(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087807
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】溶接装置の制御方法、弾性ガイドシステム、溶接装置位置決め装置、および溶接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 37/04 20060101AFI20240624BHJP
B23Q 5/28 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B23K37/04 F
B23Q5/28 B
B23Q5/28 C
B23Q5/28 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023213246
(22)【出願日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】22214764.7
(32)【優先日】2022-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】522238491
【氏名又は名称】ブランソン ウルトラスチャル ニーデルラッスン デル エマーソン テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング アンド カンパニー オーエイチジー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ミハル,モトブスキー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】上側治具と、下側治具と、制御装置と、溶接装置位置決め装置とを有する溶接装置の制御方法を提供する。
【解決手段】溶接装置位置決め装置(1、100、200)は、機械損失を有しないか最大でも印加される力よりも小さい機械損失を有する駆動システムを使用する。さらに、損失なく動作する弾性ガイドシステムを溶接装置位置決め装置において使用する。本制御方法は、下側治具(5)および上側治具(7)を互いに対して移動させる工程と、第1および第2の構成要素を力により互いに押し付けるように、溶接装置位置決め装置の少なくとも1つの駆動システムを作動させる工程と、少なくとも1つの駆動システムの作動中に、溶接装置位置決め装置の静的な第1のセクションにおける力および/または静的な第1のセクションに対する溶接装置位置決め装置の移動可能な第2のセクションの位置を測定する工程と、を備える。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側治具(7)と、下側治具(5)と、制御装置と、静的な第1のセクション(10、110、210、310)および前記静的な第1のセクション(10、110、210、310)に対して移動可能な第2のセクション(12、112、212、312)、第1の端部において前記第1のセクション(10、110、210、310)に接続され、かつ第2の端部において前記第2のセクション(12、112、212、312)に接続された少なくとも1つの駆動システム(14、314)、それをより前記第1のセクション(10、110、210、310)および前記第2のセクション(12、112、212、312)を互いに接続する少なくとも1つの弾性ガイドシステム(20、30、120)を備えた溶接装置位置決め装置(1、100、200、300)とを有する溶接装置(3)の制御方法であって、前記第1のセクション(10、110、210、310)および前記第2のセクション(12、112、212、312)は、前記溶接装置位置決め装置(1、100、200、300)の軸方向長さを変えることができるように、前記少なくとも1つの弾性ガイドシステム(20、30、120)により1つのみの軸に沿って互いに対して移動可能であり、かつ前記溶接装置位置決め装置の少なくとも1つの駆動システム(14、314)は、
i.可動コイル駆動装置、または
ii.ピエゾモーター、リニアモーター、電磁駆動システム、フィールドもしくは励起コイルを備えたコイルシステムまたは駆動装置、あるいは
iii.動作中に第1の構成要素を第2の構成要素に押し付けることができる力よりも小さい機械損失を含む回転モーターであって、ここでは前記力は≦1kNである回転モーター
を備え、
前記制御方法は、以下の:
a.前記下側治具(5)と前記上側治具(7)との間の距離を初期の第1の距離から縮小された第2の距離まで減少させるように、前記下側治具(5)および前記上側治具(7)を互いに対して移動させる工程(工程S1)と、
b.前記静的な第1のセクション(10、110、210、310)と前記移動可能な第2のセクション(12、112、212、314)との間の距離を増加させ、それにより第1および第2の構成要素を力により互いに押し付けるように、前記溶接装置位置決め装置(1、100、200、300)の少なくとも1つの駆動システム(14)を作動させる工程(工程S2)と、
c.前記少なくとも1つの駆動システム(14)の作動中(工程S2)に、前記溶接装置位置決め装置(1、100、200、300)の静的な第1のセクション(10、110、210、310)における力および/または前記静的な第1のセクション(10、110、210、310)に対する前記溶接装置位置決め装置(1、100、200、300)の移動可能な第2のセクション(12、112、212、312)の位置を測定し、かつ前記測定した力および/または位置を所定の力および/または位置と比較し、かつ前記所定の力および/または位置に達した後に前記作動を停止する工程(工程S3)と、その後に
d.前記第1および前記第2の構成要素を互いに溶接する工程(工程S4)と、
e.前記静的な第1のセクション(10、110、210、310)と前記移動可能な第2のセクション(12、112、212、312)との間の距離を減少させるように、溶接後に前記溶接装置位置決め装置(1、100、200、300)の少なくとも1つの駆動システム(14、314)を作動させる工程(工程S5)と、
f.前記下側治具(5)と前記上側治具(7)との間の距離を増加させるように前記下側治具(5)および前記上側治具(7)を互いに対して移動させる工程(工程S6)と、
を含む、方法。
【請求項2】
複数の力センサー(224、324)が使用される、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記溶接装置位置決め装置(1、100、200、300)の静的な第1のセクション(10、110、310)および前記移動可能な第2のセクション(12、112、312)の相対位置を非接触法により測定し、ここではセンサー本体は前記溶接装置(3)のフレームに装着されており、かつ測定手段は前記溶接装置位置決め装置(1、100、300)の移動可能な第2のセクション(12、112、312)または前記溶接装置(3)のそれぞれの治具(5、7)に配置されている、請求項1または2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記溶接装置位置決め装置(1、100、200、300)は前記下側治具(5)に配置されている、請求項1または2に記載の制御方法。
【請求項5】
前記溶接装置位置決め装置(1、100、200、300)は前記上側治具(7)に配置されている、請求項1または2に記載の制御方法。
【請求項6】
少なくとも1つのさらなるバネ(332)が設けられている、請求項1または2に記載の制御方法。
【請求項7】
静的な第1のセクション(10、110、210、310)および前記静的な第1のセクション(10、110、210、310)に対して移動可能な第2のセクション(12、112、212、312)と、第1の端部において前記第1のセクション(10、110、210、310)に接続され、かつ第2の端部において前記第2のセクション(12、112、212、312)に接続された少なくとも1つの駆動システム(14、314)と、それをより前記第1のセクション(10、110、210、310)および前記第2のセクション(12、112、212、312)を互いに接続させる少なくとも1つの弾性ガイドシステム(20、30、120)とを備えた溶接装置位置決め装置(1、100、200、300)の弾性ガイドシステム(30)であって、前記第1のセクション(10、110、210、310)および前記第2のセクション(12、112、212、312)は、前記溶接装置位置決め装置(1、100、200、300)の軸方向長さを変えることができるように、前記少なくとも1つの弾性ガイドシステム(20、30、120)により1つのみの軸に沿って互いに対して移動可能であり、かつ前記溶接装置位置決め装置の少なくとも1つの駆動システム(14、314)は、
i.可動コイル駆動装置、または
ii.ピエゾモーター、リニアモーター、電磁駆動システム、フィールドもしくは励起コイルを備えたコイルシステムまたは駆動装置、あるいは
iii.動作中に第1の構成要素を第2の構成要素に押し付けることができる力よりも小さい機械損失を含む回転モーターであって、ここでは前記力は≦1kNである回転モーターと
を備え、
前記弾性ガイドシステム(30)は前記移動可能な第2のセクション(12、112、212、312)への接続のための内側リング(32)および前記静的な第1のセクション(10、110、210、310)への接続のための外側リング(34)を備え、かつ
前記内側リング(32)および前記外側リング(34)は複数のミアンダ形状のセグメント(36)によって互いに接続されている、弾性ガイドシステム(30)。
【請求項8】
前記外側リング(34)における第1のセグメント(36)の第1の固定点(38)は、前記内側リング(32)における隣接する第2のセグメント(36)の第2の固定点(40)に隣接して半径方向外向きに配置されている、請求項7に記載の弾性ガイドシステム(30)。
【請求項9】
2つ、3つまたは4つのミアンダ形状のセグメント(36)が存在する、請求項7または8に記載の弾性ガイドシステム(30)。
【請求項10】
静的な第1のセクション(310)および前記静的な第1のセクション(310)に対して移動可能な第2のセクション(312)と、第1の端部において前記第1のセクション(310)に接続され、かつ第2の端部において前記第2のセクション(312)に接続された少なくとも1つの駆動システム(314)と、それをより前記第1のセクション(310)および前記第2のセクション(312)を互いに接続する少なくとも1つの弾性ガイドシステム(30)とを備えた溶接装置位置決め装置(300)であって、前記第1のセクション(310)および前記第2のセクション(312)は、前記溶接装置位置決め装置(300)の軸方向長さを変えることができるように、前記少なくとも1つの弾性ガイドシステム(30)により1つのみの軸に沿って互いに対して移動可能であり、かつ前記溶接装置位置決め装置(300)の少なくとも1つの駆動システム(314)は、
i.可動コイル駆動装置、または
ii.ピエゾモーター、リニアモーター、電磁駆動システム、フィールドもしくは励起コイルを備えたコイルシステムまたは駆動装置、あるいは
iii.動作中に第1の構成要素を第2の構成要素に押し付けることができる力よりも小さい機械損失を含む回転モーターであって、ここでは前記力は≦1kNである回転モーター
を備え、
前記少なくとも1つの弾性ガイドシステム(30)は請求項6~9のうちの1項に記載の弾性ガイドシステム(30)である、溶接装置位置決め装置(300)。
【請求項11】
上側治具(7)と、下側治具(5)と、制御装置と、溶接装置位置決め装置(1、100、200、300)とを備える溶接装置(3)であって、
a.前記制御装置は請求項1~5のうちの1項に記載の制御方法を実施するように構成されており、かつ/または
b.前記溶接装置位置決め装置は請求項10に記載の溶接装置位置決め装置である、
溶接装置(3)。
【請求項12】
前記溶接装置位置決め装置(1、100、200、300)は前記上側治具(7)または前記下側治具(5)に配置されている、請求項11に記載の溶接装置(3)。
【請求項13】
さらなるバネ(332)が存在する、請求項11または12に記載の溶接装置(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接装置の制御方法、溶接装置位置決め装置の弾性ガイドシステムのバネ、溶接装置位置決め装置、および溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの構成要素を互いに溶接する場合、例えば下側治具を運ぶ昇降台を備えた溶接装置が使用される。互いに溶接される構成要素を下側治具の上に位置決めし、下側治具を垂直方向に沿って移動させる。これにより、2つの構成要素が溶接装置の下側治具と上側治具との間で力によりクランプされる。特に小さい力および従って小型の用途のため、すなわち溶接される小さい構成要素のための現在の溶接装置は、リニアガイドを備え、かつ空気圧もしくは電気で駆動される超音波もしくはレーザー溶接プレスである。
【0003】
関連する昇降台システムは、リニアガイド、モーター、シリンダーを備えた油圧システム、軸受、および力印加システムに含まれるさらなる構成要素などの使用される機械的構造により生じる摩擦損失を示す。これらの摩擦損失により、溶接装置の力制御においてヒステリシスが生じる。この際に、昇降台を介して印加される力は経路依存性を示す。これは、当該効果の正確な大きさが原因変数、すなわち指定された公称力だけでなく昇降台の調整部品の履歴にも依存することを意味する。典型的なヒステリシス挙動はヒステリシスループの発生である。これは、原因変数を2つの異なる値の間で前後に動かすことにより生じる。従って履歴に応じて、昇降台は同じ入力変数によりいくつかの可能な位置の1つを取る可能性がある。
【0004】
さらに、摩擦損失はいわゆるスティックスリップ効果を生じさせる可能性がある。この効果は付着滑り効果としても知られており、互いに対して移動している固体の付着滑りを特徴とする。これは、静的摩擦が滑り摩擦よりも著しく大きい場合に生じ得る。この際に、減衰した結合表面部品は高速運動シーケンス、すなわち付着、緊張、分離および滑りを与える。この効果は多くの場合に技術的用途において望ましくない。それはノイズおよび固体伝搬ノイズを発生させ、これは多くの場合に不快なものと受け取られ、摩耗および材料疲労を増加させる場合がある。またそれは、例えば精密工作機械上での最小の移動の実行までも完全に妨げる恐れがある。
【0005】
従って、公知の溶接装置の限界は小さい力の制御にあり、これは溶接装置および特に昇降台の調整システムにおける低摩擦または低損失を要件とし、それにより少なくとも線形挙動が求められる。この際に、既存のガイドは摩擦を発生させ、既存のガイドは特にこの小さい力の範囲のヒステリシスを有することが経験から分かっており、これはイヤホンのための金属箔などの精緻な細工が施された構成要素を溶接するために必要とされる。ここでは、+/-5N~+/-30Nのヒステリシスは珍しくはない。またスピンドルを備えた空気圧シリンダー、油圧シリンダーまたは電動モーターのような全ての駆動装置が損失および摩擦を有する。同様に、損失および摩擦は回転運動の直線運動への変換中に生じる。
【0006】
従って溶接装置に関して、これらの効果により、特にイヤホンのための金属箔などの精緻な細工が施された部品を溶接するために必要とされる小さい力では再現不可能な溶接結果となり、従ってこれらの構成要素は完全に溶接できないものとなる。接触検出の間の摩擦損失およびヒステリシスにより力のピークが大きくなる可能性があり、これも小型の用途では構成要素の破壊をもたらす可能性がある。
【0007】
この点に関して改良された装置が、EP 3 620 257 A1(欧州特許出願公開第3620257号公報)に記載されている。ここには、2つの構成要素を互いに押し付けることができる溶接装置のための溶接装置位置決め装置が記載されている。溶接装置位置決め装置は、下側治具に配置されており、かつ静的な第1のセクションと第1のセクションに対して移動可能な第2のセクションとを備える。それは、第1の端部において第1のセクションに接続され、かつ第2の端部において第2のセクションに接続された少なくとも1つの駆動システムと、それにより第1のセクションおよび第2のセクションを互いに接続する少なくとも1つの弾性ガイドシステムとをさらに備える。第1のセクションおよび第2のセクションは、当該装置の軸方向長さを変えることができるように、少なくとも1つの弾性ガイドシステムにより1つのみの軸に沿って互いに対して移動可能である。可動コイル駆動装置、すなわち機械損失を有しないか動作中に印加されるクランプ力よりも小さい機械損失を有する別の駆動装置を使用してもよい。
【0008】
この点に関する技術的問題は、溶接装置位置決め装置を有するそのような溶接装置のための改良された制御方法ならびに特に小さい構成要素をなお高い正確性で位置決めし、かつ溶接することができるような代わりの溶接装置位置決め装置を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
上記目的は、独立請求項1に記載の溶接装置の制御方法、独立請求項7に記載の溶接装置位置決め装置の弾性ガイドシステム、独立請求項10に記載の溶接装置位置決め装置ならびに独立請求項11に記載の溶接装置によって解決される。さらなる好ましい実施形態および開発は、以下の説明、図面ならびに添付の特許請求の範囲から生じる。
【0010】
上側治具と、下側治具と、制御装置と、静的な第1のセクションおよび静的な第1のセクションに対して移動可能な第2のセクション、第1の端部において第1のセクションに接続され、かつ第2の端部において第2のセクションに接続された少なくとも1つの駆動システム、それにより第1のセクションおよび第2のセクションを互いに接続する少なくとも1つの弾性ガイドシステムを備えた溶接装置位置決め装置とを有する溶接装置の一発明の制御方法であって、第1のセクションおよび第2のセクションは、溶接装置位置決め装置の軸方向長さを変えることができるように、少なくとも1つの弾性ガイドシステムにより1つのみの軸に沿って互いに対して移動可能であり、かつ溶接装置位置決め装置の少なくとも1つの駆動システムは、可動コイル駆動装置またはピエゾモーター、リニアモーター、電磁駆動システム、フィールドもしくは励起コイルを備えたコイルシステムまたは駆動装置あるいは動作中に第1の構成要素を第2の構成要素に押し付けることができる力よりも小さい機械損失を含む回転モーターであって、ここではその力は≦1kN、好ましくは≦500N、特に好ましくは≦250Nである回転モーターとを備え、本制御方法は、下側治具と上側治具との間の距離を初期の第1の距離から縮小された第2の距離まで減少させるように、下側治具および上側治具を互いに対して移動させる工程と、静的な第1のセクションと移動可能な第2のセクションとの間の距離を増加させ、それにより第1および第2の構成要素を力により互いに押し付けるように、溶接装置位置決め装置の少なくとも1つの駆動システムを作動させる工程と、少なくとも1つの駆動システムの作動中に、溶接装置位置決め装置の静的な第1のセクションにおける力および/または静的な第1のセクションに対する溶接装置位置決め装置の移動可能な第2のセクションの位置を測定し、その測定した力および/または位置を所定の力および/または位置と比較し、かつ所定の力および/または位置に達した後にその作動を停止する工程と、その後に第1および第2の構成要素を互いに溶接する工程と、静的な第1のセクションと移動可能な第2のセクションとの間の距離を減少させるように、溶接後に溶接装置位置決め装置の少なくとも1つの駆動システムを作動させる工程と、下側治具と上側治具との間の距離を、好ましくは縮小された第2の距離から初期の第1の距離まで増加させるように、下側治具および上側治具を互いに対して移動させる工程とを含む方法。
【0011】
本発明の制御方法は、EP 3 620 257 A1(欧州特許出願公開第3620257号公報)に記載されているように、特に溶接装置位置決め装置を有する溶接装置を制御するために使用する。従って、より容易な理解のために、溶接装置位置決め装置の構築および機能に関してEP 3 620 257 A1(欧州特許出願公開第3620257号公報)も参照する。
【0012】
溶接装置それ自体は、超音波溶接装置、レーザー溶接装置、赤外線溶接装置、振動溶接装置または摩擦溶接装置などのどんな溶接装置であってもよい。溶接装置は、上側治具、下側治具、制御装置および溶接装置位置決め装置を提供する。好ましくは、本制御方法は制御装置のメモリに記憶されている。従って制御装置は、本制御方法を実施するように構成されていることが好ましい。
【0013】
第1および第2の構成要素を溶接装置内で下側治具と上側治具との間に配置した後に、下側治具および上側治具を互いに対して移動させる。この目的を達成するために最初に、第1および第2の構成要素を好ましくは下側治具の中または上に配置する。あるいは好ましくは、第1の構成要素を下側治具の中に配置し、かつ第2の構成要素を上側治具の中に配置する。
【0014】
下側および上側治具の相対移動は、初期の第1の距離、例えば当該構成要素を溶接装置内に配置した時の距離を縮小された第2の距離まで減少させるように行う。これは、下側治具を上側治具の方向に移動させること、上側治具を下側治具の方向に移動させること、または上側および下側治具の両方を移動させることにより実現してもよい。
【0015】
上側および下側治具が互いの間に縮小された第2の距離を有して配置されている場合に、溶接装置位置決め装置の少なくとも1つの駆動システムを作動させる。これにより、駆動システムを用いて当該装置の軸方向長さを変える。特に、静的な第1のセクションと移動可能な第2のセクションとの間の距離を増加させ、それにより溶接される2つの構成要素を下側治具と上側治具との間で所望の力でクランプする。
【0016】
信頼できる溶接を保証し、かつ互いに溶接される構成要素への損傷を防止するために、溶接装置位置決め装置の駆動システムの作動中に、溶接装置位置決め装置の静的な第1のセクションにおける力および/または静的な第1のセクションに対する溶接装置位置決め装置の移動可能な第2のセクションの位置を測定する。同時に、その測定した力および/または位置を所定の力および/または位置と比較する。所定の力および/または位置に達した後に、溶接装置位置決め装置の駆動システムの作動を停止する。従って好ましくは、第1および第2の構成要素を上側治具と下側治具との間でクランプするために溶接装置位置決め装置の駆動システムを作動させる場合、閉ループ制御を使用する。
【0017】
その後に、第1および第2の構成要素を互いに溶接する。
【0018】
溶接の完了後に、静的な第1のセクションと移動可能な第2のセクションとの間の距離を減少させるように、溶接装置位置決め装置の少なくとも1つの駆動システムを再び作動させる。これにより上側治具と下側治具との間で、好ましくは縮小された第2の距離まで距離を増加させる。
【0019】
最後に、下側治具と上側治具との間の距離を好ましくは縮小された第2の距離から初期の第1の距離までさらに増加させるように、下側治具および上側治具を互いに対して移動させる。
【0020】
溶接装置位置決め装置の駆動システムとして、可動コイル駆動装置またはボイスコイルアクチュエーターを第1の代替形態で使用してもよい。第2の代替形態によれば、溶接装置位置決め装置の駆動システムはピエゾモーター、リニアモーター、電磁駆動システム、フィールドもしくは励起コイルを備えたコイルシステムまたは駆動装置を備える。さらに第3の代替形態に関して、溶接装置位置決め装置の少なくとも1つの駆動システムは、動作中に第1の構成要素を第2の構成要素に押し付けることができる力よりも小さい機械損失を有する回転モーターであって、ここではその力は≦1kN、好ましくは≦500N、特に好ましくは≦250Nである回転モーターを備える。但し、いずれの場合も特に第1および第2の代替形態に関して、溶接装置位置決め装置は精度の高い溶接装置位置決め装置である。これは、特に最小の移動の実行および/または最小の力の印加を溶接装置位置決め装置を用いて実現できることを意味する。
【0021】
溶接装置位置決め装置の精度の高さの理由は、可動コイル駆動装置が機械的摩擦を示さない非常に動的な駆動装置であるということにある。これらの駆動装置は対応する制御を用いて高精度で位置決めすることができ、その力も高精度で制御および/または調整することができる。それらの高速性により、それらは高サイクル速度を有する自動化装置にも特に適している。原則として損失のない駆動装置、すなわち機械損失なく動作する駆動システムも第2の代替形態の範囲内で提供される。例としてはピエゾモーターまたは圧電モーターが挙げられる。これらは、移動を生じさせるために圧電効果を使用する小型モーターである。ピエゾモーターは直線または回転の両方で動作することができる。溶接装置位置決め装置の軸方向長さを変えることができる範囲は通常、構築によりリニアピエゾモーターの場合に数センチメートルであり、従ってモーターで使用される圧電固体アクチュエーターの作動経路または調整距離よりもかなり大きい。従って特に軸方向長さの著しく小さい変化を実現することができる場合には、ピエゾモーターに加えて圧電固体アクチュエーターが好ましい。2つの先に言及した駆動システムとは対照的に、機械損失を有する駆動システムが第3の代替形態に存在する。但し、これらの機械損失は印加される力よりも小さい。従って、第3の代替形態に係る溶接装置位置決め装置も精度の高い溶接装置位置決め装置であり、これも特に弾性ガイドシステムと組み合わせて、精緻な細工が施され、かつ/または極めて繊細な構成要素のために使用することができる。但し、溶接される構成要素に印加される力が駆動システムの摩擦損失よりも大きくなければならず、従って上で考察されている2つの代替形態の場合よりも大きいという事実により、第3の代替形態に係る溶接装置位置決め装置の用途の範囲は限られている。
【0022】
溶接装置位置決め装置の調整可能な軸方向長さに関して、これは駆動システムの選択および寸法決めによって決まり、それぞれの用途に適合させることができる。通常は、0.25~100mmの軸方向長さの変化を実現することができる。印加することができる力に関して、これらは0N~2kNであってもよい。可動コイル駆動装置は、好ましくは+/-0.1μmである著しく高い位置決め正確性をさらに特徴とする。
【0023】
弾性ガイドシステムにより、溶接装置位置決め装置の第1および第2のセクションを1つのみの軸上で互いに対して移動させることができる。この軸は溶接機が立っている床に対して垂直な軸であってもよい。さらに弾性ガイドシステムは機械損失を含まず、従って損失なく動作する。この文脈では「損失なく」とは、摩擦が存在しないか、あるいは2つの構成要素を溶接するために必要な力に関してガイドシステムの移動可能な構成要素間にごく僅かな摩擦しか存在しないことを意味する。弾性ガイドシステムのそれぞれの設計可能性の一実施形態については図示および記載されている実施形態を参照しながら後で考察する。
【0024】
所望の軸方向長さの力の構築および調整ならびに低摩擦ガイドのための低摩擦と正確な駆動装置とのこの組み合わせは、位置決め装置におけるあらゆる摩擦損失を防止する。結果として、全てのヒステリシス現象およびスティックスリップ効果が回避される。
【0025】
従って達成可能な正確性により、溶接装置位置決め装置を備えた溶接装置は、イヤホンのための金属箔の溶接またはスマートフォンの製造などの小さい構成要素のためにも使用することができる。従って、精緻な細工が施され、かつ/または極めて繊細な、特に電子構成要素の溶接を非常に小さい溶接力で実現することができる。著しく向上した溶接深さ制御と同様に、当該構成要素の高精度の位置決めも可能である。2つの構成要素間での接触検出における大きい力のピークを低下させ、かつ本発明の制御方法により完全に防止することができる。このようにして、実際の溶接開始のためのトリガー点を高精度で制御することができ、これにより再現可能な溶接接続が得られ、かつこれにより引き起こされるあらゆる構成要素の破壊を防止することができる。溶接装置位置決め装置の精度の程度は今のところ、使用される制御および対応するセンサーの正確性によってのみ決まる。
【0026】
本制御方法の好ましい実施形態によれば、その第1の端部が好ましくは溶接装置のフレームに装着され、かつその第2の端部が溶接装置位置決め装置の静的な第1のセクションに装着された複数の力センサー、好ましくは3つの力センサー、特にSビーム型センサーを使用する。力センサー、特にSビーム型センサーは好ましくは共通の円の上に同等に離間して配置されている。このようにして、その力を非常に効果的に測定することができ、かつ本制御方法はさらに向上する。
【0027】
本制御方法のさらなる好ましい実施形態では、溶接装置位置決め装置の静的な第1のセクションおよび移動可能な第2のセクションの相対位置を非接触法、好ましくは光学式エンコーダーにより測定し、ここではセンサー本体は特にホルダーによって溶接装置のフレームに装着されており、かつ測定手段は溶接装置位置決め装置の移動可能な第2のセクションまたは溶接装置のそれぞれの治具に配置されている。具体的にはこの好ましい配置により、存在すれば力センサーを備えた溶接装置位置決め装置の変形を補償してもよい。従って、そのような位置センサーを用いる本制御方法は高精度を実現し、かつ向上した正確性を与える。
【0028】
本制御方法の第1の発明の代替形態では、溶接装置位置決め装置は下側治具に配置されている。この目的を達成するために、好ましくは溶接装置位置決め装置の駆動システムを作動させる前に、溶接装置位置決め装置を含む下側治具を上側治具の方向に移動させるための駆動装置が存在する。
【0029】
本制御方法の第2の発明の代替形態によれば、溶接装置位置決め装置は上側治具に配置されている。これは特に溶接方法としてのレーザー溶接と組み合わせると好ましい。この点に関しては、上側治具はそのような場合に溶接装置のフレームにもはや静的に配置されていないため、上側治具の重量を補償するために少なくとも1つのさらなるバネ、好ましくは複数のさらなるバネが存在することがさらに好ましい。例えばそのようなさらなるバネは、上側治具と溶接装置のフレームまたは溶接装置位置決め装置の静的な第1のセクションとの間に結合されていてもよい。完全性のために、さらなるバネを有する溶接装置位置決め装置を下側治具と組み合わせて使用し得ることにも留意されたい。
【0030】
静的な第1のセクションおよび静的な第1のセクションに対して移動可能な第2のセクションと、第1の端部において第1のセクションに接続され、かつ第2の端部において第2のセクションに接続された少なくとも1つの駆動システムと、それにより第1のセクションおよび第2のセクションを互いに接続する少なくとも1つの弾性ガイドシステムとを備えた溶接装置位置決め装置の一発明の弾性ガイドシステムであって、第1のセクションおよび第2のセクションは、溶接装置位置決め装置の軸方向長さを変えることができるように、少なくとも1つの弾性ガイドシステムにより1つのみの軸に沿って互いに対して移動可能であり、かつ溶接装置位置決め装置の少なくとも1つの駆動システムは、可動コイル駆動装置またはピエゾモーター、リニアモーター、電磁駆動システム、フィールドもしくは励起コイルを備えたコイルシステムまたは駆動装置あるいは動作中に第1の構成要素を第2の構成要素に押し付けることができる力よりも小さい機械損失を含む回転モーターであって、ここではその力は≦1kN、好ましくは≦500N、特に好ましくは≦250Nである回転モーターとを備え、かつ弾性ガイドシステムは移動可能な第2のセクションへの接続のための内側リングおよび静的な第1のセクションへの接続のための外側リングを備え、かつ内側および外側リングは複数のミアンダ形状のセグメントによって互いに接続されている弾性ガイドシステム。本発明の設計により、接装置位置決め装置の第1および第2のセクションを1つのみの軸上で互いに対して移動させることを保証することもできる。さらに、それぞれの弾性ガイドシステムは機械損失を含まず、従って概して上に説明されているように損失なく動作する。好ましくは、そのような弾性ガイドシステムは鋼で作られている。
【0031】
弾性ガイドシステムの好ましい実施形態では、外側リングにおける第1のセグメントの第1の固定点は、内側リングにおける隣接する第2のセグメントの第2の固定点に隣接して半径方向外向きに配置されている。従って、当該セグメントは周方向に好ましくは重なり合わないように互いに隣接して配置されている。あるいは、当該セグメントは周方向に少なくとも部分的に重なっていてもよい。さらに好ましくは、2つ、3つまたは4つのミアンダ形状のセグメントが存在する。このようにして、弾性ガイドシステムの特性を所望の特性に調整することができる。
【0032】
一発明の溶接装置位置決め装置は、静的な第1のセクションおよび静的な第1のセクションに対して移動可能な第2のセクションと、第1の端部において第1のセクションに接続され、かつ第2の端部において第2のセクションに接続された少なくとも1つの駆動システムと、それにより第1のセクションおよび第2のセクションを互いに接続する少なくとも1つの弾性ガイドシステムとを備え、ここでは第1のセクションおよび第2のセクションは、溶接装置位置決め装置の軸方向長さを変えることができるように、少なくとも1つの弾性ガイドシステムにより1つのみの軸に沿って互いに対して移動可能であり、かつ溶接装置位置決め装置の少なくとも1つの駆動システムは、可動コイル駆動装置またはピエゾモーター、リニアモーター、電磁駆動システム、フィールドもしくは励起コイルを備えたコイルシステムまたは駆動装置あるいは動作中に第1の構成要素を第2の構成要素に押し付けることができる力よりも小さい機械損失を含む回転モーターであって、ここではその力は≦1kN、好ましくは≦500N、特に好ましくは≦250Nである回転モーターとを備え、かつ少なくとも1つのガイドシステムは一発明のバネを備える。本発明のバネの利用により、上記説明は本発明の溶接装置位置決め装置に同様に当てはまる。従って、これらの説明は冗長性を回避するために繰り返さない。
【0033】
一発明の溶接装置は、上側治具と、下側治具と、制御装置と、溶接装置位置決め装置とを備え、ここでは制御装置は本発明の制御方法を実施するように構成されており、かつ/または溶接装置位置決め装置は一発明の溶接装置位置決め装置である。当該溶接は本発明の制御方法の少なくとも1つまたは本発明の溶接装置位置決め装置を含むため、繰り返しを避けるために技術的効果および利点に関しては上記節を参照する。
【0034】
溶接装置の好ましい実施形態では、当該位置決め装置は上側もしくは下側治具に配置されている。当該位置決め装置が上側治具に配置されている場合、上で説明されているように、上側治具の重量を補償するためにさらなるバネが存在することがさらなる好ましい。それにも関わらず代わりとして、さらなるバネを有する当該位置決め装置を下側治具とも組み合わせて使用してもよい。いずれの場合も、冗長性を回避するために本発明の制御方法の上記説明が参照される。
【0035】
以下では、本発明は図面に基づいて詳細に説明されることになる。図面では、同じ参照符号は同じ要素および/または構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】駆動システムおよび弾性ガイドシステムとしてのセンタリングスパイダーを備えた溶接装置位置決め装置の第1の例の斜視図。
【
図3】半透明シースを備えた
図1に係る第1の例の斜視図。
【
図4】センサーが内部に位置している第1の例と同様の溶接装置位置決め装置の第2の例の斜視図。
【
図5】半透明シースを備えた
図4に係る第2の例の斜視図。
【
図6】センサーが静的な第1のセクションに装着されている溶接装置位置決め装置の一実施形態の部分断面図。
【
図7】溶接装置位置決め装置の一発明の弾性ガイドシステムの一実施形態の斜視図。
【
図8】
図7に係る弾性ガイドシステムの実施形態ならびに力および位置センサーを用いた一発明の溶接装置位置決め装置の一実施形態の第1の斜視図。
【
図9】
図8に係る一発明の溶接装置位置決め装置の実施形態の第2の斜視図。
【
図10】
図8に係る一発明の溶接装置位置決め装置の実施形態の第3の斜視図。
【
図11】
図8に係る一発明の溶接装置位置決め装置の実施形態の第4の斜視図。
【
図12】
図8に係る一発明の溶接装置位置決め装置の実施形態の第5の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1~
図6および
図8~
図12に関して、溶接装置位置決め装置1、100、200、300の4つの例が考察されている。それらの寸法により、特に精緻な細工が施され、かつ/または極めて繊細な、例えば電子構成要素を溶接装置位置決め装置1、100、200、300の1つを用いて溶接装置3において加工することができる。特に図示されている全ての実施形態が、使用される本制御方法に基づく位置決めおよび力調整における達成可能な正確性により、精度の高い溶接装置位置決め装置1、100、200、300を表している。特に本制御方法のより容易な理解のために、最初に溶接装置位置決め装置の構成について詳細に説明する。
【0038】
溶接装置位置決め装置1の第1の例が
図1~
図3に示されている。溶接装置位置決め装置1は、静的な第1のセクション10および静的な第1のセクション10に対して移動可能な第2のセクション12を備える。第1のセクション10および第2のセクション12の寸法決めは所望の用途に合わせることができる。後の動作では、溶接される構成要素を
図14に示すように第2のセクション12と溶接装置3の治具、例えば下側治具5または上側治具7との間でクランプする。
図14では、溶接装置位置決め装置1、100、200、300は昇降台である下側治具5に配置されている。あるいは、溶接装置位置決め装置1、100、200、300は上側治具7(図示せず)に配置されている。いずれの場合も、第2のセクション12を用いて第1の構成要素を第2の構成要素に押し付けることができる。
【0039】
溶接装置位置決め装置1は、その中心に可動コイル駆動装置またはボイスコイルアクチュエーターを備えた駆動システム14をさらに備える。可動コイル駆動装置の第1の端部は第1のセクション10に接続されており、第2の端部は第2のセクション12に接続されている。
【0040】
図1~
図3に示されている例では、第1のセクション10は一端が閉鎖された状態で形成された円筒形状の本体によって形成されている。駆動システム14の可動コイル駆動装置は第1のセクション10の中心に配置されており、第2のセクション12は駆動システム14の可動コイル駆動装置の第2の軸方向端部に配置されている。第2のセクション12も閉鎖された端部と共に例えば円筒形状に形成されており、このように形成された第2のセクション12は駆動システム14の上に配置されている。従って第2のセクション12の開口部は、第1のセクション10の基部に面している。
【0041】
駆動装置の選択により、溶接装置位置決め装置1は精度の高い溶接装置位置決め装置1である。これは、溶接装置位置決め装置1を用いて最小の移動の実行および/または最小の力の印加を実現できることを意味している。
【0042】
溶接装置位置決め装置1の精度は、可動コイル駆動装置がどんな機械的摩擦も示さない非常に動的な駆動装置であるという理由によるものである。調整可能な軸方向長さ、すなわち静的な第1のセクション10と移動可能な第2のセクション12との間の調整可能な距離に関して、これは可動コイル駆動装置の寸法決めによって決まる。但し典型的には、0.25~100mmの軸方向長さの変化の幅および従って変化を実現することができる。印加可能な力に関して、これらは0N~2kNであってもよい。また可動コイル駆動装置は、+/-0.1μmであり得るその極めて高い位置決め正確性を特徴とする。上記設計から分かるように、可動コイル駆動装置はそれぞれの制御を用いて高精度で位置決めすることができ、かつその力も高精度で制御および/または調整することができる。またそれらの高速性により、可動コイル駆動装置は高サイクル速度を有する自動化装置に適し得る。
【0043】
代わりとして好ましい設計では、駆動システムはピエゾモーター、リニアモーター、電磁駆動システム、フィールドもしくは励起コイルを備えたコイルシステムまたは駆動装置である。駆動システムが動作中に第1の構成要素を第2の構成要素に押し付けることができる力よりも小さい機械損失を有する回転モーターであって、その力は≦1kN、好ましくは≦500N、特に好ましくは≦250Nである回転モーターを備えることが好ましい場合もある。機械損失を有する回転モーターを除いて、他の駆動システムは例えば2つの構成要素間の摩擦による機械損失を有さない。従って本開示は、精度の高い小型の昇降台を実現することができる損失のない駆動装置に関する。
【0044】
第1のセクション10および第2のセクション12は、弾性ガイドシステム20により互いに接続されている。ここでは、それぞれがセンタリングスパイダーからなる2つの弾性ガイドシステム20が使用される。この文脈では、第1のセクション10および第2のセクション12はどちらも、
図2に示すようにそれぞれがネジにより互いに接続された3つの部分を有する。第1のセクション10は円形状の基部、円筒形状の中間部およびリング形状の上部を有する。第2のセクション12は、円形状の上面、半径方向外側に突出している突起部を有する円筒形状の中間部およびリング形状の基部を含む。弾性ガイドシステム20としての第1のセンタリングスパイダーは、第1のセクション10のリング形状の上面と円筒形状の中間部との間では半径方向外側に固定されており、かつ第2のセクション12のリング形状の上面と円筒形状の中間部との間では半径方向内側に固定されている。同様に、弾性ガイドシステム20としての第2のセンタリングスパイダーは、第1のセクション10の円形状の基部と円筒形状の中間部との間では半径方向外側に固定されており、かつ第2のセクション12のリング形状の基部と円筒形状の中間部との間では半径方向内側に固定されている。さらに第2のセクション12の円形状の上面および第1のセクション10のリング形状の上面は、
図2に示すように初期段階では互いにほぼ位置合わせされた状態で配置されていてもよい。第2のセクション12の円筒形状の中間部にある半径方向突起部は、変位もしくは経路センサー22を用いて第1のセクション10に対する第2のセクション12の移動を検出するように機能する。
【0045】
弾性ガイドシステム20は機械損失を有さず、すなわちそれは本発明の範囲内で損失なく動作する。この文脈では「損失なく」とは、摩擦が全く存在しないか、2つの構成要素を溶接するために必要な力に関して弾性ガイドシステム20の移動可能な構成要素間にごく僅かな摩擦しか存在しないことを意味する。
【0046】
低摩擦の正確な駆動装置、すなわち所望の軸方向長さの力の構築および調整のための可動コイル駆動装置14と低摩擦弾性ガイドシステム20とを組み合わせることにより、溶接装置位置決め装置1におけるあらゆる摩擦損失を好ましくは防止する。結果として、全てのヒステリシス現象およびスティックスリップ効果は回避されるか、溶接装置のための公知の昇降台と比較して少なくとも著しく減少する。従って溶接装置位置決め装置1は、イヤホンのための金属箔またはスマートフォンの製造などの小さい構成要素を加工することができる溶接装置に使用するのに適し得る。2つの構成要素間の接触認識中の大きい力のピークも低下させ、かつ完全に防止することができる。このようにして、実際の溶接開始のためのトリガー点を高精度で制御することができ、これにより再現可能な溶接接続が得られ、かつこれにより引き起こされるあらゆる構成要素の破壊を防止することができる。
【0047】
図4および
図5には、修正された例が
図1~
図3の例と比較して示されている。この2つの例は、
図4および
図5に係る実施形態では変位もしくは経路センサー122が駆動システムとしての可動コイル駆動装置内部に配置されているという点で異なる。これにより、溶接装置位置決め装置100の全体的セットアップがさらにより小型になる。
図4は、駆動システムとしての可動コイル駆動装置内部のセットアップを示す。可動コイル駆動装置のコアのための固定部は116によって示されており、第2のセクション112のための接続部は118によって示されている。
【0048】
図6は、溶接装置位置決め装置200のさらなる例を示す。ここでは、一般的な構築は上で考察されている例1および100と同様である。さらに、3つの力センサー224、特にSビーム型センサーが存在する。力センサー224の第1の端部は溶接装置3のフレームに装着されており、力センサー224の第2の端部は溶接装置位置決め装置200の静的な第1のセクション210に装着されている。力センサー224は共通の円の上に同等に離間して配置されている。このようにして、その力を非常に効果的に測定することができ、かつ後で説明する本制御方法はさらに向上する。
【0049】
次に
図7に関して、弾性ガイドシステム30のための他の設計が示されている。弾性ガイドシステム30は好ましくは鋼で作られており、かつ移動可能な第2のセクション12、112、212への接続のための内側リング32および静的な第1のセクション10、110、210への接続のための外側リング34を備える。内側リング32および外側リング34は複数のミアンダ形状のセグメント36によって互いに接続されている。本発明の設計により、溶接装置位置決め装置1、100、200の第1のセクション10、110、210および第2のセクション12、112、212を1つのみの軸上で互いに対して移動させることを保証することもできる。さらに、それぞれの弾性ガイドシステム30は機械損失を含まず、従って概して上に説明されているように損失なく動作する。
【0050】
外側リング34にある第1のセグメント36の第1の固定点38は、内側リング32にある隣接する第2のセグメント36の第2の固定点40に隣接して半径方向外向きに配置されている。従ってセグメント36は周方向に好ましくは重ならないように互いに隣接して配置されている。あるいは、セグメント36は周方向に少なくとも部分的に重なっていてもよい。さらに好ましくは、2つ、3つまたは4つのミアンダ形状のセグメント36が存在する。このようにして、弾性ガイドシステム30の特性を所望の特性に調整することができる。
【0051】
以下では、溶接装置位置決め装置300のさらなる実施形態を
図8~
図13に関して考察する。本実施形態では、上で説明されている弾性ガイドシステム30を使用する。あるいは、実施形態1および100と組み合わせて記載されている他の弾性ガイドシステム20、120、特にセンタリングスパイダーを使用してもよい。
【0052】
内側構築の部品を示す
図8から分かるように、駆動システム314はコイル311および磁気コア313を有するボイスコイルアクチュエーターによって形成されている。コイル311は静的な第1のセクション310に結合されており、磁気コア313は移動可能な第2のセクション312に結合されている。静的な第1のセクション310は3つの部品、すなわち上側部品、中間部品および下側部品からなる。全ての3つの部品はネジによって互いに接続されている。さらに、静的な第1のセクション310の上側部品と中間部品との間および中間部品と下側部品との間には、1つの弾性ガイドシステム30が装着されている。さらに力センサー324、特にSビーム型センサーは一端で静的な第1のセクション310に装着されている。
【0053】
次に
図9を参照して、さらなる構築について説明する。この目的を達成するために、静的な第1のセクション310はこの図には示されていない。それどころかその焦点は、磁気コア313に結合されている移動可能な第2のセクション312に関する。静的な第1のセクション310のように、移動可能な第2のセクション312は、ここでは弾性ガイドシステム30も、移動可能な第2のセクション312の上側部品と中間部品との間および中間部品と下側部品との間に装着されるように3つの部品からなる。さらに、変位センサー322の読み取りテープ326が図示されており、変位センサーの位置は
図10に示されている。
【0054】
図11には、変位センサー322のホルダー328が図示されている。信頼できる位置測定を保証するために、ホルダー328は基部要素330に装着されている。さらに、力センサー324の別の端部が基部要素330に装着されている。この目的を達成するために、基部要素330は溶接装置の部品または個別の部品であってもよい。
【0055】
図12は、静的な第1のセクション310を含む溶接装置位置決め装置300の全体的構築を示す。さらに、溶接装置位置決め装置300が上側治具7に装着されている場合、上側治具7の重量を補償するためにさらなるバネ332が存在する。この点に関して、さらなるバネ332を有するそのように設計された溶接装置位置決め装置300は溶接装置3の下側治具5と組み合わせて使用できることにも留意されたい。さらなるバネ332を溶接装置位置決め装置300内に固定するために、さらなるバネ332を移動可能な第2のセクション312に結合する第1のホルダー334が設けられている。同様に、さらなるバネ332を静的な第1のセクション310に結合する第2のホルダー336が設けられている。
【0056】
最後に、
図13は溶接装置位置決め装置300の構築の概略的全体図を示す。
【0057】
図14には溶接装置3が図示されている。これは下側治具5としての昇降台と、上側治具7と、制御装置(図示せず)と、下側治具5に配置された溶接装置位置決め装置1、100、200、300の上記実施形態のうちの1つとを備える。第1の代替形態によれば、溶接装置位置決め装置1、100、200、300の静的な第1のセクション10はそれぞれの治具の必須部分である。第2の代替形態によれば、静的な第1のセクション10はそれぞれの治具に装着されている。
【0058】
溶接装置3それ自体は超音波溶接装置、レーザー溶接装置、赤外線溶接装置、振動溶接装置または摩擦溶接装置などのどんな溶接装置3であってもよい。
【0059】
弾性ガイドシステム20、30、120により、第1および第2のセクションを1つのみの軸に沿って互いに対して移動させることができる。この軸は溶接装置3が位置している基部に対して垂直な軸であってもよい。動作中に、溶接される構成要素を溶接装置位置決め装置1、100、200、300の上側治具7と第2のセクション12、112、212、312との間に所望の力でクランプする。
【0060】
溶接装置3を用いて一緒に溶接される構成要素をクランプすることができる力は、≦1kN、好ましくは≦500N、特に好ましくは≦250Nである。特に精緻な細工が施された構成要素では、さらに小さい力が必要とされ、ここでは≦20N、好ましくは≦10N、特に≦5Nの範囲も溶接装置3により実現することができる。
【0061】
使用される溶接装置位置決め装置1、100、200、300の特定のセットアップにより、一緒に溶接される構成要素を動作中にクランプする実際の力は、最大2.5N、好ましくは最大1N、特に好ましくは最大0.5Nだけ所定の公称力とは異なる。同じことが実際の経路と所定の公称経路との間の差に当てはまる。従って、溶接装置位置決め装置1、100、200、300の軸方向長さが動作中に起点から変動する実際の経路は、最大1mm、好ましくは最大0.1mm、特に好ましくは最大0.01mmだけ所定の公称経路とは異なる。溶接装置位置決め装置1、100、200、300を用いて溶接接続の高い再現性を達成することができるため、その力および/または経路の最大差は、少なくとも3回、好ましくは少なくとも5回、特に好ましくは少なくとも10回の連続溶接プロセスにより維持される。
【0062】
図示されていない代替実施形態では、溶接装置位置決め装置1、100、200、300は上側治具7に配置されている。そのような場合、上側治具7の重量を補償するためにさらなるバネ332が存在する。
【0063】
最後に
図15に関して、溶接装置位置決め装置1、100、200、300を備える溶接装置3の本発明の制御方法の一実施形態のフローチャートについて説明する。好ましくは、本制御方法は制御装置のメモリに記憶されている。従って制御装置は、本制御方法を実施するように構成されていることが好ましい。
【0064】
本制御方法の第1の発明の代替形態では、溶接装置位置決め装置1、100、200、300は下側治具5に配置されている。本制御方法の第2の発明の代替形態では、溶接装置位置決め装置1、100、200、300は上側治具7に配置されている。後者は溶接方法としてのレーザー溶接と組み合わせると特に好ましい。さらに、溶接装置位置決め装置1、100、200、300が上側治具7に配置されている場合、少なくとも1つのさらなるバネ、好ましくは複数のさらなるバネが存在することが好ましい。このようにして、上側治具7の重量を補償することができる。例えばそのようなさらなるバネは、上側治具7と溶接装置のフレーム3または溶接装置位置決め装置1、100、200、300の静的な第1のセクション10、110、210、310との間に結合されていてもよい。
【0065】
次に本制御方法を再び参照すると、最初に第1および第2の構成要素を溶接装置3内で下側治具5と上側治具7との間に配置した後に、下側治具5および上側治具7を第1の工程S1において互いに対して移動させる。この目的を達成するために最初に、第1および第2の構成要素を好ましくは下側治具5の中または上に配置する。あるいは好ましくは、第1の構成要素を下側治具5の中に配置し、かつ第2の構成要素7を上側治具の中に配置する。
【0066】
下側治具5と上側治具7との相対移動は、初期の第1の距離、例えば当該構成要素を溶接装置3内に配置した時の距離を縮小された第2の距離まで減少させるように行う。これは下側治具5を上側治具7の方向に移動させること、上側治具7を下側治具5の方向に移動させること、あるいは両方すなわち上側治具7および下側治具5を移動させることにより実現してもよい。
【0067】
上側治具5および下側治具7が互いの間に縮小された第2の距離を有して配置されている場合に、少なくとも1つの駆動システム14、314、例えば溶接装置位置決め装置1、100、200、300の可動コイル駆動装置を工程S2において作動させる。これにより、駆動システム14、314を用いて装置1、100、200、300の軸方向長さを変える。特に、静的な第1のセクション10、110、210、310と移動可能な第2のセクション12、112、212、312との間の距離を増加させ、それにより溶接される2つの構成要素を下側治具5と上側治具7との間に所望の力でクランプする。
【0068】
信頼できる溶接を保証し、かつ互いに溶接される構成要素への損傷を防止するために、駆動システム14、314の作動中(工程S2)に工程S3において、溶接装置位置決め装置1、100、200、300の静的な第1のセクション10、110、210、310における力および/または静的な第1のセクション10、110、210、310に対する溶接装置位置決め装置1、100、200、300の移動可能な第2のセクション12、112、212、312の位置を測定する。
【0069】
故に同時に工程S3では、その測定した力および/または位置と所定の力および/または位置との比較も行う。所定の力および/または位置に達した後に、駆動システムの作動を停止する。この停止も工程S3に属する。従って、第1および第2の構成要素を上側治具7と下側治具5との間にクランプするために駆動システム14、314を作動させる場合、閉ループ制御を使用する。結果として、工程S2およびS3の最後に、溶接装置位置決め装置1、100、200、300の移動可能な第2のセクション12、112、212、312と、対向する治具すなわち溶接装置位置決め装置1、100、200、300が配置されている場所に応じて上側治具7または下側治具5のいずれかとの間で2つの構成要素がクランプされる。
【0070】
好ましい閉ループ制御に関して、好ましくは複数の力センサー224、324、好ましくは3つの力センサー224、324、特にSビーム型センサーを使用する。この点に関して、
図6および
図8~
図12に示されている実施形態を参照する。
【0071】
力センサーの代わりまたは追加として、溶接装置位置決め装置1、100、200、300の静的な第1のセクション10、110、210、310および移動可能な第2のセクション12、112、212、312の位置を非接触法、好ましくは光学式エンコーダーにより測定する。光学式エンコーダーのセンサー本体は、特にホルダー328によって溶接装置3のフレームに装着されており、測定手段は、溶接装置位置決め装置1、100、200、300の移動可能な第2のセクション12、112、212、312または溶接装置3のそれぞれの治具に配置されている。具体的にはこの好ましい配置により、存在すれば力センサー224、324を備えた溶接装置位置決め装置1、100、200、300の変形が補償される。従って、そのような位置センサーを用いる本制御方法は高精度を実現し、かつ向上した正確性を与える。
【0072】
その後に、工程S4において第1および第2の構成要素を互いに溶接する。
【0073】
工程S4における溶接の完了後に工程S5において、静的な第1のセクション10、110、210、310と移動可能な第2のセクション12、112、212、312との間の距離を減少させるように、溶接装置位置決め装置1、100、200、300の少なくとも1つの駆動システムを再び作動させる。これにより、好ましくは縮小された第2の距離まで、すなわちそこに戻して上側治具7と下側治具5との間の距離を増加させる。
【0074】
最後に、工程S6において下側治具5と上側治具7との間の距離を、好ましくは縮小された第2の距離から初期の第1の距離までさらに増加させるように、下側治具5および上側治具7を互いに対して移動させる。
【0075】
従って達成可能な正確性により、溶接装置位置決め装置1、100、200、300を備えた溶接装置3は、イヤホンのための金属箔の溶接またはスマートフォンの製造などの小さい構成要素のために使用することもできる。従って、精緻な細工が施され、かつ/または極めて繊細な、特に電子構成要素の溶接を非常に小さい溶接力で実現することができる。著しく向上した溶接深さ制御と同様に、当該構成要素の高精度な位置決めも可能である。2つの構成要素間での接触検出における大きい力のピークを低下させ、かつ本制御方法により完全に防止することができる。このようにして、実際の溶接開始のためのトリガー点を高精度で制御することができ、これにより再現可能な溶接接続が得られ、かつこれにより引き起こされるあらゆる構成要素の破壊を防止することができる。溶接装置位置決め装置の精度の程度は、今のところ使用される制御および対応するセンサーの正確性によってのみ決まる。
【符号の説明】
【0076】
参照符号の一覧
1 溶接装置位置決め装置
3 溶接装置
5 下側治具
7 上側治具
10 第1のセクション
12 第2のセクション
14 駆動システム
20 弾性ガイドシステム
22 変位センサー
30 弾性ガイドシステム
32 内側リング
34 外側リング
36 ミアンダ形状のセグメント
38 外側リング34における第1の固定点
40 内側リング32における第2の固定点
100 溶接装置位置決め装置
110 第1のセクション
112 第2のセクション
116 駆動システムのコアのための固定領域
118 第2のセクション112のための接続領域
120 弾性ガイドシステム
122 変位センサー
200 溶接装置位置決め装置
210 第1のセクション
212 第2のセクション
224 力センサー
300 溶接装置位置決め装置
310 第1のセクション
311 駆動システム314としてのボイスコイルアクチュエーターのコイル
312 第2のセクション
313 駆動システム314としてのボイスコイルアクチュエーターの磁気コア
314 駆動システム
322 変位センサー
324 力センサー
326 変位センサー322の読み取りテープ
328 変位センサー322のホルダー
330 基部
332 (重量補償のための)さらなるバネ
334 さらなるバネ332の第1のホルダー
336 さらなるバネ332の第2のホルダー
【外国語明細書】