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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087910
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】車両の支持部品の防振部材
(51)【国際特許分類】
   B60K 5/12 20060101AFI20240625BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20240625BHJP
   F16F 1/387 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B60K5/12 Z
F16F15/08 K
F16F1/387 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202816
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北野 利幸
(72)【発明者】
【氏名】安川 昭
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】羽田野 正人
【テーマコード(参考)】
3D235
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB23
3D235BB25
3D235CC01
3D235CC12
3D235CC32
3D235DD02
3D235DD12
3D235EE23
3D235FF03
3J048AA01
3J048BA19
3J048CB05
3J048EA01
3J048EA08
3J059AA04
3J059AB11
3J059AD05
3J059BA42
3J059DA14
3J059EA06
3J059EA13
3J059GA01
(57)【要約】
【課題】耐久性を向上させることができる車両の支持部品の防振部材を提供する。
【解決手段】車体11においてユニット15を支持するトルクロッド20の防振部材30であって、外金具21と内筒金具22とを繋いで、車体11に対するユニット15の相対的な動き量を伸縮することによって吸収する脚部31と、外金具21の開口部21Bに接着され、脚部31と連続して形成される接着部32と、成型時に金型のエア抜きをするために形成され、脚部31の伸縮方向に沿って脚部31と連続して形成される薄膜部34と、を有し、薄膜部34には、薄膜部34よりも厚く、脚部31および接着部32よりも薄い厚肉部35が形成され、厚肉部35と脚部31との間、および、厚肉部35と接着部32との間のうちの少なくとも一方の間には、所定の隙間Sが形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体においてユニットを支持する支持部品の防振部材であって、
前記支持部品は、前記ユニットまたは前記車体の一方が一側に固定され、前記防振部材が嵌合される開口部が他側に形成される外金具と、前記防振部材に設けられ、前記ユニットまたは前記車体の他方に固定される内筒金具と、を有し、
前記防振部材は、少なくとも、前記内筒金具と前記外金具とを繋いで、前記車体に対する前記ユニットの相対的な動き量を伸縮することによって吸収する脚部と、前記外金具の前記開口部に接着され、前記脚部と連続して形成される接着部と、成型時に金型のエア抜きをするために形成され、前記脚部の伸縮方向に沿って前記脚部と連続して形成される薄膜部と、を有し、
前記薄膜部には、前記薄膜部よりも厚く、前記脚部および前記接着部よりも薄い厚肉部が形成され、
前記厚肉部と前記脚部との間、および、前記厚肉部と前記接着部との間のうちの少なくとも一方の間には、所定の隙間が形成される、
車両の支持部品の防振部材。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の支持部品の防振部材であって、
前記隙間は、前記厚肉部と前記脚部との間にのみ形成されている、
車両の支持部品の防振部材。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の支持部品の防振部材であって、
前記隙間は、前記薄膜部から前記脚部の伸縮方向に向かうに従って幅狭となる、
車両の支持部品の防振部材。
【請求項4】
請求項2または3に記載の車両の支持部品の防振部材であって、
前記接着部と前記厚肉部との間は、ステップ状に連続して形成される、または、傾斜して連続して形成される、
車両の支持部品の防振部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体においてユニットを支持する支持部品の防振部材に関する。
【背景技術】
【0002】
支持部品(マウント)は、車体においてユニットを支持している。例えば、エンジンマウントは、車体においてエンジンを支持すると共にエンジンを防振および制振している。例えば、特許文献1および特許文献2には、エンジンマウントの防振部材であってゴム等の弾性体によって形成される防振部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-223850号公報
【特許文献2】特開2013-217431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、防振部材の成形時の余剰材料として形成される薄膜部が破断して切れ目が他の部分(例えば、車体に対するユニットの相対的な動き量を伸縮することによって吸収する脚部)に到達した場合には、到達部にひずみが集中し、到達部が他の部位よりも早く劣化するため、防振部材の耐久性が低下することになる。
【0005】
そこで、本発明は、耐久性を向上させることができる車両の支持部品の防振部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両の支持部品の防振部材は、車体においてユニットを支持する支持部品の防振部材であって、支持部品は、ユニットまたは車体の一方が一側に固定され、防振部材が嵌合される開口部が他側に形成される外金具と、防振部材に設けられ、ユニットまたは車体の他方に固定される内筒金具と、を有し、防振部材は、少なくとも、内筒金具と外金具とを繋いで、車体に対するユニットの相対的な動き量を伸縮することによって吸収する脚部と、外金具の開口部の内周壁に接着され、脚部と連続して形成される接着部と、成型時に金型のエア抜きをするために形成され、脚部の伸縮方向に沿って脚部と連続して形成される薄膜部と、を有し、薄膜部には、薄膜部よりも厚く、脚部および接着部よりも薄い厚肉部が形成され、厚肉部と脚部との間、および、厚肉部と接着部との間のうちの少なくとも一方の間には、所定の隙間が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両の支持部品の防振部材によれば、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る車両のユニットの支持構造を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る支持部品を示す平面図である。
図3】実施形態の一例である防振部材を示す平面図である。
図4】防振部材の効果を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。
【0010】
「車両のユニットの支持構造」
図1を用いて、実施形態に係る車両10のユニット15の支持構造について説明する。
【0011】
車両10のユニット15の支持構造では、車体11において支持部品によってユニット15を支持する。支持部品としてのトルクロッド20は、後述する防振部材30を有している。車両10のトルクロッド20の防振部材30によれば、詳細は後述するが、耐久性を向上させることができる。
【0012】
車両10は、例えば4輪のエンジン車両である。ただし、車両は、エンジン車両に限定されることなく、電動車両またはハイブリッド車両であってもよい。また、以下では、適宜、車両上下方向の上側または下側、車両幅方向の左側または右側、車両前後方向の前側または後側に従って説明する。
【0013】
ユニット15は、車体11に搭載される重量物である。ユニット15は、例えば車体11の前部に搭載される。ただし、ユニット15は、車体11の後部または側部に搭載されてもよい。ユニット15は、例えば車両10の走行用のエンジンである。ただし、ユニット15は、電動機またはバッテリであってもよい。
【0014】
トルクロッド20は、骨格部材であるフロントサイドメンバフレーム12にそれぞれ設けられるRHマウント16およびLHマウント17と、サスペンションの骨格部材としてのサスペンションメンバ13に設けられるRRマウント(以下、トルクロッド)20とを含む。RHマウント16およびLHマウント17は、ユニット15の左右側をそれぞれ支持する。また、トルクロッド20は、ユニット15の後部を支持する。
【0015】
本実施形態では、車体11においてユニット15を3点支持構成としたが、これに限定されない。例えば、3点支持構成にユニット15の前部にマウントを追加した4点支持構成であってもよい。
【0016】
「支持部品(トルクロッド)」
図2を用いて、実施形態に係る支持部品としてのトルクロッド20について説明する。
【0017】
トルクロッド20は、上述したように、サスペンションメンバ13においてユニット15の後部を支持する(図1参照)。トルクロッド20は、それぞれ詳細は後述する、外金具21と、内筒金具22と、防振部材30とを有している。
【0018】
外金具21は、車両前後方向に沿って長尺状に形成され、アルミ、鉄等によって形成される。また、外金具21の前部には、ユニット15とボルト等の固定具によって締結される支持部21Aが形成される。さらに、外金具21の後部には、防振部材30が嵌合される円形状の開口部21Bが形成される。
【0019】
内筒金具22は、例えば略三角形状に形成され、アルミ、鉄等によって形成される。内筒金具22は、例えば後述する防振部材30の中央部に設けられている。内筒金具22の中央部には、サスペンションメンバ13とボルト等の固定具によって締結されるための固定孔22Bが形成されている。
【0020】
防振部材30は、外金具21の開口部21Bに固定されている。また、防振部材30の略中央部には、内筒金具22が固定されている。防振部材30について、詳細は後述する。なお、防振部材30は、トルクロッド20に設けられるが、RHマウント16またはLHマウント17に設けられてもよい。
【0021】
本実施形態のトルクロッド20は、外金具21がユニット15に固定され、内筒金具22が車体11に固定される構成としたが、外金具21が車体11に固定され、内筒金具22がユニット15に固定される構成であってもよい。
【0022】
[防振部材]
図3を用いて、実施形態の一例である防振部材30について説明する。
【0023】
防振部材30は、上述したようにトルクロッド20に設けられ、ゴム等の弾性体によって形成されている。防振部材30によれば、詳細は後述するが、耐久性を向上させることができる。防振部材30は、それぞれ詳細は後述する、脚部31と、接着部32と、ストッパ部33と、薄膜部34と、厚肉部35と、が連続して一体的に成型して形成されている。
【0024】
脚部31は、外金具21と内筒金具22とを繋いで、サスペンションメンバ13に対するユニット15の相対的な動き量を伸縮することによって吸収する部分である。脚部31は、内筒金具22に固定され、防振部材30の左右側にそれぞれ設けられている。脚部31は、内筒金具22から後側に向かって外側に拡がるように形成されている。
【0025】
接着部32は、脚部31を外金具21に固定する部分である。接着部32は、外金具21の開口部21Bに沿ってC字状に形成され、防振部材30の左右側にそれぞれ形成されている。接着部32は、それぞれの脚部31の外側かつ後側に連続して形成され、かつ、外金具21の開口部21Bの内周壁に固定されている。
【0026】
ストッパ部33は、外金具21と内筒金具22とが直接接触してそれぞれが破損する、または異音が発生することを防ぐ部分である。ストッパ部33は、内筒金具22の前側に固定される前ストッパ部33Aと、外金具21の開口部21Bの後部に固定される後ストッパ部33Bとを含んでいる。
【0027】
薄膜部34は、防振部材30の成型時に金型のエア抜きをするために形成される部分である。例えばゴムの射出成型によって防振部材30を製造する場合には、金型の上方のゲートからゴムを流入かつ充填し、金型の上方にエア残りが発生するため、ゴムを過充填してエア抜き部からエア抜きをすることによってエア残りを無くして欠肉が無いようにしている。このエア抜き部によって形成される部分が薄膜部34となる。薄膜部34は、防振部材30において車両前後方向の前部において車両前後方向に沿って形成されている。
【0028】
厚肉部35は、脚部31との間に所定の隙間Sを形成するための部分である。厚肉部35は、薄膜部34よりも厚く、脚部31および接着部32よりも薄い部分である。厚肉部35は、脚部31の前部と接着部32との間において形成され、防振部材30の左右側にそれぞれ形成されている。
【0029】
隙間Sは、脚部31と厚肉部35との間に形成される部分である。隙間Sによれば、詳細は後述するが、車両10の加減速によって脚部31が伸縮するため、薄膜部34の伸縮が繰り返されることによって薄膜部34が破断した際に、薄膜部34の破断による切れ目を隙間Sに沿って進行させることができる。
【0030】
隙間Sは、少なくとも接着部32まで形成されている。また、隙間Sは、薄膜部34から後方に向かうに従って(薄膜部34から接着部32に向かうに従って)幅が狭くなるように形成されている。これにより、薄膜部34の破断による切れ目が隙間Sに到達しやすくなると共に、切れ目が隙間Sに沿って進行しやすくなる。
【0031】
本実施形態では、隙間Sが脚部31と厚肉部35との間に形成される構成としたが、これに限定されない。隙間Sが接着部32と厚肉部35との間に形成される構成であってもよい。また、隙間Sが脚部31と厚肉部35との間に形成されると共に接着部32と厚肉部35との間に形成される構成であってもよい。
【0032】
厚肉部35と接着部32との間は、ステップ状に連続して形成されている。より詳細には、厚肉部35と接着部32との間には、段差部36が形成されている。より具体的には、段差部36は、厚肉部35に形成され、接着部32に沿って所定の幅にて形成されている。段差部36の厚みは、厚肉部35の厚みよりも大きく、接着部32の厚みよりも小さいものとする。厚肉部35と接着部32との間がステップ状に連続して形成されていることによって、成型時に接着部32から厚肉部35に流れるゴムの流動性が良くなる。
【0033】
本実施形態では、厚肉部35と接着部32との間は、ステップ状に連続して形成される構成としたが、本発明はこれに限定されない。本発明の厚肉部35と接着部32との間は、傾斜して連続して形成される構成であってもよい。厚肉部35と接着部32との間が傾斜して連続して形成されていることによって、成型時に接着部32から厚肉部35に流れるゴムの流動性が良くなる。
【0034】
図4を用いて、防振部材30の効果について説明する。図4(A)は、従来の防振部材130の薄膜部134が破断した状態を示している。図4(B)は、本実施形態の防振部材30の薄膜部34が破断した状態を示している。
【0035】
図4(A)に示すように、防振部材130では、車両10の加減速によって脚部131が伸縮するため、薄膜部134も脚部131に従って伸縮する。薄膜部134は、伸縮が繰り返されると破断に至る。破断した薄膜部134の切れ目は、さらに伸縮が繰り返されると脚部131の側面まで到達する場合がある。
【0036】
薄膜部134の切れ目が脚部131側面まで到達した状態で、車両10が加減速した場合には、薄膜部134が引っ張られ、薄膜部134の切れ目が脚部131の側面に到達した到達部Pにひずみが集中し、到達部Pが他の部位よりも早く劣化して、到達部Pを起点として脚部131に亀裂が生じる場合がある。
【0037】
図4(B)に示すように、本実施形態の防振部材30では、車両10の加減速によって脚部31が伸縮するため、薄膜部34も脚部31に従って伸縮する。薄膜部34は、伸縮が繰り返されると破断に至る。破断した薄膜部34の切れ目は、さらに伸縮が繰り返されると脚部31と厚肉部35との間に形成される隙間Sに導かれて進行する。
【0038】
隙間Sに進行した切れ目は、隙間Sに沿ってそのまま進行し、脚部31の一部(例えば上述した到達部P)で止まることなく、接着部32に到達する。これにより、車両10が加減速した場合に、脚部31にひずみが集中することなく、脚部31の亀裂の起点になることを回避している。
【0039】
本実施形態の防振部材30によれば、耐久性を向上させることができる。より詳細には、薄膜部34上に厚肉部35を形成して、脚部31と厚肉部35との間に隙間Sを形成することによって、薄膜部34が破断して生じた切れ目を隙間Sに進行させて脚部31に切れ目が到達することを回避している。
【0040】
また、本実施形態の防振部材30によれば、成型時のゴム材料の流動性を向上させることができる。例えば、薄膜部34が破断して生じた切れ目を脚部31に到達させないために、例えば薄膜部34に切れ目を誘導する凸部を形成する、または薄膜部34に切れ目を誘導する溝を形成することなどが考えられるが、成型時のゴム材料の流動性が低下することになる。これらの構成と比較して、本実施形態の防振部材30によれば、厚肉部35を接着部32と連続して形成することによって、成型時のゴム材料の流動性が低下することがない。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
10 車両、11 車体、12 フロントサイドメンバフレーム、13 サスペンションメンバ、15 ユニット、16 RHマウント、17 LHマウント、20 トルクロッド、21 外金具、21A 支持部、21B 開口部、22 内筒金具、22B 固定孔、30 防振部材、31 脚部、32 接着部、33 ストッパ部、33A 前ストッパ部、33B 後ストッパ部、34 薄膜部、35 厚肉部、36 段差部、130 防振部材、131 脚部、134 薄膜部、P 到達部、S 隙間
図1
図2
図3
図4