(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087914
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】車両用冷却装置
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20240625BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240625BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20240625BHJP
B60L 58/27 20190101ALI20240625BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240625BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20240625BHJP
B60K 11/02 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B60K1/04
B60L50/60
B60L58/26
B60L58/27
B60L58/12
B60L9/18 J
B60K11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202822
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 博信
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC01
3D038AC04
3D038AC22
3D235AA02
3D235BB36
3D235CC12
3D235CC15
3D235DD12
3D235DD35
3D235FF12
3D235FF25
3D235FF38
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BB00
5H125BC19
5H125CD06
5H125CD09
5H125DD01
5H125EE05
5H125EE15
5H125EE27
5H125FF22
5H125FF24
5H125FF27
(57)【要約】
【課題】車両の駆動ユニットで発生した熱を有効活用する。
【解決手段】車両を駆動する駆動ユニット10と、駆動ユニット10に電力を供給する電池13と、を冷却する車両用冷却装置100であって、駆動ユニット10と電池13とを直列に接続し、駆動ユニット10と電池13とに冷媒を通流させる冷却流路30を含み、電池13が駆動ユニット10の下流側に接続されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動する駆動ユニットと、前記駆動ユニットに電力を供給する電池と、を冷却する車両用冷却装置であって、
前記駆動ユニットと前記電池とを直列に接続し、前記駆動ユニットと前記電池とに冷媒を通流させる冷却流路を含み、
前記電池は前記駆動ユニットの下流側に接続されていること、
を特徴とする車両用冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用冷却装置であって、
前記駆動ユニットは、車両駆動用のモータと、前記モータに供給する電力を調整する電力制御ユニットと、を含むこと、
を特徴とする車両用冷却装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用冷却装置であって、
前記冷却流路に接続され、前記駆動ユニットをバイパスして前記冷媒を前記電池に通流させる第1バイパス流路と、
前記冷媒の通流を前記第1バイパス流路と前記駆動ユニットとで切り換える第1切り換え弁と、
車室の空調を行う空調ユニットと、
前記空調ユニットと熱交換して前記冷却流路を通流する前記冷媒を加温する熱交換器と、
前記第1切り換え弁と前記空調ユニットと前記駆動ユニットの動作を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記駆動ユニットの温度が第1設定温度よりも低い場合に、前記冷媒が前記第1バイパス流路に通流するように前記第1切り換え弁を切り換え、前記空調ユニットを駆動して前記空調ユニットと前記熱交換器によって前記冷媒を加温し、加温した前記冷媒によって前記電池を昇温すること、
を特徴とする車両用冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用冷却装置であって、
前記制御部は、前記駆動ユニットの温度が前記第1設定温度以上の場合に、前記冷媒が前記駆動ユニットに通流するように前記第1切り換え弁を切り換え、前記空調ユニットと前記駆動ユニットを駆動して前記空調ユニットと前記熱交換器と前記駆動ユニットによって前記冷媒を加温し、加温した前記冷媒によって前記電池を昇温すること、
を特徴とする車両用冷却装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の車両用冷却装置であって、
前記駆動ユニットと前記電池との間に接続されて、前記電池をバイパスして前記冷媒を通流させる第2バイパス流路と、
前記冷媒の通流を前記電池と前記第2バイパス流路とで切り換える第2切り換え弁と、
車室の空調を行う空調ユニットと、
前記空調ユニットと熱交換して前記冷却流路を通流する前記冷媒を加温する熱交換器と、
前記第2切り換え弁と前記空調ユニットと前記駆動ユニットの動作を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記車両が停車中で、前記駆動ユニットの温度が第2設定温度よりも低い場合には、前記冷媒が前記第2バイパス流路に通流するように前記第2切り換え弁を切り換え、前記空調ユニットを駆動して前記空調ユニットと前記熱交換器によって前記冷媒を加温し、加温した前記冷媒によって前記駆動ユニットを昇温すること、
を特徴とする車両用冷却装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用冷却装置であって、
前記駆動ユニットと前記空調ユニットと前記熱交換器とは前記車両のフロントコンパートメントの中に収容され、
前記フロントコンパートメントの開口を開閉するグリルシャッタを備え、
前記制御部は、前記車両が停車中で、前記駆動ユニットの温度が前記第2設定温度よりも低い場合には、前記グリルシャッタを閉止すること、
を特徴とする車両用冷却装置。
【請求項7】
請求項5に記載の車両用冷却装置であって、
前記制御部は、前記駆動ユニットの温度が前記第2設定温度以上の場合に、前記冷媒が前記電池に通流するように前記第2切り換え弁を切り換え、前記空調ユニットと前記駆動ユニットを駆動して前記空調ユニットと前記熱交換器と前記駆動ユニットによって前記冷媒を加温し、加温した前記冷媒によって前記電池を昇温すること、
を特徴とする車両用冷却装置。
【請求項8】
請求項6に記載の車両用冷却装置であって、
前記制御部は、前記駆動ユニットの温度が前記第2設定温度以上の場合に、前記冷媒が前記電池に通流するように前記第2切り換え弁を切り換え、前記空調ユニットと前記駆動ユニットを駆動して前記空調ユニットと前記熱交換器と前記駆動ユニットによって前記冷媒を加温し、加温した前記冷媒によって前記電池を昇温すること、
を特徴とする車両用冷却装置。
【請求項9】
請求項2から4のいずれか1項に記載の車両用冷却装置であって、
前記冷却流路は、前記駆動ユニットに前記冷媒を還流させる駆動ユニット還流流路と、前記電池に前記冷媒を還流させる電池還流流路と、を含み、
前記駆動ユニット還流流路と前記電池還流流路との接続モードを、前記電池が前記駆動ユニットの下流となるように前記駆動ユニットと前記電池とを直列に接続して前記駆動ユニットと前記電池とに前記冷媒を通流させる直列接続モードと、前記電池還流流路と前記駆動ユニット還流流路とを分離する流路分離モードとの間で切り換える第3切り換え弁と、
車室の空調を行う空調ユニットと、
前記空調ユニットと熱交換して前記冷却流路を通流する前記冷媒を加温する熱交換器と、
前記第3切り換え弁と前記空調ユニットと前記駆動ユニットの動作を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記車両が走行中に、前記電池の残存容量が設定容量以下となった場合に、前記第3切り換え弁を前記直列接続モードに切り換え、前記空調ユニットを駆動して前記空調ユニットと前記熱交換器と前記駆動ユニットによって前記冷媒を加温し、加温した前記冷媒によって前記電池を昇温すること、
を特徴とする車両用冷却装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両用冷却装置であって、
前記駆動ユニットと前記空調ユニットと前記熱交換器とは前記車両のフロントコンパートメントの中に収容され、
前記フロントコンパートメントの開口を開閉するグリルシャッタを備え、
前記制御部は、前記駆動ユニットの温度と前記駆動ユニットの冷却が必要となる冷却開始温度との温度差を算出し、前記温度差が所定の閾値以上の場合に、前記グリルシャッタを閉止すること、
を特徴とする車両用冷却装置。
【請求項11】
請求項2から4のいずれか1項に記載の車両用冷却装置であって、
前記冷却流路は、前記駆動ユニットに前記冷媒を還流させる駆動ユニット還流流路と、前記電池に前記冷媒を還流させる電池還流流路と、を含み、
前記駆動ユニット還流流路と前記電池還流流路との接続モードを、前記電池が前記駆動ユニットの下流となるように前記駆動ユニットと前記電池とを直列に接続して前記駆動ユニットと前記電池とに前記冷媒を通流させる直列接続モードと、前記電池還流流路と前記駆動ユニット還流流路とを分離する流路分離モードとの間で切り換える第3切り換え弁と、
前記第3切り換え弁の動作を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第3切り換え弁を前記直列接続モードに切り換えて前記駆動ユニットと前記電池とを直列に接続する前記冷却流路を構成すること、
を特徴とする車両用冷却装置。
【請求項12】
請求項5に記載の車両用冷却装置であって、
前記冷却流路は、前記駆動ユニットに前記冷媒を還流させる駆動ユニット還流流路と、前記電池に前記冷媒を還流させる電池還流流路と、を含み、
前記駆動ユニット還流流路と前記電池還流流路との接続モードを、前記電池が前記駆動ユニットの下流となるように前記駆動ユニットと前記電池とを直列に接続して前記駆動ユニットと前記電池とに前記冷媒を通流させる直列接続モードと、前記電池還流流路と前記駆動ユニット還流流路とを分離する流路分離モードとの間で切り換える第3切り換え弁と、を備え、
前記制御部は、前記第3切り換え弁の動作を調整し、
前記制御部は、前記第3切り換え弁を前記直列接続モードに切り換えて前記駆動ユニットと前記電池とを直列に接続する前記冷却流路を構成すること、
を特徴とする車両用冷却装置。
【請求項13】
請求項7に記載の車両用冷却装置であって、
前記冷却流路は、前記駆動ユニットに前記冷媒を還流させる駆動ユニット還流流路と、前記電池に前記冷媒を還流させる電池還流流路と、を含み、
前記駆動ユニット還流流路と前記電池還流流路との接続モードを、前記電池が前記駆動ユニットの下流となるように前記駆動ユニットと前記電池とを直列に接続して前記駆動ユニットと前記電池とに前記冷媒を通流させる直列接続モードと、前記電池還流流路と前記駆動ユニット還流流路とを分離する流路分離モードとの間で切り換える第3切り換え弁を備え、
前記制御部は、前記第3切り換え弁の動作を調整し、
前記制御部は、前記第3切り換え弁を前記直列接続モードに切り換えて前記駆動ユニットと前記電池とを直列に接続する前記冷却流路を構成すること、
を特徴とする車両用冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用冷却装置の構造及び制御に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリを充電する際にバッテリを昇温させる方法が提案されている。例えば、特許文献1には、バッテリの充電を開始する前にバッテリの電力でヒータとファンとを駆動し、バッテリの放電による発熱と、ヒータとファンからの温風によってバッテリを昇温させ、昇温させた状態でバッテリの充電を開始することが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、外部の充電設備から車両に供給される充電電力を、バッテリとバッテリ用のヒータに所定の分配率で分配し、バッテリの昇温率が所定値未満の場合に、ヒータへの分配率が増加するように制御し、バッテリの昇温と充電とを行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-89524号公報
【特許文献2】特開2020-195253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動車両には車両を駆動する駆動ユニットを冷却する冷却装置が備えられている。近年、この冷却装置で駆動ユニットで発生した熱の有効活用が検討されている。しかし、駆動ユニットで発生した熱の有効活用にはいまだ改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明の車両用冷却装置は、車両の駆動ユニットで発生した熱を有効活用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用冷却装置は、車両を駆動する駆動ユニットと、前記駆動ユニットに電力を供給する電池と、を冷却する車両用冷却装置であって、前記駆動ユニットと前記電池とを直列に接続し、前記駆動ユニットと前記電池とに冷媒を通流させる冷却流路を含み、前記電池は前記駆動ユニットの下流側に接続されていること、を特徴とする。
【0008】
この構成により、駆動ユニットで発生した熱でバッテリを昇温させることができ、駆動ユニットで発生した熱を有効活用できる。また、電池の温度が低い場合に、電池の温度を上昇させて電池の充放電効率を向上できる。
【0009】
本発明の車両用冷却装置において、前記駆動ユニットは、車両駆動用のモータと、前記モータに供給する電力を調整する電力制御ユニットと、を含んでもよい。
【0010】
この構成により、電動車両においてモータと電力制御ユニットの発熱を電池の昇温に活用し、電動車両の電費を向上させることができる。
【0011】
本発明の車両用冷却装置において、前記冷却流路に接続され、前記駆動ユニットをバイパスして前記冷媒を前記電池に通流させる第1バイパス流路と、前記冷媒の通流を前記第1バイパス流路と前記駆動ユニットとで切り換える第1切り換え弁と、車室の空調を行う空調ユニットと、前記空調ユニットと熱交換して前記冷却流路を通流する前記冷媒を加温する熱交換器と、前記第1切り換え弁と前記空調ユニットと前記駆動ユニットの動作を調整する制御部と、を備え、前記制御部は、前記駆動ユニットの温度が第1設定温度よりも低い場合に、前記冷媒が前記第1バイパス流路に通流するように前記第1切り換え弁を切り換え、前記空調ユニットを駆動して前記空調ユニットと前記熱交換器によって前記冷媒を加温し、加温した前記冷媒によって前記電池を昇温してもよい。
【0012】
この構成により、電池と駆動ユニットの温度が低い場合に、空調ユニットからの熱を電池に流入させ、駆動ユニットには空調ユニットからの熱を流入させないようにできる。これにより、駆動ユニットの温度が低い場合でも空調ユニットの熱により電池を短時間に昇温できる。
【0013】
本発明の車両用冷却装置において、前記制御部は、前記駆動ユニットの温度が前記第1設定温度以上の場合に、前記冷媒が前記駆動ユニットに通流するように前記第1切り換え弁を切り換え、前記空調ユニットと前記駆動ユニットを駆動して前記空調ユニットと前記熱交換器と前記駆動ユニットによって前記冷媒を加温し、加温した前記冷媒によって前記電池を昇温してもよい。
【0014】
これにより、駆動ユニットで発生した熱を電池の昇温に活用することができる。
【0015】
本発明の車両用冷却装置において、前記駆動ユニットと前記電池との間に接続されて、前記電池をバイパスして前記冷媒を通流させる第2バイパス流路と、前記冷媒の通流を前記電池と前記第2バイパス流路とで切り換える第2切り換え弁と、車室の空調を行う空調ユニットと、前記空調ユニットと熱交換して前記冷却流路を通流する前記冷媒を加温する熱交換器と、前記第2切り換え弁と前記空調ユニットと前記駆動ユニットの動作を調整する制御部と、を備え、前記制御部は、前記車両が停車中で、前記駆動ユニットの温度が第2設定温度よりも低い場合には、前記冷媒が前記第2バイパス流路に通流するように前記第2切り換え弁を切り換え、前記空調ユニットを駆動して前記空調ユニットと前記熱交換器によって前記冷媒を加温し、加温した前記冷媒によって前記駆動ユニットを昇温してもよい。
【0016】
この構成により、短時間に電池を昇温できる。
【0017】
本発明の車両用冷却装置において、前記駆動ユニットと前記空調ユニットと前記熱交換器とは前記車両のフロントコンパートメントの中に収容され、前記フロントコンパートメントの開口を開閉するグリルシャッタを備え、前記制御部は、前記車両が停車中で、前記駆動ユニットの温度が前記第2設定温度よりも低い場合には、前記グリルシャッタを閉止してもよい。
【0018】
これにより、フロントコンパートメントの中に収容されている駆動ユニットを短時間で昇温でき、駆動ユニットからの熱により電池を短時間で昇温できる。
【0019】
本発明の車両用冷却装置において、前記制御部は、前記駆動ユニットの温度が前記第2設定温度以上の場合に、前記冷媒が前記電池に通流するように前記第2切り換え弁を切り換え、前記空調ユニットと前記駆動ユニットを駆動して前記空調ユニットと前記熱交換器と前記駆動ユニットによって前記冷媒を加温し、加温した前記冷媒によって前記電池を昇温してもよい。
【0020】
この構成により、駆動ユニットで発生した熱と空調ユニットからの熱により電池を昇温させることができる。
【0021】
本発明の車両用冷却装置において、前記冷却流路は、前記駆動ユニットに前記冷媒を還流させる駆動ユニット還流流路と、前記電池に前記冷媒を還流させる電池還流流路と、を含み、前記駆動ユニット還流流路と前記電池還流流路との接続モードを、前記電池が前記駆動ユニットの下流となるように前記駆動ユニットと前記電池とを直列に接続して前記駆動ユニットと前記電池とに前記冷媒を通流させる直列接続モードと、前記電池還流流路と前記駆動ユニット還流流路とを分離する流路分離モードとの間で切り換える第3切り換え弁と、車室の空調を行う空調ユニットと、前記空調ユニットと熱交換して前記冷却流路を通流する前記冷媒を加温する熱交換器と、前記第3切り換え弁と前記空調ユニットと前記駆動ユニットの動作を調整する制御部と、を備え、前記制御部は、前記車両が走行中に、前記電池の残存容量が設定容量以下となった場合に、前記第3切り換え弁を前記直列接続モードに切り換え、前記空調ユニットを駆動して前記空調ユニットと前記熱交換器と前記駆動ユニットによって前記冷媒を加温し、加温した前記冷媒によって前記電池を昇温してもよい。
【0022】
この構成により、車両が走行中に電池を予め昇温しておくことができる。このため、車両が停止した直後から急速充電を行うことができる。
【0023】
本発明の車両用冷却装置において、前記駆動ユニットと前記空調ユニットと前記熱交換器とは前記車両のフロントコンパートメントの中に収容され、前記フロントコンパートメントの開口を開閉するグリルシャッタを備え、前記制御部は、前記駆動ユニットの温度と前記駆動ユニットの冷却が必要となる冷却開始温度との温度差を算出し、前記温度差が所定の閾値以上の場合に、前記グリルシャッタを閉止してもよい。
【0024】
これにより、フロントコンパートメントの中に収容されている駆動ユニットを短時間で昇温させ、駆動ユニットからの熱により電池を短時間で昇温できる。
【0025】
本発明の車両用冷却装置において、前記冷却流路は、前記駆動ユニットに前記冷媒を還流させる駆動ユニット還流流路と、前記電池に前記冷媒を還流させる電池還流流路と、を含み、前記駆動ユニット還流流路と前記電池還流流路との接続モードを、前記電池が前記駆動ユニットの下流となるように前記駆動ユニットと前記電池とを直列に接続して前記駆動ユニットと前記電池とに前記冷媒を通流させる直列接続モードと、前記電池還流流路と前記駆動ユニット還流流路とを分離する流路分離モードとの間で切り換える第3切り換え弁と、前記第3切り換え弁の動作を調整する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第3切り換え弁を前記直列接続モードに切り換えて前記駆動ユニットと前記電池とを直列に接続する前記冷却流路を構成してもよい。
【0026】
この構成により、駆動ユニットと電池の温度に応じて冷却流路の切り替えを行うことができる。
【0027】
本発明の車両用冷却装置において、前記冷却流路は、前記駆動ユニットに前記冷媒を還流させる駆動ユニット還流流路と、前記電池に前記冷媒を還流させる電池還流流路と、を含み、前記駆動ユニット還流流路と前記電池還流流路との接続モードを、前記電池が前記駆動ユニットの下流となるように前記駆動ユニットと前記電池とを直列に接続して前記駆動ユニットと前記電池とに前記冷媒を通流させる直列接続モードと、前記電池還流流路と前記駆動ユニット還流流路とを分離する流路分離モードとの間で切り換える第3切り換え弁と、を備え、前記制御部は、前記第3切り換え弁の動作を調整し、前記制御部は、前記第3切り換え弁を前記直列接続モードに切り換えて前記駆動ユニットと前記電池とを直列に接続する前記冷却流路を構成してもよい。
【0028】
この構成により、駆動ユニットと電池の温度に応じて冷却流路の切り替えを行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の車両用冷却装置は、車両の駆動ユニットで発生した熱を有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施形態の車両用冷却装置の構成を示す系統図である。
【
図2】実施形態の車両用冷却装置を搭載した車両の側断面図である。
【
図3】実施形態の車両用冷却装置に用いられる五方弁の接続モードと、接続モードの切り換えを示す説明図である。
【
図4】低温環境下で車両が車室内を暖房しながら走行している場合の車両用冷却装置の動作を示す系統図である。
【
図5】低温環境下で車両が始動し、車室内を暖房しながら走行を開始した直後の車両用冷却装置の動作を示す系統図である。
【
図6】低温環境下で車両が始動し、車室内を暖房しながら走行を開始した後、駆動ユニットが第1設定温度以上となった場合の車両用冷却装置の動作を示す系統図である。
【
図7】低温環境下で車両が始動し、車室内を暖房しながら走行する場合の車両用冷却装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】低温環境下で車両が始動し、車室内を暖房しながら走行する場合の駆動ユニットの温度と電池水温の時間変化とを示す図(上図)と、加温ヒータ、電池用ヒータ、ヒートポンプ回路、駆動ユニットから電池への伝達熱量の時間変化を示す図(下図)である。
【
図9】
図8に示す時刻t1と、時刻t3における電池への伝達熱量の内訳を示す図である。
【
図10】低温環境下で車両が始動した後、停車状態で車室内の暖房と電池の昇温を行う際の車両用冷却装置の動作を示す系統図である。
【
図11】低温環境下で車両が始動した後、停車状態で車室内の暖房と電池の昇温を行う際の車両用冷却装置の動作を示すフローチャートである。
【
図12】
図11に示すフローチャートの続きのフローチャートである。
【
図13】低温環境下で車両が始動した後、停車状態で車室内の暖房と電池の昇温を行う際の駆動ユニットの温度と電池水温と熱媒体の温度とフロントコンパートメント雰囲気温度の時間変化を示す図(上図)と、加温ヒータ、電池用ヒータ、ヒートポンプ回路、駆動ユニットから冷媒への伝達熱量の時間変化を示す図(下図)である。
【
図14】低温環境下で車両が走行中に電池の予熱を行う際の車両用冷却装置の動作を示すフローチャートである。
【
図15】
図14に示すフローチャートの続きのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら実施形態の車両用冷却装置100について説明する。
図1に示すように、車両用冷却装置100は、駆動ユニット10と、電池13とを冷却する装置である。車両用冷却装置100は、冷却流路30と、駆動ユニットバイパス流路45と、電池バイパス流路46と、空調ユニット50と、グリルシャッタ80と、制御部90とを含んでいる。ここで、駆動ユニット10は、モータ装置11と、電力制御ユニット12(以下、PCU12という)とを含んでいる。
【0032】
冷却流路30は、駆動ユニット10と、電池13とに冷媒を通流させる流路である。冷却流路30は、駆動ユニット側ウォータポンプ16と、PCU12と、モータ装置11と、電池用ヒータ15と、電池13と、電池側ウォータポンプ17と、チラー18と、駆動系ラジェータ14と、リザーバタンク19と、三方弁21と、五方弁22と、これらの各機器を接続する配管とで構成される。
【0033】
駆動ユニット側ウォータポンプ16は、冷却流路30を流れる冷媒を昇圧するポンプである。ここで、冷媒は、例えば、LCC等の冷却水でもよい。モータ装置11は、車両駆動用のモータとトランスアクスルとを一体に組み立てた装置である。モータ装置11の内部には、冷媒が通流してモータ装置11を冷却する内部流路(図示せず)が設けられている。モータ装置11には、例えば、モータのコイル温度を検出するモータ温度センサ23が取り付けられている。PCU12は、車両駆動用のモータに供給する電力を調整する装置である。PCU12は、例えば、昇圧コンバータとインバータとで構成されてもよい。PCU12は、冷媒が通流してPCU12を冷却する内部流路(図示せず)を備えている。PCUには、内部流路を流れる冷媒の温度を検出するPCU温度センサ24が取り付けられている。電池用ヒータ15は内部流路(図示せず)を通流する冷媒を加温し、加温した冷媒により電池13を昇温させる。電池13は、車両駆動用のモータに電力を供給する。電池13は、PCU12と同様、冷媒が通流して電池13を冷却する内部流路(図示せず)を備えている。電池側ウォータポンプ17は、冷却流路30を流れる冷媒を昇圧するポンプである。チラー18は、後で説明するヒートポンプ回路70と冷却流路30との間に跨って配置されて、ヒートポンプ回路70を流れる冷媒ガスと冷却流路30を流れる冷媒との間で熱交換を行う熱交換器である。駆動系ラジェータ14は、内部に冷媒が流れる内部流路(図示せず)を備え、冷媒と外気との間で熱交換を行い、冷媒を冷却する。リザーバタンク19は、駆動ユニット側ウォータポンプ16に供給する冷媒を貯留する。
【0034】
三方弁21は、リザーバタンク19と駆動系ラジェータ14の間に接続されている。三方弁21は、第1ポート21a、第2ポート21b、第3ポート21cの3つのポートを備えている。第1ポート21aは冷媒入口で第2ポート21bと第3ポート21cは冷媒出口である。三方弁21は、第1ポート21aから流入した冷媒の流れを第2ポート21bと第3ポート21cとの間で切り換える第1切り換え弁である。また、五方弁22は、モータ装置11と電池用ヒータ15の間、及びチラー18と駆動系ラジェータ14の間に接続されている。五方弁22は、第1ポート22aから第5ポート22eの5つのポートを備えおり、各ポートの接続をいろいろな接続モードで切り換えることができる。五方弁22の接続モードについては、後で、
図3を参照して説明する。五方弁22は、接続モードに応じて、第2切り換え弁、又は第3切換え弁を構成する。
【0035】
冷却流路30の各機器を接続する配管は、駆動ユニット側ポンプ出口管32と、PCU出口管33と、モータ装置出口管34と、電池用ヒータ入口管35と、電池用ヒータ出口管36と、電池出口管37と、電池側ウォータポンプ入口管38と、電池側ウォータポンプ出口管39と、チラー出口管41と、駆動系ラジェータ入口管42と、駆動系ラジェータ出口管43と、リザーバタンク入口管44と、駆動ユニット側ポンプ入口管31とで構成される。
【0036】
駆動ユニット側ポンプ出口管32は、駆動ユニット側ウォータポンプ16の出口とPCU12の内部流路の入口とを接続する。PCU出口管33は、PCU12の内部流路の出口とモータ装置11の内部流路の入口とを接続する。モータ装置出口管34は、モータ装置11の内部流路と、五方弁22の第1ポート22aとの間を接続する。電池用ヒータ入口管35は、五方弁22の第2ポート22bと電池用ヒータ15の内部流路の入口とを接続する。電池用ヒータ出口管36は、電池用ヒータ15の内部流路の出口と電池13の内部流路の入口とを接続する。電池出口管37は、電池13の内部流路の出口と電池側ウォータポンプ入口管38の上流端とを接続する。電池出口管37には、電池13の出口の冷媒温度を検出する電池水温センサ25が取り付けられている。電池側ウォータポンプ入口管38の下流端は、電池側ウォータポンプ17の入口に接続されている。電池側ウォータポンプ出口管39は、電池側ウォータポンプ17の出口とチラー18の冷媒の内部流路の入口とを接続する。チラー出口管41は、チラー18の冷媒の内部流路の出口と五方弁22の第3ポート22cとを接続する。駆動系ラジェータ入口管42は、五方弁22の第4ポート22dと駆動系ラジェータ14の内部流路の入口とを接続する。駆動系ラジェータ出口管43は、駆動系ラジェータ14の内部流路の出口と三方弁21の第1ポート21aとを接続する。リザーバタンク入口管44は、三方弁21の第2ポート21bとリザーバタンク19とを接続する。駆動ユニット側ポンプ入口管31は、リザーバタンク19と駆動ユニット側ウォータポンプ16の入口とを接続する。
【0037】
駆動ユニットバイパス流路45は、三方弁21の第3ポート21cとモータ装置出口管34とを接続する。駆動ユニットバイパス流路45は、駆動ユニット10をバイパスして冷媒を電池13に通流させる流路である。駆動ユニットバイパス流路45は、第1バイパス流路を構成する。
【0038】
電池バイパス流路46は、五方弁22の第5ポート22eと電池側ウォータポンプ入口管38の上流端とを接続する。電池バイパス流路46は、駆動ユニット10と電池13との間に接続されて、電池13をバイパスするように冷媒を通流させる流路である。電池バイパス流路46は、第2バイパス流路を構成する。
【0039】
空調ユニット50は、ヒータ回路60と、ヒートポンプ回路70とを含んでいる。ヒータ回路60は加温ヒータ51により熱媒体を加温して車室201(
図2参照)の暖房を行う回路である。ヒートポンプ回路70は、コンプレッサ57で熱媒体を圧縮し、車室201の冷房又は暖房を行う回路である。尚、ヒートポンプ回路70により車室201の冷房を行う場合には、ヒータ回路60は、ヒートポンプ回路70を通流する温度の高い冷媒ガスの熱を外部に放出するように動作する。
【0040】
ヒータ回路60は、ヒータ側ウォータポンプ55と、水冷コンデンサ58と、加温ヒータ51と、ヒータコア52と、リザーバタンク54と、空調系ラジェータ53と、三方制御弁56と、これらの各機器を接続する配管とで構成される。
【0041】
ヒータ側ウォータポンプ55は、ヒータ回路60を流れる熱媒体を昇圧するポンプである。ここで、熱媒体は冷却水でもよい。水冷コンデンサ58は、ヒータ回路60と後で説明はするヒートポンプ回路70とに跨って配置され、ヒータ回路60を流れる熱媒体と、ヒートポンプ回路70を流れる冷媒ガスとの間で熱交換を行う熱交換器である。水冷コンデンサ58は、熱媒体が通流する内部流路(図示せず)と冷媒ガスの通流する内部流路と(図示せず)を備えている。加温ヒータ51は、電池13から供給される電力で動作する電気ヒータと熱媒体が通流する内部流路と(図示せず)を備えている。加温ヒータ51は電気ヒータによって内部流路を通流する熱媒体を加温する。ヒータコア52は、内部に熱媒体が通流する内部流路を備え、内部流路に加温された熱媒体を通流させることにより外気の温度を昇温して、車室201に送風する温風とする。リザーバタンク54は、熱媒体を貯留するタンクである。空調系ラジェータ53は、内部に熱媒体が通流する内部流路(図示せず)を備え、熱媒体と外気との間で熱交換を行い、熱媒体を冷却する。また、空調系ラジェータ53と駆動系ラジェータ14とは伝熱部材20で接続されており、相互に熱移動が可能となっている。三方制御弁56は、第1ポート56a、第2ポート56b、第3ポート56cの3つのポートを備えている。第1ポート56aは熱媒体の入口である。第2ポート56b、第3ポート56cは熱媒体の出口である。三方制御弁56は、第1ポート56aから流入した熱媒体の第2ポート56bからの流出流量と第3ポート56cからの流出流量の比率を調整する。三方制御弁56は、ラジェータ分流モードとラジェータ遮断モードとの間で切り換えられる。ラジェータ分流モードとは、第1ポート56aから流入した熱媒体を第2ポート56b、第3ポート56cに所定の割合で通流させる制御モードである。ラジェータ遮断モードとは、三方制御弁56の第2ポート56bからの熱媒体の流出流量と、三方制御弁56の第3ポート56cからの熱媒体の流出流量との比率を100:0として空調系ラジェータ53への熱媒体の通流を遮断するモードである。
【0042】
ヒータ回路60の各機器を接続する配管は、ヒータ側ポンプ出口管62と、水冷コンデンサ出口管63と、加温ヒータ出口管64と、空調系ラジェータ入口管65と、空調系ラジェータ出口管66と、ヒータ側ポンプ入口管61と、ヒータコア入口管67と、ヒータコア出口管68と、で構成されている。
【0043】
ヒータ側ポンプ出口管62は、ヒータ側ウォータポンプ55の出口と水冷コンデンサ58の熱媒体が通流する内部流路の入口とを接続する。水冷コンデンサ出口管63は、水冷コンデンサ58の熱媒体が通流する内部流路の出口と加温ヒータ51の内部流路の入口とを接続する。加温ヒータ出口管64は、加温ヒータ51の内部流路の出口と三方制御弁56の第1ポート56aとを接続する。空調系ラジェータ入口管65は、三方制御弁56の第3ポート56cと空調系ラジェータ53の内部流路の入口とを接続する。空調系ラジェータ出口管66は、空調系ラジェータ53の内部流路の出口とリザーバタンク54とを接続する。ヒータ側ポンプ入口管61はリザーバタンク54とヒータ側ウォータポンプ55の入口とを接続する。ヒータコア入口管67は、三方制御弁56の第2ポート56bとヒータコア52の内部流路の入口とを接続する。ヒータコア入口管67には、ヒータコア52の入口の熱媒体の温度を検出するヒータコア入口水温センサ26が取り付けられている。
【0044】
ヒートポンプ回路70は、コンプレッサ57と、水冷コンデンサ58と、エバポレータ59と、チラー18と、エバポレータ側膨張弁78と、チラー側膨張弁79と、これらの各機器を接続する配管とで構成される。
【0045】
コンプレッサ57は、ヒートポンプ回路70を通流する冷媒ガスを圧縮する。水冷コンデンサ58は、内部に冷媒ガスが通流する内部流路(図示せず)を備え、圧縮されて温度の高くなった冷媒ガスとヒータ回路60を通流する熱媒体との間で熱交換を行い、冷媒ガスを冷却すると共に熱媒体を加温する。エバポレータ側膨張弁78は、高圧低温で液状の冷媒ガスを減圧膨張させる。エバポレータ59は、液状の冷媒ガスをと外気とを熱交換させて外気を冷却し車室201に供給する冷風とする。また、熱交換により液状の冷媒ガスは蒸発して気体となる。チラー側膨張弁79は、エバポレータ側膨張弁78と同様、高圧低温で液状の冷媒ガスを減圧膨張させる。チラー18は、内部に冷媒ガスが通流する内部流路(図示せず)を備え、膨張して温度の低下した冷媒ガスと冷却流路30を通流する冷媒との間で熱交換を行い、冷却流路30を通流する冷媒を冷却する。
【0046】
ヒートポンプ回路70の各機器を接続する配管は、コンプレッサ出口管71と、水冷コンデンサ出口管72と、エバポレータ側膨張弁出口管73と、エバポレータ出口管74と、チラー側膨張弁入口管75と、チラー側膨張弁出口管76と、チラー出口管77とで構成される。
【0047】
コンプレッサ出口管71は、コンプレッサ57の冷媒ガスの吐出口と水冷コンデンサ58の冷媒ガスの通流する内部流路(図示せず)の入口とを接続する。水冷コンデンサ出口管72は、水冷コンデンサ58の冷媒ガスが通流する内部流路の出口とエバポレータ側膨張弁78とを接続する。チラー側膨張弁入口管75は、水冷コンデンサ出口管72とチラー側膨張弁79を接続する。チラー側膨張弁出口管76は、チラー側膨張弁79とチラー18の冷媒ガスが通流する内部流路の入口とを接続する。チラー出口管77は、チラー18の冷媒ガスが通流する内部流路の出口とコンプレッサ57の冷媒のガス吸込み口とを接続する。
【0048】
図2に示す様に、グリルシャッタ80は、車両200のフロントコンパートメント202の前方に配置されたフロントグリル203を開閉する。フロントコンパートメント202は、車両200の前方に配置された空間であり、内部にモータ装置11、PCU12、空調ユニット50、駆動系ラジェータ14、空調系ラジェータ53が収容されている。グリルシャッタ80が開となると外気がフロントグリル203を通してフロントコンパートメント202の中に配置されている空調系ラジェータ53、駆動系ラジェータ14に流入し、冷却流路30を通流する冷媒、ヒータ回路60を通流する熱媒体を冷却する。グリルシャッタ80が閉状態の場合には、外気はフロントコンパートメント202の中には流入しない。
【0049】
尚、
図2に示すように、電池13は、車両200のフロアパネル204の下側に配置されている。また、車室201とフロントコンパートメント202とはダッシュパネル205で仕切られており、フロントコンパートメント202の中に配置された空調ユニット50はダクトが車室201に向かって延び、車室201に空調空気を供給する。
【0050】
図1に戻って、制御部90は、内部に情報処理を行うプロセッサであるCPU91と、制御プログラムやデータを格納するメモリ92を備えるコンピュータである。制御部90の動作は、CPU91がメモリ92に格納した制御プログラムを実行することにより実現される。モータ装置11、PCU12、駆動ユニット側ウォータポンプ16、三方弁21、五方弁22、電池用ヒータ15、電池側ウォータポンプ17、加温ヒータ51、三方制御弁56、コンプレッサ57、エバポレータ側膨張弁78、チラー側膨張弁79、グリルシャッタ80は、それぞれ制御部90からの指令で動作する。
【0051】
また、モータ温度センサ23、PCU温度センサ24、電池水温センサ25、ヒータコア入口水温センサ26の検出した各温度データは、制御部90に入力される。
【0052】
次に
図3を参照しながら、五方弁22の接続モードについて説明する。五方弁22は、
図3の左上の図に示す流路分離モードと、
図3の右上の図に示す直列接続モードと、
図3の下の図に示す電池バイパス直列接続モードの3つの接続モードで動作する。
【0053】
図3の左上の図に流路分離モードを示す、流路分離モードは、駆動ユニット10に冷媒を還流させる駆動ユニット還流流路30Aと、電池13に冷媒を還流させる電池還流流路30Bとに冷却流路30を分離するモードである。
【0054】
図3の左上の図に示すように、流路分離モードでは、第1ポート22aと第4ポート22dとが連通し、第2ポート22bと第3ポート22cとが連通し、第5ポート22eが閉止される。また、流路分離モードでは、第1ポート22aと第2ポート22bとの間、第3ポート22cと第4ポート22dとの間も閉止される。これによって、
図3の左上の図中に太矢印で示す様に、駆動ユニット側ウォータポンプ16から吐出された冷媒は、駆動ユニット10、第1ポート22a、第4ポート22d、駆動系ラジェータ14、三方弁21、駆動ユニット側ウォータポンプ16のように通流する。この流路は、駆動ユニット10に冷媒を還流させる駆動ユニット還流流路30Aを構成する。また、電池側ウォータポンプ17から吐出された冷媒は、第3ポート22c、第2ポート22b、電池13、電池側ウォータポンプ17のように通流する。この流路は、電池13に冷媒を還流させる電池還流流路30Bを構成する。このように、流路分離モードは、冷却流路30を駆動ユニット還流流路30Aと電池還流流路30Bとに分離するモードである。
【0055】
図3の右上の図は直列接続モードを示す。直列接続モードは、駆動ユニット10と電池13とを直列に接続して駆動ユニット10と電池13とに冷媒を通流させるモードである。
【0056】
図3の右上の図に示すように、直列接続モードでは、第1ポート22aと第2ポート22bとが連通し、第3ポート22cと第4ポート22dとが連通し、第5ポート22eが閉止される。また、直列接続モードでは、流路分離モードでは連通していた第1ポート22aと第4ポート22dとの間、第2ポート22bと第3ポート22cとの間も閉止される。これによって、
図3の右上の図中に太矢印で示す様に、駆動ユニット側ウォータポンプ16から吐出された冷媒は、駆動ユニット10、第1ポート22a、第2ポート22b、電池13、電池側ウォータポンプ17、第3ポート22c、第4ポート22d、駆動系ラジェータ14、三方弁21、駆動ユニット側ウォータポンプ16のように通流する。この流路は、電池13が駆動ユニット10の下流となるように駆動ユニット10と電池13とを直列に接続して駆動ユニット10と電池13とに冷媒を通流させる冷却流路30を構成する。このように、直列接続モードは、駆動ユニット還流流路30Aと電池還流流路30Bとを直列に接続するモードである。
【0057】
図3の下の図は、電池バイパス直列接続モードを示す。電池バイパス直列接続モードは、駆動ユニット10と、電池バイパス流路46とを直列に接続し、電池13をバイパスして駆動ユニット10に冷媒を通流させるモードである。
【0058】
図3の下の図に示すように、電池バイパス直列接続モードでは、第1ポート22aと第5ポート22eとが連通し、第2ポート22bが閉止され、第3ポート22cと第4ポート22dとが連通する。また、直列接続モードと同様、第1ポート22aと第4ポート22dとの間、第2ポート22bと第3ポート22cとの間も閉止される。これによって、
図3の下の図中に太矢印で示す様に、駆動ユニット側ウォータポンプ16から吐出された冷媒は、駆動ユニット10、第1ポート22a、第5ポート22e、電池バイパス流路46、電池側ウォータポンプ17、第3ポート22c、第4ポート22d、駆動系ラジェータ14、三方弁21、駆動ユニット側ウォータポンプ16のように通流する。この流路は、駆動ユニット10と電池バイパス流路46とを直列に接続し、電池13をバイパスして駆動ユニット10に冷媒を通流させる。
【0059】
図3中に示す白抜き矢印95のように、流路分離モードと直列接続モードの間で接続モードが切り換えられる場合には、五方弁22は、第3切り換え弁として機能する。また、
図3中に示す白抜き矢印96のように、直列接続モードと電池バイパス直列接続モードとの間で接続モードが切り換えられる場合には、五方弁22は、第2切り換え弁として機能する。
【0060】
次に、
図4を参照しながら、低温環境下で車両200が車室201を暖房しながら走行している場合の車両用冷却装置100の動作について説明する。
図4に示す様に制御部90は、五方弁22を流路分離モードに切り換えている。また、制御部90は、第1ポート21aと第2ポート21bとが通流するように三方弁21を駆動ユニット側に切り換えている。更に、制御部90は、三方制御弁56をラジェータ遮断モードに切り換えて、空調系ラジェータ53への熱媒体の通流を遮断している。この場合、ヒータ側ウォータポンプ55から吐出された熱媒体はすべてヒータコア52に通流する。また、制御部90は、コンプレッサ57を運転し、エバポレータ側膨張弁78を閉とし、チラー側膨張弁79を開としている。更に、制御部90は、グリルシャッタ80を開としている。
【0061】
これにより、
図4中の太矢印に示す様に、駆動ユニット側ウォータポンプ16、PCU12、モータ装置11、五方弁22の第1ポート22a、五方弁22の第4ポート22d、駆動系ラジェータ14、三方弁21、リザーバタンク19に冷媒が通流する駆動ユニット還流流路30Aが形成される。また、電池側ウォータポンプ17、チラー18、第3ポート22c、第2ポート22b、電池13、電池側ウォータポンプ17に冷媒が通流する電池還流流路30Bが形成される。また、ヒータ回路60の熱媒体は、
図4中の二重線の破線矢印で示す様に、ヒータ側ウォータポンプ55、水冷コンデンサ58、加温ヒータ51、三方制御弁56、ヒータコア52、リザーバタンク54に通流する。また、ヒートポンプ回路70の冷媒ガスは、
図4中の破線の太矢印で示す様に、コンプレッサ57、水冷コンデンサ58、チラー側膨張弁79、チラー18に通流する。
【0062】
駆動ユニット還流流路30Aの冷媒は、駆動ユニット側ウォータポンプ16で加圧されてPCU12、モータ装置11を通流し、PCU12、モータ装置11を冷却する。PCU12、モータ装置11を通流して温度の上昇した冷媒は、五方弁22の第1ポート22a、第4ポート22dを通って駆動系ラジェータ14に流入する。グリルシャッタ80が開となっているので、冷媒は、駆動系ラジェータ14を通流する外気によって冷却されて温度が低下する。温度の下がった冷媒は、三方弁21、リザーバタンク19を通って駆動ユニット側ウォータポンプ16に還流する。このように、駆動ユニット還流流路30Aは、冷媒を還流させることにより、モータ装置11、PCU12の冷却を行う。
【0063】
ヒータ回路60の熱媒体は、加温ヒータ51で加温される。加温されて温度の上昇した熱媒体はヒータコア52に流入して車室201の空気と熱交換する。そして、熱媒体は、車室201の空気の温度を上昇させる。熱交換で温度の下がった熱媒体は、水冷コンデンサ58を通って加温ヒータ51に循環する。ヒートポンプ回路70のコンプレッサ57は冷媒ガス圧縮する。圧縮により温度の高くなった冷媒ガスは水冷コンデンサ58に流入し、ヒータ回路60を流れる低温の熱媒体と熱交換してヒータ回路60を流れる熱媒体を加温する。水冷コンデンサ58での熱交換により温度の下がった冷媒ガスは、チラー側膨張弁79を通ってチラー18に流入し、チラー18で電池還流流路30Bを流れる冷媒と熱交換してコンプレッサ57に戻る。チラー18での冷媒と冷媒ガスとの熱交換は、いずれか温度の高い方から低い方への熱移動となる。電池還流流路30Bの冷媒は、チラー18での熱交換により加温又は冷却され、五方弁22の第3ポート22c、第2ポート22bから電池用ヒータ15に流入する。外気温度が低い場合には、冷媒は、電池用ヒータ15によって加温されて電池13に流入する。電池13の温度は、電池用ヒータ15の冷媒の加温熱量と、チラー18での交換熱量により、車両200の走行に必要な温度に保持される。
【0064】
次に、
図5から
図9を参照しながら、低温環境下で車両200が始動し、走行を開始した初期段階における車両用冷却装置100の動作について説明する。低温環境下では、電池13の温度が低く充放電効率が低くなる。このため、電池13の充放電効率が高くなる温度まで電池13の温度を昇温することが必要となる。この目的のために、車両用冷却装置100は、電池13を通流する冷媒の温度を上昇させる電池用ヒータ15を備えている。しかし、電池用ヒータ15によって電池13を昇温すると、車両200の電費が低下してしまう。ここで、電費とは、車両200の単位電力量当たりの走行距離である。そこで、本実施形態の車両用冷却装置100は、駆動ユニット10の自己発熱量を電池13の昇温に活用し、低温環境下での車両200の電費を向上させる。
【0065】
制御部90は、
図7のステップS101で電池13の昇温が必要かどうかを判断する。ここで、昇温が必要かどうかは、電池13が低温のために電池13の充放電効率が低下しているかどうかで判断してもよいし、電池13が低温のために出力制限が必要となっているかで判断してもよい。制御部90は、
図7のステップS101でYESと判断した場合には、
図7のステップS102に進む。一方、
図7のステップS101でNOと判断した場合には、制御部90は、電池13の昇温処理を行わずに走行を続ける。
【0066】
制御部90は、
図7のステップS102で五方弁22を直列接続モードに切り換える。また、制御部90は、
図7のステップS103で三方制御弁56をラジェータ分流モードに切り換える。ここで、ラジェータ分流モードとは、先に説明したように、第1ポート56aから流入した熱媒体を第2ポート56b、第3ポート56cに所定の割合で通流させる制御モードである。これにより、加温ヒータ51で加温された熱媒体の一部は、第2ポート56bからヒータコア52を通ってリザーバタンク54に流れる。他の一部は、第3ポート56cから空調系ラジェータ53を通ってリザーバタンク54に流れる。
【0067】
制御部90は、五方弁22の切り換えと、三方制御弁56の制御モードを切り換えたら、
図7のステップS104に進んで、モータ温度センサ23とPCU温度センサ24により、モータ装置11の温度とPCU24の温度を検出する。モータ装置11の温度とPCU24の温度は、駆動ユニット10の温度を構成する。
【0068】
制御部90は、
図7のステップS105に進んで、モータ装置11の温度とPCU12の温度が第1設定温度よりも低いかどうかを判断する。ここで、第1設定温度は、モータ装置11、又はPCU12の発熱により電池13を昇温できる温度で、且つ電池水温の目標温度よりも高い温度である。例えば、低温環境下ではモータ装置11の内部のオイルは固まった状態となっており、モータ装置11の自己発熱による熱を冷媒に効率的に伝達することができない。モータ装置11の自己発熱でオイルが液状になりモータ装置11の内部を循環できるようになると、モータ装置11の自己発熱による熱を効果的に冷媒に伝達することができる。このため、モータ装置11のオイルが循環できるような温度で、電池水温の目標温度よりも高い温度を第1設定温度としてもよい。また、第1設定温度は、モータ装置11、PCU12で別々の値に設定してもよいし、同一の値としてもよい。
【0069】
モータ装置11の温度とPCU12の温度が第1設定温度よりも低い場合には、モータ装置11、PCU12に冷媒を通流させると冷媒の温度が低下してしまい、冷媒を電池13に通流させても電池13を短時間に昇温することができない。そこで、制御部90は、
図7のステップS105でYESと判断した場合には、
図7のステップS106に進んで三方弁21をバイパス側に切り換える。ここで、バイパス側に切り換えるとは、第1ポート21aと第3ポート21cを連通させ、第1ポート21aから流入した冷媒を第3ポート21cから駆動ユニットバイパス流路45に流出させるように三方弁21を切り換えることである。この際、第2ポート21bは閉止される。そして、制御部90は、
図7のステップS107に進んで、電池用ヒータ15をオンとする。
【0070】
このように、五方弁22を直列接続モードに切り換え、三方弁21をバイパス側に切り換えると、
図5中の太矢印に示す様に、冷却流路30の冷媒は、電池側ウォータポンプ17、チラー18、五方弁22、駆動系ラジェータ14、三方弁21に通流した後、駆動ユニットバイパス流路45を通ってモータ装置出口管34に流れる。その後、モータ装置出口管34から五方弁22、電池用ヒータ15、電池13に通流する。電池用ヒータ15がオンとなっているので、冷却流路30の冷媒は電池用ヒータ15により加温される。そして、温度の高くなった冷媒が電池13の内部流路を通流することにより電池13が昇温される。
【0071】
また、車両200が低温環境下で始動し、暖房がオンになっているので、制御部90は加温ヒータ51をオンとしている。また、低温環境下の始動では、制御部90は、グリルシャッタ80を閉としているので、空調系ラジェータ53、駆動系ラジェータ14には外気は導入されない。
【0072】
制御部90が三方制御弁56をラジェータ分流モードに切り換えると、
図5中の二重線の破線矢印で示す様に、加温ヒータ51で加温された熱媒体は、一部がヒータコア52に通流して車室201の空気を加温し、他の一部は空調系ラジェータ53に通流する。空調系ラジェータ53と駆動系ラジェータ14とは伝熱部材20で接続されている。外気が導入されないので、空調系ラジェータ53の内部流路を流れる加温された熱媒体は、伝熱部材20を介して駆動系ラジェータ14の内部流路を流れる冷媒と熱交換し、冷媒を加温する。加温された冷却流路30の冷媒は、三方弁21、五方弁22を通って電池13の内部流路を通流して電池13を効率的に加温する。電池13の内部流路を通流して温度が低下した冷媒は、電池側ウォータポンプ17で昇圧され、五方弁22から駆動系ラジェータ14に還流する。このように、電池13は、車室201の暖房を行う加温ヒータ51の熱を利用して昇温される。
【0073】
また、制御部90がコンプレッサ57を運転し、エバポレータ側膨張弁78を閉とし、チラー側膨張弁79を開とすると、
図5中の破線の太矢印で示す様に、ヒートポンプ回路70の冷媒ガスは、コンプレッサ57、水冷コンデンサ58、チラー側膨張弁79、チラー18に通流する。コンプレッサ57により加圧され、温度の上昇した冷媒ガスは、水冷コンデンサ58でヒータ回路60を通流する熱媒体と熱交換し、熱媒体の温度を上昇させる。温度の上昇した熱媒体の一部は、空調系ラジェータ53、伝熱部材20を介して駆動系ラジェータ14の内部流路を通流する冷媒の温度を上昇させる。このように、制御部90は、コンプレッサ57を駆動することにより、冷却流路30の冷媒の温度を昇温させる。
【0074】
以上説明したように、車両200の始動後に上記のように各弁を切り換えて
図5に示すような流路構成とすると共に、電池用ヒータ15、加温ヒータ51をオンとし、コンプレッサ57を運転した場合、電池用ヒータ15からの熱量と、加温ヒータ51からの熱量と、コンプレッサ57からの熱量により、冷却流路30の冷媒を加温し、加温した冷媒で電池13を昇温させることができる。この際、三方弁21がバイパス側に切り換えられているので、冷媒は駆動ユニット10を通流しない。このため、加温ヒータ51からの熱量とコンプレッサ57からの熱量は専ら電池13の昇温に用いられ、電池13は短時間で昇温される。
【0075】
制御部90は、
図7のステップS108で駆動ユニット10の温度を検出して
図7のステップS109に進み、駆動ユニット10の温度が第1設定温度以上となったかを判断する。そして、制御部90は、
図7のステップS109でNOと判断した場合には、
図5に示す流路構成で電池用ヒータ15をオンとした運転を継続し、電池13を昇温させていく。
【0076】
車両200は走行中であるから、モータ装置11、PCU12は伝熱抵抗等により発熱している。そして、モータ装置11の温度或いはPCU12の温度が第1設定温度以上となると、モータ装置11、PCU12の発熱により冷媒を加温できるようになる。そこで、制御部90は、
図7のステップS109でYESと判断した場合には、
図7のステップS110に進んで三方弁21を駆動ユニット側に切り換えると共に、電池用ヒータ15をオフにする。ここで、三方弁21を駆動ユニット側に切り換えるとは、第1ポート21aと第2ポート21bを連通させ、第1ポート21aから流入した冷媒を第2ポート21bから駆動ユニット10に流出させるように三方弁21を切り換えることである。この際、第3ポート21cは閉止される。
【0077】
上記のように、三方弁21を駆動ユニット側に切り換えると、
図6中の太矢印に示す様に、冷却流路30の冷媒は、駆動ユニット側ウォータポンプ16、PCU12、モータ装置11、五方弁22、電池用ヒータ15、電池13、電池側ウォータポンプ17、チラー18、五方弁22、駆動系ラジェータ14、三方弁21、リザーバタンク19に通流する。電池13から流出した低温の冷媒は、電池側ウォータポンプ17によって加圧されて駆動系ラジェータ14の内部流路に流入する。そして、冷媒は、駆動系ラジェータ14の内部流路を通流することにより加温ヒータ51からの熱量と、コンプレッサ57からの熱量により加温される。加温された冷媒は、駆動ユニット側ウォータポンプ16によって加圧されてPCU12、モータ装置11に流入する。駆動ユニット10の温度が第1設定温度以上となっているので、PCU12の内部流路、モータ装置11の内部流路に通流した冷媒は、PCU12、モータ装置11により更に加温されて電池13に流入する。そして、加温された冷媒は電池13に還流して電池13を昇温させる。
【0078】
このように、車両用冷却装置100では、駆動ユニット10の温度が第1設定温度以上の場合には、加温ヒータ51からの熱量と、コンプレッサ57からの熱量に加えてモータ装置11、PCU12の発熱熱量により電池13の昇温を行う。
【0079】
また、制御部90は、
図7のステップS105でNOと判断した場合には、
図7のステップS110に進んで三方弁21を駆動ユニット側に切り換えると共に、電池用ヒータ15をオフとして、加温ヒータ51からの熱量とコンプレッサ57からの熱量と駆動ユニット10の発熱により電池13を昇温する。
【0080】
制御部90は、
図7のステップS111で、電池水温センサ25により電池水温を検出し、モータ温度センサ23とPCU温度センサ24によりモータ装置11の温度、PCU12の温度を検出する。モータ装置11の温度、PCU12の温度は駆動ユニット10の温度である。そして、制御部90は、
図7のステップS112で、電池水温が目標温度に達したか、又は駆動ユニット10の温度が冷却開始温度に達したかを判断する。制御部90は、
図7のステップS112でNOと判断した場合には、
図7のステップS111に戻って電池13の昇温を継続する。
【0081】
そして、電池水温が目標温度に達した場合には、それ以上電池13の昇温が必要なくなる。一方、駆動ユニット10の温度が冷却開始温度に達した場合には、電池13の昇温よりも駆動ユニット10の冷却を優先させる必要がある。
【0082】
そこで、制御部90は、
図7のステップS112でYESと判断した場合には、
図7のステップS113に進んで五方弁22を流路分離モードに切り換える。そして、制御部90は、
図7のステップS114に進んで、三方制御弁56をラジェータ遮断モードに切り換える。先に説明したように、ラジェータ遮断モードは、三方制御弁56の第2ポート56bからの熱媒体の流出流量と、三方制御弁56の第3ポート56cからの熱媒体の流出流量との比率が100:0として空調系ラジェータ53への熱媒体の通流を遮断するモードである。
【0083】
このように、五方弁22と、三方制御弁56を切り換えると、冷却流路30は、先に
図4を参照して説明したように、駆動ユニット還流流路30Aと電池還流流路30Bとに分離される。そして、駆動ユニット側ウォータポンプ16から吐出された冷媒は、PCU12、モータ装置11、駆動系ラジェータ14を還流する。また、制御部90は、グリルシャッタ80を開とする。これにより、モータ装置11、PCU12を通流して温度の上昇した冷媒は、駆動系ラジェータ14で冷却されてモータ装置11、PCU12に還流し、モータ装置11、PCU12を冷却する。そして、
図4を参照して説明したような流路構成で走行を継続する。
【0084】
また、電池側ウォータポンプ17から吐出された冷媒は、電池用ヒータ15と電池13とチラー18を還流する。電池水温が目標温度に達していない場合には、制御部90、電池用ヒータ15をオンとして電池13の昇圧を継続する。一方、電池13の温度が目標温度に達している場合には、制御部90は、電池用ヒータ15をオフのままとする。
【0085】
次に
図8、9を参照しながら、車両用冷却装置100が上記のように動作した際の電池用ヒータ15と、加温ヒータ51と、コンプレッサ57からそれぞれ電池13に伝達される熱量の時間変化と、電池水温、駆動ユニット10の温度の時間変化について説明する。
【0086】
図8の上のグラフ中の破線a1は、モータ温度センサ23、PCU温度センサ24によって検出した駆動ユニット10の温度の時間変化を示す。実線b1は電池水温センサ25で検出した電池水温の時間変化を示す。また、
図8の下のグラフ中の実線c1は、加温ヒータ51から熱媒体と冷媒とを介して電池13に伝達される熱量の変化を示す。破線d1は、電池用ヒータ15から冷媒を介して電池13に伝達される熱量の変化を示す。一点鎖線e1は、コンプレッサ57から冷媒ガスと熱媒体と冷媒とを介して電池13に伝達される熱量の変化を示す。二点鎖線f1は、モータ装置11とPCU12で構成される駆動ユニット10から冷媒を介して電池13に伝達される熱量を示す。また、
図8において、時刻t0は車両200が始動した時刻を示す。また、時刻t2は、駆動ユニット10の温度が第1設定温度に達する時刻である。
【0087】
図8の下のグラフ中の実線c1に示す様に、加温ヒータ51から電池13に伝達される熱量は、車両200が始動し、加温ヒータ51がオンとなる時刻t0から次第に大きくなっていく。そして、電池13の温度がある程度上昇した時刻t1以降は、加温ヒータ51から電池13に伝達される熱量は次第に低下する。これは、始動初期に制御部90が加温ヒータ51の出力を大きくして電池水温を急速に上昇させ、電池水温が上昇を始めた後は電池水温の上昇レートを保てる程度に加温ヒータ51の出力を低減するためである。そして、二点鎖線f1で示す駆動ユニット10から伝達される熱量が一定になる時刻t3以降は、加温ヒータ51から電池13に伝達される熱量も熱量略一定となる。これにより、
図8の上の図の実線b1で示す電池水温は一定のレートで上昇していく。
【0088】
図8の下のグラフ中の破線d1に示す様に、電池用ヒータ15から電池13に伝達される熱量は、車両200が始動し、電池用ヒータ15がオンとなる時刻t0から次第に大きくなっていく。そして、電池13の温度がある程度上昇した時刻t1以降は、電池用ヒータ15から電池13に伝達される熱量は次第に低下する。これは、始動初期に制御部90が電池用ヒータ15の出力を大きくして電池水温を急速に上昇させ、電池水温が上昇を始めた後は電池水温の上昇レートを保てる程度に電池用ヒータ15の出力を低減するためである。そして、駆動ユニット10の温度が第1設定温度に達する時刻t2に電池用ヒータ15がオフとなると、電池用ヒータ15から電池13に伝達される熱量はゼロとなる。
【0089】
図8の下のグラフ中の一点鎖線e1に示す様に、コンプレッサ57から電池13に伝達される熱量は、車両200が始動し、コンプレッサ57がオンとなる時刻t0から次第に大きくなっていく。そして、電池13の温度がある程度上昇した時刻t1以降は、コンプレッサ57から電池13に伝達される熱量は略一定となる。
【0090】
図8の下のグラフ中の二点鎖線f1に示すように、時刻t0から時刻t2の間は駆動ユニット10には冷媒が流れないので、駆動ユニット10から電池13に伝達される熱量はゼロとなっている。時刻t2に三方弁21が駆動ユニット側に切り換わり、駆動ユニット10に冷媒が通流を開始すると、駆動ユニット10から電池13に伝達される熱量は次第に大きくなる。そして、時刻t3以降は、駆動ユニット10から電池13に伝達される熱量は一定となる。
【0091】
図8の上のグラフ中の破線a1に示す様に、冷媒が駆動ユニット10に通流しない時刻t0から時刻t2の間は、駆動ユニット10は、自己発熱により上昇を続ける。そして、時刻t2に駆動ユニット10の温度が第1設定温度に達すると、三方弁21が駆動ユニット側に切り換わり駆動ユニット10に冷媒が通流を開始する。すると、冷媒の流入により駆動ユニット10の温度はいったん低下するが、その後、自己発熱により再び上昇していく。
【0092】
図8の上のグラフ中の実線b1に示す様に、電池水温は、時刻t0から次第に上昇していく。
【0093】
尚、加温ヒータ51の出力、コンプレッサ57の出力、電池用ヒータ15の出力は、電池13、駆動ユニット10の温度上昇に合わせて制御部90が適宜調整する。
【0094】
次に、
図9を参照しながら、電池用ヒータ15から伝達される熱量Dと、加温ヒータ51から伝達される熱量Cと、コンプレッサ57から伝達される熱量Eと、駆動ユニット10から伝達される熱量Fの比率の変化について説明する。
【0095】
図9の左の棒グラフは、時刻t1の熱量C、熱量D、熱量Eの比率を示す。
図9の左側の棒グラフに示すように、加温ヒータ51から伝達される熱量Cは電池昇温要求熱量Q1の約40%、コンプレッサ57から伝達される熱量Eは電池昇温要求熱量Q1の約20%、電池用ヒータ15から伝達される熱量Dは電池昇温要求熱量Q1の40%となっている。尚、時刻t1では、三方弁21がバイパス側に切り換えられているので、駆動ユニット10から電池13に伝達される熱量はゼロとなっている。
【0096】
時刻t2に電池用ヒータ15がオフとなり、三方弁21が駆動ユニット側となる。また、電池13の温度がある程度上昇してくるので、時刻t3の電池昇温要求熱量Q2は、時刻t0の電池昇温要求熱量Q1よりも小さくなる。時刻t3では、加温ヒータ51から伝達される熱量Cは電池昇温要求熱量Q2の約20%、コンプレッサ57から伝達される熱量Eは電池昇温要求熱量Q2の約25%、駆動ユニット10から伝達される熱量は電池昇温要求熱量Q2の約55%となっている。このように、時刻t3では、電池昇温要求熱量Q2の55%を駆動系ラジェータ14から外部に捨ててしまう駆動ユニット10の発熱熱量で賄うことができる。これにより、車両200の電費を向上させることができる。
【0097】
以上説明したように、車両用冷却装置100は、低温環境下において、車両200を始動した後の時刻t0から時刻t2の間は三方弁21をバイパス側に切り換えて冷媒が駆動ユニット10に通流しないようにして、冷媒の通流する機器の熱容量を低減した状態で、電池用ヒータ15からの熱量と、加温ヒータ51からの熱量と、コンプレッサ57からの熱量により電池13を昇温させる。一方、時刻t0から時刻t2までの間、駆動ユニット10には冷媒が通流しない。このため、駆動ユニット10は、自己発熱により短時間に温度が上昇していく。
【0098】
そして、駆動ユニット10の温度が第1設定温度まで上昇した時刻t2以降は、三方弁21を駆動ユニット側に切り換えて、駆動ユニット10の発熱熱量で冷媒を加温し、加温した冷媒を電池13に通流させる。これにより、時刻t2以降は、車両用冷却装置100は、電池用ヒータ15からの熱量と、加温ヒータ51からの熱量と、コンプレッサ57からの熱量と、駆動ユニット10の発熱熱量により電池13を昇温していく。これにより、車両200の始動時に短時間で電池水温を目標温度まで上昇させることができる。そして、電池13の温度を短時間で上昇させることにより、電池13の充放電効率を短時間で向上させることできる。また、駆動系ラジェータ14から外部に捨ててしまう駆動ユニット10の発熱熱量により、電池13を昇温させるので、車両200の電費を向上させることができる。
【0099】
尚、以上の説明では、制御部90は、車両200の始動後にコンプレッサ57を駆動してコンプレッサ57からの熱量により電池13を昇温するとして説明したが、これに限らない。制御部90は、車両200の始動後にコンプレッサ57を駆動せずに、加温ヒータ51からの熱量と電池用ヒータ15からの熱量、又は、加温ヒータ51からの熱量と駆動ユニット10の発熱によって電池13を昇温するようにしてもよい。
【0100】
また、車両用冷却装置100では、五方弁22によって冷却流路30を切り換えるとして説明したがこれに限らず、複数の弁を組み合わせて五方弁22と同様の流路の切り換えが可能なように構成してもよい。
【0101】
次に
図10から
図13を参照しながら車両用冷却装置100の他の動作について説明する。この動作は、低温環境下で車両200が始動した後、停車状態で車室201の暖房と電池13の昇温を行う動作である。
【0102】
この動作は、先に
図5から
図9を参照して説明した動作とは逆に、
図10に示す様に、車両200の始動後に三方弁21を駆動ユニット側に切り換え、五方弁22を電池バイパス直列モードに切り換えて、冷媒が電池13を通流しないようにした状態で、加温ヒータ51からの熱量と、コンプレッサ57からの熱量と駆動ユニット10の自己発熱量により駆動ユニット10を第2設定温度まで上昇させる。そして、駆動ユニット10が第2設定温度まで上昇した後、
図6に示すように五方弁22を直列接続モードに切り換えて、加温ヒータ51からの熱量と、コンプレッサ57からの熱量と、電池用ヒータ15からの熱量と、駆動ユニット10からの熱量により電池13を昇温する。以下、説明する。
【0103】
図11のステップS201に示す様に、制御部90は、電池13の昇温が必要かどうか判断する。そして、
図11のステップS201でYESと判断した場合には、制御部90は、
図11のステップS202に進んで、車両200が停車中かどうか判断する。停車中であることは、例えば、車速が所定の閾値以下で、パーキングブレーキが掛かっており、ギヤがパーキング位置にあることによって判断してもよい。制御部90は、
図11のステップS202でYESと判断した場合には、
図11のステップS203に進む。
【0104】
一方、制御部90は、
図11のステップS201又はステップS202でNOと判断した場合には、電池13の昇温動作を実行せずに動作を終了する。
【0105】
制御部90は、
図11のステップS203で三方弁21を駆動ユニット側に切り換える。先に説明したように、駆動ユニット側に切り換えるとは、第1ポート21aと第2ポート21bを連通させ、第1ポート21aから流入した冷媒を第2ポート21bから駆動ユニット10に流出させるように三方弁21を切り換えることである。この際、第3ポート21cは閉止される。そして、制御部90は、
図11のステップS204に進んで三方制御弁56をラジェータ分流モードに切り換える。
【0106】
制御部90は
図11のステップS205で駆動ユニット10の温度を検出し、
図11のステップS206で駆動ユニット10の温度が第2設定温度より低いかどうか判断する。ここで、第2設定温度は、駆動ユニット10の発熱熱量により電池13を効果的に昇温することが可能な温度で、且つ電池水温の目標温度よりも高い温度である。先に説明した第1設定温度と同一の温度に設定してもよいし、異なる温度に設定してもよい。
【0107】
制御部90は、
図11のステップS206でYESと判断した場合には、
図11のステップS207に進んで五方弁22を電池バイパス直列接続モードに切り換える。
図3を参照して説明したように、電池バイパス直列接続モードとは、駆動ユニット10と、電池バイパス流路46とを直列に接続し、電池13をバイパスして駆動ユニット10に冷媒を通流させるモードである。また、制御部90は、
図11のステップS208でグリルシャッタ80を閉とする。
【0108】
このように、三方弁21、三方制御弁56、五方弁22を切り換えると、
図10中の太矢印に示す様に、冷却流路30の冷媒は、駆動ユニット側ウォータポンプ16からPCU12、モータ装置11、五方弁22に通流した後、電池バイパス流路46から電池側ウォータポンプ入口管38に流れる。そして、電池側ウォータポンプ17からチラー18、五方弁22、駆動系ラジェータ14、三方弁21、リザーバタンク19に通流する。
【0109】
また、車両200が低温環境下で始動し、暖房がオンになっているので、制御部90は加温ヒータ51をオンとしている。また、制御部90は、グリルシャッタ80を閉としているので、空調系ラジェータ53、駆動系ラジェータ14には外気は導入されない。
【0110】
尚、ヒートポンプ回路70の動作は、先に
図5を参照して説明したのと同様なので、説明は省略する。
【0111】
このように冷却流路30と電池バイパス流路46とを接続し、加温ヒータ51をオンとし、コンプレッサ57を駆動し、グリルシャッタ80を閉とすると、先に
図5を参照して説明したのと同様、加温ヒータ51からの熱量と、コンプレッサ57からの熱量により、冷却流路30の冷媒が加温され、加温された冷媒で駆動ユニット10が昇温する。この際、冷媒は電池13を通流しないので、加温ヒータ51からの熱量とコンプレッサ57からの熱量は専ら駆動ユニット10の昇温に用いられる。このため、駆動ユニット10は短時間で昇温される。また、駆動ユニット10は自己発熱により昇温していく。
【0112】
また、
図2を参照して説明したように、駆動ユニット10を構成するモータ装置11とPCU12と、空調ユニット50とはフロントコンパートメント202の中に収容されている。このため、駆動ユニット10の温度が上昇するとフロントコンパートメント202の雰囲気温度が上昇し、それに伴って、駆動ユニット10がより早く昇温する。
【0113】
制御部90は、
図11のステップS209で駆動ユニット10の温度を検出し、
図11のステップS210で駆動ユニット10の温度が第2設定温度以上になったかどうか判断する。そして、
図11のステップS210でNOと判断した場合には、
図11のステップS209に戻って駆動ユニット10の昇温を継続する。
【0114】
そして、制御部90は、
図11のステップS210でYESと判断した場合には、
図11のステップS211に進んで、五方弁22を直列接続モードに切り換える。そして、
図11のステップS212で電池用ヒータ15をオンとする。これにより、車両用冷却装置100の流路構成は、
図6に示す状態となる。先に、
図6を参照して説明したように、電池13は、電池用ヒータ15の熱量と、駆動ユニット10の発熱熱量と、加温ヒータ51の熱量と、コンプレッサ57の熱量によって昇温される。
【0115】
制御部90は、
図12のステップS213で電池水温、駆動ユニット10の温度を検出し、
図12のステップS214で電池水温が目標温度に達したか、又は、駆動ユニット10の温度が冷却開始温度に達したかを判断する。そして、制御部90は、
図12のステップS214でYESと判断した場合には、
図12のステップS215で五方弁22を流路分離モードに切り換える。また、制御部90は、
図12のステップS216で三方制御弁56をラジェータ遮断モードに切り換える。そして、制御部90は、
図12のステップS217で電池用ヒータ15をオフとし、
図12のステップS218でグリルシャッタ80を開とする。
【0116】
これにより、冷却流路30は、先に
図4を参照して説明したように、駆動ユニット還流流路30Aと電池還流流路30Bとに分離される。そして、駆動ユニット側ウォータポンプ16から吐出された冷媒は、PCU12、モータ装置11、駆動系ラジェータ14を還流する。そして、モータ装置11、PCU12を通流して温度の上昇した冷媒は、駆動系ラジェータ14で冷却されてモータ装置11、PCU12に還流し、モータ装置11、PCU12を冷却する。
【0117】
次に
図13を参照しながら、車両用冷却装置100が上記のように動作した際の駆動ユニット10と、電池用ヒータ15と、加温ヒータ51と、コンプレッサ57から冷媒にそれぞれ伝達される熱量の時間変化と、電池水温、駆動ユニット10の温度、フロントコンパートメント202の雰囲気温度、ヒータ回路60の熱媒体の温度の時間変化について説明する。
【0118】
図13の上のグラフ中の破線a2は、モータ温度センサ23、PCU温度センサ24によって検出した駆動ユニット10の温度の時間変化を示す。実線b2は電池水温センサ25で検出した電池水温の時間変化を示す。二点鎖線gは、ヒータコア入口水温センサ26で検出したヒータ回路60の熱媒体の温度の時間変化を示す。一点鎖線hは、フロントコンパートメント202の雰囲気温度の時間変化を示す。
【0119】
また、
図13の下のグラフ中の実線c2は、加温ヒータ51から熱媒体を介して冷媒に伝達される熱量の変化を示す。破線d2は、電池用ヒータ15から冷媒に伝達される熱量の変化を示す。一点鎖線e2は、コンプレッサ57から冷媒ガスと熱媒体を介して冷媒に伝達される熱量の変化を示す。二点鎖線f2は、駆動ユニット10から冷媒に伝達される熱量を示す。
【0120】
また、
図13において、時刻t0は車両200が始動した時刻を示す。また、時刻t13は、駆動ユニット10の温度が第2設定温度に達し、五方弁22が電池バイパス直列接続モードから直列接続モードに切り換えられ、電池用ヒータ15がオンとなる時刻である。更に、時刻t15は電池水温が目標温度に到達し、五方弁22が流路分離モードに切り換えられ、三方制御弁56がラジェータ遮断モードに切り換えられる時刻である。
【0121】
従って、時刻t0からt13の間、加温ヒータ51から熱媒体を介して冷媒に伝達される熱量と、コンプレッサ57から冷媒ガスと熱媒体を介して冷媒に伝達される熱量と、駆動ユニット10から冷媒に伝達される熱量は駆動ユニット10と冷媒の昇温のために用いられる。そして、時刻t13からt15の間は、加温ヒータ51から熱媒体を介して冷媒に伝達される熱量と、コンプレッサ57から冷媒ガスと熱媒体を介して冷媒に伝達される熱量と、駆動ユニット10から冷媒に伝達される熱量と、電池用ヒータ15から冷媒に伝達される熱量は、電池13の昇温に用いられる。
【0122】
図13の下のグラフ中の実線c2に示す様に、加温ヒータ51から冷媒に伝達される熱量は、車両200が始動し、加温ヒータ51がオンとなる時刻t0から次第に大きくなっていく。そして、電池13の温度がある程度上昇した時刻t11以降は、加温ヒータ51から冷媒に伝達される熱量は次第に低下する。
図13の上の図中の、二点鎖線gで示すヒータ回路60の熱媒体の温度が一定の温度となる時刻t12以降は、加温ヒータ51から電池13に伝達される熱量は略一定となる。時刻t0から時刻t13の間の加温ヒータ51から冷媒に伝達される熱量は駆動ユニット10と冷媒を昇温させる。また、時刻t13以降は、加温ヒータ51から冷媒に伝達される熱量は電池13を昇温させる。
【0123】
図13の下のグラフ中の破線d2に示す様に、電池用ヒータ15は時刻t0から時刻t13の間は、オフとなっているので、電池用ヒータ15から冷媒に伝達される熱量はゼロである。この間、電池水温は殆ど上昇しない。時刻t13に五方弁22が直列接続モードに切り換えられて電池13に冷媒が通流を開始し、電池用ヒータ15がオンとなると電池用ヒータ15から冷媒に伝達される熱量は増加し始める。しばらくすると、電池用ヒータ15から冷媒に伝達される熱量は一定となる。そして、電池水温が目標温度に達し、五方弁22が流路分離モードに切り換えられ、電池用ヒータ15がオフとなる時刻t15以降は、電池用ヒータ15から冷媒に伝達される熱量はゼロとなる。電池用ヒータ15から冷媒に伝達される熱量は、電池13の昇温に用いられる。
【0124】
図13の下のグラフ中の一点鎖線e2に示す様に、コンプレッサ57から冷媒に伝達される熱量は、車両200が始動し、コンプレッサ57がオンとなる時刻t0から次第に大きくなっていく。そして、電池13の温度がある程度上昇した時刻t11以降は、コンプレッサ57から冷媒に伝達される熱量は略一定となる。加温ヒータ51から冷媒に伝達される熱量と同様、時刻t0から時刻t13の間のコンプレッサ57から冷媒に伝達される熱量は駆動ユニット10と冷媒を昇温させる。また、時刻t13以降は、コンプレッサ57から冷媒に伝達される熱量は電池13を昇温させる。
【0125】
図13の下のグラフ中の二点鎖線f2に示すように、駆動ユニット10から冷媒に伝達される熱量は、時刻t0から時刻t11まで上昇し、その後、少しずつ低減し、その後、略一定となっている。時刻t0から時刻t13の間の駆動ユニット10から冷媒に伝達される熱量は冷媒を昇温させる。また、時刻t13以降は、駆動ユニット10から冷媒に伝達される熱量は電池13を昇温させる。
【0126】
図13の上のグラフ中の破線a2に示す様に、駆動ユニット10の温度は、五方弁22が電池バイパス直列接続モードになり、加温ヒータ51からの熱量と、コンプレッサ57からの熱量と駆動ユニット10の自己発熱により駆動ユニット10が昇温される時刻t0から時刻t13の間は上昇していく。また、グリルシャッタ80を閉としているので、
図13の上のグラフ中に一点鎖線hで示すフロントコンパートメント202の雰囲気温度が上昇してくる。このため、フロントコンパートメント202に格納されている駆動ユニット10の温度は短時間で上昇する。
【0127】
時刻t13に駆動ユニット10の温度が第2目標温に度達すると、五方弁22が直列接続モードに切り換わり、冷媒が電池13を通流して電池13の昇温が開始される。すると、冷媒の温度が少し低下してくるので、駆動ユニット10の温度は少し低下するが、電池用ヒータ15からの熱量で駆動ユニット10も昇温されるので、時刻t14の後は駆動ユニット10の温度は上昇していく。
【0128】
また、
図13の上のグラフ中の実線b2で示す電池水温は、電池13に冷媒が通流しない時刻t0から時刻t13の間は、殆ど上昇しない。五方弁22が直列接続モードに切り換わり、電池13に冷媒が通流し、電池用ヒータ15がオンとなる時刻t13以降、電池水温は次第に上昇し、時刻t15に目標温度に到達する。
【0129】
尚、加温ヒータ51の出力、コンプレッサ57の出力、電池用ヒータ15の出力は、電池13、駆動ユニット10の温度上昇に合わせて制御部90が適宜調整する。
【0130】
以上説明したように、車両用冷却装置100は、低温環境下において、車両200を始動し、車両200が停車状態にある場合には、三方弁21を駆動ユニット側に切り換えると共に、五方弁22を電池バイパス直列接続モードに切り換え、グリルシャッタ80を閉としてフロントコンパートメント202の雰囲気温度を上昇させながら、加温ヒータ51からの熱量とコンプレッサ57からの熱量と駆動ユニット10の自己発熱で駆動ユニット10の温度を短時間で上昇させることができる。そして、駆動ユニット10の温度を第2設定温度まで上昇させた後、五方弁22を直列接続モードに切り換えて、加温ヒータ51からの熱量と、コンプレッサ57からの熱量と、駆動ユニット10からの熱量と、電池用ヒータ15からの熱量とにより電池13を昇温することができる。これにより、車両用冷却装置100は、車両200が低温環境下で始動し、停車状態の場合に、短時間で電池水温を目標温度まで上昇させることができる。そして、電池13の温度を短時間で上昇させることにより、電池13の充放電効率を短時間で向上させることができる。
【0131】
このように、車両用冷却装置100は、駆動系ラジェータ14から外部に捨ててしまう駆動ユニット10の発熱熱量により、電池13を昇温させるので、車両200の電費を向上させることができる。
【0132】
尚、以上の説明では、五方弁22を電池バイパス直列接続モードに切り換えて冷媒が電池13をバイパスするようにして駆動ユニット10の昇温を行うこととして説明したが、これに限らず、例えば、時刻t0から時刻t13の間、五方弁22の第2ポート22bの開度を調整して電池用ヒータ15と電池13とに少量の冷媒を通流させて、電池用ヒータ15をオンにして電池13を昇温するようにしてもよい。そして、時刻t13以降は、五方弁22を直列接続モードに切り換え、電池用ヒータ15をオフとして、加温ヒータ51からの熱量と、コンプレッサ57からの熱量と、駆動ユニット10からの熱量により電池13を昇温してもよい。
【0133】
次に
図14から
図15を参照しながら車両用冷却装置100の他の動作について説明する。この動作は、
図4を参照して説明したように、低温環境下で五方弁22を流路分離モードに切り換え、車室201を暖房しながら走行している際に、電池13の残存容量(以下、SOCという)が設定容量よりも少なくなり、車両200が停止後に急速充電が予想される場合に、走行中に電池13を予熱する動作である。
【0134】
制御部90は、車両200が
図4に示すような系統構成で走行中に電池13のSOCを算出する。SOCの算出は、例えば、電池13の電流と電圧に基づいて算出してもよい。そして、制御部90は、SOCが設定容量よりも少なくなった場合に、
図14のステップS301でYESと判断して
図14のステップS302に進む。尚、制御部90は、
図14のステップS301でNOと判断した場合には、
図14のステップS301に戻って待機する。
【0135】
制御部90は、
図14のステップS302で車両200が停止した後に、急速充電が実行される可能性があるかどうかを判断する。この判断は、例えば、その車両200の過去の充電履歴に停止後に急速充電を行った履歴があるかどうかにより判断してもよい。そして、制御部90は、
図14のステップS302でYESと判断した場合には、
図14のステップS303に進む。また、
図14のステップS302でNOと判断した場合には、停止後に急速充電を行う可能性がなく、電池13の予熱は必要ないと判断して処理を終了する。
【0136】
制御部90は、
図14のステップS303で駆動ユニット10の冷却要求があるかどうか判断する。冷却要求がある場合には、
図4に示すように五方弁22を流路分離モードに切り換えたまま、駆動系ラジェータ14で冷媒を冷却し、駆動ユニット10を冷却する必要がある。この場合には、電池13を予熱するような系統構成とすることができない。従って、制御部90は、
図14のステップS303でYESと判断した場合には、電池13の予熱を行わずに処理を終了する。
【0137】
制御部90は、
図14のステップS303でNOと判断した場合には、
図14のステップS304に進んで、五方弁22を直列接続モードに切り換える。また、制御部90は、
図14のステップS305で三方制御弁56をラジェータ分流モードに切り換える。これにより、車両用冷却装置100の系統構成は、
図6に示すような系統構成となる。この際の冷媒、熱媒体、冷媒ガスの流れは、先に
図6を参照して説明したと同一である。これにより、駆動ユニット10の発熱熱量により電池13の昇温を行うことができる。
【0138】
次に制御部90は、
図14のステップS306で駆動ユニット10の温度と駆動ユニット10の冷却開始温度との温度差DTを算出する。ここで、冷却開始温度とは、駆動ユニット10の冷却が必要となる駆動ユニット10の温度である。先に説明したように、
図14のステップS303でNOと判断しているので、駆動ユニット10の温度は、冷却開始温度よりも低い状態にある。そこで、制御部90は、温度差DTを算出し、温度差DTにより、電池13を予熱する手段を選択していく。
【0139】
図14のステップS307に示す様に、温度差DTが第1閾値以上の場合には、制御部90は、
図14のステップS307でYESと判断して
図14のステップS308に進む。そして、モータ装置11の電動オイルポンプ(以下、EOPという)のデューティと、駆動ユニット側ウォータポンプ16のデューティを低減する。これにより、駆動ユニット10の出口の冷媒の温度をより高くして、電池13を更に予熱することができる。
【0140】
また、制御部90は、温度差DTが第1閾値よりも大きい第2閾値以上の場合には、更に冷却系統を停止してよいと判断し、
図14のステップS310に示す様にグリルシャッタ80を閉とする。これにより、外気が駆動系ラジェータ14、空調系ラジェータ53に通流しないので、加温ヒータ51からの熱量と、コンプレッサ57からの熱量と、駆動ユニット10からの熱量で冷媒を加温し、加温した冷媒により電池13を更に予熱することができる。
【0141】
尚、制御部90は、
図14のステップS307でNOと判断した場合には、EOPのデューティの低減と駆動ユニット側ウォータポンプ16のデューティの低減とグリルシャッタ80の閉止は行わない。また、制御部90は、
図14のステップS309でNOと判断した場合には、EOPのデューティの低減と、駆動ユニット側ウォータポンプ16のデューティの低減は行うがグリルシャッタ80の閉止は行わない。
【0142】
次に、制御部90は、電池13のSOCの値により、電池13に伝達される熱量を増加させる手段を選択する。SOCが第3閾値以上の場合には、
図14のステップS311でYESと判断して
図14のステップS312に進み、例えば、モータ装置11への通電電流を増加させて、モータ装置11の温度を上昇させること等により、駆動ユニット10の自己発熱を増加させ、冷媒の温度を上昇させて電池13を予熱してもよい。ここで、第3閾値はステップS301の設定容量よりも小さい値である。
【0143】
また、制御部90は、
図14のステップS313でSOCが第3閾値よりも大きく設定容量よりも小さい第4閾値以上の場合、
図14のステップS313でYESと判断して
図14のステップS314に進んで電池用ヒータ15をオンにする。
【0144】
尚、制御部90は、
図14のステップS311でNOと判断した場合には、駆動ユニット10の自己発熱増加処理は行わず、電池用ヒータ15をオンにしない。また、制御部90は、
図14のステップS313でNOと判断した場合には、駆動ユニット10の自己発熱増加処理は行なうが、電池用ヒータ15をオンにしない。
【0145】
このように、制御部90は、駆動ユニット10の温度状態や電池13のSOCに応じて電池13を昇温する手段を選択し、効果的に電池13を予熱することができる。
【0146】
以上説明したように、車両用冷却装置100は、車両200が走行中に電池13を予め昇温しておくことができる。このため、車両200が停止した直後から急速充電を行うことができる。
【符号の説明】
【0147】
10 駆動ユニット、11 モータ装置、12 PCU(電力制御ユニット)、13 電池、14 駆動系ラジェータ、15 電池用ヒータ、16 駆動ユニット側ウォータポンプ、17 電池側ウォータポンプ、18 チラー、19、54 リザーバタンク、20 伝熱部材、21 三方弁、22 五方弁、23 モータ温度センサ、24 PCU温度センサ、25 電池水温センサ、26 ヒータコア入口水温センサ、30 冷却流路、30A 駆動ユニット還流流路、30B 電池還流流路、31 駆動ユニット側ポンプ入口管、32 駆動ユニット側ポンプ出口管、33 PCU出口管、34 モータ装置出口管、35 電池用ヒータ入口管、36 電池用ヒータ出口管、37 電池出口管、38 電池側ウォータポンプ入口管、39 電池側ウォータポンプ出口管、41 チラー出口管、42 駆動系ラジェータ入口管、43 駆動系ラジェータ出口管、44 リザーバタンク入口管、45 駆動ユニットバイパス流路、46 電池バイパス流路、50 空調ユニット、51 加温ヒータ、52 ヒータコア、53 空調系ラジェータ、55 ヒータ側ウォータポンプ、56 三方制御弁、57 コンプレッサ、58 水冷コンデンサ、59 エバポレータ、60 ヒータ回路、61 ヒータ側ポンプ入口管、62 ヒータ側ポンプ出口管、63 水冷コンデンサ出口管、64 加温ヒータ出口管、65 空調系ラジェータ入口管、66 空調系ラジェータ出口管、67 ヒータコア入口管、68 ヒータコア出口管、70 ヒートポンプ回路、71 コンプレッサ出口管、72 水冷コンデンサ出口管、73 エバポレータ側膨張弁出口管、74 エバポレータ出口管、75 チラー側膨張弁入口管、76 チラー側膨張弁出口管、77 チラー出口管、78 エバポレータ側膨張弁、79 チラー側膨張弁、80 グリルシャッタ、90 制御部、91 CPU
92 メモリ、100 車両用冷却装置、200 車両、201 車室、202 フロントコンパートメント、203 フロントグリル、204 フロアパネル、205 ダッシュパネル。