IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-制振装置および制振方法 図1
  • 特開-制振装置および制振方法 図2
  • 特開-制振装置および制振方法 図3
  • 特開-制振装置および制振方法 図4
  • 特開-制振装置および制振方法 図5
  • 特開-制振装置および制振方法 図6
  • 特開-制振装置および制振方法 図7
  • 特開-制振装置および制振方法 図8
  • 特開-制振装置および制振方法 図9
  • 特開-制振装置および制振方法 図10
  • 特開-制振装置および制振方法 図11
  • 特開-制振装置および制振方法 図12
  • 特開-制振装置および制振方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087895
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】制振装置および制振方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
F16F15/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202793
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】須藤 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 英幸
(72)【発明者】
【氏名】若林 慎一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 竜矢
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AD02
3J048AD03
3J048AD14
3J048CB19
3J048CB23
3J048CB24
3J048EA07
(57)【要約】
【課題】制振対象物の制振制御の不安定化の防止。
【解決手段】制振対象物に取り付けられた物理量センサーの出力信号から前記制振対象物の共振周波数成分を抽出するフィルター部と、前記フィルター部で抽出された前記共振周波数成分の周波数に基づいて正弦波信号を生成する正弦波信号生成部と、前記フィルター部で抽出された前記共振周波数成分の振幅に基づいて制御ゲインを演算するゲイン演算部と、前記正弦波信号に前記制御ゲインを乗算して生成した制振信号によってアクチュエーターを駆動して前記制振対象物の振動を低減する制振部と、を含む、制振装置を構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制振対象物に取り付けられた物理量センサーの出力信号から前記制振対象物の共振周波数成分を抽出するフィルター部と、
前記フィルター部で抽出された前記共振周波数成分の周波数に基づいて正弦波信号を生成する正弦波信号生成部と、
前記フィルター部で抽出された前記共振周波数成分の振幅に基づいて制御ゲインを演算するゲイン演算部と、
前記正弦波信号に前記制御ゲインを乗算して生成した制振信号によってアクチュエーターを駆動して前記制振対象物の振動を低減する制振部と、
を含む、制振装置。
【請求項2】
前記正弦波信号生成部は、
前記正弦波信号を生成するデジタル制御発振器と、
前記デジタル制御発振器が生成する前記正弦波信号の周波数を前記フィルター部で抽出された前記共振周波数成分の周波数に合わせるデジタルPLL回路と、を含む、
請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記デジタルPLL回路は、前記デジタル制御発振器に入力される周波数制御値に位相調整値を加算し、前記共振周波数成分に対して前記位相調整値に対応する位相のずれが生じた前記正弦波信号を前記デジタル制御発振器から出力させる、
請求項2に記載の制振装置。
【請求項4】
前記位相調整値に対応する位相のずれと、前記制振対象物によって生じる位相のずれとの和は、前記共振周波数成分を打ち消す位相のずれとなる、
請求項3に記載の制振装置。
【請求項5】
前記ゲイン演算部は、
前記フィルター部で抽出された前記共振周波数成分を2乗して振幅信号を生成する振幅信号生成部と、
前記振幅信号に基づいてPI制御を行って前記制御ゲインを演算するPI制御部と、を含む、
請求項1に記載の制振装置。
【請求項6】
前記PI制御部は、
前記振幅信号と0より大きいターゲット値と、の差分をPI制御して前記制御ゲインを演算する、
請求項5に記載の制振装置。
【請求項7】
制振対象物に取り付けられた物理量センサーの出力信号から前記制振対象物の共振周波数成分を抽出し、
抽出された前記共振周波数成分の周波数に基づいて正弦波信号を生成し、
抽出された前記共振周波数成分の振幅に基づいて制御ゲインを演算し、
前記正弦波信号に前記制御ゲインを乗算して生成した制振信号によって前記制振対象物の振動を低減する、
制振方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振装置および制振方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジャイロセンサー等の物理量センサーによって検出した検出信号に基づいてアクチュエーターを駆動し、制振対象物の制振を行う技術が知られている。例えば、特許文献1には、加速度センサーによって制振対象物の振動状態を検出し、検出した信号に対して増幅等の処理を行って制振対象物の振動を減殺する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-87880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、制振対象物の振動を物理量センサーによって検出し、検出された信号自体に対して増幅等の処理を行っている。このため、物理量センサーによって検出された振動の振幅が小さくなると、増幅率を上げる必要がある。しかし、増幅率を上げると外乱に弱くなったり、発振の可能性が増大するなどして制御が不安定になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための制振装置は、制振対象物に取り付けられた物理量センサーの出力信号から前記制振対象物の共振周波数成分を抽出するフィルター部と、前記フィルター部で抽出された前記共振周波数成分の周波数に基づいて正弦波信号を生成する正弦波信号生成部と、前記フィルター部の出力信号の振幅に基づいて制御ゲインを演算するゲイン演算部と、前記正弦波信号に前記制御ゲインを乗算して生成した制振信号によって前記制振対象物の振動を低減する制振部と、を含む。
【0006】
また、上記課題を解決するための制振方法においては、制振対象物に取り付けられた物理量センサーの出力信号から前記制振対象物の共振周波数成分を抽出し、前記フィルター部で抽出された前記共振周波数成分の周波数に基づいて正弦波信号を生成し、前記フィルター部の出力信号の振幅に基づいて制御ゲインを演算し、前記正弦波信号に前記制御ゲインを乗算して生成した制振信号によって前記制振対象物の振動を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】物理量センサーを備える制振ボックスの利用例を示す図。
図2】制振ボックスのブロック図。
図3】プロセッサーの構成を示すブロック図。
図4】IIRフィルターの構成例を示す図。
図5】正弦波信号生成部の構成を示すブロック図。
図6】位相検出器を構成する各回路が出力する信号のタイミングチャートである。
図7】周波数が調整される様子を説明する図。
図8】位相が調整される様子を説明する図。
図9】ゲイン演算部の構成を示す図。
図10】2乗される前の共振周波数成分を模式的に示す図。
図11】2乗された後の信号を実線によって示す図。
図12】物理量センサーを備える制振ボックスの利用例を示す図。
図13】正弦波信号生成部の他の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る物理量センサー2を備える制振ボックス1の利用例を示す図であり、図2は、本発明の実施形態に係る制振ボックス1のブロック図である。図1においては、プロジェクターPが天井Cに取り付けられた状態を示している。プロジェクターPは、図示しないスクリーンに所定の画像を投影する装置である。プロジェクターPは制振対象物の一例である。
【0009】
プロジェクターPの一面には制振ボックス1が取り付けられている。制振ボックス1は、筐体を備えており、筐体内に物理量センサー2およびアクチュエーター40を備えている。従って、本実施形態においては、物理量センサー2やアクチュエーター40がプロジェクターPに取り付けられるとも言える。
【0010】
物理量センサー2は、共振特性測定モードと制振モードとのそれぞれで動作する。むろん、他のモードで動作可能であっても良い。制振モードで動作している場合、物理量センサー2は、プロジェクターPの使用過程で発生している振動を検出し、振動を抑制するようにアクチュエーター40を駆動することでプロジェクターPを制振することができる(詳細は後述)。
【0011】
また、物理量センサー2は、後述する端子を介してコンピューターPCと接続可能である。本実施形態においてコンピューターPCは、プロジェクターPの共振特性を測定するための共振特性測定モードで使用される。制振モードにおいてコンピューターPCは使用されない。共振特性測定モードにおいて、物理量センサー2は、アクチュエーターによってプロジェクターPを加振し、プロジェクターPにおいて発生した振動をコンピューターPCで取得することで共振特性を測定する(詳細は後述)。
【0012】
コンピューターPCは、物理量センサー2の出力信号に基づいて各種の演算処理を実施可能なコンピューターであれば良く、可搬型であってもよいし、据置型であっても良い。また、端末の形態も限定されず、タブレット型等であっても良いしスマートフォン等であっても良い。
【0013】
本実施形態において物理量センサー2は、回路装置10と、センサー素子20と、を備えている。物理量センサー2は、アクチュエーター40に接続されている。また、物理量センサー2は、端子1aを介してコンピューターPCと接続される。本実施形態においてアクチュエーター40は、VCM(Voice Coil Motor)であるが、アクチュエーター40はVCMに限定されない。
【0014】
本実施形態においてセンサー素子20は、ジャイロセンサー素子である。センサー素子20としては、種々の態様のジャイロセンサーを採用可能である。例えば、所定軸まわりの角速度を検出する「面外検出型」のセンサー等をセンサー素子20として採用可能である。センサー素子20は、センサー素子20に作用した角速度ωを示す検出信号を出力する。
【0015】
回路装置10は、センサー素子20を駆動するための信号を生成する機能と、センサー素子20からの検出信号に基づいてアクチュエーター40を駆動する機能と、有する。この回路装置10は、図2に示すように、駆動回路31と、信号出力回路32と、クロック生成回路33と、メモリー34と、インターフェース回路35と、を備える。また、信号出力回路32は、検出回路320と、AD変換回路321と、プロセッサー322と、DA変換回路323と、を備えている。
【0016】
駆動回路31は、図示しないが、例えば、発振回路と、自動利得制御回路と、を備え、発振回路で生成した駆動信号を自動利得制御回路で利得調整してセンサー素子20の駆動信号電極に入力することで、センサー素子20を振動させる。
【0017】
検出回路320は、同期検波回路である検波回路320aを含む。さらに、検出回路320は、検波回路320aの他に、例えば、電流電圧変換アンプと、ACアンプと、90度位相シフターと、を備える(不図示)。そして、検出回路320においては、センサー素子20が出力した検出信号を電流電圧変換アンプで電流信号から電圧信号に変換し、ACアンプで増幅する。増幅された信号は、検波回路320aに入力される。また、検波回路320aには、駆動回路31から駆動信号が90度位相シフターを介して入力される。そして、検波回路320aは、駆動信号を基準信号として同期検波することで、検出信号から角速度情報を抽出して検波信号として出力する。このように、検出回路320は、センサー素子20からの検出信号に基づいて、角速度を検出する。
【0018】
AD変換回路321は、検波回路320aから出力された検波信号(角速度情報)をアナログ信号からデジタル信号に変換して出力する。
【0019】
プロセッサー322は、センサー素子20の検出信号から抽出された検波信号に基づいて、アクチュエーター40を駆動するための制振信号を生成する処理を行う回路である。本実施形態においてプロセッサー322は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーと、ROM(Read only memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリーとを含んで構成され、メモリーに記憶されたプログラムをプロセッサーが適宜実行することで、各種機能を実現する。プロセッサー322の構成は種々の構成であって良く、例えば、FPGAであっても良い。
【0020】
DA変換回路323は、プロセッサー322から出力された制振信号をデジタル信号からアナログ信号に変換して出力する。
【0021】
クロック生成回路33は、図示しない水晶発振器等の発振器からの信号に基づいて、回路装置10内の各部の動作用のクロック信号を生成する。そして、回路装置10内の各部は、このクロック信号に同期して動作を行う。
【0022】
メモリー34は、例えば、書き換え可能なメモリーであり、アクチュエーター40の制御情報が記憶される。メモリー34に記憶される情報の書き換えは、コンピューターPCによって、端子1aを通じて行うことが可能となっている。ここで、制御情報とは、プロセッサー322がアクチュエーター40を駆動制御する際に用いられる各種情報である。制御情報には、例えば、プロジェクターPの共振特性が含まれる。他にも、制御の目標値、制御条件、制御プログラム等が含まれて良い。プロセッサー322は、メモリー34に記憶されている情報を読み込んで利用(共振特性に基づく信号処理等)することが可能となっている。
【0023】
インターフェース回路35は、制振ボックス1と接続されるコンピューターPCとの間でデータ通信を行うための回路である。インターフェース回路35は、例えば、I2C(Inter-Integrated Circuit)バスに対応したインターフェース回路であってもよいし、SPI(Serial Peripheral Interface)バスに対応したインターフェース回路であってもよい。
【0024】
制振ボックス1の内部では、センサー素子20によって検出される所定軸周りの角速度の方向と、アクチュエーター40が駆動されることによってプロジェクターPに誘起される所定軸周りの角速度の方向と、が一致するように、センサー素子20とアクチュエーター40とが配置される。検出される角速度の方向と、誘起される角速度の方向とは、完全一致でなくてもよく、少なくとも一部で一致していれば良い。
【0025】
制振する方向は複数の方向であっても良い。この場合、センサー素子20において複数の方向の角速度が検出可能であり、各方向の角速度成分を低減するように複数の方向に駆動するアクチュエーター40が用いられる。いずれにしても、センサー素子20によって検出された角速度を減衰させるようにアクチュエーター40が駆動されると、プロジェクターPを制振することができる。
【0026】
プロジェクターPの周囲から天井C等などを介してプロジェクターPに伝達され、発生する振動は、一般に、複数の周波数成分の振動が重畳された振動である。このため、当該振動に対応した角速度を示すセンサー素子20の検出信号にも複数の周波数成分の振動に対応した、複数の周波数成分の角速度が含まれる。従って、センサー素子20から出力される検出信号が示す角速度は、一般に非常に複雑である。
【0027】
一方、プロジェクターPにおいて低減すべき振動の周波数は、特定の周波数の振動であることが多い。例えば、特定の周波数において振動の振幅が他の周波数より大きくなり、プロジェクターPによってスクリーンに投影した映像において視認される場合がある。また、人間の目で視認され得る振動の周波数は特定の範囲の周波数帯域に限定される。これらの特定の周波数または特定の周波数帯域において減衰させるべき周波数は、プロジェクターPの共振周波数に一致する。このため、共振周波数の振動を低減させれば、比較的単純な制御で、高い効果の制振を行うことができる。そして、このような制御であれば、アクチュエーター40の動作によって、プロジェクターPにおいて発生した振動を、実際に、低減させることが可能になる。
【0028】
そこで、本実施形態においては、プロジェクターPの共振特性を測定し、測定された共振周波数の振動を低減させる構成が採用されている。具体的には、コンピューターPCからの所定の指示が行われると、インターフェース回路35を介してプロセッサー322が当該指示を受け付ける。プロセッサー322は、当該指示に応じて、共振特性測定モードで動作する。
【0029】
<共振特性測定モード>
共振特性測定モードにおいて、プロセッサー322は、電子機器であるプロジェクターPの共振特性を測定するためのアクチュエーター駆動信号を出力する。当該共振特性を測定するためのアクチュエーター駆動信号は、アクチュエーター40を試験的に振動させるための信号である。
【0030】
本実施形態において、共振特性を測定するためのアクチュエーター駆動信号は、第1~第n(nは1以上の整数)の周波数を有する第1~第nの交流信号である。交流信号は、振幅が変動する信号であれば良いが、本実施形態においては、正弦波である。すなわち、本実施形態においてプロセッサー322は、複数の周波数の正弦波のそれぞれをアクチュエーター駆動信号として出力する。
【0031】
図3は、プロセッサー322の構成を示すブロック図である。プロセッサー322は、駆動信号出力部322aを備えている。駆動信号出力部322aは、メモリー34に記憶された値を参照し、特定の周波数であり、既定の振幅である正弦波を生成し、DA変換回路323に対して出力する。正弦波を出力するための構成は、種々の手法を採用可能であり、例えば、以下の式で特定される値を時系列で出力することにより、正弦波のデジタル信号を出力可能である。
0=0
N+1=SN+sin(N+1)-sin(N)
ここで、Nは、時系列で出力される信号の順番を示す整数であり、0以上の整数値である。sin(N+1)-sin(N)によって算出される値が1周期分特定され、メモリー34に保持される。プロセッサー322は、当該メモリー34に記憶された値に基づいて、正弦波を示すデジタル信号を出力することが可能である。また、信号の出力間隔を変化させることによって周波数を変化させることができる。
【0032】
DA変換回路323は、当該正弦波をデジタル信号からアナログ信号に変換し、アクチュエーター40に出力する。この結果、アクチュエーター40は、特定の周波数の正弦波に対する応答として駆動し、特定の周波数の正弦波でプロジェクターPを加振する。この際、駆動信号出力部322aは、正弦波の周波数、振幅、位相を示す情報をインターフェース回路35に出力する。インターフェース回路35は、当該周波数、振幅、位相を示す情報をコンピューターPCに対して出力する。この結果、コンピューターPCは、アクチュエーター40によって加振されている振動の周波数、振幅、位相を特定することができる。駆動信号出力部322aは、正弦波の周波数を順次切り替え、第1~第nの周波数の正弦波を出力する。この結果、プロジェクターPは、第1~第nの周波数で加振される。
【0033】
第1~第nの周波数は、制振対象の周波数が含まれるように予め決められていれば良く、例えば、0Hz~200Hzや0Hz~80Hzなどの既定の範囲で、予め決められた周波数ステップで周波数を変化させる構成等を採用可能である。
【0034】
以上のようにしてアクチュエーター駆動信号によってプロジェクターPが加振された場合に、プロジェクターPにおいて実際に発生する振動が測定されることによって共振特性が特定される。振動は各種の態様で測定されて良いが、本実施形態においては、センサー素子20の検出信号に基づいて測定が行われる。すなわち、アクチュエーター駆動信号によってアクチュエーター40が駆動し、プロジェクターPが加振されると、センサー素子20は、当該振動に応じた角速度を示す検出信号を出力する。
【0035】
従って、センサー素子20は、第1~第nのそれぞれの周波数の正弦波によって発生したプロジェクターPの振動に対応する第1~第nの検出信号を出力する。検出信号が出力されると、検出回路320,AD変換回路321による信号処理を経て、角速度を示すデジタル信号がプロセッサー322に入力される。
【0036】
プロセッサー322は、共振特性測定モードにおいて、当該デジタル信号をインターフェース回路35に対して出力する。インターフェース回路35は、当該デジタル信号をコンピューターPCに対して出力する。この結果、コンピューターPCにおいては、プロジェクターPにおいて実際に発生した振動(角速度)を示す情報を取得することができる。コンピューターPCは、当該情報に基づいて、プロジェクターPにおいて実際に発生した振動の周波数、振幅、位相を取得する。
【0037】
コンピューターPCは、図示しないCPU,RAM,ROM等を備え、各種のプログラムを実行することができる。本実施形態においてコンピューターPCは、共振特性の測定プログラムを実行することができる。当該プログラムが実行されている状態において、コンピューターPCは、上述のようにしてアクチュエーター40を駆動する際に用いられた正弦波の周波数、振幅、位相を取得する。また、コンピューターPCは、プロジェクターPにおいて実際に発生した振動の周波数、振幅、位相を取得する。
【0038】
コンピューターPCは、取得した情報に基づいて周波数毎に振幅、位相を比較することによって共振特性を取得する。コンピューターPCは、加振した振幅を基準とし、測定された振幅との比をゲインとして取得する処理を周波数毎に実施する。コンピューターPCは、当該ゲインが基準を満たす周波数を共振周波数f0として特定する。基準は種々の手法で決められて良く、例えば、ゲインが予め決められた閾値以上である、ゲインが最大である等が基準となり得る。
【0039】
さらに、本実施形態においては、位相のずれが特定されても良い。この場合、コンピューターPCは、加振したアクチュエーター駆動信号の位相を基準とし、測定された振動の位相とのずれを、位相のずれとして取得する。当該位相のずれは、振動源からの振動が、プロジェクターPに作用し、プロセッサー322で検出される際に生じる位相のずれである。従って、当該位相のずれは、プロジェクターPによる伝達特性に応じて発生する位相のずれである。
【0040】
以上のようにして、取得された共振周波数および伝達特性に応じて発生する位相のずれを示す情報は、コンピューターPCの図示しない記憶媒体に記憶される。コンピューターPCは、インターフェース回路35を介してこれらの情報を物理量センサー2に出力する。インターフェース回路35が当該情報を取得すると、当該情報に対応した値がメモリー34に記録される。
【0041】
<制振モード>
共振特性測定モードにおいて測定された情報に対応した値がメモリー34に記録されると、制振モードにおいて、共振周波数f0の振動を低減させるための制御を行うことが可能である。すなわち、制振モードは、共振特性測定モードにおいて測定された共振特性に基づいて、プロジェクターPの振動を低減するための制振信号を出力するモードである。
【0042】
制振モードにおいて、センサー素子20は、プロジェクターPの周囲から天井C等などを介して伝達されることによって、プロジェクターPにおいて発生する振動を検出する。センサー素子20から当該振動を示す角速度の検出信号が出力されると、検出回路320、AD変換回路321を経て検波信号のデジタル信号がプロセッサー322に出力される。
【0043】
プロセッサー322は、当該デジタル信号が示す振動のうち、メモリー34に記録された共振周波数の振動を低減させるための制振信号を生成する。図3においては、このような制振信号の生成を行うための構成も示されている。具体的には、プロセッサー322は、フィルター部322b、正弦波信号生成部322c、ゲイン演算部322d、制振部322eを備えている。
【0044】
フィルター部322bは、制振対象物に取り付けられた物理量センサーの出力信号から制振対象物の共振周波数成分を抽出するフィルターである。すなわち、フィルター部322bは、AD変換回路321から出力されるデジタル信号が、プロジェクターPに取り付けられた物理量センサー2の出力信号であるとみなし、当該デジタル信号からプロジェクターPの共振周波数成分を抽出する。
【0045】
本実施形態において、フィルター部322bはIIR(Infinite impulse response)フィルターである。IIRフィルターは、デジタル信号に対して各種の処理を行うフィルターである。IIRフィルターは、公知の構成によって実現可能であり、例えば、図4に示す構成によって実現可能である。図4に示す例において、遅延部D1,D2は入力信号に単位遅延を与えて出力する。信号調整部A1~A5は、入力信号に係数を乗じて出力する。信号調整部A1~A5の係数は、図4において信号調整部A1~A5のそれぞれに示されたa1~b2である。加算部S1~S4は、図4に示された入力信号に図示された符号を付与して加算し、出力する。
【0046】
従って、図4に示す例であれば、加算部S1は、IIRフィルターに入力された信号と、フィードバックされた信号を負の信号にした信号を加算し、出力する。出力された信号は、遅延部D1,D2によって遅延を受ける。遅延部D1による遅延を受けた信号は、信号調整部A1,A4、遅延部D2に入力される。遅延部D2による遅延を受けた信号は、信号調整部A2,A5に入力される。
【0047】
信号調整部A1,A2に入力された信号には、係数a1,a2が乗じられ、加算部S2によって加算された後に、加算部S1に入力する。信号調整部A4,A5に入力された信号には、係数b1,b2が乗じられ、加算部S4によって加算された後に、加算部S3に入力する。加算部S3は、加算部S1の出力に対して、信号調整部A3によって係数b0が乗じられた信号が入力される。加算部S3は、入力された両信号の和を出力する。
【0048】
IIRフィルターにおいては、これらの係数を調整することにより、低減対象の周波数帯域内の任意の周波数を中心周波数としたバンドパスフィルターとして機能する。また、IIRフィルターにおいては、これらの係数を調整することにより、位相を調整する位相調整フィルターとして機能する。
【0049】
本実施形態においては、フィルター部322bにおいて、以上のようなフィルターが合計2個形成されている。具体的には、プロセッサー322は、高周波/低周波除去フィルター322b1,f0通過フィルター322b2として機能する。
【0050】
以上の構成において、プロセッサー322は、各フィルターの信号調整部A1~A5の係数を調整することが可能である。具体的には、高周波/低周波除去フィルター322b1は、人間が視認不可能な周波数として、予め決められた第1の閾値以下の周波数である低周波の信号と、第2の閾値以上の周波数である高周波の信号と、を除外するフィルターである。このような信号の除去を行うための係数を示すパラメーターは予め特定され、メモリー34に記憶されている。プロセッサー322は、当該メモリー34に記憶されたパラメーターに基づいて、高周波/低周波除去フィルター322b1を制御する。この結果、高周波/低周波除去フィルター322b1は、予め決められた周波数帯域内の周波数の信号を除去し、残りの周波数の信号を通過させる。
【0051】
高周波/低周波除去フィルター322b1から出力された信号は、f0通過フィルター322b2に入力される。f0通過フィルター322b2は、共振周波数f0を中心周波数とした所定幅の帯域内の信号を通過させるバンドパスフィルターである。メモリー34には、当該共振特性を中心周波数とした所定幅の帯域の信号を通過させるための係数を示すパラメーターが記憶されている。プロセッサー322は、当該メモリー34に記憶されたパラメーターに基づいて、f0通過フィルター322b2を制御する。この結果、f0通過フィルター322b2は、共振周波数f0を中心周波数とした所定幅のフィルター透過信号、すなわち、共振周波数成分の信号を出力する。
【0052】
正弦波信号生成部322cは、フィルター部322bで抽出された共振周波数成分の周波数に基づいて正弦波信号を生成する回路である。図5は、正弦波信号生成部322cの構成を示すブロック図である。本実施形態において、正弦波信号生成部322cは、デジタル制御発振器322c1とデジタルPLL回路322c2とを備えている。
【0053】
デジタル制御発振器322c1は、正弦波信号を生成する回路である。本実施形態において、デジタル制御発振器322c1は、入力された周波数制御値に応じて周波数を変化させて正弦波を出力する回路である。また、デジタル制御発振器322c1から出力される正弦波信号は、制振部322eに入力される。さらに、本実施形態においては、デジタル制御発振器322c1から出力される正弦波信号が、フィードバックされ、デジタルPLL回路322c2に入力される2つの信号の一つとなる。デジタルPLL回路322c2に入力される信号のもう一つは、f0通過フィルター322b2が出力する信号、すなわち、共振周波数成分の信号である。
【0054】
デジタルPLL回路322c2は、デジタル制御発振器322c1が生成する正弦波信号の周波数を共振周波数成分の周波数に合わせる回路である。このような機能を実現するため、デジタルPLL回路322c2は、位相検出器3221、UP/DOWNカウンター3222、位相調整部F、入力値調整部3223を備えている。
【0055】
すなわち、デジタルPLL回路322c2においては、位相検出器3221によって、共振周波数成分とデジタル制御発振器322c1が出力する正弦波信号と、の位相のずれを検出する。位相のずれはUP/DOWNカウンター3222によって周波数制御値として定量化される。当該周波数制御値は、位相のずれの大小および正負を示している。当該周波数制御値は、必要に応じて位相調整部Fによる位相の調整と、入力値調整部3223による値の調整を受け、デジタル制御発振器322c1の入力とされる。
【0056】
位相のずれを示す周波数制御値がデジタル制御発振器322c1に入力されると、デジタル制御発振器322c1は、周波数制御値の絶対値が大きいほど周波数を大きく変更して正弦波信号を出力する。また、デジタル制御発振器322c1は、周波数制御値の正負に応じて、位相のずれが小さくなる方向に周波数を変更して正弦波信号を生成する。このため、デジタルPLL回路322c2においては、デジタル制御発振器322c1から出力される正弦波信号が、共振周波数f0と一致するまで正弦波信号の周波数を変化させる。以上の構成により、正弦波信号生成部322cは、共振周波数f0と周波数が一致する正弦波信号を出力させる。
【0057】
より具体的には、位相検出器3221は、ゼロクロス判定器3221a,3221cと、カウント制御トリガ生成器3221b,3221dと、カウント制御回路3221eと、を備えている。ゼロクロス判定器3221aには、f0通過フィルター322b2の出力信号が入力され、ゼロクロス判定器3221aの出力は、カウント制御トリガ生成器3221bに入力される。ゼロクロス判定器3221cには、デジタル制御発振器322c1の出力信号が入力され、ゼロクロス判定器3221cの出力は、カウント制御トリガ生成器3221dに入力される。カウント制御トリガ生成器3221b,3221dの出力は、カウント制御回路3221eに入力される。カウント制御回路3221eの出力は、UP/DOWNカウンター3222に入力される。
【0058】
ゼロクロス判定器3221a,3221cは、入力された信号値の負から正への変化を検出する回路である。本実施形態において、ゼロクロス判定器3221a,3221cは、入力された信号値が負から正に変化した場合に、パルス信号を出力する。
【0059】
カウント制御トリガ生成器3221b,3221dは、入力されたパルス信号に応じてレベルが変化するカウント制御トリガを生成する回路である。すなわち、カウント制御トリガ生成器3221b,3221dは、パルス信号が入力される度に出力電圧レベルを変化させる。
【0060】
カウント制御回路3221eは、カウント制御トリガ生成器3221b,3221dとのいずれか一方がハイレベル、他方がローレベルである期間を示す信号を出力する回路である。位相検出器3221を構成する各回路は、公知の回路によって実現可能である。
【0061】
図6は、位相検出器3221を構成する各回路が出力する信号のタイミングチャートである。図6においては、f0通過フィルター322b2から出力される共振周波数成分と、デジタル制御発振器322c1が出力する正弦波信号を最上部に示している。なお、前者が実線、後者が一点鎖線によって示されている。ここでは、簡単のために共振周波数成分を正弦波状の信号として表現している。
【0062】
図6に示す例において、f0通過フィルター322b2から出力される共振周波数成分は、時刻t1,t3において負から正に変化する。このため、ゼロクロス判定器3221aは、当該時刻t1,t3においてパルス信号を出力する。カウント制御トリガ生成器3221bは、当該パルス信号に同期して出力信号のレベルを変化させる。従って、図6に示す例において、カウント制御トリガ生成器3221bから出力される信号のレベルは、時刻t1,t3において変化する。
【0063】
デジタル制御発振器322c1が出力する正弦波信号は、時刻t2,t4において負から正に変化する。このため、ゼロクロス判定器3221cは、当該時刻t2,t4においてパルス信号を出力する。カウント制御トリガ生成器3221dは、当該パルス信号に同期して出力信号のレベルを変化させる。従って、図6に示す例において、カウント制御トリガ生成器3221dから出力される信号のレベルは、時刻t2,t4において変化する。
【0064】
カウント制御回路3221eは、カウント制御トリガ生成器3221b,3221dとのいずれか一方がハイレベル、他方がローレベルである場合に、ハイレベルの信号を出力する。このため、図6に示す例においては、時刻t1から時刻t2においてハイレベルになり、時刻t3から時刻t4においてハイレベルになり、これら以外の期間はローレベルになる信号を出力する。以上の回路によってカウント制御回路3221eから出力される信号は、f0通過フィルター322b2から出力される共振周波数成分と、デジタル制御発振器322c1が出力する正弦波信号と、の位相がずれている期間を示すパルスである。
【0065】
UP/DOWNカウンター3222は、カウント制御回路3221eの出力信号が示す期間長をカウントする回路である。UP/DOWNカウンター3222には、図示しないクロック信号が入力される。なお、本実施形態において、共振周波数f0は、例えば、数十kHzのオーダーであり、UP/DOWNカウンター3222に入力されるクロック信号は数MHzのオーダーである。
【0066】
UP/DOWNカウンター3222は、カウント制御回路3221eからUP/DOWNカウンター3222に対して入力されるパルスがハイレベルである期間長を、当該クロック信号のパルス数によってカウントし、カウント値を示す周波数制御値を出力する。なお、本実施形態において、当該周波数制御値は正負の値で表現される。例えば、f0通過フィルター322b2から出力される共振周波数成分の位相が、デジタル制御発振器322c1が出力する正弦波信号の位相より進んでいる場合、すなわち、ゼロクロスのタイミングが早い場合に正、位相が遅れている場合に負となるように符号が付与される。
【0067】
UP/DOWNカウンター3222が出力する周波数制御値は、位相調整部F、入力値調整部3223を経てデジタル制御発振器322c1に入力される。簡単のために、位相調整部F、入力値調整部3223を除外し、UP/DOWNカウンター3222が出力する周波数制御値がデジタル制御発振器322c1に入力される状態を考える。この構成によると、f0通過フィルター322b2から出力される共振周波数成分と、デジタル制御発振器322c1が出力する正弦波信号と、の位相のずれの大きさおよび正負に応じた値がデジタル制御発振器322c1に入力される。この結果、デジタル制御発振器322c1は、当該位相のずれを小さくするように正弦波信号の周波数を変化させる。本実施形態においては、以上の構成によってフィードバックによるPLL回路が形成されており、正弦波信号の周波数を共振周波数に一致させることが可能である。
【0068】
本実施形態においては、このようなPLL回路において、各種の調整を行うことができるように構成されている。位相調整部Fは、UP/DOWNカウンター3222から出力される周波数制御値に位相調整値を加算する回路である。当該位相調整値は、予めメモリー34に記憶され、加算器である位相調整部Fによって、当該位相調整値が周波数制御値に加算される。UP/DOWNカウンター3222から出力される周波数制御値は、f0通過フィルター322b2から出力される共振周波数成分と、デジタル制御発振器322c1が出力する正弦波信号と、の位相のずれを示すため、位相調整値は、位相のずれに相当するオフセットを与えることになる。そして、位相調整値が加算された周波数制御値がデジタル制御発振器322c1に入力されると、デジタル制御発振器322c1からは、共振周波数と同一の周波数であり、位相調整値に相当する位相のずれが生じた正弦波信号が出力される。
【0069】
入力値調整部3223は、UP/DOWNカウンター3222から出力される周波数制御値(位相調整値が加算された値を含む)に対してPI制御を行う回路である。入力値調整部3223は、増幅器3223a,加算器3223b,増幅器3223c,加算器3223d,遅延部3223eを備えている。入力値調整部3223に入力された周波数制御値には、増幅器3223aによってゲインKpが乗じられ、加算器3223bに入力される。また、入力値調整部3223に入力された周波数制御値は分岐され、増幅器3223cに入力される。増幅器3223cは入力信号にゲインKiを乗じ、ゲインKiを乗じた後の信号を遅延部3223eに入力する。遅延部3223eの出力は加算器3223dにフィードバック入力される。この結果、積分回路が形成されている。遅延部3223eの出力は、加算器3223bに入力される。以上の構成より、加算器3223bには、比例制御要素と積分制御要素とが加えられる。加算器3223bの出力は、デジタル制御発振器322c1に入力される。以上の構成により、周波数制御値に対するPI制御が行われる。
【0070】
図7は周波数が調整される様子、図8は位相が調整される様子を説明する図である。図7においては、横軸が時間、縦軸が周波数のグラフにより、デジタル制御発振器322c1から出力される正弦波信号の周波数の時間変化の例を示している。デジタル制御発振器322c1とデジタルPLL回路322c2とによれば、デジタル制御発振器322c1から出力される正弦波信号の周波数は、共振周波数f0に近づいていく。
【0071】
また、本実施形態において、デジタル制御発振器322c1に入力される周波数制御値は、入力値調整部3223によりPI制御される。このため、図7に示すように、正弦波信号の周波数が一度オーバーシュートするものの、その後振動することなく共振周波数f0に近づいていく。このため、本実施形態によれば、正弦波信号の周波数を早期に、安定的に共振周波数f0に近づけることができる。なお、本実施形態において、デジタル制御発振器322c1は、正弦波信号の周波数を調整するが、正弦波信号の振幅は既定の値である。但し、正弦波信号の振幅は、後述の制御ゲインによって調整される。
【0072】
図8においては、横軸が時間、縦軸が位相のずれのグラフにより、デジタル制御発振器322c1から出力される正弦波信号と、f0通過フィルター322b2から出力される共振周波数成分と、の位相のずれの時間変化の例を示している。デジタル制御発振器322c1とデジタルPLL回路322c2とによれば、f0通過フィルター322b2から出力される共振周波数成分とデジタル制御発振器322c1から出力される正弦波信号との位相のずれがなくなるように正弦波信号の周波数が調整される。
【0073】
このため、位相調整部Fによって周波数制御値に加算される位相調整値が0である場合、正弦波信号の周波数が調整される過程で、位相も一致する。図8においては、このような場合の位相のずれの時間変化を実線で示している。位相のずれに関しても、入力値調整部3223のPI制御によって位相のずれが一度オーバーシュートするものの、その後振動することなく0に近づいていく。このため、本実施形態によれば、正弦波信号の位相を早期に、共振周波数成分に近づけることができる。
【0074】
位相調整部Fによって周波数制御値に加算される位相調整値が0ではない特定値の場合、正弦波信号の周波数が調整される過程で、位相のずれは特定値に対応した値に収束する。図8においては、このような場合の位相のずれの時間変化を一点鎖線で示している。この場合も、入力値調整部3223のPI制御によって位相のずれが一度オーバーシュートするものの、その後振動することなく特定値に対応した位相のずれに近づいていく。このため、本実施形態によれば、正弦波信号の位相と、共振周波数成分の位相とにオフセットを与えることができる。
【0075】
本実施形態においては、以上の構成により、正弦波信号によって駆動されるアクチュエーター40の振動で、制振対象物であるプロジェクターPに発生する共振周波数の振動を抑制するように構成されている。具体的には、位相調整値に相当する位相のずれと、制振対象物によって生じる位相のずれとの和が、共振周波数成分を打ち消す位相のずれとなるように構成されている。本実施形態において、共振周波数成分を打ち消す位相のずれは、180度である。すなわち、共振周波数成分と位相が反転した振動が加振によって生じると、共振周波数成分の振動を制振することができる。ただし、共振周波数成分を打ち消す位相のずれは、共振周波数成分を打ち消すことができればよく、厳密に180度である状態に限定されない。
【0076】
制振対象物であるプロジェクターPによって生じる位相のずれは、プロジェクターPの伝達特性に応じた位相のずれとみなすことができる。すなわち、プロジェクターPに共振周波数の振動が発生した場合には、プロジェクターPの伝達特性の影響を受け、位相の遅延等が生じた状態でセンサー素子20によって振動が検出される。また、回路装置10における演算の過程で生じる遅延や、回路装置10から正弦波信号が出力され、実際にアクチュエーター40が振動するまでに生じる位相の遅延が存在する。
【0077】
そこで、本実施形態においては、以上のような制振対象物によって生じる位相のずれがあらかじめ特定される。すなわち、上述の共振特性測定モードにおいて、加振に用いた正弦波信号と、センサー素子20によって検出された信号と、の位相のずれが特定されている。当該位相のずれは、制振対象物であるプロジェクターPによって生じる位相のずれである。そして、180度-制振対象物であるプロジェクターPによって生じる位相のずれを算出すれば、算出された位相のずれを発生させる位相調整値を特定することができる。当該位相調整値は、あらかじめ特定され、メモリー34に記憶される。以上の構成によれば、位相調整部Fによる位相調整値の加算という簡易な処理によって、共振周波数成分を打ち消すような正弦波信号を容易に生成することができる。
【0078】
図3に戻って説明を続ける。ゲイン演算部322dは、フィルター部322bで抽出された共振周波数成分の振幅に基づいて制御ゲインを演算する回路である。図9は、ゲイン演算部322dの構成を示す図である。本実施形態において、ゲイン演算部322dは、振幅信号生成部3224と、PI制御部3225と、を備える。振幅信号生成部3224は、フィルター部322bで抽出された共振周波数成分を2乗して振幅信号を生成する回路である。具体的には、図9に示されるように、振幅信号生成部3224は、2乗回路3224aおよびローパスフィルター(LPF)3224bを備える。
【0079】
2乗回路3224には、f0通過フィルター322b2から出力される共振周波数成分が入力され、入力された共振周波数成分の振幅値を2乗した信号を出力する。当該2乗回路3224は公知の構成によって実現可能である。図10は2乗される前の共振周波数成分を模式的に示し、図11は2乗された後の信号を実線によって示している。なお、図10図11において、横軸は時間、縦軸は信号値である。図10図11に示されるように、2乗される前の共振周波数成分は、振幅が正負に変化する信号であり、2乗された後には正の信号となる。
【0080】
LPF3224bは、当該2乗された後の信号からカットオフ周波数より小さい周波数の信号を抽出するフィルターであり、公知の構成、例えば、上述のIIRフィルター等によって実現可能である。LPF3224bは、共振周波数成分の振幅の大きさに対応した振幅信号を出力することができればよい。従って、LPF3224bは、実質的に、入力信号のレベルを示す値を出力することができればよい。カットオフ周波数は、このような値を出力するように設定されていればよく、あらかじめ決められる。図11においては、2乗された後の信号にLPF3224bが作用した後の信号を一点鎖線によって示している。
【0081】
PI制御部3225は、振幅信号生成部3224が出力する振幅信号に基づいてPI制御を行って制御ゲインを演算する回路である。具体的には、PI制御部3225は、減算器3225a,増幅器3225b,加算器3225c,増幅器3225d,加算器3225e,遅延部3225fを備えている。
【0082】
PI制御部3225に入力された振幅信号は、減算器3225aに入力され、振幅信号から予め決められたターゲット値を減じて得られる差分が出力される。ターゲット値は、0より大きい値であり、当該ターゲット値は制振後の振動レベルの目標値である。当該ターゲット値は、予めメモリー34に記憶され、当該メモリー34に記憶されたターゲット値が減算器3225aによって振幅信号から減算される。
【0083】
減算器3225aによってターゲット値が減じられた振幅信号には、増幅器3225bによってゲインKpが乗じられ、加算器3225cに入力される。また、ターゲット値が減じられた振幅信号は分岐され、増幅器3225dに入力される。増幅器3225dは入力信号にゲインKiを乗じ、ゲインKiを乗じた後の信号を遅延部3225fに入力する。遅延部3225fの出力は加算器3225eにフィードバック入力される。この結果、積分回路が形成されている。遅延部3225fの出力は、加算器3225cに入力される。以上の構成より、加算器3225cには、比例制御要素と積分制御要素とが加えられる。加算器3225cの出力は、ゲイン演算部322dの出力となり、上述の正弦波信号の制御ゲインとなる。従って、以上の構成により、制御ゲインに対するPI制御が行われる。
【0084】
図3に戻って説明を続ける。正弦波信号生成部322cから出力される正弦波信号と、ゲイン演算部322dから出力される制御ゲインは、制振部322eに入力される。制振部322eは、正弦波信号に制御ゲインを乗算して生成した制振信号によってアクチュエーターを駆動して制振対象物の振動を低減する回路である。具体的には、制振部322eは、乗算部322e1とPWM部322e2とを備えている。
【0085】
乗算部322e1は、正弦波信号生成部322cから出力される正弦波信号に対して、ゲイン演算部322dから出力される制御ゲインを乗じる回路である。当該乗算により、正弦波信号が制御ゲインによって増幅された制振信号が生成される。
【0086】
乗算部322e1の出力信号は、PWM部322e2に入力される。PWM部322e2は、入力された信号に対してパルス幅変調を行う。すなわち、PWM部322e2は、制振信号としてのデジタル信号を出力する。当該デジタル信号は、DA変換回路323によってアナログ信号に変換されることにより、アクチュエーター40を駆動する制振信号になる。制振信号によってアクチュエーター40が駆動されると、プロジェクターPに発生している共振周波数成分の振動が抑制される。
【0087】
以上の構成によれば、センサー素子20が検出する複雑な検出信号から、プロジェクターPの共振特性に応じた共振周波数の振動を抽出し、制振信号とすることができる。そして、当該制振信号によれば、プロジェクターPに発生した主な振動成分、すなわち、共振周波数の振動を低減させることができる。このため、プロジェクターPの振動を効果的に低減させることができる。共振特性は、共振特性測定モードにおいて、測定されるため、プロジェクターPの設置環境等に応じて変化し得る共振特性に応じてプロジェクターPを制振することができる。
【0088】
また、共振特性測定モードにおいては、センサー素子20が出力する検出信号をコンピューターPCで取得することによって、共振特性を測定することができる。共振特性を測定するために、センサー素子20と別個の測定装置がプロジェクターPに対して接するように取り付けられると、共振特性が変動し得る。本実施形態においては、センサー素子20と別個の測定装置を接するように取り付ける必要がなく、コンピューターPCは、ケーブルのみを介して接続されている。そして、実際の制振の際にもプロジェクターPに取り付けられている制振ボックス1を用いて共振特性を測定することができる。従って、プロジェクターPの運用時の共振特性に近い共振特性を正確に測定することが可能である。
【0089】
さらに、制振モードにおいてプロセッサー322は、フィルター部322bによって共振周波数成分を抽出し、正弦波信号生成部322cによって共振周波数成分の周波数に基づいて正弦波信号を生成する。このため、センサー素子20によって外乱が検出され、一時的にノイズや他の周波数成分の振動が発生したとしても、共振周波数成分の振動を抑制する周波数となるように正弦波信号を生成することができる。このため、外乱に強く、発振の可能性が小さくなり、制振のための制御を安定化させることができる。
【0090】
さらに、本実施形態においては、メモリー34に記憶された共振特性に対応した情報に基づいてプロジェクターPを制振可能であり、当該共振特性は書き換え可能である。従って、個々のプロジェクターPの共振特性の変化に応じて、共振特性を書き換えることにより、どのような共振特性のプロジェクターPであっても効果的に制振することが可能である。また、共振特性測定モードによって共振特性を測定することにより、プロジェクターPの実際の共振特性を特定することが可能である。このため、プロジェクターPの実際の共振特性に応じた制振を行うことが可能である。
【0091】
さらに、本実施形態においては、共振特性測定モードにおいて、外部装置であるコンピューターPCを用いて共振特性を取得し、メモリー34に記憶させることができる。このため、制振ボックス1内に共振特性を取得するための演算部等を設ける必要がなく、制振ボックス1が備える各回路を簡易な構成にすることができる。
【0092】
さらに、本実施形態においては、フィルター部322bによって共振周波数成分を抽出し、ゲイン演算部322dによって制御ゲインを特定する。ゲイン演算部322dにおいては、共振周波数成分の振幅に対応した振幅信号が生成されるが、当該振幅信号は、共振周波数成分の振幅を2乗し、カットオフ周波数が小さいLPFを作用させることによって生成される。従って、センサー素子20によって外乱が検出され、一時的に共振周波数成分の振幅が大きくなったとしても、振幅信号の大きさに与える影響は小さい。このため、共振周波数成分の反転信号にゲインを作用させて制振信号を生成する構成と比較して、外乱に強く、発振の可能性が小さくなり、制振のための制御を安定化させることができる。
【0093】
さらに、本実施形態においては、共振周波数成分の反転信号にゲインを作用させて制振信号を生成する構成を採用していないため、共振周波数成分の振幅が小さくなった場合に、増幅率を上げて制振信号を生成する構成ではない。増幅率を上げる場合、一時的な外乱が発生した場合に外乱も大きく増幅してしまうが、本実施形態においては、共振周波数成分が小さくなった場合には、当該共振周波数成分の振幅から生成される制御ゲインも小さくなる。従って、共振周波数成分の反転信号にゲインを作用させて制振信号を生成する構成と比較して、外乱に強く、発振の可能性が小さくなり、制振のための制御を安定化させることができる。
【0094】
さらに、制御ゲインに対してPI制御が行われることにより、制御ゲインも、図7に示すような正弦波信号の周波数と同様な時間変化となり、ゲイン演算部322dから出力される制御ゲインは、過度に振動することはない。例えば、振幅信号が示す振幅が一定値である場合には、制御の過程で制御ゲインが一度オーバーシュートするものの、その後振動することなく当該一定値に近づいていく。このため、本実施形態によれば、ゲイン演算部322dから出力される信号のレベルを早期に、安定的にセンサー素子20で検出した振幅に対応した値に近づけることができる。
【0095】
さらに、本実施形態にかかるゲイン演算部322dにおいては、減算器3225aにより、振幅信号からターゲット値を減じている。このため、本実施形態においては、振幅信号からターゲット値を減じて得られる差分をPI制御して制御ゲインを演算する。この構成によれば、振幅信号とターゲット値とがほぼ同一の値になると、制御ゲインがほぼ0になる。この場合、制振信号による制振が実質上停止する。すなわち、本実施形態においては、プロジェクターPにおいて意図的にターゲット値に相当するわずかな振動が残るように制御ゲインが決定される。この構成によれば、センサー素子20による検出が不可能になるほど振動が抑制されない状態となり、この結果、わずかに残る振動によって常に制振のための制御が機能する状態を維持することができる。
【0096】
<他の実施形態>
上述の実施形態は発明の一実施例である。従って、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成に置換することができる。例えば、コンピューターPCは、物理量センサー2から取得した情報を、さらに外部のサーバーに送信し、サーバーにおいて共振周波数等の情報が取得されても良い。図12は、このような構成の例を示す図である。制振ボックス1は上述の実施形態と同様の構成であって良い。コンピューターPCは、ネットワークNTに接続されており、ネットワークNTに接続されたサーバーSVと通信可能である。
【0097】
そして、コンピューターPCは、物理量センサー2から、プロジェクターPを加振する制振信号としての正弦波の周波数、振幅、位相を取得する。また、コンピューターPCは、物理量センサー2から、センサー素子20によって検出されたプロジェクターPの振動の周波数、振幅、位相を取得する。コンピューターPCは、これらの情報をサーバーSVに対して送信する。サーバーSVは、これらの情報を取得し、共振周波数や位相のずれ等を取得する。
【0098】
サーバーSVは、当該共振周波数をコンピューターPCに送信し、コンピューターPCは、これらの情報を取得し、物理量センサー2が備えるメモリー34に記憶させる。以上の構成によれば、複数の場所で利用される制振ボックス1から取得された情報をサーバーSVで集中的に解析することが可能である。このため、複数の制振ボックス1からの情報を収集し、各制振ボックス1が取り付けられたプロジェクターPの共振周波数や位相のずれ等を取得するサービスを提供する態様を実現することができる。
【0099】
さらに、プロジェクターP等の制振対象物と、コンピューターPCと、の接続態様は有線接続であっても良いし、無線接続であっても良い。後者であれば、接続による共振周波数の変化を非常に小さくすることができる。さらに、フィルター部322bの構成は、図4に示す構成に限定されず、例えば、次数は他の値であっても良い。
【0100】
さらに、制振対象物の取り付け先は天井に限定されず、支柱や壁、台等に取り付けられてもよい。さらに、制振対象物はプロジェクターPに限定されず、他にも種々の制振対象物に対して制振ボックス1が取り付けられてもよい。例えば、天井や支柱、壁等に取り付けられる防犯カメラや、監視カメラ等が制振の対象であっても良いし、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等が制振の対象であっても良い。また、撮影を行う制振対象物に限らず、他の制振対象物、例えば、ロボット等の、あらゆる機器が制振の対象となって良い。
【0101】
さらに、物理量センサーは、制振ボックスによって制振対象物に取り付けられる態様以外にも、種々の態様で制振対象物に取り付けられてよい。例えば、アクチュエーターと物理量センサーとが制振対象物の筐体内に内包される態様等であっても良い。
【0102】
物理量センサーは、アクチュエーターを備えた制振対象物に取り付けられるセンサーであり、当該物理量センサーの検出信号が制振に利用可能であれば良い。このため、物理量センサーは、上述の実施形態のようなジャイロセンサーに限定されず、加速度センサーや速度センサー、慣性センサー等であっても良い。また、物理量センサーは、制振対象物に取り付けられるセンサーであり、取り付け方法は限定されない。例えば、粘着性のある材料によって取り付けられてもよいし、締結手段等によって取り付けられてもよいし、係合する部分によって取り付けられてもよい。また、物理量センサーは、制振対象物に対して着脱可能であっても良いし、一旦取り付けられた後に取り外し困難になっても良い。
【0103】
アクチュエーターは、駆動部分を有し、制振対象物に加速度等の物理量を作用させることにより、制振対象物が振動するなど、物理的に動作するように形成された装置であれば良い。従って、アクチュエーターは、上述のVCM以外にも種々の装置を採用可能である。例えば、ステッピングモーター、DCモーター、ACモーター等の各種のモーターや、ソレノイドアクチュエーターなど、電磁石によって物体が動作する機構であっても良く、種々の装置をアクチュエーターとして採用可能である。
【0104】
アクチュエーターは、少なくとも、物理量センサーを動作させる際に、制振対象物に備えられていれば良い。従って、上述の実施形態のように、制振ボックス1が制振対象物であるプロジェクターPに取り付けられることにより、制振対象物がアクチュエーターを備えるように構成されてても良いし、物理量センサーと異なる方法でアクチュエーターが制振対象物に取り付けられてもよい。例えば、アクチュエーターが、物理量センサーと別個に制振対象物に取り付けられることによって、制振対象物がアクチュエーターを備えるように構成されていても良い。また、制振対象物の製造段階で、制振対象物がアクチュエーターを内蔵するように構成されていても良い。
【0105】
物理量センサーは、少なくとも、物理量センサーを動作させる際に、制振対象物に備えられていれば良い。従って、物理量センサーを制振対象物に取り付けるタイミングも任意である。制振対象物の製造段階で、物理量センサーが制振対象物に取り付けられてもよいし、アクチュエーターと別個のタイミングで物理量センサーが制振対象物に取り付けられてもよい。
【0106】
さらに、図3に示すプロセッサー322の構成は一例であり、他にも種々の構成であってよい。例えば、正弦波信号生成部322cやゲイン演算部322dにおいて、f0通過フィルター322b2から出力された信号の振幅が過度に大きい場合に、正弦波信号の生成に用いないように制限が課されたり、制御ゲインの生成に用いないように制限が課されたりしても良い。このような構成は、例えば、f0通過フィルター322b2から出力された信号の振幅が閾値以上である場合に、正弦波信号生成部322cやゲイン演算部322dに対して信号が入力されないようにする回路や、これらの正弦波信号生成部322cやゲイン演算部322dを無効化させる回路等によって実現可能である。
【0107】
さらに、共振周波数成分を減衰させるための位相調整は、位相調整部Fによって行われる構成に限定されない。例えば、加振したアクチュエーター駆動信号の位相と、測定された振動の位相と、にずれがない、または両位相が近い場合には、f0通過フィルター322b2から出力された信号の位相を反転させて正弦波信号を生成することにより、制振を行うことが可能である。
【0108】
図13は、このような構成に係る正弦波信号生成部の例を示すブロック図である。図13に示す正弦波信号生成部3220cは、図3に示すプロセッサー322の正弦波信号生成部322cの代わりに当該プロセッサー322に組み込まれる。正弦波信号生成部3220cは、正弦波信号生成部322cとほぼ同様の構成であるが、正弦波信号生成部3220cにおいては、位相調整部Fを備えていない。また、正弦波信号生成部3220cにおいては乗算器Mを備えている。他の構成は、正弦波信号生成部3220cと正弦波信号生成部322cとで同様である。
【0109】
乗算器Mには、f0通過フィルター322b2から出力された信号と、信号を反転させるための値「-1」を示す信号と、が入力される。乗算器Mは、入力された2信号を乗じた結果を出力する。乗算器Mの出力は、ゼロクロス判定器3221aに入力される。この構成によれば、f0通過フィルター322b2から出力された信号と、周波数が同一で位相が180°異なる信号がゼロクロス判定器3221aに入力される。このため、デジタルPLL回路322c2およびデジタル制御発振器322c1により、f0通過フィルター322b2から出力された共振周波数成分の周波数と同一であり、位相が反転した正弦波信号が生成される。この構成によれば、共振周波数成分の周波数と同一であり、位相が反転した正弦波信号に制御ゲインが乗じられた制振信号で、アクチュエーター40を駆動することが可能になる。従って、位相のずれが発生しない制振対象物の振動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0110】
1…制振ボックス、2…物理量センサー、10…回路装置、20…センサー素子、31…駆動回路、32…信号出力回路、33…クロック生成回路、34…メモリー、35…インターフェース回路、40…アクチュエーター、320…検出回路、320a…検波回路、321…AD変換回路、322…プロセッサー、322a…駆動信号出力部、322b…フィルター部、322b1…低周波除去フィルター、322b2…f0通過フィルター、322c…正弦波信号生成部、322c1…デジタル制御発振器、322c2…デジタルPLL回路、322d…ゲイン演算部、322e…制振部、322e1…乗算部、322e2…PWM部、323…DA変換回路、3220c…正弦波信号生成部、3221…位相検出器、3221a…ゼロクロス判定器、3221b…カウント制御トリガ生成器、3221c…ゼロクロス判定器、3221d…カウント制御トリガ生成器、3221e…カウント制御回路、3222…DOWNカウンター、3223…入力値調整部、3223a…増幅器、3223b…加算器、3223c…増幅器、3223d…加算器、3223e…遅延部、3224…振幅信号生成部、3224b…LPF、3225…PI制御部、3225a…減算器、3225b…増幅器、3225c…加算器、3225d…増幅器、3225e…加算器、3225f…遅延部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13