、比較の結果から、新らしいローカル最適クロック14_xがマスタークロックよりも優れているか否かを判断する(ステップ410)。「はい」であれば、新しいクロックが現在の時刻同期ネットワークシステム1中の最適なクロックであることを意味し、新しいクロックでマスタークロックを置き換えて、クロック情報18_0を更新する(ステップ412)。「いいえ」であれば、プロセスを終了する。
【0031】
別の実施例では、ステップ206において、時刻同期装置10は前記の実施例と同じく、マスタークロックのクロック情報18_0を記憶するための全ドメインマスタークロック情報を有する。ただし、時刻同期ネットワークシステム1の初期化段階において、時刻同期装置10はまずローカル最適クロック14_1~14_4の中から最適クロックを決定して時刻同期ネットワークシステム1のマスタークロックとする必要がなく、クロック情報18_0をヌル(NULL)に設定してもよい。時刻同期ネットワークシステム1の動作段階において、精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4は同じようにPTPメッセージを継続的に監視してもよい。精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4中の1つの精密時刻プロトコルインスタンス16_xが、対応する時刻同期ドメイン12_xの新しいクロックからのクロックアナウンスメッセージを受信した時、時刻同期装置10は、クロックアナウンスメッセージ中の新しいクロック情報に基づいて、時刻同期ネットワークシステム1のマスタークロックを更新するか否かを決定する。時刻同期装置10がマスタークロックを更新するか否かを決定する方法は、前記の更新プロセス4と同じであるが、ステップ408においては、元のマスタークロックのクロック情報18_0がヌルに設定されている場合、そのままステップ412を実行し、マスタークロックのクロック情報18_0を新しいクロックのクロック情報に置き換えることができる。
【0032】
図5を参照すると、図5は本発明の実施例の時刻同期装置50の論理アーキテクチャ図である。時刻同期装置50は、図3の時刻同期装置10に代わって、時刻同期ドメイン12_1~12_4を同じ時間領域で動作させることができる。本実施例において、時刻同期装置50は、時刻同期装置10のようなマスタークロックを記憶するための「全ドメイン」マスタークロック情報を有しないが、時刻同期装置50は、マスタークロックのクロック情報18_0を精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4に記憶する。即ち、精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4には、ローカル最適クロック14_1~14_4のクロック情報18_1~18_4に加えて、マスタークロックのクロック情報18_0も記憶される。時刻同期ネットワークシステム1の初期化段階において、時刻同期装置50は、マスタークロック選出方法によって、ローカル最適クロック14_1~14_4の中から最適クロックを決定して時刻同期ネットワークシステム1のマスタークロックとすることができ、クロック情報18_0をヌル値(NULL)に設定することもできる。時刻同期ネットワークシステム1の動作段階では、ステップ206において、精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4は同じようにPTPメッセージを継続的に監視することができ、時刻同期装置50はこれに基づいて時刻同期ネットワークシステム1のマスタークロックを更新するか否かを決定する。前記の例と同様に、精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4の中のいずれか1つの精密時刻プロトコルインスタンス16_xの元クロック情報を18_xとし、時刻同期ドメイン12_xに対応するローカル最適クロック14_xを記録するとする。精密時刻プロトコルインスタンス16_xが対応する時刻同期ドメイン12_xの新しいクロックからのクロックアナウンスメッセージを受信した時、前記クロックアナウンスメッセージは新しいクロック情報18_x_newを含み、時刻同期装置50はクロックアナウンスメッセージ中の新しいクロック情報18_x_newに基づいて時刻同期ネットワークシステム1のマスタークロックを更新するか否かを決定することができる。時刻同期装置50が時刻同期ネットワークシステム1のマスタークロックを更新するか否かを決定する方法は、図6に示す更新プロセス6にまとめることができ、更新プロセス6は以下のステップを含む。
【0033】
ステップ600:開始。
【0034】
ステップ602:新しいクロック情報18_x_newとクロック情報18_xを比較する。
【0035】
ステップ604:新しいクロック情報18_x_newに対応する新しいクロックが、クロック情報18_xに対応するローカル最適クロック14_xよりも優れているか否かを判断する。「はい」であれば、ステップ606を実行し、「いいえ」であれば、ステップ612を実行する。
【0036】
ステップ606:精密時刻プロトコルインスタンス16_xのローカル最適クロックのクロック情報18_xを新しいクロック情報18_x_newに更新し、引き続きステップ608を実行する。
【0037】
ステップ608:マスタークロック選出方法によって、ローカル最適クロック14_1~14_4の中から最適クロックを決定してマスタークロックとし、引き続きステップ610を実行する。
【0038】
ステップ610:精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4に記憶されたマスタークロックのクロック情報18_0を、更新後のクロック情報18_xに更新する。
【0039】
ステップ612:終了。
【0040】
簡単に言うと、いずれか1つの精密時刻プロトコルインスタンス16_xがクロックアナウンスメッセージを受信した時、時刻同期装置50は、クロックアナウンスメッセージに含まれるクロック情報に基づいて新しいマスタークロックを決定する必要がある。まず、新しいクロックのクロック情報18_x_newを精密時刻プロトコルインスタンス16_xに対応するローカル最適クロックのクロック情報18_xと比較する必要があり(ステップ602)、比較の結果から、新しいクロックが元の最適クロック14_xよりも優れているか否かを判断する(ステップ604)。「はい」であれば、新しいクロックが現在の時刻同期ドメイン12_x中の最適なクロックであることを意味するため、新しいクロックで元の最適なクロックを置き換えて、クロック情報18_xを更新する(ステップ606)。「いいえ」であれば、プロセスを終了する。次に、マスタークロック選出方法によって、クロック比較を行い、ローカル最適クロック14_1~14_4の中から最適クロックを決定して新たなマスタークロックとする(ステップ608)。最後に、精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4のクロック情報18_0を新しいマスタークロック情報に更新する(ステップ610)。
【0041】
一方、図7を参照すると、図7は本発明の実施例の時刻同期装置70の論理アーキテクチャ図である。時刻同期装置70は、図3の時刻同期装置10または図5の時刻同期装置50に代わって、時刻同期ドメイン12_1~12_4を同じ時間領域で動作させることができる。本実施例において、時刻同期装置70は、時刻同期装置10、50のようにローカル最適クロック14_1~14_4を記憶するためのクロック情報18_1~18_4を有せず、マスタークロックのクロック情報18_0を記憶するための全ドメインマスタークロック情報のみを記憶している。時刻同期ネットワークシステム1の初期化段階において、時刻同期装置70は、クロック情報18_0をヌル(NULL)に設定してもよく、または、マスタークロック選出方法によって、精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4のdefaultDS(Default Parameter Data Set)から最適なものをクロック情報18_0の初期値として選出してもよい。時刻同期ネットワークシステム1の動作段階では、ステップ206において、精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4は同じようにPTPメッセージを継続的に監視することができ、時刻同期装置70はこれに基づいて時刻同期ネットワークシステム1のマスタークロックを更新するか否かを決定することができる。前記例と同じように、精密時刻プロトコルインスタンス16_xが対応する時刻同期ドメイン12_xの新しいクロックからのクロックアナウンスメッセージを受信した時、クロックアナウンスメッセージは新しいクロック情報18_x_newを含み、時刻同期装置70はクロックアナウンスメッセージ中の新しいクロック情報18_x_newに基づいて、時刻同期ネットワークシステム1のマスタークロックを更新するか否かを決定することができる。時刻同期装置70が時刻同期ネットワークシステム1のマスタークロックを更新するか否かを決定する方法は、図8に示すように更新プロセス8にまとめることができ、更新プロセス8は以下のステップを含む。
【0042】
ステップ800:開始。
【0043】
ステップ802:新しいクロック情報18_x_newとクロック情報18_0を比較する。
【0044】
ステップ804:新しいクロック情報18_x_newに対応する新しいクロックがクロック情報18_0に対応するマスタークロックよりも優れているか否かを判断する。「はい」であれば、ステップ806を実行し、「いいえ」であれば、ステップ808を実行する。
【0045】
ステップ806:マスタークロックのクロック情報18_0を新しいクロック情報18_x_newに更新する。
【0046】
ステップ808:終了。
【0047】
簡単に言うと、いずれか1つの精密時刻プロトコルインスタンス16_xがクロックアナウンスメッセージを受信した時、時刻同期装置70は、クロックアナウンスメッセージに含まれるクロック情報に基づいて、マスタークロックを更新するか否かを決定する必要がある。まず、新しいクロックのクロック情報18_x_newをマスタークロックに対応するクロック情報18_0と比較する必要があり(ステップ802)、比較の結果から、新しいクロックが元のマスタークロックよりも優れているか否かを判断する(ステップ804)。「はい」であれば、新しいクロックが現在の時刻同期ネットワークシステム1中の最適なクロックであることを意味するため、マスタークロックを新しいクロックに置き換えて、クロック情報18_0を更新する(ステップ806)。「いいえ」であれば、プロセスを終了する。
【0048】
ステップ206においてマスタークロックのクロック情報18_0を決定または更新した後、ステップ208において、時刻同期装置10は、精密時刻プロトコルインスタンス16_x以外のすべての精密時刻プロトコルインスタンスに対して通知を送信する必要がある。通知を受信した精密時刻プロトコルインスタンス16_1~16_4は、通知中の新しいクロックのクロック情報に基づいて、その対応する時刻同期ドメイン12_1~12_4の時間を同期させることができる。これにより、時刻同期ネットワークシステム1中のすべての装置は、すべての接続された時刻同期ドメイン12_1~12_4の装置を含めて、ドメインを超えたマスタークロックによって全装置の時刻同期を実現することができる。
【0049】
具体的には、ステップ206において、時刻同期装置10がマスタークロック選出方法によって最適クロックを時刻同期ネットワークシステム1のマスタークロックに決定する方法について、図9A及び図9Bを参照することができる。詳しく言うと、時刻同期装置10は、ローカル最適クロック14_1~14_4のクロック情報18_1~18_4に基づいて比較し、最適クロックを選出する。一実施例において、図9Aに示すように、C1~C4はそれぞれローカル最適クロック14_1~14_4の属性(例えば、クロック情報18_1~18_4に記録された情報によって得られたもの、詳細は後述する)を表す。時刻同期装置10は、属性C1~C4のうちの1つがその他の全属性よりも優れていることを判断できるまで、属性C1~C4のうちの任意2つの属性を比較し続ける。まず、第1ラウンドの比較では、属性C1をその他のすべてのローカル最適クロックの属性C2~C4とそれぞれ比較し、属性C1が属性C2~C4より優れていれば、属性C1に対応するローカル最適クロック14_1を最適クロックに決定し、プロセスを終了する。逆の場合、ローカル最適クロック14_1が最適クロックではないと判断し、引き続き第2ラウンドの比較を行う。第2ラウンドの比較では、属性C2をその他のすべてのローカル最適クロックの属性C1、C3、C4とそれぞれ比較し、属性C2が属性C1、C3、C4より優れていれば、属性C2に対応するローカル最適クロック14_2を最適クロックに決定し、プロセスを終了する。逆の場合、ローカル最適クロック14_2は最適クロックではないと判断し、引き続き第3ラウンドの比較を行う。第3ラウンド以降の比較はこれによって類推し、最適クロックが判定できるまで行う。以上のプロセスで決定された最適クロックは時刻同期ネットワークシステム1のマスタークロックとなり、時刻同期ネットワークシステム1のすべての装置の時刻同期の根拠となる。
【0050】
別の実施例において、図9Bに示すように、C1~C4は前記と同じく、それぞれローカル最適クロック14_1~14_4の属性を表す。本実施例において、時刻同期装置10は、属性C1~C4のうちのいずれか1つの属性がその他のすべての属性よりも優れていることを判断できるまで、属性C1~C4のうちの任意2つの属性を繰り返し、かつ重複なく比較し続ける。まず、第1ラウンドの比較では、属性C1をその他のすべてのローカル最適クロックの属性C~C4とそれぞれ比較し、属性C1が属性C2~C4より優れていれば、属性C1に対応するローカル最適クロック14_1を最適クロックに決定し、プロセスを終了する。逆の場合、ローカル最適クロック14_1は最適クロックではないと判断し、引き続き第2の比較を行う。第2ラウンドの比較では、属性C2をまだ比較を行っていないその他のローカル最適クロックの属性C3、C4とそれぞれ比較し、属性C2が属性C3、C4より優れていれば、属性C2に対応するローカル最適クロック14_2を最適クロックに決定し、プロセスを終了する。逆の場合、最適クロック14_2が最適クロックでないと判断し、引き続き第3ラウンドの比較を行う。最後に、第3ラウンドの比較では、属性C3をまだ比較を行っていないその他のローカル最適クロックの属性C4と比較し、属性C3が属性C4より優れていれば、属性C3に対応するローカル最適クロック14_3を最適クロックに決定し、プロセスを終了する。逆の場合、ローカル最適クロック14_4が最適クロックであると判断できる。以上のプロセスによって決定された最適なクロックは、時刻同期ネットワークシステム1のマスタークロックとなり、時刻同期ネットワークシステム1のすべての装置の時刻同期の根拠となる。
【0051】
なお、図9A図9Bは、時刻同期装置10が最適クロックを決定するために採用し得る方法を示しているが、これに限定されず、時刻同期ドメイン12_1~12_4のローカル最適クロック14_1~14_4の中から、時刻同期ネットワークシステム1のマスタークロックとして、ドメインを超えた最適クロックを自動選択することができるものであれば、すべて本発明に適用される。
【0052】
また、前記クロック情報18_0~18_4は、マスタークロック能力情報に関するtimePropertiesDS(Time Properties Parameter Data Set)、parentDS(Parent Parameter Data Set)、および対応する優先度ベクトル(Time-synchronization Spanning Tree Priority Vector)を含むが、これらに限定されない。したがって、前記クロック属性(C1~C4)の比較は、その対応するクロック情報における優先度ベクトルに基づいて比較を行ってもよい。優先度ベクトルに含まれるパラメータは、rootSystemIdentity、stepsRemoved、sourcePortIdentity、および受信ポートのportNumberがあり、そのうち、rootSystemIdentityはさらに、priority1、clockClass、clockAccuracy、offsetScaledLogVariance、priority2、およびclockIdentityのパラメータを含む。前記パラメータ名称についてIEEE 802.1AS-2020の関連定義を参考することができ、当業者はその示す意義を理解できる。本発明の実施例は優先度ベクトルのパラメータを順に比較し、かつ、数値が小さいほど比較の根拠として好ましいが、これに限定されない。
【0053】
さらに、図10を参照すると、図10は本発明の実施例のネットワーク装置100の概略図である。ネットワーク装置100は、時刻同期装置10、50および70を実現するために、時刻同期ドメインで動作するゲートウェイ(gateway)、スイッチ(switch)、ルータ(router)およびブリッジ(bridge)などのネットワーク装置であってもよい。図10に示すように、ネットワーク装置100は、処理ユニット102および記憶ユニット104を含むことができる。処理ユニット102は、マイクロプロセッサまたは特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit、ASIC)とすることができる。記憶ユニット104は、プログラムコードを記憶し、処理ユニット102を介してプログラムコード106を読み取り、実行するための任意のデータ記憶装置とすることができる。例えば、記憶ユニット104は、読出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ(flash memory)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスク及び光学記憶装置(optical data storage device)、及び不揮発性記憶ユニット等であってもよいが、これらに限定されない。
【0054】
ネットワーク装置100は、本発明の実施例を実現するために必要な要素を表し、当業者によって異なる修飾、調整を行うことが可能であるが、これに限定されない。例を挙げて言うと、ネットワーク装置100で時刻同期装置10を実現する場合、時刻同期方法のプロセス2をプログラムコードにコンパイルして記憶ユニット104に記憶し、処理ユニット102によって時刻同期方法を実行することができる。また、記憶ユニット104は、クロックデータ18_0~18_4及び時刻同期方法の実行に必要なデータを記憶するが、これに限定されない。
【0055】
従来技術において、異なるタイプのPTPプロファイルを用いる異なる時刻同期ドメインまたはデバイスは、人為的に指定されたマスタークロックに基づいて時間の同期を行うもので、マスタークロックが故障した場合、マスタークロックに代わるクロックがない、またはマスタークロックが予期した性能を満たせないクロックによって置き換えられる問題が発生し得る。これに対し、本発明は自動的にマスタークロックを決定し、かつドメインを超えた時刻同期を行うことができ、マスタークロックが故障した場合でも、本発明は自動的に別の最適な機能を有するクロックでマスタークロックを置き換えることができ、そのため、システムの信頼性と稼働効率を大幅に向上させることができる。
【0056】
以上の通り、本発明は時刻同期方法及び装置を提供し、複数の異なる時刻同期ドメインにおいて自動的にマスタークロックを決定し、かつドメインを超えた時刻同期を行い、マスタークロックが故障した時に発生し得る問題を回避し、従来技術の欠点を改善できる。
【0057】
以上は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の特許請求の範囲における均等な変化と修飾はすべて本発明の範囲に属する。
【符号の説明】
【0058】
1 時刻同期ネットワークシステム
10 時刻同期装置
12_1~12_4 時刻同期ドメイン
14_1~14_4 ローカル最適クロック
16_1~16_4 精密時刻プロトコルインスタンス
18_0~18_4 クロック情報
2 プロセス
200~210 ステップ
4 プロセス
400~414 ステップ
50 時刻同期装置
6 プロセス
600~612 ステップ
70 時刻同期装置
800~808 ステップ
C1~C4 ローカル最適クロックの属性
100 ネットワーク装置
102 処理ユニット
104 記憶ユニット
106 プログラムコード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10