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特開2024-87773通信装置と非接触通信可能な電気機械式腕時計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087773
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】通信装置と非接触通信可能な電気機械式腕時計
(51)【国際特許分類】
   H04B 5/26 20240101AFI20240624BHJP
   H04B 5/43 20240101ALI20240624BHJP
   H04B 5/48 20240101ALI20240624BHJP
   G04C 9/00 20060101ALI20240624BHJP
   G04R 60/02 20130101ALI20240624BHJP
   G04R 20/26 20130101ALI20240624BHJP
   G04G 21/04 20130101ALI20240624BHJP
【FI】
H04B5/26
H04B5/43
H04B5/48
G04C9/00 301B
G04R60/02
G04R20/26
G04G21/04
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023194881
(22)【出願日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】22214713.4
(32)【優先日】2022-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】クリステ、 ローラン
(72)【発明者】
【氏名】クロプフェンスタイン、 フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ベルトゥー、 イエルク
【テーマコード(参考)】
2F002
2F101
5K012
【Fターム(参考)】
2F002AB05
2F002AC00
2F002GA06
2F101CA05
2F101CB08
2F101CJ12
5K012AB03
5K012AC06
5K012AC08
5K012AC10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】通信装置と非接触通信可能な電気機械式腕時計を提供する。
【解決手段】ステッピングモータ(2)とモータの制御回路(20)とを備えた電気機械式ムーブメントを備える腕時計(50)及び外部通信装置(100)と非接触通信する手段に関連し、モータのコイル(18)によって形成されたアンテナを備えており、符号化されたデータに従って、振幅変調された磁気信号を受信する。通信手段は、磁気信号の符号化周波数に対応するパルス周波数でモータのコイルに供給される電気検出パルスを生成する。磁気信号を受信したときに発生する複数の電気検出パルスのうちの各電気検出パルスのパラメータ(T)を測定可能な測定回路(32)と、各電気検出パルスについて測定された少なくとも1つのパラメータを処理するための回路(36)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッピングモータ(2)及び前記ステッピングモータの制御回路(20)を備えた電気機械式ムーブメントを備える時計(50)において、
前記ステッピングモータは、固定子の開口部(8)の周囲に2つの峡部(12a、12b)を画定する固定子(4)と、前記開口部の内部に配置される永久磁石(6)を備えた回転子(3)と、コイル(18)とを備えており、
前記制御回路(20)は、前記コイルに供給されかつ前記回転子を回転させる電気駆動パルスを生成することができるように構成され、
前記時計は外部通信装置と非接触通信する通信手段を備え、
前記通信手段は、前記モータの前記コイルにより形成されるアンテナを備え、前記外部通信装置により生成される外部磁界(HExt)により形成され、かつ、値「0」のビットがそのローレベルを規定する弱い又はゼロ強度の外部磁界に対応し、値「1」のビットがそのハイレベルを規定する比較的強い強度の外部磁界に対応するように振幅変調された磁気信号(70)においてビット形式で符号化されたデータを前記外部通信装置から受信することができるように構成され、
前記通信手段は、前記磁気信号に含まれる符号化されたデータを復号することができるように構成されており、
前記通信手段は、前記磁気信号の符号化周波数に実質的に対応するパルス周波数で前記コイルに供給される電気検出パルス(82)を生成することができるように構成されること、及び
前記通信手段は、前記磁気信号における前記符号化されたデータを受信したときに、前記通信手段によって生成される複数の電気検出パルスの各電気検出パルス(82)の少なくとも1つのパラメータ(T)を測定することができるように構成される測定回路(32)と、前記複数の電気検出パルスの各電気検出パルスについて測定された前記少なくとも1つのパラメータを処理する処理回路(36)とを備え、前記電気検出パルスについて測定された前記少なくとも1つのパラメータに応じて、電気検出パルス中の前記外部磁界(HExt)のハイレベル又はローレベルを前記処理回路が決定して、前記磁気信号に含まれる前記符号化されたデータのビットの値を前記処理回路が決定することができるように、前記少なくとも1つのパラメータは選択されかつ前記処理回路は構成されること
を特徴とする、時計(50)。
【請求項2】
前記通信手段は、前記電気検出パルス(82)が生成されたときに、前記回転子(3)が位置する静止位置に対して逆位相で前記コイルに前記電気検出パルスを生成するように構成されており、これにより、前記固定子(4)内を伝搬する前記コイルに生じた磁束(F)が、前記静止位置にある前記回転子の前記永久磁石(6)によって生成されかつ前記2つの峡部を通過する磁束(F)の方向性とは反対の方向性を前記固定子の2つの峡部において有すること
を特徴とする、請求項1に記載の時計。
【請求項3】
測定されたパラメータは、当該の前記電気検出パルス(2)がトリガされた後に、前記処理回路が前記外部磁界(HExt)のローレベルとハイレベルとを区別できるように選択される所定の基準電流(IRef)に前記コイル内の電流(I(t))が達するまでの立ち上がり時間(TM)であること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の時計。
【請求項4】
前記永久磁石(6)は、双極性であり、かつ前記回転子の回転軸(7)に垂直な磁化軸を有し、前記固定子(4)の2つの峡部(12a、12b)は、前記回転軸に垂直な第1の方向(14)に直径方向に対向しており、前記固定子は、前記永久磁石が前記第1の方向(14)からそれぞれ両方の方向性に角度的にオフセットされた第2の方向(16)に向けられた2つの静止位置を有するように構成され、
前記永久磁石は、前記2つの静止位置において、前記2つの峡部をそれぞれ両方の方向性に通過する第1の磁束(F)を生成し、第1の静止位置は、前記第1の磁束の正の方向性に対応し、第2の静止位置は、前記第1の磁束の負の方向性に対応し、
前記コイル(18)は、正又は負の極性を有する電気パルスが供給されたときに、前記正の方向性又は前記負の方向性でそれぞれ前記2つの峡部を通過する第2の磁束(F)を生成することができるように前記固定子に取り付けられ、
前記制御回路は、静止時の回転子の位置を前記第1及び第2の静止位置から決定する手段、及び外部磁界(HExt)を検出する回路(24)を備え、それにより前記通信手段を形成し、
前記通信手段は、
前記電流を測定する測定回路(26)と、
測定された電流と前記基準電流(IRef)とを比較する回路(28)と、
電気検出パルスのトリガから前記コイルを流れる前記電流(I(t))が前記基準電流に達する次の瞬間までに経過した前記立ち上がり時間(T)を測定するように構成される時間測定回路(32)と、
前記立ち上がり時間を処理する回路(36)であって、前記電気検出パルスが所定の極性により生成されたときに、前記2つの峡部を通過する前記第1の磁束(F)が特定の方向性とは逆の方向性を有する静止位置に前記回転子がある間に、前記測定された立ち上がり時間が、前記特定の方向性で前記2つの峡部を通過する前記外部磁界(HExt)のハイレベル又はローレベルを示すかを判定することができるように構成される回路と
を備えることを特徴とする、請求項3に記載の時計。
【請求項5】
前記外部磁界が前記固定子(4)の2つの峡部の整列方向(14)と実質的に直交する略方向に前記固定子の略平面内を伝搬し得るように前記外部通信装置に対して規定された位置に前記時計(50)が瞬間的に配置されている間に、前記外部通信装置(100)からの通信を受信したときに前記回転子がとるべき第1及び第2の静止位置のうちの所定の静止位置に関する情報を記録可能なメモリを備え、
前記通信手段は、通信モードを起動するための信号を受信した後で、通信を受信している間に、前記ステッピングモータ(2)の回転子を前記所定の静止位置に停止又は配置するように、又は、前記回転子が前記所定の静止位置にあるときにのみ、前記通信手段が前記磁気信号における前記符号化されたデータのビット値を決定するように前記磁気信号(70)の受信を管理するように構成されること
を特徴とする、請求項3に記載の時計。
【請求項6】
前記通信手段は、通信モードを起動する信号を受信した後で、前記外部磁界(HExt)が前記固定子の前記2つの峡部の整列方向と実質的に直交する略方向に前記固定子の略平面内を伝搬するときの前記外部磁界の方向性を検出できるように、次に、前記回転子(3)が決定された静止位置にあるときにのみ前記通信手段が前記符号化されたデータのビット値を決定するように、前記符号化されたデータを受信するために又は前記磁気信号(70)の受信を管理するために、前記外部磁界の検出された方向性によって決定される静止位置に前記回転子(3)を停止又は配置することができるように構成されることを特徴とする、請求項3に記載の時計。
【請求項7】
前記通信手段は、前記コイル(18)に供給される複数の電気符号化パルス(62)を生成することにより、前記外部通信装置によって受信するために、前記時計(50)がビット形式で符号化されたメッセージを送信することが可能なように構成され、これにより、対応する複数の磁気符号化パルスが放射され、
前記通信手段は、所定の符号化周波数で符号化された前記符号化されたメッセージにおいて、値「1」のビットごとに電気符号化パルス(62)を生成し、かつ、前記符号化されたメッセージにおいて、値「0」のビットに対しては電気符号化パルスを生成しないように構成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の時計。
【請求項8】
請求項1に記載の時計(50)と外部通信装置(100)との間の非接触通信のための方法において、
前記外部通信装置によって送信された磁気信号(70)におけるビット形式の符号化されたデータを前記時計が受信するために、
前記磁気信号を形成するために前記装置によって放射される外部磁界(HExt)が、主として前記固定子の略平面に平行であって、前記固定子の前記2つの峡部(12a、12b)の整列方向(14)に実質的に直交する方向に前記ステッピングモータの前記固定子内を伝播するように、前記外部通信装置に対して前記時計を位置決めするステップと、
前記時計の通信手段により、通信モードを起動するための信号を受信するステップと、
次に、前記ステッピングモータの前記コイル(18)に供給される少なくとも1つの予備電気パルス(84)を生成し、前記外部通信装置(100)によって、前記コイルを循環する前記少なくとも1つの予備電気パルスによって生成される少なくとも1つの磁気同期パルスを受信するステップと、
前記外部通信装置を使用して、前記少なくとも1つの磁気同期パルスの少なくとも1つの磁気同期パルスにおける特定の時間位置、特に、前記少なくとも1つの磁気同期パルスの立ち上がりエッジ又は中央時間値を検出するステップと、
次に、所定のパルス周波数でかつ前記少なくとも1つの同期パルス(84)と同相で前記コイルに供給される電気検出パルス(82)を生成し、前記外部通信装置を用いて前記磁気信号(70)を同時に送信するステップであって、前記符号化されたデータは、前記パルス周波数と実質的に等しい符号化周波数を有し、前記磁気信号(70)は、前記符号化されたデータの「1」及び「0」ビットに対応する前記外部磁界のハイレベル及びローレベルが前記電気検出パルス(82)と同期するように送信され、これにより、「1」ビットに対応する前記外部磁界の各ハイレベルが対応する検出パルスの間に前記ステッピングモータの前記固定子(4)に存在し、「0」ビットに対応する前記外部磁界の各ローレベルが対応する検出パルスの間に発生するステップと、
前記時計(50)の前記通信手段の検出回路(24)を用いて、前記磁気信号(70)の前記符号化されたデータの受信中に発生する前記電気検出パルス(82)の各々についての前記少なくとも1つのパラメータ(T)を測定するステップと、
前記通信手段の前記処理回路(36)を用いて、各電気検出パルス(82)について測定された前記少なくとも1つのパラメータを処理するステップであって、測定された前記少なくとも1つのパラメータに応じて、前記電気検出パルスが前記外部磁界のハイレベル又はローレベルの間に生成されたかどうかを決定し、これにより、前記磁気信号の対応するビット値「1」又は「0」を決定して、前記磁気信号の前記符号化されたデータに対応するビット列を取得するステップと
を含むことを特徴とする、通信方法。
【請求項9】
前記電気検出パルス(82)が生成されたときに前記ステッピングモータの前記回転子(3)が占める静止位置を第1の静止位置及び第2の静止位置の中から選択し、前記外部磁界が負の方向性を有しかつ前記回転子が前記第1の静止位置にあるように、又は、前記外部磁界が正の方向性を有しかつ前記回転子が前記第2の静止位置にあるように、前記符号化されたデータを含む前記磁気信号(70)が送信されたときの前記外部磁界の方向性を前記正の方向性及び前記前記負の方向性の中から選択するステップと、
電気検出パルス(82)の極性が前記回転子の前記静止位置と同相である場合、前記立ち上がり時間(T)が第1の基準時間よりも長いかどうかを判定し、そうである場合は、前記磁界はハイレベルであり、したがって前記符号化されたデータにおいて「1」ビットであると決定し、そうでない場合は、前記磁界はローレベルであり、したがって前記符号化されたデータにおいて「0」ビットであると決定するステップと、
前記電気検出パルス(82)の極性が前記回転子の前記静止位置と逆位相である場合、立ち上がり時間(T)が第2の基準時間よりも短いかどうかを判定し、そうである場合は、前記磁界はハイレベルであり、したがって前記符号化されたデータにおいて「1」ビットであると決定し、そうでない場合は、前記磁界はローレベルであり、したがって前記符号化されたデータにおいて「0」ビットであると決定するステップと
を含むことを特徴とする、請求項4に記載の時計と前記外部通信装置(100)との間の通信のための請求項8に記載の通信方法。
【請求項10】
選択するステップは通信プロトコルにおいて事前定義され、前記外部通信装置から通信を受信したときに前記回転子(3)がとるべき前記第1及び第2の静止位置のうちの前記所定の静止位置に関する情報が前記時計のメモリに記録され、
通信モードを起動するための信号を受信した後で、少なくとも前記外部通信装置からの通信を受信している間、前記ステッピングモータの前記回転子は前記所定の静止位置に停止又は配置され、又は、前記回転子が前記所定の静止位置にある場合にのみ、前記通信手段が前記磁気信号(70)における前記符号化されたデータのビット値を決定するように、前記磁気信号の受信が管理されること
を特徴とする、請求項5に記載の時計と前記外部通信装置(100)との間の通信のための請求項9に記載の通信方法。
【請求項11】
選択するステップ中に、前記時計の前記通信手段は、通信モードを起動するための信号を受信した後で、
前記回転子が第1の静止位置又は第2の静止位置にある間に、前記コイルに少なくとも1つの電気パルスを生成するステップと、
前記電気パルスの極性が前記回転子の静止位置と同相である場合に、前記立ち上がり時間(T)が第1の基準時間よりも長いかどうかを判定し、そうである場合には、前記回転子が前のステップで位置していた前記静止位置を選択するステップと、
前記電気パルスの極性が前記回転子の前記静止位置と逆位相である場合に、前記立ち上がり時間(T)が第2の基準時間よりも短いかどうかを判定し、そうである場合には、前記少なくとも1つの電気パルスの生成中に前記回転子が位置していた前記静止位置を選択するステップと
を実行することを特徴とする、請求項6に記載の時計と前記外部通信装置(100)との間の通信のための請求項9に記載の通信方法。
【請求項12】
請求項11における第2のステップの条件又は第3のステップの条件が満たされない場合に、前記少なくとも1つの電気パルスの生成中に前記回転子が位置していない前記静止位置が選択されることを特徴とする、請求項11に記載の通信方法。
【請求項13】
請求項11における第2のステップ又は第3のステップの条件が満たされない場合に、前記回転子を1ステップだけ前進させて前記回転子を前記第2の静止位置又は前記第1の静止位置にそれぞれ位置決めするように電気駆動パルスが生成されること、
次に、請求項11のステップを繰り返して、請求項11における第2のステップの条件又は第3のステップの条件が満たされたかどうかを判定し、前記外部通信装置が前記磁気信号の送信を開始したことを確認し、そうである場合には、電気検出パルス(82)を生成するステップが開始されること
を特徴とする、請求項11に記載の通信方法。
【請求項14】
前記ステッピングモータの前記コイルに少なくとも1つの予備電気パルス(84)を生成するステップの間に、前記外部通信装置は、前記少なくとも1つの予備電気パルスの正又は負の極性を決定すること、及び
通信プロトコルは、前記少なくとも1つの予備電気パルスが前記回転子の前記静止位置と同相又は逆位相で生成されるか、及び前記少なくとも1つの予備電気パルスが送信されたときと同じ静止位置の前記回転子の場合に前記電気検出パルスが提供されるかどうかを確立し、それによって、前記外部通信装置は、選択するステップの間に、前記回転子の前記静止位置に応じて、方向性に関する所定の条件を満たすために前記磁気信号(70)の前記外部磁界(HExt)に与えられる前記方向性を決定すること
を特徴とする、請求項9に記載の通信方法。
【請求項15】
選択するステップの間に、前記外部通信装置は、前記時計から漏れる前記永久磁石の磁束を検出することによって、前記回転子(3)が前記第1の静止位置にあるか又は前記第2の静止位置にあるかを決定することを特徴とする、請求項9に記載の通信方法。
【請求項16】
前記電気検出パルス(82)は、前記電気検出パルスが駆動パルスにならないように、前記回転子(3)の静止位置とは逆位相で生成されることを特徴とする、請求項8~15のいずれか1項に記載の通信方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの予備電気パルス(84)は、前記少なくとも1つの予備電気パルスが駆動パルスにならないように、前記回転子(3)の前記静止位置とは逆位相で生成されることを特徴とする、請求項16に記載の通信方法。
【請求項18】
通信プロトコルは、同じ値を割り当てることによって前記符号化周波数及び前記パルス周波数を定義することを特徴とする、請求項8~15のいずれか1項に記載の通信方法。
【請求項19】
少なくとも1つの予備電気パルスを生成する前記ステップの間に、前記時計の前記通信手段は、前記パルス周波数で前記コイルに供給される複数の予備電気パルス(84)を生成し、前記外部通信装置(100)は、前記コイルを循環する前記複数の予備電気パルスによって生成された複数の磁気パルスをそれぞれ受信すること、及び
前記外部通信装置は、前記複数の磁気パルスの受信に基づいて前記パルス周波数を検出し、前記外部通信装置は、検出されたパルス周波数に等しい符号化周波数を選択すること
を特徴とする、請求項8~15のいずれか1項に記載の通信方法。
【請求項20】
前記時計の前記通信手段は、前記外部通信装置による受信のために、複数の対応する磁気パルスを生成する前記コイル(18)に供給される複数の電気符号化パルス(62)を生成することによって、符号化されたメッセージ(60)をビット形式で送信することができること、及び
各電気符号化パルスは、前記符号化されたメッセージにおける値「1」のビットに対応し、前記外部通信装置は、前記符号化されたメッセージのビットの連続を、対応する磁気パルスが検出された場合は「1」、又は、磁気パルスがない場合は「0」のいずれかで検出すること
を特徴とする、請求項8~15のいずれか1項に記載の通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置と非接触通信可能な電気機械式腕時計に関する。電気機械式腕時計は、外部通信装置から送信された磁気信号を介してデータを受信することが可能であり、好ましくは、この外部通信装置に磁気信号を送信することも可能であるように構成される通信手段を含む。
【0002】
さらに、本発明は、電気機械式腕時計と腕時計外部の通信装置との間の非接触通信方法に関する。
【背景技術】
【0003】
欧州特許文献EP0635771には、通信装置及び電気機械式腕時計を含む非接触データ送受信システムが記載されている。この文献は、磁気信号を送受信するためのコイルとして、ハンドを駆動するためのモータを形成するコイルを使用することを開示する。腕時計は、主に、特にパルスを駆動することによって、モータ制御回路を介して、特に1Hzでクロック信号を通信装置に送信する。1つの有利な実施形態は、この目的のために変更されたモータ制御回路を介してより高周波数のクロック信号を送信し、これは送信されたクロック信号を規定するパルスを提供し、このパルスは、モータの回転子をステップさせないように十分に短いものである。モータ制御回路は、回転子によって実行されるステップの間に、通信装置から磁気信号を受信できるように変更され、この磁気信号は振幅変調されたものである。特に、復調器が制御回路に組み込まれ、受信された磁気信号によってこのコイルに生成されるコイル内の誘導電圧信号を復調できるように構成され、復調された電圧信号を処理する手段が制御回路にさらに設けられる。復調された信号は、次に、その送信を管理する特定の回路、特に送信ブロッキング周期を管理する特定の回路に供給され、復調された電圧信号に、最初に磁気信号に含まれている情報を復調するための回路に供給される。したがって、対応するデジタル信号が得られるように、アナログ電圧信号を復調するための装置がモータ制御回路に追加され、これは次にデータ処理論理回路によって復調される。一般的に、システムは、モータに関連するハンドの進行を一時的に停止する必要がないように、駆動パルス間の周期にのみ磁気信号を受信できるように設計される。したがって、制御回路は、連続する選択された周期ごとにリスニングモードにされている。
【0004】
この時計の内部通信装置は、特に、変調された磁気信号の受信に応答してコイルによって供給されるアナログ誘導電圧信号のための復調器を追加することによって、モータ制御回路を大幅に変更する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、ステッピングモータを備え、このモータのための制御回路と、従来の電気機械式の腕時計/時計に比較的容易に組み込むことができる外部通信装置との非接触通信手段とを備えた腕時計/時計を提供することを提案する。これは、特に、時計モータの既知の制御回路に設けられたハードウェアを本質的に使用するか、又は外部磁界を検出する手段を備えた制御回路に設けられたハードウェアを排他的に使用することによって、腕時計/時計への通信手段の挿入は、この腕時計/時計に実装される通信ソフトウェアであって、時計モータの制御回路のハードウェアを使用して外部通信装置との通信を可能にする通信ソフトウェアを排他的に又は本質的に必要とするように行われる。
【0006】
この目的のために、本発明は、請求項1に一般的に定義される時計に関する。実施形態又は代替実施形態は、請求項1に従属する請求項に定義される。「時計」という用語は、特に腕時計を含む一般的な用語であることに留意されたい。
【0007】
本発明は、本発明による時計と外部通信装置との間の通信方法をさらに提供する。
【0008】
したがって、本発明は、請求項8に記載の通信方法にさらに関する。通信方法の実装又は代替的な実装は、請求項8に従属する請求項に定義される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明は、添付の図面を参照して以下により詳細に説明されるが、決して限定するものではない。
図1】本発明の主要な実施形態による時計、及びこの時計に関連する外部通信装置を概略的に示す図である。
図2図1の時計モータの概略図であり、固定子の2つの峡部(isthmus:イスムス部)における回転子の永久磁石の磁束を概略的に示す図である。
図3図1の時計モータの概略図であり、正の電気パルスの間にコイルによって生成される磁束を概略的に示す図である。
図4図1の時計モータの概略図であり、固定子内の外部磁界の循環を概略的に示す図であり、この外部磁界は、固定子の平面内に位置し、2つの峡部の整列方向に直交し、負の方向で略方向に伝播する。
図5図5A及び図5Bは、この外部磁界の様々な強度に依存して、図4による略方向を有する外部磁界の2つの負及び正の方向について、それぞれ正の静止位置にある回転子の磁石及び同相電気パルス(正の極性)について、電気パルスがトリガされた後のコイルにおける電流の変化を表す曲線を示す2つのグラフである。
図6図6A及び図6Bは、この外部磁界の様々な強度に依存して、図4による略方向を有する磁界の2つの負及び正の方向について、それぞれ正の静止位置にある回転子の磁石及び逆位相電気パルス(負の極性)について、電気パルスがトリガされた後のコイルにおける電流の変化を表す曲線を示す2つのグラフである。
図7】0又は弱い外部磁界及び比較的強い外部磁界について、固定子の2つの峡部における様々な可能な磁気構成において、電気パルスがトリガされた後のコイルにおける経時的な電流の立ち上がりの変化を示す表である。
図8】アナログ表示部材を駆動するためにさらに意図されたモータのコイルを介して図1の時計によって送信されたバイナリデータのシーケンスを示す。
図9】外部通信装置によって送信された変調磁気信号で符号化されたデータを受信する時計を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本発明の主要な実施形態による時計50を、種々の代替実施形態と共に以下に説明する。また、この時計と、一般的な実施形態による外部通信装置100との間の通信方法を、種々の特定の代替実施形態と共に説明する。
【0011】
時計50は、回転軸7に垂直な磁化軸を有する双極性永久磁石6を備えた回転子3と、磁気回路を規定する固定子4と、永久磁石の筐体を形成する開口部8とを備えたステッピング式のモータ2を備えた電気機械式ムーブメントを備える。固定子は、さらに、回転軸7に垂直な第1の方向14に直径方向に対向する開口部8の周囲にある2つの峡部12a及び12bと、永久磁石6、すなわちその磁化軸が第1の方向14から角度的にオフセットされた第2の方向16にそれぞれ両方向に配向された、回転子の2つの安定した静止位置とを規定する。2つの静止位置は、従来、開口部8のエッジに設けられた直径方向に対向する2つのノッチ10a及び10bによって決定される。その2つの静止位置のそれぞれにおいて、永久磁石6は、第1の方向14と直交する第3の方向40に実質的に2つの峡部を通過する第1の磁束Fを、それぞれ両方向で生成する。正の静止位置とも呼ばれる第1の静止位置は、+F図2を参照)として示された2つの峡部における第1の磁束Fの正の方向に対応し、負の静止位置とも呼ばれる第2の静止位置は、‐Fとして示された2つの峡部における第1の磁束Fの負の方向に対応する。
【0012】
モータ2は、正の電気パルス+I(t)又は負の電気パルス-I(t)が供給されたときに、前記正の方向である+F図3参照)及び前記負の方向である-Fにそれぞれ実質的に第3の方向40に2つの峡部を通過する第2の磁束Fを生成することができるように、前記磁気回路に取り付けられたコイル18をさらに備える。なお、コイル18の磁束Fは、電気パルスがトリガされてから所定の遅延が経過した後に2つの峡部における磁束の方向を付与し、これは、磁石の磁束Fが2つの峡部におけるコイルの反対の方向であっても、すぐに飽和に達する。
【0013】
時計50は、コイルに電力を供給しかつ回転子を回転させるための電気駆動パルスを生成することができるように構成されるモータ2のための制御回路20をさらに備える。一般的に、時計50は、外部通信装置100と非接触通信を行う手段を備え、これらの通信手段は、ステッピングモータ2のコイル18によって形成されたアンテナを含み、かつ外部磁界HExtによって形成される磁気信号70においてビット形式で符号化されたデータを外部通信装置から受信できるように構成されており、この磁界は、この外部通信装置によって生成され、値「0」のビットが弱い又は0強度の外部磁界に対応し、そのローレベルを規定し、値「1」のビットが比較的強い外部磁界に対応し、そのハイレベルを規定するように振幅変調される。時計の通信手段は、磁気信号に含まれる符号化されたデータを復号できるように構成される。
【0014】
本発明によれば、通信手段は、変調された磁気信号の符号化周波数に実質的に対応するパルス周波数でコイル18に供給される電気検出パルス82(「検出パルス」ともいう)を生成することができるように構成される。このため、主要な実施形態では、通信手段は、前記符号化されたデータを受信したときに通信手段によって生成される複数の検出パルスの各電気検出パルスの少なくとも1つのパラメータを測定することができるように構成される測定回路と、前記複数の検出パルスの各検出パルスについて測定された前記少なくとも1つのパラメータを処理する回路とを備える。前記振幅変調された磁気信号に含まれる符号化されたデータのビットの値を決定することができるように、前記検出パルスについて測定された前記少なくとも1つのパラメータに応じて、検出パルス中に外部磁界HExtのハイレベル又はローレベルを決定することができるように、前記少なくとも1つのパラメータは選択され、前記処理回路は構成される。
【0015】
好ましい代替実施形態では、通信手段は、前記電気検出パルスが生成されたときに前記回転子が位置する静止位置に対して逆位相でコイルに電気検出パルスを生成するように構成される。「逆位相」という用語は、固定子4内を伝搬するコイルに生じる磁束Fが、前記静止位置において回転子3の永久磁石6によって生成され、これら2つの峡部を通過する磁束Fの方向性とは反対の方向性を固定子の2つの峡部12a,12bにおいて有するように電気検出パルスを生成することを意味する。この代替実施形態は、モータ2のコイル18を外部通信装置100との通信に使用することは、逆位相でコイルに供給される電気パルスが、常に同相である駆動パルスとなり得ないため、モータをステップさせる危険がないという大きな利点を有する。したがって、検出パルスに対して特別な条件、特に、供給されるエネルギーがモータ2を1ステップ前進させるのに十分でないように設けられる最大持続時間を設ける必要はない。
【0016】
以下に説明する有利な実施形態によれば、前記少なくとも1つの測定パラメータは、前記ローレベル又はハイレベルの外部磁界HExtを処理回路が決定できるように選択された所定の基準電流IRefに達するまでの、当該検出パルスがトリガされた後のコイル18の電流I(t)の立ち上がり時間Tからなる。
【0017】
特にステッピングモータの駆動を管理するようにモータ2に関連付けられた電子制御回路20は、第1及び第2の静止位置の中から静止中の回転子の位置を決定する手段と、電源に関連付けられ、かつ特に約1Vから3Vの間の電圧Vで、正の電気パルス+I(t)及び負の電気パルス-I(t)をコイルに選択的に供給することができるように構成される電気パルス発生器22とを備える。発生器22は、以下により詳細に説明するように、回転子を回転させるための電気パルス(駆動パルス)及び外部磁界HExtを検出するための電気検出パルス(検出パルス)を供給することができるように構成される。特に、管理回路38は、コイルに供給される電気パルスの生成を管理する。電気駆動パルスは、合同で電気検出パルスも形成し得ることに留意されたい。他の修飾語に関連しない場合、用語「電気パルス」は、本明細書では電気検出パルス(検出パルス)を意味するものと理解される。回転子の正又は負の静止位置を決定する手段は、当業者に既知であり、典型的には、時計用ステッピングモータの制御回路に設けられる。電子制御回路20は、駆動パルスの極性(正又は負)に関する情報が記憶されるメモリ又はレジスタを含む。より具体的には、そのような電子制御回路は、それぞれが特定の極性、典型的には交番極性を有する駆動パルスを生成する。特定の極性の駆動パルスの後、永久磁石、したがって回転子は、特定の静止位置にあり、この駆動パルスの極性とは逆の極性(正又は負)を有する。メモリ又はレジスタは、生成された最後の駆動パルス又は次の駆動パルスの極性に関する情報を提供し、実装される変形は、事前定義されており、したがって既知である。いずれの場合においても、この情報は、ステッピングモータの通常動作中に、この回転子の2つの静止位置のうちの回転子の現在位置を決定するために使用することができる。制御回路のメモリ又はレジスタに記録された最後の又は次の駆動パルスの極性に関する情報と、当該情報を読み出し、必要に応じて処理回路に一時的に記憶することができるようにするためにこのメモリ又はレジスタにアクセスする論理回路又はアルゴリズムとが、回転子の位置を決定する手段を形成する。
【0018】
電子制御回路20は、管理回路38に関連付けられた外部磁界HExtを検出するための回路24をさらに含み、コイル18に流れる電流の強度I(t)を測定する回路26と、測定された電流の強度I(t)を基準電流IRefと比較する回路28と、各電気検出パルスのトリガからコイルに流れる電流の強度I(t)が基準電流IRefに達する次の瞬間までに経過した立ち上がり時間Tを測定する時間測定回路32と、測定された立ち上がり時間Tによって、当該電気検出パルス中に、所定の強度の外部磁界HExtの存在が示される否かを判定することができるように構成される、立ち上がり時間Tを処理する回路36とにより形成され、これは、変調された磁気信号のハイレベルを示すものであり、これは、峡部12a,12bを実質的に第3の方向40(これは、固定子内の磁束のための2つの狭窄部を画定する峡部の構成から生じ、これらの狭窄部は固定子の円形開口8全体に対して接線方向である)に特定の方向性で通過し、又はこのような外部磁界が存在しないことは、外部通信装置から供給される前記変調された磁気信号のローレベルを示すものである。
【0019】
比較回路28は、電気検出パルスがトリガされた後に、測定回路26から供給されるコイル電流の強度I(t)と、メモリ30から供給される基準電流IRefとを入力として受信し、強度I(t)が基準値IRefより大きいか否かを示す比較信号Sを出力する比較器29を備えている。検出回路24は、測定された電流の強度I(t)を略リアルタイムで監視することができる一方で、測定回路32(タイマ32)が立ち上がり時間Tを正確に判定することができるように、比較的高いクロック信号、特に約500kHz以上のクロック信号を供給するタイムベース34を備える。
【0020】
図4は、固定子の平面内を方向40に、すなわち2つの峡部12a,12bの整列方向14と直交する負の方向性で伝搬し、2つの峡部に磁束-Fを生成する外部磁界HExtを示している。なお、検出回路24が検出パルスを介して外部磁界HExtを検出するために重要なのは、「外部磁束」と呼ばれる磁束Fであり、この磁束は、2つの峡部12a,12b内を通過し、すなわち、固定子4の2つの磁極部4A,4B間でこの2つの峡部を通過する。本明細書で説明する実施形態で考慮される外部磁界の強度は、1,000A/m程度であり、約2,000A/m未満である。しかしながら、本発明の通信方法は、この2,000A/m未満の外部磁界に限定されるものではない。それにもかかわらず、時計50と外部通信装置100との間の通信に提供される外部磁界は、あまり強くない。
【0021】
外部通信装置100は、送受信アンテナを形成する少なくとも1つのコイル102と、スイッチング回路106と、時計50によって送信された第1の磁気信号のこのアンテナによる受信に応答して、アンテナ102から第1の電気信号を受信する回路110であって、アナログーデジタル(ADC)変換器によって形成されるこの受信回路と、デジタル/アナログ(DAC)変換器により形成される第2の電気信号を生成する発生器114であって、この第2の電気信号は、外部通信装置により送信される第2の磁気信号を生成するようにアンテナ102に供給される発生器と、第1の磁気信号の受信及び第2の磁気信号の送信を管理することが可能なマイクロプロセッサ118とを備える。
【0022】
その内容が参照により本明細書に組み込まれる本出願人によって出願された欧州特許出願第22214282号(EP20220214282)に詳細に開示されているように、このコイルに供給される電気パルスがトリガされた後、固定子4の2つの峡部を通過しかつ回転子3の永久磁石6によって生成される磁束Fとは反対の方向性を有する比較的強い外部磁束Fの存在下で、したがって外部磁界が正であり、永久磁石/回転子が負の静止位置にあるとき、又は外部磁界が負であり、永久磁石/回転子が正の静止位置にあるとき、コイル18に流れる電流IB(t)の進展に変化がある。より詳細には、回転子の永久磁石が電気検出パルスと同相のとき(コイルによって生成される磁束Fと同じ方向性/符号の磁石の磁束Fに対応する場合)、電流の強度I(t)は、外部磁界HExtが存在しない場合には急速に増加するが、回転子の磁石とは逆方向性/符号の比較的強い外部磁束Fを生成する外部磁界の存在下では緩やかに増加する。このように、上記条件における電流I(t)の立ち上がりは「速い」から「遅い」に変化するため、上記条件における比較的強い外部磁界HExtの存在下では、電流I(t)の立ち上がり時間Tは長くなる。逆に、回転子の永久磁石が電気検出パルスと逆位相のとき(コイルによって生成される磁束Fとは逆方向性/符号の磁石の磁束Fに対応する場合)、電流の強度I(t)は、外部磁界HExtが存在しない場合には緩やかに増加するが、回転子の磁石とは逆方向/符号の比較的強い外部磁束Fを生成する外部磁界の存在下では急速に増加する。このように、上記条件における比較的強い外部磁界HExtの存在下では、電流I(t)の立ち上がりは「遅い」から「速い」に変化するため、電流I(t)の立ち上がり時間Tは短くなる。本発明の一般的な実装による通信方法に含まれる外部磁界検出方法は、この物理現象に基づいたものであり、電気検出パルスがトリガされたときの回転子の静止位置(電気駆動パルスを供給するために必要な情報)を知って、その極性が明らかな状態で立ち上がり時間Tを測定することに基づいたものである(すなわち、それが正の電気パルスであるか負の電気パルスであるかに関わらず、この情報は電気パルスの発生時に与えられる)。
【0023】
図5A及び5Bは、永久磁石が同相の電気パルス、すなわち正のパルスに対して正の静止位置にあり、外部磁界の様々な強度に対してそれぞれ負及び正の外部磁界がある場合の、コイルにおける電流I(t)の経時変化を示す曲線を示す。図5Aは、負の外部磁界について上述した物理現象を示す。基準電流IRefは、処理回路が外部磁界の様々な強度に対して立ち上がり時間を容易に区別できるように、特に低強度と高強度とを区別できるように選択される。図5Aに示す例では、基準電流は0.15mAと0.25mAとの間で有利に選択される。図5Bは、外部磁界が永久磁石の静止位置と同じ方向性/符号を有するとき、すなわち、2つの峡部において外部磁束Fと磁石の磁束Fとが同じ方向性を有し、したがって同じ符号を有するとき、コイル内の電流は経時的にほとんど変化せず、速いままであることを示す。図6A及び6Bは、永久磁石が逆位相の電気パルス、すなわち負のパルスに対して同様に正の静止位置にあり、外部磁界の様々な強度に対してそれぞれ負及び正の外部磁界がある場合の、コイルにおける電流I(t)の経時変化を示す曲線を示す。図6Aは、上述の物理現象を示す。基準電流IRefは、処理回路が外部磁界の様々な強度に対して立ち上がり時間を容易に区別できるように、特に低強度と高強度とを区別できるように選択される。図6Aに示す例では、基準電流は-0.15mAと-0.25mAとの間で有利に選択される。コイル内の電流の可能な2つの極性をカバーするために、この電流の絶対値は正の基準電流、例えば0.20mAと比較されてもよい。図6Bは、外部磁界が永久磁石の静止位置と同じ符号を有するとき、コイル内の電流I(t)が経時的にほとんど変化せず、遅いままであることを再び示す。
【0024】
図7の表は、電気検出パルス82がトリガされたときに、コイル18における電流I(t)の立ち上がり、及び基準電流IRefに到達するための立ち上がり時間Tに関して行われた観察及び特定の知見を要約している。
【0025】
回転子3/永久磁石6が負の静止位置にあるとき、強度値の有効範囲内で正の外部磁束F(+F)を生成する外部磁界のみが、立ち上がり時間Tに基づいて容易に検出され、かつ、回転子/永久磁石が正の静止位置にあるとき、強度値の有効範囲内で負の外部磁束F(-F)を生成する外部磁界のみが、立ち上がり時間Tに基づいて容易に検出され得るという点で、上記開示から重要な観察がなされる。
【0026】
本発明は、本発明の一般的な実装による、外部通信装置100と本発明による時計50との間の通信方法について上記開示の注目すべき情報を利用しており、この通信方法の一般的な実装は、図8及び図9を参照して以下に説明される。
【0027】
図8は、通信方法中の送信モードにおける時計50による第1の磁気信号の生成を示しており、この第1の磁気信号は、外部通信装置100に向けられている。第1の磁気信号は、第1の符号化周波数を有するビットシーケンス60において値「1」のビットを規定する一連の電気符号化パルス62をモータ2のコイル18に供給することによって生成され、その逆数が第1の符号化周期(図8に縦の破線で示す)を決定する。電気符号化パルスのない符号化周期は、シーケンス60における「0」ビットに対応し、一方、符号化周期中の少なくとも1つの予備電気パルス64と同相の電気符号化パルス62が「1」ビットに対応する(すなわち、その立ち上がりエッジは、予備電気パルス64の立ち上がりエッジから整数個の符号化周期だけ時間的に離される)。したがって、通信手段は、受信モードで外部通信装置100のコイル102に磁界Hが結合された第1の磁気信号を形成する複数の対応する磁気符号化パルスを生成するコイル18に供給される複数の電気符号化パルスを生成することによって、時計50が外部通信装置による受信のためにビット形式で符号化されたメッセージを送信できるように構成される。したがって、時計通信手段は、第1の符号化周波数で符号化された符号化されたメッセージの値「1」の各ビットに対して電気符号化パルスを生成することが可能であり、符号化されたメッセージの値「0」のビットに対して電気符号化パルスを生成しないように構成される。
【0028】
予備電気パルス64は、後続のビットシーケンス60に対して時計50と外部通信装置100とを同期させるために使用され、この装置は、コイル18内を循環する予備電気パルス64によって生成された対応する予備磁気パルスを受信し、それに対して立ち上がりエッジの時間又は代替的にこの予備磁気パルスの実質的に中央に位置する時間値を決定する。第1の代替実施形態では、装置100は、通信方法に関連付けられた通信プロトコルによって定義される第1の符号化周波数をメモリに格納する。第2の代替実施形態では、装置100は、第1の符号化周波数で複数の予備磁気パルスを受信し、受信した符号化されたメッセージを正しく復号できるように、その値自体を決定する。符号化されたメッセージ内のビットシーケンスの前に単一の予備電気パルス64がある場合、これは通常、磁気符号化パルスが送信されない所定の時間間隔の後に発生する再同期パルスであり、この再同期パルスは、符号化されたメッセージに含まれる各データシーケンスの初期ビット又は開始ビットSとしてさらに機能する。より具体的には、各データシーケンスの前に、このデータシーケンスの開始を受信装置に通知する開始ビットSがある。このような開始ビットSは、データシーケンスの最初のビットが値「0」を有し、外部通信装置100によって受信された最初の磁気信号が、このデータシーケンスの最初の周期に磁気符号化パルスを有しない場合に特に重要である。したがって、外部通信装置は、第1の所与の又は検出された符号化周波数において、前記符号化されたメッセージのビットの連続、すなわち、磁気検出パルス62の1つが検出された場合には「1」、符号化周期に磁気パルスがない場合には「0」を検出することができる。
【0029】
本発明による通信方法は、時計50が、外部通信装置によって送信された第2の磁気信号で符号化されたデータを受信する点で注目に値する。通信装置100によって送信された第2の磁気信号を時計が受信する方法について、図9を参照して説明する。図9の上側のグラフは、特定のパルス周波数で生成され、かつモータ2のコイル18に供給される電気検出パルス82を含む周期的検出信号80を示す。図9の下側のグラフは、ビット形式で符号化され、かつこの第2の磁気信号に含まれるデータに従って振幅変調される第2の磁気信号70を概略的に示す。したがって、第2の磁気信号70は、前記符号化されたデータにおける値「1」のビットに対応する磁気符号化パルス72を有し、データシーケンスに先行する値「1」のビットは、初期ビット又は開始ビットSである。
【0030】
一般的な実装によれば、本発明による時計による第2の磁気信号の受信のための通信方法は、第2の磁気信号を形成するためにこの装置によって放射される外部磁界HExtが、ステッピングモータの固定子4内で、主に、固定子の略平面に平行で、この固定子の2つの峡部12a及び12bの整列方向14に直交する方向40に伝播するように、外部通信装置100に対して時計を位置決めするステップと、-時計の通信手段によって、通信モードを起動するための信号を受信するステップであって、この起動信号は、特に、時計に装備され、かつ人によって又はこの時計を搭載する装置の作動手段によって作動される通信モードを起動するための手段によって提供されるステップと、次に、ステッピングモータのコイル18に供給される少なくとも1つの予備電気パルス84を生成するステップ、及びコイルを循環する前記少なくとも1つの予備電気パルスによって生成され、したがって前記少なくとも1つの予備電気パルスに応答してこのコイルによって送信される少なくとも1つの磁気同期パルスを外部通信装置によって受信するステップと、外部通信装置を使用して、前記少なくとも1つの磁気同期パルスの少なくとも1つの磁気同期パルスにおける特定の時間位置、特に、少なくとも1つの磁気同期パルスの立ち上がりエッジ又は中央時間値を検出するステップと、次に、-所定のパルス周波数で前記少なくとも1つの同期パルスと同相でコイルに供給される電気検出パルス82を生成し、外部通信装置100を用いて第2の磁気信号70を同時に送信するステップであって、この第2の磁気信号の符号化されたデータは、パルス周波数と実質的に等しい第2の符号化周波数を有し、第2の磁気信号は、符号化されたデータの「1」及び「0」ビットに対応する外部磁界のハイレベル及びローレベルが電気検出パルス82と同期するように送信され、これにより、磁気符号化パルス72を規定しかつ「1」ビットに対応する外部磁界HExtの各ハイレベルが、対応する検出パルス82の間にステッピングモータ2の固定子4に存在し、「0」ビットに対応する外部磁界の各ローレベルが対応する検出パルス82の間に発生するステップと、時計の通信手段の検出回路24を用いて、第2の磁気信号70の前記符号化されたデータの受信中に発生する電気検出パルス82の各々についての前記少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、前記通信手段の処理回路36を用いて、電気検出パルス82の各々について測定された前記少なくとも1つのパラメータを処理するステップであって、測定された前記少なくとも1つのパラメータに応じて、この電気検出パルスが外部磁界のハイレベル又はローレベルの間に生成されたかどうかを決定し、これにより、第2の磁気信号70の対応するビット値「1」又は「0」を決定し、この第2の磁気信号の符号化されたデータに対応するビット列を取得するステップとを含む。
【0031】
好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの測定されたパラメータは、当該電気検出パルス82がトリガされた後、コイル18の電流I(t)が所定の基準電流IRefに達するまでに要する立ち上がり時間Tである。次に、通信方法は、時計50が第2の磁気信号70を受信する受信モードにあるときに、電気検出パルス82が生成されたときにステッピングモータ2の回転子3が占める静止位置を正の静止位置及び負の静止位置の中から選択し、外部磁界HExtが負の方向性を有しかつ回転子が正の静止位置にあるように、又は、外部磁界が正の方向性を有しかつ回転子が負の静止位置にあるように、符号化されたデータを含む第2の磁気信号70が送信されたときの外部磁界HExtの方向性を正の方向性及び負の方向性の中から選択するステップと、電気検出パルス82の極性が回転子の静止位置と同相である場合、すなわち、固定子の2つの峡部内のコイルによって生成された磁束Fが、これら2つの峡部内の磁石の磁束Fと同じ方向性を有する場合、立ち上がり時間Tが第1の基準時間よりも長いかどうかを判定し、そうである場合は、磁界はハイレベルであり、したがって符号化されたデータにおいて「1」ビットであると決定し、そうでない場合は、磁界はローレベルであり、したがって符号化されたデータにおいて「0」ビットであると決定するステップと、電気検出パルス82の極性が回転子の静止位置と逆位相である場合、すなわち、固定子の2つの峡部内のコイルによって生成された磁束Fが、これら2つの峡部内の磁石の磁束Fと逆方向性を有する場合、立ち上がり時間Tが第2の基準時間よりも短いかどうかを判定し、磁界はハイレベルであり、したがってこの場合は符号化されたデータにおいて「1」ビットであると決定し、磁界はローレベルであり、したがってこの場合は符号化されたデータにおいて「0」ビットであると決定するステップとを含む。
【0032】
有利な代替実施形態では、第1の基準時間は第2の基準時間に等しい。
【0033】
好ましい代替実施形態では、電気検出パルス82は、これらの電気検出パルスが駆動パルスではないように、回転子の静止位置と逆位相で生成される。その持続時間は、通常、1msと2msとの間である。有利な代替実施形態では、前記少なくとも1つの予備電気パルスは、前記少なくとも1つの予備電気パルスが駆動パルスにならないように、回転子の静止位置と逆位相で生成される。
【0034】
時計50の第1の具体的な実施形態によれば、この時計は、外部通信装置100から送信された第2の磁気信号70を受信したときに回転子3がとるべき正及び負の静止位置のうちの所定の静止位置に関する情報を記録可能なメモリを備え、この時計は、外部磁界が固定子4の2つの峡部の整列方向14と実質的に直交する略方向40に固定子の略平面内を伝搬可能なように、この外部通信装置に対して規定された位置に瞬間的に配置される。この時計の通信手段は、通信モードを起動するための信号を受信した後、通信を受信している間、ステッピングモータ2の回転子を停止又は前記所定の静止位置に配置するか、又は、回転子が前記所定の静止位置にある場合にのみ、前記符号化されたデータのビット値を決定するように第2の磁気信号の受信を管理するように構成される。
【0035】
上記第1の具体的な実施形態に係る時計50と外部通信装置100との間の通信方法の第1の代替実施形態によれば、選択するステップは、通信プロトコルに事前定義されており、時計が外部通信装置からの通信を受信している間に回転子がとるべき正及び負の静止位置のうち、所定の静止位置に関する情報が時計のメモリに記録される。通信モードを起動するための信号を受信した後、少なくとも外部通信装置からの通信を時計が受信している間、ステッピングモータの回転子を停止又は前記所定の静止位置に配置するか、又は、回転子3が前記所定の静止位置にある場合にのみ、通信手段がこの第2の磁気信号の前記符号化されたデータのビット値を決定するように、第2の磁気信号70の受信は管理される。
【0036】
時計50の第2の具体的な実施形態によれば、この時計の通信手段は、通信モードを起動する信号を受信した後、固定子の略平面内を固定子の2つの峡部の整列方向と実質的に直交する略方向に伝搬するときの外部磁界HExtの方向性を検出することができるように、かつ、回転子の静止位置に応じてこの方向性の前記所定の条件を満たすために、外部磁界の検出された方向性により決定される静止位置に回転子を停止又は配置して、前記符号化されたデータを受信し、又は、回転子が決定された静止位置にあるときにのみ通信手段が前記符号化されたデータのビット値を決定するように、前記第2の磁気信号70の受信を管理するように構成される。
【0037】
上述した第2の具体的な実施形態による時計50と外部通信装置100との間の通信方法の第2の代替実施形態によれば、時計の通信手段は、選択するステップ中に、回転子3が正の静止位置又は負の静止位置にある間にコイル18に少なくとも1つの電気パルスを生成するステップと、電気パルスの極性が回転子の静止位置と同相である場合には、この電気パルスの前記立ち上がり時間Tが第1の基準時間よりも長いかどうかを判定し、そうである場合には、前のステップで回転子が配置された静止位置を選択するステップと、電気パルスの極性が回転子の静止位置と逆位相である場合には、この電気パルスの前記立ち上がり時間Tが第2の基準時間よりも短いかどうかを判定し、そうである場合には、前記少なくとも1つの電気パルスの生成中に回転子が配置される静止位置を選択するステップとを実行する。
【0038】
第1の代替例によれば、前記第2の代替的な実装において前記第2のステップの条件又は前記第3のステップの条件が満たされない場合には、前記少なくとも1つの電気パルスの生成中に回転子が配置されない静止位置が選択される。
【0039】
第2の代替例によれば、前記第2の代替的な実装において前記第2のステップの条件又は前記第3のステップの条件が満たされない場合には、回転子を1ステップだけ前進させて、この回転子を負の静止位置又は正の静止位置にそれぞれ位置決めするように電気駆動パルスが生成される。次に、第2のステップの条件又は第3のステップの条件が満たされるかどうかを判定するために第2の代替的な実装のステップを繰り返して、外部通信装置100が時計の通信手段によって検出可能な外部磁界を送信し始めたことを確認し、そうである場合には、電気検出パルス82を生成するステップが開始される。
【0040】
上述した好ましい実装の有利な代替例では、ステッピングモータ2のコイル18に少なくとも1つの予備電気パルス84を生成するステップの間に、外部通信装置100は、前記少なくとも1つの予備電気パルスの正又は負の極性を決定する。このような場合、通信プロトコルは、少なくとも1つの予備電気パルス84が回転子の静止位置と同相又は逆位相のどちらで生成されるか、及び前記少なくとも1つの予備電気パルスが送信されたときと同じ静止位置の回転子の場合に電気検出パルス82が提供されるかどうかを確立し、それによって、外部通信装置100は、選択するステップの間に、回転子の静止位置に応じて、この方向性のための所定の条件を満たすために第2の磁気信号の外部磁界に与える方向性を決定する。
【0041】
特定の代替実施形態では、通信プロトコルは、第2の符号化周波数及びパルス周波数をそれらに同じ値を割り当てることによって定義する。これらの周波数は、例えば、32Hz、64Hz、又は任意選択的に128Hzに等しい。
【0042】
高度な実施形態では、前記少なくとも1つの予備電気パルス84を生成する前記ステップの間に、時計50の通信手段は、前記パルス周波数でコイルに供給される複数の予備電気パルスを生成し、外部通信装置100は、コイルを循環する前記複数の予備電気パルスによって生成された複数の磁気パルスをそれぞれ受信する。外部通信装置は、前記複数の磁気パルスの受信に基づいて、パルス周波数を検出する。次に、外部通信装置100は、検出したパルス周波数に等しい第2の符号化周波数を選択する。
【0043】
本発明による通信方法の別の実装では、外部通信装置100は、選択するステップ中に、時計から漏れる永久磁石6の磁束を検出することにより、回転子3が正の静止位置にあるか又は負の静止位置にあるかを判定する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】