(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087794
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】電動モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
H02K9/19 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023211495
(22)【出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2022202622
(32)【優先日】2022-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】大和 康弘
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609PP02
5H609PP05
5H609PP06
5H609PP08
5H609PP09
5H609QQ04
5H609QQ05
5H609RR40
5H609RR42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電動モータの大型化を抑えつつ、冷却液を効率的に循環できる電動モータを提供する。
【解決手段】ステータ冷却流路は、ハウジング凸部に形成されている第1の端流路F13と第2の端流路F14とを含む。ハウジング冷却流路は、ハウジング凸部に形成されている第3の端流路F24と、ハウジング凸部に形成されている第4の端流路F25とを含む。第3の端流路F24と第4の端流路F25は回転方向において離れている。第1の端流路F13の少なくとも一部の回転方向における位置と、第2の端流路F14の少なくとも一部の回転方向における位置は、第3の端流路F24と第4の端流路F25との間である。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸を中心として回転可能なロータと、半径方向において前記ロータと対向し、コイルを有しているステータと、を有しているモータ本体と、
前記モータ本体を収容しているハウジングと、
前記ハウジングの内面に沿って規定され、前記コイルの第1コイルエンドを収容している第1コイルエンド収容路と、前記第1コイルエンドとは反対側にある第2コイルエンドを収容している第2コイルエンド収容路とを含み、冷却液が充填されているステータ冷却流路と、
前記ハウジングの内面と外面との間に形成され、回転方向において前記モータ本体を取り囲んでいる主流路を含み、冷却液が充填されているハウジング冷却流路と
を有し、
前記ハウジングは、前記モータ本体に対して半径方向の外側に位置し、前記半径方向の外側に突出しているハウジング凸部を有し、
前記ステータ冷却流路は、前記ハウジング凸部に形成され、前記第1コイルエンド収容路に接続している第1の端流路と、前記ハウジング凸部に形成され、前記第2コイルエンド収容路に接続している第2の端流路とを含み、
前記ハウジング冷却流路は、前記ハウジング凸部に形成され、前記ハウジング冷却流路の前記主流路の一方の端部に接続している第3の端流路と、前記ハウジング凸部に形成され、前記主流路の他方の端部に接続している第4の端流路とを含み、
前記第3の端流路と前記第4の端流路は前記回転方向において離れており、
前記第1の端流路の少なくとも一部の前記回転方向における位置と、前記第2の端流路の少なくとも一部の前記回転方向における位置は、前記第3の端流路と前記第4の端流路との間である
電動モータ。
【請求項2】
前記第1の端流路と前記第2の端流路と前記第3の端流路と前記第4の端流路のうちの少なくとも1つは、前記軸方向に伸びている軸方向流路と、前記軸方向流路に接続し且つ前記軸を中心とする円の接線の方向に伸びている接線方向流路とを含み、
前記軸方向流路の前記回転方向における位置が、前記第3の端流路と前記第4の端流路との間である
請求項1に記載される電動モータ。
【請求項3】
軸を中心として回転可能なロータと、半径方向において前記ロータと対向し、コイルを有しているステータと、を有しているモータ本体と、
前記モータ本体を収容しているハウジングと、
前記ハウジングの内面に沿って規定され、前記コイルの第1コイルエンドを収容している第1コイルエンド収容路と、前記第1コイルエンドとは反対側にある第2コイルエンドを収容している第2コイルエンド収容路とを含み、冷却液が充填されているステータ冷却流路と、
前記ハウジングの内面と外面との間に形成され、回転方向において前記モータ本体を取り囲んでいる主流路を含み、冷却液が充填されているハウジング冷却流路と
を有し、
前記ハウジングは、前記モータ本体に対して半径方向の外側に位置し、前記半径方向の外側に突出しているハウジング凸部を有し、
前記ステータ冷却流路は、前記ハウジング凸部に形成され、前記第1コイルエンド収容路に接続している第1の端流路と、前記ハウジング凸部に形成され、前記第2コイルエンド収容路に接続している第2の端流路とを含み、
前記ハウジング冷却流路は、前記ハウジング凸部に形成され、前記ハウジング冷却流路の前記主流路の一方の端部に接続している第3の端流路と、前記ハウジング凸部に形成され、前記主流路の他方の端部に接続している第4の端流路とを含み、
前記第1の端流路と前記第2の端流路と前記第3の端流路と前記第4の端流路のうちの少なくとも1つは、軸方向に伸びている軸方向流路と、前記軸方向流路に接続し且つ前記軸を中心とする円の接線に沿った方向に伸びている接線方向流路とを含む
電動モータ。
【請求項4】
前記第1の端流路は、前記第1コイルエンド収容路に向かって前記軸方向に沿って伸びている軸方向流路を含み、前記第2の端流路は、前記第2コイルエンド収容路に向かって前記軸方向に沿って伸びている軸方向流路を含んでいる
請求項1又は3に記載される電動モータ。
【請求項5】
前記第1の端流路と前記第2の端流路と前記第3の端流路と前記第4の端流路は、前記軸を中心とする円柱面に接する接平面に沿って形成されている
請求項1又は3に記載される電動モータ。
【請求項6】
前記第1の端流路と前記第2の端流路と前記第3の端流路と前記第4の端流路のうち少なくとも2つ端流路は、前記軸を中心とする円柱面に接する接平面に沿って形成されている部分を有し、
前記少なくとも2つ端流路の前記部分は、前記電動モータを軸方向に見たときに、重なっている
請求項1又は3に記載される電動モータ。
【請求項7】
前記ハウジング凸部は、前記軸を中心とする円の接線の方向における一方側に向いている第1の面と、前記第1の面とは反対側に向いている第2の面とを有し、
前記第1の端流路と前記第2の端流路と前記第3の端流路と前記第4の端流路のうちの少なくとも1つは、前記第1の面又は第2の面に形成されている開口端を有している
請求項1又は3に記載される電動モータ。
【請求項8】
前記ハウジング凸部は、前記軸を中心とする円の接線の方向における一方側に向いている第1の面と、前記第1の面とは反対側に向いている第2の面とを有し、
前記第1の端流路と前記第2の端流路と前記第3の端流路と前記第4の端流路の開口端のそれぞれは、前記第1面又は前記第2面に形成されている
請求項1又は3に記載される電動モータ。
【請求項9】
前記ステータ冷却流路は、前記第1コイルエンド収容路と前記第2コイルエンド収容路とを接続する連絡流路を含み、
前記連絡流路は、前記軸を含む平面を挟んで、前記第1の端流路及び前記第2の端流路とは反対側に位置している
請求項1又は3に記載される電動モータ。
【請求項10】
前記連絡流路は、前記ハウジングに形成されている
請求項1又は3に記載される電動モータ。
【請求項11】
前記第1の端流路と前記第3の端流路と前記第4の端流路のそれぞれは、前記軸方向における一方側に向いている側面に、開口端を有している
請求項1又は3に記載される電動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータのステータは、コイルと、コイルが取り付けられたステータコアとを有する。コイルから出る熱によってステータが高温になると、モータ損失(主に銅損)が高くなり、運転効率が低下する。そのため、ステータを冷却する構造が求められる。電動車両や、ハイブリッド車両などの乗り物においては、高出力の電動モータが利用されているので、このような熱対策は特に重要である。特許文献1では、コイルエンドに冷却液を流通させる構造に加えて、ハウジング自体にも冷却液の流路が形成されている。ステータコアを介して熱を受けたハウジングも冷却液によって冷却される。ステータからの熱で温められた冷却液は、電動モータの外部に設けられたラジエータやオイルクーラなどの熱交換器において放熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2系統の流路(コイルエンドを通過する流路と、ハウジング自体に形成した流路)に冷却液を送る供給路と、これらの流路から冷却液を取り出す排出路の位置や構造によっては、電動モータの大型化や、冷却液の流れのむらなどの課題が生じる。
【0005】
本開示の目的の一つは、電動モータの大型化を抑えつつ、冷却液を効率的に循環できる電動モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示で提案する電動モータの一例は、軸を中心として回転可能なロータと、半径方向において前記ロータと対向し、コイルを有しているステータと、を有しているモータ本体と、前記モータ本体を収容しているハウジングと、前記ハウジングの内面に沿って規定され、前記コイルの第1コイルエンドを収容している第1コイルエンド収容路と、前記第1コイルエンドとは反対側にある第2コイルエンドを収容している第2コイルエンド収容路とを含み、冷却液が充填されているステータ冷却流路と、前記ハウジングの内面と外面との間に形成され、回転方向において前記モータ本体を取り囲んでいる主流路を含み、冷却液が充填されているハウジング冷却流路とを有している。前記ハウジングは、前記モータ本体に対して半径方向の外側に位置し、前記半径方向の外側に突出しているハウジング凸部を有している。前記ステータ冷却流路は、前記ハウジング凸部に形成され、前記第1コイルエンド収容路に接続している第1の端流路と、前記ハウジング凸部に形成され、前記第2コイルエンド収容路に接続している第2の端流路とを含む。前記ハウジング冷却流路は、前記ハウジング凸部に形成され、前記ハウジング冷却流路の前記主流路の一方の端部に接続している第3の端流路と、前記ハウジング凸部に形成され、前記主流路の他方の端部に接続している第4の端流路とを含む。前記第3の端流路と前記第4の端流路は前記回転方向において離れている。前記第1の端流路の少なくとも一部の前記回転方向における位置と、前記第2の端流路の少なくとも一部の前記回転方向における位置は、前記第3の端流路と前記第4の端流路との間である。
【0007】
この電動モータでは、4本の端流路がハウジング凸部に纏めて形成されている。そのため、ハウジングの大型化を抑えることができる。また、回転方向における第1の端流路の位置と第2の端流路の位置を近づけることができる。その結果、第1コイルエンド収容路と第2コイルエンド収容路における冷却液の流れのむらを、低減できる。
【0008】
(2)(1)に記載の電動モータにおいて、前記第1の端流路と前記第2の端流路と前記第3の端流路と前記第4の端流路のうちの少なくとも1つは、前記軸方向に伸びている軸方向流路と、前記軸方向流路に接続し且つ前記軸を中心とする円の接線の方向に伸びている接線方向流路とを含んでよい。例えば、冷却流路から半径方向の外側に向かって端流路が形成される場合に比して、端流路の開口端(配管接続部)の位置についての自由度を確保できる。
【0009】
(3)本開示で提案する電動モータの他の例は、軸を中心として回転可能なロータと、半径方向において前記ロータと対向し、コイルを有しているステータと、を有しているモータ本体と、前記モータ本体を収容しているハウジングと、前記ハウジングの内面に沿って規定され、前記コイルの第1コイルエンドを収容している第1コイルエンド収容路と、前記第1コイルエンドとは反対側にある第2コイルエンドを収容している第2コイルエンド収容路とを含み、冷却液が充填されているステータ冷却流路と、前記ハウジングの内面と外面との間に形成され、回転方向において前記モータ本体を取り囲んでいる主流路を含み、冷却液が充填されているハウジング冷却流路とを有している。前記ハウジングは、前記モータ本体に対して半径方向の外側に位置し、前記半径方向の外側に突出しているハウジング凸部を有している。前記ステータ冷却流路は、前記ハウジング凸部に形成され、前記第1コイルエンド収容路に接続している第1の端流路と、前記ハウジング凸部に形成され、前記第2コイルエンド収容路に接続している第2の端流路とを含む。前記ハウジング冷却流路は、前記ハウジング凸部に形成され、前記ハウジング冷却流路の前記主流路の一方の端部に接続している第3の端流路と、前記ハウジング凸部に形成され、前記主流路の他方の端部に接続している第4の端流路とを含む。前記第1の端流路と前記第2の端流路と前記第3の端流路と前記第4の端流路のうちの少なくとも1つは、軸方向に伸びている軸方向流路と、前記軸方向流路に接続し且つ前記軸を中心とする円の接線に沿った方向に伸びている接線方向流路とを含む。
【0010】
この電動モータでは、4本の端流路がハウジング凸部に纏めて形成されている。そのため、ハウジングの大型化を抑えることができる。また、端流路の少なくとも1つが軸方向流路と接線方向流路とを含むので、例えば、冷却流路から半径方向の外側に向かって端流路が形成される場合に比して、端流路の開口端(配管接続部)の位置についての自由度を確保できる。
【0011】
(4)(1)又は(3)の電動モータにおいて、前記第1の端流路は、前記第1コイルエンド収容路に向かって前記軸方向に沿って伸びている軸方向流路を含み、前記第2の端流路は、前記第2コイルエンド収容路に向かって前記軸方向に沿って伸びている軸方向流路を含んでよい。第1の端流路の開口端(配管接続部)と第2の端流路の開口端の位置についての自由度を確保できる。
【0012】
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の電動モータにおいて、前記第1の端流路と前記第2の端流路と前記第3の端流路と前記第4の端流路は、前記軸を中心とする円柱面に接する接平面に沿って形成されてよい。これによると、ハウジング凸部の高さを低減できる。
【0013】
(6)(1)~(5)のいずれかに記載の電動モータにおいて、前記第1の端流路と前記第2の端流路と前記第3の端流路と前記第4の端流路のうち少なくとも2つ端流路は、前記軸を中心とする円柱面に接する接平面に沿って形成されている部分を有してよい。前記少なくとも2つ端流路の前記部分は、前記電動モータを軸方向に見たときに、重なっていてよい。これによると、ハウジング凸部の高さを低減できる。
【0014】
(7)(1)~(6)のいずれかに記載の電動モータにおいて、前記ハウジング凸部は、前記軸を中心とする円の接線の方向における一方側に向いている第1の面と、前記第1の面とは反対側に向いている第2の面とを有してよい。前記第1の端流路と前記第2の端流路と前記第3の端流路と前記第4の端流路のうちの少なくとも1つは、前記第1の面又は第2の面に形成されている開口を有してよい。これによると、車両やロボット等の装置に電動モータを搭載したときに、ハウジング凸部に対して半径方向の外側に、他の部品を配置するためのスペースを確保することが容易となる。
【0015】
(8)(7)の電動モータにおいて、前記ハウジング凸部は、前記軸を中心とする円の接線の方向における一方側に向いている第1の面と、前記第1の面とは反対側に向いている第2の面とを有してよい。前記4つの開口端のそれぞれは、前記第1面又は前記第2面に形成されてよい。これによると、車両やロボット等の装置に電動モータを搭載したときに、ハウジング凸部に対して半径方向の外側に、他の部品を配置するためのスペースを確保することが、更に容易となる。
【0016】
(9)(1)~(8)のいずれかに記載の電動モータにおいて、前記ステータ冷却流路は、前記第1コイルエンド収容路と前記第2コイルエンド収容路とを接続する連絡流路を含み、前記連絡流路は、前記軸を含む平面を挟んで、前記第1の端流路及び前記第2の端流路とは反対側に位置してよい。これによれば、2つのコイルエンド収容路の全体に、バランス良く冷却液を供給することが容易となる。
【0017】
(10)(1)~(9)のいずれかに記載の電動モータにおいて、前記連絡流路は、前記ハウジングに形成されてよい。これによると、連絡流路の存在によってステータコアの磁路が狭小化することを回避できる。
【0018】
(11)(1)~(10)のいずれかに記載の電動モータにおいて、前記第1の端流路と前記第3の端流路と前記第4の端流路のそれぞれは、前記ハウジング凸部の前記軸方向における一方側に向いている側面に、開口端を有してよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示で提案する電動モータの一例の左側を示す斜視図である。
【
図3】
図1で示す電動モータの右側を示す斜視図である。
【
図5】
図1で示す電動モータが有しているステータの斜視図である。
【
図7】
図6中の破線VIIで示す範囲の拡大図である。
【
図8】
図6中の破線VIIIで示す範囲の拡大図である。
【
図9A】
図1で示す電動モータの正面図である。ハウジング冷却流路が破線で示されている。
【
図9B】
図1で示す電動モータの正面図である。ステータ冷却流路が破線で示されている。
【
図12B】
図12Aの拡大図である。ハウジング筒部に取り付けられている端子台も示されている。
【
図13】右側のハウジングカバー部の側面(ハウジング筒部に向いた面)を示す図である。
【
図14】左側のハウジングカバー部の側面(ハウジング筒部に向いた面)を示す図である。
【
図15A】電動モータの断面斜視図である。副連絡流路が示されている。
【
図18】ステータコアの第1変形例を示す断面図である。
【
図19】ステータコアの第2変形例を示す断面図である。
【
図20】ステータの変形例を示す断面図である。コイル(電線)を取り囲むシートが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示で提案する電動モータについて説明する。以下の説明では、電動モータの例として、
図1等で示す電動モータ10について説明する。電動モータ10は、例えば、電動車両や、船舶、無人航空機、ロボットなどの動力源、及びそれらにおける発電機として利用され得る。
【0021】
以下の説明では、
図1等で示すZ1方向及びZ2方向をそれぞれ上方及び下方と称する。また、X1-X2方向を軸方向又は左右方向と称し、X1方向及びX2方向を、それぞれ右方及び左方と称する。Y1-Y2方向を前後方向と称し、Y1方向及びY2方向を、それぞれ前方及び後方と称する。また、
図1で示すDrを回転方向と称する。
【0022】
これらの方向は、電動モータ10の要素(部品、部材、部位)の相対的な位置関係を説明するために規定されており、電動モータ10の使用時の姿勢を限定するものではない。従って、電動モータ10は、乗り物や、輸送機、ロボットなどの装置に搭載されたとき、後述する回転軸38が装置の左右方向に向くように配置されたり、装置の上下方向に向くように配置されてよい。
【0023】
[電動モータの全体構成]
図1及び
図2で示すように、電動モータ10は、モータ本体30と、モータ本体30を収容しているハウジング20とを有している。
【0024】
図2で示すように、モータ本体30は、軸Axを中心として回転可能なロータ30rと、ステータ30sとを有している。ステータ30sは筒状であり、その内側にロータ30rが配置されている。言い換えれば、ステータ30sは、ロータ30rに対して半径方向の外側に配置されている。ステータ30sの内周面(後述するティース部31aの端面)は、ロータ30rと半径方向において対向している。モータ本体30は、軸Ax上に配置される回転軸38を有している。回転軸38はロータ30rの内側に挿入され、ロータ30rに固定されている。回転軸38とロータ30rは、軸Axを中心として、一体的に回転可能である。
【0025】
[ハウジング]
図2で示すように、ハウジング20(
図1参照)はハウジング筒部21を有している。ハウジング筒部21は、略筒状であり、軸方向の一方側(右側)と軸方向の反対側(左側)とに向かって開口している。ハウジング筒部21の内側にモータ本体30が位置している。言い換えれば、ハウジング筒部21は、モータ本体30に対して、半径方向の外側に位置している。ハウジング筒部21の内面に、ステータ30sの外周面(後述するステータコア31の外周面)が固定されている。
【0026】
ハウジング20(
図1参照)は、更に、ハウジング筒部21の左方に配置されるハウジングカバー部23と、ハウジング筒部21の右方に配置されるハウジングカバー部22とを有してよい。ハウジングカバー部23は、ハウジング筒部21の左側に取り付けられ、ハウジング筒部21の左側を閉じている。ハウジングカバー部22は、ハウジング筒部21の右側に取り付けられ、ハウジング筒部21の右側を閉じている。
【0027】
図1で示すように、左側のハウジングカバー部23に開口23nが形成され、回転軸38は開口23nを通ってハウジング20の外側(左側)に突出している。その一方、右側のハウジングカバー部22に、そのような開口は形成されていない(
図3参照)。ハウジングカバー部22は、カバー本体22Aと軸カバー部22Bとを有してよい。カバー本体22Aは、回転軸38に対応する位置に、開口を有してよい。軸カバー部22Bは、この開口を閉塞してよい。図で示す例とは異なり、回転軸38は、ハウジング20の左側と右側の双方に突出したり、右側にだけ突出していてもよい。
【0028】
[ステータ]
図6で示すように、ステータ30sは、ステータコア31と、コイル32とを有している。ステータコア31は、筒状のヨーク部31bと、ヨーク部31bから、半径方向における内側に向かって(軸Axに向かって)伸びている複数のティース部31aとを有している。ティース部31aは、回転方向において間隔を空けて並んでいる。ステータコア31は、例えば、軸方向に積層された複数の電磁鋼板で構成される。ステータコア31は、軟磁性鉄粉(圧粉材料)で形成されていてもよい。
【0029】
電動モータ10は、例えば3相交流で駆動する電動機であり、
図7で示すように、コイル32は3本の電線32u・32v・32wを有する。各電線32u・32v・32wは、ステータコア31のティース部31a間に挿入される、平型の導体棒32a(
図8及び
図16参照)を有してよい。導体棒32aの端部32c(
図7参照)が、別の導体棒32aの端部32cと接続(溶接)することで、各電線32u・32v・32wを構成してよい。
図7で示すように、電線32u・32v・32wは、その端部に、端子部32hを有している。端子部32hは、後述する端子台51に固定される。
【0030】
コイル32の構造は、これに限られない。各電線32u・32v・32wは、可撓性を有する電線であってよい。そして、各電線はティース部31aに巻回されてもよい。また、電動モータ10は、3相交流でなく、5相交流や、7相交流などで駆動するモータであってもよい。また、電動モータ10は、2相交流で駆動してもよい。
【0031】
[ロータ]
ロータ30rは、回転方向で並んでいる複数の永久磁石とロータコアとを有してよい。永久磁石は、例えば、ロータコアに形成された貫通孔に挿入され、ロータコアによって保持されていてよい。これとは異なり、永久磁石は、円柱状のロータコアの表面に固定されていてもよい。ロータコアは、樹脂によって形成されたり、或いは電磁鋼板によって形成されてよい。
【0032】
[冷却流路]
電動モータ10は、ステータ冷却流路F10(
図9B参照)と、ハウジング冷却流路F20(
図9A参照)とを有している。
【0033】
ステータ冷却流路F10には、ステータ30sを冷却する冷却液が充填される。ステータ冷却流路F10に充填される冷却液(
図11Aにおいて流路F11・F12に充填されている冷却液)は、コイル32のコイルエンド32e・32f(
図11A参照)を通過する。ここで、コイルエンド32e・32fとは、コイル32のうち、ステータコア31の側面31c・31dから軸方向に突出している部分である。コイル32への通電により発生する熱は、この冷却液によって吸収される。冷却液としては、絶縁性の液体(油)を利用できる。
【0034】
電動モータ10の駆動時、コイル32に電流が流れることで発生した熱はステータコア31に伝わり、またステータコア31を流れる磁束によって、ステータコア31自体が熱を発する。これらの熱はハウジング20に伝わり、ハウジング20も高温となる。ハウジング冷却流路F20(
図9B参照)に充填される冷却液は、ハウジング20の内部を通過し、ハウジング20に伝わった熱を吸収する。冷却液としては、水が利用できる。ステータ冷却流路F10を流れる冷却液と同様、絶縁性の液体(油)が利用されてもよい。
【0035】
ステータ冷却流路F10は、図示していない熱交換器(オイルクーラ)に接続される。ステータ冷却流路F10を流れる冷却液は、配管を通してこの熱交換器に送られる。ハウジング冷却流路F20は、図示していない熱交換器(ラジエータ)に接続される。ハウジング冷却流路F20を流れる冷却液は、配管を通して熱交換器に送られる。
【0036】
[ステータ冷却流路]
ステータ冷却流路F10は、
図2及び
図11Aで示すように、右側のコイルエンド32eを収容しているコイルエンド収容路F11を有している。コイルエンド収容路F11は、ハウジング20の内面に沿って形成されている。より具体的には、コイルエンド収容路F11は、右側のハウジングカバー部22の内面に沿って形成されている。コイルエンド収容路F11は、軸方向で見たときに、軸Axを取り囲んでいる。コイルエンド収容路F11は、コイルエンド32eの全体を収容している。コイルエンド32eは、コイルエンド収容路F11を流れる冷却液に浸っている。
【0037】
また、ステータ冷却流路F10は、
図4及び
図11Aで示すように、ステータコア31を挟んで、右側のコイルエンド収容路F11とは反対側に、コイルエンド収容路F12を有している。コイルエンド収容路F12は、左側のコイルエンド32fを収容している。コイルエンド収容路F12は、ハウジング20の内面に沿って形成されている。より具体的には、コイルエンド収容路F12は、左側のハウジングカバー部23の内面に沿って形成されている。コイルエンド収容路F12は、軸方向で見たときに、軸Axを取り囲んでいる。コイルエンド収容路F12は、コイルエンド32fの全体を収容している。コイルエンド32fは、コイルエンド収容路F12を流れる冷却液に浸っている。
【0038】
右側のコイルエンド収容路F11と左側のコイルエンド収容路F12は、ハウジング20に形成された、軸方向に伸びている連絡流路F15(
図11A参照)を介して、相互に連結されていている。この連絡流路F15については、後において詳説する。
【0039】
右側のハウジングカバー部22は、
図11Aで示すように、回転軸38を支持する軸支持部22aを有している。軸支持部22aは筒状であり、その内側に軸受け41が配置されている。回転軸38の右部は、この軸受け41を介して軸支持部22aによって支持されている。
【0040】
軸支持部22aに対して半径方向の外側に、右側のコイルエンド32eが位置している。
図11Bで示すように、コイルエンド収容路F11は、軸支持部22aの外周面と、ハウジングカバー部22の内面と、ハウジング筒部21の右側面21aと、ステータコア31の右側面31cとで規定される空間である。これらによって、回転軸38を取り囲む環状のコイルエンド収容路F11が規定されている。
【0041】
左側のハウジングカバー部23は、
図11Aで示すように、回転軸38を支持する軸支持部23aを有している。軸支持部23aは筒状であり、その内側に軸受け42が配置されている。回転軸38の左部は、この軸受け42を介して軸支持部23aによって支持されている。
【0042】
図11Aで示すように、軸支持部23aに対して半径方向の外側に、左側のコイルエンド32fが位置している。コイルエンド収容路F12は、軸支持部23aの外周面と、左側のハウジングカバー部23の内面と、ハウジング筒部21の左側面21bと、ステータコア31の左側面31dとで規定される空間である。これらによって、回転軸38を取り囲む環状のコイルエンド収容路F12が規定されている。
【0043】
[ロータ収容室とステータ冷却流路との仕切り構造]
図11Aで示すように、ハウジング20の内部に、ロータ30rが収容されているロータ収容室S3が形成されている。このロータ収容室S3と、コイルエンド収容路F11・F12との間に、ロータ収容室S3への冷却液の浸入を阻止する仕切り構造が形成されている。
【0044】
具体的には、ステータ30sは、樹脂部33(
図6参照)を有している。樹脂部33は樹脂によって成形されている。樹脂部33は、例えば、ステータコア31とともにインサート成形によって形成され、ステータコア31と一体化していてよい。すなわち、金型内にステータコア31が配置され、その後にその金型内に樹脂部33の材料である溶融樹脂が供給されてよい。これにより、樹脂部33とステータコア31とが一体化していてよい。
【0045】
図11Bで示すように、樹脂部33は、ステータコア31の右側面31cを超えて、軸方向に伸びている筒状の仕切り部33a(
図6参照)を有している。仕切り部33aの内側に、仕切りリング34aが配置されている。仕切りリング34aは、例えば金属によって形成される。仕切りリング34aの内側に軸支持部22aが位置している。軸支持部22aの外周面と、仕切りリング34aの内周面との間に、シール部材43aが配置されている。これにより、右側のコイルエンド収容路F11を流れる冷却液の、ロータ収容室S3への浸入が、阻止されている。
【0046】
図11Aで示すように、樹脂部33は、ステータコア31の左側面31dを超えて、軸方向に伸びている筒状の仕切り部33bを有している。仕切り部33bの内側に、仕切りリング34b(
図6参照)が配置されている。仕切りリング34bも、例えば金属によって形成される。仕切りリング34bの内側に、軸支持部23aが位置している。軸支持部23aの外周面と仕切りリング34bの内周面との間には、シール部材43bが配置されている。これにより、コイルエンド収容路F12を流れる冷却液の、ロータ収容室S3へ浸入が、阻止されている。
【0047】
このように、仕切り構造には、金属製の仕切りリング34a・34bが利用されるので、仕切りリング34a・34bとシール部材43a・43bとの密着性が確保され、シール性能が向上され得る。
【0048】
仕切りリング34a・34bは、樹脂部33及びステータコア31とともに、インサート成形によって、樹脂部33と一体化していてよい。この構造によると、仕切り構造がステータ30sと一体化することとなり、電動モータ10の組み立て工程を容易化できる。
【0049】
図11Aで示すように、左側のハウジングカバー部23は、コイルエンド32fに対して半径方向の外側に位置し、コイルエンド32fを取り囲む外周部23bを有している。また、ハウジングカバー部23は、軸支持部23aから外周部23bに向かって半径方向に伸びている側部23cを有している。
【0050】
図11Bで示すように、右側のハウジングカバー部22は、コイルエンド32eに対して半径方向の外側に位置し、コイルエンド32eを取り囲む外周部22bを有している。また、右側のハウジングカバー部22は、軸支持部22aから外周部22bに向かって半径方向に伸びている側部22cを有している。側部22cに、回転軸38の端部を覆う軸カバー部22Bが取り付けられてよい。
【0051】
[ハウジング冷却流路]
ハウジング冷却流路F20は、ハウジング20の厚さの範囲内に形成されている。すなわち、ハウジング冷却流路F20は、ハウジング20の内面と外面との間に形成されている。
【0052】
具体的には、ハウジング冷却流路F20は、ハウジング筒部21の内面21c(
図12A参照)と外面21d(
図12A参照)との間に形成されている流路F21(
図2、
図12参照)を含んでいる。(以下では、この流路F21を「軸方向流路」と称する。)また、ハウジング冷却流路F20は、右側のハウジングカバー部22の内面22e(
図13参照)と外面22f(
図13参照)との間に形成されている流路F22(
図2、
図13参照)を含んでいる。更に、ハウジング冷却流路F20は、左側のハウジングカバー部23の内面23e(
図14参照)と外面23f(
図14参照)との間に形成されている流路F23(
図4及び
図14参照)を含んでいる。(以下では、この流路F22・F23を「回転方向流路」と称する。)
【0053】
[2系統の冷却流路の位置関係]
このように、ハウジングカバー部22・23の内面22e・23eに沿って、ステータ冷却流路F10の一部(コイルエンド収容路F11・F12)が形成され、ハウジングカバー部22・23の内面22e・23eと外面22f・23fの間に、ハウジング冷却流路F20の一部(回転方向流路F22・F23)が形成されている。そのため、ステータ冷却流路F10を流れる冷却液の熱を、ハウジング冷却流路F20を流れる冷却液に吸収できる。その結果、例えば、ステータ冷却流路F10に充填されている冷却液のための熱交換器に求められる性能を低減できる。そのため、電動モータ10を車両等の装置に搭載したときに、サイズの小さな熱交換器を利用することが可能となる。
【0054】
また、2つのハウジングカバー部22・23の双方に、コイルエンド収容路F11・F12と、ハウジング冷却流路F20の一部(回転方向流路F22・F23)が形成されている。そのため、ステータ冷却流路F10を流れる冷却液の熱を、より効果的に、ハウジング冷却流路F20を流れる冷却液に吸収できる。
【0055】
図2で示されるように、右側のハウジングカバー部22に形成されている回転方向流路F22は、コイルエンド収容路F11に対して、半径方向の外側に位置している。つまり、軸Axに対して直交する方向に電動モータ10を見たときに、回転方向流路F22とコイルエンド収容路F11は、重なる。これにより、ステータ冷却流路F10を流れる冷却液の熱を、ハウジング冷却流路F20を流れる冷却液に、より効果的に吸収できる。
【0056】
また、右側のハウジングカバー部22に形成されている回転方向流路F22は、右側のコイルエンド32eに対して、半径方向の外側に位置している。つまり、軸Axに対して直交する方向に電動モータ10を見たときに、回転方向流路F22は、コイルエンド32e自体と重なる。これによると、回転方向流路F22とコイルエンド32eとの距離が小さくなるので、コイルエンド32eを通過する冷却液の熱を、回転方向流路F22を流れる冷却液によって、効果的に吸収できる。
【0057】
このことは、左側のハウジングカバー部23に形成されている流路F23・F12において、同様に成立している。すなわち、
図4で示すように、ハウジングカバー部23に形成されている回転方向流路F23は、コイルエンド収容路F12に対して、半径方向の外側に位置している。従って、軸Axに対して直交する方向に電動モータ10を見たときに、回転方向流路F23とコイルエンド収容路F12は、重なる。
【0058】
また、左側のハウジングカバー部23に形成されている回転方向流路F23は、コイルエンド32fに対して、半径方向の外側に位置している。つまり、軸Axに対して直交する方向に電動モータ10を見たときに、回転方向流路F23は、コイルエンド32f自体と重なる。これによると、回転方向流路F23とコイルエンド32fとの距離が小さくなるので、コイルエンド32fを通過する冷却液の熱を、回転方向流路F23を流れる冷却液によって効果的に吸収できる。
【0059】
[ハウジング冷却流路の詳細]
図2及び
図9Aで示すように、ハウジング筒部21には、軸方向で伸びている複数の軸方向流路F21が形成されている。各軸方向流路F21はハウジング筒部21を軸方向に貫通している。複数の軸方向流路F21は、回転方向で並んでいる。
【0060】
図2及び
図13で示すように、右側のハウジングカバー部22には、回転方向で並んでいる複数の回転方向流路F22が形成されている。各回転方向流路F22は、左側に向かって(ハウジング筒部21に向かって)開口している凹部(溝部)である。各回転方向流路F22は、回転方向において隣り合う2つの軸方向流路F21の端部に位置し、それらを接続している。
【0061】
また、
図4及び
図14で示すように、左側のハウジングカバー部23にも、回転方向で並んでいる複数の回転方向流路F23が形成されている。各回転方向流路F23は、右側に向かって(ハウジング筒部21に向かって)開口している凹部(溝部)である。各回転方向流路F23は、回転方向において隣り合う2つの軸方向流路F21の端部に位置し、それらを接続している。
【0062】
このような流路F21・F22・F23の構造により、ハウジング冷却流路F20がハウジング20の全体に広がっており、高い冷却性能が確保され得る。
【0063】
なお、複数の回転方向流路F22、複数の軸方向流路F21、及び、複数の回転方向流路F23は、連続した1本の流路を形成するように、接続されている。
図9Aには、回転方向で並んでいる3本の軸方向流路F21a・F21b・F21cが形成されている。ハウジングカバー部22に形成されている回転方向流路F22は、2本の軸方向流路F21a・F21bの右側に位置し、これらを接続している。ハウジングカバー部23に形成されている回転方向流路F23は、2本の軸方向流路F21b・F21cの左側に位置し、これらを接続している。これにより、連続した1本の流路が形成されている。
【0064】
軸方向流路F21は、ハウジング筒部21を軸方向に貫通するので、軸方向流路F21の形成作業を容易化できる。例えば、切削加工を要すること無く、鋳造によって軸方向流路F21を形成することが可能となる。また、回転方向流路F22・F23は、ハウジングカバー部22・23の側面に形成された凹部(溝部)である。このため、例えば切削加工を要すること無く、鋳造によって回転方向流路F22・F23を形成することが可能となる。
【0065】
図13、
図14で示すように、コイルエンド収容路F11・F12は、軸Axを中心として形成されている。(
図13、
図14において、コイルエンド収容路F11・F12の領域にはパターンが施されている。)コイルエンド収容路F11・F12は、軸Axを中心として360度に亘って形成されていてよい。コイルエンド収容路F11・F12は、回転軸38を支持する軸支持部22a・23aを中心とする環状であってよい。
【0066】
上述したように、ハウジングカバー部22・23には、複数の回転方向流路F22・F23が形成されている。
図13で示すように、複数の回転方向流路F22は、コイルエンド収容路F11に対して半径方向の外側に位置し、軸Axを中心として形成され、コイルエンド収容路F11を取り囲んでいる。また、
図14で示すように、複数の回転方向流路F23は、コイルエンド収容路F12に対して半径方向の外側に位置し、軸Axを中心として形成され、コイルエンド収容路F12を取り囲んでいる。これにより、コイルエンド収容路F11・F12を流れる冷却液から、熱を効果的に吸収できる。
【0067】
図13で示すように、複数の回転方向流路F22は、軸Axを中心とする角度範囲θ1に亘って、コイルエンド収容路F11を取り囲んでいる。ここで角度範囲θ1は180度以上であってよい。これにより、コイルエンド収容路F11を流れる冷却液から熱を、更に効果的に吸収できる。角度範囲θ1は270度以上であってよい。
【0068】
図14で示すように、複数の回転方向流路F23は、軸Axを中心とする角度範囲θ2に亘って、コイルエンド収容路F12を取り囲んでいる。ここで角度範囲θ2は180度以上であってよい。これにより、コイルエンド収容路F12を流れる冷却液から熱を、更に効果的に吸収できる。角度範囲θ2は270度以上であってよい。
【0069】
なお、
図13、
図14で示す例とは異なり、回転方向流路F22・F23が形成されてる角度範囲θ1・θ2は、270度より小さくてもよい。
【0070】
図13で示すように、回転方向において隣り合う2つの回転方向流路F22の間に、固定孔22iが形成されてよい。すなわち、軸Axから回転方向流路F22までの距離と、軸Axから固定孔22iまでの距離は、実質的に同じであってよい。この固定孔22iに差し込まれる螺子やボルトによって、ハウジングカバー部22はハウジング筒部21に固定される。固定孔22iの位置を、このように設計することによって、ハウジング20のサイズが増大することを抑えることができる。
【0071】
図14で示すように、回転方向において隣り合う2つの回転方向流路F23の間に、固定孔23iが形成されてよい。この固定孔23iに差し込まれる螺子やボルトによって、ハウジングカバー部23はハウジング筒部21に固定される。固定孔23iの位置をこのように設計することによって、ハウジング20のサイズが増大することを抑えることができる。
【0072】
図12Aで示すように、ハウジング筒部21には、この固定孔22i・23iに対応する固定孔21iが形成されてよい。この固定孔21iは、隣り合う2本の軸方向流路F21の間に位置していてよい。
【0073】
[ステータ冷却流路の端流路]
図3で示すように、ハウジング20は、モータ本体30に対して半径方向の外側に位置しているハウジング凸部20cを有している。ハウジング凸部20cは、半径方向の外側に突出している。すなわち、軸Axからハウジング凸部20cの端面(上面)21eまでの距離は、軸Axからハウジング20の外周面(円弧状に湾曲している外面21d)までの距離よりも大きい。このハウジング凸部20cに、後述する端子台51・52が取り付けられている。
【0074】
図3で示すように、ハウジング凸部20cは、例えば、ハウジング筒部21に形成されている凸部21hと、左右のハウジングカバー部23・22に形成されている凸部23h・22hとを有している。以下では、各凸部21h・22h・23hもハウジング凸部と称する。
【0075】
図10で示すように、ハウジング凸部21hには、ステータ冷却流路F10の一部として、コイルエンド収容路F11・F12に接続している端流路F13・F14が形成されている。例えば、右側のコイルエンド収容路F11に接続される端流路F13は、コイルエンド収容路F11に冷却液を供給する流路として機能してよい。反対に、左側のコイルエンド収容路F12に接続される端流路F14は、コイルエンド収容路F12から冷却液を排出するための流路として機能してよい。
【0076】
[ステータ冷却流路の連絡流路]
図11A及び
図12Aで示すように、ステータ冷却流路F10は、右側のコイルエンド収容路F11と左側のコイルエンド収容路F12とを接続する連絡流路F15を有してよい。コイルエンド収容路F11に導入された冷却液は、連絡流路F15を通過して、コイルエンド収容路F12に向かって流れる。
【0077】
図12Aで示すように、連絡流路F15は、軸Axを含む平面P1を挟んで端流路F13・F14とは反対側に位置している。連絡流路F15のこの配置によると、端流路F13から導入された冷却液は、右側のコイルエンド収容路F11の全体を通過して、連絡流路F15に達する。また、連絡流路F15から出た冷却液は、左側のコイルエンド収容路F12の全体を通過して、端流路F14に達する。つまり、コイルエンド32e・32fの全体を冷却できる。
【0078】
図12A等で示す例では、連絡流路F15は、軸Axを中心とする回転方向において、端流路F13・F14から180度の位置に形成されている。これにより、コイルエンド32e・32fの全体を、効果的に冷却できる。
【0079】
連絡流路F15の配置は、
図12A等で示す例に限られない。例えば、ステータ冷却流路F10は、回転方向に離れている2つの連絡流路F15を有してもよい。この場合、この2つの連絡流路F15は、平面P1を挟んで端流路F13・F14とは反対側に位置するものの、端流路F13・F14から180度の位置には無くてもよい。
【0080】
図12Aで示すように、連絡流路F15は、ハウジング筒部21に形成されてよい。より具体的には、連絡流路F15は、ハウジング筒部21の内面21cと外面21dとの間に形成されていてよい。連絡流路F15は、ハウジング筒部21を軸方向に貫通している。このように、連絡流路F15を、ハウジング筒部21に形成することにより、ステータコア31には連絡流路として機能する溝を形成する必要がない。その結果、ステータコア31に形成される磁路の幅を十分に確保できる。
【0081】
連絡流路F15の端部は、ハウジングカバー部22・23に位置している。右側のハウジングカバー部22には、凹部22j(
図2、及び
図11A参照)が形成され、左側のハウジングカバー部23には、凹部23j(
図4、
図12参照)が形成されてよい。この凹部22j・23jが連絡流路F15の端部として機能してよい。
【0082】
なお、連絡流路F15の構造は、
図11等で示す例に限られない。例えば、連絡流路F15は、ハウジング筒部21の内面21cに形成されている凹部(溝部)であってもよい。この場合、連絡流路F15は、内面21cに形成された凹部と、ステータコア31の外周面とによって規定される。この場合でも、ステータコア31に形成される磁路の幅を十分に確保できる。
【0083】
これとは異なり、連絡流路F15は、ステータコア31の外周面に形成されている凹部(溝部)であってもよい。この場合、連絡流路F15は、ステータコア31の外周面に形成された凹部と、ハウジング筒部21の内面21cとによって規定される。
【0084】
[ステータ冷却流路の副連絡流路]
電動モータ10は、上述した連絡流路F15に加えて、回転方向で並んでいる複数の副連絡流路F16(
図15A及び
図15B)を有してもよい。回転方向における各連絡流路F16の幅は、回転方向における連絡流路F15の幅よりも小さくてよい。
【0085】
図8で示すように、ステータコア31は、その外周面に、副連絡流路F16として機能する凹部(溝)を有してよい。凹部は、ステータコア31の右側面31cから左側面31dまで、軸方向に伸びている。そして、この凹部と、ハウジング筒部21の内面とが、副連絡流路F16を規定してよい。この副連絡流路F16によって、一方のコイルエンド収容路F11から反対側のコイルエンド収容路F12への冷却液の流れを円滑化できる。
【0086】
複数の副連絡流路F16は、ステータコア31の全周に亘って形成されてもよい。これとは異なり、複数の副連絡流路F16は、ステータコア31の外周面における一部にだけ形成されてよい。
【0087】
図15Bで示すように、左側のハウジングカバー部23は、副連絡流路F16に対応する位置に、複数の凹部23kを有してよい。各凹部23kは、副連絡流路F16に対して軸方向に位置している。この凹部23kによって、副連絡流路F16における冷却液の流れを円滑化できる。
【0088】
回転方向において隣り合う2つの凹部23kの間に、仕切り壁23mが形成されてよい。この仕切り壁23mによって、副連絡流路F16を出た冷却液は、コイルエンド収容路F12に位置しているコイルエンド32fに向かって、スムーズに流れ得る。この仕切り壁23mが形成されていない場合、回転方向で並ぶ複数の凹部23kが繋がるため、回転方向の流路を形成することとなる。冷却液は、コイルエンド32fに向かって流れることなく、凹部23kによって形成される流路を通って、ハウジング凸部20cに形成されている端流路F14に向かって流れる。ところが、電動モータ10においては、この仕切り壁23mによって、そのような流れが規制される。その結果、冷却液は、
図15Bの矢印で示されるように、副連絡流路F16の出口からコイルエンド32fに向かってスムーズに流れる。
【0089】
なお、
図8、
図15A、
図15B等で示す例とは異なり、ハウジング筒部21の内周面に、副連絡流路F16として機能する凹部(溝)が形成されてよい。さらに他の例として、電動モータ10は、このような副連絡流路F16を有していなくてもよい。
【0090】
[2系統の冷却流路の端流路の詳細]
上述したように、ステータ冷却流路F10は、ハウジング凸部21hに形成され、コイルエンド収容路F11・F12にそれぞれ接続している端流路F13・F14を有している。以下の説明では、端流路F13を「供給端流路」と称し、端流路F14を「排出端流路」と称する。
【0091】
図10で示すように、ハウジング冷却流路F20は、ハウジング凸部21hに形成されている端流路F24・F25を有している。端流路F24・F25は、ハウジング冷却流路F20の主流路に接続している。ここで、主流路とは、ハウジングカバー部22・23に形成されている回転方向流路F22・F23と、ハウジング筒部21に形成されている軸方向流路F21とに対応している。
【0092】
端流路F24は、例えば、主流路に冷却液を供給する流路であり、端流路F25は、例えば、主流路に冷却液を供給する流路である。以下の説明では、端流路F24を「供給端流路」と称し、端流路F25を「排出端流路」と称する。
【0093】
このように、4本の端流路F13・F14・F24・F25の全てが、ハウジング凸部21hに形成されている。そのため、ハウジング20において、ハウジング凸部21h以外の部分の外径を小さくできる。その結果、電動二輪車など電動モータ10を搭載する装置における電動モータ10の配置を、容易化できる。
【0094】
なお、
図10等で示す例では、ハウジング冷却流路F20の一部である端流路F24・F25は、ハウジング筒部21のハウジング凸部21hに形成されている。これとは異なり、端流路F24・F25は、左側のハウジングカバー部23のハウジング凸部23hに形成されたり、右側のハウジングカバー部22のハウジング凸部22hに形成されてもよい。
【0095】
図10で示すように、ステータ冷却流路F10の排出端流路F14と供給端流路F13は、略L字形状の部分を有してよい。すなわち、端流路F14・F13は、軸方向に伸びている軸方向流路F14a・13aと、軸方向流路F14a・F13aに接続している接線方向流路F14b・F13bとを含んでいてよい。接線方向流路F14b・F13bは、軸Axを中心とする円の接線(
図12Aにおいて符号P2で示す線)に沿った方向に伸びていてよい。
【0096】
図10で示すように、ステータ冷却流路F10の端流路F14・F13は、その端部に、開口端(配管接続部)F14c・F13cを有している。配管接続部F14cには、ステータ冷却流路F10から冷却液を排出するための配管が接続され、配管接続部F13cには、ステータ冷却流路F10に冷却液を供給するための配管が接続される。
【0097】
このように、端流路F14・F13がL字形状の部分を有するので、配管接続部F14c・F13cの位置の自由度が確保され得る。
図10で示す例では、配管接続部F14c・F13cは、ハウジング凸部20cの前面21f或いは後面21gに形成されている。その結果、電動モータ10を車両など装置に搭載したときに、ハウジング20の上面21eの近くに他の部品を配置することが可能となる。ここで、「前面21f」は、軸Axを中心とする円の接線(
図12Aにおいて符号P2で示す線)の方向における前側を向いた面であり、「後面21g」は、同接線の方向における後側を向いた面である。
【0098】
図10で示すように、ハウジング冷却流路F20の排出端流路F25と供給端流路F24も、略L字形状の部分を有してよい。すなわち、端流路F25・F24は、軸方向に伸びている軸方向流路F25a・F24aと、軸方向流路F25a・F24aに接続している接線方向流路F25b・F24bとを含んでいてよい。接線方向流路F25b・F24bは、軸Axを中心とする円の接線に沿った方向に伸びていてよい。
【0099】
図10で示すように、ハウジング冷却流路F20の端流路F24・F25は、その端部に、開口端(配管接続部)F24c・F25cを有している。配管接続部F25cには、ハウジング冷却流路F20から冷却液を排出するための配管が接続され、配管接続部F24cには、ハウジング冷却流路F20に冷却液を供給するための配管が接続される。
【0100】
このように、端流路F24・F25がL字形状の部分を有するので、配管接続部F25c・F24cを、ハウジング凸部20cの前面21f或いは後面21gに形成することが可能となる。その結果、電動モータ10を電動二輪車など装置に搭載したときに、ハウジング20の上面21eの近くに他の部品を配置することが可能となる。
【0101】
図10で示すように、ハウジング凸部21hの前面21fには、4つの配管接続部F13c・F14c・F24c・F25cの一部が形成され、ハウジング凸部21hの後面21gには、残りの配管接続部が形成されている。より具体的には、2つの配管接続部F14c・F25cが前面21f形成され、ハウジング凸部21hの後面21gに2つの配管接続部F13c・F24cが形成されている。これにより、ハウジング凸部21hの前面21fと後面21gの面積を有効利用できる。
【0102】
図12Aで示すように、4本の端流路F13・F14・F24・F25の全てが、軸Axを中心とする円柱面に接する接平面P2に沿って形成されている。これにより、半径方向でのハウジング凸部21h・22h・23hのサイズ(突出量)を抑えることが可能となる。
【0103】
また、
図12Aで示すように、ハウジング20を軸方向に見たとき、端流路F13・F14・F24・F25は重なる部分を有してよい。また、ハウジング20を正面視したときに(
図10において矢印D1の方向にハウジング20を見たときに)、端流路F13・F14・F24・F25は、重なる部分を有してよい。つまり、端流路F13・F14・F24・F25は、軸Axを通る平面P1からの高さが実質的に同じ位置に形成されてよい。これにより、半径方向でのハウジング凸部21h・22h・23hのサイズ(突出量)を抑えることが可能となる。ここで、ハウジング20の正面視とは、軸Axに沿った方向とハウジング凸部21hの突出方向の双方に直交する方向にハウジング20を見ることである。
【0104】
図12Aで示されるように、軸方向にハウジング20を見たとき、例えば、ステータ冷却流路F10の排出端流路F14と、ハウジング冷却流路F20の供給端流路F24は、ステータ冷却流路F10の供給端流路F13に重なってよい。また、軸方向にハウジング20を見たとき、例えば、ステータ冷却流路F10の排出端流路F14と、ハウジング冷却流路F20の排出端流路F25とが、重なってよい。
【0105】
さらに、ハウジング20を正面視したときは(
図10において矢印D1の方向にハウジング20を見たときに)、ステータ冷却流路F10の排出端流路F14と、ハウジング冷却流路F20の供給端流路F24と、排出端流路F25とが重なってよい。
【0106】
図10で示すように、ハウジング冷却流路F20の2つの端流路F24・F25は、回転方向いおいて離れている。ステータ冷却流路F10の2つの端流路F13・14の一部(軸方向流路F13a・14a)の位置(回転方向における位置)は、端流路F24・F25の間である。この配置によると、ステータ冷却流路F10の2つの端流路F13・F14の位置が、回転方向において離れることを抑えることができる。
【0107】
図で示す例では、供給端流路F13の軸方向流路F13aと、排出端流路F14の軸方向流路F14aの回転方向における位置は、同じである。これにより、例えば、2つの端流路F13・F14の軸方向流路F13a・F14aの位置が回転方向に離れている場合に比して、2つのコイルエンド32e・32fの全体をバランス良く冷却することが容易となる。
【0108】
図10で示すように、ステータ冷却流路F10の排出端流路F14と、ハウジング冷却流路F20の端流路F24・F25は、軸方向において左側に向かって伸びている軸方向流路F14a・F24a・F25aを有している。
【0109】
ステータ冷却流路F10の供給端流路F13は、右側のコイルエンド収容路F11に向かって、軸方向に伸びている軸方向流路F13aを含んでいる。反対に、ステータ冷却流路F10の排出端流路F14は、左側のコイルエンド収容路F12に向かって、軸方向に伸びている軸方向流路F14aを含んでいる。
【0110】
この構造によると、端流路F13・F14の開口端(配管接続部)F13c・F14cの、軸方向における位置の自由度を確保できる。例えば、軸方向流路F13aを短くし、軸方向流路F14aを長くすることによって、配管接続部F13c・F14cを右側のハウジングカバー部22寄りに形成できる。
【0111】
図10で示すように、ステータ冷却流路F10において、排出端流路F14の接線方向流路F14bは、端流路F24・F25の間に形成されている。ハウジング冷却流路F20の排出端流路F25は、L字形状の排出端流路F14によって囲まれる領域に形成されている。また、ハウジング冷却流路F20の供給端流路F24は、排出端流路F14の軸方向流路F14aと、供給端流路F13の接線方向流路F13bとで囲まれる領域に形成されている。これにより、ハウジング凸部21hの小さなスペースを利用して、4本の端流路F13・F14・F24・F25が形成されている。
【0112】
なお、
図10等で示す例では、4本の端流路F13・F14・F24・F25の全てが略L字形状となっていた。これとは異なり、端流路F13・F14・F24・F25の一部だけが略L字形状であってもよい。例えば、ステータ冷却流路F10の端流路F13・F14だけは略L形状に形成され、ハウジング冷却流路F20の端流路F24・F25は、軸Axに対して直交する方向に伸びていてもよい。例えば、端流路F24・F25は、ハウジングカバー部22・23から上方に伸びていてもよい。
【0113】
また、
図10等で示す例では、4つの開口端(配管接続部)13c・14c・24c・25cは、ハウジング筒部21の前面21f又は後面21gに形成されている。しかしながら、開口端13c・14c・24c・25cは、ハウジングカバー部22・23のハウジング凸部22h・23hの前面又は後面に形成されてもよい。
【0114】
図10で示すように、4本の端流路F13・F14・F24・F25のそれぞれが、その端部に、配管接続部F13c・F14c・F24c・F25cを有している。そのため、2系統の流路(ステータ冷却流路F10とハウジング冷却流路F20)とに、異なる冷却液を提供できる。例えば、ステータ冷却流路F10には、冷却用の油を提供でき、ハウジング冷却流路F20には、冷却用の水を提供できる。
【0115】
ステータ冷却流路F10とハウジング冷却流路F20とには、同じ冷却液が提供されてもよい。この場合、例えば、ステータ冷却流路F10の供給端流路F13と、ハウジング冷却流路F20の供給端流路F24は、ハウジング凸部21hの内部で接続していてもよい。この場合、供給端流路F13・F24は共通の開口端(配管接続部)を有してもよい。同様に、ステータ冷却流路F10の排出端流路F14と、ハウジング冷却流路F20の排出端流路F25も、ハウジング凸部20cの内部で接続していてもよい。
【0116】
[端子台]
図4で示すように、電動モータ10は、ハウジング20に取り付けられている端子台51・52を有している。第1端子台51は、例えば、ハウジング筒部21に形成されているハウジング凸部21hに取り付けられてよい。第2端子台52は、例えば、右側のハウジングカバー部22に形成されているハウジング凸部22hに取り付けられてよい。
【0117】
図11Bで示すように、第1端子台51は、ハウジング20の内部(具体的には、上述したコイルエンド収容路F11)に配置される。コイル32の電線32u・32v・32wは、第1端子台51に固定されている。第2端子台52には、ハウジング20の内側(コイルエンド収容路F11)から、ハウジング20の外側に向かって伸びている3本の端子導体53(
図4参照)が固定されている。この3本の端子導体53が、電線32u・32v・32wの端部に設けられている端子部32h(
図5及び
図11B参照)とともに、第1端子台51に固定される。これにより、3本の端子導体53が、それぞれ電線32u・32v・32wに電気的に接続する。
【0118】
第1端子台51は、例えば、ハウジング筒部21の右側面21a(
図11B参照)に、例えば螺子で、固定される。端子部32hは、
図5で示すように、コイルエンド32eから、例えば、軸Axに対して直交する方向(
図5で示す例において上方)に伸びていてよい。端子部32hは、例えば、ボルト51aとナット51bとによって、第1端子台51に固定される。第1端子台51は、絶縁体(例えば樹脂)によって形成されてよい。第1端子台51には、インサート成形によって、ボルト51aが固定されていてよい。
【0119】
第2端子台52は、例えば、右側のハウジングカバー部22の上側に固定されていてよい。例えば、
図11Bで示すように、ハウジングカバー部22のハウジング凸部22hの上部に、開口が形成されていてよい。そして、第2端子台52は、この開口の内側に嵌められ、ハウジング凸部22hの上側に固定されてよい。
【0120】
第2端子台52も、絶縁体(例えば樹脂)によって成形されてよい。第2端子台52と端子導体53は、インサート成形によって形成されてよい。
図11Bで示すように、端子導体53は、ハウジング20の外部(ハウジング20の上側)に位置し第2端子台52によって保持されている外端子部53bと、外端子部53bから下方に伸びていて、ハウジング20の内部(コイルエンド収容路F11)に位置する内端子部53aとを有してよい。
【0121】
図11Bで示すように、端子導体53の内端子部53aは、ナット51bによって、電線32u・32v・32wの端子部32hとともに、第1端子台51に固定されている。電線32u・32v・32wと、端子導体53とが電気的に接続する。
【0122】
端子台51・52の支持構造は、図で示す例に限られない。例えば、第1端子台51と第2端子台52の双方が、ハウジング筒部21のハウジング凸部21hに取り付けられてもよい。この場合、第1端子台51と第2端子台52は、一体的に成形されていてよい。
【0123】
図11Bで示すように、右側のハウジングカバー部22は、第1端子台51に対して軸方向の位置に、開口22mを有している。ハウジングカバー部22には、この開口22mを閉じるカバー22nが取り付けられている。利用者は、この開口22mを通して、端子導体53と、電線32u・32v・32wの端子部32hとを、第1端子台51に固定する作業(ナット51bとボルト51aとを締結する作業)を行うことができる。
【0124】
[端子台と端流路との位置関係]
上述したように、ステータ冷却流路F10は、ハウジング凸部21hに形成されている端流路F13(
図10参照)を有している。端流路F13は、右側のコイルエンド収容路F11に冷却液を供給する流路(供給端流路)であってよい。第1端子台51は、
図11Bで示すように、端流路F13に対しては、軸方向における一方側(同図において、軸方向における右側)に位置している。また、第1端子台51は、コイル32に対して半径方向における外側に位置している。より具体的には、第1端子台51は、コイルエンド32eに対して半径方向における外側(上側)に位置している。
【0125】
第1端子台51は、ステータ冷却流路F10に面する部分を有している。具体的には、端流路F13からコイルエンド32eに向かう流路に、第1端子台51の左側面51cが面している。ここで、「第1端子台51がステータ冷却流路F10に面する」とは、第1端子台51の少なくとも一部が、ステータ冷却流路F10に充填された冷却液に触れることを意味する。
【0126】
第1端子台51のこの配置によると、軸Axから第1端子台51の距離が拡大することを抑えることができるので、電動モータ10のサイズを低減することが可能となる。
【0127】
ハウジング凸部21hは、軸方向に向いている右側面21aを有している。
図11Bで示すように、端流路F13は、右側面21aに形成されている開口端F13dを有している。第1端子台51は、開口端F13dに対して軸方向における一方側(具体的には、右側)に位置する部分を有する。すなわち、
図12Bで示すように、ハウジング凸部21hを軸方向に見たときに、開口端F13dの少なくとも一部が、第1端子台51と重なるように配置されている。
【0128】
これによると、軸Axから第1端子台51までの距離(第1端子台51の高さ)と、軸Axから開口端F13dまでの距離(高さ)とが概ね同じとなる。その結果、電動モータ10のサイズを低減することが可能となる。
【0129】
端流路F13の開口端F13dと、第1端子台51の左側面51cとの間には、ステータ冷却流路F10の一部として機能する隙間が確保されている。
図11Bで示すように、ハウジング凸部21hの右側面21aに、凹部21kが形成されている。端流路F13の開口端F13dは、この凹部21kの内側に形成されている。第1端子台51は、この凹部21kの周囲に固定されている。例えば、
図12Bで示すように、第1端子台51は、螺子51dによって、凹部21kの周囲に固定されてよい。
【0130】
この凹部21kにより、開口端F13dと、第1端子台51の左側面51cとの間に隙間が確保され、開口端F13dからコイルエンド32eに向かう流路が確保され得る。
【0131】
また、開口端F13dは凹部21kの内側に形成されており、その結果、ステータコア31の右側面31cよりも、軸方向の中心寄りに位置している。すなわち、開口端F13dは、ステータコア31に対して半径方向の外側に位置している。開口端13dと第1端子台51との隙間をこのような凹部21kによって確保するので、軸方向における電動モータ10のサイズの増大を抑えることができる。
【0132】
図11Bで示すように、第1端子台51は、凹部21kの一部を閉塞し、他の一部を開口するよう配置されている。より具体的には、第1端子台51は、凹部21kの上部領域A1(
図12B)を閉塞し、凹部21kの下部領域A2(
図12B)を開口するように配置されている。第1端子台51のこの配置によって、開口端F13dを出た冷却液は、下部領域A2を通過して、コイルエンド32eに流れることができる。
【0133】
また、この下部領域A2は、上部領域A1に対して、コイルエンド32e寄りの領域である。そのため、開口端F13dからコイルエンド32eに向けた流れが、円滑化され得る。
【0134】
図11Bで示すように、第1端子台51は、コイルエンド32eに対して半径方向の外側に位置している。言い換えれば、軸Axに対して垂直な方向で電動モータ10を見たときに、第1端子台51とコイルエンド32eとが重なる。その結果、第1端子台51は、コイルエンド32eに向けて冷却液を案内する。より具体的には、開口端F13dを出た冷却液は、コイルエンド32eの基部(ステータコア31寄りの部分)に向けて案内される。
【0135】
電線32u・32v・32wとして機能する導体棒32aは、コイルエンド32eにおいて曲げられており、回転方向に伸びている部分32i(
図7参照)を有している。
図11Bで示すように、第1端子台51の左側面51c(開口端F13dに対向する面)の軸方向での位置は、部分32iと同じ、又は、部分32iよりも軸方向での電動モータ10の中心寄りであってよい。第1端子台51とコイルエンド32eとの位置関係によって、第1端子台51は、コイルエンド32eにおいてステータコア31寄りの部分(基部)に、冷却液を案内することとなる。その結果、コイルエンド32eの熱を効率的に吸収できる。
【0136】
ハウジング筒部21の軸方向での幅は、ステータコア31の軸方向での幅に、実質的に一致している。上述したように、第1端子台51は、ハウジング筒部21の右側面21aに取り付けられている。そのため、第1端子台51の左側面51cの軸方向における位置は、ステータコア31の右側面31cの位置に、実質的に一致している。このことによって、第1端子台51は、コイルエンド32eにおいてステータコア31寄りの部分に向けて、冷却液を効果的に案内できる。
【0137】
なお、端流路F13から開口端13dからコイルエンド32eに向かう流路を確保する構造は、
図11B等で示す例に限られない。例えば、第1端子台51の左側面51cに凸部が形成されてよい。そして、この凸部によって、左側面51cと開口端F13dとの間の隙間が確保されてよい。この場合、ハウジング凸部21hの右側面21aに、凹部21kは形成されなくてもよい。これとは反対に、ハウジング凸部21hの右側面21aに凸部が形成されてよい。そして、この凸部によって第1端子台51の左側面51cが支持されてよい。この場合でも、左側面51cと開口端F13dとの間の隙間を確保することが可能である。
【0138】
なお、
図11B等で示す例では、端流路F13は、コイルエンド収容路F11に向けて冷却液を供給する流路(供給端流路)であった。これとは異なり、第1端子台51は、排出端流路F14(
図11A参照)の開口端に対向するように配置されてもよい。この場合、第1端子台51は、左側のコイルエンド32fから端流路F14に向けて、冷却液を案内できる。
【0139】
また、
図11Bで示す例では、冷却液は、第1端子台51の下縁51dの下側をコイルエンド32eに向けて通過していた。これとは異なり、第1端子台51には、軸方向にこれを貫通する貫通孔が形成されてもよい。この場合、開口端F13dを出た冷却液は、この貫通孔を通過して、コイルエンド収容路F11に流れることとなる。この場合、少なくとも貫通孔の内周面は、冷却液に触れることとなり、ステータ冷却流路F10に面する。
【0140】
[ステータの詳細]
ステータコア31は、回転方向で並んでいる複数のティース部31a(
図16参照)を有している。ティース部31aは、
図17で示すように、ロータ30rに対向する端面である対向面31gを有している。電動モータ10においては、ロータ30rは、ステータ30sの内側に配置されている。従って、各ティース部31aは環状のヨーク部31bから内側に向かって伸び、ステータコア31は、その内周面に、対向面31gを有している。
【0141】
図17で示すように、各ティース部31aは、その先端に、対向面31gを含む第1凸部31hを有している。第1凸部31hは、各ティース部31aの先端から、回転方向の一方側(時計回り)と、回転方向の反対側(反時計回り)とに突出している。隣り合う2本のティース部31aの間には、スロット31iが形成されている。第1凸部31hは、ティース部31aの側面31mよりも、スロット31iの回転方向での中心C1寄りに位置している。第1凸部31hの存在によって対向面31gの面積が拡大され、ステータコア31とロータ30rとの間の磁気抵抗が低減され得る。
【0142】
図17で示すように、隣り合う2本のティース部31aの間にスロット31iが形成されている。このスロット31iにコイル32が配置されている。より具体的には、スロット31iに複数の導体棒32aが配置されている。複数の導体棒32aは、隣り合う2本のティース部31aの間で、半径方向において一列で並んでいる。
【0143】
導体棒32a及びコイル32の配置及び構造は、
図17で示す例に限られない。例えば、隣り合う2本のティース部31aの間に配置される導体棒32aは、複数の列で並んでもよい。そして、導体棒32aは、各列において半径方向に並んでもよい。
【0144】
[樹脂部の閉塞部]
図17で示すように、隣り合う2本のティース部31aの先端の間には、隙間が形成されている。ステータ30sは樹脂部33を有している。樹脂部33は、隣り合う2本のティース部31aの間に位置している閉塞部33cを有している。閉塞部33cは、コイル32(より具体的には導体棒32a)よりも、ロータ30r側に位置している。そして、閉塞部33cは、隣り合う2本のティース部31aの先端の間の隙間を閉塞している。
【0145】
閉塞部33cは、ティース部31aの先端に形成されている第1凸部31hの間に位置している部分33eと、第1凸部31hとコイル32との間に形成されている部分33fとを有している。
【0146】
ステータ冷却流路F10に充填されている冷却液は、スロット31iに浸入する。閉塞部33cは、その冷却液が隣り合う2本のティース部31aの間を通って、ロータ収容室S3に浸入することを防止する。
【0147】
ステータコア31と、樹脂部33は、例えば、インサート成形によって形成されてよい。すなわち、ステータコア31を金型内に配置し、その金型内に樹脂部33の材料である溶融樹脂を供給してよい。このとき、仕切りリング34a・34b(
図6参照)も、ステータコア31と、樹脂部33とともに、インサート成形によって、樹脂部33に固定されてよい。その後に、各スロット31iに導体棒32aが挿入されてよい。
【0148】
[ステータコアの凸部]
図17で示すように、各ティース部31aは第1凸部31hに加えて、第2凸部31kを有している。第2凸部31kは、コイル32(より具体的には、導体棒32a)よりもロータ30r側に位置している。第2凸部31kは、導体棒32aに対して、半径方向の内側に位置している。
【0149】
図17で示すように、第2凸部31kは、例えば、各第1凸部31hから突出する部分であってよい。より具体的には、第2凸部31kは、第1凸部31hの先端から、半径方向での外側に向かって突出する部分であってよい。第2凸部31kは、その周囲にあるティース部31aの一部との間に、凹部を形成する部分である。
図17の例では、第2凸部31kと、ティース部31aの側面31mとの間に、凹部が形成されている。
【0150】
樹脂部33の閉塞部33cと、ティース部31aとが密着していない場合、冷却液が、閉塞部33cとティース部31aとの間を通過して、ロータ収容室S3に浸入する。これに対し、ステータ30sでは、第1凸部31hに加えて、第2凸部31kが形成されているので、冷却液が、閉塞部33cとティース部31aとの間の隙間を通過することを、効果的に抑えることができる。
【0151】
図17で示すように、第2凸部31kは、閉塞部33cに埋まっている。言い換えれば、第2凸部31kの外面の全体に沿って、閉塞部33cが形成されている。これにより、冷却液が、閉塞部33cとティース部31aとの間の隙間を通過することを、効果的に抑えることができる。
【0152】
また、第2凸部31kは、ティース部31aから突出している部分であるので、ティース部31aにおける磁路の狭小化することを回避できる。
【0153】
図17で示すように、ティース部31aの側面31mと、コイル32の電線(
図18の例において、導体棒32a)との間には、隙間G2が形成される。第2凸部31kの突出量Pkは、この隙間G2よりも大きいのが好ましい。これにより、冷却液が、閉塞部33cとティース部31aとの間の隙間を通過することを、効果的に抑えることができる。
【0154】
なお、導体棒32aの位置は、スロット31iの中心C1から回転方向にずれていてもよい。この場合、隙間G2は、導体棒32aの回転方向での幅と、スロット31iの回転方向での幅との差の半分であってよい。
【0155】
また、隙間G2は、導体棒32aの位置によって異なっていてもよい。例えば、隙間G2は、半径方向の外側に向かって徐々に大きくなってもよい。この場合、第2凸部31kの突出量Pkは、最も小さな隙間G2より大きくてよい。他の例として、第2凸部31kの突出量Pkは、隙間G2の平均より大きくてもよい。
【0156】
第2凸部31kの位置は、
図17で示す例に限られない。例えば、
図18で示す例では、第2凸部31nは、第1凸部31hよりも、半径方向の外側に位置している。そして、第2凸部31nは、ティース部31aの側面31mから、スロット31iの内側に向かって、回転方向に突出している。第2凸部31nは、各ティース部31aから、回転方向における一方側(時計回り)と、回転方向における反対側(反時計回り)とに突出している。第2凸部31nは、その周囲にあるティース部31aの一部との間に、凹部を形成している。具体的には、第2凸部31nと第1凸部31hとの間に、凹部が形成されている。
【0157】
図18で示す例においても、第2凸部31nの突出量Pnは、ティース部31aの側面31mと導体棒32aとの間に形成されている隙間G2よりも、大きいのが好ましい。これにより、冷却液が、閉塞部33cとティース部31aとの間の隙間を通過することを、効果的に抑えることができる。
【0158】
図17及び
図18で示す第2凸部31k・31nは、回転方向と半径方向の双方に傾斜した方向において、スロット31iの回転方向の中心C1に向かって伸びていてよい。
【0159】
また、これらの
図17及び
図18で示す第2凸部31k・31nは矩形であるが、これらの形状は、三角形など、他の形状であってもよい。例えば、
図19で示すように、第2凸部31pは、第1凸部31hの突出量Phと実質的に同じ幅を有する三角形である。第2凸部31pの突出量Ppは、
図17及び
図18の例と同様に、隙間G2よりも大きくてよい。第2凸部31pも、その周囲にあるティース部31aの一部との間に、凹部を形成している。具体的には、第2凸部31pと、ティース部31aの側面31mとの間に、凹部が形成されている。
【0160】
ステータコア31は、積層鋼板で形成されている。この場合、各鋼板が、上述したティース部31a、第1凸部31h、第2凸部31k(又は31n・31p)を構成する部分を有している。隣り合う2枚の鋼板は接着されていてよい。これにより、2枚の鋼板の間に冷却液が浸入することを抑えることができる。
【0161】
なお、ステータコア31は、軟磁性鉄粉(圧粉材料)で形成されていてもよい。この場合、凸部31h・31k・31n・31pも、ステータコア31の他の部分と一体的に形成されてよい。
【0162】
図17で示すように、樹脂部33は、絶縁層33gを有してよい。絶縁層33gはスロット31iの内面に形成されている。絶縁層33gは、各スロット31iに配置されている複数の導体棒32aの全体を取り囲んでいる。絶縁層33gは、コイル32(導体棒32a)とティース部31aとを絶縁している。絶縁層33gの端部(軸Ax寄りの端部)は閉塞部33cに接続しているのが好ましい。絶縁層33gは、樹脂部33の他の部分と一体的に成形されてよい。
【0163】
図20は、導体棒32aとステータコア31との絶縁構造の変形例を示す図である。同図において、スロット31iの内面には、絶縁シート35が配置されている。絶縁シート35は、樹脂部33とは別個に形成されたシートである。絶縁シート35は、各スロット31iに配置されている複数の導体棒32aの全体を取り囲んでいてよい。絶縁シート35は、コイル32(導体棒32a)とティース部31aとを絶縁している。
【0164】
図11Aで示すように、樹脂部33は、ステータコア31の右側面31cに形成されている環状のフランジ部33iと、ステータコア31の左側面31dに形成されている環状のフランジ部33jとを有してよい。また、樹脂部33は、フランジ部33i・33jから軸方向に伸びている筒状の仕切り部33a・33bを有してよい。仕切り部33a・33bは、樹脂部33の他の部分と一体的に成形されてよい。
【0165】
[まとめ]
(1)上述したように、ステータ冷却流路F10は、ハウジング凸部20cに形成されている第1の端流路F13と第2の端流路F14とを含む。ハウジング冷却流路F20は、ハウジング凸部20cに形成され、ハウジング冷却流路F20の主流路F21・F22・F23の一方の端部に接続している第3の端流路F24と、ハウジング凸部20cに形成され、主流路F21・F22・F23の他方の端部に接続している第4の端流路F25とを含む。第3の端流路F24と第4の端流路F25は回転方向において離れている。第1の端流路F13の少なくとも一部の回転方向における位置と、第2の端流路F14の少なくとも一部の回転方向における位置は、第3の端流路F24と第4の端流路F25との間である。
【0166】
この電動モータ10では、4本の端流路F13・F14・F24・F25がハウジング凸部20cに纏めて形成されている。そのため、ハウジング20の大型化を抑えることができる。また、回転方向における第1の端流路F13の位置と、第2の端流路F14の位置を近づけることができる。その結果、第1コイルエンド収容路F11と第2コイルエン収容路F12における冷却液の流れのむらを低減できる。
【0167】
(2)(1)に記載の電動モータ10において、第1の端流路F13と第2の端流路F14と第3の端流路F24と第4の端流路F25のうちの少なくとも1つは、軸方向に伸びている軸方向流路と、軸方向流路に接続し且つ軸Axを中心とする円の接線の方向に伸びている接線方向流路とを含んでいる。これによると、例えば、冷却流路から半径方向の外側に向かって端流路が形成される場合に比して、端流路の開口端(配管接続部)の位置についての自由度を確保できる。
【0168】
(3)上述したように、ステータ冷却流路F10は、ハウジング凸部20cに形成されている第1の端流路F13と第2の端流路F14とを含む。ハウジング冷却流路F20は、ハウジング凸部20cに形成され、ハウジング冷却流路F20の主流路F21・F22・F23の一方の端部に接続している第3の端流路F24と、ハウジング凸部20cに形成され、主流路F21・F22・F23の他方の端部に接続している第4の端流路F25とを含む。第1の端流路F13と第2の端流路F14と第3の端流路F24と第4の端流路F25のうちの少なくとも1つは、軸方向に伸びている軸方向流路(F13a、F14a、F24a、又はF25a)と、軸方向流路に接続し且つ軸Axを中心とする円の接線に沿った方向に伸びている接線方向流路(F13b、F14b、F24b、又はF25b)とを含む。
【0169】
この電動モータ10では、4本の端流路F13・F14・F24・F25がハウジング凸部20cに纏めて形成されている。そのため、ハウジング20の大型化を抑えることができる。また、この電動モータ10では、端流路の少なくとも1つが軸方向流路と接線方向流路とを含むので、例えば、冷却流路から半径方向の外側に向かって端流路が形成される場合に比して、端流路の開口端(配管接続部)の位置についての自由度を確保できる。
【0170】
(4)(1)又は(3)の電動モータ10において、第1の端流路F13は、第1コイルエンド収容路F11に向かって軸方向に沿って伸びている軸方向流路F13aを含み、第2の端流路F14は、第2コイルエン収容路F12に向かって軸方向に沿って伸びている軸方向流路F14aを含んでよい。第1の端流路F13の開口端(配管接続部)と第2の端流路F14の開口端の位置についての自由度を確保できる。
【0171】
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の電動モータ10において、第1の端流路F13と第2の端流路F14と第3の端流路F24と第4の端流路F25は、軸Axを中心とする円柱面に接する接平面(
図12AのP2)に沿って形成されてよい。これによると、ハウジング凸部20cの高さを低減できる。
【0172】
(6)(1)~(5)のいずれかに記載の電動モータ10において、第1の端流路F13と第2の端流路F14と第3の端流路F24と第4の端流路F25のうち少なくとも2つ端流路は、軸Axを中心とする円柱面に接する接平面に沿って形成されている部分を有してよい。少なくとも2つ端流路の部分は、電動モータ10を軸方向に見たときに、重なっていてよい。これによると、ハウジング凸部20cの高さを低減できる。
【0173】
(7)(1)~(6)のいずれかに記載の電動モータ10において、ハウジング凸部20cは、軸Axを中心とする円の接線の方向における一方側に向いている第1の面(前面21f)と、第1の面とは反対側に向いている第2の面(後面21g)とを有してよい。第1の端流路F13と第2の端流路F14と第3の端流路F24と第4の端流路F25のうちの少なくとも1つは、第1の面又は第2の面に形成されている開口端(F13c・F14c・F15c・F16c)を有してよい。これによると、電動モータ10を車両やロボット等の装置に搭載したときに、ハウジング凸部20cに対して半径方向の外側に、他の部品を配置するためのスペースを確保することが容易となる。
【0174】
(8)(7)の電動モータ10において、ハウジング凸部20cは、軸Axを中心とする円の接線の方向における一方側に向いている第1の面(前面21f)と、第1の面とは反対側に向いている第2の面(後面21g)とを有してよい。4つの開口端のそれぞれは、第1面又は第2面に形成されてよい。これによると、電動モータ10を車両やロボット等の装置に搭載したときに、ハウジング凸部20cに対して半径方向の外側に、他の部品を配置するためのスペースを確保することが容易となる。
【0175】
(9)(1)~(8)のいずれかに記載の電動モータ10において、ステータ冷却流路F10は、第1コイルエンド収容路F11と第2コイルエン収容路F12とを接続する連絡流路F15を含み、連絡流路F15は、軸Axを含む平面P1を挟んで、第1の端流路F13及び第2の端流路F14とは反対側に位置してよい。これによれば、2つのコイルエンド収容路の全体に、バランス良く冷却液を供給することが容易となる。
【0176】
(10)(1)~(9)のいずれかに記載の電動モータ10において、連絡流路F15は、ハウジング20に形成されてよい。これによれば、連絡流路F15が磁路を狭小化することを避けることができる。
【0177】
(11)(1)~(10)のいずれかに記載の電動モータ10において、第1の端流路F13と第3の端流路F24と第4の端流路F25のそれぞれは、ハウジング凸部20cの軸方向における一方側に向いている側面21bに、開口端を有してよい。
【0178】
[その他の例]
なお、本開示で提案する電動モータの構造は、上述した電動モータ10に限られない。
【0179】
電動モータ10では、4本の端流路F13・F14・F24・F25は略L字形状に形成されていたが、(1)の構造は、ハウジング凸部20cから上方に伸びている端流路F13・F14・F24・F25を有する電動モータに適用されてもよい。
【0180】
電動モータ10では、第3の端流路F24と第4の端流路F25の間に、第2の端流路F14が形成されていた。(3)の構造は、このような構造の端流路を有していない電動モータに適用されてもよい。また、電動モータ10では、4本の端流路F13・F14・F24・F25がL字形状を有していた。しかしながら、一部の端流路だけがL字形状を有してもよい。例えば、ステータ冷却流路F10の端流路F13・F14だけがL字形状を有してもよい。
【0181】
また、電動モータ10では、第3端流路F24の開口端と、第4端流路F25の開口端の双方が、ハウジング凸部21hの左側面21bに形成されていた。これとは異なり、第3端流路F24の開口端と、第4端流路F25の開口端は、ハウジング凸部21hの左側面21bと右側面21aとにそれぞれ形成されてよい。
【0182】
また、ハウジング冷却流路F20は、回転方向流路F22・F23と、軸方向流路F21とを含み、それらが相互に接続されていた。しかしながら、ハウジング冷却流路F20は、軸Axを取り囲む回転方向に伸びている環状であってよい。この場合、ハウジング冷却流路F20は軸方向流路F21を有していなくてもよい。
【0183】
また、2つのコイルエンド収容路F11・F12は、相互に独立していてよい。この場合、ステータ冷却流路F10は、連絡流路F15を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0184】
10:電動モータ、20:ハウジング、20c:ハウジング凸部、21:ハウジング筒部、21a:右側面、21b:左側面、21c:内面、21d:外面、21e:上面、21f:前面、21g:後面、21h:ハウジング凸部、21i:固定孔、21k:凹部、22:ハウジングカバー部、22A:カバー本体、22B:軸カバー部、22a:軸支持部、22b:外周部、22c:側部、22e:内面、22f:外面、22h:ハウジング凸部、22i:固定孔、22j:凹部、22m:開口、22n:カバー、23:ハウジングカバー部、23a:軸支持部、23b:外周部、23c:側部、23e:内面、23f:外面、23h:ハウジング凸部、23i:固定孔、23j:凹部、23k:凹部、23m:仕切り壁、23n:開口、30:モータ本体、30r:ロータ、30s:ステータ、31:ステータコア、31a:ティース部、31b:ヨーク部、31c:右側面、31d:左側面、31g:対向面、31h:第1凸部、31i:スロット、31k・31n・31p:第2凸部、31m:ティース部の側面、32:コイル、32a:導体棒、32c:導体棒の端部、32e・32f:コイルエンド、32h:端子部、32u・32v・32w:電線、33:樹脂部、33a・33b:仕切り部、33c:閉塞部、33g:絶縁層、33i・33j:フランジ部、34a・34b:仕切りリング、35:絶縁シート、38:回転軸、41・42:軸受け、43a・43b:シール部材、51・52:端子台、51:第1端子台、51a:ボルト、51b:ナット、51c:左側面、51d:下縁、51d:螺子、52:第2端子台、53:端子導体、53a:内端子部、53b:外端子部、A1:上部領域、A2:下部領域、F10:ステータ冷却流路、F11・F12:コイルエンド収容路、F13:端流路、F13a:軸方向流路、F13b:接線方向流路、F13c:配管接続部、F13d:開口端、F14:端流路、F14a:軸方向流路、F14b:接線方向流路、F14c:配管接続部、F15:連絡流路、F16:副連絡流路、F20:ハウジング冷却流路、F21:軸方向流路、F22:回転方向流路、F23:回転方向流路、F24:端流路、F24a:軸方向流路、F24b:接線方向流路、F24c:配管接続部、F25:端流路、F25:端流路、F25a:軸方向流路、F25b:接線方向流路、F25c:配管接続部、S3:ロータ収容室。