(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087884
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】プレス装置
(51)【国際特許分類】
B30B 15/16 20060101AFI20240625BHJP
B30B 15/00 20060101ALI20240625BHJP
B30B 15/20 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B30B15/16 C
B30B15/00 B
B30B15/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202768
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】山内 啓
【テーマコード(参考)】
4E088
4E089
【Fターム(参考)】
4E088JJ02
4E088JJ10
4E089EA01
4E089EB01
4E089EB02
4E089ED03
4E089EE04
4E089EF02
4E089FC03
(57)【要約】
【課題】スライドを円滑に動作させやすいプレス装置を提供する。
【解決手段】プレス装置(1)は、第1流体室(311)の圧力と第2流体室(313)の圧力とを受けて動作するスライド(10)と、第1流体室(311)と第2流体室(313)へ作動流体を送る流量可変ポンプ(351)と、流量可変ポンプ(351)と第2流体室(313)との間の流路に設けられた開度可変バルブ(352)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体室の圧力と第2流体室の圧力とを受けて動作するスライドと、
前記第1流体室と前記第2流体室へ作動流体を送る流量可変ポンプと、
前記流量可変ポンプと前記第2流体室との間の流路に設けられた開度可変バルブと、
を備えるプレス装置。
【請求項2】
前記流量可変ポンプの流量と前記開度可変バルブの開度とを制御する制御部を備え、
制御部は、前記スライドの位置に基づいて前記流量と前記開度とを制御する、
請求項1記載のプレス装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記スライドが被成形物に加圧力を及ぼし始める成形開始位置に移動するより前に、前記流量を変化させ、かつ、前記開度を変化させる、
請求項2記載のプレス装置。
【請求項4】
前記流量可変ポンプの流量と前記開度可変バルブの開度とを制御する制御部を備え、
制御部は、要求される前記スライドの加圧力に基づいて前記流量と前記開度とを制御する、
請求項1記載のプレス装置。
【請求項5】
前記流量可変ポンプの流量と前記開度可変バルブの開度とを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1流体室の圧力に基づいて前記流量を制御し、前記第2流体室の圧力に基づいて前記開度を制御する、
請求項1記載のプレス装置。
【請求項6】
前記流量を変化させる制御期間と前記開度を変化させる制御期間とが、少なくとも一部で重なる、請求項2又は請求項5に記載のプレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スライドを高速に移動させる第1油室とスライドに大きな加圧力を発生させる第2油室とを備える油圧プレスが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2つの油室の圧力でスライドを動かす場合、2つの油室への作動油の送り方によっては、スライドの円滑な動作が得られないという課題がある。
【0005】
本発明は、スライドを円滑に動作させやすいプレス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプレス装置は、
第1流体室の圧力と第2流体室の圧力とを受けて動作するスライドと、
前記第1流体室と前記第2流体室へ作動流体を送る流量可変ポンプと、
前記流量可変ポンプと前記第2流体室との間の流路に設けられた開度可変バルブと、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1流体室の圧力と第2流体室の圧力とを受けて動作するスライドを有するプレス装置において、スライドを円滑に動作させやすいという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るプレス装置を示す図である。
【
図2】プレス装置の制御例1を示すタイミングチャートである。
【
図3】プレス装置の制御例2を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、作動流体として作動油を適用した例について説明する。しかし、作動流体としては、様々な液体又は様々な流体が適用されてもよい。以下では、流体路を油路と記し、流体圧を油圧と記し、流体室を油室と記す。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るプレス装置を示す図である。本実施形態のプレス装置1は、
図1に示すように、スライド10、ベッド20、スライド駆動部30、スライド10の位置を検出する位置検出部40、第1油室311の油圧を検出する第1油圧検出器41、第2油室313の油圧を検出する第2油圧検出器42、並びに、制御部50を備える。スライド10には上金型2が取り付けられ、ベッド20には下金型3が取り付けられる。
【0011】
スライド駆動部30は、スライド10を加圧するメインシリンダ31及びピストン32と、スライド10をベッド20から引き戻すための引き戻しシリンダピストン33とを備える。さらに、スライド駆動部30は、メインシリンダ31に作動油を供給する油圧回路35と、引き戻しシリンダピストン33に作動油を供給する図示略の油圧回路とを備える。なお、本明細書では、ピストンとは、シリンダに対して一方向の駆動力のみを発生させることが可能なラムを含むものとする。
【0012】
スライド10はピストン32に連結されている。メインシリンダ31は、第1油室311と第2油室313とを有し、いずれかの油室に油圧が加わることでピストン32からスライド10に圧力が加わる。第1油室311の作動油がピストン32を進退方向に押す面積は、第2油室313の作動油がピストン32を進退方向に押す面積よりも小さい。当該構成により、第1油室311に作動油を圧送することで、第2油室313に作動油を圧送するよりも、スライド10を高速に駆動することができる。さらに、第2油室313に作動油を圧送することで、第1油室311に作動油を圧送するよりも、スライド10に大きな加圧力を発生させることができる。
【0013】
油圧回路35は、流量可変に作動油を圧送する流量可変ポンプ351と、流量可変ポンプ351と第2油室313との間の油路に設けられた開度可変バルブ352とを備える。
【0014】
流量可変ポンプ351は、サーボモータ351aから出力される動力を大小に切り替えることによって作動油の流量を変化させる。なお、流量可変ポンプ351の流量を変化させる方式はどのようなものであってもよい。以下では、流量可変ポンプ351の流量をサーボモータ351aの回転速度で表わす。回転速度が高いほど流量が大きいことを示す。
【0015】
開度可変バルブ352は、油路の開度を0%から100%の間で変化させることができる。
図1において、開度可変バルブ352は、パイロットバルブ353からの油圧制御によって開度を変更するように構成されるが、電気的な駆動によって開度が変更されるなど、様々な方式が採用されてもよい。さらに、パイロットバルブ353は、開度可変バルブ352からのフィードバック信号と、制御部50からの指令信号との差動信号に基づいて、開度を制御するように構成されるが、当該制御方式についても、様々な方式が採用されてもよい。開度可変バルブ352としては、サーボロジック弁、あるいは、サーボ弁となどを適用できる。
【0016】
流量可変ポンプ351の出力部は油路312を介して第1油室311に接続されている。流量可変ポンプ351の出力部は、開度可変バルブ352と油路314とを介して第2油室313に接続されている。油路314には、第2油室313の油圧が低下したときに、タンク354から作動油を供給するプレフィルバルブなどの一方向弁355が設けられている。
【0017】
このような構成のスライド駆動部30によれば、開度可変バルブ352が閉じた状態で流量可変ポンプ351から作動油が出力されることで、当該作動油が第1油室311へ送られてピストン32が高速に下降する。この駆動の際、第2油室313にはタンク354から一方向弁355を通って作動油が送り込まれ、ピストン32の動作に大きな抵抗を与えない。また、バルブ352が開いた状態で流量可変ポンプ351から作動油が出力されることで、当該作動油が第1油室311及び第2油室313へ供給されてピストン32に大きな加圧力を発生させることができる。
【0018】
位置検出部40は、スライド10の位置を検出して、検出結果を制御部50に送る。位置検出部40としては、リニアエンコーダを採用できるが、スライド10の位置を検出できればどのような構成が採用されてもよい。
【0019】
第1油圧検出器41及び第2油圧検出器42は、それぞれ第1油室311の油圧の検出結果と第2油室313の油圧の検出結果とを制御部50へ送る。
【0020】
制御部50は、制御プログラムを実行するコンピュータであり、流量可変ポンプ351の流量と、開度可変バルブ352の開度とを制御する。
【0021】
<プレス装置の制御例1>
図2は、プレス装置の制御例1を示すタイミングチャートである。制御例1は、スライド10の位置に基づいて、制御部50が流量可変ポンプ351の流量と、開度可変バルブ352の開度とを制御する例である。
【0022】
制御例1のプレス制御は、スライド10を高速に下降させた後、スライド10の速度を加圧用の下降速度まで低下させ、その後、スライド10の加圧力によって被成形物を成形するプレス制御である。当該プレス制御は、加熱した被成形物を下金型3にセットして成形を行う熱間鍛造において、被成形物の温度低下を抑制する速やかなスライド10の下降を実現できるので、特に有用である。
【0023】
制御例1は、スライド10が上方位置(例えば上限位置)にある状態で開始される。制御部50には、制御を切り替えるためのスライド位置として、高い方から順に、「速度切替開始位置」、「速度切替完了位置」、「加圧完了位置」とが設定されている。「速度切替完了位置」は、上金型2が被成形物に荷重を加える前の高さに設定され、「加圧完了位置」は成形完了の位置に設定される。
【0024】
スライド10の動作開始タイミングt1になると、制御部50は、開度可変バルブ352の開度が0%の状態で流量可変ポンプ351の回転速度を、高速アプローチ用回転速度にする。高速アプローチ用回転速度は、流量可変ポンプ351の出力油圧が高くない状態で多くの流量を出力できる回転速度である。そして、当該制御を、スライド10が「速度切替開始位置」になるまでの期間T1に継続する。
【0025】
当該期間T1の制御により、流量可変ポンプ351から出力された作動油が第1油室311に送られ、スライド10が高速に下降する。
【0026】
次に、制御部50は、スライド10が「速度切替開始位置」から「速度切替完了位置」までの期間T2に、スライド10の速度を切り替える制御を行う。当該期間T2おいて、制御部50は、開度可変バルブ352の開度が0%から100%に徐々に切り替わるように、かつ、流量可変ポンプ351の回転速度が高速アプローチ用回転速度から加圧下降用回転速度に徐々に切り替わるように制御する。加圧下降用回転速度は、流量可変ポンプ351から成形用の高い圧力を出力できる回転速度である。期間T2の制御は、スライド10の位置に連動させつつ、流量可変ポンプ351が加圧下降用回転速度に遷移する時間と開度可変バルブ352が100%の開度に遷移する時間とを揃えることで実現できる。
【0027】
図2においては、期間T2における、開度可変バルブ352の開度変化、並びに、流量可変ポンプ351の回転速度の変化が、それぞれ直線状の変化である例を示した。しかし、当該変化は曲線に沿った変化であってもよいなど、スライド10の速度が滑らかに変化するものであればどのような曲線に沿った変化であってもよい。
【0028】
期間T2の制御により、スライド10の速度が、スライド10を高速に下降する速度からスライド10から大きな加圧力を発生可能な低速な速度まで、滑らかに低下する。
【0029】
次に、制御部50は、スライド10が「速度切替完了位置」から「加圧完了位置」に達するまでの期間T3に、開度可変バルブ352の開度が100%の状態で、流量可変ポンプ351を加圧用の回転速度で駆動する。一例として、制御部50は、流量可変ポンプ351の回転速度を「加圧下降用回転速度」に維持する。
【0030】
当該期間T3の制御により、スライド10が被成形物に加圧力を及ぼして、被成形物が成形される。スライド10が被成形物に加圧力を及ぼし始める成形開始の位置は、「速度切替完了位置」と「加圧完了位置」との間のいずれかの位置に相当する。
【0031】
次に、制御部50は、期間T4に、スライド10を加圧完了位置に維持させる制御を行う。当該期間T4において、制御部50は、開度可変バルブ352の開度が100%の状態で、流量可変ポンプ351を加圧力保持用の回転速度に制御する。このとき、制御部50は、スライド10の位置データを監視しながら、位置が保持されるように、流量可変ポンプ351の回転速度を制御するフィードバック制御を行ってもよい。
【0032】
期間T4の維持制御が完了したら、制御部50は、流量可変ポンプ351を停止させ、引き戻しシリンダピストン33を作動させることで、スライド10を上方位置まで引き戻す。そして、1回のプレス制御処理を終了する。
【0033】
以上の制御例1によれば、上金型2が被成形物に接触する前の期間T1において、スライド10が高速に下降する。そして、その後の期間T3において、スライド10が低速に下降することで被成形物が成形される。したがって、加熱した被成形物を下金型3にセットして成形を行う熱間鍛造において、期間T1の速やかなスライド10の下降によって、被成形物の温度低下を抑制した成形処理を実現できる。
【0034】
さらに、上記の制御例1によれば、スライド10が「速度切替開始位置」から「速度切替完了位置」に至る期間T2において、制御部50は、開度可変バルブ352の開度を徐々に大きくし、流量可変ポンプ351の流量を徐々に低下させる。当該制御によって、スライド10の速度変化が滑らかになり、スライド10の急激な速度変化によるショックを低減できるという効果が得られる。
【0035】
仮に、上記の期間T2の制御がなくても、流量可変ポンプ351の出力と第2油室313との間の油路314を開き、流量可変ポンプ351の流量を落とすことで、被成形物の成形前にスライド10を高速に下降させ、その後に、スライド10に成形用の大きな加圧力を発生させることができる。しかしながら、この場合には、スライド10の急激な速度変化、並びに、油路312、314と第1油室311及び第2油室313に急激な油圧変化が生じて、プレス装置1に大きなショックが生じてしまう。本実施形態では、このようなショックを低減することができる。
【0036】
<プレス装置の制御例2>
図3は、プレス装置の制御例2を示すタイミングチャートである。制御例2は、第1油室311の油圧と第2油室313の油圧とに基づいて、制御部50が流量可変ポンプ351の流量と、開度可変バルブ352の開度とを制御する例である。
【0037】
制御例2のプレス制御は、スライド10の加圧力を時間に伴って連続的に増加させるプレス動作を実現するものである。当該プレス動作は、第1油室311及び第2油室313の2種類の油室の切り替えをオペレータに意識させることなく、被成形物を連続的な加圧力で成形できる点で有益なものである。
【0038】
制御例2では、まず、オペレータが、要求する加圧力線G1を設定する。加圧力線G1とは、時間に応じた加圧力の変化を表わす特性線である。制御部50は、要求された加圧力線G1の加圧力が得られるように、プレス装置1を制御する。
【0039】
なお、
図3の例では、直線的に増加する加圧力線G1が設定されているが、曲線状の加圧力線であってもよい。加圧力線は、プレス装置1の「総合最大加圧力」よりも小さい範囲で設定される。「総合最大加圧力」とは、第1油室311から発生可能な最大加圧力と、第2油室313から発生可能な最大加圧力との総和である。
【0040】
加圧力線G1が設定されると、制御部50は、加圧力線G1を実現する第1油室311の油圧線H1と第2油室313の油圧線H2を計算する。油圧線H1は第1油室311の油圧の時間変化を表わし、油圧線H2は第2油室313の油圧の時間変化を表わす。油圧線H1、H2は、第1油室311にのみ油圧が加わる合流開始前期間T11と、第1油室311と第2油室313とに異なる油圧が加わる合流期間T12と、第1油室311と第2油室313とに同等の油圧が加わる合流完了後期間T13とに分けて、次のように計算できる。
【0041】
すなわち、まず、制御部50は、合流開始タイミングt11を、第1油室311の油圧のみで加圧力線G1を実現できる期間内で、任意のタイミングに決定する。
図3の例では、第1油室311の最大加圧力(第1油室311から発生可能な最大加圧力)となるタイミングを合流開始タイミングt11としている。さらに、制御部50は、合流完了タイミングt12をそれ以降の任意なタイミングに決定する。
【0042】
このようにタイミングt11、t12を決定することで、制御部50は、合流開始前期間T11に第1油室311をどのような油圧にすれば期間T11の加圧力線G1が実現できるか計算できる。さらに、合流完了後期間T13に第1油室311をどのような油圧にすれば、期間T13の加圧力線G1が実現できるか計算できる。合流完了後期間T13では、第1油室311の油圧と、第2油室313の油圧とが一致するからである。
【0043】
さらに、制御部50は、合流開始タイミングt11の油圧と、合流完了タイミングt12の油圧とから、これらを繋ぐ油圧の曲線を合流期間T12の第1油室311の油圧線H1として計算できる。このような計算により、全期間に渡る油圧線H1が求められる。
【0044】
また、制御部50は、合流開始前期間T11の第2油室313の油圧をゼロとし、合流完了後期間T13の第2油室313の油圧を、期間T13の第1油室311の油圧と同等の値とする。さらに、制御部50は、合流期間T12の加圧力線G1と、合流期間T12の第1油室311の油圧線H1とから合流期間T12の第2油室313の油圧を計算する。すなわち、第1油室311からの加圧力だけでは加圧力線G1の加圧力に足りない加圧力を第2油室313から得られるように、第2油室313の油圧を計算すればよい。このような計算により、第2油室313の全期間に渡る油圧線H2が求められる。
【0045】
油圧線H1、H2が求められたら、プレス制御が実行可能な状態になる。したがって、制御部50は、当該状態でプレス制御の開始指令を受けると、下記のプレス制御を開始する。
【0046】
まず、制御部50は、期間T11において、開度可変バルブ352の開度を0%に維持し、次の期間T12において、第2油室313の油圧が油圧線H2に合致するように、フィードバック制御等を行って開度可変バルブ352の開度を制御する。
図3では、期間T12の開度がほぼ一定のように記されているが、実際にはフィードバック制御によって開度に変動が多く含まれる。その後、期間T13において、制御部50は、開度可変バルブ352の開度を100%にしてそれを維持する。
【0047】
上記の開度可変バルブ352の制御と並行して、制御部50は、期間T11、T12において、第1油室311の油圧が油圧線H1に合致するように、フィードバック制御等を行って流量可変ポンプ351の回転速度(流量)を制御する。さらに、制御部50、次の期間T13において、第1油室311の油圧又は第2油室313の油圧が油圧線H1、H2に合致するように、フィードバック制御等を行って流量可変ポンプ351の回転速度(流量)を制御する。
図3では、期間T12の回転速度が直線状に変化するように記されているが、実際にはフィードバック制御によって回転速度に変動が多く含まれる。
【0048】
期間T12では、2つの油圧線H1、H2に基づき開度可変バルブ352の制御と流量可変ポンプ351の制御とが並行して行われる。しかし、当該期間T12においても制御部50は、一つの油圧線H2に基づき開度可変バルブ352を制御し、一の油圧線H1に基づき流量可変ポンプ351を制御するので、両者の制御を安定的に実行することができる。
【0049】
上記のような制御により、第1油室311に油圧線H1に沿った油圧が発生し、第2油室313に油圧線H2に沿った油圧が発生し、その結果、スライド10から加圧力線G1に沿った連続的な加圧力を得ることができる。
【0050】
以上のように、本実施形態のプレス装置1によれば、第1油室311の油圧と第2油室313の油圧とを受けて動作するスライド10と、第1油室311と第2油室313へ作動油を送る流量可変ポンプ351と、流量可変ポンプ351と第2油室313との間の流路に設けられた開度可変バルブ352とを備える。当該構成によれば、開度可変バルブ352の開度を適宜制御することで、第1油室311の油圧と第2油室313の油圧とを徐々に近づける制御が可能となる。よって、ショックの少ない滑らかなスライド10の動きが得られやすい。
【0051】
さらに、本実施形態のプレス装置1によれば、制御部50は、スライド10の位置に基づいて流量可変ポンプ351の流量(回転速度)と開度可変バルブ352の開度とを制御する。このような制御により、前述した制御例1で示したように、スライド10を或る位置まで高速に移動させ、その後、速度を滑らかに低下させて、スライド10を低い速度で動かして、スライド10から大きな加圧力を得るというような制御を安定的に実現できる。
【0052】
さらに、本実施形態のプレス装置1によれば、制御例1で示したように、制御部50は、スライド10が被成形物に加圧力を及ぼし始める成形開始位置に移動するよりも前に、流量可変ポンプ351の流量と開度可変バルブ352の開度とを変化させる。当該期間は、スライド10に荷重が加わっておらずスライド10に急激な速度変化が生じえる期間に相当する。したがって、この期間に、流量可変ポンプ351の流量と開度可変バルブ352の開度とを変化させることで、スライド10の急激な速度変化を抑制し、プレス装置1にショックが生じてしまうことを抑制できる。
【0053】
さらに、本実施形態のプレス装置1によれば、制御例2で示したように、制御部50は、要求されるスライド10の加圧力線G1に基づいて、流量可変ポンプ351の流量と開度可変バルブ352の開度とを変化させる。このような制御により、オペレータは、第1油室311及び第2油室313の2種類の油室の切り替えを意識することなく、被成形物を様々な加圧力で成形することができる。
【0054】
より具体的には、本実施形態のプレス装置1によれば、制御例2で示したように、制御部50は、第1油室311の油圧線H1に基づいて流量可変ポンプ351の流量を制御し、第2油室313の油圧線H2に基づいて開度可変バルブ352の開度を制御する。このように2系統に分けて流量と開度とを制御することで、流量可変ポンプ351と開度可変バルブ352との安定的な制御を実現できる。
【0055】
さらに、本実施形態のプレス装置1によれば、制御例1の期間T2、あるいは、制御例2の期間T12など、流量可変ポンプ351の流量を変化させる制御期間と、開度可変バルブ352の開度を変化させる制御期間とが重なる期間を有する。当該期間の制御によって、スライド10を滑らかに動作させつつ、スライド10の速度を大幅に低下させたり(制御例1の期間T2)、スライド10から連続的に変化する加圧力を発生させたり(制御例2の期間T12)するなど、幅の広い制御が可能となる。
【0056】
さらに、本実施形態のプレス装置1によれば、開度可変バルブ352は、流量可変ポンプ351と第2油室313との間の油路に設けられ、開度可変バルブ352が開いても流量可変ポンプ351から出力される作動油は、第1油室311に供給し続けられる。このような開度可変バルブ352の接続構成によれば、無駄の少ない効率的な作動油の振り分け制御が可能となり、低コストな構成で、幅の広い制御を実現できる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、1つのメインシリンダ31に2系統の油室311、313を有する例を示したが、例えば、第1系統及び第2系統のシリンダ及びピストン(例えば複式シリンダピストン)がスライドを加圧する構成であってもよい。この場合、第1系統のシリンダに第1流体室が設けられ、第2系統のシリンダに第2流体室が設けられる構成となる。また、上記実施形態では、開度可変バルブの開度が0%から100%の間で制御される例を示したが、例えば開度可変バルブの開度は5%から95%など、任意な開度の間で制御されてもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 プレス装置
2 上金型
3 下金型
10 スライド
20 ベッド
30 スライド駆動部
31 メインシリンダ
32 ピストン
35 油圧回路
311 第1油室
312 油路
313 第2油室
314 油路
351 流量可変ポンプ
352 開度可変バルブ
40 位置検出部
41 第1油圧検出器
42 第2油圧検出器
50 制御部