(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087907
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240625BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240625BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240625BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/31
A61K8/06
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202808
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】相良 俊典
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AA162
4C083AB172
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC402
4C083AC642
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD222
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD261
4C083AD262
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD432
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】固形油の含有量が合計0.1重量%以下でありながら肌へのなじみが良く、使用後の保湿感があり経時安定性に優れている液状の水中油型乳化化粧料を提供すること。
【解決手段】
次の成分(a)~(c)
(a)セルロース
(b)ワセリン
(c)ヒドロキシプロピルデンプンリン酸
を含有することで、固形油の含有量が合計0.1重量%以下でありながら、肌へのなじみが良く、使用後の保湿感があり経時安定性に優れている液状の水中油型乳化化粧料を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)~(c)
(a)セルロース
(b)ワセリン
(c)ヒドロキシプロピルデンプンリン酸
を含有し、成分(a)の含有量が2.0~8.0重量%であり、成分(b)の含有量が2.0~8.0重量%であり、成分(c)の含有量が0.2~1.0重量%であり、固形油の含有量が合計0.1重量%以下である液状の水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形油の含有量が合計0.1重量%以下でありながら肌へのなじみが良く、使用後の保湿感があり経時安定性に優れている液状の水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
水中油型乳化化粧料は、含有する多価アルコールや液状油の影響で、肌なじみが悪く感じることがあった。また、高級脂肪酸や高級アルコール、ワックス類といった固形油を含有することで使用後の保湿感や肌なじみが向上する一方、乳液など液状の水中油型乳化化粧料では含有しすぎると流動性がなくなって使用性が悪かったり、経時安定性が悪くなるなどの改良すべき点があった。
【0003】
肌なじみの良さや使用後の保湿感、経時安定性に関しては、これまでにも改良が試みられており、例えば、固形油と界面活性剤にアクリルアミド系増粘剤及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有させた水中油型乳化化粧料(特許文献1)や、ポリアルキレングリコール、アミノ酸、特定の置換基を有する多糖系高分子、水を含有する液状皮膚外用剤(特許文献2)などが挙げられる。
【0004】
特許文献1の水中油型乳化化粧料に関して、開示の技術を用いて調製したところ、肌なじみの良さや使用後の保湿感においてまだ改良の余地があった。また、特許文献2の液状皮膚外用剤に関しても、使用後の保湿感は改良されていたが、肌へのなじみは満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-089741号公報
【特許文献2】特開2019-064977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、固形油の含有量が合計0.1重量%以下でありながら肌へのなじみが良く、使用後の保湿感があり経時安定性に優れている液状の水中油型乳化化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、次の成分(a)~(c)
(a)セルロース
(b)ワセリン
(c)ヒドロキシプロピルデンプンリン酸
を含有し、成分(a)の含有量が2.0~8.0重量%であり、成分(b)の含有量が2.0~8.0重量%であり、成分(c)の含有量が0.2~1.0重量%であり、固形油の含有量が合計0.1重量%以下である液状の水中油型乳化化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水中油型乳化化粧料は、固形油の含有量が合計0.1重量%以下でありながら肌へのなじみが良く、使用後の保湿感があり経時安定性に優れている液状の水中油型乳化化粧料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の成分(a)セルロースの含有量は、水中油型乳化化粧料に対して2.0~8.0重量%であり、より好ましくは3.5~6.5重量%である。これらの範囲において、経時安定性に優れ、肌へのなじみが良く、使用後の保湿感がある良好な使用感が得られる。本発明の成分(a)の含有量が2.0重量%より小さい場合、肌なじみが悪く感じることがあり、8.0重量%より大きい場合、経時安定性が悪くなったり、使用後の保湿感を感じにくくなることがある。
【0010】
本発明で用いられる成分(a)セルロースは非水溶性の粉体で、平均粒子径は特に限定されないが、5~30μmであることが好ましい。セルロースは、通常の化粧料に用いられるものであれば何れのものも用いることができる。また、セルロースは市販品を用いることが可能であり、例えば、チッソ社製のセルフロー C-25(平均粒子径8~10μm)を用いることができる。
【0011】
本発明の成分(b)ワセリンの含有量は、水中油型乳化化粧料に対して2.0~8.0重量%であり、より好ましくは2.0~6.0重量%である。これらの範囲において、経時安定性に優れ、肌へのなじみが良く、使用後の保湿感がある良好な使用感が得られる。本発明の成分(b)の含有量が2.0重量%より小さい場合、保湿感を感じにくいことがあり、8.0重量%より大きい場合、肌なじみが悪く感じることがある。
【0012】
本発明で用いられる成分(b)ワセリンは半固形の炭化水素で、通常の化粧料に用いられるものであれば何れのものも用いることができる。ワセリンは市販品を用いることが可能であり、例えば、クローダ社製のクロラータム V-SO-(JP)やSONNEBORN社製のPERFECTAを用いることができる。
【0013】
本発明の成分(c)ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の含有量は、水中油型乳化化粧料に対して0.2~1.0重量%であり、より好ましくは0.2~0.7重量%である。この範囲において、経時安定性に優れ、肌へのなじみが良く、使用後の保湿感がある良好な使用感が得られる。本発明の成分(c)の含有量が0.2重量%より小さい場合、肌なじみが悪く感じることがあり、1.0重量%より大きい場合、使用後の保湿感を感じにくくなることがある。
【0014】
本発明で用いられる成分(c)ヒドロキシプロピルデンプンリン酸は水溶性の高分子で、通常の化粧料に用いられるものであれば何れのものも用いることができる。ヒドロキシプロピルデンプンリン酸は市販品を用いることが可能であり、例えば、アクゾノーベル社製のSTRUCTURE XLを用いることができる。
【0015】
本発明における固形油とは、25℃大気圧の環境下において、硬度150gf以上の油剤を指す。硬度は、不動工業社製の硬度計(型式:RT-3002D)を用いて測定することができ、測定条件は、アダプターの直径10mm、針入速度20mm/minで、10mm針入時の数値を硬度とする。
【0016】
本発明で用いられる固形油の含有量は、水中油型乳化化粧料に対して合計0.1重量%以下であり、配合していなくてもよい。本発明で用いられる固形油は、通常の化粧料に用いられるものであれば何れのものも用いることができる。具体的には、セラミド類、水添レシチンなどの脂質類;フィトステロール、コレステロールなどのステロール類;セタノール、ベヘニルアルコールなどの高級アルコール類;ステアリン酸、ベヘン酸などの高級脂肪酸類;キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、みつろう、パラフィンワックスなどのワックス類;(イソステアリン酸/ベヘン酸)(グリセリル/ポリグリセリル-6)エステルズ、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)などのエステル油;シア脂、テオブロマグランジフロルム種子脂、マンゴー種子脂などの植物油等が例として挙げられる。
【0017】
本発明の水中油型乳化化粧料は、上記必須成分の他に、通常の化粧料に用いられる成分として、例えばノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、水性成分、水溶性高分子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料、キレート剤、着色剤、美容成分等を、本発明の効果を損なわない範囲にて含有することができる。
【0018】
本発明の水中油型乳化化粧料は、美容液、乳液等の液状基礎化粧料に適用可能であり、本発明の水中油型乳化化粧料の形態は乳液状である。
【0019】
本発明の液状の水中油型乳化化粧料において、液状とは25℃大気圧の環境下において粘度1~20,000mPa・sの化粧料を指す。粘度は、東機産業社製のB型粘度計(型式:TVB-10)を用いて測定することができ、測定条件は、ローターNo.4、回転数12rpmで30秒測定し、10,000mPa・s未満の場合、ローターNo.3、回転数12rpmで30秒、2,500mPa・s未満の場合、ローターNo.2、回転数12rpmで30秒、500mPa・s未満の場合、ローターNo.1、回転数12rpmで30秒である。
【実施例0020】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらに限定されるものではない。なお、含有量については、他に指定のない限り重量%を表す。
【0021】
(製造方法)
均一混合させた成分1、2に、均一加熱混合させた成分3~7を混合したものを、80℃に加熱し油相とした。次に、80℃に加熱した成分8~15を油相に添加して乳化した後、冷却して水中油型乳化化粧料を得た。
【0022】
下記の表1~3に挙げた組成を有する水中油型乳化化粧料を調製し、下記試験法により、経時安定性および使用性(各化粧料使用直後の「肌なじみの良さ」、「使用後の保湿感」)を評価した。結果を表1~3に示した。
【0023】
(評価方法)
経時安定性試験
試料を50℃で1か月間放置した後の外観を、目視及び顕微鏡にて観察し、下記の基準に従って判定した。
〇:外観および乳化粒子に関して、分離・凝集・沈殿が全くみられなかった。
×:外観および乳化粒子に関して、分離・凝集・沈殿が生じた。
【0024】
使用性(肌なじみの良さ)
女性専門パネル(15名)による使用試験を実施し、肌なじみの良さについて、「良い」「悪い」の2段階で判定を行い、下記の基準に従って評価した。
◎:肌なじみが良いと評価した人が12名以上。
○:肌なじみが良いと評価した人が8~11名。
△:肌なじみが良いと評価した人が4~7名。
×:肌なじみが良いと評価した人が3名以下。
【0025】
使用性(使用後の保湿感)
女性専門パネル(15名)による使用試験を実施し、使用後の保湿感について、「ある」「ない」の2段階で判定を行い、下記の基準に従って評価した。
◎:保湿感があると評価した人が12名以上。
○:保湿感があると評価した人が8~11名。
△:保湿感があると評価した人が4~7名。
×:保湿感があると評価した人が3名以下。
【0026】
【表1】
※1 NIKKOL Decaglyn 1-M(日光ケミカルズ社製)
※2 クロラータム V-SO-(JP)(クローダ社製)
※3 ODM(高級アルコール工業社製)
※4 エステロールDISM(ナショナル美松社製)
※5 パールリーム EX(日油社製)
※6 STRUCTURE XL(アクゾノーベル社製)
※7 セルフロー C-25(チッソ社製)
※8 シリカマイクロビード P-1500(日揮触媒化成社製)
【0027】
表1の実施例1~5に示したように、セルロースを2.0~8.0重量%含有した場合、評価した全ての項目において満足する結果が得られた。また、セルロースを3.5~6.5重量%含有した場合、特に満足する結果が得られた。一方、比較例1、2に示したように、セルロースを2.0重量%より少なくもしくは8.0重量%より多く含有した場合、肌なじみの良さや使用後の保湿感および経時安定性において満足する結果が得られなかった。さらに、比較例3に示したように、セルロースの代わりにシリカを含有した場合、使用後の保湿感において満足する結果が得られなかった。
【0028】
【表2】
※9 Plandool-MAS(日本精化社製)
【0029】
表2の実施例6~9に示したように、ワセリンを2.0~8.0重量%含有した場合、評価した全ての項目において満足する結果が得られた。また、ワセリンを2.0~6.0重量%含有した場合、特に満足する結果が得られた。一方、比較例4、5に示したように、ワセリンを2.0重量%より少なくもしくは8.0重量%より多く含有した場合、肌なじみの良さや使用後の保湿感において満足する結果が得られなかった。さらに比較例6に示したように、ワセリンの代わりにマカデミアナッツ脂肪酸フィトステリルを含有した場合、経時安定性において満足する結果が得られなかった。
【0030】
【表3】
※10 サンローズ FJ08HC(日本製紙パピリア社製)
【0031】
表3の実施例10~13に示したように、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を0.2~1.0重量%含有した場合、評価した全ての項目において満足する結果が得られた。また、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を0.2~0.7重量%含有した場合、特に満足する結果が得られた。一方、比較例7、8に示したように、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を0.2重量%より少なくもしくは1.0重量%より多く含有した場合、肌なじみの良さや使用後の保湿感において満足する結果が得られなかった。さらに比較例9に示したように、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の代わりにカルボキシメチルセルロースを含有した場合、肌なじみの良さにおいて満足する結果が得られなかった。
【0032】
次に、本発明のその他の実施例を示す。実施例14~15のいずれにおいても、肌へのなじみが良く、使用後の保湿感があり経時安定性に優れていた。
【0033】
(実施例14:美容液)
(成分) (重量%)
(1)グリセリン 4.0
(2)パルミチン酸スクロース ※11 1.0
(3)ラウリン酸ポリグリセリル-10 ※12 1.5
(4)スクワラン 3.0
(5)ミリスチン酸オクチルドデシル ※3 3.0
(6)ホホバ種子油 ※13 0.5
(7)ワセリン ※2 3.0
(8)リンゴ酸ジイソステアリル ※4 2.5
(9)セラミドNG、セラミドNP、セラミドAP、フィトステロールズ、水添レシチン ※14 0.1
(10)精製水 残 余
(11)カルボマー 0.15
(12)加水分解コラーゲン 0.5
(13)ヒドロキシプロピルデンプンリン酸 ※6 0.5
(14)セルロース ※7 4.0
(15)ペンチレングリコール 2.5
(16)1,3-ブチレングリコール 10.0
(17)中和剤 適 量
(18)防腐剤 適 量
※11 サーフホープ SE COSME C-1616(三菱ケミカルフーズ社製)
※12 NIKKOL Decaglyn 1-L(日光ケミカルズ社製)
※13 NIKKOL ホホバ油 E(日光ケミカルズ社製)
※14 Phytocompo-C(日本精化社製)
【0034】
(製造方法)
成分1~3を均一混合させた中に、均一加熱混合させた成分4~9を混合し油相とする。次に、成分10~18を80℃に加温したのちに、同じく80℃に加温した油相に添加して乳化した後、30℃まで冷却して美容液を得た。
【0035】
(実施例15:乳液)
(成分) (重量%)
(1)グリセリン 3.0
(2)パルミチン酸スクロース ※11 1.2
(3)ラウリン酸ポリグリセリル-10 ※12 1.2
(4)ミネラルオイル ※15 5.0
(5)イソステアリン酸イソステアリル ※16 2.5
(6)ジメチコン ※17 0.5
(7)ワセリン ※2 5.0
(8)リンゴ酸ジイソステアリル ※4 1.5
(9)セラミドNG ※18 0.1
(10)精製水 残 余
(11)ヒドロキシプロピルデンプンリン酸 ※6 0.4
(12)カルボマー 0.05
(13)キサンタンガム 0.2
(14)セルロース ※7 5.0
(15)1,3-ブチレングリコール 7.0
(16)ペンチレングリコール 1.5
(17)ヒアルロン酸Na 0.1
(18)中和剤 適 量
(19)防腐剤 適 量
(20)香料 適 量
※15 CARNATION(SONNEBORN社製)
※16 クロダモル ISIS-LQ-(JP)(クローダ社製)
※17 DOWSIL(TM)SH 200 C Fluid 10cSt(東レ・ダウコーニング社製)
※18 CERAMIDE TIC-001(高砂香料工業社製)
【0036】
(製造方法)
成分1~3を均一混合させた中に、均一加熱混合させた成分4~9を混合し油相とする。次に、成分10~19を80℃に加温したのちに、同じく80℃に加温した油相に添加して乳化した後、成分20を添加し、30℃まで冷却して乳液を得た。
本発明によれば、固形油の含有量が合計0.1重量%以下でありながら肌へのなじみが良く、使用後の保湿感があり経時安定性に優れている液状の水中油型乳化化粧料を提供することができる。