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2024-87888再使用する浸透探傷試験用浸透液及び該浸透液を使用した浸透探傷試験方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087888
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】再使用する浸透探傷試験用浸透液及び該浸透液を使用した浸透探傷試験方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/50 20060101AFI20240625BHJP
   G01N 21/91 20060101ALI20240625BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20240625BHJP
   C11D 7/24 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C11D7/50
G01N21/91 A
C11D7/26
C11D7/24
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202783
(22)【出願日】2022-12-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】390002808
【氏名又は名称】マークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173406
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 真貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100067301
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 順一
(72)【発明者】
【氏名】細矢 学
(72)【発明者】
【氏名】増田 隆秀
(72)【発明者】
【氏名】佐野 嘉高
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊
(72)【発明者】
【氏名】石井 智大
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌臣
【テーマコード(参考)】
2G051
4H003
【Fターム(参考)】
2G051GB01
4H003EB02
4H003EB06
4H003EB09
4H003ED03
4H003ED04
4H003ED29
4H003ED32
4H003FA04
4H003FA09
4H003FA12
4H003FA45
(57)【要約】
【課題】
水と混合しても油溶性染料が水に溶解しない浸透探傷試験用浸透液であって、該浸透液を使用した浸透探傷試験によって生じる余剰浸透液を含有する洗浄液を回収して油水分離し、油層を浸透液、水層を洗浄水として繰り返し浸透探傷試験に使用することができるので、洗浄液を格段に減少させることができる浸透探傷試験用浸透液及び浸透探傷試験方法を提供する。
【解決手段】
ベース溶剤が5重量%以上かつ20重量%以下と油溶性染料を0.1重量%以上かつ1.1重量%以下と残部が希釈溶剤である浸透探傷試験用浸透液であって、前記ベース溶剤と希釈溶剤は20℃の水への溶解度が0.1重量%以下であり、前記浸透液は水と混合しても油溶性染料が水に溶解しない浸透探傷試験用浸透液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース溶剤が5重量%以上かつ20重量%以下と油溶性染料を0.1重量%以上かつ1.1重量%以下と残部が希釈溶剤である浸透探傷試験用浸透液であって、前記ベース溶剤と希釈溶剤は20℃の水への溶解度が0.1重量%以下であり、前記浸透液は水と混合しても油溶性染料が水に溶解しない浸透探傷試験用浸透液。
【請求項2】
前記ベース溶剤がフタル酸ジイソノニル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、クエン酸アセチルトリブチル、ジブチルマレエート、トリキシレニルホスフェート、二塩基酸エステルから選択される1種以上である請求項1記載の浸透探傷試験用浸透液。
【請求項3】
前記希釈溶剤が炭化水素系溶剤及び/又はナフテン系溶剤である請求項1又は2記載の浸透探傷試験用浸透液。
【請求項4】
前記油溶性染料がSOLVENT YELLOW 116又はFluorescent brightener 184又はFluorescent brightener 367又はNIKKAFLOUOR EFSである請求項1又は2記載の浸透探傷試験用浸透液。
【請求項5】
前記ベース溶剤の沸点が170℃以上であり、前記希釈溶剤の沸点が145℃以上である請求項1記載の浸透探傷試験用浸透液。
【請求項6】
請求項1又は2記載の浸透探傷試験用浸透液を使用した浸透探傷試験において生じた余剰浸透液を含有する洗浄液を油水分離し、油層を再度浸透液として使用して実施する浸透探傷試験方法。
【請求項7】
前記油水分離した水層を再度洗浄水として使用して実施する請求項6記載の浸透探傷試験方法。
【請求項8】
前記油水分離方法が分離膜による油水分離方法又は比重差を利用する油水分離方法である請求項7記載の浸透探傷試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再使用する浸透探傷試験用浸透液及び該浸透液を使用した浸透探傷試験方法に関する。詳しくは、該浸透液は水と混合しても油溶性染料が水に溶解しないため、該浸透液を使用して実施する浸透探傷試験によって生じる余剰浸透液を含有する洗浄液を回収して油水分離すると、油層を浸透液、水層を洗浄水として繰り返し浸透探傷試験に再使用することができるので洗浄液の廃棄量を格段に減少させることができる浸透液及び浸透探傷試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、浸透探傷試験は、非破壊検査方法の一種でありJIS Z 2343-1~6に規格化されている。その基本的態様は、染料を溶解させた浸透性の強い染色浸透液や蛍光浸透液を被検査物表面に付着させて開口欠陥部に浸透させた後、当該欠陥部内に浸透せずに被検査物表面に残留している余剰浸透液を除去し、次いで、当該被検査物表面に炭酸マグネシウム粉末や炭酸カルシウム粉末などの無機質白色粉末(当業者間では「現像剤」と呼ばれている)の薄層を形成し、該現像剤層によって開口欠陥部内に浸透している浸透液を現像剤層表面に吸い出させることによって欠陥指示模様を現出させ、染色浸透液の場合は自然光又は白色光の下、肉眼で、又は、デジタルカメラ等で撮影した画像を観察し、また、蛍光浸透液の場合はブラックライト等の照射の下、デジタルカメラ等で撮影した画像を観察して当該欠陥指示模様によって開口欠陥部の存在・位置を検出するというものである。
【0003】
被検査物表面に残留している余剰浸透液の除去は水で行う場合がある。
【0004】
自動車部品等の量産部品の浸透探傷試験の場合、大量の水を使う必要があるが、余剰浸透液を含有する洗浄液は産業廃棄物として処理する必要があるため、廃棄に莫大な費用を要するという問題がある。
【0005】
前記の問題に鑑み、浸透探傷試験によって生じた洗浄液を油水分離して得た水層を再度余剰浸透液を洗浄する洗浄水として使用する方法も開発されているが、浸透液に含まれる染料は油溶性であっても洗浄液中の水に微量に溶解することから、繰り返し使用すると水層が発色するようになり、発色した洗浄水を使用するといわゆるバックグラウンドが高くなって探傷精度が低下するという問題がある。
【0006】
また、油溶性染料の一部が水に溶解するため、油層が含有する油溶性染料の含有量が元の浸透液と比べて低下するから、油層を浸透液として再使用することは困難であるという問題がある。
【0007】
そこで、洗浄水と混合しても油溶性染料が水に溶解しない浸透液であって、余剰浸透液を含有する洗浄液を回収して油水分離した水層を洗浄水として繰り返し使用しても発色せず、また、油層を浸透液として繰り返し使用しても油溶性染料の含有量が低下しない浸透探傷試験用浸透液の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4-140651
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
出願人は特許文献1に開示する通り、水に対して相溶性を有さず且つ常温において比重1未満のベース溶剤と水に対して相溶性を有さず且つ比重1未満の希釈溶剤と油溶性蛍光染料からなり、界面活性剤を含まない浸透探傷液であれば、余剰浸透液を含んでいる洗浄液を比重差によって油水分離が可能であり、油水分離した水を洗浄水として再使用する方法を開発している。
【0010】
しかしながら特許文献1に開示される浸透液は、油溶性蛍光染料が水に微量であるが溶解するため、比重分離によって分離した水層を繰り返し洗浄水として使用すると徐々に水層が蛍光を発するようになり、蛍光を発する洗浄液を使用するといわゆるバックグラウンドが上がって探傷精度が低下するため再使用できる回数が制限されるという問題がある。
【0011】
本発明者らは、前記諸問題点を解決することを技術的課題とし、試行錯誤的な数多くの試作・実験を重ねた結果、ベース溶剤が5重量%以上かつ20重量%以下と油溶性染料を0.1重量%以上かつ1.1重量%以下と残部が希釈溶剤である浸透探傷試験用浸透液であって、前記ベース溶剤と希釈溶剤は20℃の水への溶解度が0.1重量%以下であり、前記浸透液は水と混合しても油溶性染料が水に溶解しない浸透探傷試験用浸透液であれば、洗浄液を回収して油水分離すれば水層に油溶性染料が溶解しないため、繰り返し水層を洗浄水として使用しても水層が発色しないので回数の制限なく再使用でき、また、油層に油溶性染料が保持されて減少しないので、繰り返し油層を浸透液として使用することができるため、洗浄液を廃棄することなく継続して再使用できるという刮目すべき知見を得て、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記技術的課題は、次のとおり本発明によって解決できる。
【0013】
本発明は、ベース溶剤が5重量%以上かつ20重量%以下と油溶性染料を0.1重量%以上かつ1.1重量%以下と残部が希釈溶剤である浸透探傷試験用浸透液であって、前記ベース溶剤と希釈溶剤は20℃の水への溶解度が0.1重量%以下であり、前記浸透液は水と混合しても油溶性染料が水に溶解しない浸透探傷試験用浸透液である。
【0014】
また本発明は、前記ベース溶剤がフタル酸ジイソノニル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、クエン酸アセチルトリブチル、ジブチルマレエート、トリキシレニルホスフェート、二塩基酸エステルから選択される1種以上である前記の浸透探傷試験用浸透液である。
【0015】
また本発明は、前記希釈溶剤が炭化水素系溶剤及び/又はナフテン系溶剤である前記の浸透探傷試験用浸透液である。
【0016】
また本発明は、前記油溶性染料がSOLVENT YELLOW 116又はFluorescent brightener 184又はFluorescent brightener 367又はNIKKAFLOUOR EFSである前記の浸透探傷試験用浸透液である。
【0017】
また本発明は、前記ベース溶剤の沸点が170℃以上であり、前記希釈溶剤の沸点が145℃以上である前記の浸透探傷試験用浸透液である。
【0018】
また本発明は、前記の浸透探傷試験用浸透液を使用した浸透探傷試験において生じた余剰浸透液を含有する洗浄液を油水分離し、油層を再度浸透液として使用して実施する浸透探傷試験方法である。
【0019】
また本発明は、前記油水分離した水層を再度洗浄水として使用して実施する前記の浸透探傷試験方法である。
【0020】
また本発明は、前記油水分離方法が分離膜による油水分離方法又は比重差を利用する油水分離方法である前記の浸透探傷試験方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明における浸透液であれば、浸透探傷試験において生じる余剰浸透液を含有する洗浄液中で油溶性染料が水に溶解しないから、油水分離した水層は繰り返し洗浄水として使用したとしても発色せず、また、油層は繰り返し浸透液として使用したとしても油溶性染料の含有量が減少しないから、繰り返し浸透液と洗浄水を再使用して浸透探傷試験を実施したとしても高い探傷精度を維持できる。
【0022】
また、ベース溶剤がフタル酸ジイソノニル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、クエン酸アセチルトリブチル、ジブチルマレエート、トリキシレニルホスフェート、二塩基酸エステルから選択される1種以上であり、希釈溶剤が炭化水素系溶剤及び/又はナフテン系溶剤であり、油溶性染料がSOLVENT YELLOW 116又はFluorescent brightener 184又はFluorescent brightener 367又はNIKKAFLOUOR EFSであれば、より高い探傷精度を維持しながら繰り返し浸透探傷試験を実施できる浸透液になる。
【0023】
また、ベース溶剤の沸点が170℃以上、希釈溶剤の沸点が145℃以上であれば引火し難いので安全性の高い浸透液になる。
【0024】
本発明における浸透探傷試験方法であれば、浸透探傷試験において生じる余剰浸透液を含有する洗浄液を油水分離して、水層を浸透探傷試験の洗浄水として繰り返し使用し、油層を浸透液として繰り返し使用することができるので、洗浄液の廃棄量を格段に減らすことができる。
【0025】
また、本発明における浸透液を含有する洗浄液は分離膜、又は、比重差によって簡便に分離することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明における浸透液は、20℃の水への溶解度が0.1重量%以下のベース溶剤と希釈溶剤を含有し、染料として油溶性染料を含有する。
【0027】
ベース溶剤及び希釈溶剤のいずれも水への溶解度が低いので、余剰浸透液を含有する洗浄液中で油溶性染料が水に溶解せず、溶剤中に保持される。
【0028】
油溶性染料が溶剤中に保持されるので、油溶性染料の含有量が低下せず、油水分離した油層を浸透液として繰り返し使用することができる。
【0029】
また、油水分離して得た水層には油溶性染料が溶解していないので、洗浄液として繰り返し使用しても水層が発色することがないため、高い探傷精度を維持して繰り返し浸透探傷試験を実施することができる。
【0030】
本発明においては浸透液が含有する油溶性染料が水に溶解しないように界面活性剤を含有しないことが好ましい。
【0031】
本発明における浸透液が含有するベース溶剤は5重量%~20重量%が好ましく、より好ましくは5重量%~15重量%である。
【0032】
ベース溶剤が5重量%未満であると、油溶性染料が水に溶解する虞があり、また、20重量%を超えて含有すると油水分離が困難になる虞があるからである。
【0033】
本発明におけるベース溶剤として、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、クエン酸アセチルトリブチル、ジブチルマレエート、トリキシレニルホスフェート、二塩基酸エステルを例示する。
【0034】
本発明における油溶性染料は余剰浸透液を含有する洗浄液中において溶剤中に保持され、水に溶解しない油溶性染料であればよく、赤色染料であってもよいし蛍光染料であってもよい。
【0035】
浸透液が含有する油溶性染料は0.1重量%~1.1重量%が好ましく、より好ましくは、0.1重量%~0.9重量%である。
【0036】
0.1重量%未満であれば探傷精度が低くなり、また、1.1重量%を超えて含有すると溶剤に溶解しない虞があるからである。
【0037】
本発明における油溶性染料として、SOLVENT YELLOW 116又はFluorescent brightener 184又はFluorescent brightener 367又はNIKKAFLOUOR EFSを例示する。
【0038】
本発明における浸透液は、ベース溶剤と油溶性染料を除いた残部が希釈溶剤であってもよい。
【0039】
希釈溶剤は炭化水素系溶剤、ナフテン系溶剤又は炭化水素系溶剤とナフテン系溶剤を混合した溶剤であることが好ましい。高い探傷精度を維持して繰り返し浸透探傷試験を実施することができるからである。
【0040】
炭化水素系溶剤としてノルマルパラフィンSL、ノルマルパラフィンM、カクタスノルマルパラフィンN―11、カクタスノルマルパラフィンN-12D、カクタスノルマルパラフィンN-13、ナフテン系溶剤としてナフテゾー200、ナフテゾー220、EXXSOL(登録商標) D80、EXXSOL(登録商標) D110を例示する。
【0041】
本発明におけるベース溶剤は沸点が170℃以上であることが好ましく、より好ましくは190℃以上であり、希釈溶剤の沸点は145℃以上であることが好ましく、より好ましくは160℃以上である。
【0042】
ベース溶剤の沸点が170℃以上、希釈溶剤の沸点が145℃以上であれば引火し難いので、安全性の高い浸透液になるからである。
【0043】
浸透液の引火点は70℃以上であることが好ましい。
【0044】
70℃以上であると引火し難いので、安全性の高い浸透液になるからである。
【0045】
また、安全性が高いので貯蔵量を増やすことができるからである。
【0046】
本発明における浸透探傷試験方法は、本発明における浸透液を公知の浸透探傷試験方法に従って、被検査物表面に付着させて開口欠陥部に浸透させた後、開口欠陥部に浸透しなかった余剰浸透液を水で洗浄した際の洗浄液を油水分離して油層を浸透液として再度使用する浸透探傷試験方法であり、また、水層を洗浄水として再度使用する浸透探傷試験方法である。
【0047】
余剰浸透液を含有する洗浄液を油水分離して浸透液や洗浄水として繰り返し浸透探傷試験に使用することで洗浄液の廃棄量を格段に減少させることができる。
【0048】
油水分離方法としては油水に分離することができれば特に限定されないが、公知の分離膜を使用する方法や比重を利用する方法を例示する。
【0049】
分離膜を利用すれば分離に要する時間が短いためより好ましい。
【実施例0050】
本発明を実施例及び比較例を挙げてより詳しく説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0051】
表1~表3に記載した油溶性染料とベース溶剤と希釈溶剤を表4及び表5に記載の通り混合して各浸透液を作製した。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
(感度試験)
タイプ3対比試験片に対して、実施例及び比較例の各浸透液を使用して次の通り浸透探傷試験を行った。
【0056】
(1)浸透処理:試験片表面に浸透液を刷毛塗法にて塗布し5分間浸透させた。
(2)洗浄処理:紫外線照射灯スーパーライトD-10L(マークテック株式会社製)にて紫外線を点灯して洗浄状態を確認しながら水圧0.2MPaにて洗浄した。
(3)乾燥処理:熱風循環式乾燥機の中に試験片を入れ乾燥温度70℃で10分間乾燥させた。
(4)観察:試験片の開口欠陥部の指示模様を紫外線照射灯スーパーライトD-10L(マークテック株式会社製)にて紫外線照射して肉眼にて確認した。
【0057】
全ての開口欠陥部が検出できたものを〇、一部が検出されなかったものを×として評価した。
【0058】
(分離性)
容器に各浸透液:水=1:4の割合で入れペイントシェーカーにて5分間攪拌した後、浸透液と水の分離性について肉眼にて確認した。
【0059】
5分以内に水層と油層が分離したものを〇、分離時間が5分を超えたものを×として評価した。
【0060】
(水層の蛍光性)
分離性試験を行った後の水層について紫外線照射灯スーパーライトD-10L(マークテック株式会社製)にて、紫外線を照射し蛍光を発するか確認した。
【0061】
肉眼で蛍光が観察されなかったものを〇、蛍光が観察されたものを×として評価した。
【0062】
(油層の感度試験)
分離性試験を行った後の油層について、実施例及び比較例の各浸透液と同様にして感度試験及び評価を行った。
【0063】
(洗浄性)
感度試験実施後、試験片の状態を紫外線照射灯スーパーライトD-10L(マークテック株式会社製)にて紫外線照射し確認した。
【0064】
肉眼で残光が観察されなかったものを〇、残光が観察されたものを×として評価した。
【0065】
(引火点)
タグ密閉式引火点測定器(ATG-7/田中科学機器製作株式会社製)で引火点を測定した。
【0066】
各浸透液の引火点が70℃以上のものを〇、70℃以下のものを×として評価した。
【0067】
実施例の結果を表4、比較例の結果を表5に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
表4に示す通り、本発明における浸透液は、油水分離して得た水層は発色せず、また、油層に染料が保持されているので、油層を浸透液、水層を洗浄水として繰り返し使用することができる浸透液であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明における浸透液は水と混合しても油溶性染料が水に溶解しないため、該浸透液を使用して実施する浸透探傷試験によって生じる余剰浸透液を含有する洗浄液を回収して油水分離すると、油層を浸透液、水層を洗浄水として繰り返し浸透探傷試験に再使用することができるので洗浄液の廃棄量を格段に減少させることができる。
よって、本発明の産業上の利用可能性は高い。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース溶剤が5重量%以上かつ20重量%以下と油溶性染料を0.1重量%以上かつ1.1重量%以下と残部が希釈溶剤である浸透探傷試験用浸透液であって、前記ベース溶剤と希釈溶剤は20℃の水への溶解度が0.1重量%以下であり、前記希釈溶剤は少なくともナフテン系溶剤を含有する希釈溶剤であり、前記浸透液は水と混合しても油溶性染料が水に溶解しない浸透探傷試験用浸透液。
【請求項2】
前記ベース溶剤がフタル酸ジイソノニル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、クエン酸アセチルトリブチル、ジブチルマレエート、トリキシレニルホスフェート、二塩基酸エステルから選択される1種以上である請求項1記載の浸透探傷試験用浸透液。
【請求項3】
前記希釈溶剤が炭化水素系溶剤を含有する希釈溶剤である請求項1又は2記載の浸透探傷試験用浸透液。
【請求項4】
前記油溶性染料がSOLVENT YELLOW 116又はFluorescent brightener 184又はFluorescent brightener 367又はNIKKAFLOUOR EFS(日化株式会社製)である請求項1又は2記載の浸透探傷試験用浸透液。
【請求項5】
前記ベース溶剤の沸点が170℃以上であり、前記希釈溶剤の沸点が145℃以上である請求項1記載の浸透探傷試験用浸透液。
【請求項6】
請求項1又は2記載の浸透探傷試験用浸透液を使用した浸透探傷試験において生じた余剰浸透液を含有する洗浄液を油水分離し、油層を再度浸透液として使用して実施する浸透探傷試験方法。
【請求項7】
前記油水分離した水層を再度洗浄水として使用して実施する請求項6記載の浸透探傷試験方法。
【請求項8】
前記油水分離方法が分離膜による油水分離方法又は比重差を利用する油水分離方法である請求項7記載の浸透探傷試験方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明は、ベース溶剤が5重量%以上かつ20重量%以下と油溶性染料を0.1重量%以上かつ1.1重量%以下と残部が希釈溶剤である浸透探傷試験用浸透液であって、前記ベース溶剤と希釈溶剤は20℃の水への溶解度が0.1重量%以下であり、前記希釈溶剤は少なくともナフテン系溶剤を含有する希釈溶剤であり、前記浸透液は水と混合しても油溶性染料が水に溶解しない浸透探傷試験用浸透液である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
また本発明は、前記希釈溶剤が炭化水素系溶剤を含有する希釈溶剤である前記の浸透探傷試験用浸透液である。