(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087798
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】エンジンに用いられるピストン
(51)【国際特許分類】
F02F 3/00 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
F02F3/00 D
F02F3/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212643
(22)【出願日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2022/046625
(32)【優先日】2022-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】WO
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩一
(72)【発明者】
【氏名】三井 理功
(57)【要約】
【課題】ピストン1は、ピストン頂部壁10に作用する燃焼圧による応力の平準化とスラスト力に対するピストン1の強度の確保を両立しながら軽量化する。
【解決手段】ピストン1は、一対のピンボス連結部50、ピストンリング支持部60および一対のサイドウォール部70を有する。ピストン1は、スラスト側部11が、反スラスト側部12と比較して、一対のピンボス連結部50のスラスト方向長さが長く、一対のサイドウォール部70の肉厚が厚く、ピストンリング支持部60のピストン頂部壁と一対のピストンスカート壁の間の部分の肉厚が薄くなり、反スラスト側部12が、スラスト側部11と比較して、一対のピンボス連結部50のスラスト方向長さが短く、一対のサイドウォール部70の肉厚が薄く、ピストンリング支持部60のピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40の間の部分の肉厚が厚くなるように形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ孔内に配置され、燃焼室からの燃焼圧を受ける円柱状のピストン頂部壁と、
ピストンピンが挿入される一対のピンボス部と、
前記シリンダ孔の内壁に沿って形成され、前記シリンダ孔の内壁からスラスト力を受ける一対のピストンスカート壁であって、前記一対のピストンスカート壁のうちの一方のピストンスカート壁であって、エンジンが往復運動する際に他方のピストンスカート壁より大きい前記スラスト力を受けるスラスト側のピストンスカート壁と、前記一対のピストンスカート壁のうちの他方のピストンスカート壁である反スラスト側のピストンスカート壁とからなる前記一対のピストンスカート壁と、
前記一対のピンボス部と前記ピストン頂部壁との間に位置する一対のピンボス連結部と、
少なくとも1つのピストンリングを支持する少なくとも1つのピストンリング溝が形成され、ピストン頂部壁の周縁部に接続されるピストンリング支持部と、
前記一対のピンボス部と前記一対のピストンスカート壁との間に位置する一対のサイドウォール部と、
を備えたエンジンに用いられるピストンであって、
前記ピストンピンの中心軸線を通り前記ピストン頂部壁の中心軸線であるピストン軸線に平行な第1平面で前記ピストンを2分割した場合に、前記スラスト側の前記ピストンスカート壁を含む一方の前記ピストンの部分をスラスト側部と定義し、前記反スラスト側の前記ピストンスカート壁を含む他方の前記ピストンの部分を反スラスト側部と定義すると、
前記一対のピンボス連結部は、前記スラスト方向の最大長さが、前記一対のピンボス部の前記第1平面に直交するスラスト方向の最大長さよりも長くなるように形成され、
前記スラスト側部は、前記反スラスト側部と比較して、前記一対のサイドウォール部の肉厚が厚く、前記ピストン頂部壁と前記一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の前記ピストンリング支持部の肉厚が薄く、前記一対のピンボス連結部の前記スラスト方向の最大長さが長くなるように形成されており、
前記反スラスト側部は、前記スラスト側部と比較して、前記一対のサイドウォール部の肉厚が薄く、前記ピストン頂部壁と前記一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の前記ピストンリング支持部の肉厚が厚く、前記一対のピンボス連結部の前記スラスト方向の最大長さが短くなるように形成されることを特徴とするエンジンに用いられるピストン。
【請求項2】
前記スラスト側部は、前記反スラスト側部と比較して、前記一対のサイドウォール部の肉厚が厚く、前記ピストン頂部壁と前記一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の前記ピストンリング支持部の肉厚が薄く、前記一対のピンボス連結部の前記スラスト方向の最大長さが長く、前記一対のピンボス連結部の前記ピストンピンの中心軸線に平行なピストンピン方向の最大長さが短くなるように形成され、
前記反スラスト側部は、前記スラスト側部と比較して、前記一対のサイドウォール部の肉厚が薄く、前記ピストン頂部壁と前記一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の前記ピストンリング支持部の肉厚が厚く、前記一対のピンボス連結部の前記スラスト方向の最大長さが短く、前記一対のピンボス連結部の前記ピストンピン方向の最大長さが長くなるように形成されることを特徴とする請求項1に記載のエンジンに用いられるピストン。
【請求項3】
前記ピストンリング支持部は、前記ピストン頂部壁と前記一対のピストンスカート壁の間に位置する部分が、前記反スラスト側部よりも前記スラスト側部の肉厚が薄くなるように形成されると共に、前記スラスト側部および前記反スラスト側部の両方とも、前記ピストン頂部壁と前記一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の前記ピストンの周方向中央部の肉厚が、前記ピストン頂部壁と前記一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の前記ピストンの周方向両端部の各々の肉厚よりも厚くなるように形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンに用いられるピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンに用いられるピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンに用いられるピストンがある。エンジンに用いられるピストンは、燃焼圧がピストン頂部壁に作用することで往復運動する。その際、ピストンのピストンスカート壁にはシリンダ孔の内壁からスラスト力が作用する。特に、スラスト側部には、反スラスト側部よりも大きいスラスト力が作用する。また、ピストン頂部壁には、燃焼圧による応力が作用する。
【0003】
そのため、エンジンに用いられるピストンは、燃焼圧により作用する応力やスラスト力に対する強度の確保が求められる。また、エンジンに用いられるピストンは、軽量化することが望まれている。例えば、特許文献1は、強度を確保しつつ、軽量化したエンジンに用いられるピストンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、燃焼圧による応力は、ピストン頂部壁の一部に集中して作用する。エンジンに用いられるピストンは、さらに、ピストン頂部壁に作用する燃焼圧による応力の平準化が望まれている。
【0006】
本発明は、エンジンに用いられるピストンにおいて、ピストン頂部壁に作用する燃焼圧による応力の平準化とスラスト力に対するピストンの強度の確保を両立しながら、ピストンを軽量化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一実施形態のエンジンに用いられるピストンは、以下の構成を有する。
シリンダ孔内に配置され、燃焼室からの燃焼圧を受ける円柱状のピストン頂部壁と、ピストンピンが挿入される一対のピンボス部と、前記シリンダ孔の内壁に沿って形成され、前記シリンダ孔の内壁からスラスト力を受ける一対のピストンスカート壁であって、前記一対のピストンスカート壁のうちの一方のピストンスカート壁であって、エンジンが往復運動する際に他方のピストンスカート壁より大きい前記スラスト力を受けるスラスト側のピストンスカート壁と、前記一対のピストンスカート壁のうちの他方のピストンスカート壁である反スラスト側のピストンスカート壁とからなる前記一対のピストンスカート壁と、前記ピンボス部と前記ピストン頂部壁との間に位置する一対のピンボス連結部と、前記ピストン頂部壁の周縁部に接続されて、少なくとも1つのピストンリングを支持する少なくとも1つのピストンリング溝が形成されるピストンリング支持部と、前記一対のピンボス部と前記一対のピストンスカート壁との間に位置する一対のサイドウォール部と、を備えたエンジンに用いられるピストンであって、前記ピストンピンの中心軸線を通り前記ピストン頂部壁の中心軸線であるピストン軸線に平行な第1平面で前記ピストンを2分割した場合に、前記スラスト側の前記ピストンスカート壁を含む一方の前記ピストンの部分をスラスト側部と定義し、前記反スラスト側の前記ピストンスカート壁を含む他方の前記ピストンの部分を反スラスト側部と定義すると、前記一対のピンボス連結部は、前記スラスト方向の最大長さが、前記一対のピンボス部の前記第1平面に直交するスラスト方向の最大長さよりも長くなるように形成され、前記スラスト側部は、前記反スラスト側部と比較して、前記一対のサイドウォール部の肉厚が厚く、前記ピストン頂部壁と前記一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の前記ピストンリング支持部の肉厚が薄く、前記一対のピンボス連結部の前記スラスト方向の最大長さが長くなるように形成されており、前記反スラスト側部は、前記スラスト側部と比較して、前記一対のサイドウォール部の肉厚が薄く、前記ピストン頂部壁と前記一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の前記ピストンリング支持部の肉厚が厚く、前記一対のピンボス連結部の前記スラスト方向の最大長さが短くなるように形成されることを特徴とする。
【0008】
この構成によると、ピストンは、燃焼圧がピストン頂部壁に作用することで往復運動する。その際、ピストンの一対のピストンスカート壁にはシリンダ孔の内壁からスラスト力が作用する。特に、スラスト側部には、反スラスト側部よりも大きいスラスト力が作用する。また、ピストン頂部壁には、燃焼圧による応力が作用する。燃焼圧による応力は、ピストン頂部壁の一部に集中して作用する。ピストン頂部壁は、一対のピンボス連結部により一対のピンボス部に接続される。そのため、従来は、ピストン頂部壁における一対のピンボス連結部が接続される部分に燃焼圧による応力が集中する。
この構成では、ピストン頂部壁と一対のピンボス部との間に位置する一対のピンボス連結部のスラスト方向の最大長さを、一対のピンボス部のスラスト方向の最大長さよりも長くしている。そのため、ピストン頂部壁から一対のピンボス連結部に作用する燃焼圧による応力を分散して、ピストン頂部壁に作用する燃焼圧による応力を平準化することができる。
そして、反スラスト側部と比較して、ピストンスカート壁に作用するスラスト力が大きいスラスト側部は、一対のサイドウォール部の肉厚が厚くなるように形成されることでスラスト側部の強度を確保し、一対のピンボス連結部のスラスト方向の長さを長くすることでスラスト側部のピンボス連結部の強度を確保できるため、ピストンリング支持部のピストン頂部壁とスラスト側のピストンスカート壁の間に位置する部分の肉厚が薄くなるよう形成されることでスラスト側部を軽量化している。スラスト側部と比較して、ピストンスカート壁に作用するスラスト力が小さいまたはスラスト力が作用しない反スラスト側部は、一対のサイドウォール部の肉厚が薄くなるように形成されることで反スラスト側部を軽量化する一方で、ピストンリング支持部のピストン頂部壁と反スラスト側のピストンスカート壁の間に位置する部分の肉厚が厚くなるように形成されることで反スラスト側部の強度を確保できるため、一対のピンボス連結部のスラスト方向の長さを短くすることにより一対のピンボス連結部を軽量化しつつ反スラスト側部のピストン頂部壁の強度の低下を抑制している。これにより、ピストン頂部壁に作用する燃焼圧による応力を平準化しつつ、スラスト力に対する強度を確保できる。また、スラスト側部のピストンリング支持部および反スラスト側部の一対のサイドウォール部の肉厚を薄くして、ピストンを軽量化することができる。
以上から、エンジンに用いられるピストンにおいて、ピストン頂部壁に作用する燃焼圧による応力の平準化とスラスト力に対するピストンの強度の確保を両立しながら、ピストンを軽量化できる。
なお、ピストンリング支持部のピストン頂部壁と一対のピストンスカート壁の間に位置する部分とは、ピストン軸線方向においてピストンリング支持部のピストン頂部壁と一対のピストンスカート壁の間に位置する部分を意味する。また、ピストン軸線方向においてピストンリング支持部のピストン頂部壁と一対のピストンスカート壁の間に位置する部分は、ピストン周方向において一対のピンボス連結部および一対のサイドウォール部の間に位置する部分、つまり、ピストン周方向において一対のピンボス連結部および一対のサイドウォール部のうちの一方から他方に至るまで位置するピストンリング支持部の部分である。
【0009】
(2)本発明の一実施形態のエンジンに用いられるピストンは、(1)の構成に加えて、以下の構成を有していてもよい。
前記スラスト側部は、前記反スラスト側部と比較して、前記一対のサイドウォール部の肉厚が厚く、前記ピストン頂部壁と前記一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の前記ピストンリング支持部の肉厚が薄く、前記一対のピンボス連結部の前記スラスト方向の最大長さが長く、前記一対のピンボス連結部の前記ピストンピンの中心軸線に平行なピストンピン方向の最大長さが短くなるように形成され、前記反スラスト側部は、前記スラスト側部と比較して、前記一対のサイドウォール部の肉厚が薄く、前記ピストン頂部壁と前記一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の前記ピストンリング支持部の肉厚が厚く、前記一対のピンボス連結部の前記スラスト方向の最大長さが短く、前記一対のピンボス連結部の前記ピストンピン方向の最大長さが長くなるように形成される。
【0010】
この構成によると、反スラスト側部と比較して、作用するスラスト力が大きいスラスト側部は、一対のピンボス連結部のスラスト方向の長さが長くなるように形成されることで、スラスト力に対するスラスト側部のピストンの強度を確保する一方で、一対のピンボス連結部のピストンピン方向の長さが短くなるように形成されることでピストンを軽量化している。スラスト側部と比較して、作用するスラスト力が小さいまたはスラスト力が生じない反スラスト側部は、一対のピンボス連結部のスラスト方向の長さが短くなるように形成されることでピストンを軽量化する一方で、一対のピンボス連結部のピストンピン方向の長さが長くなるように形成されることで、スラスト力に対するピストンの強度を確保している。
以上から、エンジンに用いられるピストンにおいて、ピストン頂部壁に作用する燃焼圧による応力の平準化とスラスト力に対するピストンの強度の確保の向上を両立しながら、ピストンをより軽量化できる。
【0011】
(3)本発明の一実施形態のエンジンに用いられるピストンは、(1)または(2)の構成に加えて、以下の構成を有していてもよい。
前記ピストンリング支持部は、前記ピストン頂部壁と前記一対のピストンスカート壁の間に位置する部分が、前記反スラスト側部よりも前記スラスト側部の肉厚が薄くなるように形成されると共に、前記スラスト側部および前記反スラスト側部の両方とも、前記ピストン頂部壁と前記一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の周方向中央部の肉厚が、前記ピストン頂部壁と前記一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の周方向両端部の各々の肉厚よりも厚くなるように形成される。
【0012】
この構成によると、一対のピストンスカート壁は、シリンダ孔の内壁からスラスト力を受ける。ピストンリング支持部のピストン頂部壁と一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の周方向中央部は、ピストンリング支持部のピストン頂部壁と一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の一対のサイドウォール部に接続される周方向両端部よりも強度の確保が必要となる。
スラスト側部は、主に一対のピンボス連結部と一対のサイドウォール部とで、反スラスト側部と比較して大きく作用するスラスト力を受け止めているため、一対のピンボス連結部のスラスト方向の長さが長く、一対のサイドウォール部の肉厚が厚くなるように形成されている。そして、スラスト側部は、ピストンリング支持部のピストン頂部壁と一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の肉厚が薄くなるように形成されつつ、ピストンリング支持部のピストン頂部壁と一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の周方向中央部の肉厚が厚くなるように形成される一方で、ピストンリング支持部のピストン頂部壁と一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の周方向両端部の肉厚が薄くなるように形成されている。それにより、ピストンを軽量化しつつ、スラスト力に対するピストンの強度をより高められる。もしくは、スラスト力に対するピストンの強度を確保しつつ、ピストンをより軽量化できる。反スラスト側部は、スラスト側部と比較して、作用するスラスト力が小さいまたはスラスト力が生じないため、一対のピンボス連結部のスラスト方向の長さが短く、一対のサイドウォール部の肉厚が薄くなるように形成されている。そして、反スラスト側部では、ピストンリング支持部の肉厚が厚くすることで燃焼圧によってピストン頂部壁に作用する応力に対して必要な強度を確保しつつ、ピストンリング支持部のピストン頂部壁と一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の周方向中央部の肉厚を厚くすることでスラスト力に対するピストンの強度を確保する一方で、ピストンリング支持部のピストン頂部壁と一対のピストンスカート壁の間に位置する部分の周方向両端部の肉厚が薄くすることでピストンをさらに軽量化している。
以上から、エンジンに用いられるピストンにおいて、ピストン頂部壁に作用する燃焼圧による応力の平準化とスラスト力に対するピストンの強度の確保を両立しながら、ピストンをより軽量化できる。
【0013】
<エンジンに用いられるピストンの定義>
本発明および本明細書において、「ピストン」が用いられるエンジンは、4ストロークエンジンを含む。また、本発明および本明細書において、「ピストン」が用いられるエンジンは、2ストロークエンジンを含む。本発明および本明細書において、「ピストン」が用いられるエンジンの燃料は、特に限定されず、例えば、ガソリンでもよく、アルコールでもよく、アルコールとガソリンの混合燃料でもよく、軽油でもよい。「ピストン」が用いられるエンジンは、その中心軸がシリンダ軸線を通らない位置に配置されるクランク軸を有する、いわゆるオフセットクランク式のエンジンを含む。また、「ピストン」が用いられるエンジンは、その中心軸がシリンダ軸線を通る位置に配置されるクランク軸を有するエンジンを含む。本発明および本明細書において、「ピストン」が用いられるエンジンは、ウェットサンプ式のエンジンを含む。本発明および本明細書において、「ピストン」が用いられるエンジンは、ドライサンプ式のエンジンを含む。本発明および本明細書において、「ピストン」が用いられるエンジンは、液冷式エンジンおよび空冷式エンジンを含む。本発明および本明細書において、「ピストン」が用いられるエンジンは、単気筒エンジンおよび多気筒エンジンを含む。また、本発明のピストンが用いられるエンジンを鞍乗型車両に適用してよい。本発明が適用される鞍乗型車両には、自動二輪車、三輪車、四輪バギー(ATV:All Terrain Vehicle(全地形型車両))、水上バイク、スノーモービル等が含まれる。また、本発明のピストンが用いられるエンジンを、鞍乗型車両以外の車両に適用してよい。例えば、本発明のピストンが用いられるエンジンを、四輪バギーではない四輪車両または船舶に適用してよい。
【0014】
<ピストンの定義>
本発明および本明細書において、エンジンに用いられる「ピストン」は、金属または金属および樹脂の複合材料で形成される。また、本発明および本明細書において、エンジンに用いられる「ピストン」は、複数種類の金属材料で形成されてもよい。また、エンジンに用いられる「ピストン」は、ピストン頂部壁と一対のピンボス部と一対のピストンスカート壁と一対のピンボス連結部とピストンリング支持部と一対のサイドウォール部が、一体成形されてもよいし、別体として成形した後に合わせて成形されてもよい。例えば、エンジンに用いられるピストンは、異なる材料で別体として成形された部材を合わせて、成形されてよい。エンジンに用いられる「ピストン」の製造方法は、鋳造または鍛造により製造される工程を含んでもよい。また、エンジンに用いられる「ピストン」は、機械加工や3DP加工等により製造される工程を含んでもよい。
【0015】
<スラスト力の定義>
本発明および実施形態における「スラスト力」は、ピストンが往復運動する際に、シリンダ孔の内壁から一対のピストンスカート壁が受ける、ピストンの往復方向に対して垂直な方向に働く力を意味する。一対のピストンスカート壁のうちの一方のピストンスカート壁であって、ピストンが往復運動する際に他方のピストンスカート壁より大きいスラスト力を受けるピストンスカート壁が、スラスト側のピストンスカート壁である。一対のピストンスカート壁のうちの他方のピストンスカート壁が、反スラスト側のピストンスカート壁である。
【0016】
<第1平面の定義>
本発明および本明細書において、「第1平面」は、ピストンピンの中心軸線を通りピストン頂部壁の中心軸線であるピストン軸線に平行な平面である。第1平面は、ピストン軸線を含むように構成されてもよく、ピストン軸線を含まないように構成されてもよい。つまり、本発明および本明細書において、エンジンに用いられる「ピストン」は、ピストンピンの中心軸線がピストン軸線と重なるように構成されてもよく、ピストンピンの中心軸線がピストン軸線と重ならないように構成されてもよい。
【0017】
<燃焼室の定義>
本発明および実施形態における「燃焼室」は、燃焼ガスが接する部品、例えば吸気バルブや排気バルブ等を支持するシリンダヘッドの内壁、シリンダ孔の内壁、ピストン頂部壁、吸気孔を開閉可能に構成する吸気バルブ、排気孔を開閉可能に構成する排気バルブ、吸気通路と吸気バルブとの気密を保持する吸気バルブシート、排気通路と排気バルブとの気密を保持する排気バルブシート、点火プラグ、その他燃焼室に付加されるセンサー等の部品で構成される。燃焼室では、吸気孔から導入された空気および燃料の混合気を燃焼させ、燃焼圧をピストン頂部壁に作用させることでピストンを往復運動させる。燃焼した排ガスは、排気孔を通して燃焼室の外に排出する。
【0018】
<ピストン頂部壁の定義>
本発明および実施形態における「ピストン頂部壁」は、ピストンの一部であり、円柱状である。つまり、ピストン頂部壁は、その中心軸線の方向に見て、円形である。なお、ピストン頂部壁における燃焼室の一部を形成する面は平面であってもよいし、凹凸を有する曲面であってもよい。ピストン頂部壁は、シリンダ孔を形成して、燃焼室の一部を形成するシリンダヘッドの面に向かい合う壁部材である。本発明および実施形態における「ピストン軸線」は、「ピストン頂部壁の中心軸線」である。ピストン軸線は、ピストン頂部壁の中心を通る直線である。ピストン軸線は、ピストン頂部壁が存在する領域だけに存在する線分ではなく、無限に延びる直線である。ピストン軸線に平行な方向であるピストン軸線方向は、ピストンがシリンダ孔を往復移動する方向に沿った方向である。ピストン軸線方向は、シリンダ孔の軸線の方向に沿った方向である。なお、本明細書において、ピストン周方向とは、ピストン軸線を中心とした円の周方向を意味する。また、ピストン径方向とは、ピストン軸線を中心とした円の径方向を意味する。本発明および実施形態における「ピストン頂部壁の周縁部」は、ピストン頂部壁のピストン周方向の周縁部を意味する。
【0019】
<一対のピンボス連結部、ピストンリング支持部、および一対のサイドウォール部の定義>
本発明および実施形態における「一対のピンボス連結部」、「ピストンリング支持部」、および「一対のサイドウォール部」は、ピストンの一部である。「一対のピンボス連結部」、「ピストンリング支持部」、および「一対のサイドウォール部」は、一体で成形されても良いし、別体として成形された後に合わせて成形されてもよい。一対のピンボス連結部およびピストンリング支持部は、ピストン頂部壁の裏面に接続される。なお、ピストン頂部壁の裏面とは、燃焼室を形成する面とは反対側の面である。一対のピンボス連結部は、一対のピンボス部とピストン頂部壁との間に位置する。一対のピンボス連結部のそれぞれは、一対のピンボス部のそれぞれと一体で形成されて、ピストン軸線方向において一対のピンボス部のそれぞれからピストン頂部壁に至るまで配置される。ピストンリング支持部は、ピストン頂部壁の周縁部に接続されて、ピストン周方向に形成された少なくとも1つのピストンリング溝を含む。ピストンリング支持部は、ピストン頂部壁と一対のピストンスカート壁との間に位置する部分を含む。ピストンリング支持部の、ピストン頂部壁と一対のピストンスカート壁との間に位置する部分は、ピストン頂部壁の裏面に肉盛り部を有する。ピストンリング支持部の、ピストン頂部壁と一対のピストンスカート壁との間に位置する部分は、ピストン周方向において、一対のサイドウォール部の間に位置する。一対のサイドウォール部は、一対のピンボス部と一対のピストンスカート壁との間に位置する。一対のサイドウォール部のそれぞれは、ピストン周方向において一対のピンボス部と一体で形成される一対のピンボス連結部のそれぞれから一対のピストンスカート壁のスラスト側のピストンスカート壁または反スラスト側のピストンスカート壁に至るまで配置される。なお、一対のサイドウォール部は、ピストン頂部壁の裏面に接続されてもよいし、接続されていなくてもよい。ピストンリング支持部および一対のサイドウォール部は、ピストン軸線に直交する断面において、ピストン径方向に厚みを有する。ピストンリング支持部および一対のサイドウォール部の肉厚とは、ピストン径方向の長さである。ピストンリング支持部は、内部にピストン周方向の通路を有してもよい。ピストン周方向の通路は、オイル通路等である。ピストンリング支持部が内部にピストン周方向の通路を有する場合、ピストンリング支持部の肉厚は、通路を含まないピストン径方向の長さである。ピストンリング支持部のある位置の肉厚は、放射状にあるピストン径方向のうちピストンリング支持部の当該位置を通るピストン径方向の長さである。一方、サイドウォール部のある位置の肉厚は、放射状にあるピストン径方向のうちサイドウォール部の当該位置を通るピストン径方向の長さとは限らない。サイドウォール部のある位置の肉厚は、放射状にあるピストン径方向のうちサイドウォール部と略直交するピストン径方向の長さである。ピストンリング支持部およびサイドウォール部の肉厚は、ピストンの裏面をピストン軸線方向に視たときの肉厚であってもよい。ピストンリング支持部およびサイドウォール部は、一定の肉厚で構成されていなくてよい。ピストンリング支持部およびサイドウォール部の肉厚が一定でない場合、ピストンリング支持部およびサイドウォール部の肉厚は、ピストンリング支持部およびサイドウォール部の最大の肉厚やピストンリング支持部およびサイドウォール部の平均の肉厚を意味してもよい。ピンボス連結部は、ピストン径方向に厚みを有する。また、ピンボス連結部のピストンピン方向の最大長さが、ピンボス部のピストンピン方向の最大長さより長い部分を有してもよい。つまり、ピンボス連結部は、ピストン径方向の厚みが、ピンボス部の径方向の最大厚みより大きい部分を有していてもよい。ピンボス連結部のピストンピン方向の最大長さは、ピストンの裏面をピストン軸線方向に視たときの最大長さであってもよい。
【0020】
<ピストンリング溝の定義>
本発明および実施形態における「ピストンリング溝」は少なくとも1つ設けられる。少なくとも1つのピストンリング溝に支持される少なくとも1つのピストンリングは、例えば、トップリングとセカンドリングとオイルリングの3本である。少なくとも1つのピストンリングは、燃焼室の燃焼ガスをピストンとシリンダ孔の隙間から漏れにくくしている。また、少なくとも1つのピストンリングは、円環状に形成されてシリンダ孔の内壁に油膜を介して接することで、シリンダ孔の内壁に付着する潤滑油の量が適量となるようにコントロールしている。また、少なくとも1つのピストンリングは、円環状に形成されてシリンダ孔の内壁に油膜を介して接することで、ピストンの熱をシリンダに逃がすと共に、ピストンを支持している。なお、少なくとも1つのピストンリングは、2本であってもよいし、4本以上であってもよい。
【0021】
本発明および本明細書において、ある部品の端部とは、部品の端とその近傍部とを合わせた部分を意味する。
【0022】
本発明および本明細書において、A方向に沿った方向とは、A方向と平行な方向に限らない。A方向に沿った方向とは、A方向に対して±45°の範囲で傾斜している方向を含む。ある直線がA方向に沿うという場合にも、この定義は適用される。なお、A方向は、特定の方向を指すものではない。A方向を、鉛直方向、上下方向、前後方向または左右方向に置き換えることができる。
【0023】
本発明および本明細書において、A、B、またはCの少なくともいずれかとは、A、B、C、AとB、BとC、AとC、または、AとBとCのいずれかである。
【0024】
本発明において、含む(including)、有する(comprising)、備える(having)およびこれらの派生語は、列挙されたアイテムおよびその等価物に加えて追加的アイテムをも包含することが意図されて用いられている。取り付けられた(mounted)、接続された(connected)および結合された(coupled)という用語は、広義に用いられている。具体的には、直接的な取付、接続および結合だけでなく、間接的な取付、接続および結合も含む。さらに、接続された(connected)および結合された(coupled)は、物理的または機械的な接続/結合に限られない。それらは、直接的なまたは間接的な電気的接続/結合も含む。
【0025】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術および本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0026】
本明細書において、「好ましい」という用語は非排他的なものである。「好ましい」は、「好ましいがこれに限定されるものではない」ということを意味する。本明細書において、「好ましい」と記載された構成は、少なくとも、上記(1)の構成により得られる上記効果を奏する。また、本明細書において、「してもよい」という用語は非排他的なものである。「してもよい」は、「してもよいがこれに限定されるものではない」という意味である。本明細書において、「してもよい」と記載された構成は、少なくとも、上記(1)の構成により得られる上記効果を奏する。
【0027】
特許請求の範囲において、ある構成要素の数を明確に特定しておらず、英語に翻訳された場合に単数で表示される場合、本発明は、この構成要素を、複数有していてもよい。また本発明は、この構成要素を1つだけ有していてもよい。
【0028】
本発明では、上述した他の観点による構成を互いに組み合わせることを制限しない。
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されたまたは図面に図示された構成要素の構成および配置の詳細に制限されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態でも可能であり、様々な変更を加えた実施形態でも可能である。また、本発明は、後述する変形例を適宜組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のエンジンに用いられるピストンは、ピストン頂部壁に作用する燃焼圧による応力の平準化とスラスト力に対するピストンの強度の確保を両立しながら、ピストンを軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1実施形態のピストンの模式図である。(a)は、ピストン軸線を含み、ピストンピンの中心軸線に直交する断面図である。(b)は、ピストン頂部壁の裏面をピストン軸線方向に見た図である。
【
図2】本発明の第2実施形態のピストンの模式図であって、ピストン頂部壁の裏面をピストン軸線方向に見た図である。
【
図3】本発明の第3実施形態のピストンの模式図であって、ピストン頂部壁の裏面をピストン軸線方向に見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態のピストン1について説明する。ここで、本発明の実施形態のピストン1は、エンジンに用いられる。本発明の実施形態のピストンが用いられるエンジンは、鞍乗型車両に適用されてよいし、鞍乗型車両以外の四輪車両または船舶等の車両に適用されてよい。本発明の実施形態のピストン1は、図示しないエンジンに構成されるシリンダ孔内に配置される。本発明の実施形態のピストン1は、シリンダ孔内を往復可能に設けられている。また、本発明の実施形態のピストン1は、金属または金属および樹脂の複合材料で形成される。また、本発明の実施形態のピストン1は、複数種類の金属材料で形成されてもよい。
【0032】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態のピストン1について
図1を参照しつつ説明する。第1実施形態のピストン1は、例えば鋳造で製造される。
図1の(a)および(b)に示すように、ピストン1は、ピストン頂部壁10と、一対のピンボス部20と、一対のピストンスカート壁40と、一対のピンボス連結部50と、ピストンリング支持部60と、一対のサイドウォール部70と、を備える。
【0033】
ピストン頂部壁10は、円柱状に形成される。つまり、ピストン頂部壁10は、その中心軸線の方向に見て、円形である。なお、ここでいう円柱状または円形という表現は、略円柱状または略円形を含む。ピストン頂部壁10は、シリンダ孔を形成して燃焼室の一部を形成するシリンダヘッドの面に向かい合う壁である。そして、ピストン頂部壁10は、図示しない燃焼室の一部を形成する。なお、ピストン頂部壁10における燃焼室の一部を形成する面は平面であってもよいし、凹凸を有する曲面であってもよい。
【0034】
一対のピンボス部20は、ピストンピン21が挿入される。一対のピンボス部20は、ピストンピン21が挿入可能な一対の孔22を形成する。一対のピンボス部20は、ピストン径方向に厚みを有するように形成される。ピストンピン21には、図示しないコネクティングロッドが連結されている。コネクティングロッドは、図示しないクランクシャフトに連結されている。ピストン1が往復運動することで、クランクシャフトが回転する。
【0035】
少なくとも1つのピストンリング30は、円環状に形成される。少なくとも1つのピストンリング30は、後述する中部壁60に形成された少なくとも1つのピストンリング溝64に支持される。少なくとも1つのピストンリング30は、その外周面が油膜を介してシリンダ孔の内壁に接触する。少なくとも1つのピストンリング30は、
図1の例では、トップリング31とセカンドリング32とオイルリング33の3本である。トップリング31およびセカンドリング32は、燃焼室の燃焼ガスをピストン1とシリンダ孔の隙間から漏れにくくしている。また、オイルリング33は、主にシリンダ孔の内壁に付着する潤滑油の量が適量となるようにコントロールしている。また、トップリング31とセカンドリング32とオイルリング33は、シリンダ孔の内壁に油膜を介して接することで、ピストン1の熱をシリンダに逃がすと共に、ピストン1を支持している。ピストンリング31~33は、ピストンリング溝61~63の凹みに嵌められて、支持される。なお、ピストンリング30は、2本であってもよいし、4本以上であってもよい。
【0036】
一対のピストンスカート壁40は、シリンダ孔の内壁に沿って形成される。一対のピストンスカート壁40は、シリンダ孔の内壁に油膜を介して少なくともその一部が接触することで、シリンダ孔の内壁からスラスト力を受ける。一対のピストンスカート壁40は、スラスト側のピストンスカート壁41と、反スラスト側のピストンスカート壁42とからなる。スラスト側のピストンスカート壁41は、エンジンが往復運動する際に、反スラスト側のピストンスカート壁42より大きいスラスト力を受ける。
【0037】
ここで、ピストンピン21の中心軸線Xを通りピストン頂部壁10の中心軸線であるピストン軸線Yに平行な平面を第1平面Zと定義する。第1平面Zでピストン1を2分割した場合に、スラスト側のピストンスカート壁41を含む一方のピストンの部分をスラスト側部11と定義し、反スラスト側のピストンスカート壁42を含む他方のピストンの部分を反スラスト側部12と定義する。
【0038】
一対のピンボス連結部50は、一対のピンボス部20とピストン頂部壁10との間に位置する壁部材である。ピストンリング支持部60は、ピストン頂部壁10の周縁部に接続されて、少なくとも1つのピストンリング溝64を形成する壁部材である。一対のサイドウォール部70は、一対のピンボス部20と一対のピストンスカート壁40との間に位置する壁部材である。ピストンリング支持部60は、ピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40の間に位置する部分を含む。ピストン頂部壁10と、一対のピンボス部20と、一対のピストンスカート壁40と、一対のピンボス連結部50と、ピストンリング支持部60と、一対のサイドウォール部70は、別々に加工されて一体になるように成形されるのではなく、一体として成形されてよい。
【0039】
一対のピンボス連結部50は、ピストンピン方向に離れて設けられる。一対のピンボス連結部50は、一対のピンボス部20とピストン頂部壁10との間に位置する。一対のピンボス連結部50のそれぞれは、一対のピンボス部20のそれぞれと一体で形成されて、ピストン軸線方向において一対のピンボス部20のそれぞれからピストン頂部壁10に至るまで配置される。一対のピンボス連結部50は、スラスト方向の最大長さL1が、一対のピンボス部20のスラスト方向の最大長さL0よりも長くなるように形成される。スラスト方向は、第1平面Zに直交する方向である。つまり、一対のピンボス連結部50は、一対のピンボス部20からピストン頂部壁10に至るまで、スラスト方向の長さが徐々に長くなるように形成される。一対のピンボス連結部50のスラスト方向の長さの変化量は、ピストン軸線方向の一対のピンボス部20からピストン頂部壁10に至るまでの長さの変化量に比例してもよいし、比例しなくてもよい。
【0040】
ピストンリング支持部60は、ピストン頂部壁10の周縁部に接続されて略円筒状に形成される。なお、
図1(a)において、破線で、ピストン頂部壁10とピストンリング支持部60との接続部を模式的に示している。ピストンリング支持部60には、少なくとも1つのピストンリング溝64が形成される。少なくとも1つのピストンリング溝64は、少なくとも1つのピストンリング30を支持する。少なくとも1つのピストンリング溝64は、円環状の凹みである。少なくとも1つのピストンリング溝64の円環状の凹みは、その径方向に切断した断面が、一辺が開放された略矩形になるように形成される。少なくとも1つのピストンリング溝64の数は、少なくとも1つのピストンリング30の数と同じであることが好ましい。
図1の例では、3つのピストンリング溝61~63が形成される。ピストンリング溝61~63は、その凹みにピストンリング31~33を嵌めることで、ピストンリング31~33を支持する。ピストンリング溝64が複数ある場合、複数のピストンリング溝64の幅(ピストン軸線方向の長さ)は、同じであっても異なっていてもよい。また、ピストンリング溝64が複数ある場合、複数のピストンリング溝64の深さ(スラスト方向の長さ)は、同じであっても異なっていてもよい。ピストンリング支持部60の、ピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40の間に位置する部分は、ピストン頂部壁10の裏面に肉盛り部を有する。ピストンリング支持部60の、ピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40の間に位置する部分は、ピストン周方向において、一対のサイドウォール部70の間に位置する。ピストンリング支持部60の周縁部には、一対のピストンスカート壁40のピストン軸線方向の端部が接続される。ピストン軸線方向は、ピストン軸線Yに平行な方向である。
【0041】
一対のサイドウォール部70は、ピストンピン方向に離れて設けられる。一対のサイドウォール部70は、それぞれ一体で設けられてもよいし、それぞれ一対のピンボス部20および一対のピンボス連結部50を中心としてスラスト側部11と反スラスト側部12に分離して設けられてもよい。一対のサイドウォール部70は、一対のピンボス部20のスラスト方向の端部と、一対のピストンスカート壁40のピストン1の周方向の端部との間に位置する。ピストン1の周方向とは、ピストン軸線Yを中心とした周方向である。
図1(b)において、一対のサイドウォール部70は、スラスト側部11と反スラスト側部12がスラスト方向に沿った略直線状に形成される。なお、ピストン頂部壁10の裏面をピストン軸線方向に見て、一対のサイドウォール部70は、一対のピンボス部20を中心としたスラスト側部11と反スラスト側部12のなす角度が、鋭角または鈍角になるように形成されても良い。
【0042】
一対のピンボス連結部50は、スラスト方向の長さを長くすることで金属量が増加し、スラスト方向の長さを短くすることで金属量が減少する。一対のピンボス連結部50は、スラスト側部11のスラスト方向の最大長さと反スラスト側部12のスラスト方向の最大長さを異ならせることで金属量が調整される。ピストンリング支持部60および一対のサイドウォール部70は、肉厚を厚くすることで金属量が増加し、肉厚を薄くすることで金属量が減少する。ピストンリング支持部60および一対のサイドウォール部70の肉厚は、ピストン1の径方向の長さである。ピストンリング支持部60は、内部に周方向の通路を有してもよい。周方向の通路は、オイル通路等である。ピストンリング支持部60が内部に周方向の通路を有する場合、ピストンリング支持部60の肉厚は、通路を含まないピストン径方向の長さである。
【0043】
なお、ピストン1が金属で形成される場合、一対のピンボス連結部50、ピストンリング支持部60および一対のサイドウォール部70の金属量は、ピストン1を形成する金属材料の重量を意味する。また、ピストン1が金属および樹脂の複合材料で形成される場合、一対のピンボス連結部50、ピストンリング支持部60および一対のサイドウォール部70の金属量は、ピストン1を形成する金属および樹脂の複合材料の重量を意味する。
【0044】
スラスト側部11は、反スラスト側部12と比較して、一対のサイドウォール部70の肉厚が厚く、ピストン頂部壁10とスラスト側のピストンスカート壁41の間に位置する部分のピストンリング支持部60の肉厚が薄く、一対のピンボス連結部50のスラスト方向の最大長さが長くなるように形成されている。具体的には、スラスト側部11は、反スラスト側部12と比較して、一対のサイドウォール部70の径方向の肉厚W21が大きく、ピストン頂部壁10とスラスト側のピストンスカート壁41の間に位置する部分のピストンリング支持部60の肉厚W11が小さく、一対のピンボス連結部50のスラスト方向の最大長さL11が長くなるように形成されている。
【0045】
反スラスト側部12は、スラスト側部11と比較して、一対のサイドウォール部70の肉厚が薄く、ピストン頂部壁10と反スラスト側のピストンスカート壁42の間に位置する部分のピストンリング支持部60の肉厚が厚く、一対のピンボス連結部50のスラスト方向の最大長さが短くなるように形成される。具体的には、反スラスト側部12は、スラスト側部11と比較して、一対のサイドウォール部70の径方向の肉厚W22が小さく、ピストン頂部壁10と反スラスト側のピストンスカート壁42の間に位置する部分のピストンリング支持部60の肉厚W12が大きく、一対のピンボス連結部50のスラスト方向の最大長さL12が短くなるように形成される。
【0046】
図1の例では、スラスト側部11のピストンリング支持部60の肉厚W11、および、反スラスト側部12のピストンリング支持部60の肉厚W12は、トップリング31とセカンドリング32の間を通るピストン径方向の長さである。スラスト側部11のピストンリング支持部60の肉厚W11、および、反スラスト側部12のピストンリング支持部60の肉厚W12は、セカンドリング32とオイルリング33の間を通るピストン径方向の長さであってもよい。また、スラスト側部11のピストンリング支持部60の肉厚W11、および、反スラスト側部12のピストンリング支持部60の肉厚W12は、トップリング31、セカンドリング32またはオイルリング33を通るピストン径方向の長さであってもよい。また、スラスト側部11のピストンリング支持部60の肉厚W11、および、反スラスト側部12のピストンリング支持部60の肉厚W12は、一対のピンボス連結部50の間に位置するピストンリング支持部60の端部のピストン径方向の長さであってもよい。また、スラスト側部11の一対のサイドウォール部70の径方向の肉厚W21、および、反スラスト側部12の一対のサイドウォール部70の径方向の肉厚W22は、スラスト方向の中心部のピストンピン方向の長さである。スラスト側部11の一対のサイドウォール部70の径方向の肉厚W21、および、反スラスト側部12の一対のサイドウォール部70の径方向の肉厚W22は、ピストンピン方向の最小または平均の長さであってもよい。
【0047】
第1実施形態のピストン1は、以下の効果を有する。
【0048】
ピストン1は、燃焼圧がピストン頂部壁10に作用することで往復運動する。一対のピストンスカート壁40にはシリンダ孔の内壁からスラスト力が作用する。特に、スラスト側部11には、反スラスト側部12よりも大きいスラスト力が作用する。また、ピストン頂部壁10には、燃焼圧による応力が作用する。燃焼圧による応力は、ピストン頂部壁10の一部に集中して作用する。ピストン頂部壁10は、一対のピンボス連結部50により一対のピンボス部20に接続される。そのため、従来は、ピストン頂部壁10における一対のピンボス連結部50が接続される部分に燃焼圧による応力が集中する。
【0049】
第1実施形態のピストン1は、ピストン頂部壁10と一対のピンボス部20との間に位置する一対のピンボス連結部50のスラスト方向の最大長さL1を、一対のピンボス部20のスラスト方向の最大長さL0よりも長くしている。そのため、ピストン頂部壁10から一対のピンボス連結部50に作用する燃焼圧による応力を分散して、ピストン頂部壁10に作用する燃焼圧による応力を平準化することができる。
【0050】
第1実施形態のピストン1は、反スラスト側部12と比較して、作用するスラスト力が大きいスラスト側部11は、一対のサイドウォール部70の肉厚が厚くなるように形成されることでスラスト側部11の強度を確保し、一対のピンボス連結部50のスラスト方向の長さL11を長くすることでスラスト側部11の一対のピンボス連結部50の強度を確保できるため、ピストンリング支持部60のピストン頂部壁10とスラスト側のピストンスカート壁41との間に位置する部分の肉厚が薄くなるよう形成されることでスラスト側部11を軽量化している。スラスト側部11と比較して、作用するスラスト力が小さいまたはスラスト力が作用しない反スラスト側部12は、一対のサイドウォール部70の肉厚が薄くなるように形成されることで反スラスト側部12を軽量化する一方で、ピストンリング支持部60のピストン頂部壁10と反スラスト側のピストンスカート壁42の間に位置する部分の肉厚が厚くなるように形成されることで反スラスト側部12の強度を確保できるため、一対のピンボス連結部50のスラスト方向の長さL12が短くすることにより一対のピンボス連結部50を軽量化しつつ反スラスト側部12のピストン頂部壁10の強度の低下を抑制している。これにより、ピストン頂部壁10に作用する燃焼圧による応力の平準化しつつ、スラスト力に対する強度を確保できる。また、スラスト側部11のピストンリング支持部60および反スラスト側部12の一対のサイドウォール部70の肉厚を薄くして、ピストン1を軽量化することができる。
【0051】
以上から、エンジンに用いられる第1実施形態のピストン1は、ピストン頂部壁10に作用する燃焼圧による応力の平準化とスラスト力に対するピストン1の強度の確保を両立しながら、ピストン1を軽量化できる。
【0052】
さらに、第1実施形態のピストン1は以上のように構成されることで、結果として、ピストン1の重量のバランスもよくなる。
【0053】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態のピストン1について、
図1および
図2を参照しつつ説明する。第2実施形態のピストン1は、第1実施形態の構成に加えて、以下の構成を備える。
【0054】
ピストンピン21の中心軸線Xに平行な方向をピストンピン方向とする。一対のピンボス連結部50は、一対のピンボス部20と一体で形成されて、ピストン軸線方向において一対のピンボス部20からピストン頂部壁10に至るまで配置される一対の本体部51に加えて、ピストン頂部壁10の裏面のピストンピン方向に沿って配置された一対の肉盛り部52を含む。一対のピンボス連結部50は、一対の肉盛り部52のピストンピン方向の長さまたは一対の本体部51のスラスト方向の長さを長くすることで金属量が増加し、一対の肉盛り部52のピストンピン方向の長さまたは一対の本体部51のスラスト方向の長さを短くすることで金属量が減少する。一対のピンボス連結部50は、一対の本体部51のスラスト側部11のスラスト方向の最大長さと反スラスト側部12のスラスト方向の最大長さを異ならせると共に、一対の肉盛り部52のスラスト側部11のピストンピン方向の最大長さと反スラスト側部12のピストンピン方向の最大長さを異ならせることで金属量が調整される。
【0055】
スラスト側部11は、反スラスト側部12と比較して、一対のサイドウォール部70の肉厚が厚く、ピストン頂部壁10とスラスト側のピストンスカート壁41の間に位置する部分のピストンリング支持部60の肉厚が薄く、一対のピンボス連結部50の一対の本体部51のスラスト方向の最大長さが長く、一対のピンボス連結部50の一対の肉盛り部52のピストンピン方向の最大長さが短くなるように形成される。詳細には、スラスト側部11は、反スラスト側部12と比較して、一対のサイドウォール部70の肉厚W21が大きく、ピストン頂部壁10とスラスト側のピストンスカート壁41の間に位置する部分のピストンリング支持部60の肉厚W11が小さく、一対のピンボス連結部50の一対の本体部51のスラスト方向の最大長さL11が長く、一対のピンボス連結部50の一対の肉盛り部52のピストンピン方向の最大長さL21が短くなるように形成される。
【0056】
反スラスト側部12は、スラスト側部11と比較して、一対のサイドウォール部70の肉厚が薄く、ピストン頂部壁10と反スラスト側のピストンスカート壁42の間に位置する部分のピストンリング支持部60の肉厚が厚く、一対のピンボス連結部50の一対の本体部51のスラスト方向の最大長さが短く、一対のピンボス連結部50の一対の肉盛り部52のピストンピン方向の最大長さが長くなるように形成される。詳細には、反スラスト側部12は、スラスト側部11と比較して、一対のサイドウォール部70の肉厚W22が小さく、ピストン頂部壁10と反スラスト側のピストンスカート壁42の間に位置する部分のピストンリング支持部60の肉厚W12が大きく、一対のピンボス連結部50の一対の本体部51のスラスト方向の最大長さL12が短く、一対のピンボス連結部50の一対の肉盛り部52のピストンピン方向の最大長さL22が長くなるように形成される。
【0057】
第2実施形態のピストン1は、第1実施形態のピストン1の効果に加えて、以下の効果を有する。
【0058】
第2実施形態のピストン1は、反スラスト側部12と比較して、作用するスラスト力が大きいスラスト側部11は、一対のピンボス連結部50の本体部51のスラスト方向の長さL11が長くなるように形成されることで、スラスト力に対するスラスト側部11のピストンの強度を確保する一方で、一対のピンボス連結部50の肉盛り部52のピストンピン方向の長さL21が短くなるように形成されることでピストン1を軽量化している。スラスト側部11と比較して、作用するスラスト力が小さい反スラスト側部12は、一対のピンボス連結部50の本体部51のスラスト方向の長さL12が短くなるように形成されることでピストン1を軽量化する一方で、一対のピンボス連結部50の肉盛り部52のピストンピン方向の長さL22が長くなるように形成されることで、スラスト力に対するピストン1の強度を確保している。
【0059】
以上から、エンジンに用いられる第2実施形態のピストン1において、ピストン頂部壁10に作用する燃焼圧による応力の平準化とスラスト力に対するピストン1の強度の確保の向上を両立しながら、ピストン1をより軽量化できる。
【0060】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態のピストン1について、
図3を参照しつつ説明する。第3実施形態のピストン1は、第1実施形態または第2実施形態の構成に加えて、以下の構成を備える。
図3では、第2実施形態の構成に加えて、以下の構成を備える第3実施形態のピストン1を示している。
【0061】
ピストンリング支持部60は、肉厚をピストン1の周方向の位置によって異ならせるように構成されることで、金属量を調整する。ピストンリング支持部60は、肉厚を厚くすることで金属量が増加し、肉厚を薄くすることで金属量が減少する。
【0062】
ピストンリング支持部60は、反スラスト側部12よりもスラスト側部11のピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40の間に位置する部分の肉厚が薄くなるように形成される。ピストンリング支持部60は、スラスト側部11および反スラスト側部12の両方とも、ピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40の間に位置する部分の周方向中央部の肉厚が、ピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40の間に位置する部分の周方向両端部の各々の肉厚よりも厚くなるように形成される。つまり、ピストンリング支持部60は、スラスト側部11および反スラスト側部12の両方とも、ピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40のピストンスカート周方向中央部との間に位置する部分が、ピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40のピストンスカート周方向両端部との間に位置する部分よりも肉厚が厚い。より詳細には、ピストンリング支持部60は、ピストン頂部壁10とスラスト側のピストンスカート壁41の間に位置する部分の周方向中央部の径方向の肉厚W41が、ピストン頂部壁10とスラスト側のピストンスカート壁41の間に位置する部分の周方向両端部の各々の径方向の肉厚W42よりも大きくなるように形成される。ピストンリング支持部60は、ピストン頂部壁10と反スラスト側のピストンスカート壁42の間に位置する部分の周方向中央部の径方向の肉厚W31が、ピストン頂部壁10と反スラスト側のピストンスカート壁42の間に位置する部分の周方向両端部の各々の径方向の肉厚W32よりも大きくなるように形成される。
【0063】
第3実施形態のピストン1は、第1実施形態または第2実施形態のピストン1の効果に加えて、以下の効果を有する。
【0064】
第3実施形態のピストン1の一対のピストンスカート壁40にはシリンダ孔の内壁からスラスト力を受ける。ピストンリング支持部60のピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40の間に位置する部分の周方向中央部は、ピストンリング支持部60のピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40の間に位置する部分の一対のサイドウォール部70に接続される周方向両端部よりも強度の確保が必要となる。
【0065】
スラスト側部11は、主に一対のピンボス連結部50と一対のサイドウォール部70とで、反スラスト側部12と比較して大きく作用するスラスト力を受け止めているため、一対のピンボス連結部50のスラスト方向の長さが長く、一対のサイドウォール部70の肉厚が厚くなるように形成されている。そして、スラスト側部11は、ピストンリング支持部60のピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40の間に位置する部分の肉厚が薄くなるように形成されつつ、ピストンリング支持部60のピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40の間に位置する部分の周方向中央部の肉厚が厚くなるように形成される一方で、ピストンリング支持部60のピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40の間に位置する部分の周方向両端部の肉厚が薄くなるように形成されている。それにより、ピストン1を軽量化しつつ、スラスト力に対するピストン1の強度をより高められる。もしくは、スラスト力に対するピストン1の強度を確保しつつ、ピストン1をより軽量化できる。反スラスト側部12は、スラスト側部11と比較して、作用するスラスト力が小さいため、一対のピンボス連結部50のスラスト方向の長さが短く、一対のサイドウォール部70のピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40の間に位置する部分の肉厚が薄くなるように形成されている。そして、反スラスト側部12では、ピストンリング支持部60のピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40の間に位置する部分の肉厚が厚くすることで燃焼圧によってピストン頂部壁10に作用する応力に対して必要な強度を確保しつつ、ピストンリング支持部60のピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40の間に位置する部分の周方向中央部の肉厚を厚くすることでスラスト力に対するピストン1の強度を確保する一方で、ピストンリング支持部60のピストン頂部壁10と一対のピストンスカート壁40の間に位置する部分の周方向両端部の肉厚が薄くすることでピストン1をさらに軽量化している。
【0066】
以上から、エンジンに用いられる第3実施形態のピストン1において、ピストン頂部壁10に作用する燃焼圧による応力の平準化とスラスト力に対するピストン1の強度の確保を両立しながら、ピストン1をより軽量化できる。
【0067】
なお、本実施形態のピストン1において、ピストン頂部壁10は、ピストン軸線方向に凹んだ形状を有してもよい。つまり、ピストン頂部壁10は、凹凸を有する曲面であってもよい。また、本実施形態のピストン1において、一対のピストンスカート壁40は、一対のサイドウォール部70よりピストン軸線方向に長く形成されてもよい。
【0068】
なお、本実施形態のピストン1は、鍛造で製造されてもよい。この場合、例えば、以下のように製造される。ピストン1は、ピストン頂部壁10と、一対のピストンスカート壁40と、一対のピンボス連結部50と、ピストンリング支持部60と、一対のサイドウォール部70と、一対のピンボス部20が一体成形される。ピストンピン21が挿入可能な一対の孔22と、少なくとも1つのピストンリング溝64は、機械加工により形成される。少なくとも1つのピストンリング30は、別に形成されて、少なくとも1つのピストンリング溝64に嵌められる。
【符号の説明】
【0069】
1:ピストン、10:ピストン頂部壁、11:スラスト側部、12:反スラスト側部、20:一対のピンボス部、21:ピストンピン、30~33:少なくとも1つのピストンリング、40:一対のピストンスカート壁、41:スラスト側のピストンスカート壁、42:反スラスト側のピストンスカート壁、50:一対のピンボス連結部、60:ピストンリング支持部、61~64:少なくとも1つのピストンリング溝、70:一対のサイドウォール部