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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087768
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】電流センサ及び測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
G01R15/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181979
(22)【出願日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2022202496
(32)【優先日】2022-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】夏 沛宇
(72)【発明者】
【氏名】池田 健太
(72)【発明者】
【氏名】中沢 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 悠樹
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AB14
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】電流センサの電流検出精度を上げる。
【解決手段】電流センサ100は、環状の磁気コア10と、直列に接続された複数の巻線部で構成され、磁気コア10の互いに異なる部分に巻かれる一対の巻線11及び21と、巻線ごとに、巻線における巻線部ごとにそれぞれ並列接続される複数の抵抗素子12及び22と、を含む。電流センサ100は、一端が巻線11の一端1aに接続されると共に他端1cが磁気コア20における巻線11が巻かれた部分に沿って巻線11の一端1aから他端1bの位置の近傍まで延びる戻り線13と、一端が巻線21の一端2aに接続されると共に他端2cが磁気コア10における巻線21が巻かれた部分に沿って巻線21の一端2aから他端2bの位置の近傍まで延びる戻り線23と、を含む。電流センサ100は、巻線11及び戻り線13の出力と巻線21及び戻り線23の出力との差分を示す信号を出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の磁気コアと、
直列に接続された複数の巻線部で構成され、前記磁気コアの互いに異なる部分にトロイダル方向に沿ってポロイダル方向に巻かれて測定対象に流れる電流を検出する第一巻線及び第二巻線から構成される一対の巻線と、
前記巻線部ごとにそれぞれ並列接続される複数の抵抗素子と、
一端が前記第一巻線の一端に接続されると共に、他端が前記磁気コアにおける前記第一巻線が巻かれた部分のトロイダル方向に沿って前記第一巻線の一端から前記第一巻線の他端の位置の近傍まで延びる第一戻り線と、
一端が前記第二巻線の一端に接続されると共に、他端が前記磁気コアにおける前記第二巻線が巻かれた部分のトロイダル方向に沿って前記第二巻線の一端から前記第二巻線の他端の位置の近傍まで延びる第二戻り線と、を含み、
前記第一巻線及び前記第一戻り線の出力と前記第二巻線及び前記第二戻り線の出力との差分を示す信号を出力する電流センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の電流センサであって、
前記差分は、磁気の差分を含む、
電流センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の電流センサであって、
前記差分を示す信号を出力する差分回路を含み、
前記差分は、電気信号の差分を含む、
電流センサ。
【請求項4】
請求項1に記載の電流センサであって、
前記差分を示す信号を出力する差分回路を含み、
前記差分は、磁気の差分、及び電気信号の差分を含む、
電流センサ。
【請求項5】
請求項1に記載の電流センサであって、
前記第一巻線の巻数と前記第二巻線の巻数とは、互いに同等である、
電流センサ。
【請求項6】
請求項1に記載の電流センサであって、
前記磁気コアの互いに異なる部分は、第一磁気コア部及び第二磁気コア部から構成され、
前記第一磁気コア部の周方向の長さと前記第二磁気コア部の周方向の長さとは、互いに同等である、
電流センサ。
【請求項7】
請求項1に記載の電流センサであって、
前記第一巻線の他端と前記第二巻線の他端とは、互いに隣接する、
電流センサ。
【請求項8】
請求項1に記載の電流センサであって、
前記一対の巻線は、前記第一巻線の一端から前記第一巻線の他端への方向と、前記第二巻線の一端から前記第二巻線の他端への方向とが、前記磁気コアのトロイダル方向において互いに逆方向になるように巻かれ、かつ前記磁気コアのポロイダル方向において互いに逆方向になるように巻かれ、
前記第二戻り線の他端と前記第一巻線の他端が接続される、
電流センサ。
【請求項9】
請求項1に記載の電流センサであって、
前記差分を示す信号を出力する差分回路を含み、
前記一対の巻線は、前記第一巻線の一端から前記第一巻線の他端への方向と、前記第二巻線の一端から前記第二巻線の他端への方向とが、前記磁気コアのトロイダル方向において互いに逆方向になるように巻かれ、かつ前記磁気コアのポロイダル方向において互いに逆方向に巻かれ、
前記第一戻り線の他端は、前記差分回路の第一入力端子に接続され、前記第二巻線の他端は、前記差分回路の第二入力端子に接続され、
前記第二戻り線の他端と前記第一巻線の他端とは、それぞれ基準電位に接続される、
電流センサ。
【請求項10】
請求項1に記載の電流センサであって、
前記差分を示す信号を出力する差分回路を含み、
前記一対の巻線は、前記第一巻線の一端から前記第一巻線の他端への方向と、前記第二巻線の一端から前記第二巻線の他端の方向とが、前記磁気コアのトロイダル方向において互いに逆方向になるように巻かれ、かつ前記磁気コアのポロイダル方向において互いに同じ向きに巻かれ、
前記第一戻り線の他端と前記第二戻り線の他端とは、それぞれ前記差分回路の第一入力端子及び第二入力端子に接続され、
前記第一巻線の他端と前記第二巻線の他端とは、それぞれ基準電位に接続される、
電流センサ。
【請求項11】
請求項1に記載の電流センサであって、
前記複数の抵抗素子の抵抗値は、それぞれ同等である、
電流センサ。
【請求項12】
請求項1に記載の電流センサであって、
前記差分を示す信号を出力する差分回路を含み、
前記差分回路に前記第一巻線及び前記第一戻り線の出力と前記第二巻線及び前記第二戻り線の出力をそれぞれ伝送するための一対の伝送路を含み、
前記第一巻線及び前記第二巻線の少なくとも一方に並列接続された前記複数の抵抗素子の各抵抗値の総和は、前記伝送路の特性インピーダンスに対して同程度である、
電流センサ。
【請求項13】
請求項1に記載の電流センサであって、
前記差分を示す信号を出力する差分回路を含み、
前記差分回路に前記第一巻線及び前記第一戻り線の出力と前記第二巻線及び前記第二戻り線の出力をそれぞれ伝送するための一対の伝送路と、
前記一対の伝送路の少なくとも一方の入力端から見たインピーダンスを前記伝送路の特性インピーダンスに調整するインピーダンス調整回路と、
を含む電流センサ。
【請求項14】
請求項1に記載の電流センサであって、
前記磁気コアに発生する磁束を検出する磁気検出素子と、
前記磁気検出素子により検出される磁束に基づいて前記磁束を相殺するように前記磁気コアを励磁するための信号を前記一対の巻線に供給する供給回路と、
直流から低周波帯域までの信号成分を遮断する複数の容量素子と、
を含み、
前記複数の容量素子は、前記複数の抵抗素子のうち隣接する抵抗素子間の接続点と互いに隣接する前記巻線部間の接続点との間、及び、前記供給回路の各出力端と前記各出力端に繋がる前記抵抗素子との間に、それぞれ接続される、
電流センサ。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の電流センサと、
前記電流センサにより検出される検出量に基づいて前記測定対象についての測定量を演算する測定部と、
を含む測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサ及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁気コアに巻かれた巻線が、直列接続された複数の巻線部で構成され、巻線部ごとにそれぞれダンピング抵抗が並列接続されたトランスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3146417号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このトランスにおいて直列接続された複数の巻線部で構成された巻線は、巻線全体としてトロイダル方向の1ターンループを構成するため、この1ターンループによって外部から侵入する磁界及び電磁波などの外部磁束等を検出してしまい、電流検出精度が悪くなる。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、電流検出精度を上げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、電流センサは、環状の磁気コアと、直列に接続された複数の巻線部で構成され、前記磁気コアの互いに異なる部分にトロイダル方向に沿ってポロイダル方向に巻かれて測定対象に流れる電流を検出する第一巻線及び第二巻線から構成される一対の巻線と、前記巻線部ごとにそれぞれ並列接続される複数の抵抗素子と、一端が前記第一巻線の一端に接続されると共に、他端が前記磁気コアにおける前記第一巻線が巻かれた部分のトロイダル方向に沿って前記第一巻線の一端から前記第一巻線の他端の位置の近傍まで延びる第一戻り線と、一端が前記第二巻線の一端に接続されると共に、他端が前記磁気コアにおける前記第二巻線が巻かれた部分のトロイダル方向に沿って前記第二巻線の一端から前記第二巻線の他端の位置の近傍まで延びる第二戻り線と、を含み、第一巻線及び第一戻り線の出力と第二巻線及び第二戻り線の出力との差分を示す信号を出力する。
【発明の効果】
【0007】
この態様では、一対の巻線を構成する第一巻線と第二巻線とを磁気コアの互い異なる部分にトロイダル方向に沿ってポロイダル方向に巻く。さらに、第一巻線の一端に接続された第一戻り線は、第一巻線の巻かれた部分のトロイダル方向に沿わせると共に第一巻線の一端から第一巻線の他端の位置の近傍まで延びる。さらに、第二巻線の一端に接続された第二戻り線は、第二巻線の巻かれた部分のトロイダル方向に沿わせると共に第二巻線の一端から第二巻線の他端の位置の近傍まで延びる。
【0008】
このため、第一巻線及び第一戻り線の出力と第二巻線及び第二戻り線の出力との差分として第一巻線及び第一戻り線に生じる磁気と第二巻線及び第二戻り線に生じる磁気との差分を取る場合は、第一巻線及び第一戻り線が検出する外部磁束等を第二巻線と第二戻り線とが発生する磁束によって少なくとも一部を打ち消すことができる結果、電流検出精度を上げることができる。または、第一巻線及び第一戻り線の出力と第二巻線及び第二戻り線の出力との差分として、第一巻線及び第一戻り線を通じて出力される電気信号と第二巻線及び第二戻り線を通じて出力される電気信号との差分を取る場合は、第一巻線及び第一戻り線を通じて出力される電気信号の外部磁束等によるノイズを、第二巻線及び第二戻り線を通じて出力される電気信号の外部磁束等によるノイズによってノイズの同相成分の少なくとも一部を打ち消すことができる結果、電流検出精度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第一実施形態の電流センサを備える測定装置の構成を示す図である。
図2図2は、第一実施形態の電流センサの構成例を示す模式図である。
図3図3は、図2に示した電流センサの等価回路を示す回路図である。
図4図4は、第一実施形態の電流センサの動作を説明するための図である。
図5図5は、第一実施形態の電流センサの振幅周波数特性の平坦性を示す図である。
図6図6は、第二実施形態の電流センサの構成例を示す図である。
図7図7は、第三実施形態の電流センサの構成例を示す図である。
図8図8は、第四実施形態の電流センサの構成例を示す図である。
図9図9は、図8に示した電流センサの等価回路を示す回路図である。
図10図10は、第五実施形態の電流センサの構成例を示す図である。
図11図11は、第六実施形態の電流センサの構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。本明細書においては、全体を通じて、同一又は同等の要素には同一の符号を付する。
【0011】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態の測定装置1の構成を示す図である。
【0012】
測定装置1は、測定対象Lmについての物理量を測定するための装置である。測定対象Lmは、例えば、交流の測定電流Imが流れる電路であり、この電路としては、例えば、単相又は三相の電源ケーブルなどが挙げられる。また、測定対象Lmについての物理量としては、電流値、磁束値又は電力値などが挙げられる。
【0013】
測定装置1は、測定対象Lmに流れる電流を示す測定電流Imの大きさを測定する。測定装置1は、電流センサ100及び測定部200を備える。
【0014】
電流センサ100は、交流の測定電流Imによって作られる磁束を示す測定磁束を検出するセンサである。電流センサ100は、測定磁束を検出して得られる電圧を検出量として測定部200に出力する。
【0015】
電流センサ100は、一又は複数の巻線を巻いた磁気コアがケースに収容されている。電流センサ100の構造は、測定対象Lmを挿通する貫通型の構造でもよく、開閉可能なクランプ型の構造であってもよい。
【0016】
例えば、電流センサ100は、CT(カレントトランス)動作を行って測定電流Imにかかる検出量を取得する巻線検出型の電流センサにより実現される。あるいは、電流センサ100は、フラックスゲート又はホール素子などの磁気検出素子を備える巻線検出型のACゼロフラックス方式(磁気平衡方式)を採用する電流センサによって実現されてもよい。
【0017】
電流センサ100には、ケーブル110が設けられている。ケーブル110は、例えば、特性インピーダンスが50[Ω]又は75[Ω]の同軸ケーブルによって実現される。ケーブル110の先端は、測定部200に接続される。
【0018】
測定部200は、電流センサ100により検出される検出量に基づいて測定対象Lmについての測定量を演算する。第一実施形態の測定部200は、電流センサ100で得られた電圧の大きさを示す検出量に基づいて、測定対象Lmに流れる測定電流Imの電流値を演算する。測定部200は、例えば、電力解析器、電流測定器、又は磁界測定器によって実現される。
【0019】
次に、第一実施形態の電流センサ100の構成について図2及び図3を参照して説明する。
【0020】
図2は、電流センサ100の構成を模式的に示した図である。
【0021】
電流センサ100は、磁気コア10と、巻線11と、複数の抵抗素子12と、戻り線13と、巻線21と、複数の抵抗素子22と、戻り線23と、差分回路30とを備える。これらの構成は、図1で述べたように、不図示のケースに収容される。
【0022】
磁気コア10は、測定対象Lmが挿通可能となるように形成される。具体的には、磁気コア10の全体形状は、測定対象Lmを囲むように環状に形成される。ここにいう環状には、円形状、楕円形状、矩形状、及び多角形状などが含まれる。磁気コア10は、例えば、パーマロイのような鉄材によって構成される。この鉄材に代えて、磁気コア10は中空構造であってもよい。また、磁気コア10は、分割可能な構造であってもよい。
【0023】
巻線11及び巻線21は、磁気コア10の互いに異なる部分にトロイダル方向に巻かれる一対の巻線である。互いに異なる部分は、第一実施形態においては、第一磁気コア部10a及び第二磁気コア部10bから構成される。
【0024】
具体的には、巻線11は、磁気コア10のトロイダル方向に沿うようにポロイダル方向に巻かれる第一巻線である。巻線21は、磁気コア10のうち巻線11が巻かれた第一磁気コア部10aとは異なる第二磁気コア部10bにおいて磁気コア10のトロイダル方向に沿うようにポロイダル方向に巻かれる第二巻線である。
【0025】
また、第一実施形態において、一対の巻線11及び21は、巻線11の一端1aから巻線11の他端1bへの方向と巻線21の一端2aから巻線21の他端2bへの方向が、磁気コア10のトロイダル方向において互いに逆方向になるように巻かれる。具体的には、巻線11は、巻線11の一端1aから他端1bに向かう方向に磁気コア10のトロイダル方向に沿って巻かれ、巻線21は、巻線11の一端1aから他端1bに向かう方向に対して逆方向に磁気コア10のトロイダル方向に沿って巻かれる。また、巻線21は、磁気コア10のポロイダル方向において巻線11が巻かれる方向に対し逆方向に巻かれる。このように、巻線11及び巻線21は、それぞれ順向巻き及び逆向巻きの関係にある。
【0026】
一対の巻線11及び21は、磁気コア10の径方向における両者の線対称性が向上するように、上面視において磁気コア10が二等分されるよう対向して配置される。第一実施形態では、一対の半円状の巻線11及び21が互いに対向するように配置されている。
【0027】
巻線11の一端1aは戻り線13に接続され、巻線11の他端1bは基準電位Gに接続される。同様に、巻線21の一端2aは戻り線23に接続され、巻線21の他端2bは基準電位Gに接続される。
【0028】
一対の巻線11及び21は、複数の巻線部が直列接続されている。巻線11は、巻線部ごとに抵抗素子12が並列接続される。同様に、巻線21は、巻線部ごとに抵抗素子22が並列接続される。
【0029】
戻り線13及び戻り線23は、一対の巻線11及び21の一巻線ごとに磁気コア10における当該巻線が巻かれた部分のトロイダル方向に沿って互いに逆方向に当該巻線の一端から他端に向かって戻る一対の戻り線である。
【0030】
具体的には、戻り線13は、磁気コア10における巻線11が巻かれた第一磁気コア部10aのトロイダル方向に沿って巻線11の一端1aから延びて巻線11の他端1bに向かって戻る。同様に、戻り線23は、磁気コア10における巻線21が巻かれた第二磁気コア部10bのトロイダル方向に沿って巻線21の一端2aから延びて巻線21の他端2bに向かって戻る。
【0031】
すなわち、戻り線13は、自己の一端が巻線11の一端1aに接続されると共に、自己の他端1cが磁気コア10における巻線11が巻かれた第一磁気コア部10aのトロイダル方向に沿って巻線11の一端1aから巻線11の他端1bの位置の近傍まで延びる第一戻り線を構成する。また、戻り線23は、自己の一端が巻線21の一端2aに接続されると共に、自己の他端2cが磁気コア10における巻線21が巻かれた第二磁気コア部10bのトロイダル方向に沿って巻線21の一端2aから巻線21の他端2bの位置の近傍まで延びる第二戻り線を構成する。
【0032】
差分回路30は、巻線11及び戻り線13から出力される電気信号と巻線21及び戻り線23から出力される電気信号の差分を出力する差動増幅回路である。
【0033】
第一実施形態において、差分回路30は、差動増幅回路により実現される。差分回路30の反転入力端子(-)には戻り線13の他端1cが接続され、差分回路30の非反転入力端子(+)には巻線21の他端2bが接続される。巻線21の一端2aから延びる戻り線23の他端2cは、基準電位Gに接続される。巻線11の他端1bも、基準電位Gに接続される。
【0034】
差分回路30は、巻線11から戻り線13を介して出力される電圧信号と、戻り線23から巻線21を介して出力される電圧信号と、の差分を出力するとともに増幅する。これに代えて、差分回路30が、戻り線13から巻線11を介して出力される電圧信号と、巻線21から戻り線23を介して出力される電圧信号と、の差分を出力するとともに増幅するように電流センサ100を構成してもよい。
【0035】
このように、差分回路30は、巻線11及び戻り線13を通じて出力される電圧信号と、巻線21及び戻り線23を通じて出力される電圧信号と、の差分を示す信号を出力する。
【0036】
差分回路30は、巻線11及び戻り線13を通じて出力される電圧信号と巻線21及び戻り線23を通じて出力される電圧信号との差分の大きさを示す出力信号を生成し、生成した出力信号を電流センサ100の出力信号Voutとして測定部200に出力する。
【0037】
続いて、電流センサ100の接続関係について図3を参照して説明する。
【0038】
図3は、第一実施形態の電流センサ100の電気特性を模擬した等価回路の一例を示す回路図である。図3では、巻線11を四つに区分けした部分が巻線部11a乃至11dとして示され、巻線21を四つに区分けした部分が巻線部21a乃至21dとして示されている。
【0039】
図3に示すように、巻線部11a乃至11dは、巻線部21a乃至21dとは極性が反対となるように巻かれる。巻線部11a乃至11d及び巻線部21a乃至21dの各々のインダクタンスは、例えば、1[nF]から10[F]までの範囲内の値に設定される。
【0040】
巻線部11a乃至11dの各々については、抵抗素子12が並列接続されるとともに、各抵抗素子12が直列接続される。巻線部21a乃至21dの各々についても抵抗素子22が並列接続されるとともに、各抵抗素子22が直列接続される。
【0041】
直列の抵抗素子12及び直列の抵抗素子22の各抵抗値は、例えば、1[Ω]から100[Ω]までの範囲内の値に設定される。
【0042】
第一実施形態においては、巻線部同士の検出感度が互いに同等となるよう、巻線部11a乃至11dの各インダクタンスがそれぞれ同等に設定され、同様に、巻線部21a乃至21dの各インダクタンスもそれぞれ同等に設定される。
【0043】
さらに抵抗素子12及び22についても、巻線部同士の検出感度が互いに同等となるよう、四つの抵抗素子12の各抵抗値がそれぞれ同等に設定され、同様に、四つの抵抗素子22の各抵抗値もそれぞれ同等に設定される。
【0044】
また、一対の巻線11及び21の線対称性を確保するために、巻線部11a乃至11dと巻線部21a乃至21dのインダクタンスは同等に設定され、抵抗素子12と抵抗素子22の抵抗値は同等に設定される。
【0045】
なお、第1実施形態では、巻線11において四つの抵抗素子12が並列接続されているが、これに限られるものではない。例えば、巻線11において二つ、三つ又は五つ以上の抵抗素子12が並列接続されてもよい。巻線21についても同様である。
【0046】
続いて、電流センサ100の動作について説明する。
【0047】
図2に示すように、電流センサ100は、一対の巻線11及び21が、両者の線対称性が向上するように、上面視において磁気コア10が二等分されるよう対向して配置される。第一実施形態では、一対の半円状の巻線11及び21が互いに対向するように配置されている。これにより、巻線11及び巻線21による測定磁束の検出感度が互いに同程度になる。
【0048】
また、電流センサ100は、一対の巻線11及び21が、それぞれカレントトランスとして機能する。すなわち、一対の巻線11及び21は、図1に示す測定電流Imによって磁気コア10に発生する測定磁束をそれぞれ電流に変換する。
【0049】
また、電流センサ100は、複数の抵抗素子12が、直列接続された直列のインピーダンス素子である。複数の抵抗素子12は、それぞれ並列接続された巻線11の巻線部11a乃至11dに流れる誘導電流を電圧に変換する負荷抵抗として機能する。また、複数の抵抗素子12は、巻線11のインダクタンスと巻線11に寄生する容量との共振に起因する周波数特性の悪化を抑制するためのダンピング抵抗として機能する。複数の抵抗素子22についても同様である。
【0050】
図4は、電流センサ100に生じる電流及び磁束を説明するための図である。
【0051】
外部磁束等によって1ターンループの一部を構成する巻線11に流れる電流が1ターンループの他の一部を構成する巻線21に流れることで外部磁束等と逆方向の磁束が発生し、外部磁束等の同相成分の少なくとも一部を打ち消す。さらに、外部磁束等によって1ターンループの一部を構成する戻り線13に流れる電流が1ターンループの他の一部を構成する戻り線23に流れることで外部磁束等と逆方向の磁束が発生し、外部磁束等の同相成分の少なくとも一部を打ち消す。
【0052】
また、磁気コア10に測定対象Lmが挿通された状態において、測定対象Lmに流れる測定電流Imによって磁気コア10に測定磁束φmが発生する。測定磁束φmの発生により一対の巻線11及び21の各々には測定磁束φmに比例する誘導電流が流れる。
【0053】
以下では、一対の巻線11及び21に流れる誘導電流のうち主に磁気コア10のトロイダル方向の電流成分によって作られる磁束のことを「寄生磁束」と称する。また、一対の戻り線13及び23に流れる電流によって作られる磁束のことも「寄生磁束」と称する。これらの寄生磁束は、環状の磁気コア10の中心方向、すなわち測定対象Lmの挿通方向に発生する。また、本明細書において、外部磁束等には、寄生磁束が含まれる。
【0054】
そして、巻線11に流れる誘導電流のうち磁気コア10のトロイダル方向の電流成分Ip1により、測定対象Lmの挿通方向に寄生磁束φp1が発生する。同様に、巻線21に流れるトロイダル方向の電流成分Ip2により、測定対象Lmの挿通方向に寄生磁束φp2が発生する。
【0055】
このとき、巻線11に流れる上記電流成分Ip1により、巻線21に起因する寄生磁束φp2を打ち消すように巻線11に起因する寄生磁束φp1が発生する。同様に、巻線11の戻り線13に流れる電流Ir1により、戻り線23に起因する寄生磁束φr2を打ち消すように戻り線13に起因する寄生磁束φr1が発生する。
【0056】
このように、一対の巻線11及び21を配設することにより、一対の巻線11及び21に起因する寄生磁束φp1及びφp2が互いに打ち消すように作用する。これに加え、一対の戻り線13及び23を配設することにより、一対の戻り線13及び23によって作られた寄生磁束φr1及びφr2が、互いに打ち消すように作用する。
【0057】
このような構成であっても、一対の巻線11及び21の配置のズレ、一対の戻り線13及び23の配置のズレ、又は、一対の巻線11及び21同士の巻き数の違いによる外部磁束等の検出感度及び寄生容量の違い等により、寄生磁束φp1及びφp2同士を打ち消すことができない場合がある。
【0058】
上述のように打ち消すことができなかった寄生磁束φp1及びφp2の残留磁束は、コモンモードノイズとして一対の巻線11及び21において検出される。
【0059】
具体的には、巻線11の両端(1a及び1b)には、測定磁束φmに起因するプラスの電圧(+Vm)に残留磁束に起因するプラスの電圧ΔVnがコモンモードノイズとして重畳される。一方、巻線11の一端1aから巻線11の他端1bへの方向と巻線21の一端2aから巻線21の他端2bへの方向が、磁気コア10のトロイダル方向において互いに逆方向になるように巻かれているため、巻線21の両端(2a及び2b)には、測定磁束φmに起因するマイナスの電圧(-Vm)に残留磁束に起因するプラスの電圧ΔVnがコモンモードノイズとして重畳される。
【0060】
そして、差分回路30において、巻線11に生じる電圧(Vm+ΔVn)と、巻線21に生じる電圧(-Vm+ΔVn)との差分を取ることにより、測定磁束φmに起因する電圧が増幅されるとともに、残留磁束に起因する電圧ΔVnが打ち消される。
【0061】
このため、差分回路30は、一対の巻線11及び21のトロイダル方向の電流成分Ip1及びIp2によって作られた寄生磁束φp1及びφp2の残留磁束に起因するノイズの同相成分を除去した出力信号Voutを出力する。
【0062】
また、一対の巻線11及び21同士の巻き数を同一に設定したとしても、実際には、巻線11と巻線21とでは検出感度や寄生容量などにズレ(個体差)が生じてしまう。このような巻線11及び21自体の検出感度や寄生容量のズレによって直接的に生じるノイズの同相成分についても同様に差分回路30によって除去することができる。このため、差分回路30は、上述の残留磁束に起因するノイズの同相成分に加え、巻線自体の検出感度や寄生容量などの個体差によって直接的に生じるノイズの同相成分も除去した出力信号Voutを出力する。
【0063】
次に、電流センサ100の出力誤差について図5を参照して説明する。
【0064】
図5には、実測された出力誤差に対する周波数特性が示されており、縦軸が振幅のゲイン誤差を示し、横軸が周波数を示す。
【0065】
図5に示す例では、電流センサ100の出力信号Voutについてのゲイン誤差の周波数特性が実線で示され、巻線11の出力におけるゲイン誤差の周波数特性が点線で示され、巻線21の出力におけるゲイン誤差の周波数特性が破線で示されている。
【0066】
図5に示すように、40[MHz]よりも高い周波数帯域において、巻線11の出力におけるゲイン誤差はプラス側に増加しているのに対し、巻線21の出力におけるゲイン誤差はマイナス側に増加している。ゲイン誤差が増加する理由は、外部から侵入する磁界や電磁波などの外部磁束、及び上述の残留している寄生磁束に起因する。
【0067】
また、一対の巻線11及び21は互いに逆方向に巻かれており、ゲイン誤差が増加する向きも反対であることから、上記ノイズは、コモンモードノイズが支配的であることが読み取れる。
【0068】
したがって、第一実施形態では、差分回路30として差動増幅回路を採用することによりコモンモードノイズが低減される。それゆえ、電流センサ100は、一対の戻り線13及び23で打ち消しきれなかった外部磁束等による出力信号Voutへの影響を抑制することができる。
【0069】
なお、図5では電流センサ100の出力誤差の一例としてゲイン誤差の周波数特性を示したが、電流センサ100における位相誤差の周波数特性についても同様に、高周波帯域において位相誤差の増加が抑制される。
【0070】
次に、第一実施形態による作用効果について説明する。
【0071】
第一実施形態では、電流センサ100は、環状の磁気コア10と、直列に接続された複数の巻線部11a乃至11d及び21a乃至21dで構成された一対の巻線11及び21と、巻線ごとに、巻線における巻線部ごとにそれぞれ並列接続される複数の抵抗素子12及び22と、を含む。一対の巻線11及び21は、磁気コア10の互いに異なる部分にトロイダル方向に沿ってポロイダル方向に巻かれて測定対象Lmに流れる電流を出力する。なお、一対の巻線11及び21のうち、巻線11は第一巻線を構成し、巻線21は第二巻線を構成する。
【0072】
さらに、電流センサ100は、巻線ごとに、磁気コア10における当該巻線が巻かれた部分のトロイダル方向に沿って当該巻線の一端から他端に向かって戻る一対の戻り線13及び23を含む。具体的には、戻り線13は、一端が第一巻線としての巻線11の一端1aに接続されると共に、他端1cが磁気コア10における巻線11が巻かれた第一磁気コア部10aのトロイダル方向に沿って巻線11の一端1aから巻線11の他端1bの位置の近傍まで延びる第一戻り線を構成する。また、戻り線23は、一端が第二巻線としての巻線21の一端2aに接続されると共に、他端2cが磁気コア10における巻線21が巻かれた第二磁気コア部10bのトロイダル方向に沿って巻線21の一端2aから巻線21の他端2bの位置の近傍まで延びる第二戻り線を構成する。
【0073】
そして、電流センサ100は、第一巻線及び第一戻り線としての巻線11及び戻り線13の出力と、第二巻線及び第二戻り線としての巻線21及び戻り線23の出力と、の差分を示す信号を出力する。
【0074】
この構成によれば、図2に示すように、第一実施形態の電流センサ100は、一対の巻線11及び21がそれぞれ磁気コア10の互いに異なる第一磁気コア部10a及び第二磁気コア部10bに巻かれるので、巻線11及び21の各々の寄生容量の増加が抑えられる。これにより、各巻線11及び21の振幅及び位相の周波数特性において寄生容量の増加に起因する平坦性の悪化が抑制される。
【0075】
また、電流センサ100は、複数の抵抗素子12及び22を一対の巻線11及び21のそれぞれの巻線部に並列接続したことによって、各巻線部とその寄生容量とで構成される複数の回路が直列に形成される。
【0076】
上記回路における巻線部のインダクタンス及び寄生容量のキャパシタンスは、各巻線11及び21全体のインダクタンス及びその寄生容量のキャパシタンスに比べて共に小さい。このため、一対の巻線11及び21とその寄生容量とにより定まる共振周波数は、直列の抵抗素子を有しない巻線の共振周波数に比べて十分に高くなる。それゆえ、高周波帯域において電流センサ100の振幅及び位相に対する周波数特性の平坦性が向上する。
【0077】
また、巻線部11a乃至11dと巻線部21a乃至21dのインダクタンスは同等に設定され、抵抗素子12と抵抗素子22の抵抗値は同等に設定される。このように線対称な構造をとることにより、環状の磁気コア10に挿通される測定対象Lmの導体位置のズレに伴って測定精度が低下することが抑制される。
【0078】
これに加え、電流センサ100は、巻線11及び戻り線13からの磁気と巻線21及び戻り線23からの磁気との差分を示す信号を出力する。第一実施形態では、電流センサ100の出力信号Voutに、巻線11及び戻り線13に生じる磁気と巻線21及び戻り線23に生じる磁気との差分を示す信号が含まれる。
【0079】
具体的には、電流センサ100に関しては、一対の巻線11及び21は、巻線11の一端から巻線11の他端への方向と、巻線21の一端から巻線21の他端への方向とが、磁気コア10のトロイダル方向において互いに逆方向になるように巻かれ、かつ、一対の巻線11及び12は、磁気コア10のポロイダル方向において互いに逆方向に巻かれる。
【0080】
これと共に、戻り線13の一端1aが巻線11の一端1aに接続された戻り線13を磁気コア10の周(トロイダル方向)に沿わせながら戻り線13の他端1bを巻線11の他端1bの位置の近傍まで延ばし、戻り線23の一端が巻線21の一端2aに接続された戻り線23を戻り線13とは逆方向に磁気コア10の周(トロイダル方向)に沿わせながら戻り線23の他端2cを巻線21の他端2bの位置の近傍まで延ばす。そして、戻り線23の他端2cと巻線11の他端1bとが接続される。
【0081】
この構成により、外部磁束等によって1ターンループの一部を構成する巻線11に流れる電流が1ターンループの他の一部(残部)を構成する巻線21に流れることで外部磁束等と逆方向の磁束が発生し、外部磁束等の同相成分の少なくとも一部を打ち消す。さらに、外部磁束等によって1ターンループの一部を構成する戻り線13に流れる電流が1ターンループの他の一部を構成する戻り線23に流れることで外部磁束等と逆方向の磁束が発生し、外部磁束等の同相成分の少なくとも一部を打ち消す。
【0082】
このため、電流センサ100は、測定電流Imを検出するにあたり、外部磁束等に起因するノイズを低減することができる結果、電流検出精度を上げることができる。
【0083】
また、電流センサ100において、一対の戻り線13及び23は、磁気コア10のトロイダル方向に沿って互いに逆方向に延在する。すなわち、一対の戻り線13及び23は、一対の戻り線13及び23の一端1a及び2a同士が隣接するように配線される。
【0084】
この構成によれば、一対の戻り線13及び23の他端1c及び2c同士が近接しやすくなるので、一対の戻り線13及び23の差分回路30に対する配線が短くなり、配線の引き回しが設計しやすくなる。
【0085】
また、電流センサ100は、巻線11の巻数と巻線21の巻数を同等にしている。
【0086】
この構成によれば、巻線11と巻線21が検出する外部磁束等が同等になるので、さらに外部磁束等に起因するノイズを低減することができる。
【0087】
また、電流センサ100は、巻線11が巻かれている部分の磁気コア10の周方向の長さと、巻線21が巻かれている部分の磁気コア10の周方向の長さを同等にしている。
【0088】
この構成によれば、戻り線13の長さと戻り線23の長さが同等になることから、戻り線13と戻り線23が検出する外部磁束等が同等になるので、さらに外部磁束等に起因するノイズを低減することができる。
【0089】
また、電流センサ100は、一対の戻り線13及び23の一端1a及び2aとなる一対の巻線11及び21の一端1a及び2a同士が互いに隣接するよう一対の巻線11及び21が磁気コア10に配置される。
【0090】
この構成によれば、一対の巻線11及び21の他端1b及び2b同士が隣接することになるので、一対の巻線の他端1b及び2bに向かって延びる一対の戻り線13及び23の他端1c及び2c間の距離も接近する。
【0091】
これにより、一対の戻り線13及び23を差分回路30の一対の入力端子へ引き回すための距離を短くすることが可能となる。このため、一対の戻り線13及び23の引き回しに伴って引回し線にノイズが混入するのを抑制することができる。
【0092】
また、電流センサ100は、一対の戻り線13及び23を通じてそれぞれ一対の巻線11及び21から出力される電気信号の差分を含む出力信号Voutを出力する差分回路30を備えている。
【0093】
すなわち、電流センサ100は、巻線11及び戻り線13と巻線21及び戻り線23との双方からの電気信号の差分を示す信号を出力する差分回路30を含み、差分回路30の出力は、双方からの出力の差分を示す。このように、電流センサ100は、巻線11及び戻り線13からの電気信号と巻線21及び戻り線23からの電気信号との差分を示す信号を出力する。
【0094】
具体的には、電流センサ100においては、一対の巻線11及び21が、磁気コア10のトロイダル方向において互いに逆方向に巻かれる。そして、一対の巻線に含まれる巻線11の一端1aから延びる戻り線13の他端1cは、差分回路30の第一入力端子としての反転入力端子(-)に接続され、巻線21の他端2bは、差分回路30の第二入力端子としての非反転入力端子(+)に接続される。また、巻線21の一端2aから延びる戻り線23の他端2cと巻線11の他端1bとは、それぞれ基準電位Gに接続される。
【0095】
この構成によれば、一対の戻り線13及び23によって外部磁束等を打ち消すとともに、打ち消しきれない外部磁束等に起因するノイズの同相成分を差分回路30によって取り除くことができる。具体的には、差分回路30での差動増幅により、一対の巻線11及び21の出力信号のうち、測定電流Imに比例する信号のレベルが上昇し、ノイズ電圧のレベルが低下する。その結果、電流センサ100の電流検出精度を上げることができる。
【0096】
このように、電流センサ100においては、第一巻線及び第一戻り線としての巻線11及び戻り線13に生じる磁気と、第二巻線及び第二戻り線としての巻線21及び戻り線23に生じる磁気と、の差分を取るために双方の出力が差分回路30に入力される。そして差分回路30により、双方に生じる磁気の差分に加えて双方からの電気信号の差分を含む出力信号Voutが生成される。
【0097】
それゆえ、電流センサ100の出力信号Voutには、外部磁束等を打ち消すために配設された戻り線13及び23を含む一対の構成に生じる磁気の差分と、一対の戻り線13及び23では打ち消しきれない外部磁束等に起因するノイズの同相成分を取り除くために備えられた差分回路30によって得られる一対の構成から出力される電気信号の差分と、が含まれている。すなわち、第一巻線及び第一戻り線の出力と第二巻線及び第二戻り線の出力との差分には、磁気の差分及び電気信号の差分が含まれている。
【0098】
このため、上記の構成により、一対の巻線11及び21により生じる外部磁束等を一対の戻り線13及び23によって打ち消すとともに、打ち消しきれない外部磁束等に起因するノイズの同相成分を差分回路30によって抑制することができる。したがって、電流センサ100の電流検出精度を上げることができる。
【0099】
また、電流センサ100は、複数の抵抗素子12及び22の抵抗値が、それぞれ同等である。
【0100】
この構成によれば、抵抗素子12ごとに並列接続された巻線部と、抵抗素子22ごとに並列接続された巻線部とが、それぞれ同等の検出感度になる。このため、磁気コア10に挿通された測定対象Lmの位置関係による検出精度の変動を抑制することができる。
【0101】
したがって、検出可能な周波数帯域の上限を高くしつつ、磁気コア10に対しての測定対象Lmの位置ズレに起因する検出精度の低下を抑制することができる。
【0102】
また、第一実施形態の測定装置1は、上記の電流センサ100と、電流センサにより検出される検出量に基づいて測定対象Lmについての測定量を演算する測定部200と、を含む。
【0103】
この構成によれば、電流センサ100の出力信号に基づいて測定対象Lmの測定量が演算されるので、一対の戻り線13及び23と差分回路30とを有しない電流センサを備える一般的な測定装置に比べて測定可能な周波数帯域の上限を高くすることができる。それゆえ、より高い周波数帯域において測定対象Lmを精度よく測定することができる。
【0104】
(第二実施形態)
図6は、第二実施形態の電流センサ101の構成を示す図である。第二実施形態では、差分回路30と一対の巻線11及び21などの他の構成との間の距離が離れていることを想定している。
【0105】
電流センサ101は、第一実施形態の電流センサ100の構成に加えて、一対の伝送路14及び24と、一対の抵抗素子15及び25と、を備えている。ここでは、第二実施形態の電流センサ101のうち図2に示した電流センサ100と同一又は同等の構成については、電流センサ100の構成に付された符号と同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0106】
一対の伝送路14及び24は、差分回路30に一対の巻線11及び21の出力信号を伝送するための伝送路である。一対の伝送路14及び24は、例えば同軸伝送路であり、具体例として、特性インピーダンスが50[Ω]又は75[Ω]である同軸ケーブルにより実現される。
【0107】
各伝送路14及び24は、内部導体と、外部導体と、これらの間に配設される絶縁体と、によって構成される。
【0108】
伝送路14においては、内部導体の入力端が戻り線13の他端1cに接続されるとともに外部導体の入力端が基準電位Gと巻線11の他端1bとに接続される。伝送路24においては、内部導体の入力端が巻線21の他端2bに接続されるとともに外部導体の入力端が基準電位Gと戻り線23の他端2cとに接続される。
【0109】
一対の抵抗素子15及び25は、一対の伝送路14及び24の特性インピーダンスに相当する終端抵抗でインピーダンス整合を行う機能を有する。一対の抵抗素子15及び25は、例えば50[Ω]又は75[Ω]の抵抗素子を接続する。
【0110】
抵抗素子15の一端は、伝送路14の内部導体の出力端と差分回路30の反転入力端子(-)とに接続される。抵抗素子15の他端は、基準電位Gと伝送路14の外部導体の出力端とに接続される。
【0111】
抵抗素子25の一端は、伝送路24の内部導体の出力端と差分回路30の非反転入力端子(+)とに接続される。抵抗素子25の他端は、基準電位Gと伝送路24の外部導体の出力端とに接続される。
【0112】
このような構成においては、巻線11に並列接続された四つの抵抗素子12の各抵抗値の総和は、伝送路14の特性インピーダンスに対して同等となるように設定される。同様に、巻線21に並列接続された四つの抵抗素子22の各抵抗値の総和は、伝送路14の特性インピーダンスに対して同等となるように設定される。
【0113】
次に、第二実施形態による作用効果について説明する。
【0114】
第二実施形態の電流センサ101は、第一実施形態の電流センサ100と同等の構成を備えており、第一実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0115】
これに加え、電流センサ101は、差分回路30に巻線11及び戻り線13の出力と巻線21及び戻り線23の出力をそれぞれ伝送するための一対の伝送路として、差分回路30に巻線11及び21の出力信号を伝送するための伝送路14及び24を含む。そして少なくとも一方の巻線11又は21に並列接続された直列の抵抗素子12又は22の各抵抗値の総和は、少なくとも一方の巻線11又は21に対応する伝送路14又は24の特性インピーダンスに対して同程度である。
【0116】
この構成によれば、伝送路14又は24の特性インピーダンスと、直列の抵抗素子12又は22の抵抗値の総和とが同等となるため、巻線11又は21の出力信号が伝送路14又は24の一端で反射するのを抑制することができる。これにより、伝送路14又は24での反射に起因する検出誤差を低減することができる。
【0117】
また、第二実施形態では、電流センサ101内に差分回路30を配置した例について説明したが、図1に示した測定部200に差分回路30が配置されてもよい。この場合、図1に示したケーブル110には、図6に示した一対の伝送路14及び24が備えられる。
【0118】
(第三実施形態)
図7は、第三実施形態の電流センサ102の構成を示す図である。
【0119】
第三実施形態の電流センサ102は、第二実施形態の電流センサ101の構成に加えて、インピーダンス調整回路40を備えている。ここでは、第三実施形態の電流センサ102のうち図6に示した電流センサ101と同等の構成については、同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0120】
インピーダンス調整回路40は、伝送路14の入力端から見たインピーダンスを伝送路14の特性インピーダンスに調整する。さらにインピーダンス調整回路40は、伝送路24の入力端から見たインピーダンスを伝送路24の特性インピーダンスに調整する。このように、インピーダンス調整回路40は、一対の伝送路14及び24の少なくとも一方の入力端から見たインピーダンスを、少なくとも一方の伝送路の特性インピーダンスにそれぞれ調整する。
【0121】
続いて、第三実施形態による作用効果について説明する。
【0122】
第三実施形態の電流センサ102は、第二実施形態の電流センサ101と同等の構成を備えており、第二実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0123】
これに加え、第二実施形態においては、電流センサ102が、伝送路14又は24の入力端から見たインピーダンスを伝送路14又は24の特性インピーダンスに調整するインピーダンス調整回路40を備える。伝送路14又は24は、差分回路30に巻線11及び戻り線13の出力と巻線21及び戻り線23の出力とをそれぞれ伝送するための一対の伝送路を構成する。
【0124】
この構成によれば、電流センサ102は、インピーダンス調整回路40において、伝送路14又は24の入力端から見たインピーダンスと、伝送路14又は24の特性インピーダンスとを同等に調整することが可能となる。
【0125】
このため、巻線11又は21に並列接続される直列の抵抗素子12又は22の抵抗値の総和を伝送路14又は24の特性インピーダンスと同等にしなくとも、巻線11又は21の出力信号が伝送路14又は24の一端で反射するのを抑制することができる。これにより、伝送路14又は24での反射に起因する検出誤差を低減することができる。
【0126】
(第四実施形態)
次に、第四実施形態の電流センサについて図8及び図9を参照して説明する。
【0127】
図8は、第四実施形態の電流センサ103の構成を示す図である。図9は、図8に示した電流センサ103の等価回路を例示する回路図である。
【0128】
図8に示すように、電流センサ103は、第一実施形態の電流センサ100を構成する一対の巻線11及び21と差分回路30とに代えて、一対の巻線111及び112と差分回路30Aを備えている。他の構成については、図2に示した電流センサ100の構成と同じであるため、同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0129】
一対の巻線111及び112は、磁気コア10のトロイダル方向において互いに同じ向きに巻かれる。一対の巻線111及び112の他端1b及び2bは、それぞれ基準電位Gに接続される。
【0130】
巻線111の一端1aは、戻り線13の一端であり、巻線112の一端2aは、戻り線23の一端である。そして巻線111の他端1bは、巻線112の他端2bに接続される。一対の戻り線13及び23の他端1c及び2cは、それぞれ差分回路30Aの反転入力端子(-)及び非反転入力端子(+)に接続される。
【0131】
図9に示すように、巻線111を区分けした巻線部111a乃至111dは、図3に示した巻線部111a乃至111dに対応する。巻線部111a乃至111dの各々については、抵抗素子12が並列接続されるとともに、各抵抗素子12が直列接続される。
【0132】
巻線112を区分けした巻線部112a乃至112dは、図3に示した巻線部112a乃至112dに対応する。巻線部112a乃至112dの各々についても、抵抗素子22が並列接続されるとともに、各抵抗素子22が直列接続される。
【0133】
差分回路30Aは、図2に示した差分回路30に対応する。差分回路30Aは、一対の巻線111及び112からそれぞれ一対の戻り線13及び23を通じて出力される電気信号の差分の大きさに比例する出力信号Voutを生成して出力する。
【0134】
続いて、第四実施形態による作用効果について説明する。
【0135】
第四実施形態の電流センサ103においては、一対の巻線111及び112は、磁気コア10のトロイダル方向において互いに同じ向きに巻かれる。また、巻線111及び112は、同じポロイダル方向に巻かれる。そして、一対の戻り線13及び23の他端1c及び2cは、それぞれ差分回路30Aの第一入力端子としての反転入力端子(-)及び第二入力端子としての非反転入力端子(+)に接続される。また、一対の巻線111及び112の他端1b及び2bは、それぞれ基準電位Gに接続される。
【0136】
すなわち、電流センサ103は、測定電流Imを検出する一対の巻線111及び112と、一巻線ごとに当該巻線の複数の部位にそれぞれ並列接続される複数の抵抗素子12及び22と、を備える。一対の巻線111及び112は、磁気コア10の互いに異なる部分にトロイダル方向に巻かれる。そして複数の抵抗素子12は、直列接続され、同様に複数の抵抗素子22も、直列接続される。
【0137】
さらに電流センサ103は、出力信号Voutを巻線111及び戻り線13と巻線112及び戻り線13とから出力される電気信号の差分を示す信号として出力する差分回路30Aを備える。そして一対の戻り線13及び23は、それぞれ磁気コア10の巻線111及び112が巻かれた部分のトロイダル方向に沿って巻線111及び112の一端1a及び2aから他端1b及び2bに向かって戻る。
【0138】
そして、電流センサ103は、第一実施形態とは異なり、一対の巻線111及び112が互いに同一のポロイダル方向に巻かれ、戻り線13を通る電流と戻り線23を通る電流との差分を示す信号を差分回路30Aによって出力する。
【0139】
この構成により、電流センサ103は、巻線111及び戻り線13を通じて出力される外部磁束等によるノイズを、巻線111及び戻り線23を通じて出力される外部磁束等によるノイズによってノイズの同相成分の少なくとも一部を打ち消す。また、電流センサ103は、1ターンループの一部を構成する巻線111が1ターンループの他の一部(残部)を構成する巻線112による外部磁束等の逆相成分の少なくとも一部を打ち消し、1ターンループの一部を構成する戻り線13が1ターンループの他の一部を構成する戻り線23による外部磁束等の逆相成分の少なくとも一部を打ち消す。
【0140】
このため、電流センサ103は、測定電流Imを検出するにあたり、外部磁束等に起因するノイズを低減することができる結果、電流検出精度を上げることができる。
【0141】
また、一対の巻線111及び112が互いに同一の方向に巻かれるため、第一実施形態の一対の巻線11及び21に比べて簡易に一対の巻線111及び112を構成することができる。また、一対の戻り線13及び23から差分回路30Aへの配線が容易となる。
【0142】
(第五実施形態)
図10は、第五実施形態の電流センサ104の構成を示す図である。
【0143】
電流センサ104は、ゼロフラックス方式を採用する電流センサであり、高周波帯域の電流に加えて、高周波帯域よりも低く且つ直流を含む低周波帯域の電流を検出することが可能である。
【0144】
電流センサ104は、第一実施形態の電流センサ100の構成に加え、磁気検出素子50と、一対の帰還回路51及び52と、それぞれ並列接続される各巻線部と抵抗素子12,22との間の容量素子60乃至67と、を備えている。図10では、便宜上、追加の構成が、接続関係が理解しやすいように概念的に示されている。他の構成については、図2に示した電流センサ100の構成と同じであるため、同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0145】
磁気検出素子50は、磁気コア10に取り付けられ、磁気コア10内に発生する磁束を検出する。磁気検出素子50は、例えば、磁気コア10に内蔵されるフラックスゲート、磁気コア10に設けられた間隙に挿入されるホール素子、又は、磁気コア10に巻かれる検出巻線などによって実現される。
【0146】
第五実施形態の磁気検出素子50は、磁気コア10の間隙に形成されるフラックスゲートである。磁気検出素子50は、検出した磁束の大きさに振幅が比例する検出信号を一対の帰還回路51及び52に出力する。
【0147】
一対の帰還回路51及び52は、磁気検出素子50により検出される磁束に基づいて、その磁束を相殺するように磁気コア10を励磁するための信号を一対の巻線11及び21に供給する供給回路を構成する。
【0148】
帰還回路51は、磁気検出素子50から出力される出力信号を増幅し、増幅した出力信号を巻線11の他端1bに供給する。すなわち、帰還回路51は、測定電流Imによって作られた測定磁束を相殺するよう、磁気コア10の第一磁気コア部10aを励磁するための信号を巻線11の他端1bに供給する。
【0149】
これにより、低周波帯域において、磁気コア10のうち巻線11に巻かれた第一磁気コア部10aには、測定電流Imによって作られる測定磁束とは反対方向の磁束が生じる。このため、低周波帯域において磁気コア10の第一磁気コア部10aではゼロフラックス状態となる。
【0150】
帰還回路52は、磁気検出素子50から出力される検出信号の位相を反転して増幅し、反転増幅した出力信号を巻線21の一端2aに供給する。すなわち、帰還回路52は、測定電流Imによって作られた測定磁束を相殺するよう、磁気コア10の第二磁気コア部10bを励磁するための信号を巻線21の一端2aに供給する。
【0151】
これにより、磁気コア10のうち巻線21に巻かれた第二磁気コア部10bには、測定電流Imによって作られた測定磁束と反対方向の磁束が生じる。このため、低周波帯域において磁気コア10の第二磁気コア部10bではゼロフラックス状態となる。
【0152】
複数の容量素子60乃至67は、直流から低周波帯域までの信号成分を遮断する受動素子である。
【0153】
容量素子60は、直列接続された複数の抵抗素子12の一端1dと複数の巻線部で構成される巻線11の他端1bとの間を接続し、容量素子61乃至63は、それぞれ、複数の抵抗素子12のうち互いに隣接する抵抗素子間の接続点と巻線11のうちそれに対応する巻線部間の区分け点との間を接続する。区分け点は、容量素子の一端が接続される接続点に相当する。
【0154】
容量素子64は、直列接続された複数の抵抗素子22の一端2dと複数の巻線部で構成される巻線21の一端2aとの間を接続し、容量素子65乃至67は、それぞれ、複数の抵抗素子22のうち互いに隣接する抵抗素子間の接続点と巻線21のうちそれに対応する巻線部間の区分け点との間を接続する。
【0155】
すなわち、複数の抵抗素子12のうち隣接する抵抗素子間の接続点と巻線11の巻線部との間、及び、複数の抵抗素子12のうち隣接する抵抗素子間の接続点と巻線21の互いに隣接する巻線部間の接続点との間は、それぞれ、容量素子61乃至63,65乃至67を介して接続される。さらに、供給回路を構成する帰還回路51及び52の各出力端と当該各出力の接続先である抵抗素子の接続端(1b及び2a)との間は、それぞれ、容量素子60及び64を介して接続される。
【0156】
このように、複数の容量素子60乃至67は、複数の抵抗素子12のうち隣接する抵抗素子間の接続点と巻線11,21の互いに隣接する巻線部間の接続点との間、及び、供給回路の各出力端と当該各出力端に繋がる抵抗素子の接続端(1b及び2a)との間に、それぞれ接続される。
【0157】
容量素子60乃至67により、帰還回路51及び52から巻線11及び12に出力される直流信号の一部が抵抗素子12及び22を通じて基準電位Gに戻ってしまうことを回避できる。
【0158】
このように、電流センサ104は、磁気検出素子50と一対の帰還回路51及び52とを追加することにより、ゼロフラック方式で低周波帯域の電流を検出することが可能となる。
【0159】
なお、第五実施形態ではゼロフラックス方式による電流検出を行うために図2に示した電流センサ100の構成に磁気検出素子50を追加する例について説明したが、これに限らず、図8に示した電流センサ103の構成に磁気検出素子50を追加してもよい。
【0160】
この場合、一対の帰還回路51及び52の代わりに、磁気検出素子50の検出信号に基づいて上記の測定磁束と反対方向の磁束を励磁するための信号を図8に示した一対の巻線111及び112の他端1b及び2bに供給する供給回路が追加される。
【0161】
続いて、第五実施形態による作用効果について説明する。
【0162】
第五実施形態の電流センサ104は、第一実施形態の電流センサ101と同等の構成を備えており、第一実施形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、電流センサ104は、電流検出可能な高周波帯域の上限を高くすることができる。
【0163】
これに加え、電流センサ104は、磁気コア10に発生する磁束を検出する磁気検出素子50を備える。さらに電流センサ104は、磁気検出素子50により検出される磁束に基づいて当該磁束を相殺するように磁気コア10を励磁するための信号を一対の巻線11及び21に供給する供給回路として一対の帰還回路51及び52を備える。
【0164】
この構成によれば、ゼロフラックス方式での電流検出が可能になるので、低周波帯域の下限を直流まで低くすることができる。このため、電流センサ104の電流検出可能な低周波帯域の下限を低くしつつ、高周波帯域の上限を高くすることができる。
【0165】
(第六実施形態)
図11は、第六実施形態の電流センサ105の構成を示す図である。
【0166】
電流センサ105は、図2に示した第一実施形態の電流センサ100の構成から差分回路30を削除した構成である。図2に示した電流センサ100の構成と同じ構成は、同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0167】
第六実施形態において、一対の巻線11及び21は、巻線11の一端1aから他端1bへの方向と、巻線21の一端2aから他端2bへの方向とが、磁気コア10のトロイダル方向において互いに逆方向になるように巻かれ、かつ磁気コア10のポロイダル方向において互いに逆方向になるように巻かれる。そして、戻り線23の他端2cは、基準電位Gに接続されることなく巻線11の他端1bに接続され、巻線21の他端2bは、基準電位Gに接続される。
【0168】
このため、戻り線13の他端1cから出力される信号は、巻線11及び戻り線13に生じる磁気と巻線21及び戻り線23に生じる磁気との差分を示す信号であり、電流センサ105の出力信号Voutとして測定部200に出力される。
【0169】
したがって、第六実施形態の電流センサ105は、第一実施形態において差分回路30が配置されることによる作用効果を除いては、第一実施形態と同じ作用効果を奏する。特に、第六実施形態の電流センサ105は、戻り線23の他端2cと巻線11の他端1bとが接続される構成を採ることにより、巻線11及び戻り線13の出力と巻線21及び戻り線23の出力の差分として、巻線11及び戻り線13に生じる磁気と巻線21及び戻り線23に生じる磁気との差分を示す出力信号Voutを出力する。この構成により、電流センサ105は、電流検出可能な高周波帯域の上限を高くすることができる。
【0170】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0171】
上記実施形態では一対の巻線11及び21並びに一対の戻り線13及び23からなる一対の配線(11及び13、21及び23)が共に磁気コア10の径方向において線対称に構成されているが、双方の寄生磁束を相殺するように構成されるものでもよい。すなわち、一対の巻線及び一対の戻り線は実質的に線対称に構成されるものであってもよい。
【0172】
上記実施形態では、巻線11及び巻線21によって磁気コア10のトロイダル方向の全ての部分が巻かれる例について説明したが、これに限られず、巻線11及び巻線21が磁気コア10のトロイダル方向の一部分に巻かれるものであってもよい。また、巻線11及び巻線21に加えて、同様の働きをする他の一つ又は複数の一対の巻線が磁気コア10のトロイダル方向に巻かれるものであってもよい。
【0173】
例えば、上記実施形態では半円状の二つの巻線が対向するように磁気コア10に巻かれる例について説明したが、これに限られず、磁気コア10の半円部分を二等分するように一対の巻線が巻かれてもよい。
【0174】
上記実施形態では、一対の戻り線13及び23が磁気コア10のトロイダル方向に沿って互いに逆方向に延在するような構成を採用したが、これに代えて、一対の戻り線13及び23が磁気コア10のトロイダル方向に沿って互いに同一の向きに延在するような構成を採用してもよい。このような構成であっても上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0175】
1 測定装置
1a、2a 巻線の一端、戻り線の一端
1b、2b 巻線の他端
1c、2c 戻り線の他端
10 磁気コア
10a、10b 第一磁気コア部、第二磁気コア部(互いに異なる部分)
11、21、111、112 巻線(第一巻線、第二巻線、一対の巻線)
12、22 抵抗素子
13、23 戻り線
14、24 伝送路
15、25 抵抗素子
30、30A 差分回路
40 インピーダンス調整回路
50 磁気検出素子
51、52 帰還回路(供給回路)
60~67 容量素子
100~104 電流センサ
200 測定部
Lm 測定対象
Im 測定電流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11