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特開2024-87823車両動揺補正装置及び車両動揺補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087823
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】車両動揺補正装置及び車両動揺補正方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
G01B11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202694
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉永 一矢
(72)【発明者】
【氏名】川畑 匠朗
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA06
2F065CC34
2F065CC35
2F065DD03
2F065FF04
2F065FF11
2F065FF31
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ01
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM01
2F065MM16
2F065MM26
2F065PP22
2F065QQ21
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】 高精度に架線設備の検測を行うこと。
【解決手段】 車両動揺補正装置は、架線設備が設けられた軌道を走行する車両の車体に取り付けられ、物体までの距離のデータを取得するレーザと、前記レーザに接続される情報処理装置とを有し、前記情報処理装置は、前記架線設備の位置を計測する計測部と、前記レーザによって取得されるデータを用いて軌道位置を検出する検出部と、前記検出部によって検出される軌道位置に基づいて、前記車体の傾きを算出する算出部と、前記算出部によって算出される傾きから、前記車体を基準とする座標系の座標を前記軌道を基準とする座標系の座標に変換する変換式を導出し、前記計測部によって計測される架線設備の位置の座標を変換式によって補正する補正部とを有する。
【選択図】 図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架線設備が設けられた軌道を走行する車両の車体に取り付けられ、物体までの距離のデータを取得するレーザと、
前記レーザに接続される情報処理装置とを有し、
前記情報処理装置は、
前記架線設備の位置を計測する計測部と、
前記レーザによって取得されるデータを用いて軌道位置を検出する検出部と、
前記検出部によって検出される軌道位置に基づいて、前記車体の傾きを算出する算出部と、
前記算出部によって算出される傾きから、前記車体を基準とする座標系の座標を前記軌道を基準とする座標系の座標に変換する変換式を導出し、前記計測部によって計測される架線設備の位置の座標を変換式によって補正する補正部と
を有する車両動揺補正装置。
【請求項2】
前記車体の前記レーザとは異なる位置に取り付けられる他のレーザをさらに有し、
前記検出部は、
前記レーザ及び前記他のレーザによって取得されるデータを用いて軌道位置を検出する
請求項1に記載の車両動揺補正装置。
【請求項3】
架線設備が設けられた軌道を走行する車両の車体に取り付けられるレーザを用いて、物体までの距離のデータを取得し、
前記架線設備の位置を計測し、
前記レーザによって取得されるデータを用いて軌道位置を検出し、
検出される軌道位置に基づいて、前記車体の傾きを算出し、
算出される傾きから、前記車体を基準とする座標系の座標を前記軌道を基準とする座標系の座標に変換する変換式を導出し、
前記架線設備の位置の座標を前記変換式によって補正する
工程を有する車両動揺補正方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両動揺補正装置及び車両動揺補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、架空電車線方式を採用する車両の軌道上には、トロリ線などの架線設備が架設されている。車両は、パンタグラフによって架線設備から受電し軌道上を走行するため、電力を供給する架線設備には適切な位置に敷設されることが要求される。このため、架線設備の位置の検測が行われるのが一般的である。
【0003】
架線設備の検測は、例えば車両屋根上に設置されたカメラによって車両上方を撮影し、得られた画像の画像処理によって例えばトロリ線の高さ及び偏位を計測することにより行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-146509号公報
【特許文献2】特開2006-248412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、検測を行う車両は走行中に動揺するため、検測の誤差が大きくなる恐れがあるという問題がある。すなわち、車両は、架線設備の検測のための走行中、振動や空気ばねの影響により常に上下左右に動揺している。したがって、例えば車両屋根上に設置されたカメラも動揺し、このカメラによって撮影された画像から計測される架線設備の高さ及び偏位には誤差が含まれることになる。
【0006】
このような誤差は、カメラの撮影画像から検測する場合のみならず車両に取り付けられる種々のセンサを用いて検測が行われる場合には、同様に発生し、検測結果の精度が低下してしまう。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、高精度に架線設備の検測を行うことができる車両動揺補正装置及び車両動揺補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様によれば、車両動揺補正装置は、架線設備が設けられた軌道を走行する車両の車体に取り付けられ、物体までの距離のデータを取得するレーザと、前記レーザに接続される情報処理装置とを有し、前記情報処理装置は、前記架線設備の位置を計測する計測部と、前記レーザによって取得されるデータを用いて軌道位置を検出する検出部と、前記検出部によって検出される軌道位置に基づいて、前記車体の傾きを算出する算出部と、前記算出部によって算出される傾きから、前記車体を基準とする座標系の座標を前記軌道を基準とする座標系の座標に変換する変換式を導出し、前記計測部によって計測される架線設備の位置の座標を変換式によって補正する補正部とを有する。
【0009】
また、本開示の一態様によれば、車両動揺補正方法は、架線設備が設けられた軌道を走行する車両の車体に取り付けられるレーザを用いて、物体までの距離のデータを取得し、前記架線設備の位置を計測し、前記レーザによって取得されるデータを用いて軌道位置を検出し、検出される軌道位置に基づいて、前記車体の傾きを算出し、算出される傾きから、前記車体を基準とする座標系の座標を前記軌道を基準とする座標系の座標に変換する変換式を導出し、前記架線設備の位置の座標を前記変換式によって補正する工程を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態1に係る車両動揺補正装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、実施の形態1に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態1に係る車両動揺補正方法を示すフロー図である。
図4図4は、レールの構造を説明する図である。
図5図5は、点群データの具体例を示す図である。
図6図6は、探索範囲の具体例を示す図である。
図7図7は、レール候補の具体例を示す図である。
図8図8は、上面データ及び側面データの具体例を示す図である。
図9図9は、レール中心点の具体例を示す図である。
図10図10は、レール判定を説明する図である。
図11図11は、車両の傾きの具体例を示す図である。
図12図12は、実施の形態2に係る車両動揺補正装置の構成を示す模式図である。
図13図13は、点群データの具体例を示す図である。
図14図14は、実施の形態2に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図15図15は、実施の形態2に係る車両動揺補正方法を示すフロー図である。
図16図16は、実施の形態3に係る車両動揺補正装置の構成を示す模式図である。
図17図17は、実施の形態3に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図18図18は、実施の形態3に係る車両動揺補正方法を示すフロー図である。
図19図19は、情報処理装置のハードウェア構成の具体例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は例示であり、この記載によって限定解釈されるものではない。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る車両動揺補正装置の構成を示す模式図である。この車両動揺補正装置は、レールを有する軌道上を走行する車両に取り付けられている。図1(a)は、車両を正面から見た正面図であり、図1(b)は、車両を側面から見た側面図である。
【0013】
図1に示すように、車両は、左レール10L及び右レール10Rを有し架線設備20が設けられた軌道を走行する。すなわち、車両は、車体30とパンタグラフ35とを有し、架線設備20に接触するパンタグラフ35によって受電し、供給される電力によって左レール10L及び右レール10R上を走行する。車両が左レール10L及び右レール10R上を走行する際には、振動や空気ばねの影響により車体30が動揺する。
【0014】
車両動揺補正装置は、車体30に取り付けられ、少なくとも情報処理装置100及びレーザ50を有する。レーザ50は、車体30の下面に取り付けられ、左レール10L及び右レール10Rを含む照射範囲(図中破線)にレーザ光を照射可能になっている。また、レーザ50は、照射するレーザ光の反射光を検知するセンサを備えており、照射範囲にある物体までの距離を計測可能になっている。以下においては、レーザ50が有するレーザ光の光源の位置を原点Oとし、車体30の左右方向に対応するx軸と、車体30の高さ方向に対応するy軸とによって定まる座標により、物体の位置を特定可能であるものとする。
【0015】
情報処理装置100は、例えばパーソナルコンピュータなどの演算処理が可能な電子機器である。情報処理装置100は、レーザ50によって取得される物体までの距離のデータから左レール10L及び右レール10Rの位置を検出する。そして、情報処理装置100は、検出した左レール10L及び右レール10Rの位置に基づいて、動揺による車体30の傾きとずれを算出し、車体30の動揺の影響を補正する変換式を導出する。
【0016】
また、情報処理装置100は、カメラ60によって架線設備20を撮影して得られる画像を取得し、画像処理を実行することにより、架線設備20の位置を計測する。そして、情報処理装置100は、計測した架線設備20の位置を、車体30の動揺の影響を補正する変換式を用いて補正する。なお、情報処理装置100の構成及び動作については、後に詳述する。
【0017】
車体30の上面には、架線設備20を撮影可能なカメラ60が取り付けられている。カメラ60は、車体30の上方に位置する架線設備20を撮影し、得られた画像を情報処理装置100へ出力する。
【0018】
図2は、実施の形態1に係る情報処理装置100の構成を示すブロック図である。図2に示す情報処理装置100は、データ保存部110、点群データ変換部120、レール面検出部130、データ平滑化部140、傾き算出部150、軌道中心算出部160、架線位置計測部170及び動揺補正部180を有する。
【0019】
データ保存部110は、レーザ50によって取得される物体までの距離のデータ及びカメラ60によって撮影される画像のデータを保存する。また、データ保存部110は、各処理部によって処理された結果を保存する。すなわち、データ保存部110は、点群データ変換部120、レール面検出部130、データ平滑化部140、傾き算出部150、軌道中心算出部160、架線位置計測部170及び動揺補正部180により処理結果を保存する。
【0020】
点群データ変換部120は、レーザ50によって取得された物体までの距離のデータを点群データに変換する。すなわち、点群データ変換部120は、レーザ50から物体までの距離に対応する点をデータラインごとにx軸方向に並べることにより、データラインごとの点群データを生成する。
【0021】
レール面検出部130は、左レール10L及び右レール10Rに対応する点群を点群データから検出する。そして、レール面検出部130は、検出した点群に基づいて、左レール10L及び右レール10Rのレール上面の中心座標を取得する。
【0022】
データ平滑化部140は、データラインごとのレール上面の中心座標を平滑化する。すなわち、データ平滑化部140は、例えば前後に連続する所定数のデータラインの中心座標の移動平均を算出することにより、レール上面の中心座標のデータを平滑化する。
【0023】
傾き算出部150は、左レール10L及び右レール10Rのレール上面の中心座標に基づいて、レールの延長方向に対して垂直な枕木方向における車体30の傾きを算出する。すなわち、傾き算出部150は、左レール10L及び右レール10Rのレール上面の中心座標が車体30の左右方向及び高さ方向を軸とした座標系における座標であることを利用して、左レール10L及び右レール10Rと垂直に交わる枕木に対する車体30の傾きを算出する。
【0024】
軌道中心算出部160は、左レール10L及び右レール10Rのレール上面の中心座標に基づいて、軌道の中心の座標を算出する。具体的には、軌道中心算出部160は、左レール10L及び右レール10Rのレール上面の中心座標の中点を軌道中心の座標として算出する。
【0025】
架線位置計測部170は、カメラ60によって撮影された架線設備20の画像を用いて画像処理を実行し、架線設備20の位置を計測する。架線位置計測部170は、例えば、撮影方向が異なる複数のカメラ60によって撮影された画像それぞれから架線設備20に対応する画素を抽出し、抽出された画素の複数の画像それぞれにおける位置から架線設備20の位置を計測する。
【0026】
動揺補正部180は、車体30の傾き及び軌道中心の座標を用いて、車体30の左右方向及び高さ方向を軸とした座標系の座標を水平方向及び鉛直方向を軸とした座標系の座標に変換する変換式を導出する。すなわち、動揺補正部180は、車体30の姿勢を基準とした相対座標系の座標を車体30の姿勢に依らない絶対座標系の座標に変換する変換式を導出する。そして、動揺補正部180は、相対座標系によって計測された架線設備20の座標を絶対座標系の座標に補正する。つまり、動揺補正部180は、架線位置計測部170によって計測される架線設備20の位置について、車体30の動揺の影響による誤差を補正する。
【0027】
次いで、上記のように構成された車両動揺補正装置による車両動揺補正方法について、図3に示すフロー図を参照しながら具体的に説明する。
【0028】
まず、車両が軌道上を走行しながら、レーザ50によって車体30の下方の計測が実行される(ステップS101)。すなわち、レーザ50から車体30の下方へレーザ光が照射され、物体からの反射光が検知されることにより、レーザ光の光源から物体までの距離のデータがデータラインごとに取得される。車体30の下方には、左レール10L及び右レール10Rが車両の進行方向に沿って伸びているため、レーザ50による計測により、左レール10L及び右レール10Rまでの距離のデータも得られることになる。
【0029】
左レール10L及び右レール10Rは、例えば図4(a)に示すように、互いに軌間幅12だけ離れて平行に伸びている。左レール10Lの上面の中心CLと右レール10Rの上面の中心CRとを結ぶ直線をx’軸とするとき、中心CLと中心CRとの中点である原点O’を軌道中心位置ともいう。x’軸と、軌道中心位置O’においてx’軸と交わるy’軸とは、車体30の姿勢に依らない絶対座標系の座標軸である。なお、図4(a)は、車両の進行方向後方から軌道を見た図である。
【0030】
左レール10L及び右レール10Rと同等のレール10は、例えば図4(b)に示すように、レール上面10a及びレール側面10bを含む断面形状を有する。レール10のレール上面10aの幅14をレール幅ともいう。
【0031】
レーザ50による計測では、このような形状の左レール10L及び右レール10Rの表面までの距離のデータが得られる。得られたデータは、情報処理装置100へ出力され、データ保存部110によって保存される。そして、点群データ変換部120によって、物体までの距離のデータがデータラインごとにx軸上に並べられて、点群データが生成される。具体的には、例えば図5に示すように、物体の位置を点によって示す点群データがデータラインごとに生成される。ここで得られる点群データは、車体30に取り付けられたレーザ50によるものであるため、車体30の姿勢を基準とした相対座標系のデータである。
【0032】
一方、車両が軌道上を走行中は、レーザ50による計測と同時に、カメラ60によって車体30の上方が撮影され、得られた画像がデータ保存部110に保存される。そして、架線位置計測部170によって、画像の画像処理が実行されることにより、架線設備20の位置が計測される(ステップS102)。ここで得られる架線設備20の位置は、車体30に取り付けられたカメラ60によるものであるため、車体30の姿勢を基準とした相対座標系における位置である。
【0033】
なお、物体までの距離のデータの点群データへの変換や画像に基づく架線設備20の位置の計測は、車両の走行中に実行されなくても良い。すなわち、車両の走行中に物体までの距離のデータ及び画像をデータ保存部110に蓄積しておき、車両の走行終了後に点群データ変換部120及び架線位置計測部170によって、点群データ及び架線設備20の座標が求められるようにしても良い。
【0034】
点群データ及び架線設備20の座標が求められると、データラインごとに点群データからレール面を検出する以下の処理が繰り返される。
【0035】
すなわち、レール面検出部130によって、点群データからレール10に対応する点群であるレール候補が抽出される(ステップS103)。具体的には、例えば図6に示すように、点群データにおいて左レール10Lを検出するための探索範囲201Lと右レール10Rを検出するための探索範囲201Rとが設定される。探索範囲201L、201Rは、車体30におけるレーザ50の設置位置、軌間幅12及びレール幅14に基づいて、左レール10L及び右レール10Rが存在し得る領域に設定されれば良い。また、車両の走行中に既にレール面の検出が成功している場合には、直前に検出されたレール面の位置の周辺に探索範囲201L、201Rが設定されても良い。
【0036】
そして、探索範囲201L、201Rにおいて、所定の条件を満たす点群がレール候補として抽出される。具体的には、例えば図7に示すように、所定数以上密集する点群が1つのレール候補として抽出される。このとき、左右方向に一定以上の間隔が空いている点群は別のレール候補として抽出される。ここでは、探索範囲201Lからレール候補202L、203Lが抽出され、探索範囲201Rからレール候補202R、203Rが抽出されたものとする。
【0037】
レール候補が抽出されると、それぞれのレール候補について、レール10を示す点群であるか否かが判定される(ステップS104)。すなわち、各レール候補がレール上面10a及びレール側面10bに対応する点群を有するL字状の点群であるか否かが判定される。具体的には、レール候補を構成する点群のうち、最も高い位置にある点と、車体30の中心に最も近い位置にある点とを基準点として所定の範囲が設定され、範囲内の点の数によってレール10を示す点群であるか否かが判定される。
【0038】
例えば図8(a)に示すように、最も高い位置にある点と、車体30の中心に最も近い位置にある点とから基準点OSが決定され、幅がレール幅14の2倍かつ高さがレーザ50の計測誤差の2倍の範囲211が設定される。そして、この範囲211内の点の数が所定数以上である場合に、レール候補がレール上面10aに対応する点群を有すると判定される。
【0039】
同様に、例えば図8(b)に示すように、最も高い位置にある点と、車体30の中心に最も近い位置にある点とから基準点OSが決定され、幅がレーザ50の計測誤差の2倍かつ高さがレール高さの2倍の範囲212が設定される。そして、この範囲212内の点の数が所定数以上である場合に、レール候補がレール側面10bに対応する点群を有すると判定される。
【0040】
このような判定によって、レール候補がレール上面10a及びレール側面10bに対応する点群を有する場合に、このレール候補はレール10を示す点群であると判定される。そして、レール10を示す点群であると判定されたレール候補から、レール10の位置が特定される。すなわち、例えば図9に示すように、レール上面10aに対応する点群(上面データ)の高さ平均と、レール側面10bに対応する点群(側面データ)のx軸方向の偏位平均とから、レール上面10aの中心に対応するレール位置213が特定される。レール位置213は、レール上面10aの中心に対応するため、側面データの偏位平均からレール幅14の1/2だけ基準点OSから離れた位置にある。
【0041】
これにより、レール10を示す点群であると判定されたレール候補については、それぞれレール位置が特定される。そして、これらのレール候補について、互いのレール位置の間の距離が算出されることにより、レール10を示す点群であるとの判定が妥当であるか否かが評価される(ステップS105)。具体的には、例えば図10に示すように、レール候補202L、203Lが左レール10Lを示す点群であると判定され、レール候補203Rが右レール10Rを示す点群であると判定された場合、レール候補202L及びレール候補203Rの間の距離221と、レール候補203L及びレール候補203Rの間の距離222とが算出される。そして、算出された距離221、222がそれぞれ軌間幅12及びレール幅14の和と比較され、軌間幅12及びレール幅14の和に近い距離のレール候補の組み合わせが左レール10L及び右レール10Rに対応すると評価される。なお、左レール10L及び右レール10Rに対応するレール候補の組み合わせが複数ある場合には、探索範囲201L、201Rの中心に最も近いレール候補の組み合わせが左レール10L及び右レール10Rに対応すると評価されても良い。
【0042】
以上のレール面を検出する処理がレール面検出部130によってデータラインごとに繰り返され、各データラインの点群データから左レール10L及び右レール10Rのレール位置が取得される。各データラインにおいて取得されたレール位置は、データ平滑化部140によって平滑化される(ステップS106)。具体的には、前後の所定数のデータラインにおけるレール位置の移動平均が算出され、移動平均が各データラインのレール位置として記憶される。このとき、レール位置の検出が失敗したデータラインについては、平滑化によってレール位置が補間されるようにしても良い。
【0043】
そして、傾き算出部150によって、平滑化された左レール10L及び右レール10Rのレール位置が用いられることにより、車体30の枕木方向の傾きが算出される(ステップS107)。具体的には、例えば図11に示すように、車体30が傾いていることにより、左レール10Lのレール位置CLと右レール10Rのレール位置CRとを結ぶ直線が車体30に対して角度φだけ傾いているものとして検出されている。そこで、傾き算出部150によって、レール位置CLの座標(xl,yl)と、レール位置CRの座標(xr,yr)とから以下の式(1)のように逆正接が求められることにより、角度φが算出される。
φ=atan2{(yr-yl),(xr-xl)} ・・・(1)
【0044】
車体30の傾きが算出されると、軌道中心算出部160によって、軌道中心位置が算出される(ステップS108)。軌道中心位置は、左レール10Lのレール位置CLと右レール10Rのレール位置CRとの中点であるため、中心座標(xc,yc)は以下の式(2)によって算出される。
【数1】
【0045】
そして、動揺補正部180によって、車体30の傾き及び軌道中心位置の中心座標が用いられて、車体30の動揺の影響を補正する変換式が導出される。具体的には、車体30の傾きが軌道中心位置を回転中心として発生していると仮定すると、中心座標(xc,yc)を原点O’とするx’y’座標上の点(x’,y’)と、車体30の姿勢を基準とするxy座標上の点(x,y)とは、以下の式(3)の関係を有する。
【数2】
【0046】
式(3)から、車体30の姿勢を基準とする点(x,y)は、以下の式(4)によって車体30の姿勢に依らない絶対座標系であるx’y’座標上の点(x’,y’)に補正することができる。
【数3】
【0047】
この式(4)により、車体30の姿勢を基準とする相対座標を車体30の姿勢に依らない絶対座標に変換することができるため、車体30の動揺の影響を補正することができる。そこで、動揺補正部180によって、架線位置計測部170によって計測された架線設備20の位置の車体30の動揺による影響が補正される(ステップS109)。すなわち、計測された架線設備20の座標が式(4)によって補正される。例えば、あるデータラインに対応するタイミングで計測された架線設備20の座標(d,h)は、以下の式(5)のように、軌道中心位置を基準とする座標(d’,h’)に補正される。
【数4】
【0048】
また、軌道中心位置を基準とするのではなく、レーザ50の高さを基準とする補正をする場合には、補正座標(D,H)は、既知であるレーザ50の高さy0を用いて、以下の式(6)のようになる。
【数5】
【0049】
以上のように、本実施の形態によれば、車体に取り付けられたレーザによってレール位置を検出し、左レールと右レールのレール位置に基づいて、車体の姿勢を基準とする座標を軌道中心位置を基準とする座標に変換する変換式を導出する。そして、車体を基準として計測された架線設備の位置を変換式を用いて補正する。このため、車体の動揺による誤差を補正して、高精度に架線設備の検測を行うことができる。
【0050】
(実施の形態2)
図12は、実施の形態2に係る車両動揺補正装置の構成を示す模式図である。図12において、図1と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。図12は、車両を正面から見た正面図であり、車両動揺補正装置は、レールを有する軌道上を走行する車両に取り付けられている。
【0051】
図12に示すように、実施の形態2に係る車両動揺補正装置は、実施の形態1に係る車両動揺補正装置のレーザ50に代えてレーザ50L及びレーザ50Rを有する。レーザ50Lは、車体30の下面左方に取り付けられ、左レール10Lを含む照射範囲(図中破線)にレーザ光を照射可能になっている。一方、レーザ50Rは、車体30の下面右方に取り付けられ、右レール10Rを含む照射範囲(図中破線)にレーザ光を照射可能になっている。また、レーザ50L、50Rは、それぞれ照射するレーザ光の反射光を検知するセンサを備えており、照射範囲にある物体までの距離を計測可能になっている。
【0052】
このように、2つのレーザ50L、50Rが左右に設けられることにより、それぞれのレーザ50L、50Rの照射範囲が狭くても、左レール10L及び右レール10Rまでの距離を計測することができる。
【0053】
これらのレーザ50L、50Rによって得られる物体までの距離のデータから、例えば図13に示す点群データ55L及び点群データ55Rが得られる。すなわち、レーザ50Lによって取得されるデータから左レール10Lに対応する点群を含む点群データ55Lが取得され、レーザ50Rによって取得されるデータから右レール10Rに対応する点群を含む点群データ55Rが取得される。
【0054】
図14は、実施の形態2に係る情報処理装置100の構成を示すブロック図である。図14において、図2と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。図14に示す情報処理装置100は、図2に示す情報処理装置100にレーザ位置補正部310を追加した構成を採る。
【0055】
レーザ位置補正部310は、レーザ50Lとレーザ50Rとの位置のキャリブレーションを実行する。すなわち、レーザ50L、50Rは、それぞれの設置位置を原点として物体までの距離を計測するため、レーザ位置補正部310は、レーザ50L、50Rそれぞれによって取得されるデータを共通の座標上のデータに変換するための補正係数を算出する。そして、レーザ位置補正部310は、算出した補正係数をレーザ50L、50Rに設定し、レーザ50L、50Rから共通の座標上のデータが取得されるようにする。レーザ位置補正部310は、例えばレーザ50L、50Rそれぞれの設置位置の中点を原点とする座標を共通の座標として用いる。
【0056】
次いで、上記のように構成された車両動揺補正装置による車両動揺補正方法について、図15に示すフロー図を参照しながら説明する。図15において、図3と同じ部分には同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。
【0057】
本実施の形態においては、レーザ50L、50Rによる計測に先立って、レーザ位置補正部310によりレーザ50L、50Rの位置のキャリブレーションが実行される(ステップS201)。すなわち、レーザ50L、50Rが取得するデータを共通の座標上のデータに変換する補正係数が算出され、レーザ50L、50Rに設定される。これにより、レーザ50L、50Rは、共通の座標上における物体までの距離のデータを取得することになる。
【0058】
そして、車両が軌道上を走行しながら、レーザ50L、50Rによって車体30の下方の計測が実行される(ステップS202)。すなわち、レーザ50L、50Rそれぞれから車体30の下方へレーザ光が照射され、物体からの反射光が検知されることにより、レーザ光の光源から物体までの距離のデータがデータラインごとに取得される。ここでは、レーザ50Lによって左レール10Lまでの距離のデータが得られ、レーザ50Rによって右レール10Rまでの距離のデータが得られる。そして、点群データ変換部120によって、物体までの距離のデータが共通の座標のx軸上に並べられて、点群データが生成される。
【0059】
一方、車両が軌道上を走行中は、レーザ50L、50Rによる計測と同時に、カメラ60によって車体30の上方が撮影され、得られた画像がデータ保存部110に保存される。そして、架線位置計測部170によって、画像の画像処理が実行されることにより、架線設備20の位置が計測される(ステップS102)。
【0060】
点群データ及び架線設備20の座標が求められると、データラインごとに点群データからレール面を検出する処理が繰り返される。すなわち、レール面検出部130によって、点群データからレール10に対応する点群であるレール候補が抽出され(ステップS103)、それぞれのレール候補について、レール10を示す点群であるか否かが判定される(ステップS104)。そして、レール10を示す点群であると判定されたレール候補について、互いのレール位置の間の距離が算出されることにより、レール10を示す点群であるとの判定が妥当であるか否かが評価される(ステップS105)。
【0061】
各データラインの点群データから左レール10L及び右レール10Rのレール位置が取得されると、データ平滑化部140によって、レール位置の平滑化が実行される(ステップS106)。そして、傾き算出部150によって、平滑化された左レール10L及び右レール10Rのレール位置が用いられることにより、車体30の枕木方向の傾きが算出される(ステップS107)。
【0062】
車体30の傾きが算出されると、軌道中心算出部160によって、軌道中心位置が算出される(ステップS108)。そして、動揺補正部180によって、車体30の傾き及び軌道中心位置の中心座標が用いられて、車体30の動揺の影響を補正する上式(4)が導出され、架線位置計測部170によって計測された架線設備20の位置の車体30の動揺による影響が補正される(ステップS109)。
【0063】
以上のように、本実施の形態によれば、設置位置のキャリブレーションが実行された2つのレーザによってレール位置を検出し、左レールと右レールのレール位置に基づいて、車体の姿勢を基準とする座標を軌道中心位置を基準とする座標に変換する変換式を導出する。そして、車体を基準として計測された架線設備の位置を変換式を用いて補正する。このため、車体の動揺による誤差を補正して、高精度に架線設備の検測を行うことができる。
【0064】
(実施の形態3)
図16は、実施の形態3に係る車両動揺補正装置の構成を示す模式図である。図16において、図1と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。図16は、車両を側面から見た側面図であり、車両動揺補正装置は、レールを有する軌道上を走行する車両に取り付けられている。
【0065】
図16に示すように、実施の形態3に係る車両動揺補正装置は、実施の形態1に係る車両動揺補正装置のレーザ50に代えてレーザ50A及びレーザ50Bを有する。レーザ50Aは、車体30の下面前方に取り付けられ、レーザ50と同様に左レール10L及び右レール10Rを含む照射範囲にレーザ光を照射可能になっている。一方、レーザ50Bは、レーザ50Aよりも後方に取り付けられ、レーザ50と同様に左レール10L及び右レール10Rを含む照射範囲にレーザ光を照射可能になっている。また、レーザ50A、50Bは、それぞれ照射するレーザ光の反射光を検知するセンサを備えており、照射範囲にある物体までの距離を計測可能になっている。
【0066】
このように、2つのレーザ50A、50Bが前後に設けられることにより、前方のレーザ50Aによって計測された位置が、後方のレーザ50Bによっても計測されることになる。このため、後方のレーザBによって取得されたデータからレールを検出する際には、前方のレーザAによって取得されたデータに基づく検出結果を利用して、処理速度を向上することができる。また、前後のレーザ50A、50Bによって取得されたデータから特定されるレール位置に基づいて、レールの延長方向に対して平行な車体30の傾きを算出することができる。
【0067】
図17は、実施の形態3に係る情報処理装置100の構成を示すブロック図である。図17において、図2と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。図17に示す情報処理装置100は、図2に示す情報処理装置100の傾き算出部150及び動揺補正部180に代えて、枕木方向傾き算出部410、レール方向傾き算出部420及び動揺補正部430を有する構成を採る。
【0068】
枕木方向傾き算出部410は、左レール10L及び右レール10Rのレール上面の中心座標に基づいて、レールの延長方向に対して垂直な枕木方向における車体30の傾きを算出する。すなわち、枕木方向傾き算出部410は、左レール10L及び右レール10Rのレール上面の中心座標が車体30の左右方向及び高さ方向を軸とした座標系における座標であることを利用して、左レール10L及び右レール10Rと垂直に交わる枕木に対する車体30の傾きを算出する。なお、枕木方向傾き算出部410は、レーザ50Aによって取得されたデータに基づく傾きと、レーザ50Bによって取得されたデータに基づく傾きとの平均値を車体30の傾きとしても良い。
【0069】
レール方向傾き算出部420は、レーザ50A、50Bそれぞれのデータに基づくレール上面の中心座標に基づいて、レールの延長方向における車体30の傾きを算出する。すなわち、レール方向傾き算出部420は、左レール10L及び右レール10Rのレール上面の中心座標が車体30の前後方向及び高さ方向を軸とした座標系における座標であることを利用して、左レール10L又は右レール10Rに対する車体30の傾きを算出する。例えば、レール方向傾き算出部420は、レーザ50Aのデータに基づく左レール10Lの高さと、レーザ50Bのデータに基づく左レール10Lの高さとの差分から、左レール10Lに対する車体30の傾きを算出する。
【0070】
動揺補正部430は、車体30の枕木方向の傾き、レール方向の傾き及び軌道中心の座標を用いて、車体30を基準とした座標系の座標を、左レール10L及び右レール10Rが配置される平面を基準とした座標系の座標に変換する変換式を導出する。すなわち、動揺補正部430は、車体30の姿勢を基準とした相対座標系の座標を車体30の姿勢に依らない絶対座標系の座標に変換する変換式を導出する。そして、動揺補正部430は、相対座標系によって計測された架線設備20の座標を絶対座標系の座標に補正する。つまり、動揺補正部430は、架線位置計測部170によって計測される架線設備20の位置について、車体30の動揺の影響による誤差を補正する。
【0071】
次いで、上記のように構成された車両動揺補正装置による車両動揺補正方法について、図18に示すフロー図を参照しながら説明する。図18において、図3と同じ部分には同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。
【0072】
まず、車両が軌道上を走行しながら、レーザ50A、50Bによって車体30の下方の計測が実行される(ステップS301)。レーザ50A、50Bは車体30の前後に取り付けられているため、車両が走行しながら計測することにより、前方のレーザ50Aによって計測された位置が後方のレーザ50Bによっても計測される。そして、点群データ変換部120によって、レーザ50A、50Bそれぞれによって取得されるデータが共通の座標のx軸上に並べられて、点群データが生成される。
【0073】
一方、車両が軌道上を走行中は、レーザ50A、50Bによる計測と同時に、カメラ60によって車体30の上方が撮影され、得られた画像がデータ保存部110に保存される。そして、架線位置計測部170によって、画像の画像処理が実行されることにより、架線設備20の位置が計測される(ステップS102)。
【0074】
点群データ及び架線設備20の座標が求められると、データラインごとに点群データからレール面を検出する処理が繰り返される。すなわち、レール面検出部130によって、点群データからレール10に対応する点群であるレール候補が抽出され(ステップS103)、それぞれのレール候補について、レール10を示す点群であるか否かが判定される(ステップS104)。そして、レール10を示す点群であると判定されたレール候補について、互いのレール位置の間の距離が算出されることにより、レール10を示す点群であるとの判定が妥当であるか否かが評価される(ステップS105)。
【0075】
なお、レール面の検出は、レーザ50A、50Bそれぞれによって取得されたデータに基づいて別々に実行される。したがって、例えばレーザ50Aのデータに基づいてレール面が検出された後、レーザ50Bのデータに基づいてレール面が検出される場合には、レーザ50Aのデータに基づく検出結果を用いて、レーザ50Bのデータに基づくレール面の検出が実行されるようにしても良い。例えば、点群データからレール候補を抽出するために設定される探索範囲は、レーザ50Aのデータに基づくレール面の検出結果に基づいて設定されるようにしても良い。こうすることにより、レーザBのデータに基づくレール面の検出処理を迅速かつ高精度に実行することが可能となる。
【0076】
各データラインの点群データから左レール10L及び右レール10Rのレール位置が取得されると、データ平滑化部140によって、レール位置の平滑化が実行される(ステップS106)。そして、枕木方向傾き算出部410によって、平滑化された左レール10L及び右レール10Rのレール位置が用いられることにより、車体30の枕木方向の傾きが算出される(ステップS302)。すなわち、枕木方向傾き算出部410によって、レール位置CLの座標(xl,yl)と、レール位置CRの座標(xr,yr)とから上式(1)のように逆正接が求められることにより、角度φが算出される。
【0077】
車体30の枕木方向の傾きが算出されると、軌道中心算出部160によって、軌道中心位置が算出される(ステップS108)。また、レール方向傾き算出部420によって、レーザ50Aのデータに基づくレール位置及びレーザ50Bのデータに基づくレール位置が用いられることにより、車体30のレール方向の傾きが算出される(ステップS303)。すなわち、左レール10L又は右レール10Rに関して前後のレーザ50A、50Bが検出したレール位置に基づいて、車体30の前後方向の傾きが算出される。
【0078】
そして、動揺補正部430によって、車体30の枕木方向の傾き及び軌道中心位置の中心座標が用いられて、車体30の枕木方向の動揺の影響を補正する上式(4)が導出される。また、動揺補正部430によって、車体30のレール方向の傾き及びレーザ50A、50Bの設置位置座標が用いられて、車体30のレール方向の動揺の影響を補正する式が導出される。そして、動揺補正部430によって、導出された式が用いられることにより、架線位置計測部170によって計測された架線設備20の位置の車体30の動揺による影響が補正される(ステップS304)。
【0079】
以上のように、本実施の形態によれば、車体の前後に設置された2つのレーザによってレール位置を検出し、左レールと右レールのレール位置に基づいて、車体の姿勢を基準とする座標をレールが配置される平面を基準とする座標に変換する変換式を導出する。そして、車体を基準として計測された架線設備の位置を変換式を用いて補正する。このため、車体の動揺による誤差を補正して、高精度に架線設備の検測を行うことができる。
【0080】
なお、上記実施の形態1~3においては、カメラ60によって撮影される画像の画像処理によって架線設備20の位置を計測するものとしたが、架線設備20の位置の計測方法はこれに限定されない。例えば車体30の上面にレーザを取り付け、このレーザによって車体30の上方の架線設備20を検出し、架線設備20の位置を計測しても良い。このように計測された架線設備20の位置についても、上記実施の形態1~3による車両動揺補正方法によって車体の動揺による誤差を補正することができる。
【0081】
上記実施の形態1~3に係る情報処理装置100は、プロセッサ及びメモリを用いて構成することができる。図19は、実施の形態1~3に係る情報処理装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図19に示すように、情報処理装置100は、プロセッサ101、メモリ102、入出力部103及びストレージ104を有する。
【0082】
プロセッサ101は、例えばCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はDSP(Digital Signal Processor)などを有し、情報処理装置100の全体を統括制御するとともに、各種の演算処理を実行する。
【0083】
メモリ102は、例えばRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)などを有し、プロセッサ101が実行する演算処理に用いられる情報を記憶する。
【0084】
入出力部103は、ユーザが情報を入力したり、ユーザへ情報を出力したりするインタフェースである。入出力部103は、例えばキーボード、ディスプレイ、タッチパネル、マイク又はスピーカーなどを備えていても良い。
【0085】
ストレージ104は、例えばHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などを有し、各種のデータを保存する。
【0086】
また、上記各実施の形態において説明した情報処理装置100による処理を、コンピュータが実行可能なプログラムとして記述することも可能である。この場合、このプログラムをコンピュータが読み取り可能かつ非一時的(non-transitory)な記録媒体に格納し、コンピュータに導入することも可能である。このような記録媒体としては、例えばCD-ROM、DVDディスク、USBメモリなどの可搬型記録媒体、及び例えばフラッシュメモリなどの半導体メモリが挙げられる。
【符号の説明】
【0087】
10 レール
10L 左レール
10R 右レール
20 架線設備
30 車体
50、50L、50R、50A、50B レーザ
100 情報処理装置
101 プロセッサ
102 メモリ
103 入出力部
104 ストレージ
110 データ保存部
120 点群データ変換部
130 レール面検出部
140 データ平滑化部
150 傾き算出部
160 軌道中心算出部
170 架線位置計測部
180、430 動揺補正部
310 レーザ位置補正部
410 枕木方向傾き算出部
420 レール方向傾き算出部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19